(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022771
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】光学系および光学機器
(51)【国際特許分類】
G02B 15/12 20060101AFI20220131BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20220131BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
G02B15/12
G03B5/00 J
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116477
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕人
【テーマコード(参考)】
2H087
2K005
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087LA02
2H087LA30
2H087MA07
2H087NA07
2H087PA04
2H087PA09
2H087PA10
2H087PA11
2H087PA13
2H087PA14
2H087PA15
2H087PA16
2H087PA20
2H087PB08
2H087PB15
2H087PB16
2H087PB17
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA12
2H087QA14
2H087QA21
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA43
2H087RA46
2H087UA01
2K005AA05
2K005CA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】倍率変換光学群を挿抜可能で、全長が短い光学系を提供する。
【解決手段】物体側から像側へ順に配置された、前群LF、開口絞りS、後群LRからなる。焦点距離を変化させるために開口絞りSと像面IPとの間に挿抜される倍率変換光学群L4と、倍率変換光学群L4よりも像側の正レンズ群L5とを有する。正レンズ群L5の焦点距離をf
img、正レンズ群L5における最も物体側の光学面から像面までの光軸上の距離をL
img、倍率変換光学群L4の焦点距離をf
ext、光学系に挿入された倍率変換光学群の最も物体側の光学面から像面までの光軸上の距離をL
ext、倍率変換光学群が挿入されていない状態で無限遠物体に合焦した状態での光学系の焦点距離をf
ao、無限遠物体に合焦した状態での光学系の全長をLとするとき、0.10≦[(|f
img×L
img|)/(|f
ext×L
ext|)]/(L/f
ao)≦0.90なる条件を満足する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置された、前群と、開口絞りと、後群からなる光学系であって、
前記光学系の焦点距離を変化させるために前記開口絞りと像面との間に挿抜される倍率変換光学群と、
前記倍率変換光学群よりも像側に配置された正レンズ群とを有し、
前記正レンズ群の焦点距離をfimg、前記正レンズ群における最も物体側の光学面から像面までの光軸上の距離をLimg、前記倍率変換光学群の焦点距離をfext、前記光学系に挿入された前記倍率変換光学群の最も物体側の光学面から前記像面までの光軸上の距離をLext、前記倍率変換光学群が挿入されていない状態で無限遠物体に合焦した状態の前記光学系の焦点距離をfao、前記無限遠物体に合焦した状態での前記光学系の全長をLとするとき、
0.10≦[(|fimg×Limg|)/(|fext×Lext|)]/(L/fao)≦0.90
なる条件を満足することを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記倍率変換光学群が挿入された状態での前記後群の焦点距離をfriとするとき、
1.50≦(|fimg/fri|)/(L/fao)≦3.50
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記前群の焦点距離をff、前記倍率変換光学群が挿入されていない状態での前記後群の焦点距離をfro、前記倍率変換光学群が挿入された状態で前記無限遠物体に合焦した状態での前記光学系の焦点距離をfaiとし、前記前群の焦点距離ffの絶対値が前記倍率変換光学群が挿入された状態での前記後群の焦点距離friの絶対値よりも大きいとするとき、
0.25≦(|fri×fro/ff
2|)/ [L2/(fai×fao)]≦4.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記光学系における最も像側のレンズ群のうち最も像側の光学面から前記像面までの光軸上の空気換算距離をSk、前記像面上の最大像高をhimgをとするとき、
0.30≦[(|fimg×Limg|)/(|fext×Lext|)]/[(himg/Sk)×(L/fao)]
≦3.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記光学系の全長は、前記倍率変換光学群の挿抜によって変化しないことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項6】
前記光学系の最大半画角は、4.5°以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項7】
前記前群は、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群と、負の屈折力の第2レンズ群L2からなり、
前記後群は、物体側から像側へ順に配置された、第3レンズ群と、負の屈折力を有する前記倍率変換光学群としての第4レンズ群と、前記正レンズ群としての第5レンズ群からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の光学系を有することを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換レンズや撮像装置等の光学機器に用いられる光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像に用いられる光学系の焦点距離を変化させる方法として、光路中にエクステンダ等の倍率変換光学群を挿入する方法がある。また、倍率変換光学群の挿抜によって全長(最も物体側の光学面から像面までの距離)が変化しない光学系として、特許文献1には、開口絞りから像面までの間の軸上光束が収束する位置に倍率変換群を挿抜可能な光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように開口絞りから像面までの間に倍率変換光学群を挿入するためのスペースを設けると、元々の光学系の全長が長くなる。また、狭いスペースに倍率変換光学群を挿入すると、光学系の諸収差が増加するおそれもある。
【0005】
本発明は、倍率変換光学群を挿抜可能な光学系でありながらも、全長が短く、良好な光学性能が得られる光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光学系は、物体側から像側へ順に配置された、前群と、開口絞りと、後群からなる。該光学系は、光学系の焦点距離を変化させるために開口絞りと像面との間に挿抜される倍率変換光学群と、倍率変換光学群よりも像側に配置された正レンズ群とを有する。正レンズ群の焦点距離をfimg、正レンズ群における最も物体側の光学面から像面までの光軸上の距離をLimg、倍率変換光学群の焦点距離をfext、光学系に挿入された倍率変換光学群の最も物体側の光学面から像面までの光軸上の距離をLext、倍率変換光学群が挿入されていない状態で無限遠物体に合焦した状態での光学系の焦点距離をfao、無限遠物体に合焦した状態での光学系の全長をLとするとき、
0.10≦[(|fimg×Limg|)/(|fext×Lext|)]/(L/fao)≦0.90
なる条件を満足することを特徴とする。なお、上記光学系を用いた光学機器も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、倍率変換光学群を挿抜可能な光学系でありながらも、全長が短く、良好な光学性能が得られる光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の光学系(倍率変換群の未挿入状態)の断面図と縦収差図。
【
図2】実施例1の光学系(倍率変換群の挿入状態)の断面図と縦収差図。
【
図3】実施例2の光学系(倍率変換群の未挿入状態)の断面図と縦収差図。
【
図4】実施例2の光学系(倍率変換群の挿入状態)の断面図と縦収差図。
【
図5】実施例3の光学系(倍率変換群の未挿入状態)の断面図と縦収差図。
【
図6】実施例3の光学系(倍率変換群の挿入状態)の断面図と縦収差図。
【
図7】実施例1~3のいずれかの光学系を有する撮像装置を示す図。
【
図8】実施例1、2における回折光学素子の構成を示す図。
【
図9】回折光学素子の回折効率の波長依存特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0010】
まず、本発明の実施例としての光学系の概要について説明する。実施例の光学系は、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、銀塩フィルムカメラ、放送用テレビカメラ等の撮像装置に着脱可能な交換レンズ(光学機器)としての望遠レンズの光学系である。ただし、実施例の光学系を撮像装置の撮像レンズとして一体に設けてもよい。
【0011】
また、実施例の光学系は、その一部に倍率変換光学群を挿抜可能であり、倍率変換光学群を挿入することで全系の焦点距離を長焦点距離側に変化させることができる。具体的には、最大半画角が4.5°以下(35mmフルサイズでの撮像素子換算で焦点距離が300mm以上)の光学系を想定している。
【0012】
一般に、望遠レンズでは、物体側から開口絞りまでの間と開口絞りから撮像面までの間とでは、スペース確保の観点および倍率変換光学群の挿入状態での重量の観点から、特許文献1に開示された光学系のように、開口絞りから撮像面までの間に倍率変換光学群を挿抜することが望ましい。このため、実施例の光学系でも、開口絞りから撮像面までの後群内に倍率変換光学群を挿抜する。
【0013】
そして、実施例の光学系では、後群内において、挿入された倍率変換光学群とそれよりも像側に配置された正の屈折力のレンズ群(正レンズ群)との屈折力と配置の関係を適切に設定する。具体的には、倍率変換光学群と正レンズ群の屈折力の絶対値を、他のレンズ群の屈折力の絶対値よりも強くする。特に、正レンズ群の屈折力の絶対値を強くする。このような屈折力の関係により、倍率変換光学群による長焦点距離化に伴う軸外光線の外側への曲げを省スペースで行うことができ、また外側に曲げた軸外光線を像側の正レンズ群で収束させることにより、光学系(レンズ)全長を短縮する。光学系全長は、最も物体側の光学面から像面までの光軸上の距離である。
【0014】
さらに実施例の光学系では、倍率変換光学群から像面までの光軸上の距離と正レンズ群から像面までの光軸上の距離を短くする。特に後者の距離を短くすることにより、物理的な距離を縮めることができるので、レンズ全長をより短縮することができる。
【0015】
以下、実施例の光学系の構成と該光学系が満足する条件について説明する。実施例の光学系は、物体側から像側へ順に、前群と、開口絞りと、後群とを有し、光学系の焦点距離を変化させるために開口絞りと像面との間に後群の一部として挿入可能な倍率変換光学群を有する。後群における倍率変換光学群よりも像側に、前述した正レンズ群を有する。
【0016】
このような光学系において、倍率変換光学群よりも像側の正レンズ群の焦点距離をfimg、該正レンズ群における最も物体側の光学面から像面までの光軸上の距離をLimg、倍率変換光学群の焦点距離をfext、光学系(後群)に挿入された倍率変換光学群の最も物体側の光学面から像面までの光軸上の距離をLext、倍率変換光学群が挿入されていない状態で無限遠物体に合焦した状態での光学系の焦点距離をfao、無限遠物体に合焦した状態での光学系の全長をLとする。このとき、光学系は、以下の条件式(1)を満足する。
【0017】
0.10≦[(|fimg×Limg|)/(|fext×Lext|)]/(L/fao)≦0.90 (1)
条件式(1)は、光学系全長を短縮するために、後群内の倍率変換光学群とそれより像側の正レンズ群の屈折力と配置が満足すべき条件を示す。条件式(1)の値が上限値を超えると、正レンズ群から像面までの距離が長くなり過ぎて、光学系全長が長くなるので、好ましくない。条件式(1)の値が下限値を下回ると、倍率変換光学群の焦点距離が短く(屈折力が強く)なり過ぎて、製造時の敏感度が高くなり過ぎるので、好ましくない。
【0018】
条件式(1)の数値範囲を以下のようにすると、光学系全長を短縮するためにより好ましい。
【0019】
0.200≦[(|fimg×Limg|)/(|fext×Lext|)]/(L/fao)≦0.875 (1a)
また、条件式(1)の数値範囲を以下のようにすると、光学系全長を短縮するためにさらに好ましい。
0.30≦[(|fimg×Limg|)/(|fext×Lext|)]/(L/fao)≦0.85 (1b)
条件式(1)を満足することに加えて、以下の条件式(2)~(4)のうち少なくとも1つを満足することが好ましい。
【0020】
倍率変換光学群が挿入された状態での後群の焦点距離をfriとするとき、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
【0021】
1.50≦(|fimg/fri|)/(L/fao)≦3.50 (2)
条件式(2)は、全長が短縮された光学系において倍率変換光学群が挿入された状態での高い光学性能を確保するために、倍率変換光学群と後群の焦点距離が満足することが好ましい条件である。条件式(2)の値が上限値を超えると、倍率変換光学群の焦点距離が後群の焦点距離に対して大きく(屈折力が弱く)なり過ぎて、後群を通過する軸外光線を外側に曲げることができず、倍率変換光学群を挿入するスペースが広くなり過ぎて光学系全長が長くなるので、好ましくない。条件式(2)の値が下限値を下回ると、倍率変換光学群の焦点距離が後群の焦点距離に対して小さく(屈折力が強く)なり過ぎて、倍率変換光学群で発生する軸外収差(非点収差)を他のレンズ群で補正しきれなくなるので、好ましくない。
【0022】
条件式(2)の数値範囲を以下のようにすると、高い光学性能を確保するためにより好ましい。
【0023】
1.75≦(|fimg/fri|)/(L/fao)≦3.25 (2a)
また、条件式(2)の数値範囲を以下のようにすると、高い光学性能を確保するためにさらに好ましい。
2.00≦(|fimg/fri|)/(L/fao)≦3.00 (2b)
前群の焦点距離をff、倍率変換光学群が挿入されていない状態での後群の焦点距離をfro、倍率変換光学群が挿入された状態で無限遠物体に合焦した状態での光学系の焦点距離をfaiとする。前群の焦点距離ffの絶対値は、倍率変換光学群が挿入された状態での後群の焦点距離friの絶対値よりも大きい。このとき、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0024】
0.25≦(|fri×fro/ff
2|)/ [L2/(fai×fao)]≦4.00 (3)
条件式(3)は、倍率変換光学群が挿入された状態と挿入されていない状態での両方において、光学系全長を短縮するとともに良好な光学性能を確保するために、倍率変換光学群と前群および後群の焦点距離が満足することが好ましい条件を示す。条件式(3)の値が上限値を超えると、倍率変換光学群が挿入された状態での後群の焦点距離が大きく(屈折力が弱く)なり過ぎて、前群で発生する諸収差を補正しきれなくなるので、好ましくない。条件式(3)の値が下限値を下回ると、倍率変換光学群が挿入された状態での後群の焦点距離が小さくなり過ぎ、後群内で発生する軸外収差(非点収差)を補正しきれなくなるので、好ましくない。
【0025】
条件式(3)の数値範囲を以下のようにすると、光学系全長を短縮するとともに良好な光学性能を確保するためにより好ましい。
0.50≦(|fri×fro/ff
2|)/ [L2/(fai×fao)]≦3.75 (3a)
また、条件式(3)の数値範囲を以下のようにすると、光学系全長を短縮するとともに良好な光学性能を確保するためにさらに好ましい。
0.70≦(|fri×fro/ff
2|)/ [L2/(fai×fao)]≦3.60 (3b)
光学系における最も像側のレンズ群のうち最も像側の光学面(最終光学面)から像面までの光軸上の空気換算距離をSk、像面上の最大像高をhimgをとするとき、以下の条件式(4)を満足することが好ましい。
0.30≦[(|fimg×Limg|)/(|fext×Lext|)]/[(himg/Sk)×(L/fao)]≦3.00 (4)
条件式(4)は、倍率変換光学群が挿入された状態と挿入されていない状態での両方において、光学系全長をより短縮するために、後群内の倍率変換光学群とそれよりも像側の正レンズ群の屈折力および配置が満足することが好ましい条件を示す。条件式(4)は、条件式(1)に対して、最終光学面から像面までの光軸上の空気換算距離Skと最大像高himgの項を追加した条件式である。この条件式(4)は、光軸上の空気換算距離Skが短い光学系にも適用することができる。
【0026】
条件式(4)の値が上限値を超えると、正レンズ群から像面までの距離が長くなり過ぎて、光学系全長が長くなるので、好ましくない。条件式(4)の値が下限値を下回ると、倍率変換光学群の焦点距離が短く(屈折力が強く)なり過ぎて、製造時の敏感度が高くなり過ぎるので、好ましくない。
【0027】
条件式(4)の数値範囲を以下のようにすると、光学系全長を短縮するためにより好ましい。
0.40≦[(|fimg×Limg|)/(|fext×Lext|)]/[(himg/Sk)×(L/fao)]≦2.75 (4a)
また、条件式(4)の数値範囲を以下のようにすると、光学系全長を短縮するためにさらに好ましい。
0.50≦[(|fimg×Limg|)/(|fext×Lext|)]/[(himg/Sk)×(L/fao)]≦2.50 (4b)
また、後述する各実施例の光学系に共通な特徴として、光学系全長が倍率変換光学群の挿抜によって変化しないことと、最大半画角が4.5°以下の超望遠レンズであることが挙げられる。特に倍率変換光学群の挿抜によって全長が変わらないことにより、超望遠レンズの焦点距離が長くなることにより全長が長くなって重量も増加するという課題を解消することができる。
【0028】
次に、具体的な実施例について説明する。まず各実施例に共通する事項について説明する。各実施例の光学系は、単焦点の超望遠レンズである。
図1、
図3および
図5はそれぞれ、実施例1、実施例2および実施例3の光学系であって倍率変換光学群が未挿入状態で無限遠物体に合焦した状態での断面と縦収差を示している。
図2、
図4および
図6はそれぞれ、実施例1、実施例2および実施例3の光学系であって倍率変換光学群が挿入状態で無限遠物体に合焦した状態での断面と縦収差を示している。
【0029】
各実施例の光学系は、物体側から像側へ順に配置された、前群LFと、開口絞りSと、後群LRとにより構成されている。前群LFは、物体側から像側へ順に配置された、正の屈折力の第1レンズ群L1と、負の屈折力の第2レンズ群L2とにより構成されている。後群LRは、物体側から像側へ順に配置された、第3レンズ群L3と、負の屈折力を有する倍率変換光学群としての第4レンズ群L4と、正の屈折力の第5レンズ群(正レンズ群)とにより構成されている。第4レンズ群L4の未挿入状態と挿入状態とで光学系全長は不変である。
【0030】
無限遠物体から至近距離物体へのフォーカシングは、第2レンズ群L2を構成するフォーカスレンズ群Lfoを像側へ移動させることで行う。
【0031】
各断面図において、Oは光軸、IPは像面、Gは水晶ローパスフィルタや赤外カットフィルタ等のガラスブロックをそれぞれ表している。実施例1、2において、Ldoeは回折光学素子、asphは非球面をそれぞれ表している。回折光学素子Ldoeにおける回折面は、実施例1、2とも物体側から数えて2番目の接合レンズの接合面に設けられている。また非球面asphは、最も物体側の正レンズの物体側の光学面に設けられている。
【0032】
各実施例において、第3レンズ群L3内のISレンズ群LISを光軸Oと直交する方向に移動させることにより、手振れ等による像振れを低減(補正)する。
【0033】
縦収差のうち球面収差については、実線でd線(波長587.6nm)の球面収差を、二点鎖線でg線(波長435.8nm)の球面収差を、破線は正弦条件を示している。非点収差については、実線(S)でd線のサジタル光線の非点収差を、点線(M)でd線のメリディオナル光線の非点収差を示している。歪曲については、d線の歪曲を示している。色収差については、g線の倍率色収差を示している。FnoはFナンバーを、ωは半画角(°)を示している。
【0034】
また、実施例1~3の説明の後に、各実施例に対応する数値実施例を示す。数値実施例には、倍率変換光学群の未挿入状態で無限遠物体に合焦した状態の数値実施例と、倍率変換光学群の挿入状態で無限遠物体に合焦した状態の数値実施例が含まれる。さらに数値実施例1~6の後に示す表1は、実施例1~3(数値実施例1~6)における前述した条件式(1)~(4)の値をまとめて示している。
【実施例0035】
図1および
図2に示す実施例1の光学系は、数値実施例1に示すように第4レンズ群(倍率変換光学群)L4の未挿入状態での焦点距離が392.6mm、Fnoが4.12で、数値実施例2に示すように第4レンズ群L4の挿入状態での焦点距離が549.7mm、Fno5.77の超望遠レンズである。最も像側の第5レンズ群L5は、接合レンズにより構成されている。
【0036】
図1および
図2の縦収差図から分かるように、本実施例の光学系では、第4レンズ群L4の未挿入状態と挿入状態のいずれにおいても各収差が良好に補正されている。
【0037】
また数値実施例1、2および表1から分かるように、本実施例の光学系は条件式(1)~(4)を満足している。このため、本実施例の光学系は、第4レンズ群L4の挿抜が可能でありながらも、全長が短く、諸収差が良好に補正された高い光学性能を有する。
また数値実施例3、4および表1から分かるように、本実施例の光学系も条件式(1)~(4)を満足している。このため、本実施例の光学系も、第4レンズ群L4の挿抜が可能でありながらも、全長が短く、諸収差が良好に補正された高い光学性能を有する。