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特開2022-22627情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022627
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/155 20060101AFI20220131BHJP
   H04B 7/185 20060101ALI20220131BHJP
   G01S 13/90 20060101ALN20220131BHJP
   G01S 13/87 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
H04B7/155
H04B7/185
G01S13/90
G01S13/87
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112658
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(72)【発明者】
【氏名】平原 大地
【テーマコード(参考)】
5J070
5K072
【Fターム(参考)】
5J070AC01
5J070AD09
5J070AE07
5J070BD01
5J070BE04
5K072AA13
5K072AA15
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB22
5K072DD02
5K072DD03
5K072DD06
5K072DD07
5K072DD11
5K072DD16
5K072EE04
(57)【要約】
【課題】複数の人工衛星を効率よく用いて、ユーザが所望するドメインに対するプロダクトを獲得すること。
【解決手段】情報処理装置は、一つの集合体を形成する複数の人工衛星のうち少なくとも1つの人工衛星に、ドメインに対してミッションを行わせ、かつ前記人工衛星が前記ドメインに対して行った前記ミッションの結果に基づくプロダクトを提供させる複数のリクエストを取得する取得部と、前記複数のリクエストのそれぞれに対応したコマンドを生成する生成部と、前記複数のリクエストのそれぞれの前記プロダクトの種別に応じて、前記複数の人工衛星の中から、前記コマンドの送信対象とする1つ又は複数のターゲット人工衛星を選択する選択部と、前記ターゲット人工衛星に地上局を介して前記コマンドを送信する送信部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの集合体を形成する複数の人工衛星のうち少なくとも1つの人工衛星に、一つ又は複数のドメインに対してミッションを行わせ、かつ前記人工衛星が前記ドメインに対して行った前記ミッションの結果に基づくプロダクトを提供させる複数のリクエストを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記複数のリクエストのそれぞれに対応したコマンドを生成する生成部と、
前記取得部によって取得された前記複数のリクエストのそれぞれの前記プロダクトの種別に応じて、前記複数の人工衛星の中から、前記生成部によって生成された前記コマンドの送信対象とする1つ又は複数のターゲット人工衛星を選択する選択部と、
前記選択部によって選択された前記ターゲット人工衛星に地上局を介して前記コマンドを送信する送信部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記複数のリクエストの優先度を決定する決定部を更に備え、
前記送信部は、前記決定部によって決定された前記優先度に応じて、前記ターゲット人工衛星に前記コマンドを送信する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記複数の人工衛星のトラフィックに基づいて、前記複数の人工衛星の中でリソースに余剰がある前記人工衛星を、前記ターゲット人工衛星として選択する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記リクエストのミッションが第1ミッションであり、前記複数の人工衛星の中で、前記第1ミッションを行う予定の第1人工衛星よりも、第2ミッションを行う予定の第2人工衛星の方が余剰なリソースが多い場合、前記第2人工衛星を前記ターゲット人工衛星として選択する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1ミッションは、電波の発信源の位置を特定するミッションであり、
前記ターゲット人工衛星によって行われた前記ミッションの結果を解析する解析部を更に備え、
前記選択部は、前記複数の人工衛星の中に複数の第2人工衛星が含まれ、かつ前記複数の第2人工衛星のいずれの人工衛星よりも前記第1人工衛星の方が余剰なリソースが少ない場合、前記複数の第2人工衛星のいずれかの人工衛星を前記ターゲット人工衛星として選択し、
前記送信部は、前記選択部によって選択された前記ターゲット人工衛星に、前記地上局を介して前記コマンドを送信し、
前記解析部は、前記ターゲット人工衛星によって行われた前記第1ミッションの結果に基づいて前記発信源の位置を推定し、
前記選択部は、前記複数の第2人工衛星の中から、前記解析部によって推定された前記発信源の位置に最も近い前記第2人工衛星を、新たな前記ターゲット人工衛星として選択し、
前記送信部は、前記選択部によって新たに選択された前記ターゲット人工衛星に、新たに前記地上局を介して前記コマンドを送信し、
前記解析部は、新たな前記ターゲット人工衛星によって行われた前記第1ミッションの結果に基づいて、新たに前記発信源の位置を推定する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記ドメインには、地表面が含まれ、
前記取得部は、更に、前記地表面の環境を表す環境データを取得し、
前記解析部は、前記複数の人工衛星のトラフィックの分布と前記環境データとの相関に基づいて、前記発信源の位置を推定する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記選択部は、
更に、選択した前記ターゲット人工衛星に関する履歴情報を記憶部に記憶させ、
前記第2人工衛星に前記第1ミッションを行わせる前記リクエストが前記取得部によって繰り返し取得される場合、前記記憶部に記憶させた前記履歴情報を読み出し、読み出した前記履歴情報に基づいて、前記ターゲット人工衛星を選択する、
請求項4から6のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、更に、前記コマンドが送信された前記ターゲット人工衛星から、前記地上局を介して前記ミッションの結果を表す衛星データを取得し、
前記取得部によって取得された前記衛星データを解析することで、前記プロダクトを生成する解析部を更に備える、
請求項2から7のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記解析部は、前記複数の人工衛星のトラフィックの時間変化する分布に基づいて、前記衛星データに対する情報抽出処理に制約及び重みを付与する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記送信部は、前記ターゲット人工衛星に加えて、更に地上設備に前記コマンドを送信する、
請求項1から9のうちいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
コンピュータが、
一つの集合体を形成する複数の人工衛星のうち少なくとも1つの人工衛星に、一つ又は複数のドメインに対してミッションを行わせ、かつ前記人工衛星が前記ドメインに対して行った前記ミッションの結果に基づくプロダクトを提供させる複数のリクエストを取得し、
取得した前記複数のリクエストのそれぞれに対応したコマンドを生成し、
取得した前記複数のリクエストのそれぞれの前記プロダクトの種別に応じて、前記複数の人工衛星の中から、生成した前記コマンドの送信対象とする1つ又は複数のターゲット人工衛星を選択し、
選択した前記ターゲット人工衛星に地上局を介して前記コマンドを送信する、
情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
一つの集合体を形成する複数の人工衛星のうち少なくとも1つの人工衛星に、一つ又は複数のドメインに対してミッションを行わせ、かつ前記人工衛星が前記ドメインに対して行った前記ミッションの結果に基づくプロダクトを提供させる複数のリクエストを取得し、
取得した前記複数のリクエストのそれぞれに対応したコマンドを生成することと、
取得した前記複数のリクエストのそれぞれの前記プロダクトの種別に応じて、前記複数の人工衛星の中から、生成した前記コマンドの送信対象とする1つ又は複数のターゲット人工衛星を選択することと、
選択した前記ターゲット人工衛星に地上局を介して前記コマンドを送信することと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、衛星メガコンステレーションやクラスター衛星観測等を用いることで、高頻度、高分解能、かつ同時に数種類の観測が可能となったサービスが民営化され、更にデータ提供もオープンフリーで共通インタフェースにより利用しやすくなっている。一方で、地表面のようなあるドメインに存在する対象物から発信された信号を人工衛星に受信させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-7212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の、衛星メガコンステレーションやクラスター衛星による全球カバレッジかつリアルタイム性は、その観測や通信対象の分布が地球上で偏っているため、多くの余剰リソースや無駄な処理コストが発生する。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、複数の人工衛星を効率よく用いて、ユーザが所望するドメインに対するプロダクトを獲得することができる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、一つの集合体を形成する複数の人工衛星のうち少なくとも1つの人工衛星に、一つ又は複数のドメインに対してミッションを行わせ、かつ前記人工衛星が前記ドメインに対して行った前記ミッションの結果に基づくプロダクトを提供させる複数のリクエストを取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記複数のリクエストのそれぞれに対応したコマンドを生成する生成部と、前記取得部によって取得された前記複数のリクエストのそれぞれの前記プロダクトの種別に応じて、前記複数の人工衛星の中から、前記生成部によって生成された前記コマンドの送信対象とする1つ又は複数のターゲット人工衛星を選択する選択部と、前記選択部によって選択された前記ターゲット人工衛星に地上局を介して前記コマンドを送信する送信部と、を備える情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、複数の人工衛星を効率よく用いて、ユーザが所望するドメインに対するプロダクトを獲得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る衛星リモートセンシングシステム1の概念図である。
図2】実施形態に係る衛星リモートセンシングシステム1の構成の一例を表す図である。
図3】実施形態に係る情報処理装置100の構成の一例を表す図である。
図4】実施形態に係る計画部114及び解析部116の具体的な処理内容を説明するための図である。
図5】プロダクトリクエストの一例を表す図である。
図6】各人工衛星sの要求仕様データの一例を表す図である。
図7】各人工衛星sのトラフィックデータの一例を表す図である。
図8】各人工衛星sの予約データの一例を表す図である。
図9】環境データの一例を表す図である。
図10】環境データの一例を表す図である。
図11】環境データの一例を表す図である。
図12】実施形態に係る計画部114の一連の処理の流れを表すフローチャートである。
図13】実施形態に係る解析部116及び通信制御部118の一連の処理の流れを表すフローチャートである。
図14】実施形態に係る衛星リモートセンシングシステム1の一連の処理の流れを表すシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムの実施形態について説明する。
【0010】
[衛星リモートセンシングシステム]
図1は、実施形態に係る衛星リモートセンシングシステム1の概念図である。図示のように、衛星リモートセンシングシステム1には、例えば、複数の人工衛星sや、一つ又は複数の地上局g、情報処理装置100などが含まれる。
【0011】
複数の人工衛星sは、例えば、衛星メガコンステレーションやクラスター衛星群といったクラスタ(或いは集合体)を形成しながら地球周回軌道を周回する。複数の人工衛星sのうち一部は、静止軌道(対地同期軌道)を周回する人工衛星、すなわち静止衛星であってもよい。複数の人工衛星sは、一つ又は複数のドメインを観測する。
【0012】
ドメインとは、観測や通信などの対象となる空間或いは領域を意味する。例えば、ドメインには、地表面ドメインD1や、近宇宙ドメインD2、深宇宙ドメインD3などが含まれる。地表面ドメインD1では、例えば、人工衛星sによる地表面(例えば地上、海上、上空、大気圏といった地球表面)をリモート観測したり、地表面と人工衛星sとの間で通信したりするようなミッションが対象となる。近宇宙ドメインD2では、例えば、地球周回軌道上で発信された電波を観測する、或いは監視するようなミッションが対象となる。深宇宙ドメインD3では、例えば、深宇宙と通信したり、深宇宙を探索する探査機の軌道を高精度に決定したりするようなミッションが対象となる。
【0013】
地上局gは、地上に設置された無線局である。地上局gは、例えば、近宇宙ドメインD2や深宇宙ドメインD3から信号を受信したり、近宇宙ドメインD2や深宇宙ドメインD3に向けて信号を発信したりする。特に、深宇宙ドメインD3を通信や観測の対象とする場合、地上局gには、人工衛星sと通信するもの以外に、深宇宙局や電波天文台といった地上設備が含まれてよい。
【0014】
情報処理装置100は、例えば、地上に設置される。情報処理装置100は、衛星メガコンステレーションやクラスター衛星などを形成する複数の人工衛星sのトラフィックの偏りを導出し、そのトラフィックの偏りに基づいて、通信経路や観測要求として需要が低い又は無い地球上のエリアを特定する。更に、情報処理装置100は、特定したエリアの上空の軌道上に存在する1基又は複数基の人工衛星sの中から、観測や通信といったミッションを行わせる対象の人工衛星の候補を選択する。以下、観測や通信といったミッションを行わせる対象の人工衛星のことを、ターゲット人工衛星s_tarと称して説明する。
【0015】
図示の例では、海上のエリアA1は、クラスター衛星C1によって観測されているものの、エリアA2は、いずれの人工衛星sによっても観測されていない。このような場合、情報処理装置100は、エリアA2の上空に存在する人工衛星s3や、その人工衛星s3を含むクラスター衛星C2、クラスター衛星C2とは異なる位置のクラスター衛星C3などをターゲット人工衛星s_tarの候補として選択する。この際、ターゲット人工衛星s_tarの候補は、各人工衛星sの過去の運用実績を基に選択されてもよいし、各人工衛星sの電波の受信状況や軌道上の位置や姿勢等を基に選択されてもよい。この場合、情報処理装置100は、地上に設置されることに代えて、人工衛星sに搭載されてもよい。
【0016】
情報処理装置100は、複数のターゲット人工衛星s_tarの候補を選択すると、更に、それら複数の候補の中からユーザが所望するドメインに対するミッションが可能な人工衛星sをターゲット人工衛星s_tarとして選択する。ターゲット人工衛星s_tarとして選択された人工衛星sは、広帯域かつ広範囲にわたって観測又は通信し、その観測データ或いは通信データを、比較的需要の低い或いは需要が無い他の人工衛星sを経由して地上局gへと送信する(ダウンリンクする)。情報処理装置100は、ダウンリンクされたデータを統合処理する。この際、2次元的に指向制御するか3次元的に指向制御するかは対象やエリアによって調整すれば良く、衛星数と衛星位置の選択により可能とする。
【0017】
例えば、2つの違法な電波発信源t1の位置を特定したいというユーザの要望があったとする。この場合、衛星リモートセンシングシステム1は、一方の電波発信源t1の周辺に存在する人工衛星s3に協調観測(図中c1の観測)を行わせて、一方の電波発信源t1の座標を特定し、他方の電波発信源t1の周辺に存在するクラスター衛星C2に合成開口レーダによる観測(図中B2の観測領域)を行わせて、他方の電波発信源t1の座標を特定する。
【0018】
また、例えば、新宇宙の探査機t2の軌道を高精度に決定したいというユーザの要望があったとする。この場合、衛星リモートセンシングシステム1は、深宇宙局などの地上局g1に新宇宙の探査機t2が存在する深宇宙ドメインD3を観測させたり(図中B3の観測領域)、同一方向に視野を持つ人工衛星s3に深宇宙ドメインD3を協調観測させたり(図中B4の観測領域)、クラスター衛星C4に合成開口レーダによって深宇宙ドメインD3を観測させたりする(図中B5の観測領域)。そして、衛星リモートセンシングシステム1は、Delta-DOR(Delta-Differential One-Way Ranging)などを利用して観測領域B3、B4、B5に関する観測データを統合処理する。これによって、時間帯などによって制約されずに、衛星メガコンステレーションなどによる全球方位の観測が可能となる。なお、深宇宙通信、地上電波監視、電波天文といった各ミッションについても同様に疑似的にアンテナ開口長を必要なだけ確保して対処してよい。
【0019】
これらの多種多様な衛星メガコンステレーション等の拡張利用は、日時、エリア、方向、周波数を選択するだけで、自動で衛星候補を決定しコマンド指示ならびにダウンリンクを実施してもよい。自動での実施時にはオープンAPI(Application Programming Interface)により特定のユーザに限定することなく利用しても良い。利用競合時は可能な限り地上統合処理で同時対応してもよい。各衛星は広帯域かつ無指向性アンテナを有することが望ましいが、拡張利用の需要に合わせて一部の視野や周波数帯域に限定しても良い。特定の衛星軌道条件においては常に衛星メガコンステレーション等の拡張利用のために観測データを需要の無い衛星並びに経路で伝送とダウンリンクを行い、地上等の情報処理装置100に集約し続けても良い。拡張利用のための観測データは、各衛星で各周波数における入力レベルを監視し、一定のレベルを超えたときのみにタイミング情報と共に限定して伝送してよい。衛星メガコンステレーション等において、粗密なトラフィックにあわせて投入軌道を最適化しても良い。その際、需要の無い軌道条件を再度導出し拡張利用してもよい。
【0020】
以下、衛星リモートセンシングシステム1の構成について説明する。図2は、実施形態に係る衛星リモートセンシングシステム1の構成の一例を表す図である。衛星リモートセンシングシステム1は、例えば、複数の人工衛星s1~s8と、複数の地上局g1~g5(深宇宙局g4や天文台g5を含む)と、情報処理装置100と、複数の端末装置200と、データ管理サーバ300とを備える。人工衛星sの数は、8基に限られず、7基以下であってもよいし、9基以上であってもよい。また、地上局g1~g5の数は、5つに限られず、4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。
【0021】
複数の人工衛星s1~s8は、上述した通り、衛星メガコンステレーションなどのクラスタを形成している。人工衛星s1~s8のそれぞれには、例えば、通信に利用されるアンテナや、観測に利用されるセンサ(例えば赤外線センサやカメラ等)、アナログ/デジタルコンバータ、通信回路等が搭載される。これらの人工衛星s1~s8は、移動体のネットワークとして動的に信号の伝送経路を決定し(ルーティングを行い)、その伝送経路(ルート)の中で適したリンクを介して衛星間で信号を伝送する。伝送経路は、人工衛星s自らが決定してもよいし、情報処理装置100が決定してもよい。
【0022】
情報処理装置100は、例えば、端末装置200からプロダクトリクエストを取得する。プロダクトリクエストとは、衛星メガコンステレーションなどに含まれる複数の人工衛星sが、地表面ドメインD1、近宇宙ドメインD2、及び深宇宙ドメインD3の一部又は全部に対して観測や通信といったミッションを行うよう要求し、更に、そのミッション結果に基づいて生成されたプロダクトを提供するよう要求する情報である。情報処理装置100は、端末装置200からプロダクトリクエストを取得すると、そのプロダクトリクエストによって要求されたプロダクトを得るために最適な1基又は複数基の人工衛星sを選択し、その/それらの人工衛星sに地上局gを介してテレコマンドを送信したり、他の人工衛星sを中継してテレコマンドを送信したりする。
【0023】
情報処理装置100は、テレコマンドを送信した1基又は複数基の人工衛星sから地上局gを介してミッション結果を表すデータ(以下、衛星データと称する)を受信し、その衛星データに基づいてプロダクトを生成する。ミッションが観測である場合、衛星データは観測データとなり、ミッションが通信である場合、衛星データは通信データとなる。そして、情報処理装置100は、生成したプロダクトを端末装置200に送信する。
【0024】
端末装置200は、例えば、スマートフォンなどの携帯電話、タブレット端末、パーソナルコンピュータといった、入力装置、表示装置、通信装置、記憶装置、および演算装置を備える端末装置である。通信装置は、NIC(Network Interface Card)などのネットワークカード、無線通信モジュールなどを含む。端末装置200は、ウェブブラウザやアプリケーションプログラムなどのUA(User Agent)を起動させて、ユーザからプロダクトリクエスト等の各種入力操作を受け付けてよい。
【0025】
データ管理サーバ300は、後述する地表面ドメインD1に関する環境データを記憶及び管理するサーバである。データ管理サーバ300は、定期的に環境データを収集し、更新する。
【0026】
[情報処理装置]
以下、情報処理装置100の構成について説明する。図3は、実施形態に係る情報処理装置100の構成の一例を表す図である。情報処理装置100は、例えば、通信部102と、処理部110と、記憶部130とを備える。
【0027】
通信部102は、例えば、NICなどの通信インターフェースやDMAコントローラ、無線通信モジュールなどを含む。通信部102は、無線や有線を介して、地上局g1~5や、端末装置200、データ管理サーバ300等と通信する。
【0028】
処理部110は、例えば、取得部112と、計画部114と、解析部116と、通信制御部118とを備える。通信部102と通信制御部118とを合わせたものは、「送信部」の一例である。
【0029】
処理部110の構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサが記憶部130に格納されたプログラムやAPI(Application Programming Interface)等を実行することにより実現される。また、処理部110の構成要素の一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。また、プロセッサにより参照されるプログラムやAPIは、予め記憶部130に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、その記憶媒体が情報処理装置100のドライブ装置に装着されることで記憶部130にインストールされてもよい。
【0030】
記憶部130は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などによって実現される。記憶部130には、例えば、APIやプロダクトなどが格納される。
【0031】
取得部112は、例えば、通信部102を介して少なくとも1台以上の端末装置200から複数のプロダクトリクエストを取得する。取得部112は、同一の端末装置200から複数のプロダクトリクエストを取得してもよいし、互いに異なる複数の端末装置200のそれぞれから1つ以上のプロダクトリクエストを取得してもよい。プロダクトリクエストは、一度しか要求されない単発的(スポット的)なものであってもよいし、繰り返し要求される継続的(定常的)なものであってもよい。また、取得部112は、例えば、通信部102を介して地上局gから衛星データを取得する。
【0032】
また、取得部112は、通信部102を介して、データ管理サーバ300から地表面ドメインD1に関する環境データを取得し、これを記憶部130に記憶させる。
【0033】
計画部114は、取得部112によって取得されたプロダクトリクエストに基づいて、人工衛星sの運用計画を計画するとともに、テレコマンドを生成する。
【0034】
解析部116は、取得部112によって取得された衛星データを解析することでプロダクトを生成する。
【0035】
通信制御部118は、通信部102を介して、計画部114によって生成されたテレコマンドを地上局gに送信したり、解析部116によって生成されたプロダクトを端末装置200に送信したりする。
【0036】
図4は、実施形態に係る計画部114及び解析部116の具体的な処理内容を説明するための図である。図示のように、計画部114は、例えば、決定部114aと、選択部114bと、生成部114cとを備える。
【0037】
決定部114aは、取得部112によって取得された複数のプロダクトリクエストのそれぞれの種別に応じて、各プロダクトリクエストの優先度を決定する。例えば、決定部114aは、複数の人工衛星sのトラフィックに基づいて各プロダクトリクエストの優先度を決定してもよいし、プロダクトを提供することに対してユーザが支払う対価或いは報酬額に基づいて各プロダクトリクエストの優先度を決定してもよい。
【0038】
図5は、プロダクトリクエストの一例を表す図である。図示の例のように、プロダクトリクエストは、各プロダクトを識別するための識別子であるプロダクトIDに対して、ユーザによって要求されたプロダクトの種別(或いはそのプロダクトを得るために行うべきミッションの種別)や、解析期間、解析座標域、解析周波数などが対応付けられたデータである。プロダクトの種別には、例えば、地球上(地表面ドメインD1)の電波発信源を観測することで得られるプロダクトや、周回軌道上(近宇宙ドメインD2)の電波発信源を観測することで得られるプロダクト、深宇宙(深宇宙ドメインD3)と通信することで得られるプロダクト、深宇宙などの天体を観測することで得られるプロダクトなどが含まれる。解析期間は、衛星データを収集させ、その衛星データを解析させる期間である。解析座標域は、例えば、経度や緯度といったミッションの対象とする座標域である。解析周波数は、解析対象とする電波の周波数或いは周波数帯である。
【0039】
選択部114bは、例えば、複数のプロダクトリクエストの中から、決定部114aによって決定された優先度が高いものから順番に選択し、その選択したプロダクトリクエストの種別に応じて、複数の人工衛星sの中から、1つ又は複数のターゲット人工衛星s_tarを選択する。例えば、選択部114bは、各人工衛星sの要求仕様データ、トラフィックデータ、及び各人工衛星sの予約データ等に基づいて、ターゲット人工衛星s_tarを選択してよい。これらの各種データは記憶部130に記憶されていてよい。
【0040】
図6は、各人工衛星sの要求仕様データの一例を表す図である。図示のように、要求仕様データは、プロダクトIDに対して、使用アルマナック、使用エフェメリス、運用衛星数、観測周波数帯域などが対応付けられたデータである。これらの情報は、ユーザが要求した条件(解析期間、解析座標域、解析周波数など)を満たすように決定される。
【0041】
図7は、各人工衛星sのトラフィックデータの一例を表す図である。図示のように、トラフィックデータは、各人工衛星sを識別するための識別子である衛星IDに対して、アルマナック、エフェメリス、第1リソースの使用状況、第2リソースの使用状況などが対応付けられたデータである。例えば、人工衛星sに搭載されたアンテナやセンサは「通信」や「観測」といったミッションに利用されるリソースであり、一方が第1リソースに相当し、他方が第2リソースに相当する。なお、第1リソース及び第2リソースは各ミッションで共用されてもよい。
【0042】
図8は、各人工衛星sの予約データの一例を表す図である。図示のように、予約データは、プロダクトIDに対して、各人工衛星sを識別するための識別子である衛星ID、人工衛星sの使用時間帯、使用リソース、テレコマンド或いは衛星データの送信先となる人工衛星sの衛星IDなどが対応付けられたデータである。テレコマンド或いは衛星データの送信先となる人工衛星sは、衛星間通信において通信相手となる他の人工衛星sである。上述した通り、複数の人工衛星sは、衛星メガコンステレーションなどのクラスタを形成している。そのため、アップリンクの場面では、地上局gから発信されたテレコマンドは、そのクラスタ内のある人工衛星sによって受信され、その人工衛星sを中継してターゲット人工衛星s_tarに転送される。同様に、ダウンリンクの場面では、ターゲット人工衛星s_tarから発信された衛星データは、他の人工衛星sを中継して地上局gに転送される。このように、衛星メガコンステレーションなどのクラスタ内では衛星間通信が基本となるため、テレコマンド或いは衛星データの送信先となる人工衛星sの衛星IDが記録される。
【0043】
例えば、観測ミッションを行うことで得られるプロダクトがプロダクトリクエストとしてユーザから要求された場合、選択部114bは、図6から図8に例示する要求仕様データ、トラフィックデータ、及び予約データを参照して、複数の観測衛星sのうち、プロダクトリクエストとして指定された解析期間内かつ解析座標域内において、観測ミッションに対応可能なリソース(以下、観測リソース)が使用される予定がない観測衛星sを、ターゲット人工衛星s_tarとして選択する。観測衛星sとは、少なくとも観測リソースを有し、定常的に観測ミッションを行っている人工衛星sである。つまり、選択部114bは、観測リソースに余剰がある観測衛星sを、ターゲット人工衛星s_tarとして選択する。
【0044】
一方、選択部114bは、観測衛星sの観測リソースに余剰がない場合、複数の通信衛星sのうち、観測リソースを有しつつ、更に、プロダクトリクエストとして指定された解析期間内かつ解析座標域内において、観測リソースが使用される予定がない通信衛星sを、ターゲット人工衛星s_tarとして選択する。通信衛星sとは、少なくとも通信ミッションに対応可能なリソース(以下、通信リソース)を有し、定常的に通信ミッションを行っている人工衛星sである。観測ミッションは「第1ミッション」の一例であり、通信ミッションは「第2ミッション」の一例である。
【0045】
このように、プロダクトリクエストとして観測ミッションが要求されたときに、観測衛星sに観測リソースが無く、通信衛星sに観測リソースが有る場合、言い換えれば、観測衛星sよりも通信衛星sの方が観測リソースに余剰がある場合、専ら通信ミッションのみを行う通信衛星sを、一時的に観測ミッションを行わせるためのターゲット人工衛星s_tarとして選択するため、通信衛星sの運用方式を拡張することができる。以下、通信衛星sに観測ミッションを行わせることや、観測衛星sに通信ミッションを行わせることなどを「運用方式の拡張」或いは「運用拡張」と称して説明する。
【0046】
また、選択部114bは、プロダクトリクエストによって観測等が要求されたドメインが地表面ドメインD1である場合、その地表面ドメインD1に関する環境データと、複数の人工衛星sのトラフィックの分布との相関に基づいて、複数の人工衛星sの中から、プロダクトリクエストによって要求されたミッションに対応可能なリースの余剰が多い人工衛星sを特定し、その特定した人工衛星sをターゲット人工衛星s_tarとして選択してもよい。
【0047】
図9から図11は、環境データの一例を表す図である。図9の環境データは、地表面の有害ガスの濃度分布を表しており、図10の環境データは、雨量や風速といった地表面の気象データを表しており、図11の環境データは、海上の船舶の位置データを表している。例えば、選択部114bは、これらの環境データの相関を求め、周回軌道上の複数の人工衛星sの中から、需要の低い又は需要の無い人工衛星s(つまりリソースに余剰がある人工衛星s)を特定し、その人工衛星sをターゲット人工衛星s_tarとして選択してよい。選択部114bは、更に、波高データや、都市や沿岸等の地形データ、既存の電波発信源データといったその他の環境データを用いてターゲット人工衛星s_tarを選択してもよい。
【0048】
選択部114bは、ターゲット人工衛星s_tarを選択すると、更に、地上局gからターゲット人工衛星s_tarまでの伝送経路を決定する。具体的には、選択部114bは、地上局gからターゲット人工衛星s_tarまでの伝送経路内において、テレコマンドを中継する他の人工衛星s(以下、リレー人工衛星s_reと称する)を選択する。例えば、選択部114bは、利用干渉を避けるため、複数の人工衛星sの中で、トラフィックの負荷が低い(使用されていない)人工衛星sをリレー人工衛星s_reとして選択し、更にそのリレー人工衛星s_reをノードと見做したネットワークを伝送経路として決定する。リレー人工衛星s_reは、ターゲット人工衛星s_tarを兼ねていてもよい。この際、選択部114bは、伝送経路内の各リンクにおけるデータ伝送の配分量を適切に決定してよい。
【0049】
生成部114cは、プロダクトリクエストとして要求されたミッションをターゲット人工衛星s_tarに行わせるためのテレコマンドを生成する。この際、生成部114cは、地上局gからターゲット人工衛星s_tarまでの伝送経路において中継すべきリレー人工衛星s_reの衛星IDなどをテレコマンドに含めてよい。つまり、テレコマンドは、ミッションだけでなく伝送経路も指示するコマンドであってよい。
【0050】
これを受けて、通信制御部118は、生成部114cによって生成されたテレコマンドをターゲット人工衛星s_tarに送信するように通信部102を制御する。これにより、テレコマンドは、通信部102から地上局gへと送信され、更にその地上局gから適宜リレー人工衛星s_reを中継しながらターゲット人工衛星s_tarへと送信される。
【0051】
また、生成部114cは、プロダクトリクエストの優先度等に基づいて、解析部116による解析計画を生成する。
【0052】
解析部116は、通信部102によって地上局gを介してターゲット人工衛星s_tarから衛星データが受信された場合、生成部114cによって生成された解析計画に基づいて、衛星データに対してDBF(Digital Beam Forming)やDOA(Direction Of Arrival angle)などの処理を行い、プロダクトリクエストごとに最適なプロダクトを生成する。
【0053】
また、解析部116は、観測可能な複数の衛星データから広範囲軟判定処理を実施し、絞られた軌道上空間に対して分解能の向上に適した数機の衛星データによる硬判定再処理を行ってもよい。また、解析部116は、一度特定した電波発信源を仮想空間上でマーキングし、計画部114による有効なターゲット人工衛星s_tarの選択を効率的に実施してもよい。
【0054】
また、解析部116は、複数の人工衛星sのトラフィックの時間変化する分布に基づいて、衛星データに対する情報抽出処理に制約及び重みを付与してもよい。例えば、解析部116は、(1)情報抽出処理と、(2)情報抽出処理の制約と、(3)情報抽出処理の重み付与とを行う。(1)の処理は、端末装置200によるプロダクトリクエストや、人工衛星sの運用計画に関する情報(トラフィックデータや予約データなど)を収集する処理である。(2)は、地上設備や静止衛星などの固定座標となる既存観測点が疎となるエリアに存在する軌道上観測点や、衛星間の通信経路トラフィックが疎となるエリアを優先して対象とする、または密な条件を除外して情報収集条件とする処理である。(3)の処理は、人工衛星間の伝送ルートのパターンが多岐にわたり時々刻々と変化するため、ネットワーク補償の概念に従ってトポロジー的な最適化を実施する処理である。具体的には、各衛星から各衛星への各通信リンクに対してデータ量の重み付けを行う。同時に複数の伝送経路を構築できる衛星であればその間でデータ量の分割を最適化し、単経路のみ持つ衛星においては時間ごとの経路選択と伝送量を最適化する。
【0055】
[計画部の処理フロー]
以下、計画部114の一連の処理の流れについて説明する。図12は、実施形態に係る計画部114の一連の処理の流れを表すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、取得部112によってプロダクトリクエストが取得された場合に実行される。
【0056】
まず、計画部114の決定部114aは、取得部112によって取得されたプロダクトリクエストの種別に応じて、そのプロダクトリクエストの優先度を決定する(ステップS100)。
【0057】
次に、計画部114の選択部114bは、ターゲット人工衛星s_tarとして選択する人工衛星sの運用方式の拡張が必要か否かを判定する(ステップS102)。例えば、選択部114bは、プロダクトリクエストとして要求されたミッションが可能な人工衛星sのリソースが十分に残されており、プロダクトリクエストとして要求されたミッションとは種類の異なる他のミッションを行う人工衛星sに、プロダクトリクエストとして要求されたミッションを行わせる必要がない場合、運用方式の拡張が必要でないと判定し、そうでない場合、運用方式の拡張が必要であると判定する。
【0058】
選択部114bは、運用方式の拡張が必要でないと判定した場合、リソースが十分に余っており、且つ運用方式が同じ人工衛星sをターゲット人工衛星s_tarとして選択する(ステップS104)。
【0059】
次に、選択部114bは、地上局gからターゲット人工衛星s_tarまでの最適な伝送経路を決定する(ステップS106)。
【0060】
次に、計画部114の生成部114cは、プロダクトリクエストとして要求されたミッションをターゲット人工衛星s_tarに行わせるためのテレコマンドを生成するとともに、解析部116の解析計画を生成する(ステップS108)。
【0061】
一方、選択部114bは、S102の処理において運用方式の拡張が必要であると判定した場合、リソースが十分に余っており、且つ運用方式が異なる人工衛星sをターゲット人工衛星s_tarとして選択するのに先立って、運用方式の拡張が継続的(定常的)か否かを判定する(ステップS110)。
【0062】
例えば、取得部112が、運用方式の拡張が必要なプロダクトリクエスト(例えば通信衛星sに観測ミッションを行わせるようなプロダクトリクエスト)を、過去のある所定期間内に繰り返し取得していたとする。この場合、選択部114bは、運用方式の拡張が継続的(定常的)であると判定する。一方、例えば、取得部112が、運用方式の拡張が必要なプロダクトリクエストを、過去のある所定期間内に繰り返し取得していなかったとする。この場合、選択部114bは、運用方式の拡張が一時的(非定常的)であると判定する。
【0063】
選択部114bは、運用方式の拡張が一時的であると判定すると、プロダクトの制約条件を収集し(ステップS112)、制約条件を満たしつつ、運用方式が異なる人工衛星sをターゲット人工衛星s_tarとして選択する(ステップS114)。プロダクトの制約条件とは、上述した人工衛星sの要求仕様データ、トラフィックデータ、及び予約データ等である。
【0064】
次に、選択部114bは、地上局gからターゲット人工衛星s_tarまでの最適な伝送経路を決定する(ステップS116)。
【0065】
次に、選択部114bは、選択したターゲット人工衛星s_tarや伝送経路に関する情報(以下、履歴情報と称する)を記憶部130に記憶させ(ステップS118)、上述したS108の処理へと進める。
【0066】
一方、選択部114bは、S110の処理において運用方式の拡張が継続的であると判定した場合、記憶部130に記憶された履歴情報を読み出し、その読み出した履歴情報に基づいて、過去にターゲット人工衛星s_tarとして選択した人工衛星sを再度ターゲット人工衛星s_tarとして選択したり、過去に決定した伝送経路を再度利用したりする(ステップS120)。そして、上述したS108の処理へと進める。これによって本フローチャートの処理が終了する。
【0067】
[解析部及び通信制御部の処理フロー]
以下、解析部116及び通信制御部118の一連の処理の流れについて説明する。図13は、実施形態に係る解析部116及び通信制御部118の一連の処理の流れを表すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、生成部114cによって解析計画が生成された場合に所定の周期で繰り返し実行される。
【0068】
まず、解析部116は、解析計画に従って、取得部112から衛星データを取得する(ステップS200)。
【0069】
次に、解析部116は、動的対象の対策(マーキング或いはトラッキングの対策)が必要か否かを判定する(ステップS202)。例えば、解析部116は、ターゲット人工衛星s_tarから見て電波発信源などのミッション対象が相対的に移動している場合、動的対象の対策が必要であると判定し、そうでない場合、動的対象の対策が必要でないと判定する。
【0070】
解析部116は、動的対象の対策が必要でないと判定した場合、更に、ターゲット人工衛星s_tarの運用方式が拡張されたか否かを判定する(ステップS204)。
【0071】
解析部116は、ターゲット人工衛星s_tarの運用方式が拡張されていると判定した場合、更に、その運用方式の拡張が継続的なものであるのか否かを判定する(ステップS206)。
【0072】
解析部116は、運用方式の拡張が継続的であると判定した場合、複数の衛星データによる定常的なウェイト処理を行う(ステップS208)。定常的なウェイト処理とは、以前に決めた実績のあるウェイトによって複数の衛星データのそれぞれを重み付ける処理である。
【0073】
解析部116は、運用方式の拡張が継続的でないと判定した場合、後述するS216に処理を進め、その後S210に処理を進める。
【0074】
一方、解析部116は、S204の処理においてターゲット人工衛星s_tarの運用方式が拡張されていないと判定した場合、S206及びS208の処理を省略し、S210に処理を進める。
【0075】
次に、解析部116は、高次処理を行って、プロダクトリクエストとして要求されたデータ形式(例えば画像データなど)に衛星データを変換したり、衛星データに付加的な情報を付けたりすることでプロダクトを生成する(ステップS210)。
【0076】
次に、通信制御部118は、解析部116により生成されたプロダクトを送信するよう通信部102を制御する(ステップS212)。例えば、通信制御部118は、プロダクトリクエストの送信元である一つの端末装置200に対してプロダクトを送信してもよいし、API(ウェブAPIを含む)を介して、衛星リモートセンシングシステム1を一つのサービスとして利用する複数のユーザのそれぞれの端末装置200に送信してもよい。
【0077】
一方、解析部116は、S202の処理において動的対象の対策が必要でないと判定した場合、動的対象の対策処理を行う(ステップS214)。例えば、解析部116は、環境データを用いて、動的に移動しているミッション対象が存在し得るドメイン内の領域を推定する。例えば、海上で航行している船舶や、上空を飛行している航空機といった電波を発信する移動体を観測するミッションであった場合、電波発信源の位置は時々刻々を変化する。この場合、環境データの一つである天候データを利用すれば、移動体が嵐などを避けながら移動するという傾向を考慮して、その移動体の移動先の範囲をある程度予測することができる。この結果、海上全体や上空全体を満遍なく観測せずに、当たりを付けた領域を重点的に観測することで、移動体をロストせずに継続して観測することができる。
【0078】
次に、解析部116は、衛星データに対してDBF及びDOAを行い(ステップS216)、上述したS210に処理を進めるとともに、電波発信源の位置の推定精度が閾値よりも低いか否かを判定する(ステップS218)。
【0079】
解析部116は、電波発信源の位置の推定精度が閾値よりも低いと判定した場合、計画部114に対してプロダクトリクエストに基づく処理を追加で要求する(ステップS220)。これを受けて、計画部114は、図12のフローチャートの処理を再度繰り返す。具体的には、計画部114は、複数の人工衛星sの中から、解析部116によって推定された電波発信源の位置に最も近い人工衛星sを新たなターゲット人工衛星s_tarとして選択し、その新たなターゲット人工衛星s_tarまでの伝送経路を再決定したりする。そして、計画部114は、新たにテレコマンドや解析計画を生成する。これを受けて、通信制御部118は、新たに生成されたテレコマンドを、新たに選択されたターゲット人工衛星s_tarに送信するよう通信部102を制御する。これによって新たな衛星データが得られる。解析部116は、プロダクトリクエストの再要求により、新たに衛星データが取得されるたびに、その衛星データに基づいて電波発信源の位置を推定することを繰り返す。この結果、解析部116によって生成されるプロダクトがユーザが所望するものに近くなり、ユーザの満足度を向上させることができる。
【0080】
解析部116は、電波発信源の位置の推定精度が閾値よりも高いと判定した場合、本フローチャートの処理を終了する。
【0081】
[衛星リモートセンシングシステムのシーケンス]
以下、衛星リモートセンシングシステム1の一連の処理の流れについて説明する。図14は、実施形態に係る衛星リモートセンシングシステム1の一連の処理の流れを表すシーケンスである。本シーケンスでは、一例として、近宇宙ドメインD2の電波発信源に関するプロダクトを提供するまでの一連の処理について説明する。
【0082】
まず、端末装置200は、情報処理装置100にプロダクトリクエストを送信する(ステップS300)。
【0083】
情報処理装置100は、プロダクトリクエストを受信すると、そのプロダクトリクエストの種別に応じて優先度を決定する(ステップS302)。
【0084】
次に、情報処理装置100は、地上局g1~3から人工衛星sのトラフィックデータや予約データを取得したり(ステップS304)、深宇宙局g4や電波天文台g5といった地上設備から、人工衛星sのトラフィックデータや予約データを取得したり(ステップS306)。これらトラフィックデータや予約データは、地上局g1~3や、深宇宙局g4、電波天文台g5などが定常的に運用されている間にデータベースとして蓄積される。
【0085】
次に、情報処理装置100は、プロダクトリクエストの条件を満たす人工衛星s(余剰なリソースがある人工衛星s)をターゲット人工衛星s_tarとして選択したり、そのターゲット人工衛星s_tarまでの最適な伝送経路を決定したり、テレコマンドを生成したり、解析計画を生成したりする(ステップS308)。
【0086】
次に、情報処理装置100は、テレコマンドを、深宇宙局g4や電波天文台g5といった地上設備に送信したり(ステップS310)、地上局g1~3に送信したりする(ステップS312)。なお、情報処理装置100は、地上局g1~3を経由して深宇宙局g4や電波天文台g5といった地上設備にテレコマンドを送信してもよい。
【0087】
地上局g1~3は、テレコマンドを受信すると、それをアップコンバートなどして(ステップS314)、リレー人工衛星s_reとターゲット人工衛星s_tarとを兼ねる人工衛星s1に送信する(ステップS316)。
【0088】
人工衛星s1は、テレコマンドを受信すると、それをターゲット人工衛星s_tarである人工衛星s2に送信する(ステップS318)。
【0089】
人工衛星s1は、受信したテレコマンドに基づいて、人工衛星s2、深宇宙局g4、及び電波天文台g5と協調しながら、近宇宙ドメインD2の電波発信源を観測するミッションを行う(ステップS320)。この観測ミッションは、運用拡張されたミッションであってもよい。
【0090】
人工衛星s2は、受信したテレコマンドに基づいて、人工衛星s1、深宇宙局g4、及び電波天文台g5と協調しながら、近宇宙ドメインD2の電波発信源を観測するミッションを行う(ステップS322)。この観測ミッションは、運用拡張されたミッションであってもよい。
【0091】
深宇宙局g4や電波天文台g5は、受信したテレコマンドに基づいて、人工衛星s1及び人工衛星s2と協調しながら、近宇宙ドメインD2の電波発信源を観測するミッションを行う(ステップS324)。この観測ミッションは、運用拡張されたミッションであってもよい。
【0092】
人工衛星s2は、観測ミッションが完了すると、その観測ミッションの結果である観測データを人工衛星s1に送信する(ステップS326)。
【0093】
人工衛星s1は、観測ミッションが完了すると、その観測ミッションの結果である観測データと、人工衛星s2から受信した観測データとをダウンコンバートなどして(ステップS328)、地上局g1~3に送信する(ステップS330)。なお、人工衛星s2は、観測データを人工衛星s1を経由せずに直接地上局g1~3に送信してもよい。
【0094】
地上局g1~3は、人工衛星s1から2つの観測データを受信すると、それら2つの観測データを情報処理装置100に送信する(ステップS332)。
【0095】
一方、深宇宙局g4や電波天文台g5は、観測ミッションが完了すると、その観測ミッションの結果である観測データを、情報処理装置100に送信する(ステップS334)。
【0096】
情報処理装置100は、受信した各種観測データを統合処理し、プロダクトを生成する(ステップS336)。そして、情報処理装置100は、生成したプロダクトを端末装置200に提供する(ステップS338)。これによって本シーケンスの処理が終了する。
【0097】
以上説明した実施形態によれば、情報処理装置100は、複数のプロダクトリクエストを取得する。情報処理装置100は、複数のプロダクトリクエストのそれぞれのプロダクトの種別に応じて、複数の人工衛星sの中から、1つ又は複数のターゲット人工衛星s_tarを選択する。また、情報処理装置100は、各プロダクトリクエストに対応したテレコマンドを生成する。そして、情報処理装置100は、地上局gを介して、ターゲット人工衛星s_tarにテレコマンドを送信する。これによって、複数の人工衛星sを効率よく活用しながら、ユーザが所望するドメインに対するプロダクトを獲得することができる。
【0098】
また、上述した実施形態によれば、情報処理装置100は、プロダクトリクエストに応じてターゲット人工衛星s_tarを選択する際に、そのターゲット人工衛星s_tarの運用方式を拡張するため、同時に多種多様なドメインを観測することができるようになる。この結果、衛星リモートセンシングシステム1の全体的な稼働率を高めることができる。
【0099】
また、上述した実施形態によれば、情報処理装置100は、複数の人工衛星sのトラフィックの分布と、有害ガスの濃度分布データや気象データなどの環境データとの相関に基づいて、ミッション対象である地表面の移動体の位置を推定するため、移動体を効率よく観測することができる。
【0100】
(変形例)
以下、上述した実施形態の変形例について説明する。上述した実施形態では、衛星リモートセンシングシステム1が、複数の人工衛星s1~s8と、複数の地上局g1~g5(深宇宙局g4や天文台g5を含む)と、情報処理装置100と、複数の端末装置200と、データ管理サーバ300とを備えるものとして説明したがこれに限られない。
【0101】
例えば、衛星リモートセンシングシステム1は、複数の人工衛星s1~s8や複数の地上局g1~g5に代えて、或いは加えて、航空機やドローン、船舶、車両といった地上の移動体を備えていてもよい。これらの地上の移動体は、人工衛星sに搭載されるアンテナやセンサなどが搭載され、人工衛星sが行うような各種ミッションを行う。また、これらの地上の移動体は、地上局g(特に深宇宙局g4や天文台g5)に相当する設備(観測設備や通信設備など)が搭載されてもよい。
【0102】
例えば、情報処理装置100は、複数の人工衛星s1~s8の中からターゲット人工衛星s_tarを選択する代わりに、海上や上空といった地表面に存在する複数の移動体の中から、プロダクトリクエストとして要求されたミッションが可能な移動体(ターゲット移動体)を選択し、その選択したターゲット移動体にテレコマンドを送信してもよい。これによって、複数の人工衛星sのみならず、地表面に存在する複数の移動体を効率よく活用しながら、ユーザが所望するドメインに対するプロダクトを獲得することができる。
【0103】
また、情報処理装置100は、複数の端末装置200のそれぞれからプロダクトリクエストを取得した場合、それら複数のプロダクトリクエストを調整してもよい。
【0104】
例えば、情報処理装置100の取得部112は、ある第1ユーザの端末装置200からプロダクトリクエスト(以下、第1プロダクトリクエストと称する)を取得しつつ、更には、第2ユーザの端末装置200からプロダクトリクエスト(以下、第2プロダクトリクエストと称する)を取得したとする。この場合、情報処理装置100の決定部114aは、第1プロダクトリクエストのミッションで利用されるリソースと、第2プロダクトリクエストのミッションで利用されるリソースとが互いに共通するか否かを判定する。
【0105】
情報処理装置100の通信制御部118は、決定部114aによってリソースが共通すると判定された場合、すなわち、第1プロダクトリクエストと第2プロダクトリクエストとが競合する場合、通信部102を制御することによって、第1ユーザの端末装置200に対して第1コンテンツを送信したり、第2ユーザの端末装置200に対して、第2コンテンツを送信したりする。
【0106】
第1コンテンツは、第1プロダクトリクエストに対して競合する他のプロダクトリクエスト(第2プロダクトリクエスト)を可視化したコンテンツであり、第2コンテンツは、第2プロダクトリクエストに対して競合する他のプロダクトリクエスト(第1プロダクトリクエスト)を可視化したコンテンツである。第1コンテンツ及び第2コンテンツは、例えば静止画像や動画像といったAPIやウェブブラウザを介して提供可能なコンテンツであってよい。これらのコンテンツは、衛星リモートセンシングシステム1を利用したサービスの一つとしてユーザに提供される。
【0107】
これによって、各ユーザは、自身のプロダクトリクエストが他者のプロダクトリクエストと競合しているのかを知ることができる。この結果、例えば、各ユーザは、プロダクトリクエストをキャンセルしたり、競合する他のプロダクトリクエストに係る処理が完了してから、自身のプロダクトリクエストに係る処理が開始されるように事前に予約したりすることができる。また、例えば、各ユーザは、提供されたサービスを介して、他のユーザとプロダクトリクエストの優先権を売買することができる。
【0108】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0109】
1…衛星リモートセンシングシステム、s…人工衛星、g…地上局、100…情報処理装置、102…通信部、110…処理部、112…取得部、114…計画部、114a…決定部、114b…選択部、114c…生成部、116…解析部、118…通信制御部、130…記憶部、200…端末装置、300…データ管理サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14