(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022726
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】巻回装置及び巻回素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220131BHJP
H01M 10/0587 20100101ALN20220131BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/0587
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115148
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】畠山 肇
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028BB08
5H028BB15
5H028BB17
5H028CC13
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL08
5H029BJ14
5H029CJ04
5H029CJ07
5H029CJ28
5H029CJ30
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】巻回素子の品質や安全性をより高めることができる巻回装置などを提供する。
【解決手段】電池素子1は、スリット133及び奥側チャック部135を有する巻芯13を用いて製造される。電池素子1を製造する際には、まず、把持部36によって正電極シート4を把持しつつ該正電極シート4を切断する。そして、切断後の正電極シート4の始端部4aの位置を補正しつつ、スリット133に該正電極シート4を始端部4aを先頭にして挿通する。次に、奥側チャック部135によって始端部4aを保持した上で、正電極シート4の巻始め部4bの位置を補正し、その後、巻芯13を回転させることにより正電極シート4等の巻取りを行う。これにより、始端部4a及び巻始め部4bの双方における位置ずれを効果的に減らすことができる。その結果、電池素子1の品質や安全性をより高めることができる。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のスリットを介して並べて設けられた第一芯片及び第二芯片と、前記スリットに配置された少なくとも表面に活物質を有する帯状の電極シートを保持可能なチャック機構とを具備してなる回転可能な巻芯を備え、前記電極シートを前記巻芯に供給した上で該巻芯が回転することにより、少なくとも前記電極シートを巻取る巻回装置であって、
前記巻芯により巻取られた前記電極シートの終端部、及び、前記巻芯により次に巻取られる前記電極シートの始端部の区切りとなる位置で、前記電極シートを切断する電極シート切断手段と、
前記電極シートの幅方向に沿った、前記切断手段による切断後における前記始端部の位置を検出可能な始端部位置検出手段と、
少なくとも前記切断手段による前記電極シートの切断に際し該切断手段よりも上流位置にて前記電極シートを把持可能な把持部を有し、該把持部により把持された前記電極シートを前記始端部を先頭にして前記スリットに挿通可能な電極シート供給手段と、
前記始端部位置検出手段による検出結果に基づき、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記始端部の位置を補正する始端部位置補正手段と、
前記始端部位置補正手段による補正に伴い、前記電極シートのうちの前記スリットから出て前記巻芯の外周に対する巻付き始めの位置に相当する巻始め部にて生じる位置ずれを減らすように、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正する巻始め部位置補正手段とを備え、
前記チャック機構は、前記スリットに対する前記電極シートの挿通方向に沿った前記スリットの中心よりも該挿通方向前方側に位置する奥側チャック部を有し、
前記始端部位置補正手段により前記始端部の位置を補正するとともに、前記電極シート供給手段により前記スリットに前記電極シートを挿通した後、前記奥側チャック部によって前記始端部を保持し、次いで、該始端部を保持した状態で前記巻始め部位置補正手段によって前記巻始め部の位置を補正した上で、前記巻芯が回転することにより少なくとも前記電極シートの巻取りを行うように構成されていることを特徴とする巻回装置。
【請求項2】
前記チャック機構は、前記挿通方向に沿った前記スリットの中心よりも該挿通方向後方側に位置する手前側チャック部を有し、
前記手前側チャック部は、前記巻始め部位置補正手段によって前記巻始め部の位置を補正した後であって、少なくとも前記巻芯の回転による前記電極シートの巻取り開始前から巻取り開始後にかけて前記電極シートを保持するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【請求項3】
所定のスリットを介して並べて設けられた第一芯片及び第二芯片と、前記スリットに配置された少なくとも表面に活物質を有する帯状の電極シートを保持可能なチャック機構とを具備してなる回転可能な巻芯を備え、前記電極シートを前記巻芯に供給した上で該巻芯が回転することにより、少なくとも前記電極シートを巻取る巻回装置であって、
前記巻芯により巻取られた前記電極シートの終端部、及び、前記巻芯により次に巻取られる前記電極シートの始端部の区切りとなる位置で、前記電極シートを切断する電極シート切断手段と、
前記電極シートの幅方向に沿った、前記切断手段による切断後における前記始端部の位置を検出可能な始端部位置検出手段と、
少なくとも前記切断手段による前記電極シートの切断に際し該切断手段よりも上流位置にて前記電極シートを把持可能な把持部を有し、該把持部により把持された前記電極シートを前記始端部を先頭にして前記スリットに挿通可能な電極シート供給手段と、
前記始端部位置検出手段による検出結果に基づき、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記始端部の位置を補正する始端部位置補正手段と、
前記始端部位置補正手段による補正に伴い、前記電極シートのうちの前記スリットから出て前記巻芯の外周に対する巻付き始めの位置に相当する巻始め部にて生じる位置ずれを減らすように、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正する巻始め部位置補正手段とを備え、
前記チャック機構は、前記スリットに対する前記電極シートの挿通方向前方側に位置する奥側チャック部と、前記奥側チャック部よりも前記挿通方向後方側に位置する手前側チャック部とを有し、
前記始端部位置補正手段により前記始端部の位置を補正するとともに、前記電極シート供給手段により前記スリットに前記電極シートを挿通した後、前記奥側チャック部によって前記始端部を保持し、次いで、該始端部を保持した状態で前記巻始め部位置補正手段によって前記巻始め部の位置を補正し、その後、前記手前側チャック部によって前記電極シートを保持した上で、前記巻芯が回転することにより少なくとも前記電極シートの巻取りを行うように構成されていることを特徴とする巻回装置。
【請求項4】
前記巻始め部位置補正手段は、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の巻回装置。
【請求項5】
前記巻始め部位置補正手段は、前記電極シートに対しその長手方向に沿った張力を付与することで、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の巻回装置。
【請求項6】
所定のスリットを介して並べて設けられた第一芯片及び第二芯片と、前記スリットに配置された少なくとも表面に活物質を有する帯状の電極シートを保持可能なチャック機構とを具備してなる回転可能な巻芯を用い、前記電極シートを前記巻芯に供給した上で該巻芯が回転することにより、少なくとも前記電極シートが巻取られてなる巻回素子を製造する際に用いられる巻回素子の製造方法であって、
所定の切断手段によって、前記巻芯により巻取られた前記電極シートの終端部、及び、前記巻芯により次に巻取られる前記電極シートの始端部の区切りとなる位置で、前記電極シートを切断する電極シート切断工程と、
前記電極シートの幅方向に沿った、前記シート切断工程後における前記始端部の位置を検出可能な始端部位置検出工程と、
所定の把持部により、少なくとも前記シート切断工程における前記電極シートの切断に際し前記切断手段よりも上流位置にて前記電極シートを把持するとともに、把持された前記電極シートを前記始端部を先頭にして前記スリットに挿通する電極シート供給工程と、
前記始端部位置検出工程による検出結果に基づき、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記始端部の位置を補正する始端部位置補正工程と、
前記始端部位置補正工程の実行に伴い、前記電極シートのうちの前記スリットから出て前記巻芯の外周に対する巻付き始めの位置に相当する巻始め部にて生じる位置ずれを減らすように、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正する巻始め部位置補正工程と、
前記チャック機構の少なくとも一部を構成し、前記スリットに対する前記電極シートの挿通方向に沿った前記スリットの中心よりも該挿通方向前方側に位置する奥側チャック部によって、前記始端部を保持する奥側チャック工程とを含み、
前記始端部位置補正工程により前記始端部の位置を補正するとともに、前記電極シート供給工程により前記スリットに前記電極シートを挿通した後、前記奥側チャック工程により前記始端部を保持し、次いで、該始端部を保持した状態で前記巻始め部位置補正工程により前記巻始め部の位置を補正した上で、前記巻芯が回転することにより少なくとも前記電極シートの巻取りを行うことを特徴とする巻回素子の製造方法。
【請求項7】
前記チャック機構の一部を構成し、前記挿通方向に沿った前記スリットの中心よりも該挿通方向後方側に位置する手前側チャック部によって、少なくとも前記電極シートを保持する手前側チャック工程を含み、
前記手前側チャック工程では、前記巻始め部位置補正工程の後であって、少なくとも前記巻芯の回転による前記電極シートの巻取り開始前から巻取り開始後にかけて前記電極シートが保持されることを特徴とする請求項6に記載の巻回素子の製造方法。
【請求項8】
所定のスリットを介して並べて設けられた第一芯片及び第二芯片と、前記スリットに配置された少なくとも表面に活物質を有する帯状の電極シートを保持可能なチャック機構とを具備してなる回転可能な巻芯を用い、前記電極シートを前記巻芯に供給した上で該巻芯が回転することにより、少なくとも前記電極シートが巻取られてなる巻回素子を製造する際に用いられる巻回素子の製造方法であって、
所定の切断手段によって、前記巻芯により巻取られた前記電極シートの終端部、及び、前記巻芯により次に巻取られる前記電極シートの始端部の区切りとなる位置で、前記電極シートを切断する電極シート切断工程と、
前記電極シートの幅方向に沿った、前記シート切断工程後における前記始端部の位置を検出可能な始端部位置検出工程と、
所定の把持部により、少なくとも前記シート切断工程における前記電極シートの切断に際し前記切断手段よりも上流位置にて前記電極シートを把持するとともに、把持された前記電極シートを前記始端部を先頭にして前記スリットに挿通する電極シート供給工程と、
前記始端部位置検出工程による検出結果に基づき、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記始端部の位置を補正する始端部位置補正工程と、
前記始端部位置補正工程の実行に伴い、前記電極シートのうちの前記スリットから出て前記巻芯の外周に対する巻付き始めの位置に相当する巻始め部にて生じる位置ずれを減らすように、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正する巻始め部位置補正工程と、
前記チャック機構の一部を構成し、前記スリットに対する前記電極シートの挿通方向前方側に位置する奥側チャック部によって、前記始端部を保持する奥側チャック工程と、
前記チャック機構の一部を構成し、前記奥側チャック部よりも前記挿通方向後方側に位置する手前側チャック部によって、前記電極シートを保持する手前側チャック工程とを含み、
前記始端部位置補正工程により前記始端部の位置を補正するとともに、前記電極シート供給工程により前記スリットに前記電極シートを挿通した後、前記奥側チャック工程により前記始端部を保持し、次いで、該始端部を保持した状態で前記巻始め部位置補正工程によって前記巻始め部の位置を補正し、その後、前記手前側チャック工程により前記電極シートを保持した上で、前記巻芯が回転することにより少なくとも前記電極シートの巻取りを行うことを特徴とする巻回素子の製造方法。
【請求項9】
前記巻始め部位置補正工程では、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の巻回素子の製造方法。
【請求項10】
前記巻始め部位置補正工程では、前記電極シートに対しその長手方向に沿った張力を付与することで、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の巻回素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二次電池等に内蔵される巻回素子を得るための巻回装置、及び、巻回素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばリチウムイオン電池等の二次電池に用いられる巻回素子は、金属シートの表面に活物質が塗布されてなる2枚の電極シートが、絶縁素材からなるセパレータシートを介して重ね合わされた状態で巻回されることにより製造される。
【0003】
巻回素子を製造するための巻回装置は、電極シート及びセパレータシートを巻取るための回転可能な巻芯を備えている。巻芯としては、例えば、該巻芯の回転軸方向に延びる2本の芯片と、これら芯片間に形成されたスリットと、該スリットに配置された電極シート等を保持するためのチャック機構とを備えたものが知られている(特許文献1等参照)。
【0004】
巻回素子を製造するにあたっては、まず、ロール状に巻回された原反から、電極シート及びセパレータシートが巻芯へと供給される。ここで、スリットを有する巻芯に対し電極シートを供給する手法としては、所定の把持部によって電極シートを把持した上で、把持部を巻芯へと接近移動させることにより、電極シートをスリットに挿通する手法が考えられる。
【0005】
具体的には、まず、巻芯により既に巻取られた電極シートの終端部と次に巻取られる電極シートの始端部との区切りとなる位置にて電極シートを切断する。電極シートの切断は、前記把持部によって、次に巻き取られる電極シートのうちの始端部よりも上流側の部分を把持した上で行われる。電極シートの切断後、把持部が巻芯へと接近移動することにより、電極シートをその始端部を先頭にして巻芯のスリットへと挿通する。これにより、巻芯へと電極シートが供給される。尚、巻芯に対する電極シートの供給後、前記チャック機構によって電極シートを保持した上で巻芯が回転することにより、巻芯の外周に電極シート等が巻付いていき、電極シート等が巻取られていくこととなる。
【0006】
ところで、電極シート自体に湾曲(幅方向への反り)が生じていることがある。近年では、エネルギー密度の増大を図るべく、塗布される活物質の量を増やしつつ該活物質をプレスしてなる電極シートが提案されているが、このような電極シートでは湾曲が特に生じやすい。
【0007】
上記の湾曲は、電極シートに張力を加えることで矯正可能な程度のものであるが、電極シートを切断したときには、少なくとも電極シートにおける始端部はフリーな状態となって張力の抜けた状態となる。そのため、電極シートの切断後には、電極シートの始端部及びこれに連続する部分が湾曲して、電極シートの始端部において該シートの幅方向に沿った位置ずれが生じるおそれがある。このような位置ずれが生じた状態のまま、上記のように巻芯へと電極シートを供給すると、得られた巻回素子において電極シートの始端部が該シートの幅方向端縁からはみ出す等の事態が発生し、製品品質や安全性の低下といった不具合を招くことがある。
【0008】
そこで、上記不具合の発生を防止すべく、電極シートの始端部の位置ずれを補正した上で、巻芯に電極シートを供給することが考えられる(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-184160号公報
【特許文献2】特開2012-188278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、電極シートの始端部の位置ずれを補正したとしても、電極シートのうちのスリットから出て巻芯の外周に巻付き始める部分(「巻始め部」と称す)は、電極シートの湾曲の影響を受けて、電極シートの幅方向に沿って位置ずれした状態となり得る。巻始め部に位置ずれが生じていると、得られた巻回素子において電極シートが適正位置に配置されないこととなり、製品品質や安全性の低下といった不具合を招くおそれがある。
【0011】
特に近年では、二次電池などの大型化に対応すべく、大型の巻芯を用いることがあるところ、
図23に示すように、大型の巻芯13におけるスリットの幅Wは比較的大きなもの(例えば200mm以上)となる。そのため、電極シート4の始端部4aの位置ずれを補正したとしても、
図24に示すように、スリットに電極シート4を挿通した状態において、巻始め部4bの位置ずれ量Xが大きなものとなりやすい。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電極シートの始端部及び巻始め部の双方における位置ずれを効果的に減らすことができ、巻回素子の品質や安全性をより高めることができる巻回装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0014】
手段1.所定のスリットを介して並べて設けられた第一芯片及び第二芯片と、前記スリットに配置された少なくとも表面に活物質を有する帯状の電極シートを保持可能なチャック機構とを具備してなる回転可能な巻芯を備え、前記電極シートを前記巻芯に供給した上で該巻芯が回転することにより、少なくとも前記電極シートを巻取る巻回装置であって、
前記巻芯により巻取られた前記電極シートの終端部、及び、前記巻芯により次に巻取られる前記電極シートの始端部の区切りとなる位置で、前記電極シートを切断する電極シート切断手段と、
前記電極シートの幅方向に沿った、前記切断手段による切断後における前記始端部の位置を検出可能な始端部位置検出手段と、
少なくとも前記切断手段による前記電極シートの切断に際し該切断手段よりも上流位置にて前記電極シートを把持可能な把持部を有し、該把持部により把持された前記電極シートを前記始端部を先頭にして前記スリットに挿通可能な電極シート供給手段と、
前記始端部位置検出手段による検出結果に基づき、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記始端部の位置を補正する始端部位置補正手段と、
前記始端部位置補正手段による補正に伴い、前記電極シートのうちの前記スリットから出て前記巻芯の外周に対する巻付き始めの位置に相当する巻始め部にて生じる位置ずれを減らすように、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正する巻始め部位置補正手段とを備え、
前記チャック機構は、前記スリットに対する前記電極シートの挿通方向に沿った前記スリットの中心よりも該挿通方向前方側に位置する奥側チャック部を有し、
前記始端部位置補正手段により前記始端部の位置を補正するとともに、前記電極シート供給手段により前記スリットに前記電極シートを挿通した後、前記奥側チャック部によって前記始端部を保持し、次いで、該始端部を保持した状態で前記巻始め部位置補正手段によって前記巻始め部の位置を補正した上で、前記巻芯が回転することにより少なくとも前記電極シートの巻取りを行うように構成されていることを特徴とする巻回装置。
【0015】
上記手段1によれば、巻回素子を製造する際には、まず、把持部によって電極シートを把持した状態で、切断手段によって該電極シートが切断される。次いで、始端部位置補正手段によって電極シートの始端部(被切断部に相当する)の位置が補正されるとともに、把持部に把持された電極シートがその始端部を先頭にして巻芯のスリットに挿通される。尚、スリットに対する電極シートの挿通後に、前記始端部の位置を補正してもよい。次いで、奥側チャック部によって前記始端部が保持される。その後、前記始端部を保持した状態で、該始端部の位置補正に伴う電極シートの巻始め部の位置ずれを減らすように、該巻始め部の位置が補正される。その上で、巻芯が回転することにより、少なくとも電極シートの巻取りが行われる。
【0016】
このように上記手段1によれば、位置補正のなされた前記始端部を保持して該始端部の移動を規制した上で、該始端部の位置補正に伴う位置ずれを減らすように、前記巻始め部の位置が補正される。従って、電極シートの始端部及び巻始め部の双方における位置ずれを効果的に減らすことができる。その結果、得られた巻回素子における品質や安全性を高めることができる。
【0017】
また、上記手段1によれば、奥側チャック部は、スリットに対する電極シートの挿通方向に沿ったスリットの中心よりも該挿通方向前方側に位置している。つまり、奥側チャック部は、スリットにおける電極シートの挿通入口から見て、スリットの中心よりも奥に位置している。従って、電極シートの始端部をスリットのより奥側に配置させた状態で保持することができ、スリットに挿通される電極シート、つまり、最終的に巻回素子の最内周部に配置される電極シートをより長いものとすることができる。その結果、巻回素子の最内周部において充放電可能な領域を増やすことができ、電池容量の増大を図ることができる。
【0018】
手段2.前記チャック機構は、前記挿通方向に沿った前記スリットの中心よりも該挿通方向後方側に位置する手前側チャック部を有し、
前記手前側チャック部は、前記巻始め部位置補正手段によって前記巻始め部の位置を補正した後であって、少なくとも前記巻芯の回転による前記電極シートの巻取り開始前から巻取り開始後にかけて前記電極シートを保持するように構成されていることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0019】
上記手段2によれば、チャック機構は、スリットに対する電極シートの挿通方向に沿ったスリットの中心よりも該挿通方向後方側に位置する手前側チャック部を備えており、該手前側チャック部によって、巻始め部の位置補正後であって少なくとも電極シートの巻取り開始前から巻取り開始後にかけて、電極シートが保持される。従って、電極シートにおける巻始め部の近傍部分を保持して巻始め部の移動を効果的に規制した状態で、電極シートの巻取りを開始することができる。これにより、得られた巻回素子において、電極シートをより確実に適正位置に配置させることができ、巻回素子における品質や安全性を一層高めることができる。
【0020】
手段3.所定のスリットを介して並べて設けられた第一芯片及び第二芯片と、前記スリットに配置された少なくとも表面に活物質を有する帯状の電極シートを保持可能なチャック機構とを具備してなる回転可能な巻芯を備え、前記電極シートを前記巻芯に供給した上で該巻芯が回転することにより、少なくとも前記電極シートを巻取る巻回装置であって、
前記巻芯により巻取られた前記電極シートの終端部、及び、前記巻芯により次に巻取られる前記電極シートの始端部の区切りとなる位置で、前記電極シートを切断する電極シート切断手段と、
前記電極シートの幅方向に沿った、前記切断手段による切断後における前記始端部の位置を検出可能な始端部位置検出手段と、
少なくとも前記切断手段による前記電極シートの切断に際し該切断手段よりも上流位置にて前記電極シートを把持可能な把持部を有し、該把持部により把持された前記電極シートを前記始端部を先頭にして前記スリットに挿通可能な電極シート供給手段と、
前記始端部位置検出手段による検出結果に基づき、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記始端部の位置を補正する始端部位置補正手段と、
前記始端部位置補正手段による補正に伴い、前記電極シートのうちの前記スリットから出て前記巻芯の外周に対する巻付き始めの位置に相当する巻始め部にて生じる位置ずれを減らすように、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正する巻始め部位置補正手段とを備え、
前記チャック機構は、前記スリットに対する前記電極シートの挿通方向前方側に位置する奥側チャック部と、前記奥側チャック部よりも前記挿通方向後方側に位置する手前側チャック部とを有し、
前記始端部位置補正手段により前記始端部の位置を補正するとともに、前記電極シート供給手段により前記スリットに前記電極シートを挿通した後、前記奥側チャック部によって前記始端部を保持し、次いで、該始端部を保持した状態で前記巻始め部位置補正手段によって前記巻始め部の位置を補正し、その後、前記手前側チャック部によって前記電極シートを保持した上で、前記巻芯が回転することにより少なくとも前記電極シートの巻取りを行うように構成されていることを特徴とする巻回装置。
【0021】
上記手段3によれば、上記手段1と同様に、電極シートの始端部の位置を補正するとともに、位置の補正された該始端部を保持して該始端部の移動を規制した上で、該始端部の位置補正に伴う位置ずれを減らすように、電極シートの巻始め部の位置が補正される。従って、電極シートの始端部及び巻始め部の双方における位置ずれを効果的に減らすことができる。その結果、得られた巻回素子における品質や安全性を高めることができる。
【0022】
また、上記手段3によれば、チャック機構は、奥側チャック部よりもシート挿通方向後方側に位置する手前側チャック部を有しており、電極シートの巻始め部の位置補正後に手前側チャック部によって電極シートを保持した状態で電極シートの巻取りを開始することができる。従って、手前側チャック部によって電極シートにおける巻始め部側に位置する部分を保持して巻始め部の移動を十分に規制した状態で、電極シートの巻取りを開始することができる。これにより、得られた巻回素子において、電極シートをより確実に適正位置に配置させることができ、巻回素子における品質や安全性をより高めることができる。
【0023】
手段4.前記巻始め部位置補正手段は、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正するように構成されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の巻回装置。
【0024】
上記手段4によれば、電極シートの始端部の位置補正を行うときと同様に、把持部の位置を調節することで、電極シートの巻始め部の位置を補正することができる。すなわち、電極シートの始端部及び巻始め部における位置補正をそれぞれ共通の機構(把持部)を用いて行うことができる。これにより、巻回装置の簡素化を図ることができ、装置の製造やメンテナンスに係るコストの低減を図ることができる。
【0025】
また、把持部を利用することで、電極シートの幅方向に沿った前記巻始め部の位置補正をより精度よく行うことができる。これにより、得られた巻回素子において、電極シートをより確実に適正位置に配置させることができ、巻回素子における品質や安全性をより一層高めることができる。
【0026】
手段5.前記巻始め部位置補正手段は、前記電極シートに対しその長手方向に沿った張力を付与することで、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正するように構成されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の巻回装置。
【0027】
上記手段5によれば、電極シートの巻始め部の位置補正を比較的簡便な手法で行うことができ、巻始め部位置補正手段の構成を複雑化させずに済む。これにより、巻回装置の簡素化を図ることができ、装置の製造やメンテナンスに係るコストの低減を図ることができる。
【0028】
また、上記手段5によれば、電極シートに対する張力の付与が、電極シートの湾曲を解消する方向に働く。これにより、巻回素子の品質や安全性の向上をより確実に図ることができる。
【0029】
手段6.所定のスリットを介して並べて設けられた第一芯片及び第二芯片と、前記スリットに配置された少なくとも表面に活物質を有する帯状の電極シートを保持可能なチャック機構とを具備してなる回転可能な巻芯を用い、前記電極シートを前記巻芯に供給した上で該巻芯が回転することにより、少なくとも前記電極シートが巻取られてなる巻回素子を製造する際に用いられる巻回素子の製造方法であって、
所定の切断手段によって、前記巻芯により巻取られた前記電極シートの終端部、及び、前記巻芯により次に巻取られる前記電極シートの始端部の区切りとなる位置で、前記電極シートを切断する電極シート切断工程と、
前記電極シートの幅方向に沿った、前記シート切断工程後における前記始端部の位置を検出可能な始端部位置検出工程と、
所定の把持部により、少なくとも前記シート切断工程における前記電極シートの切断に際し前記切断手段よりも上流位置にて前記電極シートを把持するとともに、把持された前記電極シートを前記始端部を先頭にして前記スリットに挿通する電極シート供給工程と、
前記始端部位置検出工程による検出結果に基づき、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記始端部の位置を補正する始端部位置補正工程と、
前記始端部位置補正工程の実行に伴い、前記電極シートのうちの前記スリットから出て前記巻芯の外周に対する巻付き始めの位置に相当する巻始め部にて生じる位置ずれを減らすように、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正する巻始め部位置補正工程と、
前記チャック機構の少なくとも一部を構成し、前記スリットに対する前記電極シートの挿通方向に沿った前記スリットの中心よりも該挿通方向前方側に位置する奥側チャック部によって、前記始端部を保持する奥側チャック工程とを含み、
前記始端部位置補正工程により前記始端部の位置を補正するとともに、前記電極シート供給工程により前記スリットに前記電極シートを挿通した後、前記奥側チャック工程により前記始端部を保持し、次いで、該始端部を保持した状態で前記巻始め部位置補正工程により前記巻始め部の位置を補正した上で、前記巻芯が回転することにより少なくとも前記電極シートの巻取りを行うことを特徴とする巻回素子の製造方法。
【0030】
上記手段6によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0031】
手段7.前記チャック機構の一部を構成し、前記挿通方向に沿った前記スリットの中心よりも該挿通方向後方側に位置する手前側チャック部によって、少なくとも前記電極シートを保持する手前側チャック工程を含み、
前記手前側チャック工程では、前記巻始め部位置補正工程の後であって、少なくとも前記巻芯の回転による前記電極シートの巻取り開始前から巻取り開始後にかけて前記電極シートが保持されることを特徴とする手段6に記載の巻回素子の製造方法。
【0032】
上記手段7によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0033】
手段8.所定のスリットを介して並べて設けられた第一芯片及び第二芯片と、前記スリットに配置された少なくとも表面に活物質を有する帯状の電極シートを保持可能なチャック機構とを具備してなる回転可能な巻芯を用い、前記電極シートを前記巻芯に供給した上で該巻芯が回転することにより、少なくとも前記電極シートが巻取られてなる巻回素子を製造する際に用いられる巻回素子の製造方法であって、
所定の切断手段によって、前記巻芯により巻取られた前記電極シートの終端部、及び、前記巻芯により次に巻取られる前記電極シートの始端部の区切りとなる位置で、前記電極シートを切断する電極シート切断工程と、
前記電極シートの幅方向に沿った、前記シート切断工程後における前記始端部の位置を検出可能な始端部位置検出工程と、
所定の把持部により、少なくとも前記シート切断工程における前記電極シートの切断に際し前記切断手段よりも上流位置にて前記電極シートを把持するとともに、把持された前記電極シートを前記始端部を先頭にして前記スリットに挿通する電極シート供給工程と、
前記始端部位置検出工程による検出結果に基づき、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記始端部の位置を補正する始端部位置補正工程と、
前記始端部位置補正工程の実行に伴い、前記電極シートのうちの前記スリットから出て前記巻芯の外周に対する巻付き始めの位置に相当する巻始め部にて生じる位置ずれを減らすように、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正する巻始め部位置補正工程と、
前記チャック機構の一部を構成し、前記スリットに対する前記電極シートの挿通方向前方側に位置する奥側チャック部によって、前記始端部を保持する奥側チャック工程と、
前記チャック機構の一部を構成し、前記奥側チャック部よりも前記挿通方向後方側に位置する手前側チャック部によって、前記電極シートを保持する手前側チャック工程とを含み、
前記始端部位置補正工程により前記始端部の位置を補正するとともに、前記電極シート供給工程により前記スリットに前記電極シートを挿通した後、前記奥側チャック工程により前記始端部を保持し、次いで、該始端部を保持した状態で前記巻始め部位置補正工程によって前記巻始め部の位置を補正し、その後、前記手前側チャック工程により前記電極シートを保持した上で、前記巻芯が回転することにより少なくとも前記電極シートの巻取りを行うことを特徴とする巻回素子の製造方法。
【0034】
上記手段8によれば、上記手段3と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0035】
手段9.前記巻始め部位置補正工程では、前記把持部の位置を調節することで、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正することを特徴とする手段6乃至8のいずれかに記載の巻回素子の製造方法。
【0036】
上記手段9によれば、上記手段4と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0037】
手段10.前記巻始め部位置補正工程では、前記電極シートに対しその長手方向に沿った張力を付与することで、前記幅方向に沿った前記巻始め部の位置を補正することを特徴とする手段6乃至8のいずれかに記載の巻回素子の製造方法。
【0038】
上記手段10によれば、上記手段5と同様の作用効果が奏されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】電池素子の構成を示すための断面模式図である。
【
図4】チャック機構によって各種シートを保持した状態における巻芯の断面模式図である。
【
図5】正電極シート供給装置の概略構成を示す模式図である。
【
図7】退避位置に配置された電極シート供給機構などを示す模式図である。
【
図8】正電極シートを巻芯へと供給するときにおいて、スリットに対し正電極シート等を挿通する際の電極シート供給機構などを示す模式図である。
【
図9】巻芯の回転により各種シートの巻取りが開始された状態を示す模式図である。
【
図10】巻芯に対する正電極シートの供給後において、巻芯から離間する方向に移動する電極シート供給機構などを示す模式図である。
【
図11】正電極シートを切断する際における電極シート供給機構などを示す模式図である。
【
図12】切断直後の正電極シート等を示す平面模式図である。
【
図13】スリットに対する挿通前の正電極シート等を示す平面模式図である。
【
図14】始端部の位置が補正されつつ、スリットに挿通された正電極シート等を示す平面模式図である。
【
図15】巻始め部の位置が補正された正電極シート等を示す平面模式図である。
【
図16】巻取開始時における正電極シートや巻芯を示す平面模式図である。
【
図17】チャック機構の開放後における正電極シートの始端部などを示す一部破断平面模式図である。
【
図18】正電極シートの位置補正に係る工程を示すフローチャートである。
【
図19】別の実施形態において、張力の付与により巻始め部の位置が補正された正電極シート等を示す平面模式図である。
【
図20】別の実施形態におけるチャック機構などを示す断面模式図である。
【
図21】別の実施形態において、チャック機構によって各種シートを保持した状態における巻芯の断面模式図である。
【
図22】別の実施形態におけるチャック機構などを示す断面模式図である。
【
図23】従来技術を説明するための正電極シート等の平面模式図である。
【
図24】従来技術を説明するための正電極シート等の平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態の巻回装置によって得られる巻回素子としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
【0041】
図1に示すように、リチウムイオン電池素子1(以下、単に「電池素子1」という)は、2枚のセパレータシート2,3を介して、正電極シート4及び負電極シート5が重ね合わされた状態で巻回されることで製造される。本実施形態では、正電極シート4及び負電極シート5がそれぞれ「電極シート」に相当する。尚、
図1においては、説明の便宜上、セパレータシート2,3及び電極シート4,5(以下、これらを総称する場合は「各種シート2~5」という)の相互の間隔をあけて示している。
【0042】
セパレータシート2,3は、それぞれ同一の幅を有する帯状をなしており、異なる電極シート4,5同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく、ポリプロピレン(PP)等の絶縁体により構成されている。
【0043】
各電極シート4,5は、薄板状の金属シートよりなり、セパレータシート2,3と略同一の幅を有している。また、各電極シート4,5の表裏両面には活物質が塗布されている。正電極シート4には例えばアルミニウム箔シートが用いられ、その表裏両面に正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)が塗布されている。負電極シート5には例えば銅箔シートが用いられ、その表裏両面に負極活物質(例えば、活性炭等)が塗布されている。そして、活物質を介して、両電極シート4,5間におけるイオン交換ができるようになっている。また、正電極シート4の幅方向一端縁からは図示しない複数の正極リードが延出するとともに、負電極シート5の幅方向他端縁からは図示しない複数の負極リードが延出している。
【0044】
リチウムイオン電池を得るに際しては、電池素子1が金属製で筒状をなす電池容器(図示せず)内に配設されるとともに、前記正極リード及び負極リードがそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正極リードを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負極リードを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品が前記電池容器の両端開口に塞ぐように設けられることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
【0045】
次に、電池素子1を製造するための巻回装置10について説明する。
図2に示すように、巻回装置10は、巻回部11を備えている。巻回部11は、図示しない駆動機構により回転可能に設けられた2枚の相対向する円盤状のテーブルを具備するターレット12と、該ターレット12の回転方向に180°間隔で設けられた2つの巻芯13,14と、電池素子1の取外を行うための取外装置15とを備えている。また、図示は省略するが、巻回部11は、セパレータシート2,3を切断するためのセパレータカッタ、巻取後の各種シート2~5がばらけるのを防ぐための押えローラ、及び、各種シート2~5の巻止めを行うためのテープ貼付機構なども備えている。
【0046】
次いで、巻芯13,14の構成について説明する。尚、巻芯13,14は同様の構成を備えている。そのため、以下では、基本的には巻芯13のみについて説明し、必要な場合に限り巻芯14に関する説明を行う。
【0047】
巻芯13は、ターレット12を構成する一方のテーブルに対し出没可能に構成されている。巻芯13は、
図3に示すように、それぞれ自身の回転軸方向(
図3の紙面直交方向)に沿って延びる第一芯片131及び第二芯片132を備えている。各芯片131,132は、各種シート2~5を挿通可能なスリット133を介して並べて設けられている。尚、本実施形態における巻芯13は、比較的大径であり、該巻芯13の径方向に沿ったスリット133の幅(
図3の左右方向の幅)は、比較的大きなもの(例えば200mm以上)となっている。
【0048】
また、巻芯13は、スリット133内において、各種シート2~5を保持するためのチャック機構134を備えている。チャック機構134は、奥側チャック部135及び手前側チャック部136を有している。
【0049】
各チャック部135,136は、それぞれ断面が略六角形状で内部に空間を有するチューブ137と、該チューブ137に連結されたエア供給排出機構(不図示)とを具備している。
【0050】
チューブ137は、第一芯片131側に位置する接着部137aを有しており、この接着部137aが第一芯片131に接着されている。また、チューブ137は、第二芯片132と相対向する挟持部137bを有している。
【0051】
前記エア供給排出機構は、チューブ137の内部空間に対するエアの供給、及び、該内部空間からのエアの排出を行う。チューブ137の内部空間にエアが供給されることで、チューブ137が膨張して、第一芯片131の凹部131a内に位置していた挟持部137bが第二芯片132側に向けて突出する。これにより、チャック機構134によって、スリット133に挿通された各種シート2~5を保持可能となっている(
図4参照)。尚、
図4では、各種シート2~5を実際よりも厚肉で示している。一方、チューブ137の内部空間のエアが排出されることで、チューブ137が収縮し、挟持部137bが凹部131a内に収容される。これにより、各種シート2~5の保持が解除されるようになっている。
【0052】
また、後述するように、巻芯13(14)へと各電極シート4,5を供給する際には、スリット133に対し各電極シート4,5が挿通されるところ、奥側チャック部135は、スリット133に対する各電極シート4,5の挿通方向(
図3中、太線矢印で示す方向)に沿ったスリット133の中心CLよりも該挿通方向前方側に位置している。一方、手前側チャック部136は、前記中心CLよりも前記挿通方向後方側に位置している。
【0053】
さらに、巻芯13,14は、ターレット12が回転することにより、巻回ポジションP1及び取外しポジションP2(それぞれ
図2参照)間を旋回移動可能に構成されている。
【0054】
巻回ポジションP1は、各種シート2~5の巻取りを行う際に巻芯13(14)が配置されるポジションである。取外しポジションP2は、巻取後の各種シート2~5、すなわち電池素子1の取外しを行う際に、巻芯13(14)が配置されるポジションである。前記取外装置15は、取外しポジションP2に対応して設置されている。
【0055】
また、巻回装置10は、セパレータシート2を供給する第一セパレータ供給装置と、セパレータシート3を供給する第二セパレータ供給装置と、正電極シート4を供給する正電極シート供給装置と、負電極シート5を供給する負電極シート供給装置とを備えている(
図2においてはいずれも不図示)。各供給装置は、ロール状に巻回された原反から供給すべきシート(例えば、正電極シート供給装置であれば、正電極シート4)を引き出して、該シートを巻回ポジションP1に配置された巻芯13(14)へと供給する。
【0056】
次いで、各供給装置を代表して、正電極シート供給装置30の構成について
図5等を参照しつつ説明する。尚、負電極シート供給装置は、負電極シート5を対象として動作する点を除いて、正電極シート供給装置30と同様の構成を備えている。また、各セパレータ供給装置は、セパレータシート2,3を対象として動作するものであり、正電極シート供給装置30と同様に、それぞれ後述する張力付与機構33や蛇行補正機構35などを備えている。
【0057】
正電極シート供給装置30の最上流部には、正電極シート4がロール状に巻回された原反31が設けられている。原反31は、支持軸32によって自由回転可能な状態で支持されている。
【0058】
支持軸32から巻芯13(14)にかけての正電極シート4の供給経路には、正電極シート4に張力を付与するための張力付与機構33が設けられている。張力付与機構33は、一対のローラ33a,33bと、両ローラ33a,33b間に設けられた段差ローラ33cとを具備している。段差ローラ33cは、トルク制御された所定のサーボモータ(図示せず)により動作制御されるものであり、段差ローラ33cの動作を制御することで、正電極シート4に付与される張力を変更可能となっている。また、正電極シート4に張力が付与されることで、正電極シート4の弛み防止等が図られている。尚、本実施形態では、正電極シート4に対し常に一定の張力が付与されるように構成されている。
【0059】
さらに、正電極シート4の供給経路における張力付与機構33よりも下流には、電極シート供給機構34が設けられている。本実施形態では、電極シート供給機構34が「電極シート供給手段」を構成する。
【0060】
電極シート供給機構34は、正電極シート4の供給経路に沿って移動可能に構成されている。より詳しくは、電極シート供給機構34は、図示しないアクチュエータ(例えばモータ)により、巻芯13(14)から相当距離離間した退避位置(
図7参照)と、巻芯13(14)に最も接近した最接近位置(
図8,9参照)との間を往復移動可能に構成されている。電極シート供給機構34が前記最接近位置に配置されることで、次述する把持部36により把持された正電極シート4が前記スリット133に挿通される。本実施形態において、正電極シート4は、その始端部4aがスリット133の奥の位置(より詳しくは、奥側チャック部135を超える位置)まで挿通される(
図4参照)。
【0061】
電極シート供給機構34は、蛇行補正機構35、把持部36、位置補正機構37及び制御装置38を備えている。本実施形態では、位置補正機構37及び制御装置38が「始端部位置補正手段」及び「巻始め部位置補正手段」を構成する。
【0062】
蛇行補正機構35は、巻芯13(14)に供給される正電極シート4の蛇行を防ぐための機構である。蛇行補正機構35は、正電極シート4の幅方向の位置を検出するエッジセンサ351と、該エッジセンサ351の検出結果を基に正電極シート4の幅方向の位置ずれを補正する補正部352と、該補正部352を動作させるための蛇行補正用アクチュエータ(不図示)とを備えている。エッジセンサ351により検出された正電極シート4の幅方向位置に関する情報は、制御装置38へと出力される。
【0063】
補正部352は、上下一対のローラ352a,352bを備えており、前記補正用アクチュエータによって、下側のローラ352bの下部中央のピボットセンターαを回動中心として回動可能に構成されている(
図6参照)。制御装置38が補正用アクチュエータを制御し、補正部352が回動することで、正電極シート4の位置ずれ(蛇行)が補正される。
【0064】
把持部36は、後述する切断機構39よりも上流位置にて正電極シート4を把持するための機構である。把持部36は、少なくとも巻芯13(14)に対する正電極シート4の供給時や正電極シート4の切断時に、正電極シート4を把持する。把持部36は開閉可能に構成されており、把持部36の開閉動作は、図示しない開閉用アクチュエータ(例えばモータやシリンダ)により行われる。
【0065】
位置補正機構37は、正電極シート4の幅方向に沿った、正電極シート4の始端部4aや巻始め部4b(それぞれ
図14等参照)の位置を補正するための機構である。尚、「巻始め部4b」とは、正電極シート4のうち、前記スリット133から出て巻芯13(14)の外周に対する巻付き始めの位置に相当する。位置補正機構37は、平行光レーザセンサ371、補正用アクチュエータ372及び支持機構373を備えている。本実施形態では、平行光レーザセンサ371が「始端部位置検出手段」を構成する。
【0066】
平行光レーザセンサ371は、正電極シート4の幅方向に沿った、該正電極シート4の始端部4aの位置を検出するための装置である。平行光レーザセンサ371は、正電極シート4の始端部4aよりも僅かに上流側にて、正電極シート4の幅方向一方側の側縁部4sに対応して配置されている(
図13参照)。平行光レーザセンサ371は、正電極シート4に対し所定幅(例えば7mm幅)のレーザ光線を照射するとともに、正電極シート4によるレーザ光線の遮蔽の程度に基づき、正電極シート4の幅方向に沿った始端部4aの位置を検出する。この始端部4aの位置に関する情報は、制御装置38へと出力される。
【0067】
補正用アクチュエータ372は、把持部36を動作させるための装置であり、例えばモータやシリンダなどによって構成されている。補正用アクチュエータ372が動作することで、把持部36が正電極シート4の幅方向に沿ってスライド変位可能となっている。そして、正電極シート4を把持した把持部36がスライド変位することにより、正電極シート4におけるその幅方向の位置を調節可能となっている。
【0068】
支持機構373は、正電極シート4の先端側を支持するための機構である。支持機構373は、正電極シート4の先端側を下側から支える支持部373aや、該支持部373aを上下動させるための図示しない駆動部(例えばエアシリンダ等)を備えている。
【0069】
制御装置38は、正電極シート供給装置30を構成する各部の動作を制御するための装置である。制御装置38は、例えば、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、各種データを一時的に記憶するRAM、情報を記憶するための記憶媒体(例えばハードディスク等)などを備えたコンピュータシステムにより構成されている。
【0070】
制御装置38は、巻芯13(14)による各種シート2~5の巻取時に、蛇行補正機構35を制御することで、正電極シート4の蛇行補正を行う。より具体的には、制御装置38は、各種シート2~5の巻取時、随時、エッジセンサ351により検出された正電極シート4の幅方向位置に基づき、補正部352の駆動量(駆動角度)を算出する。そして、制御装置38は、算出した駆動量に相当する角度分だけ補正部352を傾けるように前記蛇行補正用アクチュエータを制御することにより、正電極シート4の蛇行を補正する。
【0071】
さらに、制御装置38は、位置補正機構37を制御することで、正電極シート4の幅方向に沿った始端部4a及び巻始め部4bのそれぞれの位置を補正する。始端部4aの位置補正は、スリット133に対し正電極シート4を挿通する際に行われ、巻始め部4bの位置補正は、スリット133に対する各種シート2~5の挿通後であって各種シート2~5の巻取開始前に行われる。巻始め部4bの位置補正は、主として、始端部4aの位置補正に伴う、予め設定された基準位置Sに対する巻始め部4bの側縁部4sの位置ずれを補正するために行われる(
図14等参照)。
【0072】
まず、始端部4aの位置補正について説明すると、初めに制御装置38は、平行光レーザセンサ371から出力された情報(始端部4aの位置に関する情報)に基づき、把持部36の位置に関する補正量を算出する。そして、制御装置38は、算出した補正量に基づき、補正用アクチュエータ372の動作を制御する。これにより、把持部36が前記補正量に応じた距離だけ正電極シート4の幅方向に沿ってスライド変位し、その結果、該把持部36に把持された正電極シート4の始端部4aの位置が補正される。
【0073】
次に、巻始め部4bの位置補正について説明すると、制御装置38は、把持部36が元の位置(始端部4aの位置補正を行う前の位置)に戻るように、補正用アクチュエータ372の動作を制御する。これにより、該把持部36に把持された正電極シート4における巻始め部4bの位置が補正されて、始端部4aの位置補正に伴う巻始め部4bの位置ずれを減らした状態とすることが可能となる。
【0074】
尚、本実施形態では、上記の通り、スリット133の幅は比較的大きなものであり、また、正電極シート4はスリット133の奥の位置まで挿通されるようになっている。そのため、結果的に、巻始め部4bは、始端部4aから比較的大きく離れた位置に存在することとなり、正電極シート4の始端側にて生じる湾曲の影響が巻始め部4bには及びにくい状態となる。従って、正電極シート4の切断後であって始端部4aの位置補正前の段階において、巻始め部4bの側縁部4sは、基準位置S上又はその近傍位置に配置されていることが多く、基準位置Sに対する巻始め部4b(の側縁部4s)の位置ずれ量は十分に小さなものとなりやすい。そのため、ほとんどの場合、把持部36を元の位置に戻すことで、巻始め部4bを、始端部4aの位置補正を行う前の状態、つまり、基準位置S上又はその近傍位置に配置される状態に戻すことができる。故に、本実施形態では、巻始め部4bの位置補正が、把持部36を元の位置に戻すことによって行われている。
【0075】
さらに、正電極シート4の供給経路における電極シート供給機構34よりも下流には、切断機構39が設けられている。本実施形態では、切断機構39が「電極シート切断手段」を構成する。切断機構39は、例えば正電極シート4の下側に位置する台座部391と、上側に位置する刃部392とを備えており、台座部391及び刃部392が互いに接近するように移動することで、正電極シート4を切断する。切断機構39によって、巻芯14(13)により巻取られた正電極シート4の終端部4e、及び、巻芯13(14)により次に巻取られる正電極シート4の始端部4aの区切りとなる位置Kにて、正電極シート4が切断される(
図12参照)。尚、負電極シート供給装置の有する切断機構39によって、負電極シート5も同様に切断される。本実施形態では、切断機構39によって電極シート4,5を切断する工程が「電極シート切断工程」に相当する。
【0076】
加えて、切断機構39は、所定の退避位置へと移動可能に構成されている。切断機構39が前記退避位置に配置されることで、電極シート供給機構34によって巻芯13(14)へと正電極シート4を供給する際に、切断機構39による電極シート供給機構34の移動阻害が生じないようになっている。
【0077】
次に、上述の巻回装置10を用いた電池素子1の製造工程について説明する。
【0078】
まず、巻回ポジションP1に位置する一方の巻芯14によって各種シート2~5の巻取りがほぼ完了した段階において、ターレット12を時計回りに半回転させることで、一方の巻芯14(13)を取外しポジションP2へと移動させ、他方の巻芯13(14)を巻回ポジションP1へと移動させる。このとき、巻芯13(14)は、ターレット12を構成する一方のテーブルに対し没した状態で、取外しポジションP2から巻回ポジションP1へと移動する。尚、巻芯13(14)が巻回ポジションP1へと移動した状態において、セパレータシート2,3は、図示しないガイドロール等により重ねられつつ、巻芯13(14)の回転軸方向に沿って該巻芯13(14)のスリット133と重なった状態となるように構成されている。
【0079】
そして、巻回ポジションP1に到達した巻芯13(14)が前記テーブルから突出することで、該巻芯13(14)のスリット133にセパレータシート2,3が配置される。その後、把持部36により正電極シート4を保持した状態で、電極シート供給機構34が前記最接近位置へと移動させられることで、正電極シート4がその始端部4aを先頭にして巻芯13(14)のスリット133に挿通される(
図8参照)。
【0080】
尚、負電極シート5についても同様にスリット133に挿通される。但し、本実施形態では、負電極シート5の始端部が正電極シート4の始端部4aよりもスリット133のより奥側に配置されるように、スリット133に対する各電極シート4,5の挿通が行われる。また、巻芯13(14)に対し各電極シート4,5を供給する際、及び、巻芯13(14)に対する各電極シート4,5の供給後であって各種シート2~5の巻取開始前には、位置補正機構37や制御装置38による電極シート4,5の位置補正が行われるが、この位置補正については後に詳しく説明する。
【0081】
巻芯13(14)に対し電極シート4等を供給した後、把持部36を開放した上で、巻芯13(14)の回転が開始される(
図9参照)。
【0082】
また、巻芯13(14)の回転開始後、電極シート供給機構34は幾分上流側〔巻芯13(14)から離間する側〕へ移動させられる(
図10参照)。これにより、各種シート2~5の巻取量が増大した場合でも、把持部36等との接触に伴う、各種シート2~5の巻取り阻害が回避されるようになっている。尚、巻取量が増大するにつれて、電極シート供給機構34が徐々に上流側に移動するように構成してもよい。但し、各種シート2~5の巻取中において、電極シート供給機構34は、前記退避位置よりも巻芯13(14)に近い側に配置される。
【0083】
巻芯13(14)の回転により、各種シート2~5は、張力付与機構33により所定の張力を付与され、かつ、蛇行補正機構35により蛇行補正を行われつつ、巻取られていく。
【0084】
そして、各種シート2~5の巻取がほぼ完了したならば、巻芯13(14)の回転が一旦停止されるとともに、把持部36により正電極シート4が保持された上で、切断機構39により該正電極シート4が切断される(
図11参照)。また、負電極シート5についても同様に切断される。これにより、次回巻取り用の電極シート4,5が把持部36で把持された状態となる。
【0085】
その後、ターレット12を時計回りに半回転させて巻芯13(14)を取外しポジションP2へと移動させるとともに、巻芯13(14)を幾らか回転させた後、前記セパレータカッタによって、セパレータシート2,3が切断される。そして、巻芯13(14)に巻き取られた各種シート2~5の外周に前記押さえローラを接触させつつ、各種シート2~5を完全に巻き取った後、各種シート2~5がばらけるのを防ぐべく、前記テープ貼付装置によってセパレータシート2,3の終端部に対しテープが貼付される。
【0086】
その上で、取外装置15によって、巻芯13(14)から、巻取られた各種シート2~5を取外す。これにより、各種シート2~5が巻回されてなる電池素子1が得られる。
【0087】
このような手順を繰り返し行うことにより、電池素子1が順次製造されていくこととなる。
【0088】
次に、位置補正機構37等により行われる電極シート4,5の位置補正について、
図18を参照しつつ説明する。尚、各電極シート4,5の位置補正は同様の手法で行われるため、以下では、基本的に、正電極シート4を代表としてその位置補正について説明する。
【0089】
まず、始端部位置検出工程S1が実行される。始端部位置検出工程S1は、切断機構39による正電極シート4の切断後、つまり、電極シート切断工程S0の後であって、スリット133に対する正電極シート4の挿通前に行われる。尚、この段階において、スリット133にはセパレータシート2,3が既に配置された状態となっている。また、奥側チャック部135及び手前側チャック部136における各チューブ137は収縮した状態となっている。
【0090】
始端部位置検出工程S1では、平行光レーザセンサ371によって、正電極シート4の始端部4aの位置(より詳しくは、正電極シート4の幅方向に沿った、始端部4aの側縁部4sの位置)が検出される。切断機構39による正電極シート4の切断後であって、スリット133に対する正電極シート4の挿通前の段階では、正電極シート4の始端部4aは特段保持されておらず自由な状態となる。そのため、正電極シート4の状態によっては、正電極シート4の始端部4a及びこれに連続する部分にて湾曲が生じ、正電極シート4の始端部4aが基準位置Sからずれた状態となり得る(
図12参照)。そこで、基準位置Sに対する始端部4aの位置ずれ量を把握するために、平行光レーザセンサ371によって正電極シート4の始端部4aの位置が検出される。本実施形態では、始端部4aの位置として、正電極シート4の幅方向一方側を+側、正電極シート4の幅方向他方側を-側とした、基準位置Sに対する始端部4aの位置ずれ量Zが検出される(
図13参照)。検出された始端部4aの位置に関する情報は、制御装置38に出力される。尚、始端部4aの位置検出に先立って、支持機構373によって正電極シート4が支持される。これにより、始端部4aの位置をより正確に検出可能となっている。
【0091】
次いで、補正量算出工程S2において、制御装置38により、検出された始端部4aの位置に基づき、把持部36の位置に関する補正量が算出される。本実施形態では、補正量として、位置ずれ量Zを正負反転した量が算出される。
【0092】
その後、始端部位置補正工程S3において、制御装置38により、算出した補正量に基づき、補正用アクチュエータ372の動作が制御される。これにより、把持部36の位置が前記補正量に応じた距離だけ正電極シート4の幅方向に沿って調節され、その結果、始端部4aの側縁部4sが基準位置S上又はその近傍位置に配置されることとなる(
図14参照)。一方、始端部位置補正工程S3の実行に伴い、基準位置Sに対する巻始め部4bの位置ずれが生じ得る。
【0093】
次いで、電極シート供給工程S4において、電極シート供給機構34が前記最接近位置へと移動することで、把持部36により把持された正電極シート4が始端部4aを先頭にしてスリット133に挿通される(
図14参照)。
【0094】
尚、負電極シート5についても、正電極シート4と同様に、その始端部の位置補正が行われた上で、該始端部を先頭にしてスリット133に挿通される。但し、スリット133に対する各電極シート4,5の挿通順序については特に限定されない。
【0095】
その後、奥側チャック工程S5において、奥側チャック部135におけるチューブ137の内部空間にエアを供給することで、該チューブ137を膨張させる。これにより、奥側チャック部135によって、正電極シート4の始端部4aが保持される。また、このとき、奥側チャック部135によって、負電極シート5の始端部やセパレータシート2,3も同様に保持される。
【0096】
次いで、巻始め部位置補正工程S6が行われる。巻始め部位置補正工程S6では、制御装置38により、把持部36が元の位置(始端部位置補正工程S3の実行前の位置)に戻るように、補正用アクチュエータ372の動作が制御される。これにより、把持部36の位置が調節されて、始端部位置補正工程S3の実行に伴い巻始め部4bにて生じる位置ずれを減らすように、正電極シート4の幅方向に沿った巻始め部4bの位置が補正される(
図15参照)。その結果、基準位置S上又はその近傍位置に巻始め部4bが配置される。尚、負電極シート5についても、正電極シート4と同様に、その巻始め部の位置補正が行われる。
【0097】
次に、手前側チャック工程S7において、手前側チャック部136におけるチューブ137の内部空間にエアを供給することで、該チューブ137を膨張させる。これにより、手前側チャック部136によって、正電極シート4における巻始め部4bの近傍部分が保持される。また、このとき、手前側チャック部136によって、負電極シート5における巻始め部の近傍部分やセパレータシート2,3も同様に保持される。
【0098】
その後、奥側チャック部135や手前側チャック部136によって正電極シート4等を保持したまま、巻芯13(14)の回転が開始されることで、正電極シート4等を巻取っていく(
図16参照)。結果的に、巻始め部位置補正工程S6の後であって、少なくとも巻芯13(14)の回転による正電極シート4等の巻取り開始前から巻取り開始後にかけて、奥側チャック部135や手前側チャック部136による正電極シート4等の保持が維持される。
【0099】
尚、正電極シート4等の巻取り開始後であって該巻芯13(14)から電池素子1を取外す前には、両チャック部135,136のチューブ137を収縮させることで、両チャック部135,136による正電極シート4等の保持が解除される。そして、保持の解除後においては、位置補正に伴う張力の印加などの影響により、基準位置Sに対する正電極シート4の始端部4aの位置ずれ量は十分に小さなものとなる(
図17参照)。この点は、負電極シート5の始端部についても同様である。
【0100】
以上詳述したように、本実施形態によれば、位置補正のなされた正電極シート4の始端部4aを保持して該始端部4aの移動を規制した上で、該始端部4aの位置補正に伴う位置ずれを減らすように、巻始め部4bの位置が補正される。従って、正電極シート4の始端部4a及び巻始め部4bの双方における位置ずれを効果的に減らすことができる。また、負電極シート5に対しても同様の補正が行われるため、同様の作用効果を得ることができる。その結果、得られた電池素子1における品質や安全性を高めることができる。
【0101】
また、奥側チャック部135は、スリット133の中心CLよりも前記挿通方向前方側に位置している。つまり、奥側チャック部135は、スリット133における正電極シート4の挿通入口から見て、スリット133の中心CLよりも奥に位置している。従って、正電極シート4の始端部4aをスリット133のより奥側に配置させた状態で保持することができ、スリット133に挿通される正電極シート4、つまり、最終的に電池素子1の最内周部に配置される正電極シート4をより長いものとすることができる。また、負電極シート5についても、最終的に電池素子1の最内周部に位置する部位をより長いものとすることができる。その結果、電池素子1の最内周部において充放電可能な領域を増やすことができ、電池容量の増大を図ることができる。
【0102】
加えて、手前側チャック部136によって、巻始め部の位置補正後であって少なくとも各種シート2~5の巻取り開始前から巻取り開始後にかけて、電極シート4,5が保持される。従って、電極シート4,5における巻始め部の近傍部分を保持して巻始め部の移動を効果的に規制した状態で、各種シート2~5の巻取りを開始することができる。これにより、得られた電池素子1において、電極シート4,5をより確実に適正位置に配置させることができ、電池素子1における品質や安全性を一層高めることができる。
【0103】
さらに、電極シート4,5の始端部の位置補正を行うときと同様に、把持部36の位置を調節することで、電極シート4,5の巻始め部の位置を補正することができる。すなわち、電極シート4,5の始端部及び巻始め部における位置補正をそれぞれ共通の機構(把持部36)を用いて行うことができる。これにより、巻回装置10の簡素化を図ることができ、装置の製造やメンテナンスに係るコストの低減を図ることができる。
【0104】
また、把持部36を利用することで、電極シート4,5の幅方向に沿った巻始め部の位置補正をより精度よく行うことができる。これにより、得られた電池素子1において、電極シート4,5をより確実に適正位置に配置させることができ、電池素子1における品質や安全性をより一層高めることができる。
【0105】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。また、以下では、基本的には正電極シート4を対象として応用例等を説明しているが、勿論、この応用例等を負電極シート5を対象として利用してもよい。
【0106】
(a)上記実施形態では、始端部位置補正工程S3の後に、電極シート供給工程S4が行われるように構成されているが、これら工程の実行順序については特に限定されるものではない。従って、例えば、始端部位置補正工程S3及び電極シート供給工程S4を同時期に行うこととしてもよい。つまり、始端部4aの位置補正、及び、スリット133に対する正電極シート4の挿通を同時期に行うこととしてもよい。
【0107】
また、例えば、電極シート供給工程S4の実行後に、始端部位置補正工程S3を実行するように構成してもよい。このように構成する場合には、スリット133に正電極シート4を挿通する際(電極シート供給工程S4の実行時)に、正電極シート4の幅方向に沿った始端部4aの位置を検出する、つまり、始端部位置検出工程S1を行うように構成してもよい。例えば、平行光レーザセンサ371を切断機構39よりも下流に配置し、該平行光レーザセンサ371によって、移動する正電極シート4の側縁部4sの位置を逐次検出し、検出した側縁部4sの位置のうち基準位置Sから最も離れているものを、正電極シート4の幅方向に沿った始端部4aの位置として検出してもよい。
【0108】
(b)上記実施形態では、把持部36を元の位置(始端部4aの位置補正を行う前の位置)に戻すことで、巻始め部4bの位置補正が行われるように構成されている。これに対し、所定の巻始め部位置検出手段によって、正電極シート4の幅方向に沿った巻始め部4bの位置を検出し、その検出結果に基づき把持部36の位置を調節することで、巻始め部4bの位置補正が行われるように構成してもよい。尚、巻始め部4bの位置を、正電極シート4の停止時に検出してもよいし、巻芯13(14)に対する正電極シート4の供給時に検出してもよい。
【0109】
また、前記巻始め部位置検出手段として、正電極シート4の始端部4aの位置を検出するための手段(つまり、上記実施形態における「平行光レーザセンサ371」)を用いてもよい。この場合には、装置の複雑化をより確実に防止することができ、製造等に係るコストの低減を図ることができる。
【0110】
(c)上記実施形態において、巻始め部4bの位置補正は、把持部36の位置を調節することにより行われている。これに対し、
図19に示すように、正電極シート4に対しその長手方向に沿った張力を付与することで、巻始め部4bの位置補正を行うように構成してもよい。尚、張力の付与は、張力付与機構33を用いたり、正電極シート4を把持した状態の把持部36を(
図19の右方向へ)移動させたりすることにより行うことができる。
【0111】
上記のように構成した場合には、巻始め部4bの位置補正を比較的簡便な手法で行うことができ、巻始め部4bの位置補正に係る構成を複雑化させずに済む。これにより、巻回装置10の簡素化を図ることができ、装置の製造やメンテナンスに係るコストの低減を図ることができる。
【0112】
また、正電極シート4に対する張力の付与は、正電極シート4の湾曲を解消する方向に働く。これにより、電池素子1の品質や安全性の向上をより確実に図ることができる。
【0113】
尚、位置補正にあたって、張力付与機構33及び把持部36を併用してもよい。
【0114】
(d)上記実施形態において、チャック機構134は、奥側チャック部135及び手前側チャック部136を備えている。これに対し、
図20,21に示すように、チャック機構134は、スリット133の中心CLよりも正電極シート4の挿通方向前方側に位置する奥側チャック部135のみを有するものであってもよい。この場合、電池素子1を得る際には、電極シート4,5の始端部の位置補正後、奥側チャック部135によって該始端部を保持した上で各電極シート4,5の巻始め部の位置を補正し、その後、巻芯13(14)を回転させることにより各種シート2~5の巻取りを行うこととなる。
【0115】
また、上記実施形態において、奥側チャック部135はスリット133の中心CLよりも前記挿通方向前方側に、手前側チャック部136は中心CLよりも前記挿通方向後方側に設けられている。これに対し、例えば、
図22に示すように、奥側チャック部135が中心CLを跨ぐように構成してもよい。勿論、手前側チャック部136が中心CLを跨ぐように構成してもよい。
【0116】
(e)上記実施形態では、巻回装置10によって、リチウムイオン電池の電池素子1が製造されているが、巻回装置10によって製造される巻回素子はこれに限定されるものではなく、例えば、電解コンデンサの巻回素子等を製造することとしてもよい。
【0117】
(f)上記実施形態では、電極シート供給機構34に蛇行補正機構35が設けられているが、これに限らず、電極シート供給機構34及び蛇行補正機構35を別々に設ける構成としてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、蛇行補正機構35として、上下一対のローラ352a,352bからなる補正部352を傾動させることにより、正電極シート4等の蛇行補正を行う構成を採用しているが、他の構成であっても何ら差し支えない。例えば正電極シート4等の幅方向に移動可能な1つ或いは複数のローラを用いて蛇行補正を行うように構成してもよい。
【0119】
(g)上記実施形態において、平行光レーザセンサ371は、正電極シート4の幅方向一方側の側縁部4sに対応して配置されている。これに対し、例えば平行光レーザセンサ371を、正電極シート4の幅方向両側の各側縁部4sに対応して2箇所に配置する構成としてもよい。このように構成することで、正電極シート4の幅のばらつきをも検出可能となる。
【0120】
(h)上記実施形態では、始端部位置検出手段として、平行光レーザセンサ371を挙げているが、他の検出手段を採用してもよい。例えば、接触式の位置検出手段などを用いてもよい。また、正電極シート4の始端部4aを撮像するカメラと、該カメラにより得られた画像データに基づき始端部4aの位置を検出する処理手段とによって、始端部位置検出手段を構成してもよい。
【0121】
(i)上記実施形態において、把持部36の位置は、把持部36をスライド変位させることで調節されるようになっている。これに対し、例えば所定点を中心に把持部36が回動する構成とし、該把持部36の回動に伴い把持部36の位置が調節されるように構成してもよい。
【0122】
(j)上記実施形態において、巻回部11は、2つの巻芯13,14を備えた構成となっているが、1つ又は3つ以上の巻芯を備えた構成であってもよい。
【0123】
(k)セパレータシート2,3や電極シート4,5の材質は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。勿論、電極シート4,5に塗布される活物質を変更してもよい。
【符号の説明】
【0124】
1…電池素子(巻回素子)、2,3…セパレータシート、4…正電極シート(電極シート)、5…負電極シート(電極シート)、10…巻回装置、13,14…巻芯、34…電極シート供給機構(電極シート供給手段)、36…把持部、37…位置補正機構(始端部位置補正手段、巻始め部位置補正手段)、38…制御装置(始端部位置補正手段、巻始め部位置補正手段)、39…切断機構(電極シート切断手段)、131…第一芯片、132…第二芯片、133…スリット、134…チャック機構、135…奥側チャック部、136…手前側チャック部、371…平行光レーザセンサ(始端部位置検出手段)。