(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022546
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】電子機器、サーバおよびキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
G01P 21/00 20060101AFI20220131BHJP
G08G 1/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
G01P21/00
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110311
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】398058588
【氏名又は名称】Dynabook株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】羽禰田 卓志郎
(72)【発明者】
【氏名】松野 厚
(72)【発明者】
【氏名】服部 清
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘康
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC27
5H181CC30
5H181FF05
5H181FF10
(57)【要約】
【課題】手動キャリブレーションと自動キャリブレーションとを組み合わせて、加速度センサの適切なキャリブレーションを可能とする電子機器を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、電子機器は、移動体に設置され、加速度センサと、メモリと、キャリブレーション手段と、を具備する。キャリブレーション手段は、移動体が停止状態にある場合に取得された加速度センサの出力値のうち、新しい順にN個までの出力値をメモリに格納し、メモリに格納されている加速度センサの出力値を用いて、加速度センサの角度補正に適用すべき補正角度を算出する。キャリブレーション手段は、所定の操作が行われた場合、メモリに格納されているN個の加速度センサの出力値を、所定の操作が行われた場合における加速度センサの出力値に更新し、更新後の加速度センサの出力値を用いて補正角度を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設置される電子機器であって、
加速度センサと、
メモリと、
前記移動体が停止状態にある場合に取得された前記加速度センサの出力値のうち、新しい順にN個までの出力値を前記メモリに格納し、前記メモリに格納されている前記加速度センサの出力値を用いて、前記加速度センサの角度補正に適用すべき補正角度を算出するキャリブレーション手段と、
を具備し、
前記キャリブレーション手段は、所定の操作が行われた場合、前記メモリに格納されているN個の前記加速度センサの出力値を、前記所定の操作が行われた場合における前記加速度センサの出力値に更新し、更新後の前記加速度センサの出力値を用いて前記補正角度を算出する、
電子機器。
【請求項2】
前記キャリブレーション手段は、前記メモリに格納されている前記加速度センサの出力値がM(M<N)個更新される毎に、前記加速度センサの角度補正に適用されている前記補正角度を更新するために、前記メモリに格納されている前記加速度センサの出力値を用いて前記補正角度を算出する請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記キャリブレーション手段は、前記加速度センサの角度補正に適用されている前記補正角度と、前記メモリに格納されているN個の前記加速度センサの出力値の中の新しい順にL(L<N)個の前記加速度センサの出力値を用いて算出される前記補正角度との差分が閾値を超える場合、前記加速度センサの角度補正に適用されている前記補正角度を更新するために、前記メモリに格納されている前記加速度センサの出力値を用いて前記補正角度を算出する請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記キャリブレーション手段は、前記メモリに格納されているN個の前記加速度センサの出力値の中から中央値に近い順にK(K<N)個を選定し、選定したK個の前記加速度センサの出力値を用いて前記補正角度を算出する請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記キャリブレーション手段は、所定の期間を超えて連続的に前記移動体が停止状態にある場合、前記加速度センサの出力値を前記メモリに格納する請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記キャリブレーション手段は、前記所定の操作が行われない場合、前記移動体が停止状態にある場合における前記加速度センサの出力値が前記メモリにN個格納された後、前記メモリに格納されている前記加速度センサの出力値を用いて前記補正角度を算出する請求項1~5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
通信装置と、
メモリと、
移動体に設置されている電子機器が有する加速度センサの出力値を前記通信装置によって前記電子機器から受信し、前記移動体が停止状態にある場合に取得された前記加速度センサの出力値のうち、新しい順にN個までの出力値を前記メモリに格納し、前記メモリに格納されている前記加速度センサの出力値を用いて、前記加速度センサの角度補正に適用すべき補正角度を算出し、算出した前記補正角度を前記通信装置によって前記電子機器へ送信するキャリブレーション手段と、
を具備し、
前記キャリブレーション手段は、所定の操作が行われた旨の前記電子機器からの通知が前記通信装置によって受信された場合、前記メモリに格納されているN個の前記加速度センサの出力値を、前記所定の操作が行われた場合における前記加速度センサの出力値に更新し、更新後の前記加速度センサの出力値を用いて、前記補正角度を算出する、
サーバ。
【請求項8】
移動体に設置される電子機器によって実行される加速度センサのキャリブレーション方法であって、
前記移動体が停止状態にある場合に取得された前記加速度センサの出力値のうち、新しい順にN個までの出力値をメモリに格納し、前記メモリに格納されている前記加速度センサの出力値を用いて、前記加速度センサの角度補正に適用すべき補正角度を算出することを具備し、
前記算出することは、所定の操作が行われた場合、前記メモリに格納されているN個の前記加速度センサの出力値を、前記所定の操作が行われた場合における前記加速度センサの出力値に更新し、更新後の前記加速度センサの出力値を用いて前記補正角度を算出することを含む、
キャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器、サーバおよびキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドライブレコーダーなどと称される、たとえば事故発生時の状況を映像で記録するための電子機器を車両に設置することが一般的になりつつある。また、最近では、通信機能付きのドライブレコーダーが普及し始めている。この種のドライブレコーダーは、カメラに加えて、加速度センサ、ジャイロセンサ、GPS(global positioning system)受信機などを搭載し、映像データに加えて、加速度データ、速度データ、位置データなどを記録する。また、この種のドライブレコーダーは、これらの各種データを用いて各種イベントを検知し、たとえば車両に関する各種サービスを提供するサーバへ通知する。
【0003】
加速度センサは、X軸(車両の前後方向)、Y軸(車両の左右方向)、Z軸(車両の上下方向)の3軸方向に対応したものが一般的である。加速度センサによって検知すべきイベントには、急加速、急減速、急ブレーキ、事故相当の大きな衝撃などがあるが、これらのイベントを精度よく検知するためには、加速度センサの3軸のキャリブレーションが必要になる。
【0004】
このキャリブレーションは、様々なタイミングや目的で行われる。たとえば、加速度センサが組み込まれたドライブレコーダーを車両に設置したタイミングで実施されるキャリブレーションもあれば、設置後に向きを変えた場合などに対応することを目的として実施されるキャリブレーションもある。また、このキャリブレーションには、ユーザ操作により実施されるもの(手動キャリブレーション)と、ドライブレコーダー側で自動的に実施されるもの(自動キャリブレーション)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4688534号公報
【特許文献2】特開2013-130935号公報
【特許文献3】特許第4736866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キャリブレーション実行時の理想的な環境は、移動体が水平な場所で重力以外の加速度が印加されていない環境である。従って、キャリブレーションは、ドライブレコーダーが設置された車両が水平な場所に停止している状況下で行うことが好ましい。しかし、自動キャリブレーションでは、その場所が水平かどうかを判断することは困難であるため、キャリブレーションの精度を高めるには、多くの場所でのサンプルが必要になり、完了までに時間がかかる。また、手動キャリブレーションも、その場所が水平かどうかを判断することは困難であることから、誤ったキャリブレーションが行われてしまう場合がある。キャリブレーションが正しく行われていない場合、イベントの誤検知が増えるといった問題を生じさせる可能性がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、手動キャリブレーションと自動キャリブレーションとを適応的に組み合わせて、加速度センサの適切なキャリブレーションを可能とする電子機器、サーバおよびキャリブレーション方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、電子機器は、移動体に設置され、加速度センサと、メモリと、キャリブレーション手段と、を具備する。キャリブレーション手段は、移動体が停止状態にある場合に取得された加速度センサの出力値のうち、新しい順にN個までの出力値をメモリに格納し、メモリに格納されている加速度センサの出力値を用いて、加速度センサの角度補正に適用すべき補正角度を算出する。キャリブレーション手段は、所定の操作が行われた場合、メモリに格納されているN個の加速度センサの出力値を、所定の操作が行われた場合における加速度センサの出力値に更新し、更新後の加速度センサの出力値を用いて補正角度を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態のドライブレコーダーを含んでなる情報処理システムの一構成例を示す図
【
図2】第1実施形態のドライブレコーダーの一構成例を示す図
【
図3】第1実施形態のドライブレコーダーによって実行される加速度センサの手動キャリブレーションのロジックについて説明するための図
【
図4】第1実施形態のドライブレコーダーによって実行される加速度センサの自動キャリブレーションのロジックについて説明するための図
【
図5】第1実施形態のドライブレコーダーが自動キャリブレーションのロジックによって手動キャリブレーションを実行する方法について説明するための図
【
図6】第1実施形態のドライブレコーダーにおける手動キャリブレーションと自動キャリブレーションとの適応的な組み合わせを説明するための図
【
図7】第1実施形態のドライブレコーダーにおける加速度センサのキャリブレーションの状態の遷移を示す図
【
図8】第2実施形態のドライブレコーダーにおける加速度センサのキャリブレーションの状態の遷移を示す図
【
図9】第1実施形態または第2実施形態のドライブレコーダーのキャリブレーション機能をサーバに移転した情報処理システムの一構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態のドライブレコーダー100が設置される車両1と、ドライブレコーダー100から得られる情報を活用した各種サービスを提供するサーバ2と、車両1とサーバ2とを接続するネットワーク3とからなる情報処理システムの一構成例を示す図である。
【0013】
ドライブレコーダー100は、通信機能を有し、たとえば加速度センサなどで検知した車両1に関するイベントを、ネットワーク3経由でサーバ2に通知する。サーバ2は、ドライブレコーダー100から通知されるイベントに基づき、車両1のユーザ、車両1を保有するレンタル会社、ユーザやレンタル会社が加入する保険会社などに対して各種サービスを提供する。
【0014】
なお、ここでは、ドライブレコーダー100が有する通信機能が、ネットワーク3経由でサーバ2と直接的に通信可能なものであることを想定するが、車両1を介してサーバ2と通信可能なものであってもよい。また、ここでは、ドライブレコーダー100とサーバ2とがネットワーク3を介して接続される情報処理システムを想定しているので、ドライブレコーダー100が通信機能を搭載することとしているが、後述するキャリブレーションに関しては、通信機能は必須でない。換言すれば、後述するキャリブレーションは、スタンドアロンな環境下で動作するドライブレコーダーにおいても有効である。また、ここでは、ドライブレコーダー100が、たとえば加速度センサなどで車両1に関するイベントを検知することを想定するが、サーバ2が、たとえば加速度センサなどの出力値をドライブレコーダー100から受信して、そのドライブレコーダー100が設置されている車両1に関するイベントを検知してもよい。
【0015】
図2は、本実施形態のドライブレコーダー100の一構成例を示す図である。
【0016】
図2に示すように、ドライブレコーダー100は、プロセッサ101、メモリ102、カメラ103、加速度センサ104、ジャイロセンサ105、GPS受信機106を有する。また、ドライブレコーダー100は、通信装置107、モニタ108、スピーカ109、スイッチ群110を有する。さらに、ドライブレコーダー100は、PSC(power supply controller)111、インターフェース112を有する。また、ドライブレコーダー100には、外部電源201と、外部ストレージ202とが接続される。外部ストレージ202は、たとえばカード型のフラッシュメモリであり、ドライブレコーダー100が備えるスロットに取り外し自在に収納される。
【0017】
プロセッサ101は、ドライブレコーダー100内の各コンポーネントを制御する。プロセッサ101は、加速度センサ104のキャリブレーションを行うキャリブレーション機能部151を有する。キャリブレーション機能部151は、たとえば、メモリ102に格納されているプログラムをプロセッサ101が実行することによって実現される。あるいは、キャリブレーション機能部151は、電気回路として実現されてもよい。このキャリブレーション機能部151については後述する。
【0018】
メモリ102は、プロセッサ101によって実行されるプログラムや、プログラムによって使用されるデータなどを格納する。プログラムによって使用されるデータには、たとえば加速度センサ104の出力値などが含まれる。また、メモリ102は、プロセッサ101によって実行されるプログラムの作業領域としても利用される。キャリブレーション機能部151は、このメモリ102に加速度値テーブル152を格納する。この加速度値テーブル152についても後述する。
【0019】
カメラ103は、たとえば車両1の前方の画像を撮像する。つまり、ドライブレコーダー100は、たとえば車両1の前方の画像をカメラ103によって撮像するのに適した向きで車両1に設置される。カメラ103によって撮像された画像は、一時的にメモリ102に格納され、モニタ108や、インターフェース112経由で外部ストレージ202に供給される。カメラ103によって撮像される画像は、たとえばMPEG(moving picture experts group)規格に準拠した動画像である。また、カメラ103によって撮像される画像は、通信装置107経由でサーバ2に供給されてもよい。
【0020】
加速度センサ104は、車両1の前後方向(X軸)、左右方向(Y軸)、上下方向(Z軸)の加速度を検知して出力する。前述したように、ドライブレコーダー100は、たとえば車両1の前方の画像をカメラ103によって撮像するのに適した向きで車両1に設置される。ドライブレコーダー100は、様々な車種の車両1に設置され得るので、たとえば車種によって異なる傾きを持った状態で設置され得る。また、設置後にドライブレコーダー100の向きが変更される可能性もある。キャリブレーション機能部151が実行するキャリブレーションは、どのような車種の車両1にドライブレコーダー100が設置されても、あるいは、設置後にドライブレコーダー100の向きが変更されても、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向の加速度が適切に得られるように、加速度センサ104の角度補正に適用すべき補正角度を算出するものである。本実施形態のドライブレコーダー100においては、キャリブレーション機能部151が、手動キャリブレーションと自動キャリブレーションとを適応的に組み合わせた独自のキャリブレーションを実行する。なお、ここでは、車両1に設置されるドライブレコーダー100に搭載される加速度センサ104のキャリブレーションを例示するが、たとえば飛翔体に設置される測定機器や検査機器などに搭載される加速度センサのキャリブレーションであってもよい。つまり、ここで説明される加速度センサのキャリブレーションは、特定の種類の移動体に限定されず、かつ、特定の種類の電子機器に限定されない。
【0021】
ジャイロセンサ105は、車両1の旋回時の角速度を検知して出力する。GPS受信機106は、複数の人口衛星から発信される電波を受信し、車両1の現在位置の緯経度や高度を検知して出力する。
【0022】
通信装置107は、たとえば、ネットワーク3を利用するための中継局として点在するアクセスポイントとの間で無線通信を実行する。通信装置107は、アクセスポイントが形成する無線サービスエリア内に車両1が位置するならば、ネットワーク3経由のサーバ2との間の通信を実行することができる。また、各々が異なるアクセスポイントによって形成される複数の無線サービスエリア間を車両1が移動した場合でも、通信装置107が実行中の通信は継続される。
【0023】
モニタ108は、たとえばカメラ103が撮像中の画像をリアルタイムに表示する。あるいは、モニタ108は、外部ストレージ202に格納されている、過去に撮像された画像を表示する。モニタ108には、たとえばユーザに対するメッセージなどが表示されてもよい。スピーカ109は、たとえば警告音などを出力する。スイッチ群110は、ドライブレコーダー100に対するユーザの指示を入力する。ユーザは、スイッチ群110を操作して、加速度センサ104のキャリブレーションの実行を指示することができる(手動キャリブレーション)。なお、この操作について、ユーザは、必ずしも加速度センサ104のキャリブレーションを認識していなくともよい。たとえばドライブレコーダー100の向きを変えた場合などに行うことが推奨されている操作といった程度の認識であっても構わない。また、モニタ108がタッチスクリーンディスプレイの場合には、この操作を、モニタ108上でのタッチ操作としてもよい。以下、この操作を、キャリブレーション操作と称する。
【0024】
PSC111は、外部電源201から供給される電力を使って、ドライブレコーダー100内の各コンポーネントの動作用電力を生成する。インターフェース112は、メモリ102と外部ストレージ202との間における画像の送受信を中継する。外部ストレージ202には、所定の時間長の動画像を含むファイルが順次格納され、外部ストレージ202内が当該ファイルで満たされると、最も古いファイルが選択・消去されて、新しいファイルが入れ替わりに格納される。このように外部ストレージ202へ格納される、カメラ103によって撮像された画像は、逆に、インターフェース112経由で外部ストレージ202からメモリ102に取り込んで、モニタ108に表示することもできる。
【0025】
次に、以上のような構成をもつドライブレコーダー100上で動作するキャリブレーション機能部151について説明する。
【0026】
次に、キャリブレーション機能部151によって実行される加速度センサ104の手動キャリブレーションのロジックについて、
図3を用いて説明する。
図3には、本実施形態のドライブレコーダー100の外観の一例が示されている。
図3に示すように、ドライブレコーダー100の周壁には、カメラ103のレンズ103Aが配置されている。
【0027】
図3中、符号a1が示す矢印は、加速度センサ104の補正前の重力加速度観測値を表している。また、符号a2_X、a2_Y、a2_Zが表す矢印は、加速度センサ104の補正前の3軸方向を表している。一方、符号a3_X、a3_Y、a3_Zが表す矢印は、加速度センサ104の補正後の3軸方向を表している。
【0028】
ユーザがキャリブレーション操作を行うと、キャリブレーション機能部151は、その時の加速度センサ104の出力値を用いて、ドライブレコーダー100の傾き、つまり補正角度を算出する。より詳しくは、キャリブレーション機能部151は、キャリブレーション操作が行われた時点における加速度センサ104の重力加速度観測値に基づき、X軸方向およびY軸方向の加速度が0となるように補正角度を算出する。なお、キャリブレーション操作は、車両1が停止状態にある場合に行われることを前提としている。
【0029】
一方、
図4は、キャリブレーション機能部151によって実行される加速度センサ104の自動キャリブレーションのために取得する重力加速度データの取得時期について説明するための図である。
【0030】
キャリブレーション機能部151は、GPS受信機106で得られる情報や、加速度センサ104によって得られる情報に基づき、車両1が走行状態にあるのか停止状態にあるのかを判定する。その判定手法は、特定の手法に限定されず、既知の様々な手法を適用し得る。キャリブレーション機能部151は、過去一定回数分(
図4の例では、過去30回分)の停止区間(b1~b30)における加速度センサ104の重力加速度観測値(G
S1~G
S30)の平均(G
AVG)を用いて、補正角度を算出する。加速度値テーブル152は、当該過去一定回数分の停止区間における加速度センサ104の重力加速度観測値を保持し格納するテーブルである。キャリブレーション機能部151は、加速度センサ104の重力加速度観測値を、この加速度値テーブル152に巡回的に保持又は格納する。具体的には、一定回数分の重力加速度観測値が加速度値テーブル152に格納されている状態で、車両1が停止状態にあると判定された場合、キャリブレーション機能部151は、加速度値テーブル152内の最も古い重力加速度観測値を、その時の重力加速度観測値に上書きする。このように重力加速度観測値を都度取得し、加速度値テーブル152のうち、所定の条件に該当するデータ(本実施形態では最も古い観測値)に対して、都度取得された重力加速度観測値に更新する。そして、他に格納済みの重量加速度観測値は、そのまま保持する。なお、停止判定ロジックによっては、車両1が停止状態にあると瞬間的に誤判定するケースも考えられるため、キャリブレーション機能部151は、一定秒数以上連続で停止状態にあると判定された区間を停止区間としてもよい。
【0031】
また、キャリブレーション機能部151は、必ずしも、加速度値テーブル152に格納されている一定回数分の停止区間における重力加速度観測値のすべてを用いて補正角度を算出しなくてもよい。たとえば中央値から近い順に一定個数選定して補正角度の算出に使用してもよい。この場合、たとえば道路の状態などによる重力加速度観測値のばらつきを低減することができる。
【0032】
ここで、
図5を参照して、まず、以上のようなロジックで自動キャリブレーションを実行するキャリブレーション機能部151が、当該自動キャリブレーションのロジックによって手動キャリブレーションを実行する方法について説明する。
【0033】
キャリブレーション操作が行われると、キャリブレーション機能部151は、加速度値テーブル152に格納されている一定回数分の停止区間における重力加速度観測値のすべてを、その時の加速度センサ104の重力加速度観測値(GI)に上書きする。これらの全部または(中央値から近い順に一定個数の)一部を用いて算出される重力加速度観測値の平均は、その時の加速度センサ104の重力加速度観測値となる。つまり、キャリブレーション機能部151は、自動キャリブレーションのロジックで、手動キャリブレーションを実行することができる。換言すれば、キャリブレーション機能部151は、自動キャリブレーションのロジックのみで、手動キャリブレーションと自動キャリブレーションとの双方を実現する。なお、加速度値テーブル152に重力加速度観測値が未格納の状態、または、一定数に満たない数の重力加速度観測値が格納されている状態の場合も、キャリブレーション機能部151は、キャリブレーション操作が行われたならば、既存の重力加速度観測値への上書きだけではなく、その時の重力加速度観測値を一定数加速度値テーブル152に格納する。
【0034】
次に、
図6を参照して、キャリブレーション機能部151が、手動キャリブレーションと自動キャリブレーションとを適応的に組み合わせることによって、加速度センサ104の適切なキャリブレーションを可能とする点について説明する。
【0035】
手動キャリブレーションには、キャリブレーションに適さない環境下、つまり、水平ではない場所でキャリブレーション操作が行われた場合、不適正な補正角度が算出されてしまい、かつ、改めてキャリブレーション操作が行われるまで、当該不適正な補正角度が適用され続けてしまうという問題がある。一方、自動キャリブレーションには、サンプルが一定数必要なため、完了までに時間がかかるという問題がある。キャリブレーション機能部151は、手動キャリブレーションと自動キャリブレーションとを適応的に組み合わせることによって、これらの問題点を解決する。つまり、加速度センサ104の適切なキャリブレーションを可能とする。
【0036】
たとえば、ドライブレコーダー100を車両1に設置した時や、ドライブレコーダー100の向きを変えた時、ユーザが、キャリブレーション操作を行ったと想定する。その時の環境は、キャリブレーションに適した環境であるとは限らない。
【0037】
前述したように、キャリブレーション操作が行われると、キャリブレーション機能部151は、その時の重力加速度観測値を一定数加速度値テーブル152に格納する。キャリブレーション機能部151は、すべてがその時の重力加速度観測値である当該一定数の重力加速度観測値を用いて、自動キャリブレーションのロジックで加速度センサ104の補正角度を算出する。つまり、キャリブレーション機能部151は、実質的に、その時の重力加速度観測値を用いた手動キャリブレーションを実行する。
【0038】
その後、キャリブレーション機能部151は、停止区間毎に、加速度値テーブル152に格納されている重力加速度観測値を、当該停止区間における重力加速度観測値に順次更新する。キャリブレーション機能部151は、加速度値テーブル152に格納されている重力加速度観測値の平均を用いて補正角度を算出するので、以降、自動キャリブレーションによる補正割合が高まっていく。従って、もし、キャリブレーションに適さない環境下でキャリブレーション操作が行われ、不適正な補正角度が算出・適用されてしまったとしても、自動キャリブレーションによって、徐々に是正されていく。また、手動キャリブレーションが行われた際、その時点で許容範囲の重力加速度観測値が一定数集まることになるので、これらをベース(サンプル)に自動キャリブレーションを進めていくことによって、完了までに時間がかかるという問題を解消することができる。
【0039】
図7は、キャリブレーション機能部151による加速度センサ104のキャリブレーションの状態の遷移を示す図である。
【0040】
ドライブレコーダー100の運用が開始されると、加速度センサ104のキャリブレーションの状態は、まず、符号S1で示す「角度補正無し」の状態となる。このS1の状態でキャリブレーション操作が行われると(
図7(1))、キャリブレーション機能部151は、自動キャリブレーションのロジックで、その時の重力加速度観測値を一定数加速度値テーブル152に格納することによる実質的な手動キャリブレーションを実行する。これにより、加速度センサ104のキャリブレーションの状態は、符号S2で示す「手動キャリブレーションによる角度補正」の状態となる。
【0041】
また、キャリブレーション機能部151は、ドライブレコーダー100の稼働中、車両1の停止区間の検知および当該停止区間における重力加速度観測値の加速度値テーブル152への格納を継続的に実行する。もし、ドライブレコーダー100の運用が開始されて「角度補正無し」(S1)の状態となった後、キャリブレーション操作が行われないまま放置されたとする。この場合でも、キャリブレーション機能部151は、重力加速度観測値が一定回数以上蓄積された時点で(
図7(2))、一定回数分の重力加速度観測値を用いた自動キャリブレーションを実行する。これにより、加速度センサ104のキャリブレーションの状態は、符号S3で示す「自動キャリブレーションによる角度補正」の状態となる。なお、
図7では、停止区間における重力加速度観測値を、「停止時データ」と表記している。
【0042】
一方、「手動キャリブレーションによる角度補正」(S2)の状態へ移行後、重力加速度観測値が1回以上蓄積されると(
図7(3))、つまり、キャリブレーション操作時に格納された加速度値テーブル152内の重力加速度観測値が1以上更新されると、キャリブレーション機能部151は、当該更新された重力加速度観測値を含む一定数の重力加速度観測値を用いた自動キャリブレーションを実行する。これにより、加速度センサ104のキャリブレーションの状態は、符号S4で示す「手動+自動キャリブレーションによる角度補正」の状態となる。「手動+自動キャリブレーションによる角度補正」(S4)の状態とは、一定数の重力加速度観測値の中に、キャリブレーション操作時の重力加速度観測値と停止区間における重力加速度観測値とが混在している状態である。停止区間が検知される毎に、キャリブレーション操作時の重力加速度観測値が、停止区間における重力加速度観測値へ1つずつ更新されていくので、自動キャリブレーションによる角度補正の割合が徐々に高くなっていく。
【0043】
さらに、(「手動キャリブレーションによる角度補正」(S2)の状態へ移行後)重力加速度観測値が一定回数以上蓄積されると(
図7(4))、つまり、加速度値テーブル152内が停止区間における重力加速度観測値で占められると、キャリブレーション機能部151は、停止区間における重力加速度観測値のみの一定回数分の重力加速度観測値を用いた自動キャリブレーションを実行することになる。これにより、加速度センサ104のキャリブレーションの状態は、「自動キャリブレーションによる角度補正」(S3)の状態となる。「自動キャリブレーションによる角度補正」(S3)の状態への移行後、キャリブレーション機能部151は、停止区間が検知される毎に、加速度値テーブル152内の停止区間における重力加速度観測値を新旧入れ替えていきながら、自動キャリブレーションを継続的に実行する(
図7(5))。なお、「自動キャリブレーションによる角度補正」(S3)の状態への移行後の自動キャリブレーションは、加速度値テーブル152内の重力加速度観測値が更新される毎に実行してもよいし、2以上の所定数の更新毎に実行してもよい。たとえば所定数が5の場合、
図7(3)の「1回以上」は5回となる。
【0044】
「自動キャリブレーションによる角度補正」(S3)の状態、または、「手動+自動キャリブレーションによる角度補正」(S4)の状態のとき、キャリブレーション操作が行われると(
図7(6)、(7))、キャリブレーション機能部151は、加速度値テーブル152に格納されている重力加速度観測値のすべてを、その時の重力加速度観測値に更新した上で、自動キャリブレーションのロジックで、実質的な手動キャリブレーションを実行する。これにより、加速度センサ104のキャリブレーションの状態は、「手動キャリブレーションによる角度補正」(S2)の状態へ移行する。
【0045】
以上のように、本実施形態のドライブレコーダー100においては、手動キャリブレーションと自動キャリブレーションとを適応的に組み合わせることによって、(1)手動キャリブレーションには、キャリブレーションに適さない環境下、つまり、水平ではない場所でキャリブレーション操作が行われた場合、不適正な補正角度が算出されてしまい、かつ、改めてキャリブレーション操作が行われるまで、当該不適正な補正角度が適用され続けてしまうという問題がある、(2)自動キャリブレーションには、サンプルが一定数必要なため、完了までに時間がかかるという問題がある、等の問題を解決し、加速度センサ104の適切なキャリブレーションを可能とする。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
【0047】
本実施形態のドライブレコーダーも、第1実施形態のドライブレコーダーと同様の構成をもつことを想定する。そこで、第1実施形態と同じ構成要素については同じ符号を用いることとし、また、それらについての説明は省略することとする。
【0048】
本実施形態のドライブレコーダー100における、第1実施形態のドライブレコーダー100と異なる点は、キャリブレーション操作に応じてキャリブレーション(手動キャリブレーション)を実行後のキャリブレーション機能部151の動作にある。
【0049】
図8は、本実施形態におけるキャリブレーション機能部151による加速度センサ104のキャリブレーションの状態の遷移を示す図である。
【0050】
第1実施形態においては、キャリブレーション機能部151は、「角度補正無し」(S1)の状態で放置されている場合を除き、停止区間における重力加速度観測値が蓄積される毎に、自動キャリブレーションのロジックで加速度センサ104のキャリブレーションを実行する。たとえば、キャリブレーション操作が行われて、「手動キャリブレーションによる角度補正」(S2)の状態へ移行した後、停止区間における重力加速度観測値が1回以上蓄積されると、「手動+自動キャリブレーションによる角度補正」(S4)の状態に移行する。また、(「手動キャリブレーションによる角度補正」(S2)の状態への移行後)停止区間における重力加速度観測値が一定回数以上蓄積されると、「自動キャリブレーションによる角度補正」(S3)の状態に移行する。そして、「自動キャリブレーションによる角度補正」(S3)の状態、または、「手動+自動キャリブレーションによる角度補正」(S4)の状態において、キャリブレーション機能部151は、停止区間における重力加速度観測値が蓄積される毎に、自動キャリブレーションのロジックで加速度センサ104のキャリブレーションを実行する。
【0051】
これに対して、本実施形態においては、キャリブレーション機能部151は、「手動キャリブレーションによる角度補正」(S2)の状態への移行後、または、「自動キャリブレーションによる角度補正」(S3)の状態への移行後、所定の条件を満たした場合に限り、補正角度を更新するためのキャリブレーションを実行する。なお、「角度補正無し」(S1)の状態で放置された場合については、第1実施形態と同様、重力加速度観測値が一定回数以上蓄積された時点で、一定回数分の重力加速度観測値を用いた自動キャリブレーションを実行する。
【0052】
所定の条件とは、たとえば、適用中の補正角度と、過去一定回数分の停止区間における重力加速度観測値の平均を用いて算出される補正角度との差が、一定角度以上である場合などである。
【0053】
この条件を課す理由は、停止時の加速度値は道路の状態によって多少変化することがあるが、ドライブレコーダー100の設置後は、向きの変更等を実施しない限りは角度の変化は基本的にないので、継続的な角度補正は必要ないためである。また、継続的に角度補正を行うと、坂道を走行し続けているケース等で過度な補正が行われ、イベント検知の結果に悪影響を与えてしまう可能性があるためである。
【0054】
たとえば、「手動キャリブレーションによる角度補正」(S2)の状態への移行後、重力加速度観測値が一定回数以上蓄積されると(
図8(3A))、加速度センサ104のキャリブレーションの状態は、所定の条件を満たすまでキャリブレーションの実行が待機される「手動キャリブレーションによる角度補正」(S2A)の状態に移行する。
図8(3A)の「一定回数」は、
図8(2)の「一定回数」と同じであってもよいし、
図8(2)の「一定回数」よりも小さい値としてもよい。
図8(3A)の「一定回数」とは、前述した、所定の条件の「適用中の補正角度と、過去一定回数分の停止区間における重力加速度観測値の平均を用いて算出される補正角度との差が、一定角度以上である場合」の「一定回数」である。
【0055】
「手動キャリブレーションによる角度補正」(S2A)の状態において所定の条件を満たした場合(
図8(4A))、キャリブレーション機能部151は、加速度値テーブル152に格納されている重力加速度観測値を用いたキャリブレーションを実行する。これにより、加速度センサ104のキャリブレーションの状態は、「自動キャリブレーションによる角度補正」(S3)の状態へ移行する。なお、
図8(3A)の「一定回数」が、
図8(2)の「一定回数」よりも小さい値である場合には、「自動キャリブレーションによる角度補正」(S3)の状態は、第1実施形態において説明した「手動+自動キャリブレーションによる角度補正」(S4)の状態を含み得る。
【0056】
また、「自動キャリブレーションによる角度補正」(S3)の状態への移行後、キャリブレーション機能部151は、停止区間が検知される毎に、加速度値テーブル152内の停止区間における重力加速度観測値を新旧入れ替えていきながら、所定の条件を満たすか否かをチェックし、所定の条件を満たす場合(
図8(5A))、加速度値テーブル152に格納されている重力加速度観測値を用いたキャリブレーションを実行する。
【0057】
なお、キャリブレーション操作が行われた場合(
図8(6)、(7))、加速度値テーブル152内の重力加速度観測値すべてがその時の重力加速度観測値に更新されて、「手動キャリブレーションによる角度補正」(S2)の状態へ移行する点は、第1実施形態と同様である。
【0058】
本実施形態のドライブレコーダー100においては、さらに、必要以上の継続的な角度補正(キャリブレーション)を省略でき、また、坂道を走行し続けているケース等で過度な補正が行われてしまうことを防止することができる。そして、本実施形態のドライブレコーダー100においても、手動キャリブレーションと自動キャリブレーションとを適応的に組み合わせることによって、加速度センサ104の適切なキャリブレーションを可能とする。
【0059】
ところで、以上では、ドライブレコーダー100がキャリブレーション機能部151を有する例を説明した。これに限らず、たとえば
図9に示すように、キャリブレーション機能部151に相当するキャリブレーション機能部21をサーバ2が有し、サーバ2のキャリブレーション機能部21が、たとえば加速度センサ104などの出力値をドライブレコーダー100から受信し、加速度センサ104の補正角度を算出し、ドライブレコーダー100に送信するようにしてもよい。あるいは、ドライブレコーダー100が設置される車両1において、ドライブレコーダー100に搭載される加速度センサ104の補正角度を算出するようにしてもよい。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…車両、2…サーバ、3…ネットワーク、100…ドライブレコーダー、101…プロセッサ、102…メモリ、103…カメラ、104…加速度センサ、105…ジャイロセンサ、106…GPS受信機、107…通信装置、108…モニタ、109…スピーカ、110…スイッチ群、111…PSC、112…インターフェース、151…キャリブレーション機能部、152…加速度値テーブル、201…外部電源、202…外部ストレージ。