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特開2022-22622植物由来生分解性成形品及びその製造方法
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  • 特開-植物由来生分解性成形品及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022622
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】植物由来生分解性成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 97/02 20060101AFI20220131BHJP
   C08L 89/00 20060101ALI20220131BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C08L97/02 ZBP
C08L89/00
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112413
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】520237753
【氏名又は名称】日下 さおり
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 國男
(72)【発明者】
【氏名】日下 銹二
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AD03X
4J002AH00W
4J002GG01
4J200AA04
4J200BA36
4J200BA38
4J200CA00
4J200DA24
4J200EA22
(57)【要約】
【課題】原料の入手が容易で、低コストかつ環境にやさしい植物由来生分解性成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】植物由来の材料を用いた生分解性を有する成形品の製造方法であって、植物性材料を破砕する工程(破砕工程S1)と、破砕した植物性材料に、動物又は魚の骨から抽出したコラーゲンを含む溶液を混合する工程(混合工程S2)と、混合した混合物を成形する工程(成形工程S3)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の材料を用いた生分解性を有する成形品の製造方法であって、
植物性材料を破砕する工程と、
前記破砕した植物性材料に、動物又は魚の骨から抽出したコラーゲンを含む溶液を混合する工程と、
前記混合した混合物を成形する工程
を有することを特徴とする植物由来生分解性成形品の製造方法。
【請求項2】
前記植物性材料は雑草、野菜くず、又は焼酎かすのいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の植物由来生分解性成形品の製造方法。
【請求項3】
前記混合する工程で、細断した竹材を加えることを特徴する請求項1又は請求項2に記載の植物由来生分解性成形品の製造方法。
【請求項4】
前記植物性材料と前記細断した竹材と前記コラーゲンを含む溶液の割合は、質量比で1:1:2であることを特徴とする請求項3に記載の植物由来生分解性成形品の製造方法。
【請求項5】
前記混合する工程で、さらに炭の粉末を添加することを特徴する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の植物由来生分解性成形品の製造方法。
【請求項6】
少なくとも、植物性材料と、動物又は魚の骨から抽出したコラーゲンとを含むことを特徴とする植物由来生分解性成形品。
【請求項7】
前記植物性材料は雑草、野菜くず、又は焼酎かすのいずれかを含むことを特徴とする請求項6に記載の植物由来生分解性成形品。
【請求項8】
さらに細断した竹材を含むことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の植物由来生分解性成形品。
【請求項9】
さらに炭の粉末を含むことを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の植物由来生分解性成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の材料を用いた生分解性を有する成形品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ごみの廃棄処分に要する労力を軽減し、地球環境に負荷をかけないようにするために、地中の微生物等によって分解可能な生分解性の材料が研究・開発されている。
【0003】
生分解性組成物として、例えば、特許文献1には、ポリ乳酸または乳酸とヒドロキシカルボン酸のコポリマーを主成分とする熱可塑性ポリマー組成物と澱粉および/または加工澱粉の混合物からなる生分解性ポリマー組成物が開示されている。ポリ乳酸を用いた組成物は生分解性プラスチックとして普及している。
【0004】
また、特許文献2には、ケナフ繊維を含有した生分解性樹脂組成物であって、ケナフ繊維の含有量が10~50質量%であることを特徴とするケナフ繊維強化樹脂組成物が開示されている。ケナフはアフリカ原産の植物であり、光合成速度が速いので二酸化炭素を多量に吸収できることから、二酸化炭素による地球温暖化、森林破壊という地球問題や環境問題を同時に解決する手段の一つとして注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-39381号公報
【特許文献2】特開2005-105245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した生分解性の組成物は、材料費及び成形加工費が共に従来品よりも高く、コストの面から十分に普及しているとは言い難い状況である。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、原料の入手が容易で、低コストかつ環境にやさしい植物由来生分解性成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成する本発明の一態様は、植物由来の材料を用いた生分解性を有する成形品の製造方法であって、植物性材料を破砕する工程と、破砕した植物性材料に、動物又は魚の骨から抽出したコラーゲンを含む溶液を混合する工程と、混合した混合物を成形する工程を有する。
【0009】
本発明の一態様によれば、植物性材料と、動物又は魚の骨を材料として用いるため、原料の入手が容易で、低コストかつ環境にやさしい植物由来生分解性成形品とすることができる。
【0010】
このとき、本発明の一態様では、植物性材料は雑草、野菜くず、又は焼酎かすのいずれかを含むとしてもよい。
【0011】
これらの材料は、一般に廃棄されることが多いため、廃棄物を原料として環境にやさしい成形品を製造することができる。
【0012】
また、本発明の一態様では、混合する工程で、細断した竹材を加えることとしてもよい。
【0013】
細断した竹材を加えることにより、生分解性は保ったままで、一定の強度を有する植物由来生分解性成形品とすることができる。
【0014】
また、本発明の一態様では、植物性材料と細断した竹材とコラーゲンを含む溶液の割合は、質量比で1:1:2とすることが好ましい。
【0015】
上記比率で材料を混合して成形することにより、例えば、適度な強度を備えた容器として利用することが可能になる。
【0016】
また、本発明の一態様では、混合する工程で、さらに炭の粉末を添加するとしてもよい。
【0017】
炭の粉末を添加することで、脱臭効果を得ることができる。
【0018】
本発明の他の態様は、少なくとも、植物性材料と、動物又は魚の骨から抽出したコラーゲンとを含むことを特徴とする植物由来生分解性成形品である。
【0019】
上述した植物由来生分解性成形品の製造方法を適用することにより原料の入手が容易で、低コストかつ環境にやさしい植物由来生分解性成形品を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、原料の入手が容易で、低コストかつ環境にやさしい植物由来生分解性成形品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る植物由来生分解性成形品の製造方法の工程を示す工程図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る植物由来生分解性成形品の製造方法の工程を示す工程図である。本発明の一態様は、図1に示すように、植物由来の材料を用いた生分解性を有する成形品の製造方法であって、植物性材料を破砕する工程(破砕工程S1)と、破砕した植物性材料に、動物又は魚の骨から抽出したコラーゲンを含む溶液を混合する工程(混合工程S2)と、混合した混合物を成形する工程(成形工程S3)を有する。以下、各工程について説明する。
【0024】
破砕工程S1では、植物性材料を一定の大きさに破砕する。植物性材料は、植物由来のものであれば特に限定はされないが、例えば、雑草、草木の葉、野菜くず、焼酎かすなどを利用することができる。これらの材料は、従来は焼却などの処理をしていた廃棄物となり得るものであるが、本発明の一態様では、これらの植物性材料を用いることによって低コストで環境にやさしい植物由来生分解性成形品を製造することができる。
【0025】
破砕工程S1では、例えば、破砕機、裁断機、粉砕機などを用いて植物性材料を細かくする。ある程度の大きさにできれば、特に粒径は限定されないが、一例として、0.01mmに粉砕することが好ましい。植物性材料は、特に乾燥等させておく必要はなく、そのままの状態で破砕してもよい。
【0026】
次に、混合工程S2では、破砕した植物性材料に、動物又は魚の骨から抽出したコラーゲンを含む溶液を混合する。コラーゲンを含む溶液は、成形品におけるバインダーとしての役割を果たす。一例として、魚の骨又は動物の骨(例えば牛、豚、鶏などの骨)を煮詰めて冷ましたもの、すなわちにかわ(膠)などを用いることができる。にかわは温度によよってゾル状(液体)とゲル状(固体)に変化するため、破砕した植物性材料を接着することができる。このような溶液をバインダーとして用いることで、余計な化学物質を添加する必要がなく、環境や、あるいは人にも優しい植物由来生分解性成形品とすることができる。
【0027】
また、混合工程S2では、破砕した植物性材料に細断した竹材を加えてもよい。細断の大きさは、一例として、厚さ0.5mm、長さ30~40mmとする。また、このように細断した竹材は、植物性材料に対して同程度の質量分添加することが好ましい。また、植物性材料と細断した竹材とコラーゲンを含む溶液の割合は、質量比で1:1:2とすることが好ましい。細断した竹材を添加することで、最終的に製造される成形品に一定の強度を付与することができ、また、竹材という植物由来の材料を用いることで、余分な化学物質を添加する必要もない。
【0028】
また、混合工程S2では、さらに、炭の粉末を添加してもよい。添加する量としては、混合物の質量に対して0.1~3%とすることが好ましい。臭気が気になる原料を使う場合には、炭の粉末を添加することで、脱臭効果を得ることができる。
【0029】
次に、成形工程S3では、混合した混合物を成形する。成形する方法は特に限定はされないが、一例として、金型を用いたプレス成形が挙げられる。例えば、金型に対してヒーターバンドを用いて70~80℃に加熱しておき、2秒程度プレスすることで成形する。金型には、例えば、無数の孔を設けておくことで、プレス後にエアーによる突き出しを行うことができる。
【0030】
プレス後の成形品に対しては、例えば、自然由来の着色料で着色してもよい。
【0031】
成形工程S3で作る成形品の種類は、金型が用意できるものであれば特に限定はされないが、一例として、トレイ(容器)やポット(鉢)などが挙げられる。あるいは、箸やストローなどを製造してもよい。これらの容器や箸などは、使用後にそのまま土に埋めることができ、その後、微生物によって無機質に分解される。また、ポット(鉢)の場合は、植物をポット(鉢)から外すことなく、そのまま植えることが可能である。
【0032】
このように本発明の一態様によれば、雑草などのどこにでもある植物性材料と、動物又は魚の骨を材料として用いるため、原料の入手が容易で、低コストでかつ環境にもやさしい植物由来生分解性成形品を製造することができる。
【0033】
なお、上記のように本発明の一実施形態および各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0034】
例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、植物由来生分解性成形品及びその製造方法の構成も本発明の一実施形態および各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明にかかる植物由来生分解性成形品及びその製造方法は、刈り取った雑草や葉、焼酎かすなどの本来は焼却廃棄されるような材料を有効活用することで、従来はコスト高で普及していなかった生分解性の製品を低コストで製造することを可能にした。本発明に係る製造方法を用いることで、原料費が安いうえ、プレス成形は一般家庭用電源で済むため、加工費(電気代)も安い。また、金型さえあれば様々な形の成形品を作ることができ、栽培用のポットやトレーなど様々な製品への適用が想定される。
【符号の説明】
【0036】
S1 破砕工程、S2 混合工程、S3 成形工程
図1