(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022677
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】携帯型二酸化塩素発生用具
(51)【国際特許分類】
C01B 11/02 20060101AFI20220131BHJP
A61L 9/05 20060101ALI20220131BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20220131BHJP
B65D 75/36 20060101ALI20220131BHJP
A61L 101/06 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C01B11/02 F
A61L9/05
A61L9/12
B65D75/36
A61L101:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020113990
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】594046846
【氏名又は名称】LETS ONE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100221718
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】和田 信二
(72)【発明者】
【氏名】大澤 考
【テーマコード(参考)】
3E067
4C180
【Fターム(参考)】
3E067AA17
3E067AB82
3E067AC12
3E067BA25A
3E067BB14A
3E067FB02
3E067GC05
4C180AA07
4C180CA07
4C180EA24Y
4C180EA26Y
4C180EA57X
4C180EA63Y
4C180EB06Y
4C180GG19
(57)【要約】
【課題】二酸化塩素の放出量の強弱及び発生時間を調整できる携帯型二酸化塩素発生用具を提供する。
【解決手段】有機酸、金属亜塩素酸塩、炭酸塩、ポリエチレングリコール、中性無水ぼうしょう及びタルクを含有し、水との反応により二酸化塩素を発生させる反応面を外表とする錠剤と、前記錠剤を内包してなる収容体であって、前記収容体の表側面には、前記収容体の内側と外側との間を貫通する前記錠剤の粒径より小さい小孔が複数設けられ、使用者自身が、錠剤に添加する水の量を調整することで、二酸化塩素の放出量の強弱及び発生時間を制御することが可能な利便性に優れる携帯型二酸化塩素発生用具を提供することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸、金属亜塩素酸塩、炭酸塩、ポリエチレングリコール、中性無水ぼうしょう及びタルクを含有し、水との反応により二酸化塩素を発生させる反応面を外表とする錠剤と、
前記錠剤を内包してなる収容体であって、
前記収容体の表側面には、前記収容体の内側と外側との間を貫通する前記錠剤の粒径より小さい小孔が複数設けられている
ことを特徴とする携帯型二酸化塩素発生用具。
【請求項2】
さらに前記小孔に挿し込み可能な外径からなる先細の先端を有する水注入部材を備える請求項1に記載の携帯型二酸化塩素発生用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を加えることで二酸化塩素を発生させる錠剤を袋体に収容した携帯型二酸化塩素発生用具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化塩素は、強力な殺菌効果、消毒効果および消臭効果に注目され、漂白、殺菌、ウイルス不活化など広範な用途で利用されている。そして、二酸化塩素は比較的人体への有害性が少ないことから、人の周囲の空気を殺菌するための携帯型の二酸化塩素発生用具が提案されている。このような用途に供することができる二酸化塩素発生剤としては、セピオライトのような多孔質担体に亜塩素酸塩およびアルカリ剤を含浸させ乾燥させたもの(特許5605744号)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、有効成分である二酸化塩素の発生量及び反応時間は、携帯型殺菌用具の置かれた空気中の水蒸気及び二酸化炭素の量に左右され、使用目的に応じて適宜調整することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、上記課題を解決するための手段として、本発明に係る携帯型二酸化塩素発生用具は、有機酸、金属亜塩素酸塩、炭酸塩、ポリエチレングリコール、中性無水ぼうしょう及びタルクを含有し、水との反応により二酸化塩素を発生させる反応面を外表とする錠剤と、前記錠剤を内包してなる収容体であって、前記収容体の表側面には、前記収容体の内側と外側との間を貫通する前記錠剤の粒径より小さい小孔が複数設けられてなることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る携帯型二酸化塩素発生用具は、さらに先細の先端を有する水注入部材を備えることとしても好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、使用者自身が、錠剤に添加する水の量を調整することで、二酸化塩素の放出量の強弱及び発生時間を制御することも可能である。そして、錠剤の収容体を首からぶら下げた状態で、二酸化塩素を収容体の小孔から放出させることで、二酸化塩素を顔の周辺の空気と混合させて、顔の周辺の空気を除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の携帯型二酸化塩素発生用具1の正面図。
【
図2】本発明の携帯型二酸化塩素発生用具1の背面図。
【
図3】本発明の携帯型二酸化塩素発生用具1に錠剤4を収めた状態で、スポイト5を用いて小孔3から水を添加する状態を示す模式図。
【
図4】本発明の携帯型二酸化塩素発生用具1に収められた錠剤4が水を添加されて二酸化塩素を発生する状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
水との反応によって二酸化塩素を発生する本発明の錠剤は、金属亜塩素酸塩、有機酸、炭酸塩、ポリエチレングリコール、中性無水ぼうしょう及びタルクを含有する。次に各成分について説明する。
【0010】
[金属亜塩素酸塩]
本発明の錠剤に用いることのできる金属亜塩素酸塩は、二酸化塩素の発生源となり得るものであれば、特に限定されるものではない。例えば、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどの亜塩素酸アルカリ金属塩一般、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸カルシウムなどの亜塩素酸アルカリ土類金属塩一般を用いることができる。経済性および実用性の面から、亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。また、金属亜塩素酸塩は、1種だけでなく、複数種類を組み合わせて錠剤に含有させることもできる。
【0011】
錠剤中の金属亜塩素酸塩の量は、錠剤全体に対して、0.1~10重量%が好ましい。この範囲の金属亜塩素酸塩であれば、除菌等の観点から実用的な量の二酸化塩素を発生させることができる。
【0012】
[有機酸]
本発明の錠剤に用いることのできる有機酸は、上記金属亜塩素酸塩と共に二酸化塩素を発生させる働きをするものであれば、特に限定されるものではない。例えば、コハク酸 クエン酸 フマル酸 アジピン酸などを用いることができる。ただし、あまりpHの低い有機酸は打錠の観点からは適切ではない。
【0013】
錠剤中の有機酸の量は、錠剤全体に対して、10~40重量%が好ましい。この範囲の有機酸であれば、除菌等の観点から実用的な量の二酸化塩素を発生させることができる。
【0014】
[炭酸塩]
本発明の錠剤に用いることのできる炭酸塩は、アルカリ剤として上記有機酸の一部と反応して二酸化炭素を発生することで、水が錠剤へ浸透することを助ける働きをするものであれば、特に限定されるものではない。例えば、炭酸ナトリウム 炭酸水素ナトリウムなどを用いることができる。また、炭酸塩は、1種だけでなく、複数種類を組み合わせて錠剤に含有させることもできる。
【0015】
錠剤中の炭酸塩の量は、錠剤全体に対して、1~5重量%が好ましい。この範囲の炭酸塩であれば、水の錠剤への浸透を促進する効力の観点から実用的である。
【0016】
[ポリエチレングリコール]
ポリエチレングリコールは、錠剤圧縮時の結合材的な働きと錠剤装置からの離型性を良くする働きをする。
【0017】
錠剤中のポリエチレングリコールの量は、錠剤全体に対して、15~25重量%が好ましい。この範囲のポリエチレングリコールであれば、錠剤圧縮時の結合性及び離型性の観点から実用的である。
【0018】
[中性無水ぼうしょう]
中性無水ぼうしょうを用いることで、金属亜塩素酸塩、有機酸、炭酸塩の3成分が密接になり過ぎない位置関係を保持したタブレットを実現することができる。上記3成分が密接になり過ぎない位置関係を保持することで、打錠障害を防ぐことができ、また錠剤に水を加えたときに一挙に二酸化塩素が発生してしまうことも防ぐことができ、二酸化塩素発生の持続性向上にも効果を発揮する。
【0019】
錠剤中の中性無水ぼうしょうの量は、錠剤全体に対して、20~71重量%が好ましい。この範囲の中性無水ぼうしょうであれば、打錠障害の防止及び二酸化塩素発生の持続性の向上を図ることができる。
【0020】
[タルク]
タルクは、錠剤成分である粉体の錠剤装置への付着を防ぐことにより、錠剤の製造をスムースにする滑沢剤・離型剤である。
【0021】
錠剤中のタルクの量は、錠剤全体に対して、1重量%程度が好ましい。この範囲のタルクであれば、滑沢剤・離型剤の観点から優れている。
【0022】
[含水率]
本発明の錠剤に含まれる水分によって、使用前に二酸化塩素が生成し得る。そのため、錠剤中の含水率が高いと実際の使用時に発生する二酸化塩素量が少なくなる。つまり、錠剤の含水率が二酸化塩素の生成能力に大きな影響を与える。したがって、錠剤中の含水率は、少ないほど好ましい。
【0023】
[錠剤の製造方法]
本発明の錠剤の製造方法としては、例えば、金属亜塩素酸塩、有機酸及び炭酸塩を個別に乾燥させた後、各成分を混合し、さらにポリエチレングリコール、中性無水ぼうしょう及びタルクを添加し、通常の打錠機に投入し、圧力をかけて打錠加工することで錠剤を得ることとしてもよい。また、得られた錠剤は、必要であれば、一般的な乾燥工程に付してもよい。
【0024】
[錠剤を収める収容体]
次に本発明の携帯型二酸化塩素発生用具の収容体1について説明をする。
図1~
図2に示すように、四辺形(縦約8cm、横約10cm)の2枚のシート1A、1Bを重ね、その隙間に錠剤を収納して、重ねたシートの周辺部11、12、13、14を接合することで、袋状の収容体1が形成される。シートの性質としては、二酸化塩素に腐食しない性質を有していれば足り、例えばアルミニウムとプラスチックの積層体が利用できる。
【0025】
収容体の上端中央部には、係止具を取り付けるための切り取り穴2が形成されている。収容体の表側面には、収容体の外側と内側の間を貫通する小孔3が形成されており、収容体1の上部寄りの位置に一方の側縁から他方の側縁にかけて横一列等間隔に配置され、収容体の下部寄りの位置に横一列に中央部分を開けて左右に小孔3が配置されている。
【0026】
[携帯型二酸化塩素発生用具の使用例]
収容体内に収められた錠剤は、固定されている必要はなく、収容体表面から指等で錠剤に力を加えることで、錠剤を収容体内の任意の位置に動かせることとしてもよい。小孔3を通じて、スポイト等で水を錠剤に添加すると、次の化学反応が生じて二酸化塩素が発生する。また、錠剤に添加する水の量を調整することで、二酸化塩素の放出量の強弱及び発生時間を制御することができる。
15NaClO2+4HO2CC(OH)(CH2CO2H)2 →12ClO2+4C6H5Na3O7+3NaCl+2H2O
【0027】
収容体1には、ネックストラップなどを取り付けることができ、首からぶら下げることができる。水を錠剤に添加し、小孔3から二酸化塩素が放出する状態となった収容体1を首からぶら下げることで、二酸化塩素を顔の周辺の空気と混合させて、顔の周辺の空気を除菌することができる。そのため、菌等が呼吸器から侵入することを防ぐことができる。
【0028】
なお、収容体1の大きさ、材質及び形態などは、請求項に沿う限りは任意に変更可能であり、図に示されたものに限定して解釈されるものではない。
【実施例0029】
[抗菌試験]
本発明の錠剤から発生する二酸化塩素の抗菌力を調べる実験を示す。
1.試料:本発明の二酸化塩素発生錠剤
2.試験方法
(a)試験に用いた細菌
大腸菌:Escherichia coli NBRC3972
黄色ブドウ球菌:Staphylococcus aureus NBRC12732
(b)細菌懸濁液の調製法
5mLの普通ブイヨン培地(栄研化学(株))を用い、上記の細菌のを27℃で一晩振盪培養した。得られた培養液を滅菌した生理食塩水(0.85%)で4×105倍から1×106倍希釈し接種用の細菌懸濁液とした。
(c)試料の設置及びかびの胞子の接種法
(b)で調整した懸濁液100μLを直径90mmのシャーレに調製した普通寒天培地(日水製薬)上に塗抹した。
(d)試料の前処理
本試料に50μLの水を添加し、室温で1時間放置した。
(e)培養方法
(c)で作製した寒天培地を12L容量の密閉型容器2個にシャーレの蓋を外してそれぞれ1枚ずつに入れた。一方の密閉型容器には(d)で作製した錠剤を入れ、もう一方には錠剤は入れなかった。密閉型容器の蓋を密閉し、27℃で6時間放置した。放置後、密閉型容器から寒天培地を取り出し37℃で48時間培養した。
3.結果
寒天平板上に確認された最近のコロニー数を表1に示す。
【0030】
【0031】
表1の結果から、本発明の二酸化塩素発生錠剤から発生する二酸化塩素は、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌試験において、極めて有益な効果を有することが示された。
【0032】
[消臭・脱臭性能試験]
1.試料:本発明の二酸化塩素発生錠剤
2.試験方法
(1)直径5cmのプラスチックシャーレ内に円盤状の試料1個を置き、ガラスピペットを用いて試料上面に精製水1滴を滴下した。
(2)試料試験として、5Lサンプリングバッグ(以下、バッグと称す)の一隅をカットし、(1)のプラスチックシャーレを入れた後、カット部分を塞いだ。
(3)バッグ内を真空ポンプで脱気したのち、積算流量計を通じ、バッグ内に空気3Lを注入した。
(4)ブランク試験として、空のバッグに空気3Lを注入した。
(5)所定の初発濃度になるように、各バッグ内にシリンジで臭気物質のガスを注入後、密閉した。
(6)30および60分後のバッグ内の臭気物質のガス濃度をガス検知管により測定した。なお、試験はすべて20℃-65%RHの恒温恒湿室内にて行った。使用した器具および条件を表2に示す。
【0033】
【0034】
3.結果
試験は上記方法を2回行った。各試験で得られた臭気物質のガス濃度の平均値を、表3及び表4にそれぞれ示す。
【0035】
【0036】
【0037】
表3の結果から、本発明の二酸化塩素発生錠剤から発生する二酸化塩素は、メチルメルカプタンに対する消臭・脱臭性能試験において、有益な効果を有することが示された。また、表4の結果から、トリメチルアミンに対する消臭・脱臭性能試験においては、特に有益な効果を有することが示された。
【0038】
[二酸化塩素ガス濃度の測定]
測定サンプル: 亜塩素酸塩配合錠剤
測定方法: 錠剤に水を一滴垂らし、約7リットルのポリ袋に封入し20分経過後にガス検知菅にて濃度測定。測定終了したサンプルは開放状態で放置し、一定日数経過後に同様に試験を行う。
【0039】
【0040】
表5の結果から、本発明の錠剤は、水を一滴垂らす毎に、45日間に渡って安定的に、除菌・消臭・脱臭作用(上記参照)を有する濃度の二酸化塩素を発生することが示された。
【0041】
以上のように、本発明によって、放出量の強弱をつけて二酸化塩素を放出することが可能となる。そのため、風が生じにくい密閉する場所においては、放出された二酸化塩素が使用者の身体周囲にとどまりやすく、使用者の周辺の空気を効果的に除菌することができる。したがって、密閉する場所で人々が密集及び密接する状態、すなわち三密状態が気になるときには、本発明の携帯型二酸化塩素発生用具の使用することで、使用者の周辺の空気を除菌することで、三密状態の危険性を減らすことができる。なお、風が流れる屋外で本発明の携帯型二酸化塩素発生用具を使用すると、放出された二酸化塩素の一部が風によって押し流されてしまう。そのため、使用者の周辺の空気を除菌する効果が若干弱まるが、二酸化塩素の安定的な発生は継続するため、一定程度の効果は維持できる。