(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022885
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】人工知能による水位予測システム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/02 20060101AFI20220131BHJP
G01W 1/14 20060101ALI20220131BHJP
G06N 3/02 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
G01W1/02 A
G01W1/14 Z
G06N3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119019
(22)【出願日】2020-07-10
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】515195440
【氏名又は名称】株式会社新日本コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】特許業務法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 克司
(72)【発明者】
【氏名】城岸 巧
(72)【発明者】
【氏名】羽黒 厚志
(72)【発明者】
【氏名】青木 恵子
(57)【要約】 (修正有)
【課題】少ない情報量で水位の予測を行うシステムを提供する。
【解決手段】リアルタイム雨量観測システム2と、人工知能データセンター1と、現地水位計3と、を備え、人工知能データセンター1は、数年分間に観測した水位の過去データを記憶した学習部11と、リアルタイム雨量観測システム2から配信された雨量データ21を受信する雨量データ受信部12と、現地水位計3から送信される水位データ31を受信する水位データ受信部13と、将来の水位を予測する予測処理プログラムを備えた予測部14を有しており、予測処理プログラムが、学習部11にて記憶している過去データと、時系列に並べられた雨量データ21および水位データ31とを照合して、現在の降雨状況から到達し得る水位を予測し、予測値15を情報配信サーバ4へ配信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイム雨量観測システムと、人工知能データセンターと、現地水位計と、を備え、
前記人工知能データセンターは、数年分間に観測した水位の過去データを記憶した学習部と、前記リアルタイム雨量観測システムから配信された雨量データを受信する雨量データ受信部と、前記現地水位計から送信される水位データを受信する水位データ受信部と、将来の水位を予測する予測処理プログラムを備えた予測部と、を有しており、
前記予測処理プログラムが、前記学習部にて記憶している前記過去データと、時系列に並べられた前記雨量データおよび前記水位データとを照合して、現在の降雨状況から到達し得る水位を予測し、予測値を情報配信サーバへ配信することを特徴とする人工知能による水位予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工知能を利用して、観測している水路の水位を予測するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、局所的な集中豪雨による浸水被害が多発している。このような被害を軽減させるために、文献1のように観測した降雨、水位データを解析し、解析したデータと共に状況を解説するコメントを表示して分かりやすく情報を伝達するシステムが提案されている。
また、浸水解析エンジンによる浸水予測モデルの構築も行われているが、モデル構築のためには現地測量や整備台帳の収集の現況調査や、降雨予測データをはじめとした膨大な量のデータを解析するソフトウエアを必要としており、浸水予測モデル構築の導入、維持には非常に大きなコストが掛かっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑み、予測モデルの構築および維持に係るコストが安く、且つ、より短期間での導入が可能になる水位予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
リアルタイム雨量観測システムと、人工知能データセンターと、現地水位計とを備え、前記人工知能データセンターは、数年分間に観測した水位の過去データを記憶した学習部と、前記リアルタイム雨量観測システムから配信された雨量データを受信する雨量データ受信部と、前記現地水位計から送信される水位データを受信する水位データ受信部と、将来の水位を予測する予測処理プログラムを備えた予測部とを有しており、前記予測処理プログラムが、前記学習部にて記憶している前記過去データと、時系列に並べられた前記雨量データおよび前記水位データとを照合して、現在の降雨状況から到達し得る水位を予測し、該予測値を情報配信サーバへ配信することを特徴とする人工知能による水位予測システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、過去数年間の雨量および水位の実測値を学習させた人工知能データセンターに、リアルタイムに観測された雨量データおよび水位データを時系列でセットすることにより、予測部に備えられた予測処理プログラムが、予め学習した過去の実測値から現在の雨量と水位変動から近似するデータを参照することで、将来到達し得る水位の予測を行うことができる。このため、過去の実測値を予め学習させた人工知能と、リアルタイム雨量観測システムから配信される雨量データおよび現地にて設置した水位計からの水位データのみで水位の予測を行うことができる。また、従来のように現地測量や降雨予測データ等、種々のデータを必要とすることが無いため、予測モデルの構築、維持に係る費用を安く抑えて導入数を増加することも可能となり、水害発生の危険性を広範囲で察知することが出来る。
【0007】
また、従来のように降雨予測データを用いた水位予測の際には、その水位予測処理時間に5分程度かかっていたところ、本発明であれば予測処理時間を1分程度に短縮化することもできる。したがって、従来よりも早く予測結果を出力することができ、この結果を基に避難行動の判断支援や、情報共有等を素早く行うことで、被害の軽減も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明における予測モデルを説明した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下より、本発明の人工知能による水位予測システムの実施の形態について詳説する。
図1に示すように、本システムには、水路の水位を観測するため現地設置された現地水位計3と、雨量データを配信するリアルタイム雨量観測システム2と、前記現地水位計3と前記リアルタイム雨量観測システム2から送られてくる水位データ31と雨量データ21とを受信し、該水位データ31および該雨量データ21を基にして観測している水路の将来水位を予測する予測処理プログラムを有した人工知能データセンター1とを備えている。なお、本発明の実施の形態において、リアルタイム雨量観測システム2は、国土交通省が運用しているXRAINデータを使用している。
【0010】
このうち前記人工知能データセンター1は、予め過去2年分の水位の過去データ6を教師ラベルとして学習させておく学習部11と、現地水位計3から送られてくる水位データ31を受信する水位データ受信部13と、リアルタイム雨量観測システム2による雨量データ21を受信する雨量データ受信部12と、該雨量データ21と、該水位データ31を基に、前記学習部11に記憶された過去データ6を参照して将来の水位を予測する予測処理プログラムを備えた予測部14とを有している。
【0011】
前記予測処理プログラムには、
図2に示すような水位予測モデルが構築されている。該水位予測モデルは、1分毎に記録した1時間分の雨量データ21(x1~60)と水位データ31(x62~121)および現時点での雨量データ21(x61)と水位データ31(x122)をそれぞれReLU活性化関数5(u1lz1~u122lz122)によって予測値15を出力するもので、出力した予測値15は予め学習している過去データ6を教師ラベルとした上で、予測値15と教師ラベルの誤差が計算され、誤差が最小となるよう調整する。
【0012】
以下より、本システムの動作について説明する。
降雨時、水路に設置された現地水位計3には、1分毎に水路の水位が記録され、モバイルネットワークを通じて人工知能データセンター1の水位データ受信部13へと送信される。また、リアルタイム雨量観測システム2から送信された雨量データ21は、配信用ネットワークにて雨量データ受信部12へと送信される。
人工知能データセンター1内の雨量データ受信部12および水位データ受信部13へと送信された雨量データ21と水位データ31は、時系列に並んだ状態で予測部14の予測処理プログラムへとセットされると予測モデルによって予測値15が出力され、該予測値15と、教師ラベルである水位の過去データとの誤差を計算し、その誤差が最小になるよう重みが調整され、将来到達し得る水位を出力する。
出力した予測値15は情報配信サーバ4へと配信され、各自治体の下水道管理者や被害予想地域の住民に施設操作や避難行動の判断支援へと利用される。
【0013】
上記のような水位予測システムとすれば、過去2年間の雨量と水位の過去データ6を学習した人工知能データセンター1へ、リアルタイム雨量観測システム2と現地水位計3から受信した現況の雨量データ21および水位データ31を時系列にセットすることにより、学習した過去2年間の水位の実測値から、現状の水位変動に近似するデータを参照し将来到達し得る水位を予測する。つまり、本発明で必要とするデータは、過去数年分の水位の過去データ6と、降雨時のリアルタイム雨量データ21および水位データ31のみであるため、従来のように現地測量や下水道等の整備台帳の収集、管路網のモデル等を必要とせず、システム構築の期間を大幅に短縮することが出来る。
【0014】
また、従来の予測システムは降雨予測情報を必要としており、解析に5分程度の時間がかかっていたが、本発明は過去の実測値から予測するため、解析時間を大幅に短縮した1分程度で解析を終えることが出来る。
これにより、近年、同時多発的な集中豪雨により水害の同時多発的発生および発生時間の短縮化が生じ、リアルタイムで正確な水害発生状況の把握が困難であったものが、解析時間およそ1分という高速での情報解析により、従来よりも早く浸水被害地区の住民や自治体の管理者に対して水害の情報を提供することができ、被害の軽減を図ることが可能となる。
【0015】
加えて、上記のように本発明のシステム構築に必要なデータは過去数年分の雨量および水位の過去データ6と、リアルタイムの雨量データ21および水位データ31だけで良いため、従来と比べてシステム構築に必要な情報が圧倒的に少ないため、システムの導入および維持に係る費用を安くすることができる。
したがって、従来よりも安価に複数の地点に導入でき、広い範囲で水位に関する情報を収集、配信することで、より多くの人たちに大雨による危険を知らせることが期待できる。
【0016】
本発明の人工知能による水位予測システムは、上記の実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で適宜変更できる。
【符号の説明】
【0017】
1 人工知能データセンター
11 学習部
12 雨量データ受信部
13 水位データ受信部
14 予測部
15 予測値
2 リアルタイム雨量観測システム
21 雨量データ
3 現地水位計
31 水位データ
4 情報配信サーバ
5 活性化関数
6 過去データ