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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022565
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】汚物処理装置監視装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/00 20060101AFI20220131BHJP
   B61D 35/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
E03D11/00 A
B61D35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110836
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591009451
【氏名又は名称】株式会社五光製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】大江 栄亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 肇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】及川 正門
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AA04
2D039AC14
2D039CB02
2D039CB03
(57)【要約】
【課題】異臭発生の原因となる不具合を迅速に把握できる汚物処理装置監視装置を提供する。
【解決手段】本開示は、真空によって排泄物を吸引する少なくとも1つの大便器ユニットと、少なくとも1つの小便器ユニットと、少なくとも1つの大便器ユニット及び少なくとも1つの小便器ユニットから排出される排泄物を貯留する汚物タンクと、少なくとも1つの小便器ユニットから汚物タンクに排泄物を排出する排泄管に配置された開閉弁と、汚物タンクから外部に空気を排出する排気管と、を備える汚物処理装置に用いられる汚物処理装置監視装置である。汚物処理装置監視装置は、大便器ユニットの使用時における汚物タンク内の圧力に基づいて、開閉弁及び排気管のうち少なくとも一方の不具合を検知するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空によって排泄物を吸引するように構成された少なくとも1つの大便器ユニットと、
少なくとも1つの小便器ユニットと、
前記少なくとも1つの大便器ユニット及び前記少なくとも1つの小便器ユニットから排出される排泄物を貯留する汚物タンクと、
前記少なくとも1つの小便器ユニットから前記汚物タンクに排泄物を排出する排泄管に配置された開閉弁と、
前記汚物タンクから外部に空気を排出する排気管と、
を備える汚物処理装置に用いられる汚物処理装置監視装置であって、
前記少なくとも1つの大便器ユニットの使用時における前記汚物タンク内の圧力に基づいて、前記開閉弁及び前記排気管のうち少なくとも一方の不具合を検知するように構成される、汚物処理装置監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の汚物処理装置監視装置であって、
前記少なくとも1つの大便器ユニットの使用時における前記汚物タンク内の圧力が第1閾値よりも小さい場合に、前記開閉弁に不具合があると判定するように構成される、汚物処理装置監視装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の汚物処理装置監視装置であって、
前記少なくとも1つの大便器ユニットの使用時における前記汚物タンク内の圧力が第2閾値よりも大きい場合に、前記排気管に配置されたフィルタ又は排気用逆止弁に不具合があると判定するように構成される、汚物処理装置監視装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の汚物処理装置監視装置であって、
前記不具合の検知に、前記汚物タンク内の圧力に加えて前記汚物タンク内の水位を用いるように構成される、汚物処理装置監視装置。
【請求項5】
少なくとも1つの便器と、
前記少なくとも1つの便器から排出される排泄物を貯留する汚物タンクと、
前記汚物タンク内に水を供給する給水管に配置された給水用逆止弁と、
を備える汚物処理装置に用いられる汚物処理装置監視装置であって、
前記汚物タンク内の圧力に基づいて、前記給水用逆止弁の不具合を検知するように構成される、汚物処理装置監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汚物処理装置監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等に設置される汚物処理装置は、大便器ユニット及び小便器ユニットから排出された排泄物を貯留する汚物タンクを備える(特許文献1参照)。汚物タンクには、各便器からの排泄物が排出される排泄管、汚物タンク内の空気を外部に排出する排気管、汚物タンク内に水を供給する給水管等が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-265356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の汚物処理装置では、各種の弁やフィルタ等の部品の不具合によって汚物タンク内の空気が適切に排出されないと、汚物タンク内の空気が排泄管を逆流して小便器ユニットから放出される。その結果、小便器ユニットから異臭が発生する。
【0005】
上述の部品の不具合は定期検査によって発見及び補修される。しかし、定期検査後に不具合が発生した場合は、小便器ユニットからの異臭の発生が確認されるまで不具合を把握することは困難である。
【0006】
本開示の一局面は、異臭発生の原因となる不具合を迅速に把握できる汚物処理装置監視装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、真空によって排泄物を吸引するように構成された少なくとも1つの大便器ユニットと、少なくとも1つの小便器ユニットと、少なくとも1つの大便器ユニット及び少なくとも1つの小便器ユニットから排出される排泄物を貯留する汚物タンクと、少なくとも1つの小便器ユニットから汚物タンクに排泄物を排出する排泄管に配置された開閉弁と、汚物タンクから外部に空気を排出する排気管と、を備える汚物処理装置に用いられる汚物処理装置監視装置である。
【0008】
汚物処理装置監視装置は、少なくとも1つの大便器ユニットの使用時における汚物タンク内の圧力に基づいて、開閉弁及び排気経路のうち少なくとも一方の不具合を検知するように構成される。
【0009】
このような構成によれば、開閉弁の不具合によって汚物タンクと小便器ユニットとの間が閉塞されない状態、及び排気経路の不具合によって汚物タンク内の圧が低下しない状態のうち、少なくとも一方を大便器ユニットの動作時に検知できる。つまり、異臭発生の原因となる開閉弁の不具合又は排気経路の不具合を迅速に把握できる。
【0010】
本開示の一態様は、少なくとも1つの大便器ユニットの使用時における汚物タンク内の圧力が第1閾値よりも小さい場合に、開閉弁に不具合があると判定するように構成されてもよい。このような構成によれば、排泄経路が閉塞されていない状態では大便器ユニットの使用時(つまり排泄物の汚物タンクへの排出時)における汚物タンク内の圧力が正常の圧力よりも小さくなることを利用して、開閉弁の不具合を自動判定することができる。
【0011】
本開示の一態様は、少なくとも1つの大便器ユニットの使用時における汚物タンク内の圧力が第2閾値よりも大きい場合に、排気管に配置されたフィルタ又は排気用逆止弁に不具合があると判定するように構成されてもよい。このような構成によれば、排気経路の排出機能が低下した状態では大便器ユニットの使用時における汚物タンク内の圧力が正常の圧力よりも大きくなることを利用して、排気経路の不具合を自動判定することができる。
【0012】
本開示の一態様は、不具合の検知に、汚物タンク内の圧力に加えて汚物タンク内の水位を用いるように構成されてもよい。このような構成によれば、汚物タンク内の水位と連動して変化する汚物タンク内の圧力を、不具合の検知指標としてより適切に使用することができる。その結果、不具合の検知精度を高めることができる。
【0013】
本開示の別の態様は、少なくとも1つの便器と、少なくとも1つの便器から排出される排泄物を貯留する汚物タンクと、汚物タンク内に水を供給する給水管に配置された給水用逆止弁と、を備える汚物処理装置に用いられる汚物処理装置監視装置である。汚物処理装置監視装置は、汚物タンク内の圧力に基づいて、給水用逆止弁の不具合を検知するように構成される。
【0014】
このような構成によれば、給水用逆止弁の不具合によって汚物タンク内の圧が上昇した状態を検知できる。つまり、異臭発生の原因となる給水用逆止弁の不具合を迅速に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態における汚物処理装置の模式的な構成図である。
図2図2は、図1の汚物処理装置における大便器ユニットから汚物タンクまでの系統を示す模式的な構成図である。
図3図3は、図1の汚物処理装置における監視装置が実行する処理を示すフローチャートである。
図4図4は、大便器ユニットの動作時における汚物タンク内の圧力変化の一例を示すグラフである。
図5図5は、大便器ユニットの動作時における汚物タンク内の圧力変化の一例を示すグラフである。
図6図6は、大便器ユニットの非動作時における汚物タンク内の圧力変化の一例を示すグラフである。
図7図7A及び図7Bは、大便器ユニットの動作時における汚物タンク内の圧力変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す汚物処理装置10は、鉄道車両に設置される。
【0017】
汚物処理装置10は、複数の大便器ユニット11と、小便器ユニット12と、汚物タンク13と、フィルタ15と、開閉弁21と、排気用逆止弁22と、第1給水用逆止弁23と、第2給水用逆止弁24と、複数の第1排泄管31と、第2排泄管32と、排気管33と、第1給水管34と、第2給水管35と、水位センサ41と、圧力センサ42と、汚物処理装置監視装置1(以下、単に「監視装置1」ともいう。)とを備える。
【0018】
<大便器ユニット>
複数の大便器ユニット11は、それぞれ、大便器ボウル11Aと、移送タンク11Bとを有する。複数の大便器ユニット11は、それぞれ、真空によって大便器ボウル11A内の排泄物を吸引する真空式の便器である。複数の大便器ユニット11は、それぞれ、第1排泄管31によって汚物タンク13に接続されている。
【0019】
大便器ユニット11内の排泄物は、第1排泄管31によって、大便器ユニット11から汚物タンク13に排出される。なお、汚物処理装置10は、3つ以上の大便器ユニット11を備えてもよいし、1つの大便器ユニット11を備えてもよい。
【0020】
移送タンク11Bは、それぞれ、第1排泄管31において、大便器ボウル11Aと汚物タンク13との間に配置されている。
【0021】
図2に示すように、大便器ボウル11Aには、第1排泄管31の上流部31Aが接続されている。上流部31Aは、大便器ボウル11Aと移送タンク11Bとを連結している。また、上流部31Aには、排出弁25が配置されている。
【0022】
移送タンク11Bには、第1排泄管31の下流部31Bと、真空ポンプユニット11Cと、給気管36と、吸気管37とが接続されている。下流部31Bは、移送タンク11Bと汚物タンク13とを連結している。また、下流部31Bの移送タンク11Bとの接続部分には移送弁26が配置されている。給気管36と吸気管37とは、真空ポンプユニット11Cを介して移送タンク11Bに接続されている。
【0023】
真空ポンプユニット11Cは、給気管36から供給される圧縮空気を用いて、移送タンク11B内の空気を吸気管37から吸引して汚物タンク13に排出することで、移送タンク11Bの内部を真空圧とする。吸気管37には、吸気用逆止弁27が配置されている。また、真空ポンプユニット11Cは、給気管36から移送タンク11B内に空気を供給する。
【0024】
<小便器ユニット>
小便器ユニット12は、第2排泄管32によって汚物タンク13に接続されている。小便器ユニット12内の排泄物は、第2排泄管32によって、小便器ユニット12から汚物タンク13に排出される。なお、汚物処理装置10は、2つ以上の小便器ユニット12を備えてもよい。
【0025】
<汚物タンク>
汚物タンク13は、大便器ユニット11及び小便器ユニット12から排出される排泄物を貯留する。汚物タンク13内に貯留された排泄物Sは、定期的に外部に取り出される。
【0026】
汚物タンク13には、複数の第1排泄管31と、第2排泄管32と、排気管33と、第1給水管34と、第2給水管35とが接続されている。
【0027】
<フィルタ>
フィルタ15は、汚物タンク13から外部に空気を排出する排気管33に配置されている。フィルタ15は、排出される空気の臭いを低減する消臭機能を有している。汚物タンク13から排出された空気は、フィルタ15を通過した後に外部に排出される。
【0028】
<開閉弁>
開閉弁21は、小便器ユニット12から汚物タンク13に排泄物を排出する第2排泄管32に配置されている。
【0029】
開閉弁21は、大便器ユニット11の動作時(つまり排泄物の吸引及び排出時)に第2排泄管32を閉塞することで、汚物タンク13内の空気が小便器ユニット12から車内へ排出されることを抑制する。
【0030】
本実施形態の開閉弁21は、開位置と閉位置とに変位可能である。開閉弁21は、遠隔操作によって、第2排泄管32を閉塞する閉状態と、第2排泄管32を開放する開状態とに切り替わる。
【0031】
<排気用逆止弁>
排気用逆止弁22は、排気管33に配置されている。排気用逆止弁22は、フィルタ15よりも上流側(つまり、フィルタ15よりも汚物タンク13に近い点)に配置されている。
【0032】
<第1給水用逆止弁及び第2給水用逆止弁>
第1給水用逆止弁23は、汚物タンク13内に水を供給する第1給水管34に配置されている。第2給水用逆止弁24は、汚物タンク13内に水を供給する第2給水管35に配置されている。
【0033】
第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24は、それぞれ、汚物タンク13と給水口(図示省略)との間に配置されている。第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24は、空気が汚物タンク13に流入することを抑制すると共に、外部の空気が汚物タンク13に流入することを抑制する。
【0034】
<水位センサ>
水位センサ41は、汚物タンク13に取り付けられている。水位センサ41は、汚物タンク13内の水位を検出する。
【0035】
<圧力センサ>
圧力センサ42は、第2排泄管32の開閉弁21よりも下流側(つまり、開閉弁21よりも汚物タンク13に近い点)に取り付けられている。
【0036】
圧力センサ42は、第2排泄管32の圧力を測定することで、汚物タンク13内の圧力を間接的に検出する。なお、圧力センサ42は、汚物タンク13内の圧力を測定できる任意の位置に配置することができる。
【0037】
<監視装置>
監視装置1は、大便器ユニット11の使用時における汚物タンク13内の圧力に基づいて、開閉弁21及び排気管33の不具合を検知する。また、監視装置1は、汚物タンク13内の圧力に基づいて、第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24の不具合を検知する。さらに、監視装置1は、大便器ユニット11、小便器ユニット12及び開閉弁21の動作を制御する制御機能を有する。
【0038】
以下に、監視装置1による大便器ユニット11の制御、及び不具合の検知手順について説明する。図3に示すように、ボタン、レバー等によって大便器ユニット11に対する排出操作が行われると(ステップS10)、監視装置1は、開閉弁21を開状態から閉状態に変位させる(ステップS20)。
【0039】
次に、監視装置1は、排出弁25及び移送弁26が閉じた状態で、真空ポンプユニット11Cによって移送タンク11Bの内部を真空圧とする(ステップS30)。具体的には、監視装置1は、給気管36から供給される圧縮空気を用いて、移送タンク11B内の空気を吸気管37から吸引して汚物タンク13に排出することで、移送タンク11Bを真空圧とする。移送タンク11Bが真空圧となった後、監視装置1は、排出弁25を開く(ステップS50)。これにより、大便器ボウル11A内の排泄物が移送タンク11B内に吸引される。
【0040】
大便器ボウル11A内の排泄物が移送タンク11B内に吸引された後、監視装置1は、排出弁25を閉じ(ステップS60)、真空ポンプユニット11Cの給気によって移送タンク11Bを加圧する(ステップS70)。
【0041】
移送タンク11Bの加圧後、監視装置1は、移送弁26を開く(ステップS80)。これにより、移送タンク11B内の排泄物が汚物タンク13に圧送される。排泄物の圧送後、監視装置1は、移送弁26を閉じる(ステップS90)。その後、監視装置1は、開閉弁21を開く(ステップS110)。
【0042】
監視装置1は、上述の大便器ユニット11の制御中に、開閉弁21及び排気管33の不具合の判定を行う。
【0043】
図4に、汚物タンク13が空の状態で1つの大便器ユニット11が動作するときの汚物タンク13内の圧力P1の変化と、汚物タンク13が満水の状態で2つの大便器ユニット11が同時に動作するときの汚物タンク13内の圧力P2の変化と、開閉弁21によって第2排泄管32が閉塞されていない状態で大便器ユニット11が動作するときの汚物タンク13内の圧力P3の変化とを示す。
【0044】
図4のT1は、移送タンク11Bの減圧を開始した時刻である。T2は、減圧が完了した時刻である。T3は、移送弁26を開いた時刻である。T4は、移送弁26を閉じた時刻である。T5は、開閉弁21を開いた時刻である。
【0045】
開閉弁21によって第2排泄管32が正常に閉塞されていれば、給気管36から供給される圧縮空気によって移送タンク11B内の空気が吸気管37を介して汚物タンク13に排出されることで、汚物タンク13内の圧力P1,P2は、上昇する。
【0046】
一方、開閉弁21によって第2排泄管32が閉塞されていない場合、給気管36から供給される圧縮空気によって移送タンク11B内から吸気管37を介して汚物タンク13へ排出された空気は第2排泄管32を経由し小便器ユニット12から排出されるため、汚物タンク13内の圧力P3はほとんど上昇しない。
【0047】
そこで、監視装置1は、時刻T1における移送タンク11B内の空気の汚物タンク13への排出開始から時刻T2における移送タンク11B内の空気の汚物タンク13への排出終了(つまり移送タンク11Bの減圧完了)まで(つまり大便器ユニット11における排泄物吸引時)の汚物タンク13内の圧力に基づいて、開閉弁21による第2排泄管32の閉塞のエラーを検知する(図3のステップS40)。
【0048】
具体的には、監視装置1は、時刻T1から時刻T2の間の任意のタイミング(例えば、汚物タンク13の減圧開始から数秒経過後)において、汚物タンク13内の圧力P3が第1閾値よりも小さい場合に、開閉弁21に不具合(例えば、膜の破れ、可動部分の故障、電気系統の故障等)があると判定する。
【0049】
第1閾値は、例えば正常時の汚物タンク13内の圧力P1,P2から許容される乖離値(つまり変動値)を引いた値とされる。また、第1閾値を大きくすることで、開閉弁21の不具合の予兆検知が可能となる。
【0050】
また、図4に示されるように、開閉弁21によって第2排泄管32が閉塞されていれば、移送弁26が開かれて移送タンク11B内の排泄物が汚物タンク13に移送される際にも汚物タンク13内の圧力P1,P2は上昇する。一方、開閉弁21に不具合がある場合、汚物タンク13内の圧力P3は上昇しない。
【0051】
そのため、監視装置1は、時刻T3における移送タンク11B内の排泄物の汚物タンク13への排出開始から時刻T4における移送弁26の閉操作まで(つまり汚物タンク13への排泄物排出時)の汚物タンク13内の圧力に基づいて、開閉弁21による第2排泄管32の閉塞のエラーを検知してもよい。
【0052】
図5に、排気管33の排出機能に異常がある状態で大便器ユニット11が動作するときの汚物タンク13内の圧力P4の変化を示す。図5の圧力P1,P2及び時刻T1-T5は、図4と同じものである。
【0053】
排気管33(つまりフィルタ15及び排気用逆止弁22)に異常がなければ、移送タンク11Bから汚物タンク13へ排出された空気は、排気用逆止弁22とフィルタ15とを通過して外部に排出されるため、汚物タンク13内の圧力P1,P2は低下する。
【0054】
一方、フィルタ15の通気性が低下している場合、又は排気用逆止弁22に不具合がある場合は、移送タンク11Bから汚物タンク13へ排出された空気が外部に排出されにくくなるため、汚物タンク13内の圧力P4の低下量が小さくなる。
【0055】
そこで、監視装置1は、時刻T4における移送弁26の閉操作から時刻T5における開閉弁21の開操作まで(つまり汚物タンク13への排泄物の排出完了後)の汚物タンク13内の圧力に基づいて、排気管33の排出機能の低下を検知する(図3のステップS100)。
【0056】
具体的には、監視装置1は、時刻T4から時刻T5の間の任意のタイミング(例えば、時刻T5)において、汚物タンク13内の圧力P4が第2閾値よりも大きい場合に、フィルタ15に不具合(例えば、目詰まり、変形、材質の劣化等)又は排気用逆止弁22の不具合(例えば、可動部の故障等)があると判定する。
【0057】
第2閾値は、例えば正常時の汚物タンク13内の圧力P1,P2から許容される乖離値(つまり変動値)を足した値とされる。また、第2閾値を小さくすることで、排気管33の不具合の予兆検知が可能となる。
【0058】
また、図5に示されるように、排気管33が正常であれば、移送タンク11Bの減圧が終了した後(つまり排出弁25が開かれた後)に汚物タンク13内の圧力P1,P2は大きく低下する。一方、排気管33に不具合がある場合、汚物タンク13内の圧力P4の低下は小さくなる。
【0059】
そのため、監視装置1は、時刻T2における移送タンク11Bの減圧完了(つまり大便器ユニット11における排泄物吸引完了)から時刻T3における移送弁26の開操作までの汚物タンク13内の圧力に基づいて、排気管33の排出機能の低下を検知してもよい。
【0060】
監視装置1は、上述した開閉弁21及び排気管33の不具合の判定に加え、汚物タンク13内の圧力に基づいて第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24の不具合を検知する。第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24の不具合の検知は、複数の大便器ユニット11のいずれもが動作していない(つまり排泄物の吸引及び排出がされていない)任意のタイミングで実行される。
【0061】
図6に示すように、大便器ユニット11が動作していないときは、汚物タンク13内に空気の流入がない限り、排気管33によって汚物タンク13内の圧力P0はほぼゼロに保たれる。
【0062】
一方、第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24のいずれかに不具合が生じ、第1給水管34又は第2給水管35から汚物タンク13内に外部から空気が侵入可能になると、外圧(本実施形態では外部の圧力)の変化に応じて汚物タンク13内の圧力P5が変化する。
【0063】
そこで、監視装置1は、汚物タンク13内の圧力P5が第3閾値よりも大きい場合に、第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24のいずれかの不具合(例えば、可動部の故障、シール性の低下等)があると判定する。
【0064】
第3閾値は、例えば正常時の汚物タンク13内の圧力P0から許容される乖離値(つまり変動値)を足した値とされる。また、第3閾値を小さくすることで、第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24の不具合の予兆検知が可能となる。
【0065】
図7Aに、汚物タンク13が空の場合における正常時の汚物タンク13内の圧力P11の変化と、開閉弁21に不具合があるときの汚物タンク13内の圧力P12の変化とを示す。また、図7Bに、汚物タンク13が満水の場合における正常時の汚物タンク13内の圧力P11の変化と、開閉弁21に不具合があるときの汚物タンク13内の圧力P12の変化とを示す。
【0066】
図7A図7Bとの比較からわかるように、汚物タンク13内の圧力の変化(つまり最大値及び最小値)は、汚物タンク13内の水位によって変化する。そのため、監視装置1は、開閉弁21及び排気管33の不具合の検知に、汚物タンク13内の圧力に加えて汚物タンク13内の水位を用いてもよい。
【0067】
具体的には、監視装置1は、開閉弁21の不具合を判定する第1閾値及び排気管33の不具合を判定する第2閾値を、それぞれ汚物タンク13内の水位に合わせて設定する。例えば、水位が低い場合には、第1閾値及び第2閾値を小さくし、水位が大きい場合には第1閾値及び第2閾値を大きくする。
【0068】
これにより、汚物タンク13内の水位と連動して変化する汚物タンク13内の圧力を、不具合の検知指標としてより適切に使用することができる。その結果、不具合の検知精度を高めることができる。
【0069】
なお、監視装置1が、開閉弁21、排気管33、第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24の不具合の判定に用いる汚物タンク13内の圧力は、絶対圧でもよいし、車両内の圧力に対する相対圧(つまり差圧)でもよい。
【0070】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)開閉弁21の不具合によって汚物タンク13と小便器ユニット12との間が閉塞されない状態、及び排気管33の不具合によって汚物タンク13内の圧が低下しない状態を大便器ユニット11の動作時に検知できる。つまり、異臭発生の原因となる開閉弁21の不具合及び排気管33の不具合を迅速に把握できる。
【0071】
(1b)第2排泄管32が閉塞されていない状態では大便器ユニット11の使用時(つまり排泄物の汚物タンク13への排出時)における汚物タンク13内の圧力が正常の圧力よりも小さくなることを利用して、開閉弁21の不具合を自動判定することができる。
【0072】
(1c)排気管33の通気性が低下した状態では大便器ユニット11の使用時における汚物タンク13内の圧力が正常の圧力よりも大きくなることを利用して、排気管33の不具合を自動判定することができる。
【0073】
(1d)第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24の不具合によって汚物タンク13内の圧が上昇した状態を検知できる。つまり、異臭発生の原因となる第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24の不具合を迅速に把握できる。
【0074】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0075】
(2a)上記実施形態の監視装置1は、必ずしも、開閉弁21、排気管33、第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24の全ての不具合を検知しなくてもよい。つまり、監視装置1は、開閉弁21、排気管33、第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24のうち、一部の部品のみの不具合を検知するように構成されてもよい。
【0076】
(2b)上記実施形態の監視装置1において、第1給水用逆止弁23及び第2給水用逆止弁24の不具合の検知は、複数の大便器ユニット11のいずれかが動作している時に実行されてもよい。
【0077】
(2c)上記実施形態の監視装置1は、鉄道車両以外の乗物、又は施設に設置された汚物処理装置にも使用することができる。
【0078】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0079】
1…汚物処理装置監視装置、10…汚物処理装置、11…大便器ユニット、
11A…大便器ボウル、11B…移送タンク、11C…真空ポンプユニット、
12…小便器ユニット、13…汚物タンク、15…フィルタ、21…開閉弁、
22…排気用逆止弁、23…第1給水用逆止弁、24…第2給水用逆止弁、
25…排出弁、26…移送弁、27…吸気用逆止弁、31…第1排泄管、
31A…上流部、31B…下流部、32…第2排泄管、33…排気管、
34…第1給水管、35…第2給水管、36…給気管、37…吸気管、
41…水位センサ、42…圧力センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7