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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022555
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池発電機
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20220131BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20220131BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20220131BHJP
   H01M 8/249 20160101ALN20220131BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/12 101
H01M8/04537
H01M8/249
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110564
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】中村 貞紀
(72)【発明者】
【氏名】古谷 政博
(72)【発明者】
【氏名】赤木 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】森澤 誠
(72)【発明者】
【氏名】内山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中林 正剛
(72)【発明者】
【氏名】内山 靖之
(72)【発明者】
【氏名】川田 哲也
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB25
5H127AC05
5H127AC07
5H127BA01
5H127BA13
5H127BA21
5H127BA37
5H127BA60
5H127BA65
5H127BA67
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB27
5H127BB37
5H127CC18
5H127DA20
5H127DB66
5H127DC08
5H127DC09
5H127DC28
5H127EE02
(57)【要約】
【課題】脱硫装置を要しなくとも硫黄を含む燃料ガスを使用しつつ固体酸化物形燃料電池の発電能力が低下することを抑えることができる固体酸化物形燃料電池発電機を提供すること。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池発電機11は、燃料ガスと酸化ガスとで発電する固体酸化物形の燃料電池部26と、燃料電池部26に酸化ガスを送る酸化ガス供給部21と、酸化ガスを燃料電池部26の空気極13bに導く空気極用酸化ガス供給路16bと、酸化ガスを燃料電池部26の燃料極13aに導く燃料極用酸化ガス供給路16aと、ガス容器12に収容された燃料ガスを燃料電池部26に導く燃料ガス供給路15と、燃料ガスを利用し燃料電池部26を加熱する加熱手段17と、酸化ガスと燃料ガスとを所定比率で燃料極13aに供給する制御を実行する制御部58と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化ガスとで発電する固体酸化物形の燃料電池部と、
前記燃料電池部に前記酸化ガスを送る酸化ガス供給部と、
前記酸化ガス供給部から送られた前記酸化ガスを前記燃料電池部の空気極に導く空気極用酸化ガス供給路と、
前記酸化ガス供給部から送られた前記酸化ガスを前記燃料電池部の燃料極に導く燃料極用酸化ガス供給路と、
ガス容器に収容された前記燃料ガスを前記燃料電池部に導く燃料ガス供給路と、
前記燃料ガス供給路により導かれた前記燃料ガスを利用し前記燃料電池部を加熱する加熱手段と、
前記燃料極用酸化ガス供給路を通して導かれた前記酸化ガスと前記燃料ガス供給路を通して導かれた前記燃料ガスとを所定比率で前記燃料極に供給する制御を実行する制御部と、
を備えたことを特徴とする固体酸化物形燃料電池発電機。
【請求項2】
前記制御部は、所定時間おきに、前記燃料ガス供給路を通して導かれた前記燃料ガスの供給を停止して前記燃料極用酸化ガス供給路を通して導かれた前記酸化ガスのみを前記燃料極に供給する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池発電機。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃料電池部で発生した電力を受け前記電力に関する情報に基づいて、前記燃料ガス供給路を通して導かれた前記燃料ガスの供給を停止して前記燃料極用酸化ガス供給路を通して導かれた前記酸化ガスのみを前記燃料極に供給する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池発電機。
【請求項4】
前記燃料極用酸化ガス供給路と前記燃料ガス供給路とに接続され、前記酸化ガスおよび前記燃料ガスの両方を前記燃料極に導く状態と、前記酸化ガスのみを前記燃料極に導く状態と、を切り替え可能な分岐弁をさらに備え、
前記制御部は、前記分岐弁を制御することにより前記比率を調整することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池発電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)を備える発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、連続的に供給された燃料ガス(水素(H)、一酸化炭素(CO))と酸化ガス(空気など酸素(O)を含む混合ガス)とで生ずる電気化学反応により電気エネルギーを生成する。電力を発生させる燃料電池部は、アノード(燃料極)と、カソード(空気極)と、を有する。アノードには、燃料ガスを供給する燃料ガス供給路が接続されている。カソードには、酸化ガスを供給する酸化ガス供給路が接続されている。
【0003】
特許文献1には、固体酸化物形の燃料電池部と、脱硫装置と、改質器と、を備えた固体酸化物形燃料電池発電システムが開示されている。特許文献1に記載された固体酸化物形燃料電池発電システムは、燃料ガスとして、ガス容器に充填されたブタンガスなどを主とする炭化水素燃料(カートリッジガス)を利用している。
【0004】
ここで、カートリッジガスや都市ガスやLPG(液化石油ガス)などの化石燃料ガスは、着臭剤として硫黄成分を含んでいる。硫黄成分は、固体酸化物形燃料電池のセルに悪影響を及ぼす。例えば、燃料ガスに含まれる硫黄成分は、固体酸化物形燃料電池のセルに付着し、固体酸化物形燃料電池のセルに炭素を析出させる。炭素が固体酸化物形燃料電池のセルに析出すると、炭素がセルと燃料ガスとの化学反応を阻害し十分な発電が行われず、固体酸化物形燃料電池の発電能力が低下する。そのため、特許文献1に記載された固体酸化物形燃料電池発電システムのように、固体酸化物形燃料電池を備える発電機は、一般的に、燃料ガスから硫黄成分を除去する脱硫装置を備える。そして、改質器は、脱硫装置により硫黄成分を除去された燃料ガスを水素(H)および一酸化炭素(CO)などに改質してから水素(H)および一酸化炭素(CO)を燃料電池部のアノードに供給する。
【0005】
しかし、脱硫装置および改質器が設けられると、固体酸化物形燃料電池を備える発電機が複雑化し大型化する。また、脱硫装置および改質器のメンテナンスが必要になる。そのため、固体酸化物形燃料電池を備える発電機を持ち運ぶことが困難になるという点において改善の余地がある。固体酸化物形燃料電池を備える発電機に対しては、商用電源が供給されてない屋外や被災地現場などにおいて、例えばスマートフォンやタブレット端末などの電気製品を充電したり、LED(Light Emitting Diode)照明器などの電気製品を使用したりするために必要な電力の発生能力が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-27766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、脱硫装置を要しなくとも硫黄を含む燃料ガスを使用しつつ固体酸化物形燃料電池の発電能力が低下することを抑えることができる固体酸化物形燃料電池発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、燃料ガスと酸化ガスとで発電する固体酸化物形の燃料電池部と、前記燃料電池部に前記酸化ガスを送る酸化ガス供給部と、前記酸化ガス供給部から送られた前記酸化ガスを前記燃料電池部の空気極に導く空気極用酸化ガス供給路と、前記酸化ガス供給部から送られた前記酸化ガスを前記燃料電池部の燃料極に導く燃料極用酸化ガス供給路と、ガス容器に収容された前記燃料ガスを前記燃料電池部に導く燃料ガス供給路と、前記燃料ガス供給路により導かれた前記燃料ガスを利用し前記燃料電池部を加熱する加熱手段と、前記燃料極用酸化ガス供給路を通して導かれた前記酸化ガスと前記燃料ガス供給路を通して導かれた前記燃料ガスとを所定比率で前記燃料極に供給する制御を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機により解決される。
【0009】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機によれば、制御部は、燃料極用酸化ガス供給路を通して導かれた酸化ガスと、燃料ガス供給路を通して導かれた燃料ガスと、を所定比率で燃料極に供給する。そのため、例えば、制御部は、燃料ガスを酸化ガスで薄めて燃料ガスに含まれる硫黄成分の濃度を所定濃度以下に抑え、所定濃度以下の硫黄成分を含む燃料ガスを燃料電池部の燃料極に供給することができる。あるいは、例えば、制御部は、燃料ガスを酸化ガスで薄めて燃料ガスに含まれる硫黄成分の濃度を極めて低い濃度以下に抑え、燃料電池部の燃料極を酸化ガスでパージすることができる。そのため、燃料ガスに含まれる硫黄成分が固体酸化物形の燃料電池部のセルに付着することを抑えることができる。そのため、炭素が固体酸化物形の燃料電池部のセルに析出することを抑え、燃料電池部のセルと燃料ガスとの化学反応が炭素により阻害されることを抑えることができる。これにより、本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機は、脱硫装置を要しなくとも硫黄を含む燃料ガスを使用しつつ固体酸化物形の燃料電池部の発電能力が低下することを抑えることができる。また、脱硫装置が不要となるため、固体酸化物形燃料電池発電機の小型化、軽量化およびメンテナンスフリー化を図ることができる。これにより、可搬型の固体酸化物形燃料電池発電機を提供することができる。
【0010】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機において、好ましくは、前記制御部は、所定時間おきに、前記燃料ガス供給路を通して導かれた前記燃料ガスの供給を停止して前記燃料極用酸化ガス供給路を通して導かれた前記酸化ガスのみを前記燃料極に供給する制御を実行することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機によれば、制御部は、所定時間おきに、燃料ガス供給路を通して導かれた燃料ガスの供給を停止して燃料極用酸化ガス供給路を通して導かれた酸化ガスのみを燃料極に供給する。これにより、制御部は、所定時間おきに燃料電池部の燃料極を酸化ガスでパージすることができる。例えば、制御部は、燃料ガスに含まれる硫黄成分が固体酸化物形の燃料電池部のセルに付着したり堆積したりする前に、燃料電池部の燃料極を酸化ガスで定期的にパージすることができる。そのため、燃料ガスに含まれる硫黄成分が固体酸化物形の燃料電池部のセルに付着することをより一層抑えることができる。そのため、炭素が固体酸化物形の燃料電池部のセルに析出することをより一層抑え、燃料電池部のセルと燃料ガスとの化学反応が炭素により阻害されることをより一層抑えることができる。これにより、本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機は、脱硫装置を要しなくとも硫黄を含む燃料ガスを使用しつつ固体酸化物形の燃料電池部の発電能力が低下することをより一層抑えることができる。
【0012】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機において、好ましくは、前記制御部は、前記燃料電池部で発生した電力を受け前記電力に関する情報に基づいて、前記燃料ガス供給路を通して導かれた前記燃料ガスの供給を停止して前記燃料極用酸化ガス供給路を通して導かれた前記酸化ガスのみを前記燃料極に供給する制御を実行することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機によれば、制御部は、燃料電池部で発生した電力を受け、その電力に関する情報に基づいて、燃料ガス供給路を通して導かれた燃料ガスの供給を停止し、燃料極用酸化ガス供給路を通して導かれた酸化ガスのみを燃料極に供給する。これにより、制御部は、燃料電池部で発生した電力に関する情報に基づいて、燃料電池部の燃料極を酸化ガスでパージすることができる。例えば、制御部は、燃料電池部で発生した電力量や、燃料電池部で発生した電力量の初期電力量に対する低下率などに基づいて、燃料電池部の燃料極を酸化ガスでパージすることができる。そのため、燃料ガスに含まれる硫黄成分が固体酸化物形の燃料電池部のセルに付着することをより一層抑えることができる。そのため、炭素が固体酸化物形の燃料電池部のセルに析出することをより一層抑え、燃料電池部のセルと燃料ガスとの化学反応が炭素により阻害されることをより一層抑えることができる。これにより、本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機は、脱硫装置を要しなくとも硫黄を含む燃料ガスを使用しつつ固体酸化物形の燃料電池部の発電能力が低下することをより一層抑えることができる。
【0014】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機は、好ましくは、前記燃料極用酸化ガス供給路と前記燃料ガス供給路とに接続され、前記酸化ガスおよび前記燃料ガスの両方を前記燃料極に導く状態と、前記酸化ガスのみを前記燃料極に導く状態と、を切り替え可能な分岐弁をさらに備え、前記制御部は、前記分岐弁を制御することにより前記比率を調整することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池発電機によれば、制御部は、燃料極用酸化ガス供給路と燃料ガス供給路とに接続された分岐弁を制御することにより、燃料電池部に供給する酸化ガスと燃料ガスとの比率を調整することができる。つまり、制御部は、1つの分岐弁を制御することにより、燃料電池部に供給する酸化ガスと燃料ガスとの比率を容易に調整することができる。これにより、燃料極用酸化ガス供給路と燃料ガス供給路とのそれぞれに弁が設けられた場合と比較して、1つの分岐弁で酸化ガスと燃料ガスとの比率を容易に調整することができるとともに脱硫装置および改質器などの付帯設備を省略することができ、固体酸化物形燃料電池発電機のより一層の小型化および軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、脱硫装置を要しなくとも硫黄を含む燃料ガスを使用しつつ固体酸化物形燃料電池の発電能力が低下することを抑えることができる固体酸化物形燃料電池発電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機を表す斜視図である。
図2】本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機の要部構成を表すブロック図である。
図3】本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機の要部構成の具体例を例示するブロック図である。
図4】本発明者が実施した試験の条件を表す表である。
図5】着臭剤を含む燃料ガスと着臭剤を含まない燃料ガスとで実施した試験の結果の一例を表すグラフである。
図6】アノードを酸化ガスでパージした場合とアノードを酸化ガスでパージしなかった場合とで実施した試験の結果の一例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機を表す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機の要部構成を表すブロック図である。
図3は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機の要部構成の具体例を例示するブロック図である。
【0020】
本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11は、ブタンガスなどを主とする燃料ガス(炭化水素燃料)を充填したガス容器12を使用し、電力を必要とする様々な時に、必要とする場所に移動して発電できる発電機である。言い換えれば、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11は、ガス容器12に収容された燃料ガスを利用し、商用電源が供給されてない屋外や被災地現場などにおいて利用可能とされた可搬型の発電機である。ガス容器12に収容されたブタンガスなどを主とする炭化水素燃料は、着臭剤として硫黄成分を含んでいる。
【0021】
図1図3に表したように、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11は、燃料電池部26と、酸化ガス供給部21と、酸化ガス供給路16と、燃料極用酸化ガス供給路16aと、空気極用酸化ガス供給路16bと、燃料ガス供給路15と、バーナ17と、制御部58と、を備える。固体酸化物形燃料電池発電機11は、熱電発電部61をさらに備えていてもよい。本実施形態の説明では、固体酸化物形燃料電池発電機11が熱電発電部61を備える場合を例に挙げる。但し、熱電発電部61は、必ずしも設けられていなくともよい。図1に表したように、燃料電池部26と、酸化ガス供給部21と、バーナ17と、熱電発電部61と、制御部58と、は、筐体63に設けられている。
【0022】
燃料電池部26は、燃料ガスと酸化ガスとで発電する固体酸化物形の燃料電池部である。すなわち、燃料電池部26は、燃料ガス(水素(H)および一酸化炭素(CO))と酸化ガス(空気など酸素(O)を含む混合ガス)とで生ずる電気化学反応により電気エネルギーを生成する固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)を有する。
【0023】
燃料電池部26は、複数のセルモジュールを有する。図1に表したように、本実施形態の燃料電池部26は、第1セルモジュール27aと、第2セルモジュール27bと、第3セルモジュール27cと、第4セルモジュール27dと、を有する。セルモジュールは、セルスタックなどとも呼ばれる。なお、燃料電池部26が有するセルモジュールの数は、4つに限定されるわけではなく、3つ以下であってもよく、5つ以上であってもよい。本実施形態の説明では、燃料電池部26が4つのセルモジュール27a、27b、27c、27dを有する場合を例に挙げる。
【0024】
図2に表したように、各セルモジュール27a、27b、27c、27dは、燃料電池部26の最小単位として複数のセル13を有する。燃料電池部26のセル13は、酸化反応が起こるアノード(燃料極)13aと、還元反応が起こるカソード(空気極)13bと、イオン伝導体である電解質13cと、を有する。本実施形態のアノード13aは、本発明の「燃料極」の一例である。本実施形態のカソード13bは、本発明の「空気極」の一例である。アノード13aは、混合ガス供給路28および分岐弁65を介して燃料極用酸化ガス供給路16aおよび燃料ガス供給路15に接続されている。カソード13bは、空気極用酸化ガス供給路16bに接続されている。アノード13aでは、水素(H)および一酸化炭素(CO)の少なくともいずれかが燃料として使用される。カソード13bでは、空気(酸素)が酸化剤として使用される。
【0025】
酸化ガス供給部21は、酸化ガス供給路16に接続されている。酸化ガス供給路16は、熱交換器23よりも下流側において、燃料極用酸化ガス供給路16aと、空気極用酸化ガス供給路16bと、に分岐している。酸化ガス供給部21は、酸化ガス供給路16、燃料極用酸化ガス供給路16aおよび混合ガス供給路28を通して燃料電池部26のアノード13aに酸化ガスを送る。また、酸化ガス供給部21は、酸化ガス供給路16および空気極用酸化ガス供給路16bを通して燃料電池部26のカソード13bに酸化ガスを送る。
【0026】
例えば、酸化ガス供給部21は、複数の送風機を有する。図3に表したように、本実施形態の酸化ガス供給部21は、第1送風機21aと、第2送風機21bと、を有する。第1送風機21aは、酸化ガス供給路16、燃料極用酸化ガス供給路16aおよび混合ガス供給路28を通して燃料電池部26のアノード13aに酸化ガスを送る。第2送風機21bは、酸化ガス供給路16および空気極用酸化ガス供給路16bを通して燃料電池部26のカソード13bに酸化ガスを送る。第1送風機21aおよび第2送風機21bとしては、例えばエアポンプやファンなどが挙げられる。なお、酸化ガス供給部21が有する送風機の数は、2つに限定されるわけではなく、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0027】
酸化ガス供給路16は、酸化ガス供給部21に接続された流路であり、酸化ガス供給部21から送られた酸化ガスを燃料電池部26に導く。前述したように、酸化ガス供給路16は、熱交換器23よりも下流側において、燃料極用酸化ガス供給路16aと、空気極用酸化ガス供給路16bと、に分岐している。燃料極用酸化ガス供給路16aは、分岐弁65および混合ガス供給路28を介して燃料電池部26のアノード13aに接続されている。空気極用酸化ガス供給路16bは、燃料電池部26のカソード13bに接続されている。
【0028】
ガス容器12は、例えば圧縮された液化ガスが収容されたカートリッジ式ガスボンベであり、燃料ガスを収容している。ガス容器12から吐出された燃料ガスは、容器接続部64(図1参照)の内部に設けられたガバナに入り圧力調整される。なお、ガス容器12がカートリッジ式ガスボンベである場合には、ガス容器12と容器接続部64との着脱機構は、マグネット式とされている。これによれば、ガスボンベが加熱されてガスボンベの内部圧力が異常に上昇した時、安全機構が作動してガス容器12と容器接続部64との接続が外れる。
【0029】
燃料ガス供給路15は、容器接続部64に接続された流路であり、ガス容器12に充填されたブタンガスなどの燃料ガスを燃料電池部26のアノード13aに導く。具体的には、図2および図3に表したように、燃料ガス供給路15は、分岐弁65を介して接続された混合ガス供給路28を通して燃料ガスを燃料電池部26のアノード13aに導く。ガス容器12に収容されたブタンガスなどを主とする炭化水素燃料は、着臭剤として硫黄成分を含んでいる。
【0030】
バーナ17は、ガス容器12から燃料ガス供給路15を通して供給された燃料ガス(炭化水素燃料)を燃焼して燃料電池部26を発電開始温度まで加熱する。具体的には、図2および図3に表したように、バーナ燃料供給路22が、燃料ガス供給路15から分岐され、バーナ17に接続されている。ガス容器12から容器接続部64を介して供給される燃料ガスは、燃料ガス供給路15とバーナ燃料供給路22とガス・空気混合器(図示せず)とを通り、空気と混合されながらバーナ17に導かれる。
【0031】
バーナ17の近傍には、電極(図示せず)が設けられている。利用者が操作摘まみ部(図示せず)を回転させると、イグナイタ(図示せず)が押されてパルス電圧が発生する。バーナ17の近傍に設けられた電極は、操作摘まみ部の回転により発生したパルス電圧により放電し、ガス容器12からバーナ17に供給された燃料ガスを燃焼させ、バーナ17に点火することができる。本実施形態のバーナ17は、本発明の「加熱手段」の一例である。
【0032】
熱電発電部61は、高温部61aと、低温部61bと、熱電素子61cと、を有し、バーナ17により加熱される。具体的には、高温部61aは、例えば燃料電池部26に対向して設けられ、バーナ17から放出される火炎および排ガスから伝わる熱により加熱される。高温部61aは、受熱部として機能し、バーナ17から放出される火炎および排ガスから伝わる熱を効率的に受けて熱電素子61cに伝える。低温部61bは、熱電素子61cを介して高温部61aから離れて設けられている。低温部61bは、高温部61aに対向して配置され、高温部61aよりも低い温度に保持される。低温部61bの冷却方式は、特に限定されるわけではなく、例えば自然空冷方式であってもよく強制空冷方式であってもよい。
【0033】
熱電素子61cは、高温部61aと低温部61bとの間に挟設され、高温部61aと低温部61bとの間に生ずる温度差に基づいて発電する。熱電素子61cは、ゼーベック効果を利用して熱起電力を発生させる。熱電素子は、熱電変換素子あるいは熱電発電素子などとも呼ばれる。熱電素子61cは、高温部61aと低温部61bとの間に生ずる温度差が例えば約100℃~150℃程度になると、より多くの熱起電力を発生させることができる。
【0034】
図2に表したように、排気路19が燃料電池部26に接続されている。排気路19は、燃料電池部26から排出される高温の排気ガスを固体酸化物形燃料電池発電機11の外部に排出する流路である。排気路19には、CO除去器18が設けられている。CO除去器18は、内部に設けられた触媒を利用して200℃以上の温度の排気ガスからCOを除去する。
【0035】
また、図2に表したように、酸化ガス供給路16および排気路19には、熱交換器23が設けられている。熱交換器23は、酸化ガス供給路16と排気路19との間で熱交換を行う。本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11では、2つの熱交換器23、すなわち低温側熱交換器23aと高温側熱交換器23bとが設けられている。
【0036】
酸化ガス供給部21から酸化ガス供給路16に送られた酸化ガスは、低温側熱交換器23aを通り、低温側熱交換器23aにおける排気路19を流れる排気ガスと熱交換を行い昇温する。続いて、低温側熱交換器23aを通過した酸化ガスは、高温側熱交換器23bを通り、高温側熱交換器23bにおける排気路19を流れる排気ガスと熱交換を行いさらに昇温する。そして、低温側熱交換器23aおよび高温側熱交換器23bを通過して高温になった酸化ガスは、燃料極用酸化ガス供給路16aを通してアノード13aに導かれるとともに、空気極用酸化ガス供給路16bを通してカソード13bに導かれる。
【0037】
燃料電池部26における発電で生ずる高温の排気ガスは、高温側熱交換器23bを通り、高温側熱交換器23bにおける酸化ガス供給路16を流れる酸化ガスと熱交換を行い、温度を下げる。燃料電池部26から排出され高温側熱交換器23bを通過する前の排気ガスの温度は、例えば約600℃以上である。高温側熱交換器23bを通過し温度を下げた排気ガスの温度は、例えば約200℃以上である。これにより、CO除去器18の触媒は、排気ガスに対してより確実に作用する。続いて、高温側熱交換器23bを通過した排気ガスは、CO除去器18および低温側熱交換器23aを通り、低温側熱交換器23aにおける酸化ガス供給路16を流れる酸化ガスと熱交換を行い、温度をさらに下げる。低温側熱交換器23aを通過し温度を下げた排気ガスの温度は、例えば約80℃未満である。そして、高温側熱交換器23bおよび低温側熱交換器23aを通過して低温になった排気ガスは、排気路19の出口から排出される。
【0038】
分岐弁65は、燃料極用酸化ガス供給路16aと、燃料ガス供給路15と、に接続されている。言い換えれば、分岐弁65は、燃料極用酸化ガス供給路16aと、燃料ガス供給路15と、を互いに連結させている。分岐弁65は、いわゆる三方弁であり、燃料極用酸化ガス供給路16aを通して導かれた酸化ガスおよび燃料ガス供給路15を通して導かれた燃料ガスの両方をアノード13aに導く状態と、燃料極用酸化ガス供給路16aを通して導かれた酸化ガスのみをアノード13aに導く状態と、燃料ガス供給路15を通して導かれた燃料ガスのみをアノード13aに導く状態と、を切り替えることができる。
【0039】
制御部58は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11の全体的な動作の制御を実行する。例えば、図2および図3に表したように、制御部58は、燃料電池部26および熱電発電部61で発生した電力を受けて酸化ガス供給部21に供給する。また、制御部58は、燃料電池部26および熱電発電部61で発生した電力を受け、その電力に関する情報に基づいて分岐弁65の動作を制御する。この詳細については、後述する。また、制御部58は、電力変換装置54を有する。電力変換装置54は、燃料電池部26で発生した電力を受け、直流電力を交流電力に変換する。
【0040】
ここで、前述したように、ガス容器12に収容されたブタンガスなどを主とする燃料ガス(炭化水素燃料)は、着臭剤として硫黄成分を含んでいる。硫黄成分は、燃料電池部26のセル13に悪影響を及ぼす。例えば、燃料ガスに含まれる硫黄成分は、燃料電池部26のセル13に付着し、燃料電池部26のセル13に炭素を析出させる。炭素が燃料電池部26のセル13に析出すると、炭素が燃料電池部26のセル13と燃料ガスとの化学反応を阻害し十分な発電が行われず、燃料電池部26の発電能力が低下する。そのため、固体酸化物形燃料電池を備える発電機は、一般的に、燃料ガスから硫黄成分を除去する脱硫装置を備える。そして、脱硫装置よりも下流側に設けられた改質器が、脱硫装置により硫黄成分を除去された燃料ガスを水素(H)および一酸化炭素(CO)などに改質してから水素(H)および一酸化炭素(CO)を燃料電池部のアノードに供給する。
【0041】
しかし、脱硫装置および改質器が設けられると、固体酸化物形燃料電池を備える発電機が複雑化し大型化する。また、脱硫装置および改質器のメンテナンスが必要になる。そのため、固体酸化物形燃料電池を備える発電機を持ち運ぶことが困難になる。
【0042】
これに対して、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11の制御部58は、燃料極用酸化ガス供給路16aを通して導かれた酸化ガスと、燃料ガス供給路15を通して導かれた燃料ガスと、を所定比率で燃料電池部26のアノード13aに供給する制御を実行する。具体的には、制御部58は、分岐弁65の開度を制御し、燃料極用酸化ガス供給路16aを通して導かれた酸化ガスと、燃料ガス供給路15を通して導かれた燃料ガスと、を所定比率で混合ガス供給路28を通して燃料電池部26のアノード13aに供給する。本願明細書において「所定比率」とは、酸化ガスと燃料ガスとが混合された比率だけではなく、燃料ガスを含まず酸化ガスのみを含む場合の比率(酸化ガス100%)および酸化ガスを含まず燃料ガスのみを含む場合の比率(燃料ガス100%)を含むものとする。
【0043】
本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11によれば、例えば、制御部58は、燃料ガスを酸化ガスで薄めて燃料ガスに含まれる硫黄成分の濃度を所定濃度以下に抑え、所定濃度以下の硫黄成分を含む燃料ガスを燃料電池部26のアノード13aに供給することができる。あるいは、例えば、制御部58は、燃料ガスを酸化ガスで薄めて燃料ガスに含まれる硫黄成分の濃度を極めて低い濃度以下に抑え、燃料電池部26のアノード13aを酸化ガスでパージすることができる。そのため、燃料ガスに含まれる硫黄成分が燃料電池部26のセル13に付着することを抑えることができる。そのため、炭素が燃料電池部26のセル13に析出することを抑え、燃料電池部26のセル13と燃料ガスとの化学反応が炭素により阻害されることを抑えることができる。これにより、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11は、脱硫装置を要しなくとも硫黄を含む燃料ガスを使用しつつ燃料電池部26の発電能力が低下することを抑えることができる。また、脱硫装置が不要となるため、固体酸化物形燃料電池発電機11の小型化、軽量化およびメンテナンスフリー化を図ることができる。これにより、可搬型の固体酸化物形燃料電池発電機11を提供することができる。
【0044】
本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11の動作をさらに詳細に説明すると、制御部58は、分岐弁65の開度を制御し、燃料ガス供給路15を通して導かれた燃料ガスを燃料極用酸化ガス供給路16aを通して導かれた酸化ガスで希釈することにより、アノード13aに供給する酸化ガスと燃料ガスとの比率を調整する。本発明者の得た知見によれば、酸化ガスで希釈された燃料ガスの濃度は、20%以下であることが好ましく、7%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
これにより、燃料ガスに含まれる硫黄成分の濃度を低下させることができる。そのため、燃料ガスに含まれる硫黄成分が燃料電池部26のセル13に付着することを抑えることができる。そのため、炭素が燃料電池部26のセル13に析出することを抑え、燃料電池部26のセル13と燃料ガスとの化学反応が炭素により阻害されることを抑えることができる。これにより、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11は、脱硫装置を要しなくとも硫黄を含む燃料ガスを使用しつつ燃料電池部26の発電能力が低下することを抑えることができる。
【0046】
あるいは、制御部58は、所定時間おきに分岐弁65の開度を制御して、燃料ガス供給路15を通して導かれた燃料ガスの供給を停止して燃料極用酸化ガス供給路16aを通して導かれた酸化ガスのみをアノード13aに供給する。
【0047】
これにより、制御部58は、所定時間おきに燃料電池部26のアノード13aを酸化ガスでパージすることができる。例えば、制御部58は、燃料ガスに含まれる硫黄成分が燃料電池部26のセル13に付着したり堆積したりする前に、燃料電池部26のアノード13aを酸化ガスで定期的にパージすることができる。そのため、燃料ガスに含まれる硫黄成分が燃料電池部26のセル13に付着することをより一層抑えることができる。そのため、炭素が燃料電池部26のセル13に析出することをより一層抑え、燃料電池部26のセル13と燃料ガスとの化学反応が炭素により阻害されることを抑えることができる。これにより、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11は、脱硫装置を要しなくとも硫黄を含む燃料ガスを使用しつつ燃料電池部26の発電能力が低下することをより一層抑えることができる。
【0048】
また、制御部58は、燃料電池部26で発生した電力を受け、その電力に関する情報に基づいて、分岐弁65の開度を制御する。そして、制御部58は、燃料ガス供給路15を通して導かれた燃料ガスの供給を停止し、燃料極用酸化ガス供給路16aを通して導かれた酸化ガスのみをアノード13aに供給する。
【0049】
これにより、制御部58は、燃料電池部26で発生した電力に関する情報に基づいて、燃料電池部26のアノード13aを酸化ガスでパージすることができる。例えば、制御部58は、燃料電池部26で発生した電力量や、燃料電池部26で発生した電力量の初期電力量に対する低下率などに基づいて、燃料電池部26のアノード13aを酸化ガスでパージすることができる。そのため、燃料ガスに含まれる硫黄成分が燃料電池部26のセル13に付着することをより一層抑えることができる。そのため、炭素が燃料電池部26のセル13に析出することをより一層抑え、燃料電池部26のセル13と燃料ガスとの化学反応が炭素により阻害されることを抑えることができる。これにより、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11は、脱硫装置を要しなくとも硫黄を含む燃料ガスを使用しつつ燃料電池部26の発電能力が低下することをより一層抑えることができる。
【0050】
また、前述したように、制御部58は、分岐弁65を制御することにより、燃料電池部26に供給する酸化ガスと燃料ガスとの比率を容易に調整することができる。これにより、燃料極用酸化ガス供給路16aと燃料ガス供給路15とのそれぞれに弁が設けられた場合と比較して、1つの分岐弁65で酸化ガスと燃料ガスとの比率を容易に調整することができるとともに脱硫装置および改質器などの付帯設備を省略することができ、固体酸化物形燃料電池発電機11のより一層の小型化および軽量化を図ることができる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11は、燃料電池部26による発電と、熱電発電部61による発電と、を組み合わせることができる。つまり、必要な電力のうち燃料電池部26の高温稼動によって発生する電力の一部を熱電発電部61の熱電素子61cによって発生する電力で補うことができる。そのため、燃料電池部26が単独で同じ電力量を発生させる場合と比較して、熱電発電部61の熱電素子61cによって発生する電力量の補助分だけ、固体酸化物形燃料電池発電機11の全体の発電量を増加させることができるとともに、燃料ガスの使用量を低減し燃料ガスを節約することができる。また、燃料電池部26が単独で発電する場合と比較して、燃料電池部26の稼動温度を約650±50℃程度に安定的に維持することができる。これにより、燃料電池部26の耐久性を向上させることができるとともに、燃料電池部26の周辺機器に与える熱の影響を抑えることができる。また、これにより、燃料電池部26の周辺機器に採用可能な材料の選択幅を広げることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、分岐弁65が燃料極用酸化ガス供給路16aと燃料ガス供給路15との接続部に設けられた場合を例に挙げて説明している。但し、分岐弁65は、必ずしも設けられていなくともよい。例えば、燃料極用酸化ガス供給路16aおよび燃料ガス供給路15が、互いに異なる経路で燃料電池部26のアノード13aに接続されていてもよい。そして、例えば、制御部58は、酸化ガス供給部21を制御したり酸化ガス供給路16あるいは燃料極用酸化ガス供給路16aに設けられた電磁弁などを制御したりして酸化ガスの量を調整するとともに、燃料ガス供給路15に設けられた電磁弁などを制御して燃料ガスの量を調整することにより、酸化ガスと燃料ガスとを所定比率で燃料電池部26のアノード13aに供給してもよい。また、酸化ガス供給路16が燃料極用酸化ガス供給路16aと空気極用酸化ガス供給路16bとに分岐した分岐部には、分岐弁(すなわち三方弁)が設けられていてもよい。これによれば、制御部58は、燃料極用酸化ガス供給路16aと空気極用酸化ガス供給路16bとの分岐部に設けられた分岐弁の開度を制御することにより、アノード13aに供給する酸化ガスと、カソード13bに供給する酸化ガスと、の比率を適宜調整することができる。
【0053】
次に、本発明者が実施した試験の結果の一例を、図面を参照して説明する。
図4は、本発明者が実施した試験の条件を表す表である。
図5は、着臭剤を含む燃料ガスと着臭剤を含まない燃料ガスとで実施した試験の結果の一例を表すグラフである。
図6は、アノードを酸化ガスでパージした場合とアノードを酸化ガスでパージしなかった場合とで実施した試験の結果の一例を表すグラフである。
図5および図6の横軸は、試験装置の運転時間(hour)を表す。図5および図6の縦軸は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)で発生した電力量の初期電力量に対する低下率を表す。
【0054】
まず、図4に表したように、本発明者は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池発電機11を想定し、20mm×50mmのサイズ(発電有効面積)のセル13を有する固体酸化物形燃料電池を用意した。そして、690℃の炉内温度の電気炉に固体酸化物形燃料電池を入れ、7%の濃度のブタンガスを含む燃料ガスを96ml/minの流量でアノード(燃料極)13aに供給するとともに、酸化ガスを231ml/minの流量でカソード(空気極)13bに供給した。
【0055】
続いて、まず、本発明者は、着臭剤としての硫黄成分の影響を検討するため、着臭剤(硫黄成分)を含む燃料ガスと、着臭剤(硫黄成分)を含まない燃料ガスと、で試験を実施した。その試験の結果の一例は、図5に表した通りである。すなわち、硫黄成分を含む燃料ガスがアノード13aに供給された場合における電力低下率の近似直線(回帰直線)の傾きの絶対値は、硫黄成分を含まない燃料ガスがアノード13aに供給された場合における電力低下率の近似直線(回帰直線)の傾きの絶対値よりも大きい。これにより、硫黄成分を含む燃料ガスがアノード13aに供給された場合における電力低下率が、硫黄成分を含まない燃料ガスがアノード13aに供給された場合における電力低下率よりも大きいことが分かる。また、本発明者によるセル13の目視観察によれば、運転時間が80時間を経過した後において、硫黄成分を含む燃料ガスがアノード13aに供給された場合のセル13には炭素析出が確認された一方で、硫黄成分を含まない燃料ガスがアノード13aに供給された場合のセル13には炭素析出が確認されなかった。
【0056】
以上の試験の結果より、本発明者は、着臭剤としての硫黄成分がセル13に付着し、その硫黄成分を起点としてセル13に炭素を析出させることにより、固体酸化物形燃料電池(SOFC)で発生した電力量が運転時間の経過とともに低下すると考えた。
【0057】
そこで、続いて、本発明者は、硫黄成分を含む燃料ガスをアノード13aに供給するとともに、運転時間の2時間おきにアノード13aを酸化ガスで10分間パージした場合と、アノード13aを酸化ガスでパージしなかった場合と、で試験を実施した。その試験の結果の一例は、図6に表した通りである。すなわち、所定時間(本試験では2時間)おきにアノード13aを酸化ガスで所定時間(本試験では10分間)パージした場合における電力低下率が、アノード13aを酸化ガスでパージしなかった場合における電力低下率よりも小さいことが分かる。特に、運転時間が80時間を経過したタイミング(図6に表した矢印A1の部分)において、アノード13aを酸化ガスでパージした場合における電力低下率が、アノード13aを酸化ガスでパージしなかった場合における電力低下率と比較して改善していることが分かる。
【0058】
なお、本試験では、運転時間の2時間おきにアノード13aを酸化ガスで10分間パージしたが、図1図3に関して前述したように、固体酸化物形燃料電池で発生した電力に関する情報に基づいて、アノード13aを酸化ガスでパージしてもよい。例えば、固体酸化物形燃料電池で発生した電力の初期電力量に対する低下率すなわち図6に表した電力低下率が所定の閾値以下になったとき、アノード13aを酸化ガスでパージしてもよい。この場合においても、アノード13aを酸化ガスでパージした場合における電力低下率が、アノード13aを酸化ガスでパージしなかった場合における電力低下率と比較して改善することが見込まれる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0060】
11:固体酸化物形燃料電池発電機、 12:ガス容器、 13:セル、 13a:アノード、 13b:カソード、 13c:電解質、 15:燃料ガス供給路、 16:酸化ガス供給路、 16a:燃料極用酸化ガス供給路、 16b:空気極用酸化ガス供給路、 17:バーナ、 18:CO除去器、 19:排気路、 21:酸化ガス供給部、 21a:第1送風機、 21b:第2送風機、 22:バーナ燃料供給路、 23:熱交換器、 23a:低温側熱交換器、 23b:高温側熱交換器、 26:燃料電池部、 27a:第1セルモジュール、 27b:第2セルモジュール、 27c:第3セルモジュール、 27d:第4セルモジュール、 28:混合ガス供給路、 54:電力変換装置、 58:制御部、 61:熱電発電部、 61a:高温部、 61b:低温部、 61c:熱電素子、 63:筐体、 64:容器接続部、 65:分岐弁

図1
図2
図3
図4
図5
図6