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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022818
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ウイルス滅菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20220131BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220131BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20220131BHJP
   A61L 101/06 20060101ALN20220131BHJP
   A61L 101/34 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61L9/20
B01J35/02 J
B01J37/34
A61L9/00 C
A61L9/01 F
A61L9/014
A61L9/01 V
A61L2/08 110
A61L2/18
A61L101:06
A61L101:34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117419
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】513306741
【氏名又は名称】都市未来計画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090158
【弁理士】
【氏名又は名称】藤巻 正憲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 民雄
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058BB07
4C058JJ07
4C058JJ08
4C058KK02
4C180AA02
4C180AA07
4C180CC03
4C180CC04
4C180DD03
4C180DD06
4C180EA14X
4C180EA34X
4C180EA57X
4C180EB06X
4C180HH05
4C180LL15
4G169AA02
4G169BA48A
4G169CA02
4G169CA03
4G169DA03
4G169FA08
4G169FB58
4G169HA01
4G169HE07
4G169HF05
(57)【要約】
【課題】空気中から2019新型コロナウイルス等の病原性ウイルスを、高効率で滅菌除去することができると共に、大量の空気を処理することができるウイルス滅菌装置を提供する。
【解決手段】容器2内に、多孔質フィルタ12,超音波振動体13,活性炭フィルタ14が配置されており、タンク8から光触媒水溶液16が容器2の多孔質フィルタ12の上に導入される。多孔質フィルタ12を通過して微細化された気泡は、光触媒水溶液16内で超音波振動を受けて更に微細化され、紫外光の照射を受ける。これにより、紫外光の照射による光触媒作用と、超音波振動の印加による微細化処理によって、気泡内のウイルスは不活性化されて、滅菌される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄容器と、
この洗浄容器の内部を下部の第1室と上部の第2室とに仕切る多孔質フィルタと、
前記洗浄容器の前記第1室に、洗浄前の空気を導入する導入部と、
前記第2室の前記多孔質フィルタの上に光触媒を含有する光触媒水溶液を注入する注入部と、
前記第2室から前記光触媒水溶液を排出する排出部と、
前記第2室内の前記光触媒水溶液に超音波振動を付与する振動体と、
前記第2室内の前記光触媒水溶液に紫外光を照射する光源と、
を有することを特徴とするウイルス滅菌装置。
【請求項2】
洗浄容器と、
この洗浄容器の内部を下部の第1室と上部の第2室とに仕切る多孔質フィルタと、
前記洗浄容器の前記第1室に、洗浄前の空気を導入する導入部と、
前記第2室の前記多孔質フィルタの上に二酸化塩素水を注入する注入部と、
前記第2室から前記二酸化塩素水を排出する排出部と、
前記第2室内の前記二酸化塩素水に超音波振動を付与する振動体と、
を有することを特徴とするウイルス滅菌装置。
【請求項3】
洗浄容器と、
この洗浄容器の内部を下部の第1室と上部の第2室とに仕切る多孔質フィルタと、
前記洗浄容器の前記第1室に、洗浄前の空気を導入する導入部と、
前記第2室の前記多孔質フィルタの上にエタノールを注入する注入部と、
前記第2室から前記エタノールを排出する排出部と、
前記第2室内の前記エタノールに超音波振動を付与する振動体と、
を有することを特徴とするウイルス滅菌装置。
【請求項4】
前記第2室を、下部の第3室と上部の第4室とに仕切る活性炭フィルタと、
前記活性炭フィルタを透過した空気を前記第4室から排出する排出部と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のウイルス滅菌装置。
【請求項5】
前記第2室を、下部の第3室と上部の第4室とに仕切る活性炭フィルタと、
前記活性炭フィルタを透過した空気を前記第4室から排出する排出部と、
前記第3室に配置され、前記エタノールを含む空気から、エタノールを沈殿させて除去する沈殿装置と、
を有することを特徴とする請求項3に記載のウイルス滅菌装置。
【請求項6】
前記洗浄容器は、円筒状をなすことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のウイルス滅菌装置。
【請求項7】
前記洗浄容器は、前記第1室が円筒状をなし、前記第2室の一部が球形をなすように、前記第1室よりも膨らんでいることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のウイルス滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症等の原因となるウイルスを効果的に死滅させることができるウイルス滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症は、2019新型コロナウイルスにより引き起こされる。この病原性ウイルスは、飛沫感染及び接触感染により感染拡大するため、ウイルスが空気中に浮遊した状態の環境に入ると、この新型コロナウイルスに感染する危険性が高まる。また、この新型コロナウイルスに感染した者は、必ずしも肺炎等の症状を示さない無症状の場合でも、他者に感染させる危険性がある。このため、社会において、普通の生活をしている場合にも、症状を示していない近くの者からのウイルス感染を防止する必要がある。
【0003】
このような社会生活上の感染防止のために、マスクを着用するとか、手洗いを励行するとか、またアルコール等による殺菌消毒する等の対策をとることが推奨されている。また、密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、密集場所(多くの人が密集している)、密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や共同行為が行われる)という3つの条件がある場では、感染を拡大させるリスクが高いと考えられており、所謂三密を回避することが推奨されている。
【0004】
しかし、このような対策は、自分の注意で感染を回避することができるものもあるが、できないものもある。その中で、マスクを外さざるを得ず、密接場面を回避できない代表的な事態として、レストラン等の飲食店における飲食がある。このような場合には、空気中に存在するウイルスを滅菌して除去する必要がある。そこで、店内の空気中の空気を集めて、空気中からウイルスを滅菌除去し、店内の環境からウイルスを除去する必要がある。その他の感染症も、例えば、重傷急性呼吸器症候群(SARS)等のように、空気中からウイルスを滅菌除去する必要がある場合が多い。
【0005】
特許文献1には、このような病原性ウイルス類等の有害物質を、紫外線殺菌灯内蔵の化学フィルタにより滅菌・除菌して、無害化する装置が開示されている。また、特許文献2には、光反応性化合物は、赤血球の構造又は機能に不利な影響を及ぼすことなく、全血又は赤血球濃縮物中のウイルスを不活性化することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-249299号公報
【特許文献2】特開平4-226919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来のウイルス除去装置は、ウイルス除去効率が低く、また、大量の空気のウイルス除去には適用することができないという問題点がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、空気中から2019新型コロナウイルス等の病原性ウイルスを、高効率で滅菌除去することができると共に、大量の空気を処理することができるウイルス滅菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るウイルス滅菌装置は、
洗浄容器と、
この洗浄容器の内部を下部の第1室と上部の第2室とに仕切る多孔質フィルタと、
前記洗浄容器の前記第1室に、洗浄前の空気を導入する導入部と、
前記第2室の前記多孔質フィルタの上に光触媒を有する光触媒水溶液を注入する注入部と、
前記第2室から前記光触媒水溶液を排出する排出部と、
前記第2室内の前記光触媒水溶液に超音波振動を付与する振動体と、
前記第2室内の前記光触媒水溶液に紫外光を照射する光源と、
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る他のウイルス滅菌装置は、
洗浄容器と、
この洗浄容器の内部を下部の第1室と上部の第2室とに仕切る多孔質フィルタと、
前記洗浄容器の前記第1室に、洗浄前の空気を導入する導入部と、
前記第2室の前記多孔質フィルタの上に二酸化塩素水を注入する注入部と、
前記第2室から前記二酸化塩素水を排出する排出部と、
前記第2室内の前記二酸化塩素水に超音波振動を付与する振動体と、
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る更に他のウイルス滅菌装置は、
洗浄容器と、
この洗浄容器の内部を下部の第1室と上部の第2室とに仕切る多孔質フィルタと、
前記洗浄容器の前記第1室に、洗浄前の空気を導入する導入部と、
前記第2室の前記多孔質フィルタの上にエタノールを注入する注入部と、
前記第2室から前記エタノールを排出する排出部と、
前記第2室内の前記エタノールに超音波振動を付与する振動体と、
を有することを特徴とする。
【0012】
これらのウイルス滅菌装置において、例えば、
前記第2室を、下部の第3室と上部の第4室とに仕切る活性炭フィルタと、
前記活性炭フィルタを透過した空気を前記第4室から排出する排出部と、
を有する。
【0013】
又は、ウイルスの滅菌にエタノールを使用する場合は、例えば、
前記第2室を、下部の第3室と上部の第4室とに仕切る活性炭フィルタと、
前記活性炭フィルタを透過した空気を前記第4室から排出する排出部と、
前記第3室に配置され、前記エタノールを含む空気から、エタノールを沈殿させて除去する沈殿装置と、
を有する。
【0014】
また、前記洗浄容器は、例えば、
円筒状をなすか、又は
前記第1室が円筒状をなし、前記第2室の一部が球形をなすように、前記第1室よりも膨らんでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウイルスを含む飛沫を含有する空気を、洗浄容器の下部の第1室に導入し、多孔質フィルタにより微細化して、多孔質フィルタの上に貯留された光触媒水溶液、二酸化塩素水又はエタノール中に供給し、微細な気泡を形成する。このウイルスを含む気泡に対し、超音波振動を印加して更に微細化すると共に、ウイルスのエンベロープを破壊する。そして、光触媒作用、二酸化塩素水又はエタノールの作用により、ウイルスを不活性化する。このように、光触媒と超音波振動との組み合わせ、二酸化塩素水と超音波振動との組み合わせ又はエタノールと超音波振動との組み合わせにより、ウイルスが無効化され、滅菌される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態を示す図である。
図2】ハニカム構造の圧力壁を示す図である。
図3】多孔質フィルタによる微細気泡の生成を示す図である。
図4】光触媒によるウイルスの不活性化を示す図である。
図5】超音波振動による微細気泡及びウイルスの破壊を示す図である。
図6】活性炭フィルタによる清浄化を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態を示す図である。
図8】二酸化塩素によるウイルスの不活性化を示す図である。
図9】本発明の第3実施形態を示す図である。
図10】シャッタを示す図である。
図11】本発明の第4実施形態を示す図である。
図12】本発明の第5実施形態を示す図である。
図13】本発明の第6実施形態を示す図である。
図14】本発明の第7実施形態を示す図である。
図15】エタノールの作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るウイルス滅菌装置を示す模式図である。本実施形態は、光触媒と超音波洗浄を組み合わせて滅菌を行う装置である。ハウジング1内に有底円筒状の洗浄器容器2がその軸方向を垂直にして設置されている。このハウジング1の下部には、コンプレッサ5が設置されており、コンプレッサ5と洗浄器容器2の下部とは逆止弁3を介して連結されている。なお、コンプレッサ5の出口には、中性能フィルタ4が設置されており、吸入口6を介してコンプレッサ5内に吸い込まれた空気は、中性能フィルタ4及び逆止弁3を介して洗浄器容器2内に供給される。洗浄器容器2内の空気は、逆止弁3により阻止されて、コンプレッサ5側に戻ることはない。
【0018】
容器2の底面から一定距離の高さの位置に、図2に示すハニカム構造層からなる円盤状の圧力壁11が水平に設置されており、この圧力壁11により、容器2は底面側の部分と、その上の部分とに仕切られている。コンプレッサ5から逆止弁3を介して容器2内に導入された空気は、圧力壁11を介して、容器2内を上方に移動する。圧力壁11の上には、円盤状の多孔質フィルタ12が重ねられて設置されており、滅菌前の空気を多孔質フィルタ12に通すことにより、空気を例えば粒径が1.0μm以下の微細な気泡にする。
【0019】
タンク8には、光触媒を含有する水溶液が収容されており、タンク8内で光触媒は水溶液中に撹拌され、水中に光触媒が均一に存在している。このタンク8内の光触媒水溶液は、注入口9を介して容器2内に供給される。この光触媒水溶液16は、圧力壁11に支持された多孔質フィルタ12上に一定の深さで存在し、気泡中のウイルスを除去する。そして、空気洗浄後の光触媒水溶液16は、排出口10を介して容器2から排出される。容器2内の光触媒水溶液16には、紫外光が照射されており、光触媒の存在下で、気泡内のウイルスを除去するようになっている。光触媒として、例えば、微粉末の二酸化チタンをゼオライトの表面に弱く結合させたものを使用し、この光触媒粒子を含む水溶液をタンク8内で撹拌すると、二酸化チタンはゼオライトから離れて水中に分散していく。この光触媒水溶液を洗浄容器2内に導入し、紫外線を照射すると、二酸化チタンの光触媒作用により発生した活性酸素種がウイルスのエンベロープを酸化分解することにより、ウイルスを不活性化する。
【0020】
更に、この光触媒水溶液16に対し、3MHz以上の周波数の超音波を印加する超音波振動体13が容器2内に配置されている。この超音波振動により、多孔質フィルタ12を通過してきた気泡が更に例えば0.05~0.2μmに微細化される。これにより、粒子サイズが0.1~0.2μmである新型コロナウイルスのエンベロープを直接破壊する。そして、この微細気泡の微細化に加えて、光触媒水溶液に対する紫外線の照射により、ウイルスを高効率で不活性化し、滅菌する。このようにして、光触媒の存在下での紫外光照射及び超音波振動の付与により、微細気泡内のウイルスが不活性化する。
【0021】
光触媒水溶液16の上方には、円盤状の活性炭フィルタ14が水平に設置されている。光触媒水溶液16内でウイルスが除去された滅菌後の微細気泡は、活性炭フィルタ14を通過して清浄化され、容器2の上方に上昇して、ハウジング1の上部に設けられた吹出口7から室内に供給される。
【0022】
次に、上述の如く、構成された本実施形態の動作について説明する。室内の空気が、コンプレッサ5により、洗浄器容器2内に送り込まれる。この滅菌前の空気は、容器2の下部から上方に進む。そして、容器2の入り口の上方には、多孔質フィルタ12が所定の強度を有するハニカム構造体からなる圧力壁11に支持されている。この多孔質フィルタ12の上には、タンク8から光触媒水溶液16が供給され、コンプレッサ5により圧力壁11の下方に送り込まれた空気の圧力により、光触媒水溶液16が多孔質フィルタ12上に支持されている。従って、この多孔質フィルタ12上に一定の深さの光触媒水溶液16の貯留層が形成されている。この光触媒水溶液16には、超音波振動体13から超音波振動が付与されており、更に紫外線15が照射されている。
【0023】
図3に示すように、多孔質フィルタ12の孔径は例えば0.5~1.0μmであり、コンプレッサ5の正圧及びハニカム構造体によって、光触媒水溶液の質量が支持されている状態で、コンプレッサ5から送り込まれた室内の空気を、多孔質フィルタ12に通過させる。これにより、粒子サイズが1.0μm以下の微細な気泡(微細な空気粒子)が光触媒水溶液16内に形成される。多孔質フィルタ12の素材は、セラミック、カーボン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等で成形されている。
【0024】
図4に示すように、光触媒水溶液16は、例えば、微粉末の二酸化チタンをゼオライトの表面に弱く結合させた光触媒粒子を含む水溶液である。タンク8内でこの水溶液を撹拌すると、二酸化チタンはゼオライトから離れ、水中に分散していく。この二酸化チタンが分散した光触媒水溶液16に、紫外線を照射すると、光触媒作用により活性酸素種が発生する。この活性酸素種がウイルスのエンベロープを酸化分解し、これにより、ウイルスが不活性化される。
【0025】
このとき、図5に示すように、振動体13を介して、周波数が3MHz以上の超音波を光触媒水溶液16に印加することにより、多孔質フィルタ12を通過して微細になった気泡を、更に、0.05~0.2μm程度まで微細に分解させることができる。また、超音波の印加により、粒子サイズが0.1~0.2μmである新型コロナウイルスのエンベロープを直接破壊することができる。このようにして、光触媒水溶液16内で気泡中のウイルスが除去される。
【0026】
光触媒水溶液16内でウイルスが滅菌された空気は、図6に示すようにして、活性炭フィルタ14により清浄化される。ウイルス除去後の空気を活性炭フィルタ14に通すことにより、この空気中の臭い等の細かい汚染物質が活性炭フィルタ14に吸着して、空気を浄化させることができる。その後、ウイルスが除菌又は滅菌されて浄化された空気は、吹出口7から室内に返戻される。このようにして、空気の清浄化循環システムが完成する。
【0027】
このように、本実施形態においては、光触媒と超音波洗浄を組み合わせて滅菌を行う。コンプレッサ5により室内より吸引した空気は、多孔質フィルム12により微細化されて、微細気泡となって光触媒水溶液16に送り込まれる。この微細気泡は、この気泡の大きさに対応した周波数である3MHz以上の超音波によって更に分解される。また、ウイルスのエンベロープが超音波振動により直接破壊される。微細気泡中に含まれるウイルスは、紫外光と光触媒により無効化されて、空気が滅菌される。その後、活性炭フィルタにより臭気及び汚染物質が除去されて、室内に返戻される。本実施形態では、従来の各種フィルタを使用した除菌タイプの清浄機とは異なり、室内の空気をほぼ完全に滅菌可能であり、また人体に無害であるため、安全性も高い。
【0028】
なお、本発明においては、第1室は、本実施形態では容器2における多孔質フィルタ12より下方の空間であり、第2室は、多孔質フィルタ12より上の部分である。この第2室は、活性炭フィルタ14で更に下方の第3室と上方の第4室とに分かれる。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態について具体的に説明する。図7は、本発明の第2実施形態を示す図である。図7において、図1と同一物には同一符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態は、二酸化塩素水と超音波洗浄を組み合わせて滅菌を行うものである。即ち、本実施形態においては、第1実施形態における光触媒水溶液を貯留し、撹拌するタンク8の代わりに、二酸化塩素水を貯留するタンク20を設置する。よって、多孔質フィルタ12の上には、二酸化塩素水21が一定の深さで貯留される。
【0030】
本実施形態でも、汚染空気は多孔質フィルタ12により微細な気泡となった後、この気泡内にウイルスを含んだ状態で、二酸化塩素水21内に導入される。そうすると、二酸化塩素による酸化作用により、標的とするウイルス及び細菌のタンパク質を変化させる。即ち、このタンパク質を構成するアミノ酸残基を二酸化塩素の酸化反応により変換させ、この作用により、図8に示すように、ウイルス及び細菌の構造が代わり、その病原作用をもたらす機能を低下させることができる。これにより、ウイルスが不活性化される。
【0031】
本実施形態においても、多孔質フィルタ12を通過した微細な空気(気泡)に含まれるウイルスに対し、超音波振動によりそのエンベロープを直接破壊して無効化すると共に、二酸化塩素水21により無効化し、滅菌する。これにより、清浄化された空気を室内に戻すことができる。
【0032】
次に、本発明の第3実施形態について具体的に説明する。図9は、本発明の第3実施形態を示す図である。図9において、図1と同一物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。本実施形態はハウジング1が不要である。洗浄容器2の下部には、逆止弁3の他に、圧力弁31が設けられており、この圧力弁31により調整されて滴水がドレン排水口32から排出されるようになっている。
【0033】
圧力壁11の下面には、図10に示す絞り羽根部材30が設置されている。この絞り羽根部材30は円板の4箇所をくりぬいて、このくりぬいた部分に4個の絞り羽根が設置されている。
【0034】
洗浄容器2の上部には、円盤状の活性炭フィルタ14が設けられており、この活性炭フィルタ14と洗浄容器2の天板との間には、滅菌後の空気が集められる部屋33が設けられている。この部屋33は円板状をなし、その周面には、滅菌後の清浄化された空気の吹出口34が設けられている。
【0035】
次に、上述の如く構成された本実施形態の動作について説明する。室内の空気がコンプレッサ5により、逆止弁3を経由して、洗浄容器2の下部に供給される。本実施形態においては、圧力壁11の下面に絞り羽根30が設けられており、この絞り羽根30により、圧力壁11の上面に設けられた多孔質フィルタ12を通過する空気量がウイルス滅菌処理に適したものに制御される。この絞り羽根30により空気量が制御された後、空気は多孔質フィルタ12を通過して微細な気泡となって、多孔質フィルタ12上の光触媒水溶液16内に導入される。微細な気泡及びその中のウイルスは、振動体13からの超音波を受けて、より微細化され、又はエンベロープが破壊され、紫外光15の照射と光触媒の作用により、効率的にウイルスの不活性化が行われる。これにより、滅菌処理された清浄な空気は、活性炭フィルタ14を通過して、臭気等の有害物質が除去された後、部屋33に集められ、この部屋33から吹出口34を介して室内に返戻される。このようにして、ウイルスを含む室内の空気が光触媒水溶液及び超音波により滅菌処理され、清浄な空気が室内に供給される。本実施形態では、絞り羽根30により処理空気の量が適切に制御されるので、ウイルスの除去効率が高い。
【0036】
次に、本発明の第4実施形態について具体的に説明する。図11は、本発明の第4実施形態を示す図である。図11において、図7及び図9と同一物には同一符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態は光触媒による不活性化の代わりに、二酸化塩素水を使用し、超音波の印加を併用して、微細気泡内のウイルスを除去する。本実施形態は、ハウジング1が不要なこと、及び処理空気の風量を調節できることは、図9に示す実施形態と同様である。
【0037】
次に、本発明の第5実施形態について具体的に説明する。図12は本発明の実施形態を示す図である。図12において、図9と同一物には同一符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態においては、洗浄容器2の代わりに、洗浄容器40を使用する。洗浄容器2は円筒状をなしている。この洗浄容器2が円筒状であることは、その内面で反射する超音波の波長を安定させ、一定のキャビテーション及び加速度を保持し、均質的に滅菌するのに有益である。しかし、本実施形態のように、洗浄容器40を球体状にすることにより、更に一層その効果を向上させることができる。即ち、本実施形態においては、光触媒水溶液容器40は、容器部41~43から構成される。そして、光触媒水溶液16を貯留する容器部42は、球体の下部及び上部の一部を切り取ったような形状をなし、この球体の下部及び上部に円筒状の容器部41及び容器部43が連結されている。従って、容器部42の最大内径は、容器部41及び容器部43の内径よりも大きい。容器部41と容器部42との境界に、絞り羽根30、圧力壁11及び多孔質フィルタ12が設けられている。また、容器部43内には、その上下方向の中間位置に、円板状の活性炭フィルタ14が設けられている。そして、この活性炭フィルタ14の上方の円柱状の部屋33が形成されており、部屋33の周面に清浄化された空気の吹出口34が設けられている。
【0038】
本実施形態においては、超音波振動体13が容器部42のほぼ中心位置に配置されている。このため、容器部42内の光触媒水溶液16は、その中心に配置された振動体13からの超音波振動を受け、超音波による気泡及びウイルスの破壊を均一に受けることになる。よって、より高効率でウイルスを不活性化することができる。また、容器部42の容積を増やすことができるので、滅菌処理に必要な光触媒水溶液16の量を増加させることができ、結局、滅菌処理することができる空気風量を増加させることができる。
【0039】
次に、本発明の第6実施形態について具体的に説明する。図13は本発明の第6実施形態を示す図である。本実施形態は、光触媒水溶液16の代わりに、二酸化塩素水21を使用してウイルスを不活性化したものである。図13において、図12及び図11と同一物には同一符号を付して詳細な説明を省略する。二酸化塩素水を使用しても、球状の容器部42により、光触媒と同様の効果を奏する。
【0040】
次に、本発明の第7実施形態について具体的に説明する。図14は、本発明の第7実施形態を示す図である。本実施形態は、光触媒水溶液又は二酸化塩素水の代わりに、エタノールを使用してウイルスを滅菌するものである。図14において、図13と同一物には同一符号を付して詳細な説明を省略する。タンク50内には、エタノール(36.0~81.4体積%(日本薬局方基準))が貯留されている。そして、このタンク50から、エタノールが、注入口9を介して球状の容器部42に供給される。エタノール51は、この容器部42の底部の多孔質フィルタ12上に一旦貯留された後、排出口10から排出される。本実施形態では、円柱状の容器部43を上下に二分する活性炭フィルタ14と、容器部42との間の空間に、遠心分離型の沈殿装置35が設置されている。容器部42から容器部43に上昇してくる空気中には、エタノールの蒸気が含まれており、沈殿装置35において、遠心分離によりエタノールのみを降下させる。エタノールが除去された滅菌後の空気は、活性炭フィルタ14により臭気等の汚染物質が除去され、吐出口34から室内に供給される。
【0041】
このように構成されたウイルス滅菌装置においては、多孔質フィルタ12により微細化された気泡中に含まれるウイルスは、図15に示すように、容器部42内のエタノール51中で不活性化される。コロナウイルス科のウイルス55は、表面にスパイク蛋白、エンベロープ蛋白、膜蛋白を含む脂質膜(エンベロープ)を有するという共通の構造を持つ。このエンベロープといわれる膜は、その大部分が脂質でできており、エタノール分子56で処理すると、容易に破壊される。これにより、ウイルス55が不活性化される。超音波振動の印加のもとに、エタノール51により処理されてウイルスが不活性化された空気は、遠心分離型沈殿装置35によりエタノールが除去されて活性炭フィルタ14を通過し、これにより臭気等が除去された後、室内に返戻される。エタノールは沈殿装置35から容器部42に戻る。本実施形態においても、前述の各実施形態と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、光触媒を使用した紫外光照射、二酸化塩素水又はエタノールにより、ウイルスを不活性化すると共に、更に光触媒水溶液、二酸化塩素水又はエタノール内のウイルスを含む微細気泡に超音波振動を付与することにより、高効率でウイルスを除去することができる。このため、本発明は高効率でウイルスを滅菌するのに有益である。
【符号の説明】
【0043】
1:ハウジング
2:洗浄容器
5:コンプレッサ
8、20、50:タンク
11:圧力壁
12:多孔質フィルタ
13:超音波振動体
14:活性炭フィルタ
15:紫外光
16:光触媒水溶液
21:二酸化塩素水
34:吹出口
40:容器
41~43:容器部
51:エタノール
図1
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