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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022459
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】心臓傷害を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20220127BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220127BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 35/34 20150101ALI20220127BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20220127BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
C12Q1/04 ZNA
C12N5/071
A61P9/00
A61K35/34
A61P9/12
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P9/04
A61P9/06
A61P1/02
A61P5/14
A61P9/14
A61P31/12
A61P3/06
A61P25/30
A61P25/32
A61K38/16
A61K31/706
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021201826
(22)【出願日】2021-12-13
(62)【分割の表示】P 2018515924の分割
【原出願日】2016-09-23
(31)【優先権主張番号】62/233,148
(32)【優先日】2015-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518097947
【氏名又は名称】ソーヤー, ダグラス ビー.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ソーヤー, ダグラス ビー.
(57)【要約】
【課題】心臓傷害を処置するための方法の提供。
【解決手段】NRG-1ペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与することによって、心臓の中もしくは心臓の周りに心臓前駆細胞を有すると決定された被験体において、筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制するための方法が本明細書で提供される。本明細書で開示される方法は、心臓傷害(例えば、心不全もしくは心筋梗塞)を処置、防止、またはその進行を遅らせるために使用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2015年9月25日に出願された米国仮特許出願第62/233,148号の優先権の利益を主張し、その内容全体が本明細書中に参照によって組み込まれる。
【0002】
政府援助研究に関する陳述
この仕事は、援助金U01 HL 100398のもとの米国国立衛生研究所/米国国立心肺血液研究所によって部分的に援助された。したがって、政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、ニューレグリン(NRG)ペプチドまたはその機能的フラグメントの治療上有効な量を投与することによる、筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
心臓血管疾患は、引き続いて世界中で死亡率および罹患率の主要な原因であり、1年に1730万人の死亡の原因である。例えば、虚血性心疾患、高血圧症、糖尿病、弁膜症、心筋炎、感染症、全身性の毒、および心臓毒製薬物による心臓組織への進行性の損傷は、最終的には、心不全をもたらし得る。いくつかの代償機構が、機能不全に陥った心臓が適切な機能を維持しようと試みるときに起こる。これらとしては、心拍出量を増大させること、心室容積を増大させること、および心室リモデリングを通じての壁の厚み、および神経ホルモン系の活性化を通じて平均動脈圧を増大させて組織灌流を維持することが挙げられる。心不全の初期段階において最初は有益であるものの、これらの代償機構のうちの全てが、最終的には、心不全を増悪させるという悪循環をもたらす。
【0005】
さらに、心臓傷害は、筋線維の再配置、間質性線維症、細胞外マトリクスの蓄積、および血管新生が関わる複雑な構造リモデリングを必然的に伴う。心臓リモデリングの根底にあるプロセスのうちの多くは、慢性炎症プロセスと共通する特徴を有する。これらのプロセスの間に、心筋間質中にあるかまたは心筋間質へと浸潤する非筋細胞(例えば、内皮細胞、線維芽細胞、および免疫細胞)は、積極的役割を果たす。
【0006】
新たな治療は、被験体の転帰を改善したものの、症候性心不全はなお、現行の治療で適切に処置されない慢性的に進行異性の疾患である。幹細胞治療は、重篤な心筋症を処置するための可能性のある新たな機構として浮かび上がってきた。しかし、ヒト胚性幹細胞の使用は、不十分な心筋生成分化(cardiomyogenic differentiation)に一部起因して、重大な制限を有する。増殖しかつ心筋細胞へと分化し得る内因性心臓幹細胞は、より近年になって、幹細胞マーカー(例えば、c-Kitおよび幹細胞抗原-1(Sca-1))を使用して単離された。不運なことに、これらの心臓前駆細胞は、複数の系統(筋線維芽細胞を含む)へも分化し、筋線維芽細胞は、心不全をもたらし得る病的な心臓再構築と関連する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
以前、動物研究および進行中の臨床試験は、心機能に対する可能性のある治療剤として組換えNRGの有益な効果を示した(例えば、Sawyerら, 2011; Lenihanら, 2013を参照のこと)。NRG/ErbBシグナル伝達は、筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の分化を阻害し、筋細胞への分化を増大させることによって、心臓の構造的および機能的完全性において重要な役割を果たすことが見出された。従って、本発明は、心臓前駆細胞上のErbB2およびErbB3レセプターが、筋細胞の形成へと向かう心臓前駆細胞の分化を駆動しかつ線維芽細胞および筋線維芽細胞への分化を阻害するNRG/ErbBシグナル伝達を生じるNRGの標的であるということを確立する研究に一部基づく。この知見は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントでの心臓傷害(心不全を含む)の処置から最も利益を得る患者を同定するために使用され得る。
【0008】
従って、本発明の一局面は、NRGでの処置に応答性である心臓前駆細胞を有する被験体を同定するための方法を提供する。これは、例えば、心臓手術もしくは心臓カテーテル検査の間に得られる心臓組織の生検によって決定され得る。この方法は、被験体から細胞を単離する工程を含み得るか、または被験体に由来する細胞のサンプルを使用して、インビトロで完全に行われ得る。生検材料から単離される心臓前駆細胞は、次いで、線維芽細胞および筋線維芽細胞への低減した変換を示すことによって、ならびに/または心臓細胞へと優先的に分化することによって、上記細胞が応答するか否かを決定するために、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに曝露され得る。心臓前駆細胞がNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントへのこの応答を示す被験体は、NRGペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは改変体での心臓傷害の処置または防止に十分応答すると予測され得る。
【0009】
従って、本発明の別の局面は、線維芽細胞から離れるおよび/または心筋細胞に向かう優先的な分化によって、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに応答する心臓前駆細胞を有することが見出された被験体を処置するための方法を提供する。本発明はまた、このような被験体を処置するための方法において、例えば、心臓傷害を処置または防止するための方法、心臓組織再生を誘導するための方法あるいは心臓組織を修復するための方法において、使用するためのNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを提供する。上記方法は、本明細書で記載されるとおりの方法によって同定された任意の被験体において行われ得る。上記方法は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与して、心臓傷害を有する被験体において、心筋細胞(cardiac monocyte)に向かう心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する工程を包含する。本発明の他の局面は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を、NRGに応答性の心臓前駆細胞を有すると同定された患者に投与することによって、心臓組織の形成を誘導する、心臓組織を強化する、および心臓傷害の発症を防止するための方法を提供する。NRGに応答性の心臓前駆細胞を有すると同定された患者に、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与することによって、心臓組織の形成を誘導する、心臓組織を強化する、または心臓傷害の発症を防止するための方法における使用のためのNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントもまた、提供される。NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与することによる、NRG/ErbBシグナル伝達の活性化は、それらの被験体において心筋細胞への心臓前駆細胞の分化を促進し、増強された心筋再生および改善された心機能をもたらす。本発明の方法は、ヒト胚性幹細胞またはヒト心臓前駆細胞の共投与を包含し得る。
【0010】
ある特定の実施形態において、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制することは、筋細胞形成に向かう分化を駆動することによって、心臓組織再生を誘導する。他の実施形態において、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制することならびに/または心筋細胞への分化を誘導することは、心臓組織を修復および強化する。別の実施形態において、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制することは、心臓線維症を防止する。より具体的な実施形態において、心臓傷害後に心臓線維症を低減することは、瘢痕組織の形成を防止する。いくつかの実施形態において、瘢痕組織は、改善(reverse)または修復され得る。ある特定の実施形態において、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制することは、心臓傷害の発症を防止する。
【0011】
一局面において、NRGでの処置に応答性である心臓前駆細胞を有することが見出された被験体において、心臓傷害後に心臓組織再生を誘導するための方法は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与する工程を包含する。
【0012】
別の局面において、NRGでの処置に応答性である心臓前駆細胞を有することが見出された被験体において、心臓傷害後に心臓組織を修復するための方法は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与する工程を包含する。
【0013】
さらなる局面において、NRGでの処置に応答性である心臓前駆細胞を有することが見出された被験体において、心臓傷害の発症を防止するための方法は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与する工程を包含する。
【0014】
ある特定の実施形態において、上記心臓傷害は、心臓血管疾患から生じる。いくつかの実施形態において、上記心臓血管疾患は、冠動脈疾患、脳卒中、心筋梗塞、心筋症、高血圧症、虚血性心疾患、心房細動、先天性心疾患、心筋炎、心内膜炎、心膜炎、アテローム性動脈硬化症、血管疾患、冠動脈バイパス手術、心臓毒性化合物への曝露、甲状腺疾患、ウイルス感染、歯肉炎、薬物乱用、アルコール乱用、または高い血中コレステロールから生じる。具体的な実施形態において、上記被験体は、左室収縮機能障害を有する。いくつかの実施形態において、上記被験体は、心不全に罹患している。
【0015】
ある特定の実施形態において、上記被験体は、心臓傷害を発生させるリスクがあるか、または心臓血管疾患の病歴を有する。他の実施形態において、上記被験体は、心臓組織を損傷することが公知の化学療法剤での化学療法を熟慮している可能性がある。上記被験体がNRGでの処置に応答性である心臓前駆細胞を有するか否かを同定することは、上記被験体が、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントでの同時の治療から利益を得ることを示す。従って、いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを投与する前、投与する間、または投与した後に、抗がん剤(例えば、アザシチジン)の治療上有効な量を投与する工程をさらに包含し得る。
【0016】
他の実施形態において、本明細書で提供される場合、上記被験体は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、上記哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態において、上記ヒトは、がんに罹患しており、心臓組織および心機能への損傷と関連したがん処置を既に受けている。いくつかの実施形態において、上記ヒトは、先天性の心臓傷害に罹患しているか、または心臓手術(特に、心臓のリモデルもしくは再設計部分に対する手術)から回復している小児または幼児である。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、静脈内投与または皮下投与される。
【0018】
ある特定の実施形態において、上記NRGペプチドは、NRG-1もしくはNRG-2ペプチド(詳細には、NRG-1β、およびより詳細には、グリア増殖因子(GGF)2ペプチド(例えば、Cimaglermin alpha))またはその機能的改変体もしくはフラグメントである。いくつかの具体的な実施形態において、NRGペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1の機能的改変体もしくはフラグメントを含む。他の具体的な実施形態において、上記NRGペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2の機能的フラグメントを含む。いくつかの実施形態において、上記NRGペプチドは、配列番号21もしくは配列番号22のアミノ酸配列、またはその機能的フラグメントを含む。
【0019】
ある特定の実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、心臓前駆細胞上で発現されるErbB3レセプターに結合して、ErbBシグナル伝達を活性化する。
【0020】
ある特定の実施形態において、ErbB3レセプターへのNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの結合は、ErbBシグナル伝達を活性化する。少なくともいくつかの実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、ErbB3レセプターに結合し、心臓前駆細胞上のErbB2レセプターを動員することによって、ErbBシグナル伝達をもたらす。その得られるErbBシグナル伝達は、心筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を分化する、ならびに/または線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する。
【0021】
本発明の別の局面は、NRGでの心臓傷害の処置または防止から利益を得る被験体を同定するための方法を提供し、上記方法は、
a)ヒト心臓前駆細胞を、心臓傷害を有するかまたは心臓傷害のリスクのある被験体から単離する工程;
b)上記被験体の細胞を、NRGペプチドまたは機能的改変体もしくはフラグメントに曝露する工程;
c)線維芽細胞および筋線維芽細胞への細胞の変換が抑制されるかどうか、ならびに/または上記細胞が心筋細胞へと優先的に分化するかどうかを決定することによって、上記細胞がNRGに応答性であるかどうかを評価する工程;
を包含し、ここで線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換の抑制または心筋細胞への優先的分化が見出される場合、上記被験体は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントでの心臓傷害の処置または防止から利益を得る。関連する局面において、上記方法は、上記被験体に由来する心臓前駆細胞に対して行われ、上記方法は、それら細胞を単離する工程を包含しない。例えば、NRGでの心臓傷害の処置または防止から利益を得る被験体を同定する方法が提供され、上記方法は、
a)心臓傷害を有するかまたは心臓傷害のリスクのある被験体に由来するヒト心臓前駆細胞を、NRGペプチドその機能的改変体もしくはフラグメントにインビトロで曝露する工程;ならびに
b)線維芽細胞および筋線維芽細胞への細胞の変換が抑制されるかどうか、ならびに/または上記細胞が心筋細胞へと優先的に分化するかどうかを決定することによって、上記細胞がニューレグリンに応答性であるかどうかを評価する工程;
を包含し、ここで線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換の抑制または心筋細胞への優先的分化が見出される場合、上記被験体は、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントでの心臓傷害の処置または防止から利益を得る。
【0022】
本発明の別の局面は、心臓傷害を処置または防止するための方法を提供し、上記方法は、
a)ヒト心臓前駆細胞を、心臓傷害を有するかまたは心臓傷害のリスクのある被験体から単離する工程;
b)線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制すること、ならびに/または心筋細胞への心臓前駆細胞の分化を促進することによって、上記被験体の心臓前駆細胞がNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに応答するかどうかを評価する工程;ならびに
c)上記心臓前駆細胞が応答性である場合、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを投与して、心臓傷害を処置または防止するか、またはその重篤度を低減する工程
を包含する。
関連する局面において、本発明は、このような方法で使用するための、あるいは心臓傷害の処置または防止から利益を得る被験体であると本明細書で記載されるとおりの方法によって同定された被験体を処置するための方法において使用するための、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明の方法は、
a)線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制すること、ならびに/または心筋細胞への心臓前駆細胞の分化を促進することによって、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに応答し得ることが見出された心臓前駆細胞を培養および拡大する工程;ならびに
b)上記拡大した心臓前駆細胞を、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量とともに上記被験体に投与する工程
を包含する。このような方法において使用するための、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントもまた提供される。
【0024】
本発明の別の局面は、心筋細胞が富化された細胞集団を生成するための方法を提供し、上記方法は、
a)被験体から得られる心臓前駆細胞を単離する工程;
b)上記細胞を増殖培地中で培養する工程;
c)上記細胞を、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの有効量とともにインキュベートして、心筋細胞の分化を促進する工程;および
d)上記筋細胞を単離する工程
を包含する。
この方法に続いて、上記心筋細胞が上記被験体に投与され得る。上記細胞は、工程a)においてサンプル(例えば、本明細書で記載されるとおりの生検サンプル)からインビトロで単離され得る。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ニューレグリンでの心臓傷害の処置または防止から利益を得る被験体を同定するための方法であって、該方法は、
a)ヒト心臓前駆細胞を、心臓傷害を有するかまたは心臓傷害のリスクのある被験体から単離する工程;
b)該被験体の細胞を、ニューレグリンペプチドまたは機能的改変体もしくはフラグメントに曝露する工程;
c)線維芽細胞および筋線維芽細胞への細胞の変換が抑制されるかどうか、ならびに/または該細胞が心筋細胞へと優先的に分化するかどうかを決定することによって、該細胞がニューレグリンに応答性であるかどうかを評価する工程;
を包含し、そしてここで線維芽細胞および筋線維芽細胞への該心臓前駆細胞の該変換の抑制または心筋細胞への優先的分化が見出される場合、該被験体は、該ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントでの心臓傷害の処置または防止から利益を得る、方法。
(項目2)
心臓組織再生の必要性のある被験体を処置するための方法であって、該方法は、
a)該被験体から単離された心臓前駆細胞を、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに曝露する工程;
b)該心臓前駆細胞がニューレグリンに応答性であるかどうかを評価する工程;ならびに
c)該被験体の心臓前駆細胞が応答性である場合、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与する工程
を包含する方法。
(項目3)
前記ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、前記被験体において、心筋細胞への心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記被験体は、心臓傷害に罹患しているかまたは罹患していると予測される、項目2または項目3に記載の方法。
(項目5)
線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する工程は、心臓傷害後に心臓組織再生を誘導する、項目2~4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する工程は、心臓傷害後に心臓組織の修復を生じる、項目2~5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する工程は、心臓傷害後に心臓線維症を低減する、項目2~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
心臓傷害後に心臓線維症を低減することは、瘢痕形成を防止する、項目7に記載の方法。(項目9)
線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する工程は、心臓傷害の発症を防止する、項目2~4のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記心臓前駆細胞は、幹細胞抗原-1(sca-1)細胞を発現する、項目2~9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記sca-1細胞は、左室自由壁または心臓の血管もしくは血管周囲領域内に位置する、項目10に記載の方法。
(項目12)
ニューレグリンに応答性の心臓前駆細胞を有すると以前に決定された被験体において、心臓傷害後に心臓組織再生を誘導するための方法であって、該方法は、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与する工程を包含する方法。
(項目13)
ニューレグリンに応答性の心臓前駆細胞を有すると以前に決定された被験体において、心臓傷害後に心臓組織を修復するための方法であって、該方法は、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与する工程を包含する方法。
(項目14)
ニューレグリンに応答性の心臓前駆細胞を有すると以前に決定された被験体において心臓傷害の発症を防止するための方法であって、該方法は、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与する工程を包含する方法。(項目15)
前記心臓傷害は、心臓血管疾患から生じる、項目4または12~14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記心臓血管疾患は、冠動脈疾患;心不全;脳卒中;心筋梗塞;心筋症;高血圧症;虚血性心疾患;心房細動;先天性心疾患;心筋炎;心内膜炎;心膜炎;アテローム性動脈硬化症;血管疾患;左室収縮機能障害;冠動脈バイパス手術;心臓毒性化合物への曝露;甲状腺疾患;ウイルス感染;歯肉炎;薬物乱用;アルコール乱用、または高い血中コレステロールから生じる、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記被験体は、心筋梗塞に罹患したことがある、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記被験体は、心不全に罹患している、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記心不全は、収縮性心不全である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記被験体は、哺乳動物である、項目2~19のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記哺乳動物は、ヒトである、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、静脈内投与または皮下投与される、項目2~21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、化学療法剤の治療上有効な量を投与する前、投与する間、もしくは投与した後に投与される、項目2~22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
前記化学療法剤は、アザシチジンである、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、化学療法剤およびヒト心臓前駆細胞またはヒト胚性幹細胞とともに共投与される、項目23または24に記載の方法。
(項目26)
インビトロで、心筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制するための方法であって、該方法は、
a)ヒト心臓前駆細胞を生物学的サンプルから単離する工程;
b)該細胞を増殖培地中で懸濁する工程;
c)該細胞を、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの有効量とともにインキュベートすることによって、心筋細胞分化を誘導する工程
を包含する方法。
(項目27)
心筋細胞が富化された細胞集団を生成するための方法であって、該方法は、
a)ヒト心臓前駆細胞を被験体から単離する工程;
b)該細胞を増殖培地中で培養する工程;
c)該細胞を、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの有効量とともにインキュベートして、心筋細胞への分化を促進する工程;および
d)該心筋細胞を単離する工程、
を包含する方法。
(項目28)
前記単離された心筋細胞は、前記被験体に投与される、項目27に記載の方法。
(項目29)
a)線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制することならびに/または心筋細胞への該心臓前駆細胞の分化を促進することによって、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに応答し得ることが見出された心臓前駆細胞を培養および拡大する工程;ならびに
b)該拡大された心臓前駆細胞を、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量とともに、被験体に投与する工程
を包含する方法。
(項目30)
ニューレグリンでの心臓傷害の処置または防止から利益を得る被験体を同定するための方法であって、該方法は、
a)ヒト心臓前駆細胞を、心臓傷害を有するかまたは心臓傷害のリスクのある被験体から単離する工程;
b)該被験体の細胞を、ニューレグリンペプチドまたは機能的改変体もしくはフラグメントに曝露する工程;
c)線維芽細胞および筋線維芽細胞への細胞の変換が抑制されるかどうか、および/または該細胞が心筋細胞へと優先的に分化するかどうかを決定することによって、該細胞がニューレグリンに応答性であるかどうかを評価する工程;
を包含し、そしてここで線維芽細胞および筋線維芽細胞への該心臓前駆細胞の該変換の抑制または心筋細胞への優先的分化が見出される場合、該被験体は、該ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントでの心臓傷害の処置または防止から利益を得る、方法。
(項目31)
心臓傷害を処置または防止するための方法であって、該方法は、
a)ヒト心臓前駆細胞を、心臓傷害を有するかまたは心臓傷害のリスクのある被験体から単離する工程;
b)線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制すること、ならびに/または心筋細胞への該心臓前駆細胞の分化を促進することによって、該被験体の心臓前駆細胞が、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに応答するかどうかを評価する工程;ならびに
c)該心臓前駆細胞が応答性である場合、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを投与して、心臓傷害を処置または防止するかまたはその重篤度を低減する工程、
を包含する方法。
(項目32)
前記ヒト心臓前駆細胞は、心臓手術または心臓カテーテル検査の間に前記被験体から単離される、項目1、26、27、30、または31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、ヒト胚性幹細胞またはヒト心臓前駆細胞とともに共投与される、項目2、12~14、または31のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記共投与される心臓前駆細胞は、処置されている前記被験体から元々採取された、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記ヒト胚性幹細胞またはヒト心臓前駆細胞は、前記ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントとともに同時に、逐次的に、連続して、または断続的に共投与される、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記ニューレグリンペプチドは、NRG-1βペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントである、項目1~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記NRG-1βペプチドは、配列番号19または配列番号20のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記NRG-1βペプチドは、GGF2またはその機能的改変体もしくはフラグメントである、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記ニューレグリンペプチドは、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列またはその機能的改変体もしくはフラグメントを含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
GGF2機能的改変体は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号10のアミノ酸配列を含む、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、EGF様ドメインを含む、項目1~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記上皮増殖因子様ドメインは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、または配列番号18のアミノ酸配列を含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記ニューレグリンペプチドは、NRG-2またはその機能的改変体もしくはフラグメントである、項目1~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記ニューレグリンペプチドは、配列番号21もしくは配列番号22のアミノ酸配列またはその機能的改変体もしくはフラグメントを含む、項目1~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目45)
ニューレグリンでの心臓傷害の処置または防止から利益を得る被験体を同定するための方法であって、該方法は、
a)心臓傷害を有するかまたは心臓傷害のリスクのある被験体に由来するヒト心臓前駆細胞を、ニューレグリンペプチドまたは機能的改変体もしくはフラグメントにインビトロで曝露する工程;および
b)線維芽細胞および筋線維芽細胞への細胞の変換が抑制されるかどうか、ならびに/または該細胞が心筋細胞へと優先的に分化するかどうかを決定することによって、該細胞がニューレグリンに応答性であるかどうかを評価する工程;
を包含し、ここで線維芽細胞および筋線維芽細胞への該心臓前駆細胞の該変換の抑制、または心筋細胞への優先的分化が見出される場合、該被験体は、該ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントでの心臓傷害の処置または防止から利益を得る、方法。
(項目46)
項目1~44のいずれか1項に記載の方法における使用のための、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメント。
(項目47)
心臓組織再生の必要性のある被験体を処置するための方法での使用のためのニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントであって、該方法は、
a)該被験体から単離された心臓前駆細胞をニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに曝露する工程;
b)該心臓前駆細胞がニューレグリンに応答性であるかどうかを評価する工程;を包含し、
該被験体の心臓前駆細胞が応答性である場合、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を投与する、
ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメント。
(項目48)
心臓組織再生の必要性のある被験体を処置するための方法における使用のためのニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントであって、ここで該被験体は、項目1または45に記載の方法によって、心臓傷害の処置または防止から利益を得る被験体であると同定されたことがある、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメント。
(項目49)
心臓傷害を処置または防止するための方法における使用のためのニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントであって、該方法は、
a)ヒト心臓前駆細胞を、心臓傷害を有するかまたは心臓傷害のリスクのある被験体から単離する工程;
b)線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制すること、ならびに/または心筋細胞への該心臓前駆細胞の分化を促進することによって、該被験体の心臓前駆細胞が、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに応答するかどうかを評価する工程;ならびに
c)該心臓前駆細胞が応答性である場合、ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを投与して、心臓傷害を処置または防止またはその重篤度を低減する工程、
を包含する、
ニューレグリンペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメント。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A図1は、ErbB2およびErbB3レセプターを発現するマウスSca-1posCD31neg心臓前駆細胞を示す。図1Aは、磁性活性化前(左パネル)および後(右パネル)のセルソーティングの、心臓前駆細胞の単離された亜集団の純度を示す代表的フローサイトメトリーヒストグラムを示す。図1Bは、心臓前駆細胞におけるErbBレセプターのmRNA発現のプロフィールを示す。図1Cは、Sca-1pos/CD31neg心臓前駆細胞上の細胞表面マーカーの代表的フローサイトメトリーヒストグラムを示す。影付きの領域は、相当するアイソタイプマッチ抗体コントロールで処理した細胞の蛍光を表す。
図1B図1は、ErbB2およびErbB3レセプターを発現するマウスSca-1posCD31neg心臓前駆細胞を示す。図1Aは、磁性活性化前(左パネル)および後(右パネル)のセルソーティングの、心臓前駆細胞の単離された亜集団の純度を示す代表的フローサイトメトリーヒストグラムを示す。図1Bは、心臓前駆細胞におけるErbBレセプターのmRNA発現のプロフィールを示す。図1Cは、Sca-1pos/CD31neg心臓前駆細胞上の細胞表面マーカーの代表的フローサイトメトリーヒストグラムを示す。影付きの領域は、相当するアイソタイプマッチ抗体コントロールで処理した細胞の蛍光を表す。
図1C図1は、ErbB2およびErbB3レセプターを発現するマウスSca-1posCD31neg心臓前駆細胞を示す。図1Aは、磁性活性化前(左パネル)および後(右パネル)のセルソーティングの、心臓前駆細胞の単離された亜集団の純度を示す代表的フローサイトメトリーヒストグラムを示す。図1Bは、心臓前駆細胞におけるErbBレセプターのmRNA発現のプロフィールを示す。図1Cは、Sca-1pos/CD31neg心臓前駆細胞上の細胞表面マーカーの代表的フローサイトメトリーヒストグラムを示す。影付きの領域は、相当するアイソタイプマッチ抗体コントロールで処理した細胞の蛍光を表す。
【0026】
図2A図2は、マウスSca-1posCD31neg心臓前駆細胞が、インビトロで内皮細胞および心筋細胞に向かって分化することを示す。図2Aは、増殖培地(左パネル)もしくは内皮細胞(EC)分化培地(中央パネル)中での心臓前駆細胞のインキュベーション後の、毛細管様構造の形成の例示的な顕微鏡視野心を示す。CD31pos心臓内皮細胞を、陽性コントロールとして使用した(右パネル)。図2Bは、増殖培地(コントロール、左のバー)中で、または内皮細胞分化培地(diff、中央のバー)中でインキュベートした心臓前駆細胞、および心臓内皮細胞(EC、右のバー)の形態発生活性(morphogenic activity)のグラフ表示を示す。毛細管形成を、それらの全長を測定することによって評価した。図2Cは、通常増殖培地(Con)中でまたは心筋細胞分化培地(Diff)中で1週間または3週間(w)にわたって培養した心臓Sca-1posCD31neg細胞の心臓特異的遺伝子発現の例示的リアルタイムPCR分析を図示する。その値は、3回の実験の平均である。cTnT、心臓トロポニンT;-MHC、-ミオシン重鎖。
図2B図2は、マウスSca-1posCD31neg心臓前駆細胞が、インビトロで内皮細胞および心筋細胞に向かって分化することを示す。図2Aは、増殖培地(左パネル)もしくは内皮細胞(EC)分化培地(中央パネル)中での心臓前駆細胞のインキュベーション後の、毛細管様構造の形成の例示的な顕微鏡視野心を示す。CD31pos心臓内皮細胞を、陽性コントロールとして使用した(右パネル)。図2Bは、増殖培地(コントロール、左のバー)中で、または内皮細胞分化培地(diff、中央のバー)中でインキュベートした心臓前駆細胞、および心臓内皮細胞(EC、右のバー)の形態発生活性(morphogenic activity)のグラフ表示を示す。毛細管形成を、それらの全長を測定することによって評価した。図2Cは、通常増殖培地(Con)中でまたは心筋細胞分化培地(Diff)中で1週間または3週間(w)にわたって培養した心臓Sca-1posCD31neg細胞の心臓特異的遺伝子発現の例示的リアルタイムPCR分析を図示する。その値は、3回の実験の平均である。cTnT、心臓トロポニンT;-MHC、-ミオシン重鎖。
図2C図2は、マウスSca-1posCD31neg心臓前駆細胞が、インビトロで内皮細胞および心筋細胞に向かって分化することを示す。図2Aは、増殖培地(左パネル)もしくは内皮細胞(EC)分化培地(中央パネル)中での心臓前駆細胞のインキュベーション後の、毛細管様構造の形成の例示的な顕微鏡視野心を示す。CD31pos心臓内皮細胞を、陽性コントロールとして使用した(右パネル)。図2Bは、増殖培地(コントロール、左のバー)中で、または内皮細胞分化培地(diff、中央のバー)中でインキュベートした心臓前駆細胞、および心臓内皮細胞(EC、右のバー)の形態発生活性(morphogenic activity)のグラフ表示を示す。毛細管形成を、それらの全長を測定することによって評価した。図2Cは、通常増殖培地(Con)中でまたは心筋細胞分化培地(Diff)中で1週間または3週間(w)にわたって培養した心臓Sca-1posCD31neg細胞の心臓特異的遺伝子発現の例示的リアルタイムPCR分析を図示する。その値は、3回の実験の平均である。cTnT、心臓トロポニンT;-MHC、-ミオシン重鎖。
【0027】
図3A図3は、NRG-1が、筋線維芽細胞へのマウス心臓前駆細胞の移行を防止することを示す。図3Aは、マウスにおける実験的心筋梗塞後7日目(D7、MI)に、インビボでαSMA陽性およびコラーゲン1生成筋線維芽細胞に向かう心臓前駆細胞の蓄積が存在することを示す、代表的なフローサイトメトリードットブロットを示す。図3Bは、αSMA陽性(左)およびコラーゲン1α陽性(右)のSca-1posCD31neg心臓前駆細胞のフローサイトメトリー分析からのデータのグラフ表示を示す。P値が示される(対応のないt検定)。図3Cは、TGFβ単独(TGFβ)とともに、または30ng/ml NRG-1と組み合わせて(TGFβ+NRG-1)、48時間インキュベートした心臓前駆細胞におけるαSMAタンパク質の発現を示す、代表的な細胞蛍光グラフィックドットプロットを示す。図3Dは、フローサイトメトリーによって評価されるように、心臓Sca-1posCD31neg前駆細胞におけるαSMA発現の平均蛍光強度を示す。データは、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。P値は、t検定によって計算された有意レベルを示す。
図3B図3は、NRG-1が、筋線維芽細胞へのマウス心臓前駆細胞の移行を防止することを示す。図3Aは、マウスにおける実験的心筋梗塞後7日目(D7、MI)に、インビボでαSMA陽性およびコラーゲン1生成筋線維芽細胞に向かう心臓前駆細胞の蓄積が存在することを示す、代表的なフローサイトメトリードットブロットを示す。図3Bは、αSMA陽性(左)およびコラーゲン1α陽性(右)のSca-1posCD31neg心臓前駆細胞のフローサイトメトリー分析からのデータのグラフ表示を示す。P値が示される(対応のないt検定)。図3Cは、TGFβ単独(TGFβ)とともに、または30ng/ml NRG-1と組み合わせて(TGFβ+NRG-1)、48時間インキュベートした心臓前駆細胞におけるαSMAタンパク質の発現を示す、代表的な細胞蛍光グラフィックドットプロットを示す。図3Dは、フローサイトメトリーによって評価されるように、心臓Sca-1posCD31neg前駆細胞におけるαSMA発現の平均蛍光強度を示す。データは、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。P値は、t検定によって計算された有意レベルを示す。
図3C図3は、NRG-1が、筋線維芽細胞へのマウス心臓前駆細胞の移行を防止することを示す。図3Aは、マウスにおける実験的心筋梗塞後7日目(D7、MI)に、インビボでαSMA陽性およびコラーゲン1生成筋線維芽細胞に向かう心臓前駆細胞の蓄積が存在することを示す、代表的なフローサイトメトリードットブロットを示す。図3Bは、αSMA陽性(左)およびコラーゲン1α陽性(右)のSca-1posCD31neg心臓前駆細胞のフローサイトメトリー分析からのデータのグラフ表示を示す。P値が示される(対応のないt検定)。図3Cは、TGFβ単独(TGFβ)とともに、または30ng/ml NRG-1と組み合わせて(TGFβ+NRG-1)、48時間インキュベートした心臓前駆細胞におけるαSMAタンパク質の発現を示す、代表的な細胞蛍光グラフィックドットプロットを示す。図3Dは、フローサイトメトリーによって評価されるように、心臓Sca-1posCD31neg前駆細胞におけるαSMA発現の平均蛍光強度を示す。データは、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。P値は、t検定によって計算された有意レベルを示す。
図3D図3は、NRG-1が、筋線維芽細胞へのマウス心臓前駆細胞の移行を防止することを示す。図3Aは、マウスにおける実験的心筋梗塞後7日目(D7、MI)に、インビボでαSMA陽性およびコラーゲン1生成筋線維芽細胞に向かう心臓前駆細胞の蓄積が存在することを示す、代表的なフローサイトメトリードットブロットを示す。図3Bは、αSMA陽性(左)およびコラーゲン1α陽性(右)のSca-1posCD31neg心臓前駆細胞のフローサイトメトリー分析からのデータのグラフ表示を示す。P値が示される(対応のないt検定)。図3Cは、TGFβ単独(TGFβ)とともに、または30ng/ml NRG-1と組み合わせて(TGFβ+NRG-1)、48時間インキュベートした心臓前駆細胞におけるαSMAタンパク質の発現を示す、代表的な細胞蛍光グラフィックドットプロットを示す。図3Dは、フローサイトメトリーによって評価されるように、心臓Sca-1posCD31neg前駆細胞におけるαSMA発現の平均蛍光強度を示す。データは、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。P値は、t検定によって計算された有意レベルを示す。
【0028】
図4図4は、ErbB2およびErbB3レセプターが、ヒト心臓における血管/血管周囲領域に位置することを示す。緑:ErbB2(左パネル)およびErbB3(右パネル)に関する染色(それぞれ、InvitrogenおよびSanta Cruz BiotechのAb);赤:ファロイジン;青:TO-PRO-3(核染色);黄色の矢印は、血管周囲染色を示す。
【0029】
図5A図5は、NRG-1が筋線維芽細胞へのヒト心臓前駆細胞の移行を防止することを示す。図5Aは、単一細胞由来クローンを再プレートした直後(d0、上パネル)および3日後(d3、下パネル)のヒト心臓前駆細胞の位相差顕微鏡写真を示す。スケールバー=100μm。図5Bは、1週間または2週間(w)にわたって、分化培地中で培養する前(C)および後のヒト心臓前駆細胞における心臓特異的遺伝子発現のリアルタイムPCR分析を示す。値は、3回の実験の平均である(対応のないt検定)。図5Cは、ヒト心臓前駆細胞上の細胞表面マーカーのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。影付きの領域は、相当するアイソタイプマッチ抗体コントロールで処理した細胞の蛍光を表す。
図5B図5は、NRG-1が筋線維芽細胞へのヒト心臓前駆細胞の移行を防止することを示す。図5Aは、単一細胞由来クローンを再プレートした直後(d0、上パネル)および3日後(d3、下パネル)のヒト心臓前駆細胞の位相差顕微鏡写真を示す。スケールバー=100μm。図5Bは、1週間または2週間(w)にわたって、分化培地中で培養する前(C)および後のヒト心臓前駆細胞における心臓特異的遺伝子発現のリアルタイムPCR分析を示す。値は、3回の実験の平均である(対応のないt検定)。図5Cは、ヒト心臓前駆細胞上の細胞表面マーカーのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。影付きの領域は、相当するアイソタイプマッチ抗体コントロールで処理した細胞の蛍光を表す。
図5C図5は、NRG-1が筋線維芽細胞へのヒト心臓前駆細胞の移行を防止することを示す。図5Aは、単一細胞由来クローンを再プレートした直後(d0、上パネル)および3日後(d3、下パネル)のヒト心臓前駆細胞の位相差顕微鏡写真を示す。スケールバー=100μm。図5Bは、1週間または2週間(w)にわたって、分化培地中で培養する前(C)および後のヒト心臓前駆細胞における心臓特異的遺伝子発現のリアルタイムPCR分析を示す。値は、3回の実験の平均である(対応のないt検定)。図5Cは、ヒト心臓前駆細胞上の細胞表面マーカーのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。影付きの領域は、相当するアイソタイプマッチ抗体コントロールで処理した細胞の蛍光を表す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
例示的実施形態
本開示がより容易に理解され得るために、ある特定の用語が、最初に定義される。これらの定義は、本開示の残りに鑑みて、および当業者によって理解されるものとして読まれるべきである。別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらなる定義は、詳細な説明全体を通じて示される。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「1つの、ある(a)」実体または「1つの、ある(an)」実体とは、その実体の1もしくはこれより多くに言及する。例えば、「1つのペプチド(a peptide)」への言及は、2もしくはこれより多くのこのようなペプチドの混合物などを含む。よって、用語「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、「1もしくはこれより多くの」および「少なくとも1つ」は、交換可能に使用され得る。例えば、「1つの用量(a dose)」は、1もしくはこれより多くの用量を含む。さらに、状況によって別段要求されなければ、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、示された値±別の量である;それによって、ある範囲の値が確立される。ある特定の好ましい実施形態において、「約」は、基底の(またはコアのもしくは基準の)値に対する範囲、または15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.75%、0.5%、0.25%もしくは0.1%までの±の量を示す。
【0033】
語句「および/または」は、リストの中の要素間で使用される場合、(1)列挙される要素のみが存在すること、または(2)そのリストのうちの1より多くの要素が存在すること、のいずれかを意味することが意図される。例えば、「A、B、および/またはC」は、選択が、A単独;B単独;C単独;AおよびB;AおよびC;BおよびC;またはA、B、およびCであってもよいことを示す。語句「および/または」は、リストの中のエレメント「のうちの少なくとも1つ」またはリストの中のエレメント「のうちの1もしくはこれより多く」と交換可能に使用され得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「心臓毒性の」とは、心筋細胞を直接的または間接的に損なうかまたは死滅させることによって、心機能を低減する化合物に言及する。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「賦形剤」とは、活性成分の投与をさらに容易にするために、薬学的組成物へと添加される不活性物質をいう。例としては、炭酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖およびデンプンのタイプ、セルロース誘導体、ゼラチン、植物性オイル、ポリエチレングリコール、および界面活性剤(例えば、ポリソルベート20が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「間欠的または不連続の投与」とは、その間隔/レジメンが少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長い限りにおいて、少なくとも(またはこれ以上)24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く、またはこれらの任意の組み合わせもしくはその増分の間隔での投与のレジメンを含む。例えば、上記ペプチドは、少なくとも2週間、例えば、少なくとも2週間、3週間、もしくは4週間にわたる投与間隔で投与される。例えば、その投与間隔は、4ヶ月より長い。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「NRGペプチド」とは、心臓前駆細胞上の少なくともErbB3に結合しかつErbBシグナル伝達を活性化するペプチドをいう。NRGペプチドとしては、NRG-1、NRG-2、または少なくともErbB3レセプターに結合し、かつErbB2レセプターを動員して、ErbBシグナル伝達をもたらす上皮増殖因子(EGF)様ドメイン含有ペプチドが挙げられる。「EGF様ドメイン含有ペプチド」とは、例えば、Holmesら, 1992;米国特許第5,530,109号;米国特許第5,716,930号;米国特許第7,037,888号;Hijaziら, 1998; Changら, 1997; Carrawayら, 1997; Higashiyamaら, 1997;およびWO 97/09425に開示されるように、EGFレセプター結合ドメインに対する構造類似性を有する。NRG-1ペプチドは、米国特許第5,530,109号;米国特許第5,716,930号;および米国特許第7,037,888号(これらの各々は、その全体において本明細書に参考として援用される)に記載される。NRG-2ペプチドは、米国特許第8,114,838号(その全体において本明細書に参考として援用される)に記載される。いくつかの実施形態において、上記NRG-2ペプチドは、NRG-2αである。いくつかの実施形態において、上記NRG-2ペプチドは、NRG-2βである。ある特定の実施形態において、本発明の方法において使用されるNRGペプチドは、NRG-1βペプチド、例えば、アイソフォームGGF2(配列番号1もしくは配列番号2)またはその機能的改変体もしくはフラグメントである。他の実施形態において、本発明の方法において使用されるNRGペプチドは、NRG-2ペプチド(例えば、NRG-2α(配列番号21)もしくはNRG-2β(配列番号22)、またはその機能的改変体もしくはフラグメントのような)である。用語「NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメント」とは、本明細書で記載されるとおりのNRGペプチド、NRGペプチドの機能的改変体、NRGペプチドの機能的フラグメント、またはNRGペプチドの機能的改変体の機能的フラグメントを含むことが意味される。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語NRGペプチドの「機能的改変体」とは、EGF様ドメインを有しかつErbB3に結合し、ErbB2を動員し、NGR/ErbBシグナル伝達を誘導し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の抑制された変換、ならびに/または心筋細胞への心臓前駆細胞の優先的分化をもたらすペプチドを意味する。NRGの機能的改変体は、GGF2に対して実質的な配列類似性を有し得る。いくつかの実施形態において、NRGペプチドの機能的改変体は、配列番号1、配列番号2、配列番号21、もしくは配列番号22またはその機能的フラグメントと80%、82%,85%、88%、90%、92%、95%、98%、もしくは99%同一である。いくつかの実施形態において、上記改変体は、アミノ酸置換、欠失、もしくは挿入によって、配列番号1、配列番号2、配列番号21、もしくは配列番号22の相当する部分とは異なる。いくつかの実施形態において、改変体は、アミノ酸の保存的置換によってのみ、配列番号1、配列番号2、配列番号21、もしくは配列番号22とは異なる。いくつかの実施形態において、改変体は、25個未満、20個未満、15個未満、12個未満、10個未満、8個未満、5個未満、2個未満のアミノ酸置換(これは保存的置換であり得る)によって、配列番号1、配列番号2、配列番号21、もしくは配列番号22の相当する部分とは異なる。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語NRGペプチドの「機能的フラグメント」とは、NRGペプチドの任意の短縮された部分であって、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号21、もしくは配列番号22のアミノ酸配列、またはその機能的改変体を有し、心臓前駆細胞上の少なくともErbB3に結合しかつNRG/ErbBシグナル伝達を活性化する能力を保持し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の抑制された変換ならびに/または心筋細胞への心臓前駆細胞の優先的分化を生じるものに言及する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ニューレグリンに応答性」および「ニューレグリンでの処置に応答性」とは、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントへの曝露の際、心臓細胞へと優先的に分化する、ならびに/または線維芽細胞もしくは筋線維芽細胞への低減した分化を示す心臓前駆細胞に言及する。
【0041】
本明細書で使用される場合、語句「生理学的に受容可能なキャリア」および「薬学的に受容可能なキャリア」とは、交換可能に使用され得、生物に顕著な刺激を引き起こさずかつ投与される細菌化合物の生物学的活性および特性を排除しない、キャリアまたは希釈剤をいう。アジュバントは、これらの語句の下で含まれる。
【0042】
上記ペプチドならびにこれらの機能的改変体およびフラグメントは、精製および/または単離される。本明細書で使用される場合、「単離された」または「精製された」ペプチド、改変体、またはフラグメントは、組換え技術によって生成される場合には、他の細胞物質も培養培地も、または化学合成される場合には、化学的前駆体も他の化学物質も、実質的に含まない。精製された化合物は、目的の化合物の少なくとも60重量%(乾燥重量)である。好ましくは、その調製物は、目的の化合物の重量で、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも99%である。例えば、精製された化合物は、所望の化合物の重量で少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%、または100%(w/w)であるものである。純度は、任意の適切な標準的方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クラマトグラフィー(HPLC)分析によって、測定される。精製または単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然に存在する状態において隣接している遺伝子または配列を含まない。精製または単離されたペプチドは、その天然に存在する状態において隣接しているアミノ酸または配列を含まない。精製された、はまた、ヒト被験体への投与にとって安全である程度の無菌性(例えば、感染性因子もしくは毒性因子がない)を規定する。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「防止する」とは、心臓傷害から生じる線維症および瘢痕組織の発生を最小限にするか、または部分的にもしくは完全に阻害することを意味する。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「再生」とは、機能が障害された場所である失われたもしくは損傷を受けた細胞、組織または器官に対する機能の回復に言及する。再生能力は、上記細胞、組織または器官の機能として測定され得る。このような機能は、タンパク質の発現、組織リモデリング、血管新生/脈管新生の誘導、肥大の低減、および組織もしくは器官としての調和した機能、収縮および弛緩であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記器官の機能のうちの少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%もしくは100%が、再生される。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「定常状態レベル」とは、外因性の因子のレベル(例えば、投与と排出との間で平衡に(続いて起こる用量間の変動の範囲内で)達するために十分なペプチド)に言及する。「定常状態の治療剤レベルを維持する」とは、被験体に治療上の利益を与えるために十分なレベルで、外因性因子の濃度を持続させることをいう。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「治療上有効な量」とは、薬物もしくは薬剤(例えば、本明細書で記載されるNRGペプチド(例えば、NRG-1β、特に、GGF2、例えば、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド、またはその機能的改変体もしくはフラグメント)のある量が、生成される筋線維芽細胞の数の低減を誘発するおよび/または内因性心臓前駆細胞もしくは共投与される心臓前駆細胞から生じる筋細胞の数を増大させることを意味することが意図される。「治療上有効な量」とは、心臓組織の健康状態および完全性を改善もしくは維持する、心臓傷害もしくは線維症と関連する症状の発生率を低減もしくは少なくするために、特定の身体機能の障害を生じる心臓傷害と関連する疾患もしくは傷害において身体機能を正常にするために、または心臓傷害が関わる疾患の臨床上測定されたパラメーターのうちの1もしくはこれより多くにおける改善を提供するために、十分な量である。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」とは、本明細書で記載されるNRGペプチド(例えば、NRG-1β、特に、アイソフォームGGF2、例えば、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド、またはその機能的改変体もしくはフラグメント)の投与が、NRGに応答性である心臓前駆細胞を有することが見出された被験体において統計的に有意な様式で、処置の非存在下で起こる心臓傷害の進行を遅らせるかまたは阻害することを意味する。周知の徴候(例えば、左室駆出率、運動遂行、僧帽弁逆流、呼吸困難、末梢浮腫、および上記で列挙されるとおりの他の臨床検査)、ならびに生存率および入院率は、疾患進行を評価するために使用され得る。処置が心臓傷害進行を統計的に有意な様式で遅らせるかまたは阻害するか否かは、当該分野で周知の方法によって決定され得る(例えば、SOLVD Investigators, 1992およびCohnら, 1998(本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。
【0048】
心臓前駆細胞におけるNRG/ErbBシグナル伝達
通常は、心臓線維芽細胞の活性化に起因する線維症は、心臓傷害後に、心臓再生を妨げ、収縮機能の喪失、病的リモデリング、ならびに心不全および心筋梗塞への罹病性に寄与する。哺乳動物の心臓は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを投与することによって、心臓傷害後に天然の再生能力を最大化するように刺激され得ることがいまや見出された。いくつかの実施形態において、その患者は、天然の心臓前駆細胞の供給を有するとして以前の手順によって同定された。あるいは、この天然の再生可能性は、ヒト心臓前駆細胞またはヒト胚性幹細胞の共投与(同時または逐次的、連続してまたは間欠的に)によって補充され得る。理想的には、共投与される心臓前駆細胞は、処置されている被験体から元々得られた。
【0049】
NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの投与は、被験体において、心筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する。
【0050】
ある特定の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を被験体に投与する工程は、投与後少なくとも12週間、少なくとも10週間、少なくとも8週間、少なくとも6週間、少なくとも4週間、少なくとも2週間または少なくとも1週間の期間にわたって、心筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する。他の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を被験体に投与する工程は、投与後少なくとも10日間、少なくとも9日間、少なくとも8日間、少なくとも7日間、少なくとも6日間、少なくとも5日間、少なくとも4日間、少なくとも3日間、少なくとも2日間または少なくとも1日間の期間にわたって、心筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する。別の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量を被験体に投与する工程は、投与後少なくとも70時間、少なくとも60時間、少なくとも50時間、少なくとも40時間、少なくとも30時間、少なくとも20時間、少なくとも15時間、少なくとも10時間、少なくとも5時間、少なくとも4時間、少なくとも3時間、少なくとも2時間、または少なくとも1時間にわたって、心筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制する。
【0051】
別の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程は、心筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を少なくとも約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは100%促進する。
【0052】
さらに他の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程は、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を、約1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは100%程度抑制する。
【0053】
ある特定の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程は、心筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を少なくとも約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは100%促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を約1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは100%程度抑制する。
【0054】
ある特定の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程は、線維芽細胞の低減した生成および機能的心筋細胞の増大した生成を生じる。他の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程は、抗線維症効果を有する。
【0055】
ある特定の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程は、心筋線維症を抑制する。他の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程は、線維症促進遺伝子(pro-fibrotic gene)の発現を低減する。具体的な実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程は、コラーゲン、フィブリリン、オステオネクチン、ペリオスチン、およびベルシカンの発現を低減する。
【0056】
ある特定の実施形態において、被験体において、心筋細胞への心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制するための方法は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程、および心臓転写因子を発現するベクターを(同時に、逐次的に、連続して、または間欠的に)共投与する工程を包含する。ある特定の実施形態において、上記心臓転写因子は、GATA4、Hand2、MEF2C、MesP1、Nkx2-5、もしくはTbx5である。
【0057】
ある特定の実施形態において、心筋細胞への心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制するための方法は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを、がんに罹患している被験体に投与する工程を包含する。NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、化学療法剤の前、その後、または同時に投与され得る。それは、化学療法剤と同時にまたは逐次的に投与される。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、ハーセプチンである。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、以下から選択される:ベンダムスチン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ダカルバジン、イホスファミド、メルファラン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、テモゾロミド、アスパラギナーゼ、カペシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、アクチノマイシンD/ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ドキソルビシン(ペグ化リポソーム)、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、カペシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、アクチノマイシンD/ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ドキソルビシン(ペグ化リポソーム)、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、エトポシド、ドセタキセル、イリノテカン、パクリタキセル、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、アレムツズマブ(alemtuzamab)、BCG、ベバシズマブ、セツキシマブ、デノスマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、インターフェロン、イピリムマブ、ラパチニブ、パニツムマブ、リツキシマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、テムシロリムス、トラスツズマブ、クロドロネート、イバンドロン酸、パミドロネート、ゾレドロン酸(zolendronic acid)、アナストロゾール、アビラテロン、アミホスチン、ベキサロテン、ビカルタミド、ブセレリン、シプロテロン、デガレリクス、エキセメスタン、フルタミド、フォリン酸、フルベストラント、ゴセレリン、ランレオチド、レナリドミド、レトロゾール、リュープロレリン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メスナ、オクトレオチド、スチルベストロール(stilboestrol)、タモキシフェン、サリドマイドもしくはトリプトレリン。
【0058】
ある特定の実施形態において、被験体において、心筋細胞への心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制するための方法は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程、およびNRGに応答性であるヒト心臓前駆細胞を(同時に、逐次的に、連続して、または断続的に)共投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記ヒト心臓前駆細胞は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを再投与する前に、処置を受けている被験体から元々単離され、インビトロで拡大される。ある特定の実施形態において、本発明の方法において投与される心臓前駆細胞は、幹細胞抗原、c-kit、sca-1、isl-1、SSEA-IまたはABCG2を発現する。他の実施形態において、本明細書で提供される場合、心臓前駆細胞は、心臓特異的マーカー;例えば、NKx2.5、GATA4、α-MHCを発現する。好ましい実施形態において、上記心臓前駆細胞は、sca-1を発現する。他の実施形態において、上記心臓前駆細胞は、c-kitを発現しない。いくつかの実施形態において、上記心臓前駆細胞は、カルディオスフィア(cardiosphere)であり得る。
【0059】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される心臓前駆細胞は、心房および/または心室から得られる、心房および/または心室に投与される。より具体的な実施形態において、上記心臓前駆細胞は、左室から得られる、および/または左室に投与される。さらにより具体的な実施形態において、心臓前駆細胞は、左室自由壁、心臓の血管もしくは血管周囲領域から得られる、および/または左室自由壁、心臓の血管もしくは血管周囲領域に投与される。ある特定の実施形態において、得られるおよび/または投与される心臓前駆細胞は、sca-1を発現する。心臓前駆細胞は、当該分野で公知のまたは本明細書で開示される任意の手段によって単離され得る。
【0060】
ある特定の実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを被験体に投与する工程は、TGF-β活性化を制限し、線維芽細胞活性化を低減する。TGF-βには、3種のアイソフォームが存在し(TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3)、これらは、別個であるが、免疫、炎症、および組織修復において重なり合う機能を有し、TGF-βはまた、線維芽細胞活性化および筋線維芽細胞への分化において中心的な役割を有する。
【0061】
ニューレグリン
NRGは、ErbBレセプターに結合する上皮増殖因子スーパーファミリーに関連する増殖因子である。それらは、心不全、心臓毒性および虚血の複数のモデルにおいて心機能を改善することが示されてきた。NRGはまた、脳卒中、脊髄損傷、神経因子曝露、末梢神経損傷および化学毒性のモデルにおいて神経系を保護することが示された(総説に関しては、Sawyer and Caggiano, 2011を参照のこと)。
【0062】
NRGのファミリーメンバーは、NRG-1、NRG-2、NRG-3およびNRG-4遺伝子を含み、ErbBレセプターに結合しかつこれを活性化することを可能にするEGF様ドメインを有する。NRG遺伝子のうちの各々は、オルタナティブスプライシング転写物に起因して、複数の別個のタンパク質アイソフォームとして発現され得る(Falls, 2003)。NRGはまた、それらの生物学的活性を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換を有する改変体または機能的ホモログを含む。アミノ酸の適切な保存的置換は、当業者に公知であり、一般に、得られた分子の生物学的活性を変化させることなく作製され得る。
【0063】
Holmesら(1992)は、EGF様ドメインのみがErbBシグナル伝達に結合しかつ活性化するために十分であることを示した。よって、NRG-1、NRG-2、NRG-3、もしくはNRG-4の遺伝子によってコードされる任意のペプチド生成物、または任意のNRG様ペプチド(例えば、NRG遺伝子もしくはcDNAによってコードされるEGF様ドメインを有するペプチド(例えば、米国特許第5,530,109号、米国特許第5,716,930号、および米国特許第7,037,888に記載されるとおりのNRG-1ペプチドサブドメインC-C/DもしくはC-C/D’を含むEGF様ドメイン;またはWO 97/09425に開示されるとおりのEGF様ドメイン)は、心臓血管疾患(例えば、心不全)を防止、処置またはその進行を遅らせるために、本開示の方法において使用され得る。米国特許第5,530,109号;米国特許第5,716,930号;米国特許第7,037,888号;およびWO 97/09425の各々の内容は、その全体において本明細書に参考として援用される。
【0064】
NRG-1は、およそ15個の別個の構造的に関連するアイソフォームの群を含む(Lemke, 1996; Peles and Yarden, 1993)。いくつかの実施形態において、本開示の方法において使用されるペプチドまたはその機能的フラグメントは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、もしくは少なくとも15個のNRG-1アイソフォームを含む。これらのアイソフォームは、それらのN末端配列に基づいて、3つの群(I、IIまたはIII)に分けられ得る。本開示において、NRG-1の任意のアイソフォームが使用され得る。NRGアイソフォームは、分泌されるリガンドを直接もたらす短い転写物から生成され得るか、または合成されたリガンドであるか、または膜貫通前駆体タンパク質として合成される。
【0065】
NRG-1
いくつかの実施形態において、NRGペプチドは、NRG-1βまたはその機能的改変体もしくはフラグメントである。より具体的な実施形態において、NRG-1ペプチドまたはその機能的フラグメントは、NRG-1βアイソフォーム1、アイソフォーム2、アイソフォーム3、アイソフォーム4、アイソフォーム5、アイソフォーム6、アイソフォーム7、アイソフォーム8、アイソフォーム9、アイソフォーム10、アイソフォーム11、またはアイソフォーム12である。特に好ましい実施形態において、そのアイソフォームは、GGF2である。
【0066】
ある特定の実施形態において、上記NRG-1βペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、組換えタンパク質である。別の実施形態において、上記NRG-1βペプチドまたはその組換えフラグメントは、配列番号19のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質である。別の実施形態において、上記NRG-1βペプチドまたはその機能的フラグメントは、配列番号20のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質である。
【0067】
グリア増殖因子2
いくつかの実施形態において、上記NRGペプチドは、グリア増殖因子、GGF2である。成熟GGF2のアミノ酸配列は、配列番号1および配列番号2に示される。いくつかの実施形態において、ペプチドは、GGF2の機能的改変体もしくはフラグメントを含む。心臓前駆細胞上のErbB3レセプターに結合しかつ活性化し、ErbBシグナル伝達を活性化するGGF2の機能的フラグメントは、配列番号2の371アミノ酸もしくはこれより少ない、例えば、370アミノ酸、369アミノ酸、368アミノ酸、367アミノ酸、366アミノ酸、365アミノ酸、360アミノ酸、355アミノ酸、350アミノ酸、340アミノ酸、330アミノ酸、320アミノ酸、310アミノ酸、300アミノ酸、290アミノ酸、280アミノ酸、270アミノ酸、260アミノ酸、250アミノ酸、240アミノ酸、230アミノ酸、220アミノ酸、210アミノ酸、200アミノ酸、190アミノ酸、180アミノ酸、170アミノ酸、160アミノ酸、150アミノ酸、140アミノ酸、130アミノ酸、120アミノ酸、110アミノ酸、100アミノ酸、90アミノ酸、80アミノ酸、70アミノ酸、60アミノ酸、55アミノ酸、50アミノ酸、45アミノ酸、40アミノ酸、35アミノ酸、30アミノ酸、25アミノ酸、20アミノ酸、もしくはこれより少ないアミノ酸を含み得る。
【0068】
GGF2の機能的改変体は、心臓前駆細胞上のErbB3レセプターに結合しかつこれを活性化し、ErbBシグナル伝達を活性化する。本発明の方法において使用される改変体GGF2は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10から選択されるアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態において、上記GGF2ペプチドは、配列番号2またはその機能的フラグメントと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0069】
NRG-2
いくつかの実施形態において、上記NRGペプチドは、NRG-2ペプチド、例えば、NRG-2αまたはNRG-2βである。NRG-2αのアミノ酸配列は、配列番号21に示され、NRG-2βのアミノ酸配列は、配列番号2に示される。いくつかの実施形態において、ペプチドは、NRG-2αまたはNRG-2βの機能的改変体もしくはフラグメントを含む。心臓前駆細胞上のErbB3レセプターに結合しかつこれを活性化し、ErbBシグナル伝達を活性化するNRG-2αの機能的フラグメントは、配列番号21の329アミノ酸もしくはこれより少ない、例えば、325アミノ酸、320アミノ酸、310アミノ酸、300アミノ酸、290アミノ酸、280アミノ酸、270アミノ酸、260アミノ酸、250アミノ酸、240アミノ酸、230アミノ酸、220アミノ酸、210アミノ酸、200アミノ酸、190アミノ酸、180アミノ酸、170アミノ酸、160アミノ酸、150アミノ酸、140アミノ酸、130アミノ酸、120アミノ酸、110アミノ酸、100アミノ酸、90アミノ酸、80アミノ酸、70アミノ酸、60アミノ酸、55アミノ酸、50アミノ酸、45アミノ酸、40アミノ酸、35アミノ酸、30アミノ酸、25アミノ酸、20アミノ酸、もしくはこれより少ないアミノ酸を含み得る。心臓前駆細胞上のErbB3レセプターに結合しかつこれを活性化し、ErbBシグナル伝達を活性化するNRG-2βの機能的フラグメントは、配列番号22の297アミノ酸もしくはこれより少ない、例えば、295アミノ酸、290アミノ酸、280アミノ酸、270アミノ酸、260アミノ酸、250アミノ酸、240アミノ酸、230アミノ酸、220アミノ酸、210アミノ酸、200アミノ酸、190アミノ酸、180アミノ酸、170アミノ酸、160アミノ酸、150アミノ酸、140アミノ酸、130アミノ酸、120アミノ酸、110アミノ酸、100アミノ酸、90アミノ酸、80アミノ酸、70アミノ酸、60アミノ酸、55アミノ酸、50アミノ酸、45アミノ酸、40アミノ酸、35アミノ酸、30アミノ酸、25アミノ酸、20アミノ酸、もしくはこれより少ないアミノ酸を含み得る。
【0070】
NRG-2αまたはNRG-2βの機能的改変体は、心臓前駆細胞上のErbB3レセプターに結合しかつこれを活性化し、ErbBシグナル伝達を活性化する。本発明の方法において使用される改変体NRG-2αまたはNRG-2βは、配列番号21もしくは配列番号22、またはその機能的フラグメントと80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0071】
EGF様ドメイン
本開示の方法における使用に適したNRG改変体ペプチドまたはその機能的フラグメントは、EGF様ドメイン含有ペプチドを含む。いくつかの実施形態において、上記EGF様ドメイン含有ペプチドは、配列番号11または配列番号12のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明の方法において使用されるNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、NRG-1β、特にGGF2に由来するEGF様ドメインを含む。具体的な実施形態において、本発明の方法において使用されるNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、GGF2に由来するEGF様ドメインを含む。他の具体的実施形態において、本開示の方法において使用されるペプチドまたはその機能的フラグメントは、NRG-1β、特に、GGF2に由来するEGF様ドメインを含む。本発明の方法における使用に適した例示的なEGF様ドメイン含有ペプチドは、配列番号13(EGFL1)、配列番号14(EGFL2)、配列番号15(EGFL3)、配列番号16(EGFL4)、配列番号17(EGFL5)、または配列番号18(EGFL6)に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0072】
組成物、投与および投与量
ある特定の実施形態において、本発明の方法における使用に適したNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、精製された組換えペプチドもしくは化学合成されたペプチドである。
【0073】
ある特定の実施形態において、本明細書で記載されるNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、被験体、例えば、ヒト、獣医学的被験体、または実験動物に、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアもしくは賦形剤とともに投与され得る。本開示の組成物は、単位剤形で提供され得る。治療製剤は、液体の液剤もしくは懸濁物の形態にあり得る;経口投与に関しては、製剤は、錠剤もしくはカプセル剤の形態にあり得る;そして鼻内製剤に関しては、散剤、点鼻剤もしくはエアロゾルの形態にあり得る。
【0074】
製剤を作成するための方法は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に見出される。非経口投与のための製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水、もしくは塩類溶液、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、植物起源のオイル、または水素化ナフタレンを含み得る。本開示の分子を投与するための他の潜在的に有用な非経口送達系としては、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み可能な注入システム、およびリポソームが挙げられる。吸入のための製剤は、賦形剤、例えば、ラクトースを含み得るか、または例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココレートおよびデオキシコレートを含む水性溶液であり得るか、または点鼻剤の形態において、もしくはゲルとしての、投与のための油性液剤であり得る。
【0075】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、間欠的にもしくは不連続に投与される。
【0076】
本開示によれば、本明細書で記載されるペプチドの間欠的もしくは不連続の投与は、投与レジメンを達成することに関し、ここでその投与されるペプチドの狭い定常状態濃度は維持されず、それによって、その哺乳動物が長い継続期間にわたって投与されるペプチドの超生理学的レベルを維持することから生じ得る都合の悪い副作用を経験する可能性は低減する。例えば、外因的に投与されるNRGの超生理学低レベルと関連する副作用は、神経鞘過形成、乳腺過形成、腎障害、精液減少症、肝酵素上昇、心臓弁の変化、および注射部位の皮膚の変化が挙げられる。
【0077】
好ましい実施形態において、本開示は、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの血清レベルにおける変動を誘発または許容し、従って、そのペプチドのより頻繁な投与と関連する有害副作用の可能性を低減する間欠的投与レジメンに関する。従って、本開示の間欠的投与レジメンは、哺乳動物に治療上の利点を与えるが、そのペプチドの定常状態治療レベルを維持しない。当業者によって理解されるように、間欠的投与を得るために、本開示の種々の実施形態がある;これら実施形態の利益は、種々の方法で述べられ得る。例えば、その投与する工程は、そのペプチドの定常状態治療レベルを維持しない、その投与する工程は、NRGペプチドをより頻繁に投与することに関連する有害副作用の可能性を低減するなど。
【0078】
ある特定の実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、その間隔/レジメンが、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長い限りにおいて、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く、またはこれらの任意の組み合わせもしくはその増分の投与間隔を提供する。ある特定の実施形態において、上記NRGペプチド、その機能的改変体もしくはフラグメントは、1ヶ月間あたりに少なくとも1回、2ヶ月間あたりに1回、3ヶ月間あたりに1回、または6ヶ月あたりに1回の投与間隔で投与される。例えば、上記ペプチドは、少なくとも2週間、例えば、少なくとも2週間、3週間、または4週間にわたる投与間隔で投与される。例えば、上記ペプチドは、4ヶ月間より長い投与間隔で投与される。
【0079】
いくつかの実施形態において、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量は、48時間、72時間、96時間、もしくはこれより長い時間の投与間隔で哺乳動物に投与される。好ましくは、投与レジメンは、72時間、96時間、もしくはこれより長い時間の投与間隔で哺乳動物に上記ペプチドの治療上有効な量を投与する工程を包含する。よって、本発明の方法は、その哺乳動物へのNRGペプチド、その機能的改変体もしくはフラグメントの間欠的または不連続の投与(72~96時間、またはさらに長い間隔ごと)を要求する。ここで上記ペプチドの投与は、上記哺乳動物における心不全を処置、防止、またはその進行を遅らせるために有効な量にある。NRG、例えば、GGF2またはその機能的フラグメントの投与レジメン、定常状態濃度を維持しない投与は、より頻繁な投与レジメンと同程度に等しく有効であるが、より頻繁な投与から生じ得る不都合も、コストも副作用もない。
【0080】
ある特定の実施形態において、本明細書において、用語間欠的または不連続の投与は、2週間ごとに少なくとも1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、1ヶ月間あたりに1回、2ヶ月間あたりに1回、3ヶ月間あたりに1回、4ヶ月間あたりに1回、5ヶ月間あたりに1回、6ヶ月間あたりに1回、7ヶ月間あたりに1回、8ヶ月間あたりに1回、9ヶ月間あたりに1回、10ヶ月間あたりに1回、11ヶ月間あたりに1回、または12ヶ月間あたりに1回投与するためのレジメンを含む。
【0081】
本明細書で記載される投与レジメンのある特定の実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、1ヶ月間ごとに1回、2ヶ月間ごとに1回、3ヶ月間ごとに1回、3.5ヶ月間ごとに1回、4ヶ月間ごとに1回、4.5ヶ月間ごとに1回、5ヶ月間ごとに1回、6ヶ月間ごとに1回、7ヶ月間ごとに1回、またはより頻度の少ない投与間隔で投与される。
【0082】
本開示の投与レジメンは、種々の要因(駆出率、左室駆出率、拡張末期容積、収縮末期容積、心臓容積、心臓重量、肝毒性、あるいは脳性ナトリウム利尿ペプチド、N末端脳性ナトリウム利尿ペプチド、および/もしくはトロポニン-Iの心臓組織または血液サンプルのいずれかにおける増大または低下したタンパク質発現レベルが挙げられるが、これらに限定されない)の評価に際して、開始され得るか、確立され得るか、またはその後改変され得る。本開示の投与レジメンはまた、心不全の1もしくはこれより多くの症状(例えば、息切れ、運動不耐性、入院、再入院、死亡率、および/もしくは罹患率)の評価、改良、または改善に際して、開始され得るか、確立され得るか、またはその後改変され得る。これらの要因のうちの1もしくはこれより多くの変化は、用量間の間隔が短すぎる、投与が頻繁すぎる、または投与経路が最適でない可能性があることを示し得る。他の場合には、これらの要因のうちの1もしくはこれより多くの変化は、最適用量および/または投与間隔が達成され、必要に応じて、維持され得ることを示し得る。
【0083】
場合によっては、肝毒性は、例えば、規則的な間隔でモニターされる。例えば、肝毒性は、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間ごとに、もしくはこれより長い期間ごとに、またはこれらの任意の組み合わせもしくはその増分ごとに評価される。
【0084】
場合によっては、グルコースレベル(例えば、被験体の血漿中、血清中、もしくは血中)が、規則的な間隔でモニターされる。例えば、肝毒性は、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間ごとに、もしくはこれより長い期間ごとに、またはこれらの任意の組み合わせもしくはその増分ごとに評価される。
【0085】
例えば、肝毒性および/またはグルコースレベルは、本明細書で記載される任意の投与レジメンで、例えば、漸増投与レジメン、漸減投与レジメン、および/または治療上有効な用量が維持される(および例えば、変更されない)投与レジメンで、モニターされる。
【0086】
従来の薬学実務は、適切な製剤もしくは組成物を提供するために、および被験体もしくは動物にこのような組成物を投与するために、使用される。任意の適切な投与経路が使用され得る(例えば、非経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、経皮投与、心臓内投与、腹腔内投与、鼻内投与、エアロゾル投与、経口投与、もしくは局所投与(例えば、皮膚を横断して、血流に入ることができる製剤を有する接着性のパッチを適用することによって))。例えば、投与経路は、静脈内もしくは皮下の注射/注入である。例えば、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、本明細書で記載される経路(例えば、静脈内もしくは皮下の注射/注入)によって投与され得る。他の例では、上記組成物は、カテーテル、ポンプ送達システム、もしくはステントを介して送達される。
【0087】
NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメント(例えば、静脈内注射もしくは皮下注射のように、注射を介して投与される)の用量レベルは、約0.001mg/kg~約4mg/kg 体重の範囲に及ぶ。例えば、上記ペプチドの用量レベルは、約0.001mg/kg~約1.5mg/kg、約0.007mg/kg~約1.5mg/kg、約0.001mg/kg~約0.02mg/kg、約0.02mg/kg~約0.06mg/kg、約0.06mg/kg~約0.1mg/kg、約0.1mg/kg~約0.3mg/kg、約0.02mg/kg~約0.75mg/kg、約0.3mg/kg~約0.5mg/kg、約0.5mg/kg~約0.7mg/kg、約0.5mg/kg~約1.0mg/kg、約0.7mg/kg~約1.0mg/kg、約0.3mg/kg~約4mg/kg、約0.3mg/kg~約3.5mg/kg、約1.0mg/kg~約1.5mg/kg、または約1mg/kg~約10mg/kgの範囲に及ぶ。
【0088】
場合によっては、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの用量レベルは、約1.5mg/kg 体重に等しいかもしくはこれより小さく、例えば、約0.8mg/kgに等しいかもしくはこれより小さいか、または約0.756mg/kg 体重より小さい。
【0089】
例えば、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの用量レベルは、約0.007mg/kg、約0.02mg/kg、約0.06mg/kg、約0.19mg/kg、約0.38mg/kg、約0.76mg/kg、もしくは約1.5mg/kg 体重、例えば、0.007mg/kg、0.021mg/kg、0.063mg/kg 0.189mg/kg、0.378mg/kg、0.756mg/kg、もしくは1.512mg/kg 体重を含む。
【0090】
いくつかの例では、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く、またはこれらの任意の組み合わせもしくはその増分の投与間隔で、約0.005mg/kg~約4mg/kg 体重の用量レベルで投与される。
【0091】
他の例では、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く、またはこれらの任意の組み合わせもしくはその増分の投与間隔で、約0.007mg/kg、約0.02mg/kg、約0.06mg/kg、約0.19mg/kg、約0.38mg/kg、約0.76mg/kg、もしくは約1.5mg/kg 体重の用量レベルで投与される。
【0092】
場合によっては、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く、またはこれらの任意の組み合わせもしくはその増分の投与間隔で、0.007mg/kg、0.021mg/kg、0.063mg/kg、0.189mg/kg、0.378mg/kg、0.756mg/kg、もしくは1.512mg/kg 体重の用量レベルで投与される。
【0093】
他の場合には、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く、またはこれらの任意の組み合わせもしくはその増分の投与間隔で、約0.35mg/kg~約3.5mg/kg 体重、例えば、約3.5mg/kg、約1.75mg/kg、約0.875mg/kg、もしくは約0.35mg/kg 体重の用量レベルで投与される。
【0094】
いくつかの実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量は、約0.06mg/kg 体重~約0.38mg/kg 体重であり、上記投与間隔は、少なくとも2週間、例えば、少なくとも2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長い。例えば、本明細書で提供されるペプチドの治療上有効な量は、約0.063mg/kg、約0.189mg/kg、もしくは約0.375mg/kgである。例えば、約0.063mg/kg、約0.189mg/kg、もしくは約0.375mg/kgという上記ペプチドの治療上有効な量は、例えば、心不全を防止、処置、またはその進行を遅らせるために、静脈内の注射もしくは注入を介して投与される。
【0095】
場合によっては、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、少なくとも24時間、例えば、少なくとも24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く、またはこれらの任意の組み合わせもしくはその増分の投与間隔で、約0.056mg/kg~約0.57mg/kg 体重、例えば、約0.056mg/kg、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、もしくは約0.57mg/kgの用量レベルで投与される。
【0096】
上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの用量レベルは、上記の経路(例えば、静脈内もしくは皮下の注射/注入)を介して投与される。
【0097】
上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの用量レベルは、皮下経路によって投与される場合、静脈内経路によって投与される場合の同じペプチドの用量レベルに等しいかもしくはこれより高い可能性がある。さらに、用量間の間隔の長さは低減し得るか、または投与の頻度は、上記ペプチドが皮下経路によって投与される場合、静脈内経路と比較して増大し得る。ある特定の実施形態において、静脈内経路によって、およびその後肝毒性を示す肝酵素の増大を示す本開示のペプチドを受ける被験体は、皮下経路によって上記ペプチドの等しいもしくはより高い用量を使用して処置され得る。
【0098】
経皮用量は一般に、注射用量を使用して達成されるものに類似のもしくはより低い血中レベルを提供するために選択される。
【0099】
本開示のいくつかの投与レジメンにおいて、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの初期用量が上記被験体に投与され、そしてその後の用量(例えば、第2の用量、第3の用量、第4の用量など)が、本明細書で記載される投与間隔で上記被験体に投与される。場合によっては、上記初期用量は、その後の用量のうちの1もしくはこれより多くと同じである。例えば、上記初期用量は、全てのその後の用量と同じである。場合によっては、上記初期用量は、例えば、本明細書で記載される漸増投与レジメンによって提供されるように、その後の用量のうちの1もしくはこれより多くより低い。他の場合には、上記初期用量は、例えば、本明細書で記載される漸減投与レジメンによって提供されるように、その後の用量のうちの1もしくはこれより多くより高い。
【0100】
併用処置
上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、単独の活性薬剤として投与され得るか、またはそれらは、ヒト心臓前駆細胞もしくはヒト胚性幹細胞と組み合わせて投与され得る。さらなる薬剤は、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントと、他の化合物(例えば、同じもしくは類似の治療活性を示し、このような組み合わされた投与に関して安全かつ効果的であることが決定されるペプチド)を含め、ヒト心臓前駆細胞とともにもしくはなしで投与され得る。CHFの処置のために使用される他のこのような化合物としては、以下が挙げられる:脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP);スタチン(例えば、アトロバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、もしくはシンバスタチン);特定の神経ホルモンの形成もしくは作用をブロックする薬物(例えば、アンギオテンシン変換酵素インヒビター(ACEインヒビター)、アンギオテンシンレセプターアンタゴニスト(ARB)、アルドステロンアンタゴニストおよびβアドレナリン作動性レセプターブロッカー);心収縮性を増強するための変力物質(例えば、ドブタミン、ジゴキシン);血管拡張薬(例えば、ニトレート、ネシリチド);うっ血を低減するための利尿薬(例えば、フロセミド);1もしくはこれより多くの抗高血圧薬(例えば、βブロッカー、ACEインヒビターおよびARB);ニトレート(例えば、二硝酸イソソルビド);ヒドラジン;ならびに/またはカルシウムチャネルブロッカー。
【0101】
特定の実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは改変体は、ヒト心臓前駆細胞の共投与とともにもしくはなしで、アザシチジンと組み合わせて被験体に投与され得る。いくつかの実施形態において、アザシチジンは、本明細書で記載されるとおりのNRGペプチド(例えば、NRG-1β、特に、GGF2、NRG-2α、もしくはNRG-2β、またはその機能的改変体もしくはフラグメントのような)と同時に投与される。他の実施形態において、アザシチジンは、上記NRGペプチドもしくはその機能的フラグメントを投与する前に、投与する間に、または投与した後に、投与される。いくつかの実施形態において、アザシチジンは、心臓前駆細胞の分化を促進する。より具体的な実施形態において、アザシチジンは、筋細胞への心臓前駆細胞の分化を促進する。
【0102】
いくつかの実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは改変体は、ヒト心臓前駆細胞の共投与とともにもしくはなしで、ベンゾジアゼピン薬物と組み合わせて投与され得る。上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントおよび上記ベンゾジアゼピン薬物は、同じ組成物の中に、または代わりに同じ処置の一部としておよび/もしくはEGF様ドメインを含むペプチドと同じ投与レジメンに従って、被験体に投与され得る。ベンゾジアゼピン薬物は、ベンゼン環およびジアゼピン環の縮合から生じる。ベンゾジアゼピン薬物は、短時間作用性、中間型作用性、もしくは長時間作用性として分類され得る。ベンゾジアゼピン薬物は、不安寛解特性、鎮静特性、催眠特性、筋弛緩特性、健忘特性、抗癲癇特性、および抗高血圧特性を共有する。本開示の例示的なベンゾジアゼピン薬物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アルプラゾラム、ブレタゼニル、ブロマゼパム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド(chlorodiazepoxide)、シノラゼパム、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸(clorazepate)、クロチアゼパム、クロキサゾラム、デロラゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、エスゾピクロン、エチゾラム、ロフラゼプ酸エチル、フルマゼニル、フルニトラゼパム、5-(2-ブロモフェニル)-7-フルオロ-1H-ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン-2(3H)-オン、フルラゼパム、フルトプラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム(ketazolam)、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、フェナゼパム、ピナゼパム、プラゼパム、プレマゼパム、ピラゾラム(purazolam)、クアゼパム、テマゼパム、テトラゼパム、トリアゾラム、ザレプロン、ゾルピデム、およびゾピクロン。以下の例示的ベンゾジアゼピン薬物は、不安寛解特性を有し得る:アルプラゾラム、ブレタゼニル、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、クロチアゼパム、クロキサゾラム、デロラゼパム、ジアゼパム、エチゾラム、ロフラゼプ酸エチル、ハラゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、メダゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、フェナゼパム、ピナゼパム、プラゼパム、プレマゼパム、およびピラゾラム。以下の例示的ベンゾジアゼピン薬物は、抗癲癇特性を有し得る:ブレタゼニル、クロナゼパム、クロラゼプ酸、クロキサゾラム、ジアゼパム、フルトプラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、およびフェナゼパム。以下の例示的ベンゾジアゼピン薬物は、催眠特性を有し得る:ブロチゾラム、エスタゾラム、エスゾピクロン、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルトプラゼパム、ロプラゾラム、ロルメタゼパム、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、ザレプロン、ゾルピデム、およびゾピクロン。以下の例示的ベンゾジアゼピン薬物は、鎮静特性を有し得る:シノラゼパム。以下の例示的ベンゾジアゼピン薬物は、筋弛緩特性を有し得る:ジアゼパムおよびテトラゼパム。
【0103】
特定の実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは改変体は、ヒト心臓前駆細胞の共投与とともにもしくはなしで、ミダゾラムと組み合わせて被験体に投与され得る。ミダゾラムは、同じ組成物の中に、または代わりに同じ処置の一部としておよび/もしくは上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントと同じ投与レジメンに従って、上記NRGペプチドまたは機能的改変体もしくはフラグメントとともに投与され得る。ベンゾジアゼピン薬物(例えば、ミダゾラム)は、本開示に記載される任意の投与レジメンに従って投与され得るが、特定の実施形態において、上記ベンゾジアゼピン薬物(例えば、ミダゾラム)は、経口用量を含め、1もしくはこれより多くの用量で投与され得る。ある特定の実施形態において、上記ベンゾジアゼピン薬物(例えば、ミダゾラム)が、経口用量を含め、1もしくはこれより多くの用量で投与される場合、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、単一用量、例えば、単一静脈内注入で投与される。上記ベンゾジアゼピン薬物(例えば、ミダゾラム)は、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの用量の前に、それと同時に、またはその後に投与され得る。特定の実施形態において、ベンゾジアゼピン薬物(例えば、ミダゾラム)は、5経口用量で投与され、そのうちの第2の用量の後に、上記NRGまたは機能的改変体もしくはフラグメントが、単一用量、単一静脈内注入で投与される。
【0104】
方法の有用性
心臓カテーテル検査もしくは心臓手術に関連して、被験体が、NRGに応答性である心臓前駆細胞の集団を有するか否かが決定され得る。代表的には、この分析は、上記被験体の心臓組織から生検材料を採取し、心臓前駆細胞のマーカー(例えば、Sca-1およびc-Kitのような)に関して組織をスクリーニングすることによって、行われる。ErbB2およびErbB3レセプターの存在はまた、心臓前駆細胞の存在を示す。上記被験体が、心臓前駆細胞の適切な集団を有すると一旦同定されたら、上記細胞は、上記細胞が線維芽細胞および筋線維芽細胞への低減した変換を示すこと、ならびに/または心臓細胞へと優先的に分化することによって応答するか否かを決定するために、NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに曝露される。心臓前駆細胞が上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントに対するこの応答を示す被験体は、次いで、NRGペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは改変体で処置される。これらの方法は、心不全を含め、任意の現在の心臓傷害、疑われる心臓傷害、または予期される心臓傷害と関連して使用され得る。
【0105】
低減した心筋収縮性を有するヒトにおける心不全は、低減した心拍出量をもたらす。本明細書で提供される方法は、心機能を増大させ、瘢痕組織を低減し、そして健康な心臓組織を再生するために使用され得る。例えば、本明細書で記載される方法は、被験体がNRGに応答性である心臓前駆細胞を有するという決定後に、損傷したかまたは虚血になった心臓の領域において、心筋細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を促進し、線維芽細胞および筋線維芽細胞への心臓前駆細胞の変換を抑制するために、使用され得る。
【0106】
一局面において、本明細書で開示されるとおりの方法は、心臓傷害の後に、心臓組織を再生するか、心臓組織を修復するか、または心臓線維症を低減するために、使用され得る。別の局面において、本明細書で記載される方法は、心臓傷害の発症を防止する。
【0107】
適切な被験体としては、哺乳動物が挙げられる。哺乳動物としては、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サルもしくはブタが挙げられるが、これらに限定されない。本開示のいくつかの実施形態において、上記哺乳動物は、ヒトである。
【0108】
ある特定の実施形態において、心臓傷害は、心臓血管疾患から生じる。当業者は、多くの心臓血管疾患を認識する。具体的な実施形態において、上記心臓血管疾患は、以下から生じ得る;例えば、冠動脈疾患;心不全;脳卒中;心筋梗塞;心筋症;高血圧症;虚血性心疾患;心房細動;先天性心疾患;心筋炎;心内膜炎;心膜炎(periocarditis);アテ
ローム性動脈硬化症;血管疾患;左室収縮機能障害;冠動脈バイパス手術;心臓毒性化合物への曝露;甲状腺疾患;ウイルス感染;歯肉炎;薬物乱用;アルコール乱用、または高い血中コレステロール。
【0109】
いくつかの実施形態において、本開示で提供される方法の被験体は、慢性心不全を示し得る。好ましい実施形態において、上記被験体の状態は、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、または6ヶ月間安定なままであったことがある。安定もしくは慢性心不全は、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、もしくは6ヶ月間の期間にわたって、心機能の増大もしくは低下および/または損傷がないことによってさらに特徴付けられ得る。例えば、上記被験体は、本明細書で記載されるとおりのペプチドを投与する前に、少なくとも1ヶ月間、例えば、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、もしくはより長く、慢性心不全に罹患したことがある。
【0110】
例えば、上記被験体は、本明細書で記載されるとおりのペプチドの投与前に、クラス2、クラス3、もしくはクラス4の心不全に罹患する。ニューヨーク心臓協会機能分類システムは、被験体が、身体活動の間にどの程度制限されるかに基づいて、心不全のクラスを決定するために使用される。クラス1の心不全に入る被験体は、心疾患を有するが、身体活動の制限はない。通常の身体活動は、過度の疲労、動悸、呼吸困難もしくは狭心痛を引き起こさない。クラス2の心不全に入る被験体は、身体活動の僅かな制限を生じる心疾患を有する。これらの被験体は、安静時には無症状であるが、通常の身体活動で疲労、動悸、呼吸困難または狭心痛が引き起こされる。クラス3心不全の被験体は、身体活動の顕著な制限を生じる心疾患を有する。これらの被験体は、安静時は無症状であるが、通常の身体活動未満でも、疲労、動悸、呼吸困難もしくは狭心痛が生じる。クラスIV心不全の被験体は、いかなる身体活動をも症状なしには行うことができない心疾患を有する。安静時には、これらの被験体は、心不全または狭心症症候群の症状を経験し得る。いかなる身体活動も、症状レベルを増大させる。
【0111】
いくつかの実施形態において、上記被験体は、収縮性心不全に罹患している。例えば、上記被験体は、左室収縮機能障害に罹患している。例えば、上記被験体は、本明細書で提供されるペプチドの投与前に、40%もしくはこれより低い、例えば、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、もしくはこれより低い左室駆出率を有する。
【0112】
いくつかの例では、上記被験体は、少なくとも18歳齢、例えば、少なくとも18歳齢、20歳齢、25歳齢、30歳齢、35歳齢、40歳齢、45歳齢、50歳齢、55歳齢、60歳齢、65歳齢、70歳齢、75歳齢、80歳齢、85歳齢、90歳齢、もしくは95歳齢のヒトである。場合によっては、そのヒトは、18~75歳齢の間である。いくつかの例では、上記被験体は、13~18歳齢の間のヒトである。
【0113】
場合によっては、上記被験体は、本明細書で提供されるペプチドの投与前に、急性非代償性心不全(ADHD)に罹患し得る。例えば、急性非代償性心不全は、救急救命室受診、入院、および/もしくは予測外の医院受診を要する心不全の1もしくはこれより多くの症状または徴候が突然に、あるいは徐々に発現することによって特徴付けられる。場合によっては、ADHDは、肺うっ血および/または全身性うっ血と関連し、これらは、左心充満圧および/もしくは右心充満圧の増大によって引き起こされ得る。例えば、Josephら, 2009を参照のこと。例えば、ADHDは、当該分野で一般に公知の方法を使用して、被験体における脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)もしくはN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)の血漿レベルを測定することによって診断され得る。例えば、100pg/dLより高い、例えば、少なくとも100pg/dL、200pg/dL、300pg/dL、400pg/dL、500pg/dL、600pg/dLもしくはこれより高い、被験体に由来する生物学的サンプル(例えば、血液、血漿、血清、もしくは尿)中のBNPレベルは、被験体がADHDを有することを示し得る。いくつかの例では、本明細書で提供されるペプチドの治療的投与レジメンは、ADHDを防止、低減、またはその発生を遅らせるために十分である。
【0114】
いくつかの実施形態において、上記心不全は、高血圧症、虚血性心疾患、心臓毒性化合物(例えば、コカイン、アルコール、抗ErbB2抗体もしくは抗HER抗体(例えば、ハーセプチン(登録商標))またはアントラサイクリン系抗生物質(例えば、ドキソルビシンもしくはダウノマイシン)への曝露、心筋炎、甲状腺疾患、ウイルス感染、歯肉炎、薬物乱用、アルコール乱用、心膜炎、アテローム性動脈硬化症、血管疾患、肥大型心筋症、急性心筋梗塞もしくは以前の心筋梗塞、左室収縮機能障害、冠動脈バイパス手術、飢餓、放射線曝露、摂食障害、または遺伝的欠陥から生じ得る。
【0115】
本開示の別の実施形態において、抗ErbB2もしくは抗HER2抗体(例えば、ハーセプチン(登録商標))は、アントラサイクリンを投与する前、投与する間、もしくは投与した後に哺乳動物に投与される。
【0116】
本開示の他の実施形態において、被験体の心臓前駆細胞は、NRGへの応答性に関して試験され、応答性であれば、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、心臓毒性化合物への曝露の前に、心臓毒性化合物への曝露の間に、または心臓毒性化合物の曝露の後に投与される;上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、哺乳動物におけるうっ血性心不全の診断の前もしくはその後に投与される。本開示の方法は、被験体である哺乳動物が代償性心肥大を受けた後に起こり得る。いくつかの例では、本明細書で記載される方法の転帰は、左室肥大を維持すること、心筋が薄くなることを防止/その進行を遅らせること、または心筋細胞アポトーシスを阻害することである。本開示の他の実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、哺乳動物におけるうっ血性心不全の診断の前もしくはその後のいずれかに投与される。本開示のさらに別の実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、代償性心肥大を受けた哺乳動物に投与される。本開示の他の特定の実施形態において、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの投与は、左室肥大を維持する、心筋が薄くなることを防止/その進行を遅らせる、および/または心筋細胞アポトーシスを阻害する。
【0117】
他の実施形態において、ニューレグリンおよび本明細書で記載される処置もしくは予防に応答性である心臓前駆細胞に関して試験する必要性のある被験体は、心不全(例えば、うっ血性心不全)のリスクがある。個体が心不全を発生させる可能性を増大させるリスク因子は、周知である。これらとしては、以下が挙げられ、これらに限定されない:喫煙、肥満、高血圧、虚血性心疾患、血管疾患、冠動脈バイパス手術、心筋梗塞、左室収縮機能障害、心臓毒性化合物(アルコール、コカインのような薬物、ならびにドキソルビシンおよびダウノルビシンのようなアントラサイクリン系抗生物質)への曝露、ウイルス感染、心膜炎、心筋炎、歯肉炎、甲状腺疾患、放射線曝露、心不全のリスクを増大させることが公知の遺伝的欠陥(例えば、Bachinski and Roberts, 1998; Siuら, 1999;およびArbustiniら, 1998に記載されるもの)、飢餓、摂食障害(例えば、拒食症および過食症)、心不全の家族歴、ならびに心筋肥大。このリスクは、上記被験体が、NRGに応答性である心臓前駆細胞を有するか否かを決定すること、次いで、上記心臓前駆細胞が応答性であると決定されれば、本明細書で記載されるとおりのNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを投与することによって、低減され得る。あるいは、上記リスクは、心臓前駆細胞の集団を、NRGに応答性である心臓前駆細胞を有することが見出された被験体に投与すること、および本明細書で記載されるNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントを同時にまたは逐次的に投与することによって、低減され得る。
【0118】
本開示によれば、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントは、リスクがあると同定された人々におけるうっ血性心疾患進行を防止するか、またはその速度を遅らせる/低下させることによるような予防を達成するために、NRGに応答性である心臓前駆細胞を有することが見出された被験体に間欠的に投与され得る。例えば、初期の代償性肥大にある被験体への上記ペプチドの投与は、肥大状態の維持を可能にする、および心不全への進行を防止/遅らせる。さらに、リスクがあると同定された人々は、上記被験体がNRGに応答性である心臓前駆細胞を有することが見出される場合、代償性肥大の発生の前に、上記ペプチドでの心臓保護処置が与えられ得る。
【0119】
NRGに応答性である心臓前駆細胞を有することが見出されたがん被験体への、アントラサイクリン化学療法またはアントラサイクリン/抗ErbB2(抗HER2)抗体(例えば、ハーセプチン(登録商標))の前、およびその間の本明細書で記載されるNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの投与、併用療法は、被験体の心筋細胞がアポトーシスを受けることを妨げ得/遅らせ得、それによって、心機能を保存し得る。心筋細胞喪失を既に罹患したことがある被験体はまた、NRG処置から利益を得る。なぜならその残りの心筋組織は、肥大性増殖および増大した収縮性を示すことによって、NRG曝露に応答するからである。
【0120】
心機能の例示的な評価基準(metrics)としては、心室駆出率(EF)、例えば、左室駆出率(LVEF)、収縮末期容積(ESV)、拡張末期容積(EDV)、短縮率(FS)、入院回数、運動耐容能、僧帽弁逆流、呼吸困難、末梢浮腫、およびADHDの発生が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本明細書で開示されるとおりのペプチドの投与の結果としての心機能の改善は、例えば、以下のうちの1もしくはこれより多くによって検出される:LVEFの増大、ESVの減少、EDVの減少、FSの増大、入院回数の減少、運動耐容能の増大、僧帽弁逆流発生の回数またはその重篤度の低減、呼吸困難の低減、末梢浮腫の低減、およびADHDの防止またはその発生の低減。いくつかの例では、被験体が、LVEFが保存された心不全に罹患する場合、心機能の評価基準としては、ESV、EDV、FS、入院回数、運動耐容能、僧帽弁逆流、呼吸困難、ADHDの発生および末梢浮腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
いくつかの例では、NRGに応答性である心臓前駆細胞を有することが見出された被験体またはNRGに応答性である心臓前駆細胞を受けた被験体への上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量の投与は、上記ペプチドの投与前のLVEFと比較して、少なくとも1%、例えば、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、もしくはこれより高い程度、上記被験体においてLVEFを増大させるために十分である。例えば、LVEFの増大は、少なくとも1~20%である。場合によっては、本明細書で記載されるとおりのNRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量は、必要性のある被験体のLVEFを、約10~40%の駆出率へと増大させるために十分であり、例えば、上記被験体のLVEFは、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、もしくは約40%の駆出率へと増大される。他の場合には、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量は、必要性のある被験体のLVEFを、約40~60%の駆出率へと増大させるために十分であり、例えば、上記被験体のLVEFは、約40%、45%、50%、55%、もしくは約60%の駆出率へと増大される。さらに他の場合では、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量は、必要性のある被験体のLVEFを正常なLVEF値へと完全に回復させるために十分である。例えば、上記被験体のLVEFは、上記被験体における上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの第1の投与、例えば、初期用量の90日間もしくはこれより短い日数以内に、例えば、90日間、80日間、70日間、60日間、50日間、40日間、30日間、20日間、10日間、もしくはこれより短い日数以内に増大する。場合によっては、上記被験体において増大したLVEFは、上記ペプチドの第1の投与の後に、例えば、上記ペプチドのその後の投与なしに、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く維持される。例えば、本明細書で提供されるペプチドの治療上有効な量は、上記ペプチドの第1の投与の後に、例えば、上記ペプチドのその後の投与なしに、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く、上記被験体においてLVEFを維持するおよび/または安定化するために十分である。
【0122】
いくつかの例では、上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量の投与は、上記ペプチドの投与前の被験体のEDVと比較して、少なくとも1mL、例えば、少なくとも1mL、5mL、10mL、15mL、20mL、25mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、もしくはこれより多く、例えば、少なくとも1~60mL程度、被験体においてEDVを減少させるために十分である。例えば、上記被験体のEDVは、上記被験体における上記ペプチドの第1の投与の、例えば、上記ペプチドの初期用量の90日間もしくはこれより短い日数以内で、例えば、90日間、80日間、70日間、60日間、50日間、40日間、30日間、20日間、10日間、もしくはこれより短い日数以内で減少する。場合によっては、上記被験体において減少したEDVは、上記ペプチドの第1の投与後に、例えば、上記ペプチドのその後の投与なしに、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く維持される。
【0123】
他の例では、NRGに応答性である心臓前駆細胞を有することが見出された被験体への上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量の投与は、上記ペプチドの投与前の上記被験体のESVと比較して、少なくとも1mL、例えば、少なくとも1mL、5mL、15mL、20mL、25mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、もしくはこれより多く、例えば、少なくとも1~30mL程度、上記被験体においてESVを減少するために十分である。例えば、上記被験体のESVは、上記被験体における上記ペプチドの第1の投与の、例えば、上記ペプチドの初期用量の90日間もしくはこれより短い日数以内で、例えば、90日間、80日間、70日間、60日間、50日間、40日間、30日間、20日間、10日間、もしくはこれより短い日数以内で減少する。場合によっては、上記被験体において減少したESVは、上記ペプチドの第1の投与後に、例えば、上記ペプチドのその後の投与なしに、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く維持される。
【0124】
場合によっては、NRGに応答性である心臓前駆細胞を有することが見出された被験体への上記NRGペプチドまたはその機能的改変体もしくはフラグメントの治療上有効な量の投与は、上記ペプチドの投与前のFSと比較して、少なくとも1%、例えば、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、もしくはこれより多く、上記被験体においてFSを増大させるために十分である。例えば、FSの増大は、少なくとも1~15%である。場合によっては、本明細書で提供されるペプチドの治療上有効な量は、必要性のある被験体のFSを、約15%、例えば、約1%、2%、3%、4%、6%、7%、8%、9%、10%、もしくは約15%のパーセント短縮率へと増大させるために十分である。他の場合では、本明細書で提供されるペプチドの治療上有効な量は、必要性のある被験体のFSを、約15~20%、例えば、約15%、16%、17%、18%、19%、もしくは約20%のパーセント短縮率へと増大させるために十分である。さらに他の場合には、本明細書で提供されるペプチドの治療上有効な量は、必要性のある被験体のFSを、約20~25%、例えば、約20%、21%、22%、23%、24%、もしくは約25%のパーセント短縮率へと増大させるために十分である。さらなる場合には、本明細書で提供されるペプチドの治療上有効な量は、必要性のある被験体のFSを、約25~45%、例えば、約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、もしくは約45%のパーセント短縮率へと増大させるために十分である。例えば、上記被験体のFSは、上記被験体において、上記ペプチドの第1の投与の、例えば、上記ペプチドの初期用量の90日間もしくはこれより短い日数以内で、例えば、90日間、80日間、70日間、60日間、50日間、40日間、30日間、20日間、10日間、もしくはこれより短い日数以内で増大する。場合によっては、上記被験体において増大したFSは、上記ペプチドの第1の投与後に、例えば、上記ペプチドのその後の投与なしに、少なくとも12時間、例えば、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、90日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月(年4回)、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、もしくはこれより長く維持される。
【0125】
本明細書で記載される心機能を評価するための評価基準は、当該分野で一般に公知の方法によって決定される。
参考文献:
1.Arbustini et al.,Heart 80:548-558,19982.Bachinski and Roberts,Cardiol.Clin.16:603-610,1998
3.Carraway et al.,Nature 387:512-516,1997
4.Chang et al.,Nature 387:509-512,1997
5.Cohn et al.,N.Engl.J Med.339:1810-1816,1998
6.Galindo et al.,Journal of American Heart Assocication 3:e000773,2014
7.Falls.Exp.Cell Res.284(1):14-30,2003.
8.Higashiyama et al.,J.Biochem.122:675-680,1997
9.Hijazi et al.,Int.J.Oncol.13:1061-1067,1998
10.Holmes et al.,Science 256:1205-1210,1992
11.Joseph et al.,Tex.Heart Inst.J.36(6):510-20,2009
12.Lemke,Mol.Cell.Neurosci.7:247-262,1996
13.Lenihan et al.,American College of Chemistry Meeting,March 9-11,2013
14.No authors listed,Am.J.Cardiol.,83(2A):1A-38-A,1999
15.Peles and Yarden,BioEssays 15:815-824,199316.Sawyer and Caggiano,J.Mol.Cell Cardiol.51(4):501-5,2011
17.Siu et al.,Circulation 8:1022-1026,1999
18.SOLVD Investigators,N.Engl.J.Med.327:685-691,1992
【0126】
本明細書で記載される実施形態は、例示であるに過ぎないことが意図され、当業者は、慣用的な実験法のみを使用して、本明細書で記載される具体的手順に対する多くの均等物を認識するか、または確認し得る。全てのこのような均等物は、本開示に範囲内であると見做され、以下の実施形態によって網羅される。本明細書で引用される全ての参考文献(特許出願、特許および刊行物を含む)は、各個々の刊行物もしくは特許もしくは特許出願が、全ての目的でその全体において参考として援用されていることが具体的にかつ個々に示されているのと同程度まで、それらの全体においておよび全ての目的のために本明細書に参考として援用される。
【実施例0127】
実施例1.一般的方法
心臓の細胞の単離
マウスの心臓の細胞の単離を、10mg/ml コラゲナーゼII、2.5U/ml ディスパーゼII、1μg/ml DNase I、および2.5mM CaClを使用して、20分間、37℃において心室の消化後に行った。心臓のCD31posCD45neg内皮細胞およびSca-1posCD31neg前駆細胞を、磁性活性化セルソーティングMicroBead技術(Miltenyi Biotec, Inc)を使用して単離した。
【0128】
単一細胞コロニー生成技術を使用して、ヒト心臓前駆細胞を単離した。ヒト心臓前駆細胞を、バイパス手術を受けている被験体から得た前方左室自由壁心外膜生検から単離した。単一細胞懸濁物を、コラゲナーゼII/ディスパーゼII/CaCl消化溶液を使用して調製し、10 細胞/cmの濃度で48培養ディッシュの中にプレートした。造血細胞を、ヒトCD45マイクロビーズを使用して、磁性分離によって除去した。CD45枯渇細胞を、M199-EGM-2培地中10 細胞/cmの密度で、48ウェルプレート上にプレートした。上記ウェルを、1週間に2回コロニー増殖に関して分析した。迅速に増殖するコロニー(2~3コロニー/サンプル)を採取し、新鮮な増殖培地中に再懸濁し、0.1% ゼラチン被覆組織培養ディッシュ上に5×10 細胞/cmの密度でプレートした。ヒト心臓前駆細胞を、CD105の細胞表面発現、ならびにCD31内皮マーカー、CD45、およびCD117/c-Kit造血マーカーの非存在によって特徴付けた。
【0129】
心筋生成分化の誘導
心筋生成分化を誘導するために、心臓前駆細胞を、10% FBSを補充したDMEM-LG培地中で72時間、5μM 5’-アザシチジンで予備処理し、2% FBS、1ng/ml TGFβ、100μM アスコルビン酸、0.2% DMSO、および10ng/ml bFGFを補充したDMEM-LG培地中で培養し、3日ごとに交換した。
【0130】
内皮細胞に向かう心臓前駆細胞の分化を、20ng/mlのVEGFを含む15% FBS 199培中で、細胞をインキュベートすることによって誘導した。
【0131】
心筋梗塞の誘導
マウスにおける心筋梗塞を、左冠動脈の恒久的な結紮によって誘導した。
【0132】
当業者に公知の任意の技術は、心筋梗塞を誘導するために使用され得る。例えば、心筋梗塞は、血管造影法によるガイド下での冠動脈内バルーン閉塞によって誘導され得る(例えば、Galindoら, 2014を参照のこと)。
【0133】
免疫組織化学
αSMAおよびコラーゲンタイプIに関する細胞内染色を、固定し、透過化した細胞(Cytofix/Cytoperm kit, BD Biosciences)において、モノクローナルFITC結合体化抗αSMA抗体(Sigma)およびビオチン結合体化抗コラーゲンタイプI抗体(600-401-103; Rockland, Inc., Rockland, PA)を使用して行った。マウスIgG2a-FITC結合体化(Sigma)およびビオチン結合体化ウサギ全IgG(Jackson ImmunoResearch, Inc., West Grove, PA)を、アイソタイプコントロールとして使用した。生細胞および非生細胞を、LIVE/DEAD Fixable Stainキット(Life Technologies, Carlsbad, CA)を使用して区別した。
【0134】
フローサイトメトリー分析を、LSRIIフローサイトメーターを使用して行い、そのデータを、WinList 5.0ソフトウェアで分析した。
【0135】
組換えNRGタンパク質
国際公開番号WO2010030317およびWO2014138502に記載されるとおりの確立されたアプローチに従って、複数のNRGスプライス改変体を、クローニングして生成した。
【0136】
実施例2.心臓におけるNRGレセプターの発現
心臓前駆細胞の単離された亜集団の純度を決定するために、磁性活性化前および磁性活性化後のセルソーティングを行った(図1A)。次に、NRGレセプター(すなわち、ErbB2、ErbB3、Erb4)のいずれがマウス心臓前駆細胞において発現されるのかを決定するために、ErbBレセプターのmRNAを分析した。図1Bに示されるように、マウス心臓Sca-1posCD31neg間質細胞は、機能的なErbB2およびErbB3レセプターを発現した。NRGレセプターの発現を、Sca-1pos/CD31neg心臓前駆細胞上での細胞表面マーカーのフローサイトメトリーヒストグラム(図1C)を分析することによって確認した。これらの研究から、マウス心臓前駆細胞は、高レベルのErbB2、中程度のレベルのErb3、および非常に少ないErbB4を発現することが示された(図1B)。
【0137】
実施例3.インビトロで内皮細胞および心筋細胞に向かうマウス心臓前駆細胞の分化
図2Aは、増殖培地または内皮細胞分化培地中での心臓前駆細胞のインキュベーション後の、毛細管様構造形成の顕微鏡写真を示す。CD31pos心臓内皮細胞を、陽性コントロールとして使用した。図2Bは、増殖培地中または内皮細胞分化培地中でインキュベートした心臓前駆細胞、および心臓内皮細胞の形態発生活性のグラフ表示を示す。毛細管形成を、それらの全長を測定することによって評価した。通常の増殖培地中または心筋細胞分化培地中で、1週間または3週間培養した心臓Sca-1posCD31neg細胞における心臓特異的遺伝子発現を、リアルタイムRT-PCRを使用して分析した(図2C)。この研究から、マウス心臓前駆細胞は、内皮細胞および心筋細胞に向かって分化することを示す。値は、3回の実験の平均である。
【0138】
実施例4.NRG-1は、筋線維芽細胞へのマウス心臓前駆細胞の移行を防止する。
代表的なフローサイトメトリードットプロットは、心臓前駆細胞が、マウスでの実験的心筋梗塞後7日目に、インビボでαSMA陽性およびコラーゲン1生成筋線維芽細胞に向かって蓄積することを示す(図3A)。図3Bは、αSMA陽性およびコラーゲン1α陽性Sca-1posCD31neg心臓前駆細胞のフローサイトメトリー分析からのグラフによる代表的データを示す。P値が示される(対応のないt検定)。TGFβ単独とともに、または30ng/ml NRG-1と組み合わせて、48時間インキュベートした心臓前駆細胞におけるαSMAタンパク質の発現は、図3Cにおいて代表的な細胞蛍光グラフィックドットプロットにおいて図示される。興味深いことに、この実験は、NRG-1が筋線維芽細胞発現を低減することを示す。さらに、心臓Sca-1posCD31neg前駆細胞におけるαSMA発現の平均蛍光強度を、フローサイトメトリーによって評価した(図3D)。データは、3回の独立した実験からの平均±SEMを表す。P値は、t検定によって計算された有意レベルを示す。
【0139】
実施例5.ヒト心臓の血管および血管周囲領域におけるErb2およびErbB3レセプターの位置決定
この研究は、ヒト心臓におけるNRGレセプターの位置決定を調べる。図4は、マウス心臓におけるErbBレセプターの類似の発現が、ヒト心臓に由来する心臓posCD31neg前駆細胞に存在することを示す。具体的には、ErbB2およびErbB3レセプターは、ヒト心臓の血管/血管周囲領域に位置する(図4
【0140】
実施例6.NRG-1は筋線維芽細胞へのヒト心臓前駆細胞の移行を防止する
この研究は、NRG-1で心臓前駆細胞を刺激することの効果を調査した。図5Aは、単一細胞由来クローンを再プレートした直後および3日後のヒト心臓前駆細胞の例示的な位相差顕微鏡写真を示す。スケールバー=100μm。次に、分化培地中で1週間または2週間培養する前および培養した後のヒト心臓前駆細胞における心臓特異的遺伝子発現を、リアルタイムPCRを使用して分析した(図5B)。値は、3回の実験の平均である(対応のないt検定)。図5Cは、ヒト心臓前駆細胞上の細胞表面マーカーの代表的フローサイトメトリーヒストグラムを示す。影付きの領域は、相当するアイソタイプマッチ抗体コントロールで処理した細胞の蛍光を表す。これらの研究は、NRG-1および内因性ErbBレセプターリガンドでの細胞の刺激が、筋線維芽細胞へのそれらの移行を防止することを示した。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
【配列表】
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【外国語明細書】