(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022759
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】鞄
(51)【国際特許分類】
A45C 13/00 20060101AFI20220131BHJP
A45F 3/04 20060101ALI20220131BHJP
A45C 3/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A45C13/00 Z
A45C13/00 A
A45C13/00 C
A45F3/04 300
A45C3/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116112
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】木下 郁
(72)【発明者】
【氏名】藤木 武史
【テーマコード(参考)】
2E181
3B045
【Fターム(参考)】
2E181AA08
2E181BB02
2E181BC01
2E181BD01
3B045AA35
3B045CE07
3B045EA02
3B045EB10
3B045FB00
3B045JA06
3B045JB01
3B045JC04
(57)【要約】
【課題】起立姿勢を維持して床や棚に容易に安置できる鞄を提供する。
【解決手段】内部に物品を収納可能な空間を包有する鞄本体1と、前記鞄本体1の正面側に設けられ、鞄本体1の左右方向に拡張しており、鞄本体1の正面部11に沿う状態と、鞄本体1の正面部11から離反するように展開し床面に接地して鞄本体1を起立した姿勢に維持できる状態とを選択的にとり得る支持体2とを具備する鞄を構成した。前記鞄本体1の正面部11に、前記支持体2を連結する収縮可能な連結部24が設けられていれば、より安定性が増し好ましい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に物品を収納可能な空間を包有する鞄本体と、
前記鞄本体の正面側に設けられ、鞄本体の左右方向に拡張しており、鞄本体の正面部に沿う状態と、鞄本体の正面部から離反するように展開し床面に接地して鞄本体を起立した姿勢に維持できる状態とを選択的にとり得る支持体と
を具備する鞄。
【請求項2】
前記鞄本体の正面部に前記支持体を連結する収縮可能な連結部が設けられている請求項1記載の鞄。
【請求項3】
前記支持体が内部に物品を収納可能な空間を包有している請求項1または2記載の鞄。
【請求項4】
前記鞄本体の正面部と前記支持体とのうち一方に磁石が設けられ、他方にその磁石に吸着する磁石または金属部材が設けられている請求項1または2記載の鞄。
【請求項5】
前記鞄本体の上方の部位に、前記支持体が展開する方向に変位することで鞄本体の内部空間を外部に連通させる蓋体が設けられている請求項1、2、3または4記載の鞄。
【請求項6】
前記蓋体が内部に物品を収納可能な空間を包有している請求項5記載の鞄。
【請求項7】
前記支持体にその剛性を高めるための芯材が設けられている請求項1、2、3、4、5または6記載の鞄。
【請求項8】
内部に物品を収納可能な空間を包有する鞄本体と、
前記鞄本体の正面側に設けられ、その左方の外側縁が鞄本体の左側端に近接し、その右方の外側縁が鞄本体の右側端に近接しており、鞄本体の正面部に沿う状態と、鞄本体の正面部から離反するように展開し床面に接地して鞄本体を起立した姿勢に維持できる状態とを選択的にとり得る支持体と
を具備する鞄。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納して運搬することが可能な鞄に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に物品を収納可能な空間を包有し、背面側にショルダーストラップが設けられており、使用者が背負うことが可能な鞄、いわゆるバックパックが公知である(例えば、下記特許文献を参照)。この種の鞄は、近時、ビジネスシーンにおいても需要が高まっている。
【0003】
一般に、この種の鞄の外寸は、上下(高さ)方向の寸法が最も大きく、次いで左右(幅)方向の寸法が大きく、前後(奥行)方向の寸法が最も小さい。つまり、立たせておくことで鞄の占有面積が最小化するので、その姿勢のまま床や棚に安置できることが望まれる。
【0004】
だが、現実には、物品を収納した鞄を起立姿勢に維持することは容易ではなく、机その他の什器の側面または壁に凭れさせておくか、ロッカー等に収容することにならざるを得ない。換言すれば、鞄の置き場所が制限されている。あるいは、場所をとることを受け入れて、鞄を倒して置くかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容易に起立姿勢を維持して床や棚に安置できる鞄を提供することを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、内部に物品を収納可能な空間を包有する鞄本体と、前記鞄本体の正面側に設けられ、鞄本体の左右方向に拡張しており、鞄本体の正面部に沿う状態と、鞄本体の正面部から離反するように展開し床面に接地して鞄本体を起立した姿勢に維持できる状態とを選択的にとり得る支持体とを具備する鞄を構成した。
【0008】
並びに、本発明では、内部に物品を収納可能な空間を包有する鞄本体と、前記鞄本体の正面側に設けられ、その左方の外側縁が鞄本体の左側端に近接し、その右方の外側縁が鞄本体の右側端に近接しており、鞄本体の正面部に沿う状態と、鞄本体の正面部から離反するように展開し床面に接地して鞄本体を起立した姿勢に維持できる状態とを選択的にとり得る支持体とを具備する鞄を構成した。
【0009】
前記鞄本体の正面部に前記支持体を連結する収縮可能な連結部が設けられていれば、支持体を展開して鞄本体を起立姿勢に安置する際の安定性が増す。
【0010】
前記支持体が内部に物品を収納可能な空間を包有していれば、当該支持体をも物品を収めて運ぶために活用することができる。
【0011】
前記鞄本体の正面部と前記支持体とのうち一方に磁石が設けられ、他方にその磁石に吸着する磁石または金属部材が設けられていれば、使用者が鞄を運搬するときに支持体がばたつくことなく鞄本体に対して保定される上、鞄を床や棚に載置するときに簡便な操作で支持体を展開することが可能となる。
【0012】
前記鞄本体の上方の部位に、前記支持体が展開する方向に変位することで鞄本体の内部空間を外部に連通させる蓋体が設けられていれば、鞄を起立姿勢で床や棚に安置したまま、蓋体を開いて物品の出し入れを行うことが容易となる。特に、前記蓋体がその内部に物品を収納可能な空間を包有している場合、蓋体を開くことで(収めている物品を含めた)鞄の重心が大きく変位し得るが、その重心の変位に対して支持体が鞄本体を確実に起立姿勢に維持することができる。
【0013】
前記支持体には、その剛性を高めるための芯材が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容易に起立姿勢を維持して床や棚に安置できる鞄が具現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図5】同実施形態の鞄の蓋体及び支持体を展開した状態を示す側面図。
【
図8】同実施形態の鞄の蓋体を展開した状態を示す斜視図。
【
図10】同実施形態の鞄の一部を拡大して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1ないし
図10に示す本実施形態の鞄は、内部に物品を収納可能な空間Sを包有する鞄本体1の背面側にショルダーストラップ16が設けられ、使用者が背負って運ぶことのできる、いわゆるバックパックである。
【0017】
鞄本体1は、正面部11、正面部11と前後(奥行)方向に沿って対向する背面部12、正面部11及び背面部12の双方の側端に連接する側面部13、正面部11及び背面部12の双方の下端に連接する底部14、並びに、正面部11及び背面部12の双方の上端に連接する頂部15が、内部空間Sを囲繞する概ね直方体状の外形をなすものである。背面部12は、鞄を背負う使用者の背中に当たる背当て面となる。鞄本体1の外寸は、上下(高さ)方向の寸法が最も大きく、次いで左右(幅)方向の寸法が大きく、前後方向の寸法が最も小さく幅狭である。
【0018】
鞄本体1の上縁には、前後一対のハンドル17が設けられている。使用者は、鞄を背負うのではなく、このハンドル17を把持して鞄を持ち運ぶこともできる。
【0019】
鞄本体1の各部はそれぞれ、例えば化学繊維を紡織して作製した布状の張地に、それよりも剛性の高い芯材、及び/または、弾性変形して収縮可能なクッション材を内挿して作製する。
【0020】
鞄本体1の上方部位は、開閉が可能な蓋体10となっている。蓋体10は、正面部11及び側面部13の上端部分並びに頂部15に跨る、三角錐状の部位である。蓋体10を鞄本体1の他の部位に接続して蓋体10を閉じた状態に維持するファスナ18は、鞄本体1の一方の側面部13と正面部11とが交わる所定箇所から当該側面部13上を斜め後方かつ上方に伸び、次いで頂部15と背面部12とが交わる境界に沿って左右方向に伸び、しかる後他方の側面部13と正面部11とが交わる所定箇所に向けて当該側面部13上を斜め前方かつ下方に伸びている。
【0021】
鞄本体1の蓋体10を開けるためには、閉じていたファスナ18を開いて外し、両側面部13におけるファスナ18の端部同士を結ぶ線分であるヒンジ19に沿って正面部11を折り曲げるように、蓋体10を前下方に回動させる。さすれば、
図5、
図6及び
図8に示すように、鞄本体1が上方及び前方に開放するように大きく開口し(ファスナ18及びヒンジ19がその開口縁となる)、鞄本体1の内部空間Sを外部に連通させることができる。
【0022】
蓋体10の内部は、比較的小形の物品を収納することが可能な収納空間Tとなっている。
図6及び
図8に示すように、蓋体10には、その内部空間Tを閉塞して同空間T内に収めた物品を保持する幕101が張られている。この幕101は、多数の小孔が穿たれたメッシュ状をなし、蓋体10を開けたときに表出するとともに、その内部空間Tを見通すことが可能になっている。幕101には、これを開閉するためのファスナ102が設けられている。ファスナ102は、鞄本体1の左右方向に伸びている。そのファスナ102を開いて外せば、蓋体10の内部空間Tに対して物品を出し入れできる。
【0023】
加えて、蓋体10の一部をなす頂部15にも、これを開閉するためのファスナ151が設けられている。ファスナ151もまた、鞄本体1の左右方向に伸びている。
図1ないし
図4及び
図7に示すように鞄本体1の蓋体10を閉じている状態であっても、ファスナ151を開いて外すことにより、蓋体10の内部空間Tに対して物品を出し入れできる。
【0024】
鞄を起立させた姿勢で、鞄本体1の蓋体10を開けると、蓋体10と閉じているときと比較して(収納している物品を含めた)鞄総体の重心が前方に変位する。特に、蓋体10の内部空間Tに物品を収めている場合には、その物品の重量が加わって重心が前方に大きく偏倚することから、鞄が前方に倒伏しやすくなる。
【0025】
本実施形態の鞄は、鞄を起立姿勢に維持したまま床または棚に載置できるように支えるための支持体2を具備している。
図1及び
図7に示すように、支持体2は、正面視鞄本体1の左右方向に拡張した方形状の概形をなす。支持体2の左方の側縁は、鞄本体1の左側端に近接して上下方向に伸び、支持体2の右方の側縁は、鞄本体1の右側端に近接して上下方向に伸びている。この支持体2は、鞄本体1の正面側、蓋体10の回動中心であるヒンジ19よりも下方に所在している。支持体2は、その(後壁22の)上端部が鞄本体1の正面部11の上下方向に沿った中間部位に連結されており、同上端部がヒンジ23となって、当該支持体2の下端部を前後に揺動させ得るようになっている。
【0026】
そして、支持体2は、
図3及び
図7に示すように鞄本体1の正面部11に沿う状態と、
図5及び
図6に示すように鞄本体1の正面部11から離反するように展開した状態とを選択的にとり得る。
図5及び
図6に示す展開状態では、支持体2の下端部と鞄本体1の底部14との前後方向に沿った距離が拡大し、これらを床または棚に接地させて鞄本体1を起立姿勢に維持することが容易になる。鞄本体1の蓋体10を前方に開けたときにも、同じく前方に展開している支持体2が鞄本体1の支えとなり、鞄が倒伏することがない。従って、鞄を床上または棚上で起立させたまま、蓋体10を開閉して物品を出し入れする等が可能となる。
【0027】
鞄本体1の前面部の下端は、背面部12の下端よりもやや高い位置にある。床または棚に接地する鞄本体1の底部14は、前面部及び背面部12の各々に対して直交せず、前方から後方に向かうにつれて降下するように予め傾斜している。
【0028】
支持体2の左右の側端はそれぞれ、連結部24を介して鞄本体1の左右の側端に連結される。左方の連結部24は、支持体2及び正面部11の双方の左側端に連接し、右方の連結部24は、支持体2及び正面部11の双方の右側端に連接している。各連結部24は、例えば化学繊維を紡織して作製した布状の張地を素材とする、可撓性を有するものである。
【0029】
連結部24は、いわば襠のように拡縮する。
図5及び
図6に示す展開状態では、連結部24が側面視三角形状をなすように拡開する。この状態で、連結部24は、支持体2が鞄本体1の正面部11からそれ以上前方に離反することを規制する。これにより、起立させて床または棚に安置した鞄本体1の姿勢が安定する。同時に、この連結部24は、支持体2と鞄本体1との間隙を遮蔽し、鞄としての美観を保つ働きもする。
【0030】
翻って、
図3及び
図7に示す収縮状態では、連結部24が支持体2と鞄本体1の正面部11との間で内側方に折り畳まれる。
図1ないし
図3及び
図7に示しているように、収縮状態の連結部24は、支持体2及び鞄本体1により適切に隠蔽されて目立たない。収縮状態の連結部24は、正面視鞄本体1の正面部11の側端から外側方にはみ出さない。並びに、収縮状態の連結部24は、正面視支持体2の側端から外側方に大きくははみ出さず(設計寸法により、1cm弱程度露出することはあり得る)、または殆ど若しくは全くはみ出さない。
【0031】
また、支持体2は、その内部に物品を収納可能な空間Uを包有しており、いわゆるアウトサイドポケットとしても機能する。
図6に示すように、支持体2は、前壁21と、これに対向する後壁22とを有している。後壁22の下縁は前壁21の下縁に連接し、後壁22の左側縁は前壁21の左側縁に連接し、後壁22の右側縁は前壁21の右側縁に連接している。そして、前壁21と後壁22との間に、薄型の物品を収納して保持することのできる空間Uを形成している。
【0032】
支持体2は、例えば化学繊維を紡織して作製した布状の張地に、それよりも剛性の高い芯材25、26、及び/または、弾性変形して収縮可能なクッション材を内挿して作製する。本実施形態では、支持体2の後壁22の内に、芯材25及び芯材26をそれぞれ取り付けてある。芯材25は、正面視支持体2の左右両側縁に沿って上下方向に延伸した帯状をなし、左右に対をなしている。芯材26は、正面視支持体2の略全域を裏打ちするように上下方向及び左右方向に拡張した方形の板状をなす。
【0033】
支持体2の前壁21の上縁近傍には、これを開閉するためのファスナ211が設けられている。ファスナ211は、鞄本体1の左右方向に伸びている。そのファスナ211を開いて外せば、支持体2の内部空間Uに対して物品を出し入れできる。因みに、
図1に示しているように、ファスナ211は、鞄本体1の正面部11に設けられ、垂下して当該ファスナ211に前方から覆い被さるフラップ111により隠蔽される。
【0034】
使用者が鞄を持ち運ぶ際に支持体2がばたついたりしないよう、鞄本体1の正面部11と支持体2とのうち一方には磁石112が、他方にはその磁石112に吸着する磁石または金属部材27が設けられる。
図1に示すように、支持体2側の磁石または金属部材27は、支持体2の後壁22の左右の側端及び下端に近い隅角部位に配置される。鞄本体1の正面部11側の磁石または金属部材112は、正面視支持体2側の磁石または金属部材27と重なり合う位置に配置される。
図3及び
図7に示す収縮状態では、それら磁石112、27同士、または磁石112と金属部材27とが引き合うことで、支持体2を鞄本体1の正面部11に沿う位置、換言すれば正面部11に対して略平行となる位置に保定する。
【0035】
図6、
図7及び
図9に示すように、本実施形態の鞄は、その内部空間Sを上下の室に区画するための着脱可能な中間棚3を具備している。中間棚3は、例えば化学繊維を紡織して作製した布状の張地に、それよりも剛性の高い芯材、及び/または、弾性変形して収縮可能なクッション材を内挿して作製する。
【0036】
中間棚3は、その左右の側端部のうちの一方、図示例では右側端部が、鞄本体1の内面即ち右側の側面部13の内向面に縫合等により連結され、鞄本体1から脱離不能となっている。中間棚3の他方の側端部、図示例では左側端部は、例えば面ファスナ32等の接続手段を介して、鞄本体1の内面即ち左側の側面部13の内向面に着脱可能に接続される。
【0037】
さらに、中間棚3の前縁及び後縁はそれぞれ、例えばファスナ31等の接続手段を介して、鞄本体1の内面即ち正面部11及び背面部12のそれぞれの内向面に着脱可能に接続される。
【0038】
鞄本体1の内部空間Sを中間棚3によって上下の室に区画するためには、前後一対のファスナ31をそれぞれ閉じて接続し、中間棚3の前縁部及び後縁部の各々を鞄本体1の正面部11及び背面部12に対して固定する。さらに、面ファスナ32を接着して、中間棚3の左側端部を鞄本体1の左側の側面部13に対して固定する。さすれば、
図6及び
図7に示しているように、内部空間Sの下方の室を中間棚3が上方より閉塞する状態となり、かつ上方の室に収めた物品を中間棚3により下方の室に落下させることなく支持できるようになる。
【0039】
鞄本体1の内部空間Sを上下の室に区画せず一室化するためには、前後一対のファスナ31をそれぞれ開いて外し、かつ面ファスナ32を外せばよい。さすれば、中間棚3の前後縁部及び左側端部が鞄本体1の内面から脱離し、中間棚3の右側端部をヒンジとして当該中間棚3を落とし倒すように回動させ、内部空間Sの下方の室を上方の室に連通させることが可能となる。
【0040】
中間棚3の左右方向に沿った寸法は、中間棚3が設置される高さ位置即ち中間棚3の右側端部の高さ位置から鞄本体1の底部14までの距離よりも大きい。従って、鞄本体1の内部空間Sを一室化したとき、中間棚3の左側端部は鞄本体1の底部14に達する。
【0041】
図10に示すように、鞄本体1の左右の側面部13にはそれぞれ、中間棚3により区画される下方の室を外部に連通させる開口部132が開設されている。側面部13における、開口部132を閉塞する壁となる部分136が鞄本体1に対して接離(して開口部132を開閉)する開口縁は、側面視略「字形をなしている。そして、側面部13における、当該開口部132を閉塞する壁となる部分136の少なくとも前縁部に沿って、当該開口部132を開閉するためのファスナ133が設けられている。ファスナ133は、鞄本体1の上下方向に伸びている。そのファスナ133を開いて外せば、鞄本体1の内部空間Sにおける中間棚3の下方の室に対して物品を出し入れできる。
【0042】
図3、
図5、
図7、
図8及び
図10に示すように、その壁の部分136の上縁近傍は、垂下して当該部分に外側方から覆い被さるフラップ131により隠蔽される。
図10に示すように、壁となる部分136とフラップ131とのうち一方には磁石134が、他方にはその磁石134に吸着する磁石または金属部材135が設けられる。それら磁石134、135同士、または磁石134と金属部材135とが引き合うことで、壁136の上縁近傍をフラップ131に保定し、以て開口部132を安定的に閉塞することができる。
【0043】
また、
図10に示しているように、鞄本体1の内部空間Sの下方の室の一方側即ち右側を、他方側即ち左側から隔絶する幕4が設けられている。この幕4により仕切られた右側の比較的狭い区域には、例えば飲料のペットボトル等を収めることができる。
【0044】
本実施形態では、内部に物品を収納可能な空間Sを包有する鞄本体1と、前記鞄本体1の内部空間Sを上下の室に区画する状態と、その内部空間Sを区画せず一室化する状態とを選択的にとり得る中間棚3と、前記内部空間Sを上下の室に区画するべく前記中間棚3を前記鞄本体1に対して保定するものであり、中間棚3における、鞄本体1の上下方向と直交する長手(左右、幅)方向に延伸し短手(前後、奥行)方向に対向している一対の縁部をそれぞれ、鞄本体1の内面に着脱可能に接続する接続手段(一対のファスナ)31とを具備する鞄を構成した。
【0045】
本実施形態の鞄では、鞄本体1の内部空間Sを一室化するに際して、各接続手段31をそれぞれ外し、中間棚3における長尺な両縁部(前後縁部)を何れも鞄本体1より脱離させることで、中間棚3を鞄本体1の底部14またはその近傍まで深く落とし込むことが可能である。本実施形態によれば、鞄本体1の内部空間Sを一室化した状態で鞄を使用するときに、中間棚3の存在が物品の出し入れの妨げとなる問題を効率的に回避ないし緩和することができる。
【0046】
前記中間棚3における、前記縁部と交差し前記短手方向に拡張した端部の一方(右側端部)を前記鞄本体1の内面に脱離不能に連結していることにより、中間棚3を紛失することが避けられる。
【0047】
前記中間棚3における、前記縁部と交差し前記短手方向に拡張した端部(左側端部)を前記鞄本体1の内面に着脱可能に接続する接続手段(面ファスナ)32を具備していることから、中間棚3を鞄本体1の内面に対して簡便に仮固定できる。特に、本実施形態では、中間棚3の短辺即ち側端部を面ファスナ32により鞄本体1に対して仮固定し、中間棚3の長辺即ち前後縁部をスライドファスナ31により鞄本体1に対して固着できるようにしている。仮に、中間棚3の長辺である前後縁部を面ファスナにより仮固定し、中間棚3の短辺である側端部をスライドファスナにより固着する構造を採用するものとすると、中間棚3の長辺の仮固定の位置の精度が低下し、中間棚3がだれてしまい、中間棚3の短辺をファスナによりうまく鞄本体1に固着できない可能性が生じる。これを回避するためには、中間棚3の長辺の複数箇所または略全域に面ファスナを設けて当該複数箇所または略全域を鞄本体1に仮固定できるようにする等の工夫が必要となるが、本実施形態の構造によれば、中間棚3の短辺つまりは比較的小さな領域に面ファスナ32を設けるだけで済む。
【0048】
前記中間棚3により前記鞄本体1の内部空間Sを区画せず一室化している状態では、中間棚3の端部(左側端部)が鞄本体1の底部14に達する。従って、内部空間Sを一室化したとき、即ち中間棚3を垂れ下がらせるように落とし倒したときに、その端部が底部14に載置され、内部空間Sに対して出し入れする物品に中間棚3が引っ掛かって持ち上がる等の不具合を起こし難い。
【0049】
前記鞄本体1に、前記中間棚3により区画される下方の室を外部に連通させる開口部132が設けられているため、中間棚3により鞄本体1の内部空間Sを上下に区画した状態のまま、当該開口部132を通じて下方の室に対して物品を出し入れでき、利便性がより一層向上する。
【0050】
並びに、本実施形態では、内部に物品を収納可能な空間Sを包有し背面側にショルダーストラップ16が設けられ使用者が背負うことが可能であり、また上縁にハンドル17が設けられ使用者が把持して持ち運ぶことが可能な鞄本体1と、前記鞄本体1の正面側に設けられ、鞄本体1の左右方向に拡張しており、鞄本体1の正面部11に沿う状態と、鞄本体1の正面部11から離反するように展開し床面に接地して鞄本体1を起立した姿勢に維持できる状態とを選択的にとり得る支持体2とを具備する鞄を構成した。支持体2は、その左方の外側縁が鞄本体1の左側端に近接し、その右方の外側縁1が鞄本体の右側端に近接している。換言すれば、支持体2の左右方向に沿った外法が、鞄本体1の左右幅寸法に略等しい。
【0051】
本実施形態によれば、大きく拡張した支持体2により鞄本体1を起立姿勢を保ち、安定して立てて置くことができる。
【0052】
前記鞄本体1の正面部11に前記支持体2を連結する収縮可能な連結部24が設けられているため、鞄を起立させて安置する際の構造的な安定性、強度が増す。
【0053】
前記支持体2は、内部に物品を収納可能な空間Uを包有している。この支持体2もまた、収納に活用することができる。
【0054】
前記鞄本体1の正面部11と前記支持体2とのうち一方には磁石112が設けられ、他方にその磁石112に吸着する磁石または金属部材27が設けられている。これにより、使用者が鞄を運搬するときに支持体2がばたつくことなく鞄本体1に対して保定される上、鞄を床や棚に載置するときには簡便な操作で支持体2を展開することが可能となる。
【0055】
前記鞄本体1の上方の部位に、前記支持体2が展開する方向に変位することで鞄本体1の内部空間Sを外部に連通させる蓋体10が設けられているので、鞄を起立姿勢で床や棚に安置したまま、蓋体10を開いて物品の出し入れを行うことが容易となる。特に、前記蓋体10がその内部に物品を収納可能な空間Tを包有している場合、蓋体10を開くことで(収めている物品を含めた)鞄の重心が大きく変位し得るが、その重心の変位に対して支持体2が鞄本体1を確実に起立姿勢に維持することができる。
【0056】
前記支持体2には、その剛性を高めるための芯材25、26が設けられている。
【0057】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、支持体2が左右方向に拡張した一枚板状をなしていたが、支持体が左右に複数の部分に分割されている(一体でない。さらには、それらが左右方向に沿って伸びる桟や棒等によって相互に連結されている)態様をとることを妨げない。その場合にも、支持体(の左方にある部分)の左方の外側縁は鞄本体1の左側端に近接し(当該部分は、鞄本体1の左側端に対し略平行に上下方向に伸びる)、支持体(の右方にある部分)の右方の外側縁1は鞄本体の右側端に近接している(当該部分は、鞄本体1の右側端に対し略平行に上下方向に伸びる)。これにより、鞄本体1を安定的に起立姿勢に維持できる。
【0058】
その他、各部の具体的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…鞄本体
10…蓋体
16…ショルダーストラップ
2…支持体
24…連結部
25、26…芯材
3…中間棚
31…接続手段(ファスナ)
32…接続手段(面ファスナ)
S…鞄本体の内部空間
T…蓋体の内部空間
U…支持体の内部空間