IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特開-操舵装置 図1
  • 特開-操舵装置 図2
  • 特開-操舵装置 図3
  • 特開-操舵装置 図4
  • 特開-操舵装置 図5
  • 特開-操舵装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022890
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20220131BHJP
   B62D 1/06 20060101ALI20220131BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20220131BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20220131BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20220131BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D1/06
B62D5/04
B62D101:00
B62D113:00
B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119111
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】野倉 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】梅村 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】深谷 真啓
(72)【発明者】
【氏名】竹田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】川端 教一
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 勝利
(72)【発明者】
【氏名】東 真康
(72)【発明者】
【氏名】酒井 悠太
【テーマコード(参考)】
3D030
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D030DB13
3D232CC08
3D232CC12
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA23
3D232EA01
3D232EB04
3D232EB05
3D232EB11
3D232EC22
3D232EC29
3D232EC37
3D232GG01
3D333CB30
3D333CB44
3D333CE45
3D333CE49
(57)【要約】
【課題】回転操作性の良好な操舵装置を提供すること。
【解決手段】車両の転舵輪と機械的に接続されていないステアリングハンドル3を有し、ステアリングハンドルが、回転軸12に連結されるボス部4と、ボス部の周囲に配置されて操作時に把持する把持箇所を有する操作部6と、を備えて、回転可能に保持される操舵装置S。操作前の最後端側に把持箇所を位置させるように操作部を操作させた際に、転舵輪が、最大許容転舵角度まで転舵されるように、制御されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の転舵輪と機械的に接続されていないステアリングハンドルを有し、
該ステアリングハンドルが、回転軸に連結されるボス部と、該ボス部の周囲に配置されて操作時に把持する把持箇所を有する操作部と、を備えて、回転可能に保持される操舵装置であって、
操作前の最後端側に前記把持箇所を位置させるように前記操作部を操作させた際に、前記転舵輪が、最大許容転舵角度まで転舵されるように、制御されることを特徴とする操舵装置。
【請求項2】
前記把持箇所が、操作前の状態で、前記回転軸よりも前側となる領域に、設定されていることを特徴とする請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記転舵輪の最大許容転舵角度が、前記車両の走行速度に対応して調整可能に、設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の操舵装置。
【請求項4】
前記把持箇所が、前記操作部に搭載されている把持位置検知センサによって、検知可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の操舵装置。
【請求項5】
前記操作部が、非操作状態において、左右方向側の幅寸法を前後方向側の幅寸法よりも大きく設定される略四角環状として、構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の操舵装置。
【請求項6】
前記操作部における前記把持箇所の位置に応じて、操作時の前記ステアリングハンドルに付与される反力を調整可能な反力調整部を、備えていることを特徴とする請求項5に記載の操舵装置。
【請求項7】
前記把持箇所が、把持用部位として、前記操作部における残りの一般部に対して識別可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の転舵輪と機械的に接続されていないステアリングハンドルを有する操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操舵装置としては、ステアリングハンドルにおいて、操作時に把持するリング部を非円環状とするとともに、このリング部に、非操作の状態で、左右方向に略沿った棒状のバーを、前後方向側で複数個並設させて、端末相互を連結することにより、段差を設け、低速走行時と高速走行時とで、それぞれ、把持する部位を変更することにより、低速走行時と高速走行時との操作性を良好としているものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-156022公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の操舵装置では、低速走行時と高速走行時との操作性を良好としているが、回転操作時において、回転軸の後方に位置する手(引手)の手首に負担を生じさせないことは考慮されておらず、引手の手首に負担を生じさせず、回転操作性を良好とする点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、回転操作性の良好な操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る操舵装置は、車両の転舵輪と機械的に接続されていないステアリングハンドルを有し、
ステアリングハンドルが、回転軸に連結されるボス部と、ボス部の周囲に配置されて操作時に把持する把持箇所を有する操作部と、を備えて、回転可能に保持される操舵装置であって、
操作前の最後端側に把持箇所を位置させるように操作部を操作させた際に、転舵輪が、最大許容転舵角度まで転舵されるように、制御されることを特徴とする。
【0007】
本発明の操舵装置では、操作部の操作時に、操作前の最後端側(回転軸の後方側)に把持箇所を位置させれば、転舵輪が、最大許容転舵角度まで転舵される構成であることから、操作部の回転操作時に、回転軸より後方に位置する手(引手)の手首に負担が生じ難く、持ち変えなくても、安定して、操作部を操作することができる。
【0008】
したがって、本発明の操舵装置では、回転操作性が良好である。
【0009】
具体的には、本発明の操舵装置において、把持箇所を、操作前の状態で、回転軸よりも前側となる領域に、設定する構成とすれば、操作部の回転角度をある程度確保することができ、換言すれば、転舵輪の転舵に必要な操作部の回転量を、ある程度確保することが可能となって、操作部の回転操作時に、転舵輪を急激に転舵させることを抑制できて、操作部の回転操作性を一層良好にすることができる。
【0010】
さらに、上記構成の操舵装置において、転舵輪の最大許容転舵角度を、車両の走行速度に対応して調整可能に設定すれば、操作部の操作性をより一層良好にすることができる。
【0011】
具体的には、上記構成の操舵装置において、把持箇所を、操作部に搭載されている把持位置検知センサによって、検知可能に構成することが、好ましい。
【0012】
また、上記構成の操舵装置において、操作部を、非操作状態において、左右方向側の幅寸法を前後方向側の幅寸法よりも大きく設定される略四角環状とすることもでき、このような構成とする場合、操作部における把持箇所の位置に応じて、操作時のステアリングハンドルに付与される反力を調整可能な反力調整部を、備える構成とすれば、操作部を非円環状としていても、把持箇所の位置(回転軸からの距離)にかかわらず、回転操作性を略一定とすることができて、好ましい。
【0013】
また、上記構成の操舵装置において、把持箇所を、把持用部位として、操作部における残りの一般部に対して識別可能に構成してもよく、このような構成とすれば、操作時に把持する部位を容易に認識させることができて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である操舵装置を示す概略図である。
図2】実施形態の操舵装置に使用されるステアリングハンドルの平面図である。
図3】実施形態の操舵装置における制御装置を示すブロック図である。
図4図2のステアリングハンドルにおける操作前の状態(初期位置)と、最大回転位置まで回転させた状態と、を示す平面図である。
図5】ステアリングハンドルの回転操作試験の結果を示すグラフ図である。
図6】ステアリングハンドルの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の操舵装置Sは、図1に示すように、ステアリング機構1と、転舵機構20と、制御装置30と、を備えるもので、ステアリング機構1におけるステアリングハンドル3と、転舵機構20における転舵輪23と、を、機械的に接続させていない(機械的に切り離された)ステアバイワイヤシステムである。
【0016】
転舵機構20は、制御装置30によって作動を制御される転舵用アクチュエータ21と、ステアリングギア22と、転舵輪23と、ステアリングロッド24と、タイロッド25と、ナックルアーム26と、を備えている。転舵用アクチュエータ21は、ステアリングハンドル3の回転に応じて、駆動されるもので、ステアリングギア22は、転舵用アクチュエータ21の動作に応じて転舵輪23の転舵角を変化させるように、転舵用アクチュエータ21の動作を転舵輪23に伝達させるためのものである。具体的には、ステアリングギア22は、転舵用アクチュエータ21に設けられている図示しない出力シャフトの回転運動を、ステアリングロッド24の直線運動に変換するものである。そして、このステアリングロッド24の直線運動が、タイロッド25とナックルアーム26とを介して転舵輪23に伝達されて、転舵輪23の転舵角が変化することとなる。実施形態の場合、転舵用アクチュエータ21は、ステアリングハンドル3の操作部(リング部6)を後述する最大回転位置RPまで回転操作させた際に、転舵輪23を、最大許容転舵角度まで転舵させるように、制御装置30によって作動を制御される構成である。
【0017】
ステアリング機構1は、ステアリングハンドル3と、ステアリングハンドル3を回転可能に支持する回転軸12と、反力モータ13と、を備えている。反力モータ13は、制御装置30により作動を制御されるもので、実施形態の場合、回転軸12は、反力モータ13の出力シャフトと一体化されている。回転軸12には、ステアリングハンドル3(後述するリング部6)の操作角度を検出する操作角検出センサ15と、ステアリングハンドル3の操作時に回転軸12に加わるトルクを検出するトルク検出手段16と、が、配設されている。操作角検出センサ15とトルク検出手段16とは、汎用のものを使用することができる。反力モータ13は、ステアリングハンドル3(リング部6)を、操作前位置(直進操舵位置)に復帰させる方向に作用する反力と、操作前位置(直進操舵位置)への復帰方向とは逆の方向に作用する復帰抵抗力と、を発生させるように、構成されている。
【0018】
ステアリングハンドル3は、回転軸12に連結されるボス部4と、ボス部4の周囲に配置されて操作時に把持する操作部としてのリング部6と、を備えている。操作部としてのリング部6は、実施形態の場合、図2に示すように、非操作状態(回転前の状態)において、左右方向側の幅寸法を前後方向側の幅寸法よりも大きく設定される略四角環状として、構成されている。実施形態では、ボス部4とリング部6とは、直進操舵(操作前)の状態において、ボス部4の後側から延びるスポーク部5により、連結されている。詳細には、リング部6は、上方から見た状態において、回転軸12より前側の領域を、逆U字形状とし、回転軸12より後側の領域を、後端側にかけて狭幅とするような略U字形状とした左右対称形として、構成されている。
【0019】
リング部6には、操舵時に把持する把持箇所としての把持用部位8が、形成されている。この把持用部位8は、リング部6における残りの一般部7に対して識別可能に構成されるもので、実施形態の場合、具体的には、一般部7よりも太くして、一般部7よりも外方に張り出すように形成することにより、一般部7に対して視覚により識別可能に構成されている。把持用部位8は、一般部7と触感を異ならせるように、一般部7と形成材料を異ならせて、形成してもよく、また、一般部7と色調を異ならせることにより、一般部7に対して識別可能な構成としてもよい。
【0020】
実施形態の場合、把持用部位8は、左右対称形となるように、直進操舵(操作前)の状態のリング部6において前端側を構成する前側部位6aの左右両端側に、形成されている。すなわち、把持用部位8は、直進操舵(操作前)の状態のリング部6において、回転軸12より前側となる領域(回転軸12を通る左右方向に沿った左右基準線L1よりも前側となる位置)に、形成されている。実施形態のリング部6を詳細に説明すれば、一般部7は、直進操舵(操作前)の状態のリング部6を上方から見た状態において、ボス部4の前方において左右方向に略沿った棒状として配置される前側部位7aと、ボス部4の左右の側方において前後方向に略沿った棒状として配置される側方部位7b,7bと、側方部位7b,7b間を連結するようにボス部4の後方においてスポーク部5と連結される後側部位7cと、を備える構成であり、把持用部位8は、前側部位7aと、各側方部位7b,7bと、の間に、配設されている。そして、各把持用部位8は、直進操舵(操作前)の状態のリング部6を上方から見た状態において、一般部7における前側部位7aから連なるように左右方向に略沿って配置される前側傾斜部8aと、前側傾斜部8aにおけるボス部4から離れた端縁側において前側傾斜部8aに対して屈曲するように配置される側方傾斜部8bと、を備える構成とされている。具体的には、前側傾斜部8aは、リング部6を上方から見た状態において、一般部7の前側部位7aに対して僅かに後方側に傾斜した略直線状の外形線を有する略棒状として、構成されている。側方傾斜部8bは、外縁側を、一般部7における側方部位7bの外縁と略沿うような略直線状として、構成されている。さらには、把持用部位8は、それぞれ、直進操舵(操作前)の状態のリング部6を上方から見た状態において、前側傾斜部8aにおける左右の中央部位8cと回転軸12とを結ぶ線の角度αを、回転軸12(回転中心)を通る左右方向に沿った左右基準線L1に対して、45°程度に設定されている位置に、配設されている(図2,4のA参照)。この把持用部位8では、運転者は、前側傾斜部8aの部位を主に把持してステアリングハンドル3を回転操作することとなり、前側傾斜部8aは、左右方向に略沿って配置される一般部7の前側部位7aに対して僅かに後方側に傾斜して形成されており、この傾斜は、把持した際に小指側にかけて下降するような傾斜であることから、手の形に沿いやすく、操作時に握りやすい。
【0021】
実施形態の操舵装置Sでは、図4のA,Bに示すように、ステアリングハンドル3のリング部6は、把持用部位8を、直進操舵(操作前)の状態を初期位置BPとして、操作前の最後端側まで回転可能に、構成されている。詳細には、リング部6は、把持用部位8における初期位置BPでの左右の中央部位8cを回転軸12(回転中心)を通る前後方向に沿った前後基準線L2上に位置させるように回転させた状態を、最大回転位置RPとして(図4のB参照)、初期位置BPと最大回転位置RPとの間で回転操作可能に、構成されている。すなわち、実施形態の操舵装置Sでは、ステアリングハンドル3のリング部6は、把持用部位8を把持した状態では、回転軸12を中心(回転中心)として、初期位置BPからの回転角度βを135°とし、左右に135°ずつ回転可能に(135°を超える回転は不能に)、構成されている(図4のB参照)。
【0022】
このような把持用部位8の初期位置BPの配置位置と、リング部6の回転操作角度βと、は、回転操作性を考慮して、設定されている。ステアバイワイヤシステムによるステアリングハンドル3は、操作時に、両手で把持した状態から、持ち替えずに回転操作することが望ましく、回転操作時に、操作角度が大きければ、回転軸12の後方側(手前側)となる引手(図4における右手RH)の手首に負担が生じやすくなる。図5に示すグラフ図は、把持箇所を、直進操舵の状態のステアリングハンドルにおける左右基準線上、すなわち、回転軸の左側と右側とに設定して、回転操作した際の引手の手首に生じる負担を、5人の被験者によって評価したグラフ図である。このグラフ図によれば、回転角度が90°の場合(すなわち、引手が回転軸の後端側に位置する場合)には、5人全ての被験者が手首に生じる負担を感じないが、120°の回転角度では、半数以上となる3人の被験者が手首に生じる負担を感じ、150°の回転角度では、5人全ての被験者が手首に生じる負担を大きく感じる結果となった。このような評価結果からは、最大回転位置においての把持箇所を、回転軸の後端側に設定すること(引手を、回転軸の後端を超えた領域まで把持させた状態で回転させないこと)が、好ましい。また、実際の車両走行時における回転操作時には、転舵輪23をスムーズに転舵させる観点から、初期位置BPから最大回転位置RPまでの回転角度は、90°を超えてなるべく大きく設定することが、好ましい。これらの要因に加えて、実際にステアリングハンドル3のリング部6を把持して操作する際の操作性を考慮して、実施形態のステアリングハンドル3は、直進操舵(操作前)の状態での把持用部位8(初期位置BP)を、回転軸12の左斜め前方と右斜め前方となる位置に、配置させ、この把持用部位8を、回転軸12の後端側に位置させるまで、回転操作可能に、構成されている。
【0023】
なお、実施形態の操舵装置Sでは、把持用部位8における前側傾斜部8aの中央部位8cが回転軸12(回転中心)を通る前後方向に沿った前後基準線L2上に位置するように回転された状態を、最大回転位置RPとして、この最大回転位置RPまでリング部6を回転操作可能に構成されているが(図4のB参照)、把持用部位8の最大回転位置は、この中央部位8cを前後基準線L2上に位置させるような回転状態から、±30°(望ましくは、±20°)の範囲内で、増減させる位置に、設定してもよい。
【0024】
また、実施形態のステアリングハンドル3では、リング部6に、運転者による把持位置を検知可能な把持位置検知センサ10が、搭載されている(図2参照)。この把持位置検知センサ10は、運転者によってリング部6における把持用部位8以外の部位(一般部7の部位)が把持された際にも、その把持位置を検知するために配設されるものであり、把持位置検知センサ10としては、実施形態の場合、リング部6に、所定間隔で全周にわたって、タッチセンサを配置させたものを、使用している。このようなタッチセンサとしては、赤外線等の光を利用するものや、圧力検出によるもの、マイクロスイッチ等、汎用のものを使用することができる。
【0025】
制御装置30は、車両の走行速度や、ステアリングハンドル3の把持位置、操作量に応じて、反力モータ13と転舵用アクチュエータ21との作動を制御するもので、実施形態の場合、図3のブロック図に示すように、速度取得部31と、把持箇所取得部32と、操作方向取得部33と、トルク取得部34と、伝達比変更部36と、反力調整部37と、を備えている。
【0026】
速度取得部31は、車両に搭載されている速度検知センサ28から出力される信号に基づき、車両の走行速度を取得している。把持箇所取得部32は、把持位置検知センサ10から出力される信号に基づき、運転者によるリング部6の把持箇所を、取得している。操作方向取得部33は、回転軸12に設けられている操作角検出センサ15から出力される信号に基づき、ステアリングハンドル3の操作方向と操作角とを取得している。トルク取得部34は、トルク検出手段16から出力される信号に基づき、ステアリングハンドル3の回転時に発生するトルクを取得している。
【0027】
伝達比変更部36は、車両の走行速度や、リング部6の把持位置に応じて、伝達比を変更し、ステアリングハンドル3の操作角度に対する転舵輪23の転舵角度を変更させるためのものである。伝達比とは、(転舵輪23の転舵角度)/(ステアリングハンドル3の操作角)によって規定されるものである。
【0028】
具体的には、実施形態の場合、車両の走行速度が比較的速い場合、伝達比を小さくすることにより、ステアリングハンドル3の操作角に対して、転舵輪23の転舵角度が小さく設定されることとなる。逆に、車両の走行速度が比較的遅い場合、伝達比を大きくすることにより、ステアリングハンドル3の操作角に対して、転舵輪23の転舵角度が大きく設定されることとなる。なお、実施形態の操舵装置Sでは、転舵輪23の最大許容転舵角度は、低速走行時(5~30km/h程度)において、30°に設定され、高速走行時(30~80km/h程度)において、20°に設定されている。
【0029】
また、運転者がリング部6において把持用部位8から外れて把持用部位8よりも前側の領域(一般部7における前側部位7a)を把持している場合には、最後端までの回転角度(許容操作角度)が、把持用部位8を把持して回転操作する場合と比較して、大きくなることから、伝達比を小さくすることにより、ステアリングハンドル3のステアリングハンドル3の操作角に対して、転舵輪23の転舵角度が小さく設定されることとなる。逆に、運転者がリング部6において把持用部位8から外れて把持用部位8よりも後側の領域(一般部7における側方部位7bや後側部位7c)を把持している場合には、把持用部位8を把持して回転操作する場合と比較して、許容操作角度が小さくなることから、伝達比を大きくすることにより、ステアリングハンドル3の操作角に対して、転舵輪23の転舵角度が大きく設定されることとなる。
【0030】
この伝達比変更部36は、速度取得部31から得られる車両の速度と、操作方向取得部33から得られるステアリングハンドル3の操作方向及び操作角と、把持箇所取得部32から得られるリング部6の把持位置と、に基づき、転舵用アクチュエータ21に作動信号を出力させることとなる。
【0031】
反力調整部37は、リング部6(操作部)を操作時に把持する把持箇所の位置に応じて、ステアリングハンドル3に付与される反力を調整するためのものである。反力調整部37は、トルク取得部34から得られるステアリングハンドル3の操作時のトルクと、操作方向取得部33から得られるステアリングハンドル3の操作方向及び操作角と、把持箇所取得部32から得られる運転者によるリング部6の把持箇所と、に基づき、反力モータ13に作動信号を出力させることとなる。実施形態のステアリングハンドル3では、リング部6に、把持箇所として、残りの一般部7に対して識別可能に構成される把持用部位8が、形成されているが、リング部6における把持用部位8以外の一般部7の領域を把持した場合、この実際に把持している箇所を把持箇所として、反力調整部37は、把持用部位8を把持して操作した際と同様の感触で操作できるように、反力を調整するものである。具体的には、一般部7において、把持用部位8よりも回転軸12からの離隔距離の小さな領域を把持する場合、反力を軽減し、逆に、一般部7において、把持用部位8よりも回転軸12からの離隔距離の大きな領域を把持する場合には、反力を加重させるようにして、操作時の反力を略一定となるように調整することとなる。
【0032】
実施形態の操舵装置Sでは、ステアリングハンドル3において操作部としてのリング部6の操作時に、操作前の最後端側(回転軸12の後方側)に把持箇所(把持用部位8)を位置させれば(図4のB参照)、転舵輪23が、最大許容転舵角度まで転舵される構成であることから、リング部6の回転操作時に、回転軸12より後方に位置する手(引手、図4における右手RH)の手首に負担が生じ難く、持ち変えなくても、安定して、リング部6を操作することができる。
【0033】
したがって、実施形態の操舵装置Sでは、回転操作性が良好である。
【0034】
具体的には、実施形態の操舵装置Sでは、リング部6における把持箇所(把持用部位8)が、操作前の状態(初期位置BPの状態)で、回転軸12よりも前側となる領域に、設定されていることから、リング部6の回転角度をある程度確保することができ、換言すれば、転舵輪23の転舵に必要なリング部6の回転量を、ある程度確保することが可能となって、リング部6の回転操作時に、転舵輪23を急激に転舵させることを抑制できて、リング部6の回転操作性を一層良好にすることができる。
【0035】
また、実施形態の操舵装置Sでは、転舵輪23の最大許容転舵角度が、車両の走行速度に対応して調整可能に設定されている。具体的には、実施形態の操舵装置Sでは、伝達比変更部36を有する構成として、車両の走行速度が比較的速い場合には、ステアリングハンドル3の操作角に対して、転舵輪23の転舵角度を小さく設定し、車両の走行速度が比較的遅い場合には、ステアリングハンドル3の操作角に対して、転舵輪23の転舵角度を大きく設定するように、構成されている。そのため、高速で走行している際に、ステアリングハンドル3を大きく回転させても、転舵輪23が大きく転舵されることを抑制できて、車両を安定して走行させることができ、操作部(リング部6)の操作性をより一層良好にすることができる。
【0036】
また、実施形態の操舵装置Sでは、リング部6における把持箇所が、把持用部位8として、リング部6における残りの一般部7に対して識別可能に構成されている。そのため、運転者に、操作時に把持する部位を、目視等によって、容易に認識させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、図6に示すステアリングハンドル3Aのごとく、リング部6Aに把持用部位を設けない構成のものを使用してもよい。図6に示すステアリングハンドル3Aでは、リング部6Aには、ステアリングハンドル3におけるリング部6と同様に、運転者による把持位置を検知可能な把持位置検知センサ10が、搭載されており、把持位置検知センサ10により、把持箇所を検知する構成である。
【0037】
また、実施形態のステアリングハンドル3では、リング部6に把持用部位8を有する構成であるものの、運転者による把持位置を検知可能な把持位置検知センサ10も、搭載させている構成である。そのため、把持用部位8から外れた位置を把持した場合にも、正確な把持位置を検知することができる。
【0038】
さらに、実施形態の操舵装置Sでは、操作部としてのリング部6が、非操作状態において、左右方向側の幅寸法を前後方向側の幅寸法よりも大きく設定される略四角環状とされている。そして、実施形態の操舵装置Sは、リング部6における把持箇所の位置に応じて、操作時のステアリングハンドル3に付与される反力を調整可能な反力調整部37を、備える構成とされている。そのため、操作部(リング部6)を非円環状としていても、把持箇所の位置(回転軸12からの距離)にかかわらず、回転操作性を略一定とすることができる。詳細に説明すれば、実施形態の操舵装置Sにおいては、把持用部位8から外れた位置を把持して回転操作させる場合に、反力調整部37によってステアリングハンドル3に付与する反力を調整することにより、把持用部位8を把持した際と同様の感触で回転操作させることができる。このような反力調整部37は、上述したごとく、把持用部位を備えず、かつ、非円環状の四角環状とされるリング部6Aを有するステアリングハンドル3Aに、好適である。例えば、ステアリングハンドル3Aを、様々な把持位置P1,P2,P3で把持して回転操作する際に、リング部6Aが非円環状であることから、各把持位置P2,P2,P3は、回転軸12からの離隔距離を異ならせることとなるが、反力調整部37によって反力を調整することにより、把持位置P1,P2,P3の違い(回転軸12からの離隔距離の差異)に拘わらず、回転操作時に感じる反力を略一定とすることができて、回転操作性を一定とすることができる。
【符号の説明】
【0039】
3,3A…ステアリングハンドル、4…ボス部、6,6A…リング部(操作部)、7…一般部、8…把持用部位(把持箇所)、10…把持位置検知センサ、12…回転軸、23…転舵輪、30…制御装置、37…反力調整部、S…操舵装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6