(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022816
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】滑り止め機能付き板材および滑り止め機能付き板材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21C 23/00 20060101AFI20220131BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20220131BHJP
B62D 33/02 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
B21C23/00 Z
E04F15/02 C
B62D33/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117356
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000250432
【氏名又は名称】理研軽金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079164
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 勇
(72)【発明者】
【氏名】林 沛征
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光広
(72)【発明者】
【氏名】高柳 岳
(72)【発明者】
【氏名】清水 文貴
【テーマコード(参考)】
2E220
4E029
【Fターム(参考)】
2E220AA45
2E220BA01
2E220BB05
2E220FA03
2E220GB05X
4E029AA06
4E029AC02
4E029AC03
4E029EA02
(57)【要約】
【課題】アルミニウム合金等の押し出し成形時に履物の滑り止め効果を得られるようになり、生産性の向上を図れるようになる滑り止め機能付き板材および滑り止め機能付き板材の製造方法を提供する。
【解決手段】滑り止め機能付き板材50は、メタル供給装置100から連続して押出されるメタルMを押出しダイス1によって成形されるようになっている。この滑り止め機能付き板材50は、平板状の表面部50Aと、表面部50Aの幅方向一端部に当該表面部50Aと直交して折り曲げ形成された折曲げ部50Bとで構成されている。そして、この表面部50Aの長手方向および当該長手方向と交差する方向(長手方向に対して傾斜して連続する意匠も含む)に、靴等の履物の滑りを防止する滑り止め模様が形成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材供給装置から連続して押出される熱可塑性部材を押出しダイスによって成形されてなる滑り止め機能付き板材であって、
表面部の長手方向および当該長手方向と交差する方向(長手方向に対して傾斜して連続する意匠も含む)に履物の滑りを防止する滑り止め模様を形成したことを特徴とする滑り止め機能付き板材。
【請求項2】
請求項1に記載の滑り止め機能付き板材において、
前記滑り止め模様を、前記表面の長手方向および当該長手方向と直角に交差する幅方向に連続して形成される凹凸状模様で形成したことを特徴とする滑り止め機能付き板材。
【請求項3】
請求項2に記載の滑り止め機能付き板材において、
前記凹凸状模様を、間隔をあけて形成された四角形模様部と隣り合う四角形模様部同士の隙間部とで形成すると共に、前記四角形模様部と前記隙間部とのいずれか一方を凸状部とし他方を凹状部としたことを特徴とする滑り止め機能付き板材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の滑り止め機能付き板材において、
前記表面部の幅方向の一方側端部に、前記長手方向に沿いかつ前記表面部に対して少なくとも一つの折曲げ部を形成したことを特徴とする滑り止め機能付き板材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の滑り止め機能付き板材において、
床材として使用したことを特徴とする滑り止め機能付き板材。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の滑り止め機能付き板材において、
前記熱可塑性部材を、アルミニウム合金で構成したことを特徴とする滑り止め機能付き板材。
【請求項7】
素材供給装置から連続して押出される熱可塑性部材を押出しダイスにより滑り止め機能付き板材を製造する滑り止め機能付き板材の製造方法であって、
前記押出しダイスは、上型ダイと、この上型ダイを支持する下型ダイと、この下型ダイに装備され外力に付勢されて回転する円柱状の滑り止め模様成形具と、を備え、
前記熱可塑性部材を前記上型ダイに導入する第1の工程と、
前記第1の工程で導入された熱可塑性部材を、前記上型ダイに形成されているベアリング部で前記滑り止め機能付き板材の外形形状を成形する第2の工程と、
前記第2の工程で成形された滑り止め機能付き板材の表面部の長手方向および当該長手方向と交差する方向(長手方向に対して傾斜して連続する意匠も含む)に、前記滑り止め模様成形具により滑り止め模様を成形する第3の工程と、を備えていることを特徴とする滑り止め機能付き板材の製造方法。
【請求項8】
前記第3の工程では、前記滑り止め模様成形具を取り付け且つ前記下型ダイに設けられた成形具取付け部材を、前記下型ダイの外周側からの外力により前記滑り止め模様成形具の径方向に移動自在とする第4の工程を有することを特徴とする滑り止め機能付き板材の製造方法。
【請求項9】
前記第3の工程で成形された滑り止め機能付き板材を、前記下型ダイの外部に送り出すと共に当該外部において使用目的に対応させた長さに切断する第5の工程を備えていることを特徴とする滑り止め機能付き板材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性材料としてのアルミニウム合金等を押出し成形することにより形成される滑り止め機能付き板材および滑り止め機能付き板材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にアルミニウム合金等は、加工性に優れており、断面形状の自由度も高く期待できる等、様々な形状を得ることができることから押出し加工に適している。そのため、この押出し加工は現在では広く採用されている。
例えば、アルミニウム合金の押出し加工により、幅方向に多数の穴が連続する扁平状多穴管、長尺の板材やパイプ部材等が成形されており、あるいは、表面にラック状や波形状等、凹凸形状の模様を成形することも行われている。
【0003】
従来、上記のような押出し加工により形成されたアルミニウム合金等の板材を、例えば、床部材90(滑り止め機能付き板材)として用いた例が、
図19(A),(B)に示されている。
この床部材90は、平板状の表面部90Aと、この表面部90Aの幅方向の一端部に、当該表面部90Aと直交して形成された折曲げ部90Bとで形成されており、表面部90Aに、その長手方向に沿った滑り止め模様90Dが複数条形成されている。
この滑り止め模様90Dは、長手方向と直交する方向(幅方向)に一定間隔で、凹状溝部90Aaと凸状溝部90Abとで凹凸形状に形成されている。そして、この滑り止め模様90Dにより、靴等の履物の滑りが防止されるようになっている。
【0004】
また、上記のような押出し加工により形成されたアルミニウム合金等の板材を、例えば、トラック用の床部材として使用した技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に開示された床部材では、アルミニウムまたはアルミニウム合金の押出成形により、床部材と、その床部材の表面に複数の突起条とが作成され、これらの突起条に、靴滑り止め部形成凹部を設けた構成と成っており、これにより、靴滑りの防止性が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記
図19(A),(B)に開示されている従来の床部材90では、滑り止め模様90Dの形状が、床部材90の表面部90Aの長手方向に沿い、かつ、幅方向に一定間隔で形成された複数条の凹状溝部90Aaと凸状溝部90Abとの溝状に形成されており、溝形状が一様となっている。
そのため、溝形状による摩擦抵抗で、表面部90Aの幅方向での滑りを防ぐことはできるが、長手方向の滑りを防ぐことができない、という課題が生じている。
そこで、長手方向の滑り止めの機能を果たせるように、後冷間加工で溝を付ける方法等が行われているが、この場合、冷間加工により床部材の形状変形が生じ、また、後加工が必要となる分、そのための装置を揃えなくてはならず、多くの手間等もかかり、その結果、生産性が悪いという問題がある。
さらに、長い床材を製造した場合は、専用の設備等必要となる等、後加工が困難である、という問題等もある。
【0007】
また、上記特許文献1に開示された技術では、アルミニウム合金等の押出し成形時に、まず、床板部に突起条が成形された後、その突起条に、ローレット加工または切削加工により靴滑り止め部形成凹部を形成するようになっている。そして、この技術では、突起条靴滑り止め部形成凹部が形成されない突起条のものもあり、これらが、交互に配置されている。
そのため、作業者は、まず形成凹部を形成する突起条と、形成凹部を形成しない突起条とを選択する必要があり、必要なものだけにローレット加工等の後加工をしなければならず、後加工が面倒で、多くの手間がかかり、その結果、生産性が悪いという問題がある。
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明では、アルミニウム合金等の押し出し成形時に履物の滑り止め効果を得られるようになり、生産性の向上を図れるようになる滑り止め機能付き板材および滑り止め機能付き板材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の滑り止め機能付き板材は、素材供給装置から連続して押出される熱可塑性部材を押出しダイスによって成形されてなる滑り止め機能付き板材であって、
表面部の長手方向および当該長手方向と交差する方向(長手方向に対して傾斜して連続する意匠も含む)に履物の滑りを防止する滑り止め模様を形成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の滑り止め機能付き板材の製造方法は、素材供給装置から連続して押出される熱可塑性部材を押出しダイスにより滑り止め機能付き板材を製造する滑り止め機能付き板材の製造方法であって、
前記押出しダイスは、上型ダイと、この上型ダイを支持する下型ダイと、この下型ダイに装備され外力に付勢されて回転する円柱状の滑り止め模様成形具と、を備え、
前記熱可塑性部材を前記上型ダイに導入する第1の工程と、
前記第1の工程で導入された熱可塑性部材を、前記上型ダイに形成されているベアリング部で前記滑り止め機能付き板材の外形形状を成形する第2の工程と、
前記第2の工程で成形された滑り止め機能付き板材の表面部の長手方向および当該長手方向と交差する方向(長手方向に対して傾斜して連続する意匠も含む)に、前記滑り止め模様成形具により滑り止め模様を成形する第3の工程と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の滑り止め機能付き板材によれば、滑り止め機能付き板材が、その表面部の長手方向および当該長手方向と交差する方向に滑り止め模様が形成された状態で押出しダイスにより成形されるので、滑り止め機能付き板材を、例えば、床部材として使用する場合、靴等の履物の滑りを防止することができる。
また、滑り止め機能付き板材が押出しダイスにより成形された際、表面には滑り止め模様が形成されており、すぐに使用することができるので、面倒な後加工が不要となり、その結果、生産性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明の滑り止め機能付き板材の製造方法では、以上のような各工程を備えており、これによれば、第1の工程で上型ダイに導入された熱可塑性部材が第2の工程で滑り止め機能付き板材の外形形状に成形され、第3の工程で滑り止め機能付き板材の表面部の長手方向および当該長手方向と交差する方向に滑り止め模様が成形されるので、少ない工程で、面倒な後加工の必要のない滑り止め機能付き板材を製造することができる。その結果、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る滑り止め機能付き板材を形成する板材形成用押出しダイスの実施形態を示す全体縦断面斜視図である。
【
図2】前記実施形態の板材形成用押出しダイスを示す全体斜視図である。
【
図3】前記板材形成用押出しダイスを構成する上型ダイにおける
図2のIII-III線に沿った下面(裏面)を示す平面図である。
【
図4】前記実施形態の滑り止め模様成形具近傍の詳細を示す部分拡大断面図である。
【
図5】
図4におけるV-V線に沿った縦断面図を表し、ベアリング部の断面形状を示す平面図である。
【
図6】前記実施形態の押出しダイスにより形成された滑り止め機能付き板材を表し、
図6(A)は全体斜視図、
図6(B)は
図6(A)のB-B線に沿った拡大縦断面図である。
【
図7】前記実施形態の滑り止め機能付き板材と滑り止め模様成形具との位置関係を示す模式図である。
【
図8】前記実施形態の下型ダイを示す全体平面図である。
【
図9】前記実施形態の下型ダイに滑り止め模様成形具および成形具取付け部材を配設した状態を示す全体平面図である。
【
図10】
図9のX-X線に沿った縦断面の斜視図である。
【
図11】
図10の状態から滑り止め模様成形具と成形具取付部材とを取り出した状態を示す斜視図である。
【
図12】
図11の状態から上側のブロック部材を取外した状態を示す斜視図である。
【
図13】前記実施形態の成形具位置調整機構を表し、滑り止め模様成形具が板材に最大限喰い込んだ状態を示す平面図である。
【
図14】前記実施形態の成形具位置調整機構を表し、滑り止め模様成形具が板材にわずかに喰い込んだ状態を示す平面図である。
【
図15】
図14におけるXV-XV 線に沿った縦断面図である。
【
図16】前記実施形態の押出しダイスにより形成された第2の変形形態の滑り止め機能付き板材を表し、
図16(A)は全体平面図、
図16(B)は
図16(A)のB-B線に沿った拡大縦断面図である。
【
図17】前記実施形態の押出しダイスにより形成された第3の変形形態の滑り止め機能付き板材を表し、
図17(A)は全体平面図、
図17(B)は
図17(A)のB-B線に沿った拡大縦断面図である。
【
図18】前記実施形態の押出しダイスにより形成された第4の変形形態の滑り止め機能付き板材を表し、
図18(A)は全体斜視図、
図18(B)は
図18(A)のB-B線に沿った拡大縦断面図である。
【
図19】押出しダイスにより形成された従来の床部材を表し、
図19(A)は全体斜視図、
図19(B)は
図19(A)のB-B線に沿った拡大縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、添付図面を参照して、本発明の滑り止め機能付き板材および滑り止め機能付き板材の製造方法の実施形態を説明する。
【0015】
[本発明の全体説明]
本発明の滑り止め機能付き板材(以下、単に板材という)50は、素材供給装置としてのメタル供給装置100から供給される熱可塑性部材Mを、滑り止め機能付き板材成形用の押出しダイス(以下、単に押出しダイスという)1により押出し成形して形成されるようになっている。
そして、熱可塑性部材Mであるアルミニウム合金等のメタル(以下、単にメタルMという)は、上記メタル供給装置100内で、例えば、粘土状の柔らかさにされ、かつ、その状態が維持されるようになっている。
材料であるアルミニウム合金等のメタルMを、滑り止め機能付き板材成形用の押出しダイス(以下、単に押出しダイスという)1により押出し成形して形成されるようになっている。
そして、メタルMは、メタル供給装置100内で、例えば、粘土状の柔らかさにされ、かつ、その状態が維持されるようになっている。
【0016】
板材50は、
図1、
図6等に示すように、平板状の表面部50Aと、この表面部50Aの幅方向の一端部に、表面部50Aに対してその裏面部側に向けて略直角に折り曲げ形成された一つの折曲げ部50Bとで構成されており、断面略L字形状に形成されている。
【0017】
表面部50Aの形状は、長さ寸法Lの長辺(メタルMの押出し方向の長さ)と、幅寸法Wの短辺とからなる長方形形状となっている。折曲げ部50Bは、その高さ寸法がHに設定され、かつ表面部50Aの全長にわたって形成されている。また、表面部50Aおよび折曲げ部50Bは厚さ寸法tとなっている。
【0018】
ここで、長さLは任意の長さに形成することができる。
すなわち、
図1に示す押出しダイス1を、図示しないダイス保持装置により所定高さ位置に設定した場合、下型ダイ20の下方に大きな空間を確保することができる。そのため、メタル供給装置100内のメタルMの量を調整することで、板材50を上記空間の範囲内で任意の長さに形成することができる。
【0019】
図6(A),(B)に示すように、板材50の表面部50Aには、その全面部にわたって滑り止め模様50Dが設けられている。
すなわち、滑り止め模様50Dは、長手方向および当該長手方向と交差する方向、実施形態では、長手方向と直交する幅方向のそれぞれに一定間隔をおいて連続配置された四角形の凹凸状模様により形成されている。
この四角形の凹凸状模様は、四角形模様部50Aaが凹んだ状態、つまり、凹部となっており、また、隣り合う四角形模様部50Aa同士の隙間部50Abが、四角形模様部50Aaに対してが浮き上がった状態、つまり、凸部となっている。そして、このような連続する凹凸状の模様により前記滑り止め模様50Dが形成されている。
なお、隙間部50Abの高さは、上記表面部50Aの表面高さである。
【0020】
図7には、板材50と、この板材50の表面部50Aに上記凹凸状の滑り止め模様50Dを形成するための滑り止め模様成形具(以下、単に成形具という)30との関係が模式的に示されている。
成形具30は、軸部30Bに装着された丸パイプ状の本体部30Aを備えて構成されており、この本体部30Aの外周面が模様成形部30Cとされ、この模様成形部30Cに滑り止め模様成形部30Dが設けられている。そして、この滑り止め模様成形部30Dが、上記板材50の表面部50Aに形成された凹凸状の滑り止め模様50Dに対応している。
また、軸部30Bの両端は、高温用軸受36(
図11参照)を介して成形具取付け部材32(
図9参照)に回転自在に取付けられており、これらの高温用軸受36および成形具取付け部材32は、下型ダイ20に設けられている。
【0021】
ここで、成形具30の滑り止め模様成形部30Dの凹凸状模様は、上記表面部50Aの滑り止め模様50Dの凹凸状模様と、凹凸部が逆となっている。
すなわち、板材50の表面部50Aの滑り止め模様50Dでは、四角形模様部50Aaが凹部となっており、隣り合う四角形模様部同士の隙間部50Abが凸部となっているのに対して、成形具30の滑り止め模様成形部30Dでは、四角形模様成形部30Aaが凸部となっており、隣り合う四角形模様成形部30Aa同士の隙間部30Abが凹部となっている。
なお、
図7では、板材50が矢印Aで示すように、略水平方向に移動するようになっているが、実際には、
図1等に示すように、メタル供給装置100から供給されたメタルMが上型ダイ10を経由して下型ダイ20側に送られるように、上方から下方に移動するようになっている。
また、この成形具30の滑り止め模様成形部30Dの詳細については、後で詳細に説明する。
【0022】
[押出しダイスの全体構成]
次に、板材50を製造する前記押出しダイス1の詳細を説明する。
押出しダイス1は、
図1,2等に示すように、前記メタル供給装置100から押出し供給されるメタルMを導入する上型ダイ10と、この上型ダイ10を支持する下型ダイ20とを備えて構成されている。
【0023】
上型ダイ10と下型ダイ20とは、
図2等に示すように、それぞれ略円柱状部材で形成されており、本実施形態では、下型ダイ20に対して上型ダイ10が小径に形成されている。そして、上型ダイ10は、メタル供給装置100にも保持された状態となっている。
なお、上型ダイ10と下型ダイ20とは、例えば、下型ダイ20の表面から差し込んで固定された連結ピン40に、上型ダイ10の下面に形成されたピン孔10a(
図3参照)を挿入させることで連結されている。
なお、上記のように、下型ダイ20に対して上型ダイ10が小径に形成されているが、各ダイ20,10の外径は同じでもよい。
【0024】
まず、上型ダイ10の構成について説明する。
上型ダイ10には、
図1~
図4に示すように、メタル供給装置100から押出されるメタルMの導入をガイドするメタル導入口10Aが形成されている。
上型ダイ10の上面には、所定深さの凹部に形成されると共にメタルMを受けるメタル受部10Uが形成されており、このメタル受部10Uの略中央部に上記メタル導入口10Aが設けられている。このメタル導入口10Aは、メタル受部10Uの上端部から上型ダイ10の下端部近傍まで連続する略直方体状の形状となっている。
【0025】
上型ダイ10の下面および当該下面と対応する下型ダイ20の上面とは、前記成形具30の配置と、次に述べるベアリング部10Bの位置との関係から段差形状となっている。
すなわち、上型ダイ10の下面は、
図1、
図3に示すように、成形具30の上方に位置する第1下面部10Eと、メタル導入口10Aを挟んで成形具30の反対側に位置する第2下面部10Fと、第1下面部10Eおよび第2下面部10Fの両側に位置している第3下面部10Hとで形成されている。
ここで、上型ダイ10の第1下面部10Eと第2下面部10Fとの段差間寸法は、両者10E,10Fの差の間に上記成形具30を収容できる程度の寸法となっている。
【0026】
第1下面部10Eと第2下面部10Fとを有する上型ダイ10は、
図3に示すように、径方向の中央部に位置する所定幅Wの部位が段差部を形成する部位となっており、これらの部位の両側に、平面半月形状の上記第3下面部10Hを有する部位が設けられている。
第3下面部10Hは、次に述べる下型ダイ20の第4上面部20H(
図8参照)に対応しており、第1下面部10Eより所定寸法高い高さ位置となっている。
なお、
図1、
図4に示すように、メタル導入口10Aの下端面部10Aaの高さ位置は、第1下面部10Eの高さより所定寸法高い高さ位置となっている。
【0027】
図4に詳細を示すように、前記メタル導入口10Aの下端面部10Aaは、上型ダイ10に形成されると共に、メタルMを板材50の断面外形形状に成形するベアリング部10Bに連通している。
すなわち、ベアリング部10Bは、上型ダイ10の前記第1下面部10Eに形成されている突起部10Eaと、上型ダイ10の第2下面部10F側における上型ダイ10の一側面と、上記突起部10Eaとの間に形成された所定寸法の隙間tにより形成されている。そして、この隙間tは、板材50の表面部50Aの厚さ寸法tである。
ここで、上記突起部10Eaは、第1下面部10Eの一部が成形具30側に向かって下方に突出した嘴状の形状となっており、成形具30の外周面の垂直方向の頂点から水平方向の中心近傍まで覆えるような形状となっている。
【0028】
ベアリング部10Bは、
図5に示すように、板材50の断面形状の外形を形成するようになっている。すなわち、
図5の直交方向の長さ寸法と、表面部50Aの幅に該当する寸法Wと、折曲げ部50Bの高さに該当する寸法Hと、板材50の厚さに該当する寸法tとで、断面略L字状に形成されている。
【0029】
また、
図4に示すように、上型ダイ10においてベアリング部10Bの下方には、このベアリング部10Bに連続するガイド用逃げ部10Faが形成されている。このガイド用逃げ部10Faは、板材50の裏面に対応しており、押出される板材50の裏面との間の所定の隙間mで形成されている。
この隙間mを設けることにより、押出される板材50の表面に成形具30により滑り止め模様50Dを成形する際の、板材50に対する押圧力を逃がしながら送り出すことができるので、スムーズな板材50の形成が可能となる。
なお、板材50の略L字状断面の外形形状、表面部50Aに対応する幅寸法W、折曲げ部50Bに対応する高さ寸法H、および板材50の長さ等は、床材として使用する場所に応じて適宜設定されるようになっている。
【0030】
次に、
図8、
図9に基づいて下型ダイ20の構成を説明する。
下型ダイ20は、前述のように、略円柱状部材で形成されている。下型ダイ20の平面の略中央部近傍には、前記成形具30を配置するための模様成形具配置空間20Aが形成されており、この模様成形具配置空間20Aは、略長方形形状の貫通穴となっている。
また、この模様成形具配置空間20Aの長手方向の両隣部には、後述する一対の成形具取付部材32,32を設置するための成形具取付部材用設置穴(以下、単に部材用設置穴という)20B,20Bがそれぞれ形成されている。
【0031】
下型ダイ20の上面は、模様成形具配置空間20Aに臨む一方側の第1上面部20Eおよび他方側の第2上面部20Fと、第2上面部20Fの外周側に位置している第3上面部20Gと、これら各上面部20E,20F,20Gの両側に位置している第4上面部20Hの、それぞれ高さ位置の異なる4箇所の上面部で形成されている。
【0032】
各上面部20E,20F,20Gは、それぞれ高さ位置は異なるが、
図8,9に示すように、下型ダイ20の中心を挟んで左右に等しい距離に広がった幅寸法W1に形成されている。そして、この幅寸法W1は、前記成形具配置空間20Aの長さ寸法と略等しい寸法となっており、この幅寸法W1の間が、前記上型ダイ10の下面の段差部に対応している。
また、模様成形具配置空間20Aの長さは、対向する部材用設置穴20B,20Bの対向面同士の距離と等しい寸法に設定されている。
なお、幅寸法W1は、前記上型ダイ10の段差部の幅寸法Wよりわずかに小さな寸法に設定されており、上型ダイ10の下面が下型ダイ20の上面に嵌合し、これにより、両者が位置決めされるようになっている。
【0033】
図1、
図10に示すように、第1上面部20Eの高さ位置に対して第2上面部20Fの高さ位置は、成形具30の半径寸法ほどの寸法で低い高さにあり、第3上面部20Gの高さ位置は第1上面部20Eの高さ位置と略同じとなっている。
【0034】
また、第1上面部20Eおよび第3上面部20Gの高さは、第4上面部20Hの高さよりわずかに低くなっている。これに対して、前記上型ダイ10においては、第1下面部10Eと第2下面部10Fとが、第3上面部10Hよりわずかに突出した形状となっている。
そして、上型ダイ10におけるこの突出寸法は、下型ダイ20における第3上面部20G等の高さと、第4上面部20Hの高さとの差と略等しい寸法となっている。
従って、上型ダイ10と下型ダイ20とを連結する際、上型ダイ10の第1下面部10Eと第2下面部10Fとを、下型ダイ20の第1上面部20Eおよび第3上面部20Gに嵌め込むようにして載置すれば両者10,20を連結することができるようになっている。
つまり、上型ダイ10における第1下面部10E等と、下型ダイ20における第1上面部20E等とは、上型ダイ10と下型ダイ20との連結時の位置決め用ともなっている。
【0035】
また、下型ダイ20の各上面部20E,20F,20G,20Hの外周寄りには、それぞれ1か所に上型ダイ10との連結用の連結ピン40(
図1参照)を埋め込むためのピン孔20aがあけられ、これらのピン孔20aに上記連結ピン40が埋め込まれて固定されている。そして、この連結ピン40を上型ダイ10の第1下面10E等にあけられた連結用のピン孔10a(
図3参照)に挿通させることで、上型ダイ10と下型ダイ20とが連結されることになる。
なお、
図8に仮想線で示す部位は上型ダイ10である。
【0036】
図9には、下型ダイ20の成形具配置空間20Aと部材用設置穴20B,20Bとのそれぞれに、前記成形具30と成形具取付部材32とを配置した状態が示されている。
成形具30は、模様成形具配置空間20Aに臨む下型ダイ20の第1上面部20E寄りに配置されている。また、前記一対の部材設置用穴20B,20Bは、模様成形具配置空間20Aの長手方向の両端部に形成されており、長手方向と直交する方向に長さの長い部位を有する略T字状形状とされ、かつ所定深さに形成されている。
【0037】
前記部材設置用穴20B,20Bには、それぞれ成形具取付部材32,32が挿入されるようになっており、これらの成形具取付部材32,32は、
図11等に示すように、上下一対の上側取付けブロック32Aと下側取付けブロック32Bとで構成されている。
なお、これらの上側取付けブロック32A、下側取付けブロック32Bの詳細は後述する。
【0038】
また、
図8、
図9に示すように、下型ダイ20の外周一部には、各部材用設置穴20Bの延長上の位置にそれぞれ平面壁部20Cが形成されている。これらの平面壁部20Cは、上記部材設置用穴20Bの長手方向一方側端部の面、つまり、模様成形具配置空間20Aの長手方向と平行になっている。
そして、これらの平面壁部20Cと部材用設置穴20Bの一側面部との間にはネジ孔20Dが切られ、このネジ孔20Dに、後述する成形具位置調整機構38を構成する位置調整用ボルト35(
図9等参照)が螺合されるようになっている。
このネジ孔20Dは、
図11、
図12等にも示すように、上側取付けブロック32Aと下側取付けブロック32Bとのそれぞれに対応して設けられている。
【0039】
上型ダイ10のベアリング部10Bを経由した板材(滑り止め模様成形前の状態)には、その表面部に、前述したように、下型ダイ20に配設されている成形具30によって滑り止め模様50Dが成形されるようになっており、これにより、前記板材50が形成される。
【0040】
[成形具の構成]
前記成形具30は、上型ダイ10側から押出されてくる板材50を間にしてガイド用逃げ部10Faの反対側に配設されている。
図10等に示すように、成形具30は、略丸パイプ状に形成されると共に軸部30Bに装着された本体部30Aを備えている。そして、本体部30Aの外周面が模様成形部30Cとなっており、この模様成形部30Cに、前記板材50の表面部50Aの凹凸状の滑り止め模様50Dに対応する滑り止め模様成形部30Dが形成されている。
また、軸部30Bの両端は、高温用軸受36(
図11参照)を介して前記成形具取付け部材32に支持されている。
【0041】
ここで、成形具30の滑り止め模様成形部30Dの凹凸状模様は、前記表面部50Aの滑り止め模様50Dの凹凸状模様と、凹凸部が逆となっている。
すなわち、表面部50Aの滑り止め模様50Dでは四角形模様部50Aaが凹部となっており、隣り合う四角形模様部50Aa同士間の隙間部50Abが凸部となっているのに対して、成形具30の滑り止め模様成形部30Dでは、四角形模様成形部30Aaが凸部となっており、隣り合う四角形模様成形部30Aa同士間の隙間部30Abが凹凸部となっている。
そのため、表面部50Aに滑り止め模様成形部30Dが押し当てられたとき、四角形模様成形部30Aaが表面部50Aに喰い込むので、表面部50Aに凹んだ状態の四角形模様部50Aaが形成されることになる。
【0042】
成形具30は、メタル供給装置100から押出されると共に上型ダイ10のベアリング部10Bで外形形状が決められた板材50の下流側への移動に付勢され、つまり、外力によって回転するようになっており、これにより、板材50の表面部50Aに凹凸状の滑り止め模様50Dを形成できるようになっている。
【0043】
また、
図11等に示すように、成形具30は、その軸部30Bが、前記高温用軸受け36を介して、成形具取付部材32を構成する上下一対の取付けブロック32A,32Bで挟み込まれた状態で設けられている。
この成形具取付部材32は、
図10等に示すように、前述のように、部材用材設置穴20Bに挿入され、かつ、板材50と直交する方向にスライド自在に嵌込まれている。
なお、
図4に示すように、成形具30の本体部30Aと軸部30Bとはキー39で連結されている。
【0044】
上下一対の取付けブロック32A,32Bは、上側の取付けブロック32Aから差し込まれた連結ボルト34により連結されるようになっている。
また、成形具30の軸部30Bには、高温用軸受36が嵌着されており、この高温用軸受36は、各取付けブロック32A,32Bの長さ方向中央部の凹部32Aa,32Baに嵌め込まれている。
なお、
図10~15においては、一方および他方の成形具取付部材32,32のうち、一方側の上下一対の取付けブロック32A,32Bについて説明するが、他方側の成形具取付部材32の上下一対の取付けブロック32A,32Bも同じである。
【0045】
次に、
図13、
図14に基づいて、成形具位置調整機構38を説明する。
成形具位置調整機構38は、上側および下側の取付けブロック32A,32Bの長さ方向一方側端部と当接する成形具位置調整用ボルト(以下、単に調整用ボルトという)35,35と、前記部材用設置穴20Bに挿脱自在に設けられる調整用ワッシャー37とで構成されている。
【0046】
調整用ボルト35,35は、下型ダイ20の外周側面に形成されている前記平面壁部20Cから上下一対の取付けブロック32A,32Bのそれぞれの側面に向けて形成されたネジ孔20Dに螺合させることで、各ボルト35,35の先端部を各取付けブロック32A,32Bの長さ方向一方側端部に当接させるようになっている。
【0047】
例えば、
図13に示すように、調整用ボルト35をネジ孔20Dにねじ込むと、調整用ボルト35の先端部が取付けブロック32Aの一方側の側面部に当接する。さらにねじ込むと、取付けブロック32Aが部材用設置穴20B内を矢印B方向にスライドし、これにより、成形具30の滑り止め模様成形部30Dが板材50の表面に喰い込む量の調整、言い換えれば、成形具30の模様成形部30Cと板材50との距離を調整することができる。
なお、
図13では、調整用ボルト35を最大限ねじ込んだ状態であり、このとき、上側の取付けブロック32Aの他方側の側面部が部材用設置穴20Bの端部に当接している。また、上側の取付けブロック32Aの他方側の側面部と部材用設置穴20Bの他方側の側面部との間は、所定寸法Kの隙間となっている。
【0048】
図14には、成形具30における模様成形部30Cの滑り止め模様成形部30Dが、板材50の表面に喰い込む量を少なくする場合の調整方法が示されている。
この場合、調整用ボルト35を逆方向に回すと、上側の取付けブロック32Aが部材用設置穴20B内を矢印C方向にスライド自在となる。そこで、まず、
図13に示す上記所定寸法Kの隙間がなくなるまで調整用ボルト35を逆方向に回す。
【0049】
次いで、矢印Cで示すように、成形具30を手で掴んで調整用ボルト35側に引き寄せる。その後、成形具30の滑り止め模様成形部30Dの凹凸部が、板材50の表面部50Aに設定された喰い込み量となるように、他方側の側面の寸法K2の隙間、つまりワッシャー用孔20Jに調整用ワッシャー37を挿入しておいて、調整用ボルト35を上側の取付けブロック32Aの側面に当接するまでねじ込む。
このとき、上側の取付けブロック32Aと部材用設置穴20Bの側面との間の隙間K1と、上側の取付けブロック32Aと部材用設置穴20Bの他方側の側面の隙間K2とを合わせた寸法は、上記
図13における隙間Kと同じである。
【0050】
また、
図13、
図14においては、上下一対の取付けブロック32A,32Bのうち、上側の取付けブロック32Aを説明したが、前述のように、上側の取付けブロック32Aと下側の取付けブロック32Bとは連結ボルト34で一体的に固定されているので、両取付けブロック32A,32Bの動作は全く同じである。
ここで、調整用ボルト35,35は、上下一対の取付けブロック32A,32Bのそれぞれに対応して設けられているが、いずれか一方の調整用ボルト35を操作するだけでもよい。
【0051】
図15に示すように、上記調整用ワッシャー37は、所定厚さ寸法に仕上げられたプレートで形成されており、調整用ワッシャー37は、成形具30の滑り止め模様成形部30Dの板材50に対する喰い込み量を調整できるように、厚さの異なる複数種類のプレートが予め準備されている。
この調整用ワッシャー37は、上側の取付けブロック32Aと下側の取付けブロック32Bとを合わせた厚さと略同じ寸法の長さに形成されている。
【0052】
また、調整用ワッシャー37の上端部には、
図14および
図15に示すように、幅方向両端部に把持部37Aが形成されている。この把持部37Aは、調整用ワッシャー37を部材設置用穴20B内に挿入させる際に、所定の挟み具(治具)で挟んで作業するために形成されている。
【0053】
[押出しダイスによる板材の製造方法]
次に、以上のような構成の押出しダイス1による板材50の製造方法を説明する。
作業に先立って、板材50の表面部50Aに滑り止め模様50Dを成形するための成形具30を下型ダイ20にセットしておく。
このとき、成形具30の滑り止め模様成形部30Dの凹凸形状の模様、特に四角形模様成形部30Aaの凸状部が板材50の表面に喰いこむ量、つまり凹部50Aaおよび凸部50Abの高さ寸法を所望の寸法とするため、調整用ボルト35,35により成形具30の位置を調整しておく。
【0054】
メタル供給装置100から上型ダイ10のメタル導入口10AにメタルMが導入されると共に下流側に押し出されると(第1の工程)、上型ダイ10のベアリング部10Bで板材50の形状に成形され(第2の工程)、その板材50はベアリング部10Bから上型ダイ10のガイド用逃げ部10Faから下型ダイ20側に押出される。
下型ダイ20側に押出された板材50は、下方に押し出される途中で、外力、つまり、メタルMの押出しに伴って回転する成形具30により、板材50の表面に滑り止め模様50Dが連続して成形される(第3の工程)。
【0055】
また、成形具30の滑り止め模様成形部30Dによる喰い込み量を変えたい場合、例えば、喰い込む量を少なくする場合には、調整用ボルト35を逆方向に回して、上下一対の取付けブロック32A,32Bが部材設置用穴20B内をスライド可能とする。
次いで、成形具30を調整用ボルト35側に引き寄せた後、成形具30のの滑り止め模様成形部30Dによる所定の喰い込み量となるように、部材設置用穴20B内に所定の調整用ワッシャー37を挿入し、調整用ボルト35を、例えば上側の取付けブロック32Aの側面に当接するまでねじ込む(第4の工程)。
【0056】
その後、前述のように、メタル供給装置100を操作して、アルミニウム合金等のメタルMを押出しダイス1に供給して、成形具30により板材50の表面に凹凸模様を成形する。そして、所定の製品長さとなった時点で、切断用器具により切断され(第5の工程)、所定のストックヤードに搬送される。
滑り機能付きとして完成した1枚の板材50の搬出が完了したら、上記と同じような工程が繰り返され、所定の枚数の板材50を得るまで作業が継続される。
【0057】
本実施形態の押出しダイス1および板材50は以上のように構成されているので、次のような効果を得ることができる。
(1)板材50が、押出しダイス1によって、板材50の表面部50Aに滑り止め模様50Dが形成された状態で成形されるので、板材50を、例えば、床部材として使用する場合、滑り止め効果の高い床部材とすることができ、これにより、靴等の履物の滑りを防止することができ、使用時の安全を図ることができる。
【0058】
(2)板材50が押出しダイス1により成形された際、表面部50Aには滑り止め模様50Dが形成されており、すぐに使用することができるので、面倒な後加工が不要となり、その結果、生産性の向上を図ることができる。
【0059】
(3)板材50の表面部50Aに形成された滑り止め模様50Dが、四角形模様部50Aaが凹状、隣り合う四角形模様部50Aa同士間の隙間部50Abが凸状となった凹凸形状となっており、凸状の隙間部50Abでは排水(水切れ)に優れ、凹状の四角形模様部50Aaでは歩行の際の引っ掛かりを抑えることができる。その結果、板材50を床材として使用した際、靴等の履物が滑りにくく、使用価値の高い床材となる。
また、それだけでなく、滑り止め模様50Dにより板材50の意匠性を向上させることができる。
【0060】
(4)板材50には、その表面部50Aに対して直交する方向に折り曲げられた折曲げ部50Bが設けられており、板材50を床材として所定の場所に設置する際に、折曲げ部50Bの内側を所定の角部等に押し当てることで位置決めが容易となる。その結果、位置決め作業が簡単となり、作業効率の向上を図ることができる。
【0061】
(5)板材50の表面部50Aに、長辺方向および短辺方向に、間隔をおいて、かつ連続して四角形模様部50Aaと隙間部50Abによる凹凸形状の滑り止め模様50Dが形成されているので、意匠性に優れた床板として利用することができる。
【0062】
(6)成形具30を取付けた成形具取付部材32は、部材用設置穴20B内で水平方向にスライド可能となっており、成形具位置調整機構38の調整用ボルト35の操作によって成形具30の位置を調整することができる。その結果、成形具30の滑り止め模様成形部30Dの板材50への喰い込み量を調整することができるので、滑り止め模様50Dの深さを容易に任意の深さとすることができる。
【0063】
(7)成形具30の軸部30Bは高温用軸受36を介して、成形具取付部材32を構成する上下一対の取付けブロック32A,32Bに支持されているので、成形具30の軸部30Bの外径を同じとすることで、模様の異なる滑り止め模様を形成可能な本体部30Aを有する成形具30を容易に取付けることができる。その結果、部材の共用化を図れる。
【0064】
(8)前記実施形態では、板材50が、例えば床材として使用されているが、折曲げ部50Bを設けたことにより、その折曲げ部50Bが板材50の補強部となるので、板材50の構造的強度を大きくすることができる。その結果、床材の他、階段や椅子のステップ材や、特に、所定の強度が要求される車両用のスロープやブリッジ等用としても使用することができる。
【0065】
以上、前記実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0066】
例えば、前記実施形態では、板材50の表面部50Aに、凹状の四角形模様部50Aaと凸状の隙間部50Abからなる凹凸形状の滑り止め模様50Dを形成したが、これに限らない。
滑り止め効果を得られる模様であれば、上記四角形模様部50Aaを基にしたものでなくてもよく、菱形模様部、丸形模様部、三角形形状の模様部、多角形形状の模様部、および波型形状の模様部等を基にした凹凸形状の滑り止め模様を形成するようにしてもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、板材50の表面部50Aに、凹状の四角形模様部50Aaと凸状の隙間部50Abからなる凹凸形状の滑り止め模様50Dを形成したが、これに限らない。
図視しないが、第1の変形形態として、前記実施形態の滑り止め模様50Dにおける凹凸形状を逆にして、つまり、四角形模様部50Aaを凸部として、隙間部50Abを凹部としてもよい。この場合、模様成形具の滑り止め模様では、上記凹凸形状に対応するような形状となっている。
このような構成とすれば、前記(1)~(8)と略同様の効果の他、
(9)隙間部50Abが凹部となっているので、表面部50Aの水はけがよくなる、という効果を得ることができる。
【0068】
また、第2の変形形態としての板材60を、
図16(A)、(B)に示す。
この板材60は、前記実施形態の
図6に示す板材50の表面部50Aにおける幅方向の四角形形状列を、幅方向に1個分づつずらして配置したものである。これにより、幅方向の1列の四角形模様部列における隣り合う四角形模様部の間に、長手方向で隣り合う1列の四角形模様部が配置された形状となっている。
そして、第2の変形形態の板材60でも、滑り止め模様60Dは、各四角形模様部60Aaが凹部であり、隣り合う四角模様部60Aa同士の隙間部60Abが凸部となっている。
【0069】
上記第2の変形形態では、上記板材60の表面部60Aの滑り止め模様60Dに対応する模様成形部を有する模様成形具(図略)が設けられている。
そして、この場合、模様成形具の模様成形部では、四角形模様部60Aaの凹部に対応する部位が凸部となるように形成され、隣り合う四角形模様部60Aaの間の凸部に対応する部位が凹部となるように形成されている。
このような第2の変形形態でも、前記(1)~(8)と略同様の効果を得ることができる。
【0070】
また、第2の変形形態でも、四角模様部60Aaと隙間部60Abとの凹凸を逆にしてもよく、模様成形具の模様成形部も上記凹凸に合わせればよい。
このような構成とすれば、前記(1)~(8)と略同様の効果の他、前記(9)と略同様の効果を得ることができる。
【0071】
また、第3の変形形態としての板材70を、
図17(A)、(B)に示す。
この板材70は、その表面部70Aに滑り止め模様70Dとして、表面部70Aの長手方向および当該長手方向と交差する方向に、長手方向に対して傾斜して連続する凹凸状の菱形模様で形成したものである。
そして、この第2の変形形態の板材70では、各菱形模様部70Aaが凹部であり、隣り合う菱形模様部70Aa同士の隙間70Abの間が凸部となっている。また、第3の変形形態における菱形模様部70Aaの菱形形状は、菱形の2本の対角線のうち長い方の対角線が表面部70Aの長手方向に沿って連続して配置されている。
なお、2本の対角線のうち短い方の対角線が表面部70Aの長手方向に沿って連続するように配置してもよい。また、2本の対角線が同じである正方形の一方の対角線を表面部70Aの長手方向に沿って連続するように配置してもよい。
【0072】
また、第3の変形形態では、上記板材70の表面部70Aの滑り止め模様70Dに対応する模様成形部を有する模様成形具(図略)が設けられている。
そして、この場合、成形具の外周面では、菱形模様部70Aaの凹部に対応する部位が凸部となるように形成され、隣り合う菱形模様部70Aa同士の隙間部70Abの凸部に対応する部位が凹部となるように形成されている。
このような変形形態でも、前記(1)~(8)と略同様の効果を得ることができる。
【0073】
なお、上記第3の変形形態において、滑り止め模様70Dにおける凹凸形状を逆にして、つまり、菱形模様部70Aaを凸部とし、隙間部70Abを凹部としてもよい。この場合、模様成形具の模様成形部では、上記凹凸形状に対応するような形状となっている。このような変形形態では、前記(1)~(8)と略同様の効果の他、前記(9)と略同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、前記実施形態および各変形形態の板材50,60,70は、表面部50A等と折曲げ部50B等とで形成されているが、第4の変形形態として、例えば、
図18に示すような板材80を形成することもできる。すなわち、表面部80Aの幅方向両端部に折曲げ部80B,80Bを設けると共に、それらの折曲げ部80B,80Bの間に、例えば、2本のリブ80C,80Cを配置した形状の板材80としてもよい。
このような形状の板材80では、前記(1)~(8)と略同様の効果を得ることができる他、
(10)板材80を、例えば、コンクリートに敷設された床材として利用する場合、コンクリートを打設した後、そのコンクリートが完全に固化しないうちに、板材80を所定の位置に配置して押し込めば、折曲げ部80B,80B、リブ80Cがコンクリートに埋め込まれた状態となるので、位置決めが容易となり、かつ確実に設置できる。
【0075】
さらに、前記実施形態および各変形形態の板材50,60,70では、表面部50A等と折曲げ部50B等とで構成されているが、これに限らず、平板状の表面部だけで形成した板材としてもよい。
この場合、ベアリング部の形状も平板状の表面部を形成できるような断面形状にすればよい。また、このような板材を、前記板材50等と適宜組み合わせることで、広い面積に床材を敷設することが可能となる。
【0076】
また、前記実施形態および各変形形態の板材50,60,70,80は、床材として使用されるようになっているが、板材50等を、梯子や脚立の踏み板、スロープ、あるいは所定位置に架けわたすブリッジ用として利用することもできる。
【0077】
また、前記各実施形態では、熱可塑性材料として、アルミニウム合金が使用されているが、これに限らず、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等の汎用プラスチックや、PA(ポリアミド)等のエンジニアリング・プラスチック等の合成樹脂を使用してもよい。
【0078】
さらに、前記各実施形態では、押出しダイス1に対して、アルミニウム合金からなるメタルMを上方側から供給する縦型構成としたが、これに限らない。例えば、押出しダイス1を水平方向に配置し、メタルMを横側から供給する横型構成としてもよい。
【0079】
また、前記各実施形態では、成形具30の板材50に対する取付け位置の調整を、調整用ボルト35による成形具取付部材32のスライドと、調整用ワッシャー37とを使用して行っていたが、これに限らない。
例えば、部材用設置穴20Bの調整用ボルト35の反対側側面に、例えば板バネを設置したり、あるいは圧縮コイルバネを下型ダイ20に埋め込んだ構成としてもよい。
このようにした場合、調整用ワッシャー37およびその調整用ワッシャー37を着脱する手間を省くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の滑り止め機能付き板材および滑り止め機能付き板材の製造方法は、例えば、床材として用いる他、階段や椅子のステップ材、車両用のスロープやブリッジ用として使用する場合等に利用されるが、これに限定されず、その意匠性を生かして凹凸模様の板材を化粧パネル材として使用してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 滑り止め機能付き板材成形用の押出しダイス
10 上型ダイ
10A メタル導入口
10B ベアリング部
20 下型ダイ
20A 模様成形具配置空間
20B 成形具取付部材用設置穴
30 滑り止め模様成形具
30C 模様成形部
30D 滑り止め模様成形部
32 成形具取付部材
32A 上側の取付けブロック
32B 下側の取付けブロック
35 成形具位置調整用ボルト(成形具位置調整機構)
37 調整用ワッシャー(成形具位置調整機構)
50 滑り止め機能付き板材
50A 表面部
50B 折曲げ部
50D 滑り止め模様
M メタル(アルミニウム合金;熱可塑性部材)