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特開2022-22596眼科用組成物及びTRPV1活性抑制剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022596
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】眼科用組成物及びTRPV1活性抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/185 20060101AFI20220131BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/4174 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/717 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220131BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 33/22 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/125 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 9/08 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K31/185
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P27/02
A61K31/4164
A61K31/4174
A61K31/137
A61K31/4745
A61K31/4402
A61K31/135
A61K31/198
A61K31/4415
A61K31/717
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/36
A61K31/07
A61K31/728
A61K33/22
A61K31/045
A61K31/125
A61K36/61
A61K9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111657
(22)【出願日】2020-06-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椛嶋 恭平
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076CC24
4C076DD37
4C076DD40
4C076DD45
4C076EE37
4C076EE53
4C076FF70
4C084AA16
4C084AA24
4C084AA27
4C084MA58
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC18
4C086BC38
4C086CB22
4C086EA21
4C086EA25
4C086HA05
4C086HA23
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC41
4C086ZC75
4C088AB57
4C088BA06
4C088MA02
4C088MA03
4C088MA17
4C088MA58
4C088NA14
4C088ZA33
4C088ZC41
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA08
4C206CA10
4C206CA13
4C206CA14
4C206CB24
4C206FA05
4C206FA14
4C206FA53
4C206JA08
4C206JA09
4C206KA01
4C206MA05
4C206MA78
4C206NA14
4C206ZA33
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】TRPV1活性を抑制し、熱・光・風等の刺激で強い眼不快感、眼刺激等を感じる、いわゆる「角膜知覚過敏」を改善、予防する、眼科用組成物及びTRPV1活性抑制剤を提供する。
【解決手段】(a)充血除去剤、(b)ベルベリン、アズレン及びそれらの塩、(c)抗ヒスタミン剤、(d)アミノ酸、(e)水溶性ビタミン、(f)セルロース系高分子化合物、ならびに(g)ホウ酸から選ばれる1種以上を含有する、TRPV1活性抑制用眼科用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)充血除去剤、(b)ベルベリン、アズレン及びそれらの塩、(c)抗ヒスタミン剤、(d)アミノ酸、(e)水溶性ビタミン、(f)セルロース系高分子化合物、ならびに(g)ホウ酸から選ばれる1種以上を含有する、TRPV1活性抑制用眼科用組成物。
【請求項2】
(a)充血除去剤、(b)ベルベリン、アズレン及びそれらの塩、(c)抗ヒスタミン剤、(d)アミノ酸、(e)水溶性ビタミン、(f)セルロース系高分子化合物、ならびに(g)ホウ酸から選ばれる1種以上を含有する、知覚過敏予防又は改善用である眼科用組成物。
【請求項3】
知覚過敏が、角膜又は結膜知覚過敏である請求項2記載の眼科用組成物。
【請求項4】
(a)充血除去剤が、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、フェニレフリン及びそれらの塩であり、(c)抗ヒスタミン剤が、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びそれらの塩であり、(d)アミノ酸が、タウリン、アスパラギン酸及びそれらの塩であり、(e)水溶性ビタミンが、ピリドキシン及びその塩であり、(f)セルロース系高分子化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びメチルセルロースである、請求項1~3のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項5】
さらに、(h)テルペノイド、(i)ビタミンA、ならびに(j)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上を含有する、請求項1~4のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項6】
(a)充血除去剤、(b)ベルベリン、アズレン及びそれらの塩、(c)抗ヒスタミン剤、(d)アミノ酸、(e)水溶性ビタミン、(f)セルロース系高分子化合物、ならびに(g)ホウ酸から選ばれる1種以上を含有する、TRPV1活性抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TRPV1活性抑制効果を有する眼科用組成物及びTRPV1活性抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
角膜は、三叉神経第一枝の眼神経が非常に高密度で分布している組織であり、刺激に対して鋭敏である。通常、角膜の損傷、炎症、異物混入や逆まつ毛といった物理的刺激等により、眼痛が生じる。しかしながら、眼表面の所見に特段の異常がないにも拘わらず、強い痛みを訴える患者がいる。これについて、近年の研究から、角膜知覚が過敏な状態になっている可能性が示唆されているが、これを改善、予防するに十分な技術は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-137356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、TRPV1活性を抑制し、熱・光・風等の刺激で強い眼不快感、眼刺激等を感じる、いわゆる「角膜知覚過敏」を改善、予防する、眼科用組成物及びTRPV1活性抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
角膜知覚過敏の発症メカニズムはまだ明らかにされていないが、知覚神経に発現している温度感受性TRPチャネルが大きく関与していると考えられている。このTRPチャネルをターゲットとして、眼不快感や痛みを制御できる可能性がある。
【0006】
本発明者は、上記の課題、目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、TRPV1活性評価系を新たに構築し、特定成分がTRPV1活性抑制効果を有することを知見した。これらの成分は、角膜知覚の制御作用があるため、角膜知覚過敏による眼不快感・眼痛を緩和させ、眼不快感の症状抑制に効果がある可能性があり、様々な眼症状に対する治療に用いることができる。
【0007】
従って、本発明は下記眼科用組成物及びTRPV1活性抑制剤を提供する。
1.(a)充血除去剤、(b)ベルベリン、アズレン及びそれらの塩、(c)抗ヒスタミン剤、(d)アミノ酸、(e)水溶性ビタミン、(f)セルロース系高分子化合物、ならびに(g)ホウ酸から選ばれる1種以上を含有する、TRPV1活性抑制用眼科用組成物。
2.(a)充血除去剤、(b)ベルベリン、アズレン及びそれらの塩、(c)抗ヒスタミン剤、(d)アミノ酸、(e)水溶性ビタミン、(f)セルロース系高分子化合物、ならびに(g)ホウ酸から選ばれる1種以上を含有する、知覚過敏予防又は改善用である眼科用組成物。
3.知覚過敏が、角膜又は結膜知覚過敏である2記載の眼科用組成物。
4.(a)充血除去剤が、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、フェニレフリン及びそれらの塩であり、(c)抗ヒスタミン剤が、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びそれらの塩であり、(d)アミノ酸が、タウリン、アスパラギン酸及びそれらの塩であり、(e)水溶性ビタミンが、ピリドキシン及びその塩であり、(f)セルロース系高分子化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びメチルセルロースである、1~3のいずれかに記載の眼科用組成物。
5.さらに、(h)テルペノイド、(i)ビタミンA、ならびに(j)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上を含有する、1~4のいずれかに記載の眼科用組成物。
6.(a)充血除去剤、(b)ベルベリン、アズレン及びそれらの塩、(c)抗ヒスタミン剤、(d)アミノ酸、(e)水溶性ビタミン、(f)セルロース系高分子化合物、ならびに(g)ホウ酸から選ばれる1種以上を含有する、TRPV1活性抑制剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、TRPV1活性を抑制し、熱・光・風等の刺激で強い眼不快感、眼刺激等を感じる、いわゆる「角膜知覚過敏」を改善、予防する、眼科用組成物及びTRPV1活性抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のTRPV1活性抑制用眼科用組成物(以下、眼科用組成物と略す場合がある。)は、(a)充血除去剤、(b)ベルベリン、アズレン及びそれらの塩、(c)抗ヒスタミン剤、(d)アミノ酸、(e)水溶性ビタミン、(f)セルロース系高分子化合物、ならびに(g)ホウ酸から選ばれる1種以上を含有するものであり、これらの成分を1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。上記(a)~(g)成分はTRPV1活性抑制の有効成分である。
【0010】
[(a)充血除去剤]
充血除去剤としては、例えば、エピネフリン、メチルノルエピネフリン、ノルエピネフリン、エフェドリン、メチルエフェドリン、シュードエフェドリン、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、フェニレフリン、オキシメタゾリン、メトキサミン、フェニルプロパノラミン、エチレフリン、ミドドリン、トラマゾリン、シネフリン、シラゾリン、キシロメタゾリン及びこれらの薬学的に許容される塩等が挙げられるが、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、フェニレフリン及びそれらの塩が好ましい。塩としては、医薬的に許容可能な塩が挙げられる(以下、同様)。具体例としては、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩が好ましい。(a)成分の含有量は、眼科用組成物中0.0005~5w/v%(質量/体積%、g/100mL、以下同様)が好ましく、0.0005~1w/v%がより好ましい。
【0011】
テトラヒドロゾリン又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~0.1w/v%が好ましく、0.005~0.05w/v%がより好ましく、0.01~0.05w/v%がさらに好ましい。
【0012】
ナファゾリン又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.0005~0.05w/v%が好ましく、0.0005~0.04w/v%がより好ましく、0.001~0.03w/v%がさらに好ましい。
【0013】
フェニレフリン又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.005~5w/v%が好ましく、0.01~1w/v%がより好ましく、0.02~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0014】
[(b)ベルベリン、アズレン及びその塩]
ベルベリン、アズレン及びそれらの塩は抗炎症剤である。ベルベリン又はその塩としては、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物等が挙げられる。アズレン又はその塩としては、例えば、アズレンスルホン酸ナトリウム、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物等が挙げられる。(b)成分の含有量は、眼科用組成物中0.0001~0.1w/v%が好ましい。
【0015】
ベルベリン又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.0001~0.1w/v%が好ましく、0.0005~0.05w/v%がより好ましく、0.001~0.025w/v%がさらに好ましい。
【0016】
アズレン又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~0.1w/v%が好ましく、0.004~0.05w/v%がより好ましく、0.01~0.03w/v%がさらに好ましい。
【0017】
[(c)抗ヒスタミン剤]
抗ヒスタミン剤としては、例えば、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ケトチフェン、オロパタジン及びそれらの塩等が挙げられるが、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びそれらの塩が好ましい。具体例としては、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩が好ましい。(c)成分の含有量は、眼科用組成物中0.005~0.1w/v%が好ましく、0.005~0.05w/v%がより好ましい。
【0018】
クロルフェニラミン又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~0.1w/v%が好ましく、0.005~0.05w/v%がより好ましく、0.01~0.03w/v%がさらに好ましい。
【0019】
ジフェンヒドラミン又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~0.1w/v%が好ましく、0.005~0.05w/v%がより好ましく、0.01~0.05w/v%がさらに好ましい。
【0020】
[(d)アミノ酸]
アミノ酸としては、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、アスパラギン酸、タウリン(アミノエチルスルホン酸)、グルタミン酸及びそれらの塩等が挙げられる。なお、これらは水和物であってもよい。より具体的には、タウリン(アミノエチルスルホン酸又はその塩)、アスパラギン酸又はその塩(L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物)等)が好ましい。中でも、効果の点から、タウリンがさらに好ましい。(d)成分の含有量は、眼科用組成物中0.01~2w/v%が好ましく、0.1~1.5w/v%がより好ましい。
【0021】
タウリン又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.01~2w/v%が好ましく、0.1~1.5w/v%がより好ましく、0.2~1w/v%がさらに好ましい。
【0022】
アスパラギン酸又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.01~2%が好ましく、0.1~1.5%がより好ましく、0.2~1%がさらに好ましい。
【0023】
[(e)水溶性ビタミン]
水溶性ビタミンとしては、例えば、ピリドキシン及びその塩、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、パントテン酸及びその塩(パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム)等が挙げられ、中でも、ピリドキシン及びその塩が好ましく、ピリドキシン塩酸塩がより好ましい。(d)成分の含有量は、眼科用組成物中0.001~0.2w/v%が好ましい。
【0024】
ピリドキシン又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~0.2w/v%が好ましく、0.005~0.15w/v%がより好ましく、0.01~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0025】
[(f)セルロース系高分子化合物]
セルロース系高分子化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース及びそれらの塩が挙げられる。中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩が好ましい。(f)成分の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.005~1w/v%がより好ましく、0.01~0.5w/v%がさらに好ましい。
【0026】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.005~1w/v%がより好ましく、0.01~0.5w/v%がさらに好ましい。
【0027】
ヒドロキシエチルセルロース又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.005~1w/v%がより好ましく、0.01~0.5w/v%がさらに好ましい。
【0028】
メチルセルロース又はその塩を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.005~1w/v%がより好ましく、0.01~0.5w/v%がさらに好ましい。
【0029】
[(g)ホウ酸]
ホウ酸を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.01~5w/v%が好ましく、0.05~3w/v%がより好ましく、0.1~2w/v%がさらに好ましい。
【0030】
本発明の眼科用組成物には、TRPV1活性抑制をより得る点から、(h)テルペノイド、(i)ビタミンA、ならびに(j)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上を配合することが好ましい。
【0031】
[(h)テルペノイド]
本発明におけるテルペノイドとは、イソプレンユニットを構成単位とする構造を有するもので、例えば、テルペン炭化水素、テルペンアルコール、テルペンアルデヒド、テルペンケトン等が挙げられる。また、炭素数により、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペンがある。具体的には、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、リュウノウ、ゲラニオール、シネオール、リナロール、シトロネロール及びリモネン等のモノテルペン、レチノール及びレチナール等のジテルペン、カロチノイド等のテトラテルペン等が挙げられる。中でも、モノテルペンを使用することが好ましい。これらのテルペノイドは、d体、l体又はdl体のいずれでも使用することができる。中でも、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロールが好ましく、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロールがより好ましい。さらに好ましくは、メントールである。なお、本発明において、テルペノイドとして、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ローズ油、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、及びフタバガキ科植物の精油、ロズマリン油、ラベンダー油等が挙げられる。
【0032】
(h)成分を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.0001~0.1w/v%が好ましく、0.0005~0.05w/v%がより好ましく、0.001~0.03w/v%がさらに好ましい。
【0033】
[(i)ビタミンA]
ビタミンAとしては、例えば、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸が好ましい。レチノールパルミチン酸エステルは、通常100~180万国際単位/g(以下、I.U./gと略記する)のものが市販されており、具体的には、DSM社製レチノールパルミチン酸エステル[174万I.U./g)]、シグマアルドリッチ社製パルミチン酸レチノール等が挙げられる。
【0034】
(i)成分を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.0005~0.09w/v%が好ましく、0.002~0.06w/v%がより好ましく、0.003~0.03w/v%がさらに好ましい。また、眼科用組成物100mL中の単位としては、1000単位~150,000単位が好ましく、3,000単位~100,000単位がより好ましく、5,000単位~50,000単位がさらに好ましい。
【0035】
[(j)ヒアルロン酸及びその塩]
ヒアルロン酸及びその塩は特に限定されるものではなく、眼科用領域等における粘膜適用製剤に通常用いられる任意のヒアルロン酸類を用いることができ、ヒアルロン酸類の例として、ヒアルロン酸、その誘導体、これらの薬学的生理学的に許容される塩類が挙げられる。鶏冠から抽出する方法、微生物による発酵法等により得たものを使用でき、由来や製造法は特に限定されない。ヒアルロン酸又はその塩は、これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(A)成分の具体例として、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カルシウム等が挙げられる。中でも、ヒアルロン酸ナトリウムが好ましい。(A)成分としては市販品を用いることができ、例えば、精製ヒアルロン酸ナトリウム(生化学工業社製、資生堂社製、キユーピー社製、キッコーマンバイオケミファ社製、岩城製薬社製、ブルーメジバイオテクノロジー社製)等が挙げられる。
【0036】
(j)成分の粘度平均分子量は、100,000~5,000,000が好ましく、300,000~4,000,000がより好ましく、500,000~2,500,000がさらに好ましい。(j)成分の粘度平均分子量は、第17改正日本薬局方 医薬品各条に記載の「精製ヒアルロン酸ナトリウム」に記載の粘度平均分子量の測定方法で測定する。また、点眼剤中のヒアルロン酸又はその塩の粘度平均分子量は、第17改正日本薬局方の「精製ヒアルロン酸ナトリウム点眼液」に記載の粘度平均分子量の測定方法で測定する。なお、粘度平均分子量が異なる複数種のヒアルロン酸又はその塩を使用することができる。
【0037】
(j)成分を配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~0.3w/v%が好ましく、0.002~0.25w/v%がより好ましく、0.005~0.2w/v%がさらに好ましい。
【0038】
[任意成分]
本発明の眼科用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては、薬物、界面活性剤、緩衝剤、局所麻酔剤又は無痛化剤、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、糖類、多価アルコール、粘稠剤、防腐剤、その他の無機化合物、油性成分等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。TRPV1活性抑制を低下させない範囲で配合することが好ましい。下記に示す成分の含有量は、配合する場合の好ましい範囲であり、組成物中の量である。
【0039】
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、消炎剤(イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸二カリウム、リゾチーム塩酸塩、プラノプロフェン等)、収斂剤(例えば、ネオスチグミンメチル硫酸塩(毛様体筋等に対する眼筋調節作用を有する)、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛)、抗アレルギー剤(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アシタザノラスト、イブジラスト、トラニラスト、ペミロラストカリウム、アンレキサノクス等)、脂溶性ビタミン類(例えば、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール)、抗菌成分(例えば、サルファ剤(スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム等)等が挙げられる。薬物を配合する場合、薬物の含有量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0040】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の非イオン界面活性剤が挙げられる。医薬品添加物規格2003の規格に適合するものが好ましい。また、上記以外の界面活性剤としては、両性界面活性剤(例えば、グリシン型両性界面活性剤として、アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン等、ベタイン型両性界面活性剤として、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イミダゾリウムベタイン等)、陽イオン性界面活性剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)が挙げられる。
【0041】
緩衝剤としては、例えば、トロメタモール、クエン酸及びその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸及びその塩(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、酒石酸及びその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸及びその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸及びその塩(酢酸ナトリウム等)、氷酢酸、炭酸及びその塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)、緩衝剤を配合する場合、その含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0042】
局所麻酔剤又は無痛化剤としては、例えば、クロロブタノール、塩酸オキシブプロカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。局所麻酔剤又は無痛化剤を配合する場合、その含有量は、眼科用組成物中0.001~1w/v%が好ましく、0.01~0.5w/v%がより好ましい。
【0043】
pH調整剤としては、例えば、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。具体的には、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。眼科用組成物のpHは、3.5~13.0とすることもでき、涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から3.5~8.0が好ましく、5.5~8.0がより好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(HM-25R、東亜ディーケーケー社)を用いて行う。
【0044】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。浸透圧比は、0.60~2.00が好ましく、0.60~1.55がより好ましく、0.83~1.20がさらに好ましい。なお、浸透圧比は、第17改正日本薬局方に基づいた、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比である。浸透圧は第17改正日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)に従い測定する。本発明では、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスドインストルメンツ社)を用いて行った。
【0045】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、モノエタノールアミン等が挙げられる。安定化剤(抗酸化剤)としては、脂溶性の抗酸化剤として、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンE類(例えば、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール等)等が挙げられる。
【0046】
水溶性の安定化剤(抗酸化剤)としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
なお、安定化剤をソフトコンタクトレンズ用眼科組成物に配合する場合には、レンズ吸着性、蓄積性の低いものが好しく、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、ビタミンE、ビタミンA、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩等、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0048】
糖類としては、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。糖類は、湿潤性があるため点眼時のうるおいを高める効果を有し、また等張化剤としても使用できる。糖類の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0049】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。多価アルコールは、湿潤性があるため点眼時のうるおいを高める効果を有し、また等張化剤としても使用できる。また、グリセリン、プロピレングリコール等は清涼化剤の可溶化剤としても使用できる。多価アルコールを配合する場合、多価アルコールの含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0050】
粘稠剤としては、水溶性高分子化合物等が挙げられ、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、デキストラン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム等が挙げられる。粘稠剤を配合する場合、べたつき、ぼやけ等の使用感を損なわない程度で配合することができ、その含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0051】
防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルポリアミノエチルグリシン、アルキルジアミノエチルグリシン及びその塩(例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン)、クロルヘキシジングルコン酸、パラオシキ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸エチルプロピル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ホウ酸、ホウ砂、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩、クロロブタノール、硫酸オキシキノリン、ベンジルアルコール、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩化ポリドロニウム等が挙げられる。防腐剤を配合する場合、その含有量は、眼科用組成物中0.0001~0.5w/v%とすることができるが、眼科用組成物中に0.1w/v%以下が好ましく、0.01w/v%以下がより好ましく、0.005w/v%以下がさらに好ましく、0.001w/v%以下が特に好ましく、0.0001w/v%以下が最も好ましい。なお、かわき目やドライアイ症状を有する場合、またその予防のためには、防腐剤を配合しないことが好ましい。
【0052】
その他の無機化合物としては、チオ硫酸ナトリウム、酸化チタン、塩化亜鉛等が挙げられる。これらを配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~3w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0053】
油性成分としては、流動パラフィン、大豆油、オリーブ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、酢酸-d-α-トコフェロール等のビタミンE、レチノールパルミチン酸エステル等のビタミンA、白色ワセリン、精製ラノリン、コレステロール、ミックストコフェロール等が挙げられる。油成分を配合する場合、その配合量は0.001~1w/v%が好ましく、0.001~0.5w/v%がより好ましく、0.001~0.25w/v%が特に好ましい。
【0054】
[眼科用組成物]
本発明の眼科用組成物は、「水性眼科用組成物」であることが好ましい。本発明において、「水性眼科用組成物」とは、媒質が水である眼科用組成物をいう。水の含有量は、眼科用組成物中90.0~99.5w/v%が好ましく、95.0~98.0w/v%がより好ましい。
【0055】
眼科用組成物の25℃における粘度は、1.1~50mPa・sが好ましく、40mPa・s以下、30mPa・s以下、20mPa・s以下、15mPa・s以下、12mPa・s以下、10mPa・s以下、8mPa・s以下、5mPa・s以下、4mPa・s以下の順で好ましく、3mPa・s以下が特に好ましい。なお、本発明の眼科用組成物の粘度は、第17改正日本薬局方に記載の一般試験法「粘度測定法」の中の「第2法回転粘度計法」の「単一円筒形回転粘度計(ブルックフィールド型粘度計)」に記載の方法で、B型回転粘度計を用いて25℃で測定する。使用するローターや回転数等の条件は、その粘度範囲により選定する。なお、測定装置としては、コーンプレート型粘度計(例えば、DV2T(英弘精機社))が挙げられる。
【0056】
本発明の眼科用組成物の剤型は特に限定されず、例えば、点眼剤(コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液等として好適に使用できる。特に点眼剤、コンタクトレンズ装着液として好適に使用でき、点眼剤が特に好ましい。中でも、コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ取り外し液等のコンタクトレンズ使用者が使用するコンタクトレンズ用眼科用組成物として好適である。
【0057】
コンタクトレンズとしては、ハードコンタクトレンズ(O2ハードコンタクトレンズを含む)、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を含む)、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ、カラーコンタクトレンズ等特に限定されない。防腐剤を配合しない場合には、特にソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用として好適である。
【0058】
[使用方法]
点眼剤(コンタクトレンズ用点眼剤も含む)である場合、1回につき5~100μLを1~3滴、1日につき1~6回点眼することが好ましく、1回につき10~50μLを1~3滴、1日につき1~6回がより好ましく、10~30μLを1~3滴1日につき1~6回がさらに好ましい。
洗眼剤である場合、1回につき1~20mL使用することが好ましく、1~10mLがさらに好ましく、3~6mLがより好ましい。1日につき1~6回洗眼することが好ましく、3~6回がより好ましい。
コンタクトレンズ装着液である場合、1回当たり1~3滴をコンタクトレンズに滴下して使用することが好ましく、1~2滴がより好ましい。
【0059】
[製造方法]
本発明の眼科用組成物の製造方法は特に限定されないが、各成分を混合することにより得ることができる。
【0060】
[容器、包装]
得られた眼科用組成物を樹脂製容器に充填後、さらに包装体により密封し、上記容器と上記包装体との間に形成された空間に窒素等の不活性ガスを封入してもよく、眼科用組成物を樹脂製容器に充填後、脱酸素剤と共に包装体により密封した製品としてもよい。
【0061】
容器としては、プラスチック製容器が好ましく、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル等の材質又はこれら材質の複合体からなるもの等を用いることができる。特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。製品中の眼科用組成物の量は、製品及びその使用方法に応じて適宜選択することができ、例えば点眼剤の場合、2~20mLが好ましく、5~20mLがより好ましい。眼科用組成物の容器は、特に限定されないがマルチドーズ型(マルチユニット型)容器でもよく、1回使い切りのユニットドーズ型容器でもよい。マルチドーズ型(マルチユニット型)容器が好ましい。
【0062】
中栓、キャップは、公知の眼科用製品の容器に使用される材質のキャップを使用することができる。中栓の材質としては、メルトフローレート2.0以下、好ましくは1.2~1.8のポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。キャップの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0063】
[TRPV1活性抑制用眼科用組成物]
痛みを生じさせるメカニズムにTRPV1が関与していることが知られている。後述する実施例に示されているように、本発明の上記特定の成分がTRPV1活性抑制効果を有することから、これらを有効成分として含有する、TRPV1活性抑制用眼科用組成物である。
【0064】
[知覚過敏予防又は改善用である眼科用組成物]
上記成分はTRPV1活性抑制効果を有するため、これらから選ばれる1種以上を含有する、知覚過敏予防又は改善用である眼科用組成物を提供する。好適な成分、含有量、他の成分等は上記記載と同様である。知覚過敏としては、角膜又は結膜知覚過敏が好ましい。「角膜又は結膜知覚過敏」は、症状としては、「外因的又は内因的等の刺激で強い眼刺激、眼不快等を感じる」ことをいう。「外因的又は内因的」とは、例えば、風、熱気、冷気、瞬き、コンタクトレンズ装着時等をいい、「眼刺激、眼不快感」とは、角膜や結膜及びその周辺部において、しみる、痛み(眼痛)を感じやすい状態や感覚、症状(眼のピリピリ感、ヒリヒリ感、チリチリ感、チクッとする感じ)、また、それらによる眼不快感をいう。
【0065】
[TRPV1活性抑制剤]
また、本発明は、(a)充血除去剤、(b)ベルベリン、アズレン及びそれら塩、(c)抗ヒスタミン剤、(d)アミノ酸、(e)水溶性ビタミン、(f)セルロース系高分子化合物、ならびに(g)ホウ酸から選ばれる1種以上を含有する、TRPV1活性抑制剤を提供する。好適な成分、含有量、他の成分等は上記記載と同様である。
【実施例0066】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、特に明記のない組成物の「%」は、w/v%(質量/体積%,g/100mL)であり、比率はw/v%比であるが、質量比と同じである。
【0067】
[試験例:TRPV1活性抑制率]
(1)細胞培養
ラット骨格筋芽細胞(L6細胞)を3.0×104cells/wellで96well plate(コーニング社製)に播種し、37℃、5%CO2の条件下で24時間培養した。
(2)TRPV1発現ベクターのトランスフェクション
Lipofectamine3000(ThermoFisher社製)を用いて、推奨プロトコルに従いトランスフェクションを行った。具体的には、1well当たりOpti-MEM:5μL、Lipofectamine 3000 Reagent:0.2μLを混合し、試液(1)とした。また別に、1well当たりOpti-MEM 5μL、P3000 Reagent:0.2μL、TRPV1プラスミド:0.05μgを混合し、試液(2)とした。試液(1)と試液(2)を同量混和して室温で15分静置した。静置後、混合溶液を培養培地1mLに対し100μL添加し、トランスフェクション用培地とした。培養細胞の上清を除去した後、トランスフェクション用培地を100μL/wellを添加し、37℃、5% CO2の条件下で24時間培養した。
【0068】
(3)カルシウムイメージング
Calcium Kit Fluo 4(同人化学社製)を用いて推奨プロトコルに従い、カルシウムイメージング法によりTRPV1活性を測定した。具体的には、1well当たり2×Recording Buffer:50μL、250mM Probenecid:0.5μL、5% Pluronic F-127:0.8μL、1μg/μL Fluo-4 in DMSO:0.5μL、精製水:48.2μLを混合し、Loading Bufferとした。別途、1well当たり2×Recording Buffer:60μL、250mM Probenecid:0.6μL、被験サンプル溶液:59.4μLを混合し、サンプル用のRecording Bufferとした。この際に混合する被験サンプル溶液は最終濃度の2倍に調整した。また、被験サンプル溶液の代わりに精製水を混合し、コントロール用のRecording Bufferとした。トランスフェクションした細胞の上清を除去し、リン酸緩衝液(PBS)にて洗浄した後、Loading Buffer:100μLを添加し、37℃で1時間インキュベートした。上清を除去し、PBSにて2回洗浄した後、被験サンプル含有Recording Buffer:100μLを添加し、37℃で10分間インキュベートした。蛍光プレートリーダー(モルキュラーデバイス Flex3 96FlexStation3)にセットし、装置庫内温度37℃、励起波長480nm、検出波長520nmの条件で、1.5秒毎に60秒間蛍光強度を測定した。測定開始から15秒後にTRPV1のアゴニストであるカプサイシン:10μM溶液を25μL添加し、カプサイシンによるTRPV1活性をカルシウムイオン流入による蛍光強度で評価した。測定開始0秒から15秒の蛍光強度の平均を基準(ベースライン)として、カプサイシン添加後の蛍光強度の変化率をそれぞれ算出した。測定時間を横軸に、蛍光強度変化率を縦軸にグラフを描き、測定開始15秒から60秒までの曲線下面積(AUC)を算出した。コントロール用のRecording Bufferを用いた試験結果をコントロールとし、下記の式でTRPV1活性抑制率を算出した。
TRPV1活性抑制率(%)=((コントロールのAUC)-(各実施例のAUC))/(コントロールのAUC)×100
well中の各成分の終濃度と、TRPV1活性抑制率の結果を下記表に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
[処方例]
下記表に示す組成の眼科用組成物を調製した。得られた眼科用組成物は、上記と同様に、TRPV1活性抑制を有するものであった。
【0078】
【表9】
【0079】
【表10】
【0080】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
塩酸テトラヒドロゾリン:塩酸テトラヒドロゾリン,岡見化学工業社製
ナファゾリン塩酸塩:塩酸ナファゾリン,福寿製薬社製
フェニレフリン塩酸塩:フェニレフリン塩酸塩(結晶),岩城製薬社製
ベルベリン塩化物水和物:ベルベリン塩化物水和物,アルプス薬品工業社製
アズレンスルホン酸ナトリウム水和物:アズレンスルホン酸ナトリウム,アルプス薬品工業社製
イプシロンアミノカプロン酸:ε‐アミノ-n-カプロン酸EKD,積水メディカル社製グリチルリチン酸二カリウム:グリチルリチン酸二カリウム,丸善製薬社製
アラントイン:アラントイン,パーマケム・アジア社製
クロルフェニラミンマレイン酸塩:マレイン酸クロルフェニラミン(クロルフェニラミンマレイン酸塩),金剛化学社製
ジフェンヒドラミン塩酸塩:日本薬局方 塩酸ジフェンヒドラミン(粉砕品),金剛化学社製
タウリン:タウリン,岩城製薬社製
L-アスパラギン酸カリウム:L-アスパラギン酸カリウム,アルプス薬品工業社製
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム:局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム,マルハニチロ社製
ピリドキシン塩酸塩:ピリドキシン塩酸塩,BASFジャパン社製
パンテノール:パンテノール,DSM社製
レチノールパルミチン酸エステル:レチノールパルミチン酸エステル[174万I.U./g],DSM社製
酢酸d-α-トコフェロール:理研Eアセテートα,理研ビタミン社製
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:METOLOSE 65SH-4000,信越化学工業社製
ポリビニルピロリドン:ポビドン(Kollidon 90F),BASFジャパン社製ポリビニルアルコール:GOHSENOL EG-05P,三菱ケミカル社製
ホウ酸:ホウ酸,関東化学社製
トロメタモール:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール,関東化学社製
塩化ナトリウム:日本薬局方 塩化ナトリウム(注射用),富田製薬社製
l-メントール:l-メントール(薄荷脳),鈴木薄荷社製
dl-カンフル:日本薬局方 dl-カンフル,日本精化(株)製
ユーカリ油:日本薬局方 ユーカリ油,小川香料社製
ゲラニオール:ゲラニオールEX MIX,高砂香料工業社製