(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022684
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】光照射装置及び情報伝達システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/096 20060101AFI20220131BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20220131BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220131BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220131BHJP
F21W 111/02 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
G08G1/096
F21S2/00 660
F21S2/00 340
G08G1/16 A
F21Y115:10
F21W111:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114173
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】金子 進
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】田村 例人
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181HH21
5H181JJ21
5H181LL04
5H181LL08
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】時差式車両用信号機の配置された交差点において安全な車両通行を支援可能な光照射装置及び情報伝達システムを提供する。
【解決手段】光照射装置3A,3Bは、時差式車両用信号機10,11が配置された交差点80において、自車線81側の時差式車両用信号機10が青色灯火の状態であって自車線81の対向車線82側の時差式車両用信号機11が赤色灯火の状態であるときに、自車線81側の自車61の進行を促すことを示す矢印パターン71及び対向車線82側の対向車62の進行を止めていることを示すバツ印パターン72の少なくとも一方の描画パターンを交差点80内に表示するように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時差式車両用信号機が配置された交差点において、第一車線側の前記時差式車両用信号機が青色灯火であって前記第一車線の対向車線である第二車線側の前記時差式車両用信号機が赤色灯火であるときに、前記第一車線側の第一車両の進行を促すことを示す第一描画パターン及び前記第二車線側の第二車両の進行を止めていることを示す第二描画パターンの少なくとも一方の描画パターンを前記交差点内に表示する、光照射装置。
【請求項2】
前記第一描画パターンは、前記交差点における前記第一車両の右折進行を促すことを示す、請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記第一描画パターンは青色で表示され、前記第二描画パターンは赤色で表示される、請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記第二車線側の前記時差式車両用信号機が赤色灯火に変わってから一定時間経過後に前記少なくとも一方の描画パターンの表示を開始する、請求項1から3のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記光照射装置は、前記時差式車両用信号機に搭載される青色灯火用の信号灯器であって、
光源と、
前記光源から出射された光を拡散させて前記青色灯火として発光させる拡散レンズと、
前記第一描画パターンに応じた形状を有し、前記光源からの光を集光可能な集光レンズと、
を備え、
前記光源から出射された光が前記集光レンズにより集光されて前記交差点の路面上に照射されることで、前記第一描画パターンが表示される、請求項1から4のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記光照射装置は、前記時差式車両用信号機に搭載される赤色灯火用の信号灯器であって、
光源と、
前記光源から出射された光を拡散させて前記赤色灯火として発光させる拡散レンズと、
前記第二描画パターンに応じた形状を有し、前記光源からの光を集光可能な集光レンズと、
を備え、
前記光源から出射された光が前記集光レンズにより集光されて前記交差点の路面上に照射されることで、前記第二描画パターンが表示される、請求項1から5のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記光照射装置は、前記時差式車両用信号機の信号灯器とともに前記時差式車両用信号機に搭載され、
光源と、
前記少なくとも一方の描画パターンに応じた形状を有し、前記光源からの光を集光可能な集光レンズと、
を備え、
前記光源から出射された光が前記集光レンズにより集光されて前記交差点の路面上に照射されることで、前記少なくとも一方の描画パターンが表示される、請求項1から4のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記光照射装置は、前記第一車両に搭載され、
前記第一車両に搭載された前記光照射装置から前記第一描画パターンが表示される、請求項1から4のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記光照射装置は、前記第二車両に搭載され、
前記第二車両に搭載された前記光照射装置から前記第二描画パターンが表示される、請求項8に記載の光照射装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の光照射装置と、
報音装置と、
を備えた情報伝達システムであって、
前記報音装置は、前記第一描画パターンの表示と同期して、前記第一車両の進行を促すことを示す音声を前記第一車両に向けて報音する、情報伝達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置及び情報伝達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザー照射の色彩の自在度を高め、運転者が道路状況を認識しやすい線やマークなどを描画可能にした車両用灯具が開示されている。当該車両用灯具は、複数色のレーザー光(R,G,B)を出射可能であり、照射光の色を変更可能な光源と、レーザー光を走査して照射先に所定の図形を描画する光学機構と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、時差式の車両用信号機が配置された交差点では、自車線側の信号と対向車線側の信号との切り替えタイミングが異なるため、自車線側から対向車線側の信号の状況を把握することができない。そのため、時差式信号機の配置された交差点において特に右折車による事故が多発している。
【0005】
そこで、本発明は、時差式車両用信号機の配置された交差点において安全な車両通行を支援可能な光照射装置及び情報伝達システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係る光照射装置は、
時差式車両用信号機が配置された交差点において、第一車線側の前記時差式車両用信号機が青色灯火であって前記第一車線の対向車線である第二車線側の前記時差信号機が赤色灯火であるときに、前記第一車線側の第一車両の進行を促すことを示す第一描画パターン及び前記第二車線側の第二車両の進行を止めていることを示す第二描画パターンの少なくとも一方の描画パターンを前記交差点内に表示する。
【0007】
この構成によれば、時差式車両用信号機の配置された交差点において安全な車両通行を支援可能な光照射装置を提供することができる。
【0008】
また、本発明の一側面に係る情報伝達システムは、
上記光照射装置と、
報音装置と、
を備えた情報伝達システムであって、
前記報音装置は、前記第一描画パターンの表示と同期して、前記第一車両の進行を促すことを示す音声を前記第一車両に向けて報音する。
【0009】
この構成によれば、第一車両の運転者に対して車両の進行を促す音声を報音することで、当該運転者に対する運転支援を促進することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、時差式車両用信号機の配置された交差点において安全な車両通行を支援可能な光照射装置及び情報伝達システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る光照射装置を備える情報伝達システムのブロック図である。
【
図2】第一実施形態に係る光照射装置を示す図であり、(a)は青色信号灯器と一体型の光照射装置、(b)は赤色信号灯器と一体型の光照射装置である。
【
図3】
図2(a)のA-A線における断面図である。
【
図4】光照射装置によって路面上に表示された描画パターンを示す図である。
【
図5】交差点内に表示された描画パターンを示す図である。
【
図6】第二実施形態に係る光照明装置を示す図であり、(a)は青色信号灯器に対応する別体型の光照射装置、(b)は赤色信号に対応する別体型の光照射装置である。
【
図7】
図6(a)のB-B線における断面図である。
【
図8】光照射装置から路面上に表示された描画パターンを示す図である。
【
図9】第三実施形態に係る光照射装置から交差点内に表示された描画パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る光照射装置3を備える情報伝達システム1のブロック図である。
図1に示すように、情報伝達システム1は、時差式車両用信号機10,11を備えている。時差式車両用信号機10,11は、例えば車線による交通量の違いによって発生する道路渋滞を緩和するために設置される信号機であり、進行が許可される期間(青信号灯火期間)が車線によって相違するように制御されている信号機である。時差式車両用信号機10,11は、特定の交差点やT字路等に設置される。例えば信号機が設置されている交差点において、時差式車両用信号機10と11とは対向する車線間に設置される。
図1における(第一車線側)と(第二車線側)とは、例えば自車が走行している車線を第一車線とする場合には、対向車が走行している車線が第二車線となり、自車線側が第一車線側、対向車線側が第二車線側となる。
【0014】
時差式車両用信号機10及び11は、それぞれ信号灯器2と、光照射装置3と、報音装置4と、制御部5とを有している。
【0015】
信号灯器2は、通常の信号機に搭載されている「青色信号灯器」、「黄色信号灯器」、及び「赤色信号灯器」と同様の信号灯器である。
【0016】
光照射装置3は、運転者に注意を喚起させる所定の描画パターンを交差点等内の路面上に表示するための照射装置である。所定の描画パターンには、例えば、運転者に対して車両の進行を促すことを伝達するための描画パターン、運転者対して車両の進行を止めることを伝達するための描画パターン等が含まれる。
【0017】
報音装置4は、路面上に表示される描画パターンに応じた内容の音声を、交差点等内にいる車両の運転者に伝達するための装置である。報音装置4は、指向性のある音声スピーカで構成されている。描画パターンに応じた音声には、例えば、運転者に車両の進行を促す音声としての「ピッ・ピッ・ピッ」等が含まれる。
【0018】
制御部5は、信号灯器2、光照射装置3、及び報音装置4等の動作をそれぞれ制御する。
【0019】
情報伝達システム1の時差式車両用信号機10,11は、管理センター9に通信可能に接続されている。時差式車両用信号機10,11の制御部5は、管理センター9の集合制御部91から送信される制御信号に基づいて、信号灯器2、光照射装置3、及び報音装置4等の動作内容を設定及び更新するように構成されている。
【0020】
次に、
図2から
図4を参照して時差式車両用信号機10(11)の構成について説明する。
図2は、第一実施形態に係る光照射装置3(3A,3B)を示す図である。第一実施形態の光照射装置3(3A,3B)は、信号灯器2と一体的に構成された光照射装置である。
図2(a)は、青色信号灯器21bと一体的に構成された光照射装置3Aである。
図2(b)は、赤色信号灯器21rと一体的に構成された光照射装置3Bである。
【0021】
図2(a)に示すように、青色信号灯器21bと一体的に構成された光照射装置3Aを搭載する時差式車両用信号機10(11)には、光照射装置3Aの隣に、通常の信号機と同様の黄色信号灯器21yが設けられ、黄色信号灯器21yの隣に通常の信号機と同様の赤色信号灯器21rが設けられている。青色信号灯器21bと一体的に構成されている光照射装置3Aは、青色信号灯器21bから出射される青色光を用いて、運転者に注意を喚起させる所定の描画パターンを交差点等内の路面上に表示するように構成されている。青色信号灯器21bから出射される青色光を用いる光照射装置3Aでは、例えば、運転者に対して車両の進行を促すことを伝達する描画パターンが表示される。具体的には、
図2(a)の光照射装置3Aに示されているような、進行許可方向を伝達する「矢印パターン」が青色光で路面上に表示される。
【0022】
図2(b)に示すように、赤色信号灯器21rと一体的に構成された光照射装置3Bを搭載する時差式車両用信号機10(11)には、光照射装置3Bの隣に、通常の信号機と同様の黄色信号灯器21yが設けられ、黄色信号灯器21yの隣に通常の信号機と同様の青色信号灯器21bが設けられている。赤色信号灯器と一体的に構成されている光照射装置3Bは、赤色信号灯器21rから出射される赤色光を用いて、運転者に注意を喚起させる所定の描画パターンを交差点等内の路面上に表示するように構成されている。赤色信号灯器から出射される赤色光を用いる光照射装置3Bでは、例えば、運転者に対して車両の進行を止めることを伝達する描画パターンが表示される。具体的には、
図2(b)の光照射装置3Bに示されているような、進行を許可しない旨を伝達する「バツ印パターン」が赤色光で路面上に表示される。
【0023】
図3は、
図2(a)のA-A線における断面図である。
図3に示すように、光照射装置3Aは、LED光源31と、拡散レンズ32と、集光レンズ33とを有している。
【0024】
LED光源31は、光照射装置3Aの背面側に設けられている。LED光源31は、マトリクス状に配列される複数のLEDで構成されている。青色信号灯器21bと一体的に構成されている光照射装置3AのLED光源31は、青色信号灯器21bの光源と共通の光源である。光照射装置3AのLED光源31は、青色LEDである。
【0025】
拡散レンズ32は、LED光源31から出射された光を拡散させて、通常の信号機と同様に、青色灯火として発光させるレンズである。拡散レンズ32は、集光レンズ33の周りを囲うように設けられている。拡散レンズ32は、例えば円柱の一部を切り取った形状のいわゆるシリンドリカルレンズが複数連続して配置されたレンズで構成される。拡散レンズ32は、レンズを構成する樹脂材料内に光拡散材が添加されたもの、レンズ表面に光拡散フィルムが貼られたものなどから構成されてもよい。
【0026】
集光レンズ33は、LED光源31から出射された光を集光させて、青色描画として発光させるレンズである。集光レンズ33は、描画パターンに応じた形状を有している。光照射装置3Aの集光レンズ33は、車両の進行を促す形状である「矢印パターン」に形成されている。集光レンズ33は、例えば凸レンズ、平凸レンズ等で構成される。
【0027】
光照射装置3Aは、円形状を有する拡散レンズ32の領域内に矢印形状の集光レンズ33が組み込まれるように形成されている。光照射装置3Aは、「矢印パターン」を路面上に表示する際には、集光レンズ33に対応するLED光源31、すなわちマトリクス状に配置されている複数のLEDのうち集光レンズ33を照射するLEDを点灯させる。LED光源31から出射された光が集光レンズ33により集光されて交差点等内の路面上に照射されることで、矢印パターンが表示される。これに対して、「矢印パターン」を路面上に表示しない際には、マトリクス状に配置されている複数のLEDのうち集光レンズ33を照射するために設けられているLEDを消灯させる。
【0028】
なお、図示は省略するが、光照射装置3Bも光照射装置3Aと同様の構成を有している。ただし、光照射装置3Bの場合は、赤色信号灯器21rと一体的に構成されており、集光レンズ33の形状が車両の進行を止める「バツ印パターン」に形成されている。
【0029】
図4は、光照射装置3Aによって路面上に表示された描画パターンを示す図である。
図4に示すように、光照射装置3Aは、LED光源31から出射された青色光を集光レンズ33により集光して、交差点等の路面83上に「矢印パターン」71を表示する。
【0030】
次に、情報伝達システム1の動作例について説明する。
図5は、時差式車両用信号機10,11が設置されている交差点80において、当該交差点80内の路面83上に描画パターン(「矢印パターン」71と「バツ印パターン」72)が表示されている状況を示している。
【0031】
図5に示す交差点80の時差式車両用信号機10,11は、自車61が走行している自車線81側の時差式車両用信号機10と対向車62が走行している対向車線82側の時差式車両用信号機11が共に進行を許可する青信号灯火の状態から、対向車線82側の時差式車両用信号機11が先に進行を許可しない赤信号灯火の状態に切り替わるように制御される。
【0032】
まず、交差点80において、自車61が自車線81から交差点80に進入して、当該交差点80を右折しようとする状況を想定する。自車線81側の時差式車両用信号機10と対向車線82側の時差式車両用信号機11が共に青信号灯火の状態である場合、対向車線82側の車両の流れが途切れない状況では、自車61は右折できないため停止して右折待機状態になる。
【0033】
次に、対向車線82側の時差式車両用信号機11が先に青信号灯火の状態から黄信号灯火の状態を経て赤信号灯火の状態に切り替わった状況を想定する。時差式車両用信号機10,11が設置されている交差点80であることを自車61の運転者が認識していない場合、自車61の運転者は、対向車線82側の時差式車両用信号機11もまだ青信号灯火の状態であると思い込んで右折待機状態を継続する。このため、自車61と同じ自車線81で右折待機している後続車63も自車61に従って引き続き右折待機状態のままになる。すなわち、対向車線82側の時差式車両用信号機11が赤信号灯火の状態で、自車線81側の時差式車両用信号機10だけが青信号灯火の状態であるにもかかわらず、自車線81側の車両が停止している状態が継続し、道路渋滞を緩和することができない。
【0034】
そこで、この状況を解消するために、自車線81側の時差式車両用信号機10の制御部5は、
図5に示すように、自車61の右折進行を促すことを伝達する矢印パターン71を交差点80内における自車61の前方の路面83上に光照射装置3Aによって青色に表示させる。制御部5は、対向車線82側の時差式車両用信号機11が赤信号灯火の状態に切り替わってから一定時間(例えば2~3秒)経過後に上記矢印パターン71の表示を開始する。なお、
図5の路面83には矢印パターン71として直進を促す矢印と右折を促す矢印の両方が表示されているが、例えば自車61が走行している車線が右折専用の車線である場合には右折を促す矢印のみを表示するようにしてもよい。
【0035】
また、制御部5は、矢印パターン71の表示に同期して、自車61の右折進行をさらに促すための音声を報音装置4によって伝達する。報音装置4から報音される音声は、交差点80内に表示されている矢印パターン71に向けて、すなわち、自車61の運転者に伝達されるように出力される。
【0036】
また、対向車線82側の時差式車両用信号機11の制御部5は、
図5に示すように、対向車62の直進を止めることを伝達するバツ印パターン72を交差点80内における時差式車両用信号機11の前方の路面83上に光照射装置3Bによって赤色に表示させる。対向車線82側に表示されるバツ印パターン72は、右折しようとしている自車61の運転者が認識できる路面83上の位置に表示されてもよい。
【0037】
以上説明したように本実施形態に係る光照射装置3は、時差式車両用信号機10,11が配置された交差点80において、自車線81側の時差式車両用信号機10が青色灯火の状態であって自車線81の対向車線82側の時差式車両用信号機11が赤色灯火の状態であるときに、自車線81側の自車61の進行を促すことを示す矢印パターン71(第一描画パターンの一例)及び対向車線82側の対向車62の進行を止めていることを示すバツ印パターン72(第二描画パターンの一例)を交差点80内に表示するように構成されている。この構成によれば、時差式車両用信号機10,11が配置されている交差点80において、車両の進行を促す描画パターン及び車両の進行を止める描画パターンを交差点80内に表示することにより、自車61及び対向車62の運転者に対して時差式車両用信号機10,11が指示する状況を正確に認識させることができる。これにより、時差式車両用信号機10、11が配置されている交差点80において安全な車両通行を支援することができる。
【0038】
また、上記光照射装置3によれば、矢印パターン71は、交差点80における自車61の右折進行を促す描画パターンを含んでいる。このため、時差式車両用信号機10,11の配置された交差点80において特に事故の発生しやすい右折車の安全な通行を支援することができる。
【0039】
また、上記光照射装置3によれば、車両の進行を促す矢印パターン71は青色で表示され、車両の進行を止めるバツ印パターン72は赤色で表示される。このように、信号機(信号灯器)の灯火と同じように、車両の進行を促すパターンを青色信号灯器21bの灯火と同じ色の青色に表示させ、車両の進行を止めるパターンを赤色信号灯器21rの灯火と同じ色の赤色に表示させることで、運転者に対して車両の進行あるいは停止を直感的に注意喚起することができる。
【0040】
また、上記光照射装置3によれば、対向車線82側の時差式車両用信号機11が赤色灯火に切り替わってから一定時間経過後に自車線81側の時差式車両用信号機10における光照射装置3Aの矢印パターン71の表示を開始する。これにより、対向車62の進行が確実に止まってから矢印パターン71を表示して自車61の進行を促すことができるので、交差点80における交通の安全性をより確実に担保することができる。
【0041】
また、上記光照射装置3Aは、時差式車両用信号機10に搭載される青色灯火用の信号灯器であって、LED光源31と、LED光源31から出射された光を拡散させて青色灯火として発光させる拡散レンズ32と、矢印パターン71に応じた形状を有し、LED光源31からの光を集光可能な集光レンズ33とを備え、LED光源31から出射された光が集光レンズ33により集光されて交差点80の路面83上に照射されることで、矢印パターン71が表示される。そして、上記光照射装置3Bは、時差式車両用信号機11に搭載される赤色灯火用の信号灯器であって、LED光源31と、LED光源31から出射された光を拡散させて赤色灯火として発光させる拡散レンズ32と、バツ印パターン72に応じた形状を有し、LED光源31からの光を集光可能な集光レンズ33とを備え、LED光源31から出射された光が集光レンズ33により集光されて交差点80の路面83上に照射されることで、バツ印パターン72が表示される。この構成によれば、時差式車両用信号機10,11の信号灯器21b、21rを光照射装置3A,3B(路面描画装置)としても用いることができるので、信号灯器21b、21rの光源を用いて信号灯器21b、21rの色と同じ色で描画パターンを表示することができる。したがって、光照射装置3A,3B用の追加の光源を時差式車両用信号機10,11に新たに設ける必要がないため、製造コストを抑制できるとともに光照射装置3A,3Bの制御の簡素化を実現できる。
【0042】
また、本実施形態に係る情報伝達システム1は、光照射装置3A,3Bと、報音装置4とを備えており、報音装置4は、矢印パターン71の表示と同期して、自車61の進行を促すことを示す音声を自車61に向けて報音する。このように、自車61の運転者に対して、矢印パターン71の表示と組み合わせて、車両の進行を促す音声を報音することで、当該運転者に対する運転支援を視覚的だけでなく聴覚的にも促進することができる。特に、報音装置4は、指向性スピーカから構成されているため、例えば、注意喚起の重要性が高い(すなわち、事故が発生しやすい)右折車のみに音声を報音することもでき、時差式車両用信号機10(10)の配置された交差点80における右直事故の発生を効果的に抑制することができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、時差式車両用信号機10の光照射装置3Aで矢印パターン71を表示し、時差式車両用信号機11の光照射装置3Bでバツ印パターン72を表示しているが、これに限られない。例えば、光照射装置3Aまたは光照射装置3Bの一方で、矢印パターン71及びバツ印パターン72の両方を表示するようにしてもよい。また、交差点80内の状況に応じて、矢印パターン71及びバツ印パターン72の少なくとも一方のみを路面83上に表示するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、管理センター9から全ての時差式車両用信号機に制御信号を送信して各々の時差式車両用信号機の動作を集中制御するようにしているが、これに限られない。例えば、交差点80に一対の信号機である時差式車両用信号機10と11を設置する際に、時差式車両用信号機10と時差式車両用信号機11とが連動するように一対の信号機ごとに動作が設定される個別制御であってもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、自車61が右折する際に、光照射装置3Aからの矢印パターン71と報音装置4からの音声を用いて運転支援しているが、これに限られない。例えば、自車61の車載カメラやインフラ設備に搭載されている監視用カメラによって撮像される画像を用いるようにしてもよい。具体的には、制御部5は、車載カメラや監視用カメラで撮像された対向車線82側の画像を取得して、撮像画像の解析結果から、走行している対向車が対向車線82側にいないことが確認されたのちに、矢印パターン71の表示や報音装置4からの報音を実施するようにしてもよい。
【0046】
(第二実施形態)
図6は、第二実施形態に係る光照射装置103(103A,103B)を示す図である。第二実施形態の光照射装置103(103A,103B)は、信号灯器2とは別体に設けられた光照射装置である。
図6(a)は、青色信号灯器121bに対応する光照射装置として時差式車両用信号機110に搭載された光照射装置103Aである。
図6(b)は、赤色信号灯器121rに対応する光照射装置として時差式車両用信号機111に搭載された光照射装置103Bである。
【0047】
図6(a)に示すように、光照射装置103Aが搭載された時差式車両用信号機110(111)には、通常の信号機と同様の青色信号灯器121bと黄色信号灯器121yと赤色信号灯器121rが設けられている。そして、青色信号灯器121bに対応する光照射装置103Aが青色信号灯器121bの下側に取り付けられている。青色信号灯器121bとは別体に設けられた光照射装置103Aは、青色信号灯器121bから独立して個別に制御され、運転者に注意を喚起させる所定の描画パターンを交差点等内の路面上に表示する。青色信号灯器121bに対応する光照射装置103Aでは、例えば、運転者に対して車両の進行を促すことを伝達する描画パターンが表示される。具体的には、
図6(a)の光照射装置103Aに示されているような、進行許可方向を伝達する「矢印パターン」が青色光で路面上に表示される。
【0048】
図6(b)に示すように、光照射装置103Bが搭載された時差式車両用信号機110(111)には、通常の信号機と同様の青色信号灯器121bと黄色信号灯器121yと赤色信号灯器121rが設けられている。そして、赤色信号灯器121rに対応する光照射装置103Bが赤色信号灯器121rの下側に取り付けられている。赤色信号灯器121rとは別体に設けられた光照射装置103Bは、赤色信号灯器121rから独立して個別に制御され、運転者に注意を喚起させる所定の描画パターンを交差点等内の路面上に表示する。赤色信号灯器121rに対応する光照射装置103Bでは、例えば、運転者に対して車両の進行を止めることを伝達する描画パターンが表示される。具体的には、
図6(b)の光照射装置103Bに示されているような、進行を許可しない旨を伝達する「バツ印パターン」が赤色光で路面上に表示される。
【0049】
図7は、
図6(a)のB-B線における断面図である。
図7に示すように、青色信号灯器121bは、通常の信号機の青色信号灯器と同様の構成であり、LED光源31と、拡散レンズ32とを有している。光照射装置103Aは、LED光源131と、集光レンズ133とを有している。
【0050】
青色信号灯器121bのLED光源31及び拡散レンズ32については、上記第一実施形態のLED光源31及び拡散レンズ32の構成と同様であるため説明を省略する。
【0051】
光照射装置103AのLED光源131は、光照射装置103Aの背面側に設けられており、LED光源31と同様にマトリクス状に配列される複数のLEDで構成されている。青色信号灯器121bに対応する光照射装置103AのLED光源131は青色LEDである。
【0052】
集光レンズ133は、LED光源131から出射された光を集光させて、青色描画として発光させるレンズであり、例えば凸レンズ、平凸レンズ等で構成されている。集光レンズ133は、描画パターンに応じた形状を有しており、光照射装置103Aの場合には、車両の進行を促す形状である「矢印パターン」に形成されている。
【0053】
光照射装置103Aは、LED光源131から出射された光を集光レンズ133により集光して交差点等内の路面上に照射することで、矢印パターンを表示する。
なお、図示は省略するが、光照射装置103Bも光照射装置3Aと同様の構成を有している。ただし、光照射装置103Bの場合は、赤色信号灯器121rに対応して設けられており、集光レンズ133の形状が車両の進行を止める「バツ印パターン」に形成されている。
【0054】
図8は、光照射装置103Bによって路面上に表示された描画パターンを示す図である。
図8に示すように、光照射装置103Bは、LED光源131から出射された赤色光を集光レンズ133により集光して、交差点等の路面83上に「バツ印パターン」72を表示する。
【0055】
以上説明したように、第二実施形態に係る光照射装置103Aは、時差式車両用信号機110の青色信号灯器121bとともに時差式車両用信号機110に搭載され、LED光源131と、矢印パターン71に応じた形状を有し、LED光源131からの光を集光可能な集光レンズ133とを備え、LED光源131から出射された光が集光レンズ133により集光されて交差点80の路面83上に照射されることで、矢印パターン71が表示される。光照射装置103Bは、時差式車両用信号機111の赤色信号灯器121rとともに時差式車両用信号機111に搭載され、LED光源131と、バツ印パターン72に応じた形状を有し、LED光源131からの光を集光可能な集光レンズ133とを備え、LED光源131から出射された光が集光レンズ133により集光されて交差点80の路面83上に照射されることで、バツ印パターン72が表示される。この構成によれば、時差式車両用信号機110,111の信号灯器121b、121rとは別に光照射装置103A,103B(路面描画装置)を搭載するため、既存の信号機への適用が容易となる。
【0056】
(第三実施形態)
図9は、第三実施形態に係る光照射装置203から交差点内に表示された描画パターンを示す図である。第三実施形態の光照射装置203(203A,203B)は、自車61及び対向車62に搭載されている。自車61に搭載された光照射装置203Aは、自車61の車両制御部(図示省略)によって制御される。対向車62に搭載された光照射装置203Bは、対向車62の車両制御部(図示省略)によって制御される。自車61の車両制御部及び対向車62の車両制御部は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信するとともに、自車61及び対向車62の走行情報をインフラ設備に送信することができるように構成されている(路車間通信)。例えば、自車61の車両制御部及び対向車62の車両制御部は、時差式車両用信号機10(11)の制御部5からインフラ情報を受信するとともに、制御部5に対して車両の走行情報を送信することができるように構成されている。
【0057】
図9に示すように、時差式車両用信号機10,11が配置されている交差点80及びその周辺において、自車61の車両制御部は、路車間通信により時差式車両用信号機10,11等から信号機の切り替えタイミング等のインフラ情報を取得する。自車61の車両制御部は、取得したインフラ情報に基づいて、自車61の右折進行を促すことを伝達する矢印パターン71を交差点80内における自車61の前方の路面83上に光照射装置203Aによって青色に表示させる。また、自車61は報音装置4を備え、自車61の右折進行を促す音声を、矢印パターン71の表示に同期して、報音装置4から報音するようにしてもよい。
【0058】
同様に、対向車62の車両制御部は、路車間通信により時差式車両用信号機10,11等から信号機の切り替えタイミング等のインフラ情報を取得する。対向車62の車両制御部は、取得したインフラ情報に基づいて、対向車62の直進を止めることを伝達するバツ印パターン72を交差点80内における対向車62の前方の路面83上に光照射装置203Bによって赤色に表示させる。
【0059】
なお、自車61の車両制御部は、時差式車両用信号機10,11から取得したインフラ情報に加えて、対向車62の車両制御部から時差式車両用信号機11の制御部5へ送信された走行情報に基づいて、自車61の右折進行を促すことを伝達する矢印パターン71の表示タイミングを決定してもよい。具体的には、自車61の車両制御部は、取得した対向車62の走行情報に基づいて、対向車62が進行を停止したと判断された後に、矢印パターン71の表示を開始するようにしてもよい。
【0060】
以上説明したように、第三実施形態に係る光照射装置203Aは、例えば自車61に搭載され、自車61に搭載された光照射装置203Aから矢印パターン71が表示される。そして、光照射装置203Bは、対向車62に搭載され、対向車62に搭載された光照射装置203Bからバツ印パターン72が表示される。この構成によれば、交差点80における既存のインフラ設備を変更することなく、自車61及び対向車62に搭載された光照射装置203A及び光照射装置203Bを用いて、時差式車両用信号機10,11が配置された交差点80における安全な車両通行を支援することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0062】
1:情報伝達システム、2:信号灯器、3(3A,3B):光照射装置、4:報音装置、5:制御部、9:管理センター、10,11:時差式車両用信号機、21b,121b:青色信号灯器、21r,121r:赤色信号灯器、21y,121y:黄色信号灯器、31,131:LED光源、32:拡散レンズ、33,133:集光レンズ、61:自車、62:対向車、63:後続車、71:矢印パターン、72:バツ印パターン、80:交差点、81:自車線、82:対向車線、83:路面、91:集合制御部、103(103A,103B):光照射装置、203(203A,203B):光照射装置