(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022466
(43)【公開日】2022-02-04
(54)【発明の名称】錯視模様シート、錯視模様シートの製造方法及び3次元映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20220128BHJP
G03B 35/00 20210101ALI20220128BHJP
H04N 13/302 20180101ALI20220128BHJP
H04N 13/346 20180101ALI20220128BHJP
【FI】
G02B30/56
G03B35/00 Z
H04N13/302
H04N13/346
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126003
(22)【出願日】2020-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】518324094
【氏名又は名称】アールエスケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181087
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 知久
(72)【発明者】
【氏名】若月 賢一
【テーマコード(参考)】
2H059
2H199
5C061
【Fターム(参考)】
2H059AA21
2H059AB11
2H199BA32
2H199BB18
5C061AA06
5C061AB14
5C061AB18
(57)【要約】
【課題】低コストで、かつ、簡易な方法により映像表示の立体感、浮遊感などを演出することができる3次元映像表示装置を提供する。
【解決手段】実施形態の3次元映像表示装置1Aは、ボックス11aにハーフミラー12aを有し、当該ボックス11a内に映像投影領域を有して、ハーフミラー12aを介して2次元映像から3次元映像を観者が視認可能であり、当該映像の立体感を高めるために、ボックス11aの内部壁面と床面とに錯視模様シート2Aが用いられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元映像表示装置の映像投影領域に面する内部壁面、床面又は天井面に用いられる板、又は、当該板に配置若しくは貼り付けるシート材に所定の錯視模様が施された錯視模様シートであって、
前記所定の錯視模様は、少なくとも第1の色が付された第1模様と当該第1の色と異なる第2の色が付された第2模様とが混合された模様の領域内に投影される、前記3次元映像表示装置の映像投影対象を映像表示する表示画面の枠の影又は前記3次元映像表示装置に用いられる補助機材の影を、観者の視覚上において視認方向に応じて混合した模様に同化させる
ことを特徴とする錯視模様シート。
【請求項2】
前記所定の錯視模様は、少なくとも第1の色が付された第1明模様と当該第1の色と異なる第2の色が付された第1暗模様とにおける第1明模様と第1暗模様とのコントラスト比が高くされた前記第1明模様と前記第1暗模様とが混合した模様、又は、少なくとも第3の色が付された第2明模様と当該第3の色と異なる第4の色が付された第3明模様によって前記第2明模様と前記第3明模様とが混合された模様である
ことを特徴とする請求項1に記載の錯視模様シート。
【請求項3】
3次元映像表示装置の映像投影領域に面する内部壁面、床面又は天井面に用いられる板、又は、当該板に配置若しくは貼り付けるシート材に所定の錯視模様を施す加飾工程を含む、請求項1又は請求項2に記載の錯視模様シートの製造方法であって、
前記所定の錯視模様を施す前記内部壁面、床面又は天井面を指定する壁面指定工程と、
前記指定した前記内部壁面、床面又は天井面において錯視模様を加飾する範囲を指定する加飾範囲指定工程と、
前記指定した加飾する範囲ごとに前記錯視模様を指定する錯視模様指定工程と、
前記指定した錯視模様ごとに色を指定する色指定工程と、
前記各指定工程の終了後、又は、予め記憶された指定パターンを指定もしくは当該指定パターンの一部を変更後に、前記板、又は、前記シート材に前記指定された前記錯視模様を施す前記加飾工程と、
を含むことを特徴とする錯視模様シートの製造方法。
【請求項4】
ボックス又は演出に関する構造物に一又は複数のハーフミラーを有し、当該ボックス又は演出に関する構造物内に前記映像投影領域を有して、当該一又は複数のハーフミラーを介して2次元映像から3次元映像を観者が視認可能な請求項1又は請求項2に記載の錯視模様シートが用いられる3次元映像表示装置であって、
前記映像投影領域に面する前記ボックス又は演出に関する構造物の前記内部壁面、床面又は天井面に前記錯視模様シートが用いられ、
前記錯視模様シートが用いられた前記ボックス又は演出に関する構造物の前記内部壁面、床面又は天井面の前記所定の錯視模様が施された模様の領域内に投影される、前記3次元映像表示装置の映像投影対象を映像表示する表示画面の枠の影又は前記3次元映像表示装置に用いられる補助機材の影を、前記観者の視覚上において視認方向に応じて当該模様の領域内の模様に同化させる
ことを特徴とする3次元映像表示装置。
【請求項5】
背板と、
前記背板の左右両側に接続された側板と、
前記背板の上端に接続された天板と、
前記背板と左右両側の前記側板とが接続された台座と、
前記天板から前記台座にかけて斜めに立て掛けられたハーフミラーと、を備え、
前記背板、両側の前記側板、前記天板及び前記台座によって囲まれて、前記映像投影領域を有する前記ボックスが形成され、前記背板、両側の前記側板、前記天板又は前記台座に前記錯視模様シートが用いられて、
前記天板には、映像表示するモニター画面を有する表示機器のモニター画面を台座側へ向けた状態で当該表示機器を支持可能とする画面開口部が設けられ、前記ボックスの内部へ照らすことができる照明器具を据え付け可能であり、
前記ボックスの上部には、前記映像空間内に(前記映像投影領域に)前記表示機器のモニター画面からの映像を取り込みのための開口が形成され、
前記ハーフミラーは、前記台座に対して40°~50°の範囲の傾斜角度で配置されて、
前記ボックスには、前記ハーフミラーを介して、前記映像を視認するための視認ポートが形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の3次元映像表示装置。
【請求項6】
前記錯視模様シートは、前記ボックス内に収納可能であり、かつ、前記台座に用いられた前記シート材と、少なくとも前記側板又は前記背板に用いられた前記シート材とが連結された、交換可能なインナーシートである
ことを特徴とする請求項5に記載の3次元映像表示装置。
【請求項7】
前記天板には、前記表示機器として携帯情報端末の画面を前記台座側へ向けた状態で当該携帯情報端末を支持可能とする画面開口部と、前記照明器具を前記ボックスの内部へ照らすことができる照明用開口とが設けられる
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の3次元映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元ホログラムの立体感を演出するための錯視模様シート、錯視模様シートの製造方法及び3次元映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
展示会、博物館、各種産業分野のショー、映像デモや、ホテルのラウンジ、公共施設等において、3Dホログラムを行う映像表装置を置いて、3次元映像表示する場所や機会等が増加している。
【0003】
なお、折り畳み可能な3D表示器および3D表示器を組み立てる方法において、この3D表示器は、少なくとも一つの第一の画像ソースからなり少なくとも一つの画像を、少なくとも一つの半透明反射鏡に投射し、これにより少なくとも一つの半透明反射鏡およびハウジングにより規定される空間中に知覚された3Dオブジェクトをペッパーのゴースト技術を使用して生成して、ハウジングおよび半透明反射鏡は互いに解き放たれる構造でハウジングは折り畳み可能に形成されることなどが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、映像表示装置において、映像表示装置が、立体オブジェクトと、立体オブジェクトの両側方にて立体オブジェクト側から前方に延びる両側壁と、両側壁の間にて、かつ、立体オブジェクトよりも前方にて、上端部よりも下端部が前方に位置するように傾斜して配置される透明板と、を有し、両側壁は、表示部を備えた携帯端末を、表示部を下向きにして支持することなどが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開2508933号公報
【特許文献2】特開2019-15980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
展示会、博物館、各種産業分野のショーや、ホテルのラウンジ、公共施設等に設置するような3次元映像表示装置において、設置スペースの省スペース化、動画映像の立体感・臨場感を高めるような装置が求められている。
【0007】
また、個人のホビーユース、家庭内の娯楽ユースとしても、小型な3次元映像表示装置が求められており、3次元映像表示するための映像投影装置として、スマートホン、タブレットPC等の映像表示装置を有する情報端末等が利用されている。これらの利用者にも、より、臨場感、立体感などを高めるような装置が求められている。
【0008】
本発明者は、3次元映像表示装置において、スマートホン、タブレットPC、映像表示装置を有する情報端末等を利用して、動画・画像を表示する際に、以下の課題解決に取り組んでいた。
【0009】
例えば、特に、1面のハーフミラー等のみを有する3次元映像表示装置において、以降に説明するような、視覚上、立体感(3D感)を大きく損なう現象が発生するという課題があった。
【0010】
図21は、従来の3次元映像表示装置100の映像表示における画面枠の影映りを示す一例であり、
図22は、従来の3次元映像表示装置100の映像表示における画面枠の影映りを示す他の一例である。
【0011】
図21(a)の撮影画像は、
図21(b)に示す3次元映像表示装置100において、ボックス110の天板150に載せているスマートホン400のモニター画面410を開口1320へ向けている状態での、ボックス110の正面からの撮影画像である。また、
図21(a)の撮影画像は、
図21(b)に示す視聴ポート(又は視認ポート)が1ポートである3次元映像表示装置100(
図1に対応するような構造)のボックス110内が無地200であることに対応しており、ボックス110内に照明がない場合の撮影画像である。
【0012】
図21(a)の撮影画像の状態として、
図21(b)の破線矢印に示すものは、ボックス110の天板150に載せているスマートホン400のモニター画面410の画面枠1310が、ハーフミラー120を介して、破線の陰影ライン(影)として投影されていることを、図で示すものである。
図21(a)に示すボックス110内には、照明がないため、装置から射し込む外光で反射されるスマートホン400の画面枠1310が映って見えるだけとなる。
【0013】
図22(a)の撮影画像は、
図22(b)に示す3次元映像表示装置100において、
図21(b)と同様に、スマートホン400のモニター画面410を開口1320へ向けている状態でのボックス110の正面からの撮影画像である。また、
図22(a)の撮影画像は、
図22(b)に示す視聴ポートが1ポートである3次元映像表示装置100(
図1に対応するような構造)のボックス110内が無地200であり、ボックス110内に照明がある場合の撮影画像である。
【0014】
図22(a)の撮影画像の状態として、
図22(b)の破線矢印に示すものは、スマートホン400のモニター画面410の画面枠1310が、破線の陰影ライン(影)として投影されていることを、図で示すものである。
図22(a)に示すボックス110内を照明で照らしても、ボックス110内の内壁面の無地200の黒色で、陰影ラインが見えている。
【0015】
このように、3次元映像表示装置100において、ハーフミラー120を介して、スマートホン400のモニター画面410の画面枠1310の影が、
図21(b)及び
図22(b)に示す陰影ライン(破線)として投影されてしまうと、スマートホン400のモニター画面410からハーフミラー120を介して投影される映像を視認する視認者からは、ボックス110内の奥行き感が喪失してしまい、2次元映像を直接見ているのと変わりないような印象(平面内(破線枠内)に映像が投影される感覚)になる。すなわち、3次元映像表示としての立体感が喪失することになる。
【0016】
特に、
図21及び
図22に示すような小型のボックス形状である3次元映像表示装置100では、観者の視野範囲にボックス110の映像投影領域の全体が入ってしまうため、画面枠1310の陰影ラインで投影された場合、著しく、立体感を損なってしまい、平面画像に見えてしまうという課題があった。
【0017】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、低コストで、かつ、簡易な方法により映像表示の立体感、浮遊感などを演出することができる錯視模様シート、錯視模様シートの製造方法及び3次元映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明に係る錯視模様シートは、3次元映像表示装置の映像投影領域に面する内部壁面、床面又は天井面に用いられる板、又は、当該板に配置若しくは貼り付けるシート材に所定の錯視模様が施された錯視模様シートである。当該錯視模様シートにおいて、前記所定の錯視模様は、少なくとも第1の色が付された第1模様と当該第1の色と異なる第2の色が付された第2模様とが混合された模様の領域内に投影される、前記3次元映像表示装置の映像投影対象を映像表示する表示画面の枠の影又は前記3次元映像表示装置に用いられる補助機材の影を、観者の視覚上において視認方向に応じて混合した模様に同化させることを特徴とする。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る錯視模様シートの製造方法は、3次元映像表示装置の映像投影領域に面する内部壁面、床面又は天井面に用いられる板、又は、当該板に配置若しくは貼り付けるシート材に所定の錯視模様を施す加飾工程を含む、前記錯視模様シートの製造方法である。当該錯視模様シートの製造方法は、前記所定の錯視模様を施す前記内部壁面、床面又は天井面を指定する壁面指定工程と、前記指定した前記内部壁面、床面又は天井面において錯視模様を加飾する範囲を指定する加飾範囲指定工程と、前記指定した加飾する範囲ごとに前記錯視模様を指定する錯視模様指定工程と、前記指定した錯視模様ごとに色を指定する色指定工程と、前記各指定工程の終了後、又は、予め記憶された指定パターンを指定もしくは当該指定パターンの一部を変更後に、前記板、又は、前記シート材に前記指定された前記錯視模様を施す前記加飾工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る3次元映像表示装置は、ボックス又は演出に関する構造物に一又は複数のハーフミラーを有し、当該ボックス又は演出に関する構造物内に前記映像投影領域を有して、当該一又は複数のハーフミラーを介して2次元映像から3次元映像を観者が視認可能な前記錯視模様シートが用いられる3次元映像表示装置である。当該3次元映像表示装置において、前記映像投影領域に面する前記ボックス又は演出に関する構造物の前記内部壁面、床面又は天井面に前記錯視模様シートが用いられ、前記錯視模様シートが用いられた前記ボックス又は演出に関する構造物の前記内部壁面、床面又は天井面の前記所定の錯視模様が施された模様の領域内に投影される、前記3次元映像表示装置の映像投影対象を映像表示する表示画面の枠の影又は前記3次元映像表示装置に用いられる補助機材の影を、前記観者の視覚上において視認方向に応じて当該模様の領域内の模様に同化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る錯視模様シート、錯視模様シートの製造方法及び3次元映像表示装置によれば、低コストで、かつ、簡易な方法により映像表示の立体感、浮遊感などを演出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る3次元映像表示装置の第1の実施形態の構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態の3次元映像表示装置にスマートホンおよび照明器具を取り付けた状態の背面側斜視図である。
【
図3】
図1に示す3次元映像表示装置の部品構成を示す分解図である。
【
図5】
図4(a)に示す錯視模様シートの試作品の一例を示す画像(図面代用写真)である。
【
図6】
図4(b)に示す錯視模様シートの試作品の一例を示す画像(図面代用写真)である。
【
図7】第2の実施形態の3次元映像表示装置の構成の一例を示す図である。
【
図8】第2の実施形態の3次元映像表示装置における照明効果の影響度を示す検証画像(図面代用写真)である。
【
図9】錯視模様シートの作成方法の一例を示す検証画像(図面代用写真)である。
【
図10】模様シート(a)と模様シート(b)の検証画像(図面代用写真)である。
【
図11】模様シート(c)と模様シート(d)の検証画像(図面代用写真)である。
【
図12】模様シート(e)と模様シート(f)の検証画像(図面代用写真)である。
【
図13】模様シート(g)と模様シート(h)の検証画像(図面代用写真)である。
【
図14】模様シート(i)と模様シート(j)の検証画像(図面代用写真)である。
【
図15】模様シート(k)の検証画像(図面代用写真)である。
【
図16】第2の実施形態の3次元映像表示装置に対応する試作装置で表示された映像(図面代用写真)の一例である。
【
図17】第3の実施形態の3次元映像表示装置の構成の一例を示す図である。
【
図18】第3の実施形態の3次元映像表示装置における錯視模様シートの効果の例を示す映像(図面代用写真)である。
【
図19】第4の実施形態の3次元映像表示装置の構成と、同構造の他の3次元映像表示装置に異なる模様を付した場合の構成を示す図である。
【
図20】第4の実施形態の3次元映像表示装置における錯視模様シートの効果の例を示す映像(図面代用写真)である。
【
図21】従来の3次元映像表示装置の映像表示における画面枠の影映りを示す一例(図面代用写真)である。
【
図22】従来の3次元映像表示装置の映像表示における画面枠の影映りを示す他の一例(図面代用写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態の錯視模様シート、錯視模様シートの製造方法及び3次元映像表示装置について、図面と画像等を参照して具体的に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。ここで説明する下記の実施形態は、主に1面の視聴ポートを有する3次元映像表示装置と、3面の視聴ポートを有する3次元映像表示装置との一例をとりあげて説明する。
【0024】
[第1の実施形態]
以下、本発明に係る錯視模様シート、3次元映像表示装置の第1の実施形態について、
図1乃至
図6を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明に係る3次元映像表示装置1Aの第1の実施形態の構成を示す図である。
図2は、第1の実施形態の3次元映像表示装置1Aにスマートホン4Aおよび照明器具3Aを取り付けた状態の背面側斜視図である。
図3は、
図1に示す3次元映像表示装置1Aの部品構成を示す分解図である。
【0025】
また、
図4は、複数の錯視模様シート2A及び2Bの例を示す図である。
図5は、
図4(a)に示す錯視模様シート2Aの試作品の一例を示す画像(図面代用写真)であり、
図6は、
図4(b)に示す錯視模様シート2Bの試作品の一例を示す画像(図面代用写真)である。
【0026】
図1に示す、1面の視聴ポートを有する3次元映像表示装置1Aの構成について、以下に説明する。
本実施形態の3次元映像表示装置1Aは、
図1乃至
図3に示すように、ボックス11aと、ハーフミラー12aと、天板15aと、錯視模様シート2Aとを備えている。
【0027】
ボックス11aは、開口側の1面の視聴ポート(映像視聴開口111a)を正面とすると、背面側の背板と、背板の左右両側に接続された側板と、背板と左右両側の側板とが接続された台座から構成されている。ボックス11aは、背板、両側の側板及び台座によって囲まれ、内部に映像表示空間を有するように形成されている。
【0028】
ボックス11a内には、
図1及び
図3に示すように、錯視模様シート2Aが取り付けられている。ボックス11aの上部を覆う天板15aには、投影対象を2次元映像表示するモニター画面41aを有する表示機器4A(例えば、
図1に示すスマートホン4A)のモニター画面41aを台座側へ向けた状態で、当該表示機器4Aを支持可能とする天板枠151aに投影用開口152aが設けられている。また、天板15aには、ボックス11aの内部へ光を照らすことができる照明器具3Aを据え付け可能な照明用開口154aが設けられている。
【0029】
ハーフミラー12aは、天板15aのハーフミラー挿入開口153aに挿通されて、ミラー固定枠121aの上端側がハーフミラー挿入開口153aから一部突出する状態で、ミラー固定枠121aの下端側がボックス11aの台座に設けられたミラー係止部112aに係止される。これにより、ハーフミラー12aは、ボックス11aの台座に対して略45°(40°~50°程度の範囲内)の傾斜角度で配置される。
【0030】
ハーフミラー12aを、
図1等に示すようなハーフミラー挿入開口153aから挿抜可能な構造にした場合、例えばボックス11a内に、人形・造形物等のオブジェクトを展示する場合に、交換容易に出し入れすることができる。なお、
図1乃至
図3に示すハーフミラー12の構造の一例では、ハーフミラー12aを挿抜可能な構造で示したが、ボックス11a等の床面に対して、傾斜角度45°となるように固定される構造であってもよい。
【0031】
映像空間内に3次元立体映像を得るために、本実施形態で用いるハーフミラー12aの透光材122aは、光の透過および反射の機能を有し、例えばガラス、アクリル板、ポリカーボネート製などを用いることができる。ハーフミラー12aにおいて、透光材122aが、ミラー固定枠121aに嵌め込まれている。
【0032】
図1等に示す3次元映像表示装置1Aには、その他の必要装置として、照明器具3Aと、スマートホン4Aの表示機器とが用いられる。これらの必要装置は、天板15aの所定の位置に配置される。
【0033】
天板15aには、例えば表示機器としてスマートホン4Aのモニター画面41aを台座側へ向けた状態で当該スマートホン4Aを支持可能とする天板枠151aに投影用開口152aと、照明器具3Aによりボックス11a内へ照らすことができる照明用開口154aとが設けられる。
【0034】
図2に示すように、3次元映像表示装置1Aの使用時に、スマートホン4Aなどの投影装置がボックス11aの上に配置され、投影用開口152aに画面を向け、光の屈折及びミラー画像形成原理を利用し、スマートホン4Aのモニター画面41aから表示される映像の反転映像がハーフミラー12aを通ることによって3次元立体映像が生成される。
【0035】
<「錯視模様+照明」による錯視効果について>
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る錯視模様シート2Aは、ハーフミラー12aを介して、錯視模様シート2Aによる錯視模様をハーフミラー12aの3次元映像表示装置1Aの虚像を視認可能な視聴方向から見た観者に対して、錯視模様シート2Aに施された錯視模様にモニター画面41aの枠の影が投影された場合に、視覚上、錯視模様内において当該モニター画面41aの枠の影を認識させることはない。
【0036】
例えば、錯視模様シート2Aの一例として、ボックス11aの所定の範囲に錯視効果を有する錯視模様として明の模様と暗の模様との交互のパターンで加飾でき、ボックス11a内の映像投影領域に面する錯視模様シート2Aに施された錯視模様にモニター画面41aの枠の影が投影された場合に、観者が視認する方向からの錯視模様内において当該モニター画面41aの枠の影を、観者に認識させることはない。換言すれば、錯視模様シート2Aでは、観者の視覚上において視認方向に応じて錯視模様に同化させている。
【0037】
3次元映像表示装置1Aでは、インナーシート(錯視模様シート)2Aにおいて、後述するような錯視効果を有する、錯視模様として市松模様範囲内の床面部分ではこの陰影ライン(影線)が、観者の視覚上において消えていることが確認できた。
【0038】
例えば、市松模様でなくても明暗のはっきりした模様柄や、白く照明を反射するような一定の法則等があれば市松模様以外にも、同様の効果が得られる。例えば、錯視模様シート2Bにおける、花模様柄のような入り組んだ柄が含まれても、明暗差(コントラストが高い模様)のあるデザインなら錯視効果が得られることを検証した。
【0039】
本発明者は、この現象を明暗のコントラスト比の高い模様(錯視模様とする)の範囲に、コントラスト比の低いモニター画面の枠の影が投影された場合に、視覚上、ピントの調整が錯視模様に重きが置かれるために、モニター画面の枠の影は視認できないと推定する。
【0040】
天板15aにボックス11a内部を照らす照明用開口154aを空けている。例えば、ここに照明器具3A(例えばLED照明)を配置して、ボックス11a内部を明るくする。奥行き感のある内部空間を肉眼で認識させ、映像を中央部に映すことで、映像が浮かんで見えるというのが、ホログラムの特徴である。
【0041】
図4(a)に対応する、
図5に示す試作品の撮影画像のように、ボックス11a内の床面、側壁、背面壁に特定の模様(錯視効果を有する模様)を入れた部分について、このエリアで天板15aの開口枠の縁が、ハーフミラー12aに映って見えてしまうのを、視覚上、打ち消す効果がある。
【0042】
例えば、第1の実施形態の錯視模様シート2Aは、
図4(a)及び
図5に示すように、床面21aの第一の錯視模様221a、背板22aの第一の錯視模様221a及び第二の錯視模様223aと、無模様範囲222a、側板23a及び側板24aの第一の錯視模様221aからなる。以上の錯視模様シート2Aにより、画面枠の陰影ラインを錯視効果により打ち消すことができる。
【0043】
なお、照明用開口154aから照明器具3Aの照明がない場合、このエリア内での枠線ははっきりと肉眼で確認でき、奥行き感のない印象となるため、3Dホログラムに求められる立体感が喪失する。
【0044】
(1)照明を用いる場合
試作品の撮影写真において、天板15aに空けた照明用開口154aに、照明器具3AとしてLED照明を配置して、ボックス11a内部を照らすようにする。照明器具3Aは、LED照明に限らず、ボックス11aの内部を照らせる明るさの他の照明器具であってもよい。照明光の色は、赤や青など色のついた照明でもよいが、錯視模様の色との関係で、錯視効果を薄める場合もあるので、留意をする必要がある。照明光の色は、好ましくは、白色に近いほうがよい。
【0045】
例えば、1ポート視聴(又は視認)の3次元映像表示装置1Aでは、ボックス11aにおいて正面視聴開口部分以外はステージを閉ざしているので、照明がない場合には、ボックス11aの内部はほぼ真っ暗になる。
【0046】
図8(a)に示す検証画像のように、真っ暗な中に映像を投影しても、平面的な映像が映るだけでホログラムのような立体的な浮遊感を視覚的に感じることはできない。
【0047】
図9(b)と
図16に示す検証画像のように、ボックス11a又は11bの内部を照明で照らすことで、奥行きや幅の広さを視覚的に認知し、その空間の中央に映像を投影することで、モノが浮遊するような演出が可能となる。さらに、錯視模様の錯視効果により、スマートホン4A等のモニター画面41aの画面枠が枠線として投影されるのを解消するという、効果もある。
【0048】
・照明用開口154aについて
3次元映像表示装置1Aのボックス11a内部の暗さを一定以上に明るく照らすには、照明用開口154aにLED照明具等のような照明器具3Aの配置が必要となる。なお、この照明がボックス11a内部を強く照らすことで、市松模様を含む錯視効果のある色と模様(デザインと称す)が明るく照らされ、床面、ハーフミラー12a等に映る表示機器4Aの表示画面枠を見えなくする効果(錯視効果と称す)が生じる。
【0049】
(2)天板15aの画面枠アダプター13a、14aについて
画面枠アダプター13aの開口132aと、画面枠アダプター14aの開口142aとは、開口サイズが異なるように形成されている。例えば、スマートホン4Aの画面サイズは小さいものからある程度大きなものまで幅広くある。このため、ホログラムとして利用できるスマートホン4Aの機種に制約があるものの、複数の種類のスマートホン4Aを3次元映像表示装置1Aにおいてカバー可能なように、投影用開口152aにいくつかの画面枠アダプター13a、14a(2種以上の開口サイズ)を用意して、交換可能とする。
【0050】
このスマートホン4Aを配置するための画面枠アダプター13a又は14aの画面枠131a又は141aが、照明と関連する。ボックス11a内部が暗いと、画面枠アダプター13a又は14aの画面枠131a又は141aも投影面に映ってしまう。極端に言えば、スマートホン4Aのモニター画面41aの2次元映像を直接見ているのと変わりないような印象になる。すなわち、3D映像としての立体感が喪失する。
【0051】
本実施形態の3次元映像表示装置1Aでは、さらに、照明器具3Aを取り付けることによりボックス11a内部を明るくし、錯視効果のあるデザイン(錯視模様)と照明との相乗効果を高めることができる。以上のような相乗効果により、ボックス11aの内部の幅と高さを広げて、より内部空間を大きくすることができる。これは、映像表示機器(スマートホン4A)の画面枠を投影面に映さない(陰影ラインを消失させる)技術を適用したことにより、実現できたものである。
【0052】
さらに、この他にも、天板15aに取り換え可能な画面枠アダプター13a又は14aを設ける理由がある。それは、スマートホン4A本体ケースのカラーが、モニター周囲に近い場合でも、本体ケースのカラーを投影面に映さない工夫が必要となる。
【0053】
例えば、黒い本体ケースのカラーで画面も黒くなれば問題ないが、白い本体ケースのカラーになると、この白い部分が投影面にも映ってしまい、ホログラムとしての立体感の演出が消失してしまう。
【0054】
これを防止するために、画面枠アダプター13a又は14aの2種以上のアダプターを取り換え可能に用意することにより、スマートホン4Aのメーカを問わず、同一形状・サイズの3次元映像表示装置1Aにて複数の種類のスマートホン4Aに対応することができる。
【0055】
なお、錯視模様シート2Aが用いられたボックスの内部壁面、床面(又は天井面の場合もある)の所定の錯視模様が施された模様の領域内に投影される、3次元映像表示装置1Aの映像投影対象を映像表示する表示画面の枠(例えば画面枠アダプター13a又は14aなど)の影だけでなく、この他にも考えられる舞台空間(例えば劇場、公演場所に設けられる舞台などを形成する演出に関する構造物内の空間)を映像投影空間とする3次元映像表示装置等に用いられる補助機材(舞台装置などの固定用ワイヤー、ケーブルラックなど)の影を、観者の視覚上において視認方向に応じて当該模様の領域内の模様に同化させることも可能である。
【0056】
(3)インナーシート(錯視模様シート2A又は2B等の差し替え可能)
好ましくは、
図3及び
図4等に示す錯視模様シート2A又は2Bは、ボックス11a又は11b内に差し替え可能に収納可能であり、かつ、台座に用いられるシート材と、少なくとも側板又は背板に用いられるシート材とが連結された、交換可能なインナーシートである。
【0057】
例えば、
図3に示すボックス11aの内装(錯視模様)について、交換可能なインナーシートである、例えば
図4に示すような錯視模様シート2A及び2Bを設けている。いわゆる、複数の錯視模様シート2A及び2Bの着せ替えが可能となる。ボックス11aの内装を容易に差し替えできるということは、あらゆる業種や世界観のデザインにフィットさせることができ、融通性を有する3次元映像表示装置1A及び1Bである。
【0058】
なお、前述した着せ替え方式以外にも、ボックス11aを構成する床、側壁、背壁などの板材にカラー印刷、シール貼付け等により錯視模様を付してもよい。また、模様枠などを用いたスプレー塗装や、これらをいくつか組み合せた色付け、模様付け等であってもよい。
【0059】
また、ボックス11aの材料として、紙、プラスティック、木材、金属材料等、もしくは、それらの組み合せなどを使用してもよい。
【0060】
以上説明したように、実施形態の錯視模様シート及び3次元映像表示装置によれば、低コストで、かつ、簡易な方法により映像表示の立体感、浮遊感などを演出することができる。
【0061】
[第2の実施形態]
以下、本発明に係る錯視模様シート、錯視模様シートの製造方法および3次元映像表示装置の第2の実施形態について、
図7乃至
図16などを用いて説明する。ここで、
図7は、第2の実施形態の3次元映像表示装置1Bの構成の一例を示す図である。
図14は、第2の実施形態の3次元映像表示装置1Bに対応する試作装置で表示された映像(図面代用写真)の一例である。
【0062】
なお、
図10乃至
図15は、
図16に示す3次元映像表示装置1Bに対応する試作品の錯視模様シート2Bから、模様シート(a)~(k)に替えて、映像表示した結果を撮影した検証画像(図面代用写真)である。
【0063】
<「錯視模様+照明+ステージ(段差)」による錯視効果について>
図7に示す3次元映像表示装置1Bは、
図1乃至
図3に示す3次元映像表示装置1Aと同様な構造であり、
図1等に示す錯視模様シート2Aを、
図4(b)に示す錯視模様シート2Bに入れ替えたものである。
【0064】
図7に示す3次元映像表示装置1Bは、ボックス11bと、ハーフミラー12bと、天板15bと、錯視模様シート2Bとを備え、さらに、天板15bには画面枠アダプター13bを配置して、スマートホン4Bを天板15bの上に載置している。なお、
図2と同様の照明器具(照明器具3A)も取り付けている。
【0065】
図7に示す3次元映像表示装置1Bは、正面の視聴ポートのやや下部側からの視線方向の図である。例えば、
図7では、画面枠アダプター13bの画面枠131bと、その開口132bとが見えている様子を示す。
【0066】
(1)ステージ(段差)
例えば、
図7に示す3次元映像表示装置1Bにおいて、ボックス11b内に、虚像対象の人や物等をステージ21b上にあるように演出する場合、ステージ床に影をつけると影の上部に物があるように視覚効果を与えることができる。一方、スマートホン4B(この他にも、PCモニターやTVモニターなど)のモニター画面41bの下部側(視聴ポートから視た場合の下側に対応する側)に床に映る影を投影すると、虚像対象の人物などの足はどうしても、モニター画面41bの下部側から距離を開けて配置する映像にするしかない。
【0067】
その場合に、人がステージ21b上に立っているように見せるには、
図4(b)の錯視模様シート2Bに示すように、ボックス11b内の床の高さ25bを上げることがより好ましく、ボックス11b内にステージに相当するようなシートの段組みを設けている。
【0068】
また、ボックス11b上部の画面枠アダプター13bに設けた画面枠131bの線がステージ21b上に映り込んだ場合に、ホログラムの特徴とする立体的な映像が平面的なものに視覚的に感じてしまうため(立体感を喪失)、モニター端面と人物の足元の距離を開ける意味でも効果的である。
【0069】
図4(b)及び
図6に示す錯視模様シート2Bでは、映像表示の対象に、人物やアニメキャラクターなどが立ったり歩いたりする様子を演出する為に、ボックス11bの床(床面26b)よりも床の高さ25bを上げて、ステージ21bを設けている。ステージ21bを設けなくとも、床に立ったり歩いたりするように見せることは可能です。ただし、画面枠131bと映像表示のなかの人物の足元が近い場合に、画面内での画面ラインが立体感を弱めてしまう。
【0070】
また、例えば、第1の実施形態の錯視模様シート2Aの錯視効果により、その陰影ラインを消すことはできるものの、
図4(a)及び
図5に示す錯視模様シート2Aは床面全面に錯視模様を付しているため、例えばハーフミラー12aに投影された人物等の足元にも錯視模様の柄が被るので、投影した映像自体がはっきり表現でき難くなる。
【0071】
そこで、
図4(b)及び
図6に示す第2の実施形態の錯視模様シート2Bでは、ステージ21bのように、床面26bよりもボックス11b内で物理的に床の高さ25bを上げ、かつ、ステージ21bには無模様範囲212bを設けているため、画面枠131bと虚像で映る人物の足元の距離を開けることができる。
【0072】
さらに、第2の実施形態の錯視模様シート2Bでは、ステージ21bの第一の錯視模様211bと第二の錯視模様213b、背板22bの第三の錯視模様221bと第四の錯視模様223bからなる。以上の錯視模様シート2Bにより、画面枠131bの陰影ラインを錯視効果により打ち消すことができる。
【0073】
また、ステージ21bの無模様範囲212bと、背板22bの無模様範囲222bとにより、人体・足元等ははっきりと映像で映せるため、立体感と躍動感等を感じさせることができ、3Dホログラムとしての効果を最大限に発揮することができる。
【0074】
このように、ボックス11b内で、錯視模様を肉眼ではっきりと確認できるようにするために、強い光(照明)が必要となり、そのために照明が必要である。天板15bにただの開口のみでなく、錯視効果を高めるという照明器具(
図2の照明器具3Aに対応)を取り付けるための照明用開口(
図2の照明用開口154aに対応)が設けられている。
【0075】
次に、「錯視効果あり/なし」「照明あり/なし」でどのように見えるのかを、
図8(a)及び(b)と、
図9(a)の検証画像に基づいて、確認した内容について説明する。
図8(a)及び(b)、
図9(a)は、第2の実施形態の3次元映像表示装置1Bにおける照明効果の影響度を示す検証画像(図面代用写真)である。また、
図9(b)は、錯視模様シート2Bの作成方法の一例を示す検証画像(図面代用写真)である。なお、スマートホン4Bのモニター画面41bの画面枠の陰影ラインは、検証画像のなかの白矢印に示す箇所に投影されている。
【0076】
(イ)採光部の自然光のみの場合
図8(a)は、錯視効果を有するデザインのまま、照明をあてずに採光穴を開口して自然光を取り入れた様子である。もちろん、光量が足りないのでスマートホン4Bのモニター画面41bの枠の陰影ラインが確認できる。
(ロ)照明が暗い場合
図8(b)は、錯視効果を有するデザインであるが、照明が暗いとスマートホン4Bのモニター画面41bの枠の陰影ラインは肉眼でやや確認できる。
【0077】
(ハ)照明が明るい場合
図9(a)は、錯視効果を有するデザインにして、照明を当てると、スマートホン4Bのモニター画面41bの枠の陰影ラインがほぼ見えない。ホログラム映像が映れば、陰影ラインは気にならず、ホログラムに集中ができる。模様を明るく鮮明に見せることが、錯視効果を一層高めることがわかった。
【0078】
<錯視模様シートの製造方法>
図6及び
図7に示す3次元映像表示装置1Bにおいて、照明と、床や壁面のデザイン、およびステージの設置に関して、3Dホログラムの立体感を高める効果のある錯視模様について、以降に「錯視模様シートの製造方法」の一例を示す。
【0079】
例えば、3次元映像表示装置1Bの錯視模様シート2Bの製造例の一つとして、「錯視模様シートの製造方法」を、PC(パーソナルコンピュータ)等にインストールした以下のような錯視模様シート製造プログラムを起動する。
【0080】
錯視模様シート製造プログラム起動後、カメラを有するPC、又は、カメラを有する機器と通信可能なPC等の撮影画像として、表示画面に
図9(b)に示すような画面表示されるとする。
(i)
図7に示す3次元映像表示装置1Bにセットされたスマートホン4Bのモニター画面41b上に、
図9(b)に示すようなモニター41bのサイズ外形を明確に示すことができる表示色によって2次元映像表示枠411bを表示させる。
(ii)3次元映像表示装置1Bのハーフミラー12bを介して、カメラの撮影画面に、
図9(b)に示すような被写体が映る。
図9(b)に示す撮影画像では、モニター画面41b上の2次元映像表示枠411bがハーフミラー12bを介して投影され、撮影方向の視聴ポートから投影表示421bが視認できる。
【0081】
(iii)錯視模様シート製造プログラム起動のPCでは、撮影画像データから投影表示421bを基準として、1又は複数の錯視模様を加飾する範囲を製造対象のシート材に設定する。
例えば、上記の(i)~(iii)などにおいて、錯視模様シート製造プログラムに以下のような工程(ステップ)を含むようにする
・所定の錯視模様を施す内部壁面、床面又は天井面を指定する壁面指定工程
・指定した内部壁面、床面又は天井面において錯視模様を加飾する範囲を指定する加飾範囲指定工程
【0082】
(iv)予め記憶装置等に記憶された錯視模様パターンから印刷するパターンおよび色を選択する(予め、記憶装置・記憶媒体等に錯視効果のある錯視模様パターンを複数記憶させておく)。
例えば、
図9(b)の画像の例では、予め記憶装置・記憶媒体等に記憶された錯視効果のある錯視模様パターンから選択した、白金色模様のマス目型市松模様(例えば、
図6(a)に示す第三の錯視模様221b)と、金色の雪の結晶模様(例えば、
図6(a)に示す第四の錯視模様223b)などを付す。
例えば、上記の(iv)などにおいて、錯視模様シート製造プログラムに以下のような工程(ステップ)を設ける。
・指定した加飾する範囲ごとに錯視模様を指定する錯視模様指定工程
・指定した錯視模様ごとに色を指定する色指定工程
【0083】
(v)ステージ奥行を表現する範囲を作成する場合に、その範囲内の色を選択する(シートの原紙色を指定してもよい)。また、さらに、一部のその範囲内での、付加する錯視模様を選択、又は、変更等してもよい。
【0084】
(vi)さらに、例えば
図9(b)に示すような投影表示421bの範囲外の部分にも、錯視模様と、無模様の箇所を設定、変更等を可能とする。
例えば、雪の結晶模様(例えば、
図6(b)に示す第二の錯視模様213b)を床面の中央部分の黒ステージ(
図6(b)に示す無模様範囲212b)を囲うように模様を付す。
例えば、上記の(v)、(vi)などにおいて、錯視模様シート製造プログラムに以下のような工程(ステップ)を含むようにする。
・各指定工程の終了後、又は、予め記憶された指定パターンを指定もしくは当該指定パターンの一部を変更後に、シート材に指定された錯視模様を施す加飾工程
【0085】
(vii)錯視模様シート製造プログラムにより、例えば錯視模様シート2Bの指定パターンを設定後、PCと通信可能に接続されたカラープリンタに印刷シートをセットして、印刷シートに、錯視模様シート2Bがカラー印刷される。例えば、展開図上に、床面に左右壁面が接続され、また、背面が接続されている平面レイアウトが描かれて、上記設定に従って、印刷シートに模様、色が加飾され、切り取り可能に切れ取り線が設けられる等である。
【0086】
以上のように、展開図上に製造された印刷シートを、切り取り線に沿ってカットすれば、印刷シートが紙であれば、
図4に示すように組立て可能である。また、シール等であれば、カッティング後に、ボックス11b内にカットしたシールを貼り付け可能である。
【0087】
実施形態の錯視模様シートの製造方法によれば、低コストで、かつ、簡易な方法により錯視模様シートを製造することができる。また、前述したように、実施形態の錯視模様シートによれば、低コストで、かつ、簡易な方法により、3次元映像表示装置における映像表示の立体感、浮遊感などを演出することができる。
【0088】
ここで、例えば複数の錯視模様パターン、色等を予め選定等し、予め記憶装置等に記憶させておくためには、以下のような選定基準となるような検証実験や、その結果等を参考とする。
【0089】
<各種模様の比較検証実験>
図10~
図15に、例えば
図7に示す3次元映像表示装置1Bの正面の視聴ポートに向かって、錯視模様シート2Bに対応するエリアの右半面側を検証するための特定の模様を付し、左半面を無模様とした場合の虚像の映像状態を撮影した画像を示す。また、
図10~
図15に示す3次元映像表示装置1Bの撮影状況において、ボックス11b内の照明(
図2の照明器具3Aに対応する照明器具の照明)の明るさは、同じ明るさの条件としている。
【0090】
図10は模様シート(a)と模様シート(b)の検証画像(図面代用写真)、
図11は模様シート(c)と模様シート(d)の検証画像(図面代用写真)、
図12は模様シート(e)と模様シート(f)の検証画像(図面代用写真)である。また、
図13は模様シート(g)と模様シート(h)の検証画像(図面代用写真)、
図14は模様シート(i)と模様シート(j)の検証画像(図面代用写真)、
図15は模様シート(k)の検証画像(図面代用写真)である。
【0091】
図10乃至
図15のなかのいくつかにおいて、画像中の白い矢印の指す箇所に、スマートホンの画面枠の陰影ラインが確認できる。ここで、本出願人は、これらの画像の相対評価として、陰影ラインを気にせず投影した映像に集中できる場合の評価を○とし、投影した映像が陰影ラインの影響で平面的に見えてしまう場合の評価を×とし、気になる人もいれば、気にならない人もいる場合の評価は△と判定して、評価した。
【0092】
なお、実際に撮影した
図10乃至
図15の模様シート(a)~(k)の図面代用写真は、カラー撮影したものであるが、本出願に係る図面には、それらをグレースケール画像に変換している。なお、図面代用写真のカラー画像については、別途、参考資料等として、物件提出書により提出するものである。
【0093】
<検証結果について>
複数の模様において、模様の色と背景の色などについて「明るい色の組み合せ」は陰影ラインを消す効果がある。「明るい色と暗い色の組み合せ」は明るい色を半分以上使用し、明るい色と暗い色を隣り合う位置に等しい大きさで散らばって配置すれば、陰影ラインを消す効果がある。
【0094】
なお、明るい色を単色にした場合、照明の明るさが不足なるにつれ、陰影ラインを消す効果がなくなる。これを解消する場合、明るい色同士を組み合せた柄にすると、陰影ラインを消す効果が高まる。
【0095】
(a)検証画像_0:評価× 照明なし、黒色・無模様である(
図10(a)に示す)。
図10(a)に示す検証画像_0の「暗い色」背景で、無模様の場合、陰影ラインを消す効果がない。
【0096】
(b)検証画像_1:評価× 「暗い色」と「暗い色」の組み合せで、暗い灰色で斜め型入組み模様と黒色の背景である(
図10(b)に示す)。
図10(b)に示す検証画像_1の「暗い色の組み合せ」は、陰影ラインを消す効果がない。
【0097】
(c)検証画像_2:評価× 「明るい色」と「暗い色」の組み合せで、暗い色の面積が大きく、明るい色(黄色)で丸形の模様と、暗い色(黒色)の背景である(
図11(c)に示す)。
図11(c)に示す検証画像_2は、「明るい色」と「暗い色」の組み合せ、暗い色の面積が大きい場合には、陰影ラインを消す効果はない。例えば、「明るい色と暗い色の組み合せ」は暗い色が明るい色よりも少なく、明るい色と暗い色を隣り合う位置に配置しても、暗い色の面積が大きいと暗い色に陰影ラインが見えてしまい、陰影ラインを消す効果はない。
【0098】
(d)検証画像_3:評価○ 「明るい色」と「暗い色」の組み合せで、明るい色の面積が大きく、明るい色(黄色)の背景と、暗い色(黒色)のひずめマーク模様である(
図11(d)に示す)。
図11(d)に示す検証画像_3は、「明るい色」と「暗い色」の組み合せ、明るい色の面積が大きい場合には、陰影ラインを消す効果がある。
【0099】
(e)検証画像_4:評価○ 「明るい色」と「暗い色」の組み合せで、どちらも均等の面積で、明るい色(白色)と暗い色(黒色)の市松模様の組み合せである(
図12(e)に示す)。
図12(e)に示す検証画像_4は、「明るい色」と「暗い色」の組み合せで、どちらも均等の面積の場合にも、陰影ラインを消す効果がある。
【0100】
(f)検証画像_5:評価○ 「明るい色」(白色)と「明るい色」(ピンク色)の市松模様の組み合せである(
図12(f)に示す)。
図12に示す(f)検証画像_5は、「明るい色」と「明るい色」の組み合せの場合には(明るい色(白色)と明るい色(ピンク色)の市松模様の組み合せ)、陰影ラインを消す効果がある。当初、異なる色のコントラスト差が大きいほど、陰影ラインを消す効果があるかと考えていたが、例えば明るい色と暗い色の組み合せが最も効果的な結果になると考えていたが、(f)検証画像_5のように、明るい色同士であればコントラスト差は大きくなくても効果があることを確認した。
【0101】
(g)検証画像_6:評価○ 「複数色の明るい色」と「複数色の暗い色」の組み合せで、明るい色が多く、明るい色(水色)の背景と、複数の明るい色と複数の暗い色の大きめの動物顔キャラクター模様の組み合せで、全体的に明るい(
図13(g)に示す)。
図13(g)に示す検証画像_6は、明るい色(水色)の背景と、複数の明るい色と複数の暗い色の大きめの動物顔キャラクター模様の組み合せで、全体的に明るく、陰影ラインを消す効果がある。
【0102】
(h)検証画像_7:評価× 「複数色の明るい色」と「複数色の暗い色」の組み合せである(
図13(h)に示す)。
一方、
図13(h)に示す検証画像_7は、暗い色が多く、暗い色(緑色)の背景と、複数の暗い色(クリスマスツリー柄模様の濃い緑と茶、靴下模様の赤など)の小さい模様と複数の明るい色(星やベルの模様の黄、靴下や箱の模様の白など)の小さな模様の組み合せで、全体的に暗く、陰影ラインを消す効果がない。
【0103】
(i)検証画像_8:評価△ 「複数色の明るい色」と「複数色の暗い色」の組み合せであり、明暗が均等な色の配置、暗い色(黒色)の背景と、複数の明るい色と複数の暗い色の大きめの花柄模様の組み合せである(
図14(i)に示す)。
図14(i)に示す検証画像_8は、「複数色の明るい色」と「複数色の暗い色」の組み合せで、明暗が均等な色の配置として、暗い色(紺色)の背景と、複数の明るい色と複数の暗い色の大きめの花柄模様の組み合せであり、やや陰影ラインを消す効果がある。「複数の明るい色」と「複数の暗い色」の模様を混在させて、暗い色の背景(紺色)の面積を小さくすれば、陰影ラインは見えにくくなる。これは、背景と柄(模様)の大きさ・距離、位置関係なども錯視効果に影響するということが考えられる。模様として、背景を含めて明るい色と暗い色を交互に配置して明るい色が多いように模様をデザインすれば、錯視効果は得られる易いことが考えられる。
【0104】
(j)検証画像_9:評価× 「暗い色1色のみ」、やや暗い色(濃青色)の背景である(
図14(j)に示す)。
また、
図14(j)に示す検証画像_9は、「暗い色1色のみ」(背景)であり、全体的に暗く、陰影ラインを消す効果がない。
【0105】
(k)検証画像_10:評価△ 「明るい色1色のみ」であり、明るい色(金色)の背景である(
図15(k)に示す)。
図15(k)に示す検証画像_10は、「明るい色1色のみ」(背景)であり、全体的に明るく、やや陰影ラインを消す効果がある。
【0106】
以上のような単色の色と模様、複数の色と複数の模様等の組み合せ検証結果から、陰影ラインを消す効果(錯視効果)のある模様等(錯視模様)と、錯視効果のない模様等として、以下のような概要の分類が考えられる。
(I)「明るい色」と「暗い色」との組み合せの模様の場合(例えば白+黒など)で、コントラスト比が高い場合には、錯視効果が高い。
(II)「明るい色」と「明るい異なる色」との組み合せの模様の場合(例えば白+水色など)で、コントラスト比が低い場合でも、錯視効果がある。
(III)「暗い色」と「暗い異なる色」との組み合せの模様の場合(例えば黒+青など)で、コントラスト比が低い場合には、錯視効果がない。
【0107】
錯視模様シート2B等に施される所定の錯視模様は、少なくとも第1の色が付された第1模様と当該第1の色と異なる第2の色が付された第2模様とが混合された模様の領域内に投影される、3次元映像表示装置1Bの映像投影対象を映像表示する表示画面(モニター画面41b)の枠の影又は3次元映像表示装置1Bに用いられる補助機材(例えば、画面枠アダプター13bなど)の影を、観者の視覚上において視認方向に応じて混合した模様に同化させる。
【0108】
例えば、所定の錯視模様は、前述した(I)「明るい色」と「暗い色」との組み合せの模様の場合(例えば白+黒など)で、コントラスト比が高い場合の、少なくとも第1の色が付された第1明模様と当該第1の色と異なる第2の色が付された第1暗模様とにおける第1明模様と第1暗模様とのコントラスト比が高くされた第1明模様と第1暗模様とが混合した模様である。
【0109】
また、例えば、所定の錯視模様は、前述した(II)「明るい色」と「明るい異なる色」との組み合せの模様の場合(例えば白+水色など)で、コントラスト比が低い場合でも、少なくとも第3の色が付された第2明模様と当該第3の色と異なる第4の色が付された第3明模様によって第2明模様と第3明模様とが混合された模様である。
【0110】
暗い色を組み合せる場合は、明るい色を同等以上の割合で使用し、隣接する色のコントラスト比を高くする。明るい色が隣接する場合は、コントラスト比が高くなくても使用できる。一方、暗い色の面積が大き過ぎると、隣接する色が明るくても陰影ラインを消す効果が低くなるので、できる限り細かく色を隣接する方が好ましい。
【0111】
なお、どんなに明るい色を使用しても十分な照明で照らさないと効果は低くなる。「明るい色」は「照明の明るさ」によって、光の反射が大きくなり、陰影ラインを消す効果が高くなる傾向である。「暗い色」は「照明の明るさ」を高めても、光を吸収して反射が小さいので、陰影ラインを消す効果は低くなる傾向である。よって、色の錯視効果に加えて、ボックス内の照明についても、錯視効果を高める要素があると考えられる。
【0112】
また、明るい色を基準として、隣の色の方が明るい色よりも同等以下の面積であることも条件になると考えられる。明るい色に引っ張られて隣の色の陰影ラインも見えなくなるが、隣の色の面積が大きくなると明るい色に引っ張れる効果が薄れる。
【0113】
ここで、「陰影ラインを消す」とは、混合した模様の領域内に投影される影を、視覚上において、混合した模様に同化させていると考えられる。というのは、色は、視覚情報のみに依拠して脳の中に作り出される信号である。すなわち、脳で処理される色の信号として、この混合した模様の領域内に投影される影を同化して捉えていると考えられるということである。
【0114】
さらに、
図6乃至
図8に示す錯視模様シート2Bについて、例えば
図16に示す例のように、陰影ラインが映るような部分だけ錯視模様にし、映像が投影される部分を暗い色にすれば投影した映像が鮮明になり、浮遊感も増すので3Dホログラムの演出効果が高まるということができる。
【0115】
以上説明したように、実施形態の錯視模様シート、錯視模様シートの製造方法及び3次元映像表示装置によれば、低コストで、かつ、簡易な方法により映像表示の立体感、浮遊感などを演出することができる。
【0116】
[第3の実施形態]
以下、本発明に係る錯視模様シート、3次元映像表示装置1Cの第3の実施形態について、
図17及び
図18を用いて説明する。ここで、
図17は、第3の実施形態の3次元映像表示装置1Cの構成の一例を示す図である。
図18は、第3の実施形態の3次元映像表示装置1Cにおける錯視模様シートの効果の例を示す映像(図面代用写真)である。
【0117】
第1及び第2の実施形態の3次元映像表示装置1A及び1Bの構成では、表示機器4A及び4Bとして、主にスマートホン等の比較的小型の携帯情報端末、タブレット端末等を対象にしたものを想定したものである。一方、
図17に示す3次元映像表示装置1Cの構成では、表示機器として、主にコンピュータ等に接続され、又は、コンピュータを内蔵する中型・大型等のサイズであるモニター画面を有するモニター機器4Cを利用したものであり、例えばボックス11cの形状も、幅、奥行き、高さ等が、40cm~1m数十cm程度のサイズのものがある。
【0118】
図17に示す3次元映像表示装置1Cは、主に、箱状のボックス11cと、ボックス11c内の台座に対して略45°の傾斜角度で立て掛けられたハーフミラー12cとを備え、さらにボックス11c内に照明器具3Cとモニター機器4Cとを備える構成である。また、比較検証のために、ボックス11c内の床面の領域を半分に分割して、錯視模様(錯視模様シート2Cとする)と無模様(無模様シート2Xとする)との両方を施したものである。
【0119】
例えば、
図17に示す3次元映像表示装置1Cに対応する装置として、EVAROO ZT27(アールエスケイ株式会社製)を用いて、
図18に示す3次元映像表示の画像を撮影したものである。
【0120】
図17に示す錯視模様シート2Cは、3次元映像表示装置1Cにおける映像空間内の内部壁面又は床面に用いられる板、又は、当該板に配置若しくは貼り付けるシート材に所定の錯視模様を施すことができる。
【0121】
図18(a)及び(b)に、錯視模様シート2Cの一例の画像を示す。ここで、
図18(a)及び(b)に示される映像空間は、3次元映像表示装置1Cに対応するEVAROO ZT27(アールエスケイ株式会社製)のボックス11c内である。
【0122】
ボックス11c内の床面の錯視模様シート2Cがある側を、視認方向から向かって左半面側とすると、右半面側が無模様シート2Xである(ボックス11cの無模様の床である)。これにより、市松模様の床と黒い床の比較をあらわした検証画像を、同時に撮影することができる。
【0123】
図18(a)は、モニター機器4Cから映像表示をする前の状態であるが、照明器具3Cによりボックス11c内部が照らされ、3次元映像表示装置1Cのボックス11c内の床面の無模様シート2Xには、細長い陰影ライン(白矢印で示される個所の影)が現れている。一方、3次元映像表示装置1Cのボックス11c内の床面の半面に錯視模様シート2Cには、細長い陰影ラインが現れていない。
【0124】
次に、
図18(b)は、モニター機器4Cから映像表示をして、ハーフミラー12cを通して、映像が表示されている状態である。この映像表示状態においても、同様に、3次元映像表示装置1Cのボックス11c内の床面の無模様シート2Xには、細長い陰影ライン(白矢印で示される個所の影)が現れている。一方、3次元映像表示装置1Cのボックス11c内の床面の半面に錯視模様シート2Cには、細長い陰影ラインが現れていない。
【0125】
所定の錯視模様の一例として、
図17及び
図18に示す錯視模様シート2Cは、例えば第1の色(白)が付された明模様と第2の色(黒)が付された暗模様とにおける明模様と暗模様とのコントラスト比が高くされ、混合した模様(市松模様)の領域内に投影される影(相対的に錯視模様のコントラスト比に比べて、コントラスト比が低い色の陰影ライン)を視覚上において混合した模様に同化させる。
【0126】
図18に示す検証映像では、市松模様範囲(錯視模様シート2C)内の床面部分ではこの陰影ラインが消えていることが明確に確認できる。また、市松模様でなくても明暗のはっきりしたものや、前述したような検証結果から一定の条件の模様であれば市松模様以外の模様でも同様の効果が得られることを確認した。
【0127】
また、入り組んだ柄でも明暗差(コントラスト比が高い模様)のあるデザインなら錯視効果が同様に得られることが判明した。例えば、
図6(a)及び(b)に示す錯視模様シート2Bにおける、花模様柄のような入り組んだ柄(第二の錯視模様213b、第四の錯視模様223b)が含まれても、明暗差(コントラスト比が高い模様)のあるデザインなら錯視効果が得られる。その他の模様についても、前述した各種模様の比較検証実験のように、検証結果が得られた。
【0128】
[第4の実施形態]
以下、本発明に係る錯視模様シート、3次元映像表示装置1Dの第4の実施形態について、
図19及び
図20を用いて説明する。ここで、
図19は、
図20に示す検証結果の比較のための(b)第4の実施形態の3次元映像表示装置1Dの構成と、(a)比較した3次元映像表示装置1Xの構成とを示す図である。
図20は、第4の実施形態の3次元映像表示装置1Dにおける錯視模様シート2Dの効果の例を示す映像(図面代用写真)である。
【0129】
なお、
図19に示す3次元映像表示装置1D及び1Xに対応する装置として、EVAROO RX20(アールエスケイ株式会社製)を用いて、
図20に示す3次元映像表示の画像を撮影したものである。なお、3次元映像表示装置1Dは、3面(視認ポートが3ポート)のハーフミラー12dを天板15dから台座11dにかけて、傾斜して立て掛けられている。3次元映像表示装置1Dにおいて、この3面のハーフミラー12dにより囲われた映像空間に3次元映像を視認させることができる。また、3次元映像表示装置1Xについても、同様である。
【0130】
図19(a)に示す3次元映像表示装置1Xは、
図19(b)に示す3次元映像表示装置1Dと装置構成は、一部を除き同じ構造である。一部の相違は、
図19(b)に示す3次元映像表示装置1Dには、錯視模様シート2Dとして、床面の模様111d及び背板面の模様112dが付されている。一方、
図19(a)に示す3次元映像表示装置1Xには、模様シート2Xdとして、床面の模様111x(床面の模様111dと同じ模様)のみが付されている。
【0131】
以上の3次元映像表示装置1Xと3次元映像表示装置1Dとの錯視効果の相違は、
図20(a)に示す3次元映像表示装置1Xの検証撮影では、白矢印の箇所に陰影ライン(天板15xから2次元映像を表示する表示機器の)が映っている。この白矢印の箇所の陰影ラインは、3次元映像表示装置1Xの天板15xに組み込まれている、2次元映像を表示する表示機器のモニター画面枠が原因である。
【0132】
一方、
図20(b)に示す背板面の模様112dが付されている3次元映像表示装置1Dでは、白矢印の箇所に陰影ラインが映っていない。この結果、
図20(b)に示すように、3次元映像表示装置1Dの視認方向が正面視では、3次元映像表示装置1Dにおける錯視模様シート2Dにより、
図20(a)に示す背板の下部側の白矢印の箇所の陰影ラインが消えていることがわかった。
【0133】
なお、このような陰影ラインは、3次元映像表示装置1Xを観者がどの方向から視認するかによっても、どの箇所に陰影ラインが見えるかが異なる。そのため、視認方向が多方向から視認できる3次元映像表示装置1D等では、錯視効果のある錯視模様をどこの箇所に付するかによっても、陰影ラインを消す効果が異なる点に留意することも判明した。
【0134】
また、今まで説明した検証画像は、スマートホン、コンピュータ等に接続されるモニター機器等の映像表示機器における3次元映像表示装置について、3Dホログラム表示のための改善方法であったが、この他にも、バーチャルリアリティ、劇場、演劇等の舞台装置などの演出に関する構造物(例えば、舞台の床、ステージ、背景等の舞台壁面などの構造物)における舞台演出などにおける3次元映像表示の改善方法として、本発明の錯視効果を有する錯視模様を適用可能である。
【0135】
すなわち、実施形態の3次元映像表示装置は、ボックス又は演出に関する構造物に一又は複数のハーフミラーを有し、当該ボックス又は演出に関する構造物内に映像投影領域を有して、当該一又は複数のハーフミラーを介して2次元映像から3次元映像を観者が視認可能な所定の錯視模様シートが用いられる装置である。
【0136】
実施形態の3次元映像表示装置では、映像投影領域に面するボックス又は演出に関する構造物の内部壁面、床面又は天井面に錯視模様シートが用いられ、錯視模様シートが用いられたボックス又は演出に関する構造物の内部壁面、床面又は天井面の所定の錯視模様が施された模様の領域内に投影される、3次元映像表示装置の映像投影対象を映像表示する表示画面の枠の影、又は、3次元映像表示装置に用いられる補助機材の影を、観者の視覚上において視認方向に応じて当該模様の領域内の模様に同化させるものである。
【0137】
以上各実施形態で説明したように、実施形態の錯視模様シート、錯視模様シートの製造方法及び3次元映像表示装置によれば、低コストで、かつ、簡易な方法により映像表示の立体感、浮遊感などを演出することができる。
【0138】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、例えば各実施形態の特徴を組み合せてもよい。さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0139】
1A、1B、1C、1D、1X…3次元映像表示装置、2A、2B、2C、2D…錯視模様シート、2X…無模様、2Xd…模様シート、3A、3C…照明器具、4A、4B…スマートホン(表示機器)、モニター機器…4C、11a、11b、11c、11d、11x…ボックス、12a、12b、12c、12d、12x…ハーフミラー、13a、13b、14a…画面枠アダプター、15a、15b、15d、15x…天板、21a、26b…床面、21b…ステージ、22a、22b…背板、23a、23b、24a、24b…側板、25b…床の高さ、41a、41b…モニター画面、111a…映像視聴開口、111d、111x…床面の模様、112d…背板面の模様、112x…背板面の無模様、112a、112b…ミラー係止部、121a…ミラー固定枠、122a…透光材、131a、131b、141a…画面枠、132a、132b、142a…開口、151a…天板枠、152a…投影用開口、153a…ハーフミラー挿入開口、154a…照明用開口、211b…第一の錯視模様、212b…無模様範囲、213b…第二の錯視模様、221a…第一の錯視模様、221b…第三の錯視模様、222a、222b…無模様範囲、223a…第二の錯視模様、223b…第四の錯視模様、411b…2次元映像表示枠、421b…投影表示