(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022808
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】制御装置及びセンサ装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20220131BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20220131BHJP
G01S 7/4861 20200101ALN20220131BHJP
【FI】
H01L31/10 G
H01L31/10 B
G01S7/4861
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117252
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 義徳
【テーマコード(参考)】
5F849
5J084
【Fターム(参考)】
5F849AA07
5F849BA10
5F849BA21
5F849BB07
5F849KA05
5F849KA06
5F849KA12
5F849KA16
5F849LA01
5F849XB01
5F849XB38
5J084AA05
5J084BA04
5J084BA36
5J084BA50
5J084BB14
5J084BB28
5J084CA21
5J084EA01
5J084EA12
(57)【要約】
【課題】アバランシェダイオードを所望の増倍率で動作させる。
【解決手段】推定部210は、アバランシェダイオード130が所定の増倍率となるアバランシェダイオード130の基準動作電圧を推定する。設定部220は、推定部210によって推定された基準動作電圧を用いてアバランシェダイオード130の増倍率を設定する。推定部210は、アバランシェダイオード130の動作電圧をアバランシェダイオード130の温度が所定の温度範囲に収まる時間内に掃引することで、アバランシェダイオード130の増倍率が所定の増倍率となるアバランシェダイオード130の動作電圧をアバランシェダイオード130の基準動作電圧として推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射部から出射され、可動反射部によって所定の走査範囲に向けて反射され、前記走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信するアバランシェダイオードを制御する制御装置であって、
前記アバランシェダイオードが所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの基準動作電圧を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記基準動作電圧を用いて前記アバランシェダイオードの増倍率を設定する設定部と、
を備え、
前記推定部は、前記アバランシェダイオードの動作電圧を前記アバランシェダイオードの温度が所定の温度範囲に収まる時間内に掃引することで、前記アバランシェダイオードの前記増倍率が前記所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの前記動作電圧を前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧として推定する、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記所定の温度範囲が±0.075℃である、制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置において、
前記可動反射部の走査線が、第1方向に蛇行しながら、前記第1方向に交わる第2方向に伸びており、
前記推定部は、前記可動反射部の走査線が、前記可動反射部によって生成される視野の前記第2方向における両外側の少なくとも一方を通過するタイミングで、前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧を推定する、制御装置。
【請求項4】
電磁波を出射する出射部と、
前記出射部から出射された前記電磁波を所定の走査範囲に向けて反射する可動反射部と、
前記走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信するアバランシェダイオードと、
請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置と、
を備えるセンサ装置。
【請求項5】
アバランシェダイオードを制御する制御装置であって、
前記アバランシェダイオードが所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの基準動作電圧を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記基準動作電圧を用いて前記アバランシェダイオードの増倍率を設定する設定部と、
を備え、
前記推定部は、前記アバランシェダイオードの動作電圧を前記アバランシェダイオードの温度が所定の温度範囲に収まる時間内に掃引することで、前記アバランシェダイオードの前記増倍率が前記所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの前記動作電圧を前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧として推定する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及びセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LiDAR(Light Detection And Ranging)等のセンサ装置が開発されている。センサ装置は、赤外線等の電磁波を受信するアバランシェダイオードを備えている。
【0003】
特許文献1及び2には、アバランシェダイオードの温度補償について記載されている。この温度補償では、アバランシェダイオードを定電流駆動して降伏電圧を検知する。そしてこの降伏電圧より所定の電圧だけ低い動作電圧でアバランシェダイオードを動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55-68683号公報
【特許文献2】特開昭60-149929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アバランシェダイオードを所望の増倍率で動作させるためには、アバランシェダイオードが当該所望の増倍率となる降伏電圧等の基準動作電圧を推定する必要がある。一方、特許文献1又は2に記載されているように、アバランシェダイオードを定電流駆動して降伏電圧を検知する場合がある。しかしながら、この場合、アバランシェダイオードに流れる電流に起因した温度上昇によって、アバランシェダイオードの基準動作電圧を正確に推定することができないことがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、アバランシェダイオードを所望の増倍率で動作させることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
出射部から出射され、可動反射部によって所定の走査範囲に向けて反射され、前記走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信するアバランシェダイオードを制御する制御装置であって、
前記アバランシェダイオードが所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの基準動作電圧を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記基準動作電圧を用いて前記アバランシェダイオードの増倍率を設定する設定部と、
を備え、
前記推定部は、前記アバランシェダイオードの動作電圧を前記アバランシェダイオードの温度が所定の温度範囲に収まる時間内に掃引することで、前記アバランシェダイオードの前記増倍率が前記所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの前記動作電圧を前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧として推定する、制御装置である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、
電磁波を出射する出射部と、
前記出射部から出射された前記電磁波を所定の走査範囲に向けて反射する可動反射部と、
前記走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信するアバランシェダイオードと、
請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置と、
を備えるセンサ装置である。
【0009】
請求項5に記載の発明は、
アバランシェダイオードを制御する制御装置であって、
前記アバランシェダイオードが所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの基準動作電圧を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記基準動作電圧を用いて前記アバランシェダイオードの増倍率を設定する設定部と、
を備え、
前記推定部は、前記アバランシェダイオードの動作電圧を前記アバランシェダイオードの温度が所定の温度範囲に収まる時間内に掃引することで、前記アバランシェダイオードの前記増倍率が前記所定の増倍率となる前記アバランシェダイオードの前記動作電圧を前記アバランシェダイオードの前記基準動作電圧として推定する、制御装置である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】アバランシェダイオード及び設定部の回路図である。
【
図4】動作電圧V
APDと増倍率Mとの関係の一例を示すグラフである。
【
図5】動作電圧V
APDと増倍率Mとの関係の温度依存性の一例を示すグラフである。
【
図6】降伏電圧V
BRに対する動作電圧V
APDの比と増倍率Mとの関係の一例を示すグラフである。
【
図7】制御装置の動作の第1例を説明するためのグラフである。
【
図8】制御装置の動作の第2例を説明するためのグラフである。
【
図9】制御装置の制御の第3例を説明するためのグラフである。
【
図10】制御装置の制御の第4例を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係るセンサ装置10を示す図である。
【0013】
図1において、第1方向X及び第2方向Yは、互いに交差しており、具体的には直交している。
図1において、第1方向Xは水平方向である。第1方向Xを示す矢印の方向である第1方向Xの正方向は、後述する可動反射部120から可動反射部120の走査範囲に向かって見て左方向である。第1方向Xを示す矢印の方向の反対方向である第1方向Xの負方向は、可動反射部120が位置する側から可動反射部120の走査範囲に向かって見て右方向である。第2方向Yは垂直方向である。第2方向Yを示す矢印の方向である第2方向Yの正方向は、上方向である。第2方向Yを示す矢印の方向の反対方向である第2方向Yの負方向は、下方向である。
【0014】
本明細書の説明から明らかなように、第1方向Xは水平方向と異なる方向であってもよく、第2方向Yは垂直方向と異なる方向であってもよい。
【0015】
センサ装置10は、出射部110、可動反射部120、アバランシェダイオード130、ビームスプリッタ140及び制御装置20を備えている。制御装置20は、推定部210及び設定部220を有している。
図1において、出射部110、可動反射部120、アバランシェダイオード130、ビームスプリッタ140及び走査線Lにかけて延びる点線は、出射部110、可動反射部120、アバランシェダイオード130、ビームスプリッタ140及び走査線Lに亘って伝搬する電磁波を示している。
図1では、可動反射部120から走査線Lに向けて反射された電磁波は、走査線Lが形成される領域のおおよそ中央部に向けて照射されている。
【0016】
出射部110は、一定のタイミングの間隔でパルス状の赤外線等の電磁波を出射する。出射部110は、例えばレーザダイオード(LD)等、電流等の電気を光等の電磁波に変換可能な素子である。出射部110から出射された電磁波は、ビームスプリッタ140を透過して可動反射部120に入射する。
【0017】
可動反射部120は、出射部110から出射された電磁波を所定の走査範囲内に向けて反射する。可動反射部120の走査範囲は、可動反射部120によって反射された電磁波によって照射可能な範囲である。可動反射部120は、例えば、2軸MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。可動反射部120は、第1方向Xに沿って例えば正弦波状に駆動されており、第2方向Yに沿って例えば鋸歯状波状に第1方向Xに沿った正弦波より低い周波数で駆動されている。すなわち、第1方向Xは、可動反射部120の共振駆動の方向であり、第2方向Yは、可動反射部120の線型駆動の方向となっている。これにより、可動反射部120の走査線Lは、第1方向Xに蛇行しながら、第2方向Yに伸びている。
【0018】
出射部110から出射されて可動反射部120によって反射された電磁波の少なくとも一部分は、センサ装置10の外部に存在する物体等の対象物によって反射又は散乱される。この電磁波は、可動反射部120に戻り、可動反射部120による反射と、ビームスプリッタ140による反射と、を順に経て、アバランシェダイオード130によって受信される。アバランシェダイオード130は、APD(アバランシェフォトダイオード)等、光等の電磁波を電流等の電気に変換可能な素子である。
【0019】
制御装置20は、アバランシェダイオード130を制御している。具体的には、制御装置20は、アバランシェダイオード130のAGC(自動利得制御)を行っている。
【0020】
推定部210及び設定部220は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。推定部210及び設定部220は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0021】
推定部210は、アバランシェダイオード130が所定の増倍率となるアバランシェダイオード130の基準動作電圧を推定する。基準動作電圧は、例えば、アバランシェダイオード130の降伏電圧である。なお、基準動作電圧は、アバランシェダイオード130の降伏電圧より低くてもよい。設定部220は、推定部210によって推定された基準動作電圧を用いてアバランシェダイオード130の増倍率を設定する。推定部210は、アバランシェダイオード130の動作電圧をアバランシェダイオード130の温度が所定の温度範囲に収まる時間内に掃引することで、アバランシェダイオード130の増倍率が所定の増倍率となるアバランシェダイオード130の動作電圧をアバランシェダイオード130の基準動作電圧として推定する。
【0022】
推定部210は、例えばHVA(High Voltage Amplifier)によってアバランシェダイオード130の動作電圧を高速に掃引する。具体的には、推定部210は、動作電圧を相対的に低い電圧から相対的に高い電圧に向けて高速に増加させる。増倍率が高いほどアバランシェダイオード130には高電流が流れ、アバランシェダイオード130の温度が上昇する。アバランシェダイオード130の温度は、アバランシェダイオード130に電流が流れる時間が長くなるほど上昇する。そしてアバランシェダイオード130の温度が上昇するほど、アバランシェダイオード130の降伏電圧等の基準動作電圧が高くなる。本実施形態では、動作電圧の高速掃引によって、アバランシェダイオード130の温度上昇が無視できるほど小さくなっている。したがって、アバランシェダイオード130の降伏電圧等の基準動作電圧を正確に推定することができる。
【0023】
上述した観点より、上述した所定の温度範囲は、例えば±0.075℃にすることができる。また、上述した観点より、アバランシェダイオード130の動作電圧の掃引時間は、例えば38.5ミリ秒以下にすることができる。
【0024】
推定部210は、可動反射部120の走査線Lが、可動反射部120によって生成される視野Fの第2方向Yにおける両外側の少なくとも一方を通過するタイミングで、アバランシェダイオード130の基準動作電圧を推定するようにすることができる。基準動作電圧の推定には一定の時間を要する。したがって、可動反射部120の走査範囲のうち比較的長期間である上記タイミングを用いることで、可動反射部120の走査範囲のうち他のタイミングを用いるよりも、基準動作電圧の推定が容易となる。しかしながら、推定部210は、上記タイミングと異なるタイミングで、アバランシェダイオード130の基準動作電圧を推定してもよい。
【0025】
なお、視野Fは、例えば、可動反射部120によって生成されるFOV(Field Of View)である。
【0026】
センサ装置10は、制御装置20がアバランシェダイオード130のAGCを行った後、AGCが行われたアバランシェダイオード130を用いての出射部110の出力電磁波強度の調整と、AGCが行われたアバランシェダイオード130を用いての可動反射部120の振れ角の調整と、の少なくとも一方を行ってもよい。例えば、センサ装置10は、可動反射部120による走査の1フレーム内において、アバランシェダイオード130のAGCと、出射部110の出力電磁波強度の調整と、可動反射部120の振れ角の調整と、を行ってもよい。この例においては、例えば、アバランシェダイオード130のAGCは、可動反射部120によって生成される視野Fの第2方向Yにおける両外側の一方で行ってもよい。また、出射部110の出力電磁波強度の調整は、可動反射部120によって生成される視野Fの第1方向Xにおける両外側の一方で行なってもよい。さらに、可動反射部120の振れ角の調整は、可動反射部120によって生成される視野Fの第1方向Xにおける両外側の他方で行なってもよい。さらに、出射部110の出力電磁波強度の調整後、可動反射部120の振れ角の調整が行われるようにすることができる。この場合、可動反射部120の振れ角の調整後に出射部110の出力電磁波強度の調整が行われる場合と比較して、出射部110の出力電磁波強度が安定した状態で、可動反射部120の振れ角の調整を行うことができる。可動反射部120の振れ角の調整後に出射部110の出力電磁波強度の調整が行われてもよい。
【0027】
推定部210は、基準反射体300によって反射又は散乱された電磁波を用いてアバランシェダイオード130の基準動作電圧を推定してもよい。この電磁波は、基準反射体300による反射又は散乱によって可動反射部120に向けて戻り、可動反射部120による反射と、ビームスプリッタ140による反射と、を順に経て、アバランシェダイオード130によって受信される。仮に、背景光を用いて基準動作電圧を推定する場合、基準動作電圧の推定期間中に背景光の強度が変動して基準動作電圧の推定精度が低下するおそれがある。これに対して、基準反射体300によって反射又は散乱された電磁波を用いる場合、背景光を用いる場合と比較して、電磁波の強度の変動が抑えられ、基準動作電圧の推定精度を向上させることができる。また、このような観点から、基準反射体300は、出射部110から出射される電磁波について、比較的低反射率、例えば1%以上10%以下の反射率を有することが好ましい。なお、推定部210は、背景光を用いて基準動作電圧を推定してもよい。
【0028】
可動反射部120から基準反射体300までの距離は、可動反射部120から上記対象物までの距離より短くなっている。したがって、出射部110からの電磁波の出射から、基準反射体300による電磁波の反射を経て、アバランシェダイオード130による電磁波の受信までの時間は、出射部110からの電磁波の出射から、上記対象物による電磁波の反射を経て、アバランシェダイオード130による電磁波の受信までの時間より短くなる。このため、アバランシェダイオード130において発生する信号の時間差に基づいて、センサ装置10は、アバランシェダイオード130において発生した信号が、基準反射体300に起因する信号であるか、又は上記対象物に起因する信号であるかを区別することができる。
【0029】
基準反射体300は、センサ装置10に設けられていてもよい。すなわち、センサ装置10は、基準反射体300を備えていてもよい。或いは、基準反射体300は、センサ装置10の外部に設けられていてもよい。基準反射体300がセンサ装置10に設けられている場合、基準反射体300は、例えば、出射部110、可動反射部120、アバランシェダイオード130、ビームスプリッタ140等センサ装置10を構成する部材を収容する筐体の窓部、すなわち、筐体の内部と外部との間で電磁波が透過する部分に設けることができる。しかしながら、基準反射体300が設けられる場所は、窓部に限定されない。
【0030】
図2は、推定部210及び設定部220の機能ブロック図である。
【0031】
図2に示すように、設定部220には、背景光Pが入力され、電圧V
hが与えられている。背景光P及び電圧V
hに応じて設定部220から出力電圧V
outが出力されている。推定部210は、設定部220から出力された出力電圧V
outを用いて、アバランシェダイオード130の降伏電圧V
BRを推定している。設定部220は、推定部210によって推定された降伏電圧V
BRを用いて、アバランシェダイオード130の増倍率を設定している。
【0032】
図3は、アバランシェダイオード130及び設定部220の回路図である。
【0033】
図3に示すように、設定部220は、TIA(transimpedance amplifier)回路となっている。アバランシェダイオード130のカソードには、抵抗値R
limの抵抗を介して電圧V
hが印加されている。アバランシェダイオード130のアノードは、非反転入力端子が接地されたオペアンプUの反転入力端子に接続されている。アバランシェダイオード130には、電流I
outが流れている。アバランシェダイオード130の動作電圧V
APDは、V
h-R
limI
outとなる。オペアンプUの反転入力端子と出力端子との間には、抵抗値R
fの抵抗が接続されている。オペアンプUの出力端子からは、抵抗値R
1の抵抗を介して出力電圧V
outが出力されている。
【0034】
図4は、動作電圧V
APDと増倍率Mとの関係の一例を示すグラフである。
図4において、グラフの横軸は、アバランシェダイオード130の動作電圧V
APD(単位:V)を示している。また、グラフの縦軸は、アバランシェダイオード130の増倍率Mを示している。
【0035】
図4を参照しながら
図1~
図3を用いて、制御装置20の動作の一例を説明する。
【0036】
推定部210は、アバランシェダイオード130の増倍率Mが100000となる動作電圧VAPDをアバランシェダイオード130の降伏電圧VBRとして推定している。設定部220は、推定部210によって推定された降伏電圧VBRを用いてアバランシェダイオード130の増倍率を設定している。
【0037】
図5は、動作電圧V
APDと増倍率Mとの関係の温度依存性の一例を示すグラフである。
図6は、降伏電圧V
BRに対する動作電圧V
APDの比と増倍率Mとの関係の一例を示すグラフである。
【0038】
図5において、グラフの横軸は、アバランシェダイオード130の動作電圧V
APD(単位:V)を示している。
図6において、グラフの横軸は、降伏電圧V
BRに対する動作電圧V
APDの比を示している。また、
図5及び
図6において、グラフの縦軸は、アバランシェダイオード130の増倍率Mを示している。
図5における各曲線は、アバランシェダイオード130の温度につき-20℃、-10℃、0℃、10℃、15℃、25℃、40℃、50℃、60℃及び85℃についての特性を示している。増倍率Mが1.E+02以上の範囲において、各温度の特性は、動作電圧V
APDの高電圧側に向けて、昇温順に並んでいる。
【0039】
増倍率Mは、Millerの近似式によって、以下の式(1)に示されるようになる。
【数1】
ただし、kは、イオン化率比であり、nは、不純物プロファイル等、アバランシェダイオード130の素子構造で決定される値である。イオン化率比kは、電子のイオン化率αに対する正孔のイオン化率βの比β/αによって表される。
【0040】
図5に示すように、動作電圧V
APDと増倍率Mとの関係は、アバランシェダイオード130の温度に依存して変動する。これに対して、
図6に示すように、降伏電圧V
BRに対する動作電圧V
APDの比と増倍率Mとの関係は、理論上、アバランシェダイオード130の温度によらず一定となる。なお、増倍率が比較的高い領域では、アバランシェダイオード130の暗電流が比較的大きくなり、暗電流によってアバランシェダイオード130の温度が上昇し、増倍率が低下し得る。したがって、増倍率が比較的高い領域では、アバランシェダイオード130の温度が高いほど、増倍率が僅かに低下し得る。
【0041】
図7は、制御装置20の動作の第1例を説明するためのグラフである。
図7において、グラフの横軸は、降伏電圧V
BRに対する動作電圧V
APDの比を示している。また、グラフの縦軸は、出力電圧V
out(単位:V)を示している。
【0042】
図7を参照しながら
図1~
図3を用いて、制御装置20の動作の一例を説明する。
【0043】
図7では、初期化として、暗状態において、V
out=0.5Vとなる電圧V
hを取得し、アバランシェダイオード130の降伏電圧V
BRを推定している。
【0044】
図7では、最大背景光量28nWの背景光Pがアバランシェダイオード130に入射している。V
APD/V
BR=0.985から16.7msごとに電圧V
hを約0.1Vずつ上昇させて、V
out=0.5Vとなる電圧V
hを取得している。電圧V
hは、7~14点において取得されている。このため、各電圧V
hの取得にかかる時間は、117ms~234msとなっている。推定部210は、V
out=0.5Vとなる電圧V
hを線形近似によって算出し、算出された電圧V
hから降伏電圧V
BRを推定する。
【0045】
例えば、可動反射部120の走査線Lが第1方向Xにおいて一往復するのに要する時間が約1msである場合において、推定部210が視野Fの第2方向Yにおける両外側の一方のみを用いて降伏電圧VBRを推定するとき、推定部210は、234フレームで降伏電圧VBRを推定することができる。一方、推定部210が視野Fの第2方向Yにおける両外側の双方を用いて降伏電圧VBRを推定するとき、推定部210は、117フレームで降伏電圧VBRを推定することができる。
【0046】
図8は、制御装置20の動作の第2例を説明するためのグラフである。
図8に示す例は、以下の点を除いて、
図7に示す例と同様である。
【0047】
図8では、アバランシェダイオード130を暗状態に置いている。V
APD/V
BR=0.985から16.7msごとに電圧V
hを約0.1Vずつ上昇させて、V
out=0.5Vとなる電圧V
hを取得している。電圧V
hは、11~19点において取得されている。このため、各電圧V
hの取得にかかる時間は、184ms~317msとなっている。推定部210は、V
out=0.5Vとなる電圧V
hを線形近似によって算出し、算出された電圧V
hから降伏電圧V
BRを推定する。
【0048】
図7及び
図8では、電圧V
hを約0.1Vずつ上昇させている。しかしながら、電圧V
hは、0.1Vより小さい電圧ずつ上昇させてもよい。推定部210は、V
out=0.5Vとなる電圧V
hを線形近似によって算出している。このため、電圧V
hの上昇の刻みを小さくすることで、推定部210の算出の精度を向上させることができる。
【0049】
図9は、制御装置20の制御の第3例を説明するためのグラフである。
図9に示す例は、以下の点を除いて、
図7に示す例と同様である。
【0050】
図9では、最大背景光量28nWの背景光Pがアバランシェダイオード130に入射している。V
APD/V
BR=0.985から16.7msごとに電圧V
hを約0.1Vずつ上昇させて、V
out=1.0Vとなる電圧V
hを取得している。電圧V
hは、14~20点において取得されている。このため、各電圧V
hの取得にかかる時間は、234ms~334msとなっている。推定部210は、V
out=1.0Vとなる電圧V
hを線形近似によって算出し、算出された電圧V
hから降伏電圧V
BRを推定する。
【0051】
図10は、制御装置20の制御の第4例を説明するためのグラフである。
図10に示す例は、以下の点を除いて、
図9に示す例と同様である。
【0052】
図10では、アバランシェダイオード130を暗状態に置いている。V
APD/V
BR=0.985から16.7msごとに電圧V
hを約0.1Vずつ上昇させて、V
out=1.0Vとなる電圧V
hを取得している。電圧V
hは、16~25点において取得されている。このため、各電圧V
hの取得にかかる時間は、267ms~418msとなっている。推定部210は、V
out=1.0Vとなる電圧V
hを線形近似によって算出し、算出された電圧V
hから降伏電圧V
BRを推定する。
【0053】
以上、図面を参照して実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0054】
例えば、実施形態では、センサ装置10は、LiDARとなっている。すなわち、アバランシェダイオード130は、出射部110から出射され、可動反射部120によって所定の走査範囲に向けて反射され、走査範囲内に存在する物体によって反射された電磁波を受信している。しかしながら、制御装置20は、LiDAR以外に用いられるアバランシェダイオードを制御してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 センサ装置
20 制御装置
110 出射部
120 可動反射部
130 アバランシェダイオード
140 ビームスプリッタ
210 推定部
220 設定部
300 基準反射体
F 視野
L 走査線
X 第1方向
Y 第2方向