IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機照明株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-透光性カバー、灯具および照明装置 図1
  • 特開-透光性カバー、灯具および照明装置 図2
  • 特開-透光性カバー、灯具および照明装置 図3
  • 特開-透光性カバー、灯具および照明装置 図4
  • 特開-透光性カバー、灯具および照明装置 図5
  • 特開-透光性カバー、灯具および照明装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022645
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】透光性カバー、灯具および照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 3/10 20180101AFI20220131BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20220131BHJP
   F21V 3/02 20060101ALI20220131BHJP
   F21S 8/04 20060101ALI20220131BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220131BHJP
【FI】
F21V3/10 310
F21V3/00 310
F21V3/02 400
F21S8/04 130
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113112
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 豪
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 恵悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康弘
(57)【要約】
【課題】剪断応力が発生しにくく、特殊環境下における使用に適した照明装置用の透光性カバー、灯具および照明装置を提供する。
【解決手段】光源となる発光部を含む機器を覆う透光性カバーであって、透光性を有する基材と、光源から見て基材の外壁面側に積層された透光性を有する第1樹脂層とを備え、基材は、第1樹脂層よりも吸水率が小さく、線膨張係数が大きい材料とするものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源となる発光部を含む機器を覆う透光性カバーであって、
透光性を有する基材と、
前記光源から見て前記基材の外壁面側に積層された透光性を有する第1樹脂層と
を備え、
前記基材は、前記第1樹脂層よりも吸水率が小さく、線膨張係数が大きい材料とする透光性カバー。
【請求項2】
前記第1樹脂層は、前記基材に積層され、前記基材よりも耐水性および耐光性が高い樹脂を材料とする請求項1に記載の透光性カバー。
【請求項3】
前記基材と前記第1樹脂層とは、前記発光部の熱による前記基材の熱膨張と外気からの吸水による前記第1樹脂層の膨張とが均一になるような材料とする請求項1または請求項2に記載の透光性カバー。
【請求項4】
前記基材は、ポリカーボネート系樹脂を材料とし、
前記第1樹脂層は、アクリル系樹脂を材料とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項5】
前記基材は、ポリカーボネート系樹脂を材料とし、
前記第1樹脂層は、ポリエチレン系樹脂を材料とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項6】
前記基材は、アクリル系樹脂を材料とし、
前記第1樹脂層は、ナイロン系樹脂を材料とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項7】
前記基材は、最薄部が0.8mm以上の厚さを有し、前記第1樹脂層は、0超0.8mm以下の厚さを有する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項8】
前記基材および前記第1樹脂層は、それぞれ押し出し成形または射出成形で形成される請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項9】
前記基材は、押し出し成形または射出成形で形成され、前記第1樹脂層は、被膜またはフィルムが貼布されて形成される請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の透光性カバー。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の透光性カバーと、
光源となる発光部と
を有する灯具。
【請求項11】
請求項10に記載の灯具と、
前記灯具が装着される装着部を有する照明器具と
を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、透光性カバー、灯具および照明装置に関するものである。特に、光源を覆うカバーの信頼性向上に係るものである。
【背景技術】
【0002】
照明装置は、用いられる範囲が広い。このため、特殊環境においても照明装置が使用されることがある。特殊環境とは、たとえば、切削油が使われる金属加工工場、食用油が使われる食品工場、各種薬品が使われる化学薬品工場または有機溶剤が使われる半導体工場等の環境である。これらの場所では、当然ながら、油、薬品および溶剤等に対して耐性のある照明器具が求められる。
【0003】
照明装置の光源を有する灯具において、光源を覆うカバーは、その機能から、外殻に透光性を有する材料が用いられる。近年、光源が白熱電球または蛍光ランプからLEDに変わることに伴い、安全性および軽量化の目的から、透光性を有する材料が、ガラスから樹脂へと変わってきている。そして、ポリカーボネート系等の樹脂に、アクリル系またはアリレート系樹脂からなる材料が積層された構成の透光性カバーを備えた装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。このように、透光性カバーにおいて、基材となる樹脂に、アクリル系、フッ素系およびシリコーン系の樹脂材料のうち、少なくとも1つの材料をコーティングまたは二色成形することで、耐水性、耐太陽光性および耐薬品性等を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-123259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1のようなコーティングまたは二色成形を施した透光性カバーは、上記のように、耐水性、耐太陽光性および耐薬品性が考慮されている。しかしながら、特許文献1のような透光性カバーは、基材となる樹脂と、基材にコーティングまたは二色成形されて積層されている樹脂とで温度または吸水等による膨張率が異なる。このため、透光性カバーが晒される環境によって、基材の樹脂と積層されている樹脂とにおける膨張率の違いから、線膨張差による剪断応力が透光性カバーに発生し、透光性カバーが剪断破壊に至る可能性があった。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、剪断応力が発生しにくく、特殊環境下における使用に適した照明装置用の透光性カバー、灯具および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この開示に係る透光性カバーは、光源となる発光部を含む機器を覆う透光性カバーであって、透光性を有する基材と、光源から見て基材の外壁面側に積層された透光性を有する第1樹脂層とを備え、基材は、第1樹脂層よりも吸水率が小さく、線膨張係数が大きい材料とするものである。
【0008】
また、この開示に係る灯具は、上記の透光性カバーと、光源となる発光部とを有するものである。
【0009】
また、この開示に係る照明装置は、上記の灯具と、灯具が装着される装着部を有する照明器具とを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
この開示に係る透光性カバー等によれば、基材は、第1樹脂層よりも吸水率が小さく、線膨張係数が大きい材料である。このため、高湿環境下においても、耐水性および耐光性といった耐候性に優れ、吸水による膨張を調整して剪断破壊を防ぎ、信頼性の高い透光性カバーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る照明装置1の斜視図である。
図2】実施の形態1に係る照明装置1の照明器具2と灯具3とを分割した分割斜視図である。
図3】実施の形態1に係る照明装置1の長手方向に直交する照明装置1の垂直断面を示す図である。
図4】実施の形態1に係る灯具3の斜視図である。
図5】実施の形態1に係る透光性カバー30の材料の一例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る灯具3の一方の端部における分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態に係る透光性カバー、灯具および照明装置について、図面を参照して説明する。各図において同じまたは対応する構成要素には、同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0013】
ここで、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の図面では、各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、実施の形態の説明において、上、下、左、右、前、後、表、裏といった向きあるいは位置が示されている場合がある。これらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向および向きを限定するものではない。
【0014】
実施の形態1.
<照明装置1の構成>
図1は、実施の形態1に係る照明装置1の斜視図である。また、図2は、実施の形態1に係る照明装置1の照明器具2と灯具3とを分割した分割斜視図である。そして、図3は、実施の形態1に係る照明装置1の長手方向に直交する照明装置1の垂直断面を示す図である。図1図3を参照して、実施の形態1に係る照明装置1の構成を説明する。
【0015】
以下の説明において、照明装置1の長手方向に沿った方向を、長手方向Xとする。また、長手方向Xに直交し、長手方向Xに対する短手方向を、短手方向Yとする。そして、長手方向Xおよび短手方向Yのいずれとも直交する方向を、上下方向Zとする。また、長手方向Xにおいて、長手端部側への向きを、端向きX1とする。そして、端向きX1と反対側への向きであり、長手中央側への向きを、中向きX2とする。さらに、上下方向Zにおいて、照明装置1が取り付けられる造営部9側(すなわち、天井または壁側)への向きを、上向きZ1とする。そして、上向きZ1と反対側への向きであり、照明装置1から光が照射される照射空間側への向きを、下向きZ2とする。ここで、上向きZ1は、灯具3が照明器具2に取り付けられる向きであり、下向きZ2は、灯具3が照明器具2から取り外される向きである。
【0016】
実施の形態1における照明装置1は、天井または壁等の造営部9側に取り付けられる照明器具2と照明器具2に装着される灯具3とを有する。また、照明装置1は、後述する灯具3の封止構造を有する。実施の形態1では、いわゆるトラフタイプの照明器具2を例として示す。
【0017】
<照明器具2>
照明器具2は、灯具3が取り付けられる被取付部となる。照明器具2は、器具本体20を有する。器具本体20は、実施の形態1では、金属製の板材を折り曲げて形成される。器具本体20は、器具底面部21、2つで一組となる器具側面部22および2つで一組となる器具端部23を有する。器具底面部21は、長尺かつ平板状に形成されており、2つで一組となる器具側面部22は、器具底面部21の短手方向Yの両端に配置されている。また、2つで一組となる器具端部23は、器具底面部21の長手方向Xの両端に配置されている。器具端部23には、ノックアウト24が形成され、後述する配線材85における電源線81等の各種電線を挿通する際に取り外される。照明器具2の構成等について、さらに説明する。
【0018】
装着部25は、装着された灯具3の一部を収容する収容部である。装着部25は、器具本体20の器具底面部21、一組の器具側面部22および一組の器具端部23により凹形状に形成される。このため、装着部25は、器具本体20の器具底面部21、一組の器具側面部22および一組の器具端部23で囲まれる空間を形成している。ここで、装着部25が収容する灯具3の一部は、照射側ではない非照射部となる。また、図2および図3(a)に示すように、装着部25の空間のうち、灯具3が収容された状態で、灯具3に占有されていない部分は、後述する配線材85等が灯具3に接続される際に経由し、配置される配線領域29となる。
【0019】
器具本体20の下端に位置する開口端部26は、器具本体20において開口している部分である。開口端部26は、照明器具2の装着部25に対して、灯具3の着脱を行う際の装着口となる。器具本体20の開口端部26において、長手方向Xの両端部には、連結部27が形成されている。連結部27には、灯具3が取り付けられる。実施の形態1では、連結部27は、器具端部23と一体に形成されており、開口端部26から長手方向Xにおける中向きX2に向かって、折り曲げて形成されている。連結部27に形成されたネジ孔28は、灯具3に取り付けられた、後述する連結ネジ48がねじ止めされる孔である。灯具3は、連結ネジ48によって照明器具2にねじ止めされて固定される。
【0020】
<灯具3>
図4は、実施の形態1に係る灯具3の斜視図である。ここでは、図1から図4を用いて灯具3について説明する。灯具3は、照明器具2に取り付けられることによって照明装置1を構成する。照明具および光源ユニットとなる灯具3は、長尺状に形成されており、照明器具2に装着されて使用される。実施の形態1では、灯具3は、照明器具2の長手方向Xにおける両端部において、後述する連結ネジ48によって照明器具2の連結部27に取り付けられる。実施の形態1の灯具3は、図2および図3(a)に示すように、主として、透光性カバー30、端部カバー40、光源となる発光部60等を有する。
【0021】
<透光性カバー30>
外郭となる透光性カバー30は、少なくとも可視光を透過する透光性の材料が用いられるカバーである。透光性カバー30は、後述する取付部材50、発光部60、制御部80等を内部の空間に収容して保護する、筒形状となっている。透光性カバー30は、ポリカーボネート等の非晶性樹脂材料を用いて形成することができる。また、透光性カバー30において、装着部25から外部に露出している部分は外観意匠部分にもなる。
【0022】
実施の形態1の灯具3では、図3(a)に示すように、透光性カバー30のうち、装着部25から外部に露出している部分は、発光部60の照射側および取付部材50における台座51の表面を覆う外壁部となる外殻部になる。ここで、この部分の外周部37については、外面部に対する法線の向きが、発光素子61の光軸に沿う向きから光軸に直交する向きまでの範囲内となっている。たとえば、照明装置1から下方に向けて光が照射されるように、灯具3が照明器具2に装着された場合において、透光性カバー30の装着部25から外部に露出している部分は、外面部が下方、斜め下方、あるいは側方(水平方向外側)に向いている。すなわち、透光性カバー30の装着部25から外部に露出している部分は、外面部が、上方、あるいは斜め上方に向いていない。また、透光性カバー30のうち、装着部25に収容され、外部に露出していない部分は、制御部80および台座51における取付面部52の制御部80が配置される側を覆う。そして、透光性カバー30のうち、装着部25に収容され、外部に露出していない部分の表面は、器具本体20の器具底面部21および一組の器具側面部22と対向する。ここで、透光性カバー30は、製品の仕様等に応じて、光拡散性、波長弁別特性等を有するものであってもよい。また、透光性カバー30のうち、外部に露出していない部分については、反射性、遮光性等を有する材料を用いて形成してもよい。
【0023】
実施の形態1の筒形の透光性カバー30は、図1から図4に示すように、内部に収容される機器を覆い、内部に収容される機器に対する位置によって、一組の並行部31、第1接続部32および第2接続部33に分かれている。また、透光性カバー30には、2つのリブ34が設けられている。一組の並行部31は、透光性カバー30において、一組の面が同じ距離で並行する面を形成している。透光性カバー30は、一組の並行部31の外側の面部分となる外面部および内側の面部分となる内面部が、それぞれ、ともに平面形状である。この外面部および内面部は、透光性カバー30に収容される発光素子61の光軸に沿った平面となる。実施の形態1では、この平面は、灯具3が照明器具2に装着された状態で、上下方向Zに沿っている。さらに、この平面は、一組の外面部および一組の内面部が、灯具3が照明器具2に装着された状態で、それぞれ対向する器具側面部22に沿った平面でもある。そして、この平面は、灯具3が照明器具2に取り付けられる向きまたは照明器具2から取り外される向きに沿った平面にもなる。このため、透光性カバー30の並行部31は、短手方向Yにおいて、器具側面部22より外側にはならず、器具側面部22の内側に位置する。並行部31のうち、灯具3が照明器具2に装着されたときに露出している部分は、灯具3の側方における照射部となる。
【0024】
第1接続部32は、一組の並行部31における照射側の端部同士を繋いでいる部分であり、発光素子61の光軸と交わり、灯具3の主たる照射部となる。第1接続部32は、発光素子61からの光を下方に向けて照射する。第1接続部32の外面部および内面部は、1つまたは複数の面で構成されている。図3(a)に示すように、実施の形態1では、透光性カバー30における第1接続部32の外面部および内面部が、1つの曲面で構成されている場合について説明する。ここで、第1接続部32の外面部および内面部が、複数の面で構成される場合は、複数の異なる曲率の複数の曲面、複数の異なる角度の複数の平面、これらの曲面と平面とを組み合わせて構成することができる。第2接続部33は、一組の並行部31における器具側の端部同士を繋いでいる部分であり、灯具3が照明器具2に装着された状態において、装着部25に収容される部分である。実施の形態1では、透光性カバー30における第2接続部33の外面部および内面部は、1つの曲面で構成されている場合について説明する。ここで、第2接続部33の外面部および内面部が、複数の面で構成される場合は、複数の異なる曲率の複数の曲面、複数の異なる角度の複数の平面、これらの曲面と平面とを組み合わせて構成することができる。
【0025】
リブ34は、透光性カバー30の外面部の法線方向に張り出すように設けられる。実施の形態1では、リブ34は、各並行部31において、外側に向かって張り出すように設けられている。そして、各リブ34は、並行部31と一体形成される。各リブ34は、透光性カバー30の長手方向Xに延設されている。リブ34は、灯具3が照明器具2に装着された状態で、器具側面部22における開口端部26付近と対向するような位置に形成される。
【0026】
また、実施の形態1では、図3(a)に示すように、透光性カバー30について、配線材85との関係において、第1部分300と第2部分301とに分けることができる。透光性カバー30の第1部分300は、透光性カバー30において、配線材85の被覆が接触する可能性がある部分である。配線材85が灯具3から照射される光を妨げない領域に配置されることが好ましいという点から、第1部分300は、透光性カバー30のうち、少なくとも発光素子61よりも上方に位置する部分となる。実施の形態1における配線材85の配線領域29は、装着部25内である。第1部分300は、実質的には、透光性カバー30のうち、リブ34より上方に位置する部分となる。ここで、透光性カバー30の外周部37のうち、第1部分300の外周部分で、器具本体20の内部に収容される部分を、第1外周部370とする。
【0027】
透光性カバー30の第2部分301は、器具本体20から露出される部分となる。このため、少なくとも発光素子61よりも下方の部分となる。したがって、実施の形態1では、実質的にリブ34より下方の部分が、外部に露出して、特殊環境の影響を直接受ける透光性カバー30の第2部分301となる。ここで、透光性カバー30の外周部37のうち、第2部分301の外周部分を、第2外周部371とする。
【0028】
配線材85は、外部から灯具3に接続される、電源線81、接地線82および制御線83等の各種配線を有する。また、これらの配線を接続する端子、配線保持具およびソケット等も配線材85とする。図3(a)では、灯具3と接続される電源線81、接地線82および制御線83を、配線材85として示している。配線材85は、それぞれ絶縁材料で被包された各配線を被覆で一纏めにしたり、結束バンドで束ねたりした状態で、装着部25内の配線領域29に配置されるようにしてもよい。また、各配線をバラバラに分離した状態で、装着部25内の配線領域29に配置されるようにしてもよい。
【0029】
<透光性カバー30の詳細>
次に、図3(b)に基づいて、透光性カバー30の構造等の詳細についてさらに説明する。透光性カバー30は、内部の空間に収容された光源となる発光部60を内部の空間に収容して保護する。少なくとも可視光を透過する透光性を有する透光性カバー30は、基材30Aに、複数の樹脂層が積層された構成である。実施の形態1の透光性カバー30は、図3(b)に示すように、内部の空間に収容された光源となる発光部60から見て、基材30Aの外壁面側に、第1樹脂層30Bが積層された構成である。したがって、第1樹脂層30Bが最外層となって、特殊環境に晒されることになる。特殊環境の工場等では、軒下等の半屋外に近い環境または完全屋外環境に照明装置が設置されることも多い。このため、第1樹脂層30Bは、耐水性および耐光性等の耐候性が求められる。ここで、耐光性は、耐太陽光性を含む性質である。
【0030】
実施の形態1の基材30Aは、内部の空間に収容される取付部材50、発光部60、制御部80等を覆って保護することができる程度の硬さを必要とする。このため、基材30Aは、最薄部でも0.8mm以上の厚さT0を有する。
【0031】
第1樹脂層30Bは、相対的に、基材30Aよりも耐水性に優れ、吸水率が高い樹脂を材料とする層である。また、実施の形態1の第1樹脂層30Bは、相対的に、基材30Aよりも耐光性に優れた樹脂を材料とすることができる。また、第1樹脂層30Bは、基材30Aよりもガスバリア性が高い。ここで、第1樹脂層30Bは、透光性を維持しつつ、上述した性能を維持するため、0超0.8mm以下の厚さT1を有する。ここでは、第1樹脂層30Bが1層であるものとして説明するが、第1樹脂層30Bが最外層であれば、樹脂層が2層以上であってもよい。
【0032】
図5は、実施の形態1に係る透光性カバー30の材料の一例を示す図である。図5では、耐水性および耐光性を実現する材料となる各樹脂における吸水率と熱膨張による線膨張係数とを示している。具体的に、基材30Aは、たとえば、ポリカーボネート系樹脂が材料となる。また、基材30Aの材料がポリカーボネート系樹脂であるときは、第1樹脂層30Bは、吸水率がポリカーボネート系樹脂より高い、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂またはポリエチレン系樹脂が材料の候補となる。これらの樹脂の中でも、熱膨張による線膨張係数がポリカーボネート樹脂より低い、アクリル系樹脂の中の一部またはポリエチレン系樹脂が、第1樹脂層30Bの材料としてさらに適する。また、基材30Aの材料がアクリル系樹脂であるときは、第1樹脂層30Bの材料は、ナイロン系樹脂が適する。このように、基材30Aに対して、吸水率および熱膨張による線膨張係数の大小を考慮して、第1樹脂層30Bの材料を決める。
【0033】
実施の形態1の透光性カバー30は、たとえば、押し出し成形または射出成形によって、基材30Aを筒形状に形成する。そして、基材30Aに、樹脂を塗布等により被膜またはフィルムを貼布して、第1樹脂層30Bを形成する。また、異種材料を用いた2色成形等により、第1樹脂層30Bを形成してもよい。形成された透光性カバー30は、製品の仕様等に応じて、必要な長さに切断される。
【0034】
実施の形態1の透光性カバー30は、光源となる発光部60の熱による基材30Aの熱膨張と、外気からの吸水による第1樹脂層30Bの膨張とをできる限り等しくすることにより、膨張差により生じる剪断応力を減らし、剪断破壊を防ぐものである。このため、透光性カバー30において、発光部60側にある基材30Aは、発光部60とは反対側の第1樹脂層30Bと比較して、吸水率が小さく、熱膨張率が大きい。このような状況は、発光素子61が発光する点灯状態において有効である。発光素子61が発光しない非点灯状態では、熱膨張はなく、吸水によって膨張するため、第1樹脂層30Bの膨張が大きくなり、基材30Aとの間に剪断応力を発生させてしまう。そこで、実施の形態1のような透光性カバー30を有する照明装置1は、常時点灯状態で使用される特殊環境下で用いられる。
【0035】
ここで、基材30Aとなる樹脂に、アクリル系、フッ素系およびシリコーン系等の樹脂をコーティングまたは2色成形したとしても、高湿度の環境下では、不十分となる可能性がある。
【0036】
そこで、実施の形態1における照明装置1の灯具3では、基材30Aに樹脂を積層して透光性カバー30を構成する。実施の形態1の透光性カバー30は、2層構造とすることで、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性、耐候性、耐衝撃性およびガスバリア性等に優れたカバーとなる。しかしながら、異なる樹脂において、基材30Aの熱膨張と第1樹脂層30Bの吸水による膨張とに差があると、剪断応力による剪断破壊を起こす可能性がある。このため、前述した耐性を確保しつつ、信頼性の高い透光性カバー30を提供するための組み合わせとして、前述した図5に示すような組合せに基づいて、材料を決める。
【0037】
ここで、実施の形態1の透光性カバー30では、筒状の基材30Aの外壁面の全面に、第1樹脂層30Bを積層する。ただし、これに限定するものではない。たとえば、基材30Aの第1外周部370および第2外周部371となる部分に、第1樹脂層30Bを積層する等、基材30Aの一部に積層してもよい。たとえば、外部に露出せず、特殊環境の影響を明らかに受けない箇所に、第1樹脂層30Bを積層しないことで、材料となる樹脂および作業工程等の無駄を省くことができる。
【0038】
図6は、実施の形態1に係る灯具3の一方の端部3Aにおける分解斜視図である。透光性カバー30は、取付部材50に配置された発光素子61の発光面を覆うと共に、取付部材50の長手方向に沿った長手方向Xとなる第1方向における端部36に開口が形成されている。換言すれば、透光性カバー30は、少なくとも一方の端部36が開口する長尺形状の中空体であると共に、発光素子61が実装された基板62を内部に収容する。カバー端部35は、透光性カバー30の長手方向Xにおいて、透光性カバー30の両端部分である。透光性カバー30のカバー端部35には、端部36が設けられている。端部36は、カバー端部35において端部カバー40が嵌合される部分であり、端部蓋である端部カバー40に覆われる部分である。端部36は、透光性カバー30の伸縮に伴い、端部カバー40と共に長手方向Xである第1方向に沿って移動自在な自由端である。厳密には、透光性カバー30の端部36および端部カバー40は、「長手方向X」以外の方向にも伸縮するものであるが、実施の形態に係る灯具3においては、透光性カバー30は「長手方向X」の伸縮を許容する構造(構成)を有するものとする。透光性カバー30は、端部カバー40と嵌合できるように、端部36の外面部にはリブ34が形成されていない。前述したように、押出成形によって押出した筒形部材を切断して透光性カバー30を製造する場合には、長手方向Xに延設されたリブ34のうち、端部36に対応する部分は削除される。図3および図6に示すように、透光性カバー30の外周部37は、一組の並行部31、第1接続部32および第2接続部33となる外殻部の外面側である。また、内周部38は、一組の並行部31、第1接続部32および第2接続部33となる外殻部の内面側である。
【0039】
<端部カバー40の概要>
端部カバー40は、透光性カバー30の長手方向Xにおける両端部に取り付けられる。端部カバー40は、封止具43を挟んで嵌着(嵌合)することによって、透光性カバー30を密閉構造とする。ここで、端部カバー40に取り付けられる取付部材50および透光性カバー30は、照明装置1の使用環境温度、灯具3の点灯時と消灯時とにおける温度の変化に対し、特に、長手方向Xにおける伸縮量が異なる。端部カバー40は、透光性カバー30の密閉を維持しながら、透光性カバー30および取付部材50の長手方向Xにおける端部どうしが、相互に移動可能となるような構造となっている。
【0040】
端部カバー40は、外カバーとなる第1端部カバー41と内カバーとなる第2端部カバー42とを有する。第1端部カバー41は、第1カバー貫通孔411、第1カバー連結孔412、連結ガイド413、カバー下面部414、カバー下面貫通孔415、カバー電線保持部416、カバー端面部417、カバー端面貫通孔418および端部カバー外周部419を有する。ここで、カバー下面貫通孔415は、図2に示すように、カバー蓋49によって覆われる。また、第2端部カバー42は、第2カバー主部420、端部カバー挿通部421、第2カバー係合片422、第2カバー係合爪423および端部カバー内周部425を有する。また、端部カバー挿通部421を形成する縁部に沿って、挿通壁421aが形成されている。ここで、実施の形態1の第1端部カバー41および第2端部カバー42は、樹脂材料を用いて形成されているものとして説明する。ただし、これに限定するものではない。樹脂材料以外の金属材料、セラミック材料等を用いて形成されてもよい。また、実施の形態1では、第1端部カバー41と第2端部カバー42とを別部材とし、嵌着(嵌合)して一体化するようにしているが、あらかじめ一体化された1つの部材として成形するようにしてもよい。
【0041】
<封止具43>
封止具43は、透光性カバー30の長手方向Xにおける両端部と端部カバー40との間に挟まれた状態で、透光性カバー30の長手方向Xにおける両端部に配置される弾性部材である。弾性部材である封止具43は、透光性カバー30の端部36に取り付けられて端部36の開口を塞いでいる。封止具43は、樹脂材料を用いて製造されており、弾性変形するシール部材(ガスケット、パッキン等)である。そのため、封止具43は、透光性カバー30の長手方向Xにおける両端部と端部カバー40との間に挟まれた状態で、透光性カバー30の長手方向Xにおける両端部を密閉する。封止具43は、樹脂材料を用いて弾性変形するように形成されて、透光性カバー30および端部カバー40に密着する。
【0042】
封止具43は、封止具主部430、内周部435、外周部437および接続部436を有する。封止具43は、封止具主部430、内周部435、外周部437および接続部436が一体に形成されている。封止具主部430は、内周部435の内側を塞ぐように形成される。封止具主部430は、後述する固定具54の固定部56と第2端部カバー42の第2カバー主部420とに挟まれる。封止具主部430は、板状に形成されており、封止具43と端部カバー40とが係合した状態において、端部カバー40と対向する面側に、電線挿通部431と封止具筒状部433とが形成されている。封止具主部430は、封止具43と端部カバー40とが係合した状態において、第2端部カバー42の第2カバー主部420と当接する。電線挿通部431は、封止具43と端部カバー40とが係合した状態において、端部カバー40と対向する面側から突出しており、電源線81、接地線82および制御線83を通過させる電線挿通孔432を形成している。封止具筒状部433は、電線挿通部431を挟んで2つ設けられているが、封止具筒状部433の形成数は、固定具54の固定部56の数以上であれば、1つでもよく、3つ以上でもよい。封止具筒状部433は、封止具43と端部カバー40とが係合した状態において、端部カバー40と対向する面側から突出している。封止具筒状部433は、封止具43と固定具54とが係合した状態において、固定具54の固定部56から突出するボス部57が挿入される。封止具筒状部433は、円筒状に形成されている。封止具筒状部433の先端には、固定ネジ75をネジ止めするネジ挿通孔434が形成されている。
【0043】
板状に形成された封止具主部430の周縁部には、内周部435が形成されている。内周部435は、弾性部材である封止具43が、第2端部カバー42および透光性カバー30と係合した状態において、第2端部カバー42の端部カバー内周部425と透光性カバー30の端部36の内周部38とに挟まれる部分である。
【0044】
封止具43の外周部437は、環状に形成されており内周部38と対向するように内周部38の外側に配置される。この外周部437は、封止具43が、第1端部カバー41および透光性カバー30と係合した状態において、第1端部カバー41の外壁部410aと透光性カバー30の外周部37とに挟まれる部分である。
【0045】
封止具43の接続部436は、封止具主部430の内周部38と外周部437との間に位置する。接続部436は、封止具43が、第1端部カバー41および透光性カバー30と係合した状態において、第1端部カバー41の第1カバー主部410と透光性カバー30のカバー端部35とに挟まれる部分である。
【0046】
連結部材44は連結具であり、灯具3の長手方向Xの両端部に備えられており、灯具3を照明器具2に取り付けるための取付金具である。連結部材44は、固定部46の長手方向X(第1方向)における中央側(X2側)の面とボス部57の端面とが当接した状態で、2つの固定ネジ75を用いて固定具54に取り付けられて固定される。連結部材44は、端部カバー40に対して、ネジ等を用いた直接的な固定はされていない。連結部材44は、固定具54のボス部57に密着する封止具43を介して位置決めされて間接的に固定される。すなわち、連結部材44は、灯具3の長手方向Xである第1方向において、端部カバー40の外側に配置され、一部が端部カバー40を貫通している取付部材50に固定されると共に、他の一部が照明器具2に固定される。実施の形態1では、連結部材44は、金属製の板材を折り曲げて形成されているものとする。ただし、連結部材44は、金属製の板材の折り曲げから形成されるものに限定されるものではなく、たとえば、樹脂、セラミック等、他の材料を用いて形成されてもよく、また、押出成形、積層造形等、他の方法で形成されてもよい。連結部材44は、連結部45と、固定部46と、係合部47とを有する。
【0047】
連結部45は、固定部46において、下方側(Z2側)の端部から灯具3の端部側(X1側)に延設する板状の部材である。すなわち、連結部45は、固定部46の下縁部から突出する板状の部材である。連結部45は、端部カバー40と係合した状態において、端部カバー40側とは反対側に突出している。換言すれば、連結部45は、係合部47の突出方向とは反対側に突出している。連結部45は、灯具3が照明器具2に取り付けられている状態では、段差部450以外の上方の面が照明器具2の連結部27に当接する。
【0048】
連結部45には、面の高さが異なる段差部450が形成されており、段差部450には、連結ネジ48が挿入される連結ネジ挿通部451が形成されている。段差部450は、連結部45の短手方向Yの中央領域において一部下方(Z2側)に窪ませた部分である。連結部45の段差部450には、連結ネジ挿通部451を通過した連結ネジ48を固定する抜け止めワッシャ480が配置される。この抜け止めワッシャ480は、連結ネジ48から外れないように予め連結ネジ48に嵌着されている。段差部450の高さ(深さ、段差)寸法は、抜け止めワッシャ480の厚さ寸法と同じ寸法である。灯具3が照明器具2に取り付けられている状態では、抜け止めワッシャ480の上方(Z1側)の面が照明器具2の連結部27に当接し、抜け止めワッシャ480の下方(Z2側)の面は連結部材44の段差部450に当接する。段差部450の形状および面積は、抜け止めワッシャ480の形状および寸法を考慮して決定される。連結ネジ挿通部451は、段差部450の短手方向Yにおける略中央において、長手方向X(第1方向)における端部側(X1側)からスリット状に形成されている。連結ネジ挿通部451は、連結ネジ48の軸部481より大きい幅寸法で形成されており、連結ネジ48の軸部481が挿通する。連結ネジ挿通部451の形状はスリット状に限定されず、断面が楕円形を含む円形、多角形の貫通孔でもよい。
【0049】
固定部46は、連結部45において、長手方向X(第1方向)における中央側(X2側)の端部から上方に立設した部分である。固定部46は、板状の部材である。固定部46は、端部カバー40および封止具43を、取付部材50の固定具54と共に挟持する。固定部46には、固定ネジ75をネジ止めする固定ネジ挿通孔460が形成されている。固定ネジ挿通孔460は、ボス部57のネジ孔58にねじ込まれる固定ネジ75が挿通する貫通孔である。固定部46は、固定ネジ挿通孔460に挿入される固定ネジ75によってボス部57に取り付けられる。
【0050】
連結部材44には、電源線81、接地線82、制御線83等の電線を通過させる電線挿通孔470がスリット状に形成されている。電線挿通孔470は、上部スリット4710と、端部スリット4711とを有する。固定部46に形成されている電線挿通孔470を端部スリット4711と称する。端部スリット4711は、連結部材44の上下方向(Z軸方向)に形成されている。端部スリット4711は、係合部47に形成されている後述する上部スリット4710と繋がっている。
【0051】
固定部46には、係合片挿通孔461が形成されてもよい。係合片挿通孔461は、第2端部カバー42の第2カバー係合片422および第2カバー係合爪423の断面形状に対応して、固定部46に設けられる貫通孔である。係合片挿通孔461は、透光性カバー30の伸長に伴い長手方向X(第1方向)に移動する第2端部カバー42の第2カバー係合片422および第2カバー係合爪423が、連結部材44の固定部46と干渉しないように形成されている。係合片挿通孔461は、透光性カバー30の伸長の量、すなわち、第2カバー係合片422および第2カバー係合爪423の移動の量が小さい場合、あるいは、端部カバー40が一体形成されている場合等は不要であり、灯具3の必須の構成ではない。
【0052】
係合部47は、固定部46において、上方側(Z1側)の端部から長手方向X(第1方向)における中央側(X2側)に延ばすように設けられた部分である。すなわち、係合部47は、固定部46の上縁部から突出する板状の部材である。係合部47は、端部カバー40と係った状態において、端部カバー40側に突出しており、灯具3において、灯具3の上方側(Z1側)に配置される。
【0053】
上述したように、連結部材44には、電源線81、接地線82、制御線83等の電線を通過させる電線挿通孔470がスリット状に形成されている。係合部47に形成されている電線挿通孔470を上部スリット4710と称する。上部スリット4710は、灯具3の長手方向Xに沿って形成されている。上部スリット4710は、固定部46に形成された端部スリット4711と繋がっている。上部スリット4710は、透光性カバー30の端部36および端部カバー40を、長手方向X(第1方向)の移動が規制されない自由端とするために、連結部材44の係合部47に形成されたスリットである。上部スリット4710には、後述する挿入孔472から挿入されるカバー電線保持部416が、短手方向Yおよび上下方向Zに移動が規制された状態で係合する。なお、挿入孔472に配置されるカバー電線保持部416は、長手方向X(第1方向)には移動が規制されない。上部スリット4710に、カバー電線保持部416が係合した状態では、連結部材44の端部カバー40に対する位置が決まるので、固定ネジ75を用いて連結部材44をボス部57に固定する際に固定ネジ75の位置合わせがしやすくなる。電源線81、接地線82、制御線83の全てまたは一部を編組チューブ等で束線した状態では、一般的に硬くなり曲がり難くなる。しかし、連結部材44は、上部スリット4710と繋がるように形成された端部スリット4711を有することにより、電源線81等が束線されて曲がり難くなっても、配線がし易くなる。
【0054】
係合部47には、後述するカバー電線保持部416が挿入される挿入孔472が形成されている。挿入孔472は、上部スリット4710と連続して形成されている。挿入孔472は、固定部46に形成されている貫通孔であり、上部スリット4710の長手方向X(第1方向)における中央側(X2側)と繋がって形成されている。挿入孔472は、カバー電線保持部416が挿入可能な形状および寸法で形成されている。挿入孔472から挿入されたカバー電線保持部416は、透光性カバー30の伸長に応じて、上部スリット4710と係合した状態で、長手方向Xに沿って移動する。そのためカバー電線保持部416は、透光性カバー30の伸縮、および透光性カバー30の伸縮に伴う端部カバー40および封止具43の移動を妨げない。
【0055】
<取付部材50>
取付部材50は、図3および図6に示すように、発光部60および制御部80等を透光性カバー30内の空間に固定させる部材である。また、取付部材50は、透光性カバー30の両端部に取り付けられた端部カバー40および連結部材44に取付部材50を固定する部材である。取付部材50は、台座51と、固定具54と、を有する。取付部材50は、透光性カバー30に収容される。そして、取付部材50は、図6に示すように、固定ネジ75によって、端部カバー40および連結部材44に固定される。したがって、取付部材50は、透光性カバー30には直接固定されていないが、透光性カバー30の長手方向Xにおける両側のカバー端部35に嵌合(嵌着)している端部カバー40を介して透光性カバー30と繋がっている。
【0056】
台座51は、取付部材50の主たる部分であり、発光部60および制御部80等が取り付けられる。実施の形態1では、台座51は、金属製の板材を折り曲げて形成されているものとする。ただし、台座51は、金属製の板材を折り曲げて形成されたものに限定するものではなく、たとえば、樹脂、セラミック等、金属以外の材料を用いて形成されたものでもよく、また、押出成形、積層造形等、他の方法で形成されたものでもよい。また、図示は省略するが、放熱効率(熱放射率)、あるいは、光の利用効率(反射率)等を向上させるために、台座51に表面処理を施し、あるいは、台座51に機能部材を敷設してもよい。台座51は、取付面部52と、側部53とを有する。台座51の取付面部52は、長尺の平板状に形成されており、照射側の面である表面には、発光部60が取り付けられる。また、器具側の面である裏面には、電源装置等の制御部80が取り付けられる。
【0057】
図6に示すように、台座51の取付面部52には、ネジ孔520が形成されている。ネジ孔520は、取付面部52の長手方向Xの両端部に形成されている。このネジ孔520には、取付部材50を端部カバー40および連結部材44に固定するための固定ネジ75が挿入される。取付面部52には、給電線84等を通過させる切り欠き部521が形成されている。切り欠き部521は、取付面部52の長手方向Xの両端部において、取付面部52の縁部に形成されている。ここで、灯具3の他方の端部における、取付面部52には、切り欠き部521が形成されている代わりに、貫通孔である装着孔522が形成されている。
【0058】
台座51の側部53は、取付面部52の短手方向Yの両端部分から照射側に折り曲げられた立設部分である。側部53は、取付面部52の長手方向Xに沿って取付面部52の縁部から立設していることで、台座51の剛性を向上させる。実施の形態1では、側部53は、制御部80等が配置される器具側だけに立設させている。しかし、側部53は、発光部60が配置される照射側だけに立設させてもよく、あるいは、照射側および器具側の両方に立設させてもよい。また、実施の形態1では、側部53は、取付面部52の短手方向Yの両端部分に立設させているが、たとえば、取付面部52の短手方向Yにおける中央部分等、両端部分以外の位置に立設させてもよい。
【0059】
固定具54は、台座51の長手方向Xの両端部分に配置されており、透光性カバー30の両端部に取り付けられた端部カバー40および連結部材44に取付部材50を固定する部材である。固定具54は、端部カバー40を貫通すると共に連結部材44が固定される。ここで、実施の形態1では、固定具54は台座51と別部材で構成されているが、固定具54の構成は、当該構成に限定するものではない。たとえば、台座51の両端部分を折り曲げる等して、台座51と固定具54とを一体に形成し、台座51が固定具54と同じ機能をもつ部分を有するようにしてもよい。固定具54は、取付ネジ(図示は省略)等の固定部材を用いて台座51に取り付けてもよい。
【0060】
固定具54は、取付部55と、固定部56とを有しており、板金を折り曲げて製造している。なお、固定具54は、金具であるが、金具に限定するものではなく、たとえば、樹脂、セラミック等、他の材料を用いて形成されてもよく、また、押出成形、積層造形等、他の方法で形成されたものでもよい。
【0061】
固定具54の取付部55は、固定具54を台座51に取り付ける部分であり、固定ネジ75を用いて台座51の両端部分に固定される。取付部55は、たとえば、カシメ、溶着(溶接)または嵌着(係着)等の方法で台座51と構造的に一体化されてもよい。
【0062】
固定具54の固定部56は、連結部材44の固定部46と共に端部カバー40と封止具43とを挟持する。すなわち、透光性カバー30と、封止具43と、端部カバー40と、連結部材44とが組み合わされた状態において、固定部56と連結部材44の固定部46との間には、封止具43が配置されている。固定部56には、ボス部57が設けられている。
【0063】
ボス部57は、たとえば、カシメ、溶着(溶接)または嵌着(係着)等の方法によって固定部56に取り付けられている。ボス部57には、固定ネジ75がねじ込まれるネジ孔58が形成されている。ネジ孔58の内周側には、ネジ溝が形成されている。そして、連結部材44の外側から、連結部材44の固定ネジ挿通孔460、第2端部カバー42の端部カバー挿通部421、第1端部カバー41の第1カバー貫通孔411および封止具43のネジ挿通孔434に固定ネジ75が挿通される。そして固定ネジ75が、ボス部57のネジ孔58にねじ込まれて、連結部材44は取付部材50の固定具54に固定される。すなわち、連結部材44が固定されるのは、固定具54のボス部57である。
【0064】
<発光部60>
光源となる発光部60は、図3に示すように、発光素子61、基板62等を有する。発光素子61は、電力供給により発光する。実施の形態1では、発光素子61として、発光ダイオード(Light Emitting Diode;以下、LEDと称す)素子を用いており、基板62の実装面に、長手方向Xに沿って、列状、千鳥状等に実装される。そして、実施の形態1の発光素子61は、波長が440~480〔nm〕の青色光を出射するLEDチップ上に、青色光を黄色光に波長変換する蛍光体を配してパッケージ化された面実装部品である疑似白色LED素子である。ここで、発光素子61が出射する光は、光束値が最大であり、発光面に垂直な光軸に対して、対称に照射角αだけ広がる。実施の形態1では、発光素子61の照射角αは、120度であるものとする。発光素子61は、固体レーザ(Solid State Laser)、半導体レーザ(Semiconductor Laser)、有機EL(Electro Luminescence)、無機EL等を用いてもよい。基板62は、ガラス-エポキシ基板(FR-4)、ガラス-コンポジット基板(CEM-3)、紙エポキシ基板(FR-3)、紙フェノール基板(XPC)、金属ベース基板等が用いられる。
【0065】
制御部80は、発光部60等の発光制御を行うと共に電源装置となり、外部から供給される電力から発光素子61を点灯させる電力に変換して、発光素子61に供給する。実施の形態1では、制御部80は、前述したように、台座51の取付面部52の裏面に、ネジ(図示は省略)等の固定部材を用いて取り付けられた状態で、発光素子61等と共に筒状の透光性カバー30に収容されている。ただし、制御部80は、灯具3ではなく、照明器具2に取り付けられてもよい。この場合、電線は、制御部80から発光素子61に供給される電力の供給経路として機能する給電線となる。実施の形態1における電源線81、接地線82および制御線83等の電線は、一端は制御部80に接続される。そして、他端は、照明器具2に取り付けられている端子台(図示は省略)に接続される。
【0066】
以上のように、実施の形態1では、透光性カバー30において、光源から見て基材30Aの外壁面側に、耐水性および耐光性等の耐候性が高い樹脂を材料とする第1樹脂層30Bを備える。このため、少なくとも耐水性および耐光性等の耐候性に優れた透光性カバー30を得ることができる。
【0067】
また、実施の形態1の透光性カバー30において、基材30Aは、硬質のポリカーボネート系樹脂を材料とすることで、内部に収容した発光部60等の機器を保護することができる。このとき、第1樹脂層30Bは、アクリル系樹脂またはポリエチレン系樹脂を材料とすることで、耐水性および耐光性等の耐候性を確保しつつ、基材30Aとの膨張差による剪断応力を減らし、剪断破壊を防ぐことができる。また、基材30Aがアクリル系樹脂を材料とし、第1樹脂層30Bがナイロン系樹脂を材料とする組み合わせにおいても、耐水性および耐光性等の耐候性を確保しつつ、基材30Aとの膨張差による剪断応力を減らし、剪断破壊を防ぐことができる。さらに、基材30Aの厚さを0.8mm以上とすることで、機器の保護に有効な硬さを得ることができる。一方で、第1樹脂層30Bの厚さを0超0.8mm以下とすることで、透光性を維持しつつ、耐水性および耐光性等の耐候性を確保することができる。
【0068】
また、実施の形態1の透光性カバー30において、第1樹脂層30Bを基材30Aの一部に積層することで、材料となる樹脂および作業工程等の無駄を省くことができる。
【0069】
そして、実施の形態1の透光性カバー30は、基材30Aおよび第1樹脂層30Bをそれぞれ押し出し成形または射出成形で形成することで、同じ方法で製造することができる。また、実施の形態1の透光性カバー30は、基材30Aを押し出し成形または射出成形で形成し、第1樹脂層30Bは、被膜またはフィルムを貼布して形成することで、透光性カバー30の製造を容易に行うことができる。
【0070】
前述した照明装置1は、いわゆるトラフタイプの照明器具2を例示して説明したが、これに限定されるものではない。照明装置1は、灯具3が装着される照明器具2として、いわゆる笠付タイプ、片側反射笠付タイプまたはV形タイプ等、他の形状のものを採用することができる。
【0071】
また、前述した照明装置1を構成する照明器具2および灯具3は、いずれも長尺状のものを例示したが、これに限定されるものではない。灯具3あるいは灯具3が装着される照明器具2は短尺状のものでもよい。たとえば、灯具3は透光性カバー30の筒軸方向の長さ寸法が、径方向の長さ寸法より小さい形状であってもよい。
【0072】
また、前述した照明装置1は、照明器具2および灯具3を有するものとして説明したが、これに限定するものではない。照明器具2の代わりに、レースウェイを被取付部として、灯具3にレースウェイを取り付け、照明装置1としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 照明装置、2 照明器具、3 灯具、3A 端部、9 造営部、20 器具本体、21 器具底面部、22 器具側面部、23 器具端部、24 ノックアウト、25 装着部、26 開口端部、27 連結部、28 ネジ孔、29 配線領域、30 透光性カバー、30A 基材、30B 第1樹脂層、31 並行部、32 第1接続部、33 第2接続部、34 リブ、35 カバー端部、36 端部、37 外周部、38 内周部、40 端部カバー、41 第1端部カバー、42 第2端部カバー、43 封止具、44 連結部材、45 連結部、46 固定部、47 係合部、48 連結ネジ、49 カバー蓋、50 取付部材、51 台座、52 取付面部、53 側部、54 固定具、55 取付部、56 固定部、57 ボス部、58 ネジ孔、60 発光部、61 発光素子、62 基板、75 固定ネジ、80 制御部、81 電源線、82 接地線、83 制御線、84 給電線、85 配線材、300 第1部分、301 第2部分、370 第1外周部、371 第2外周部、410 第1カバー主部、410a 外壁部、411 第1カバー貫通孔、412 第1カバー連結孔、413 連結ガイド、414 カバー下面部、415 カバー下面貫通孔、416 カバー電線保持部、417 カバー端面部、418 カバー端面貫通孔、419 端部カバー外周部、420 第2カバー主部、421 端部カバー挿通部、421a 挿通壁、422 第2カバー係合片、423 第2カバー係合爪、425 端部カバー内周部、430 封止具主部、431 電線挿通部、432 電線挿通孔、433 封止具筒状部、434 ネジ挿通孔、435 内周部、436 接続部、437 外周部、450 段差部、451 連結ネジ挿通部、460 固定ネジ挿通孔、461 係合片挿通孔、470 電線挿通孔、472 挿入孔、480 抜け止めワッシャ、481 軸部、520 ネジ孔、521 切り欠き部、522 装着孔、4710 上部スリット、4711 端部スリット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6