(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022904
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】流体燃料改質装置及び改質流体燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
F23K 5/08 20060101AFI20220131BHJP
F02M 27/04 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
F23K5/08 C
F02M27/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119345
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】521220817
【氏名又は名称】八東株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠一
【テーマコード(参考)】
3K068
【Fターム(参考)】
3K068AA13
3K068AA14
3K068AA16
3K068AB37
3K068CA27
3K068CB01
3K068EA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い燃焼効率を有する流体燃料を生成することができる流体燃料改質装置及び高い燃焼効率を有する改質流体燃料の製造方法を提供する。
【解決手段】流体燃料改質装置100は、改質前の流体燃料9aの流入口11、改質後の流体燃料9dの流出口12、及び流入口11と流出口12とをつなぐ流路13を有するケース1を備え、流路13は、流入口11の下流側に第1の処理領域13aと、第1の処理領域13aの下流側に第2の処理領域13bとを有し、第1の処理領域13aには、無機固形物2が設置されており、第2の処理領域13bには、水素吸蔵合金3が設置されており、第2の処理領域13bの内部には、少なくとも1つの磁石4a,4bが設置されており、水素吸蔵合金3は、磁石4a,4bの磁場40内に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質前の流体燃料の流入口、改質後の流体燃料の流出口、及び前記流入口と前記流出口とをつなぐ流路を有するケースを備え、
前記流路は、前記流入口の下流側に第1の処理領域と、前記第1の処理領域の下流側に第2の処理領域とを有し、
前記第1の処理領域には、無機固形物、有機固形物及び有機無機複合固形物のうち少なくともいずれか1種が設置されており、
前記第2の処理領域には、水素吸蔵合金が設置されており、
前記第2の処理領域の内部又は外部には、少なくとも1つの磁石が設置されており、
前記水素吸蔵合金は、前記磁石の磁場内に配置されていることを特徴とする流体燃料改質装置。
【請求項2】
前記水素吸蔵合金は、
Fe、Co及びNiのうち少なくともいずれか1種の元素と、
Pd及びPtのうち少なくともいずれか1種の元素と、を含有する合金であることを特徴とする請求項1に記載の流体燃料改質装置。
【請求項3】
前記水素吸蔵合金は、金属系基材の表面に設けられた水素吸蔵合金層の形態を有し、前記金属系基材は、Fe、Co及びNiのうち少なくともいずれか1種の元素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体燃料改質装置。
【請求項4】
前記水素吸蔵合金がFe‐Pd合金であり、前記金属系基材がFe元素を含有することを特徴とする請求項3に記載の流体燃料改質装置。
【請求項5】
前記金属系基材は、板材、棒材及び線材のうち少なくともいずれか1つの形状を有し、前記水素吸蔵合金は、前記金属系基材の表面の全面又は一部に配置されることを特徴とする請求項3又は4に記載の流体燃料改質装置。
【請求項6】
前記第2の処理領域には、複数の磁石が設置されており、該複数の磁石の対向し合う磁極が同極であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の流体燃料改質装置。
【請求項7】
前記水素吸蔵合金が、前記複数の磁石の対向し合う磁極同士の間に設置されることを特徴とする請求項6に記載の流体燃料改質装置。
【請求項8】
前記複数の磁石はいずれも、環状形状を有し、かつ、該磁石の環状の中心孔を通って巻き回された導線を有し、
前記金属系基材は、線材又は棒材の形状を有し、該線材又は該棒材の一端は前記磁石のうちいずれか一つに巻き回された導線に接続され、該線材又は該棒材の他端は前記一端が接続された導線を有する磁石とは異なる磁石に巻き回された導線に接続され、
前記水素吸蔵合金は、前記金属系基材の表面の全面又は一部に配置されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の流体燃料改質装置。
【請求項9】
前記無機固形物は、複数の中実球状の無機固形物であり、かつ、1質量%~80質量%の麦飯石と、20質量%~99質量%のガラス組成物とを含有し、
前記ガラス組成物中のSiO2の含有率が30質量%~100質量%であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の流体燃料改質装置。
【請求項10】
前記流路は、前記第2の処理領域の下流側に第3の処理領域をさらに有し、
前記第3の処理領域には、強磁性組成物が設置されており、
前記強磁性組成物は、中実球状であり、かつ、1質量%~80質量%のマグネタイトと、20質量%~99質量%のガラス組成物を含有し、
前記ガラス組成物中のSiO2の含有率が30質量%~100質量%であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の流体燃料改質装置。
【請求項11】
第1の処理領域内にて、改質前の流体燃料と、無機固形物、有機固形物及び有機無機複合固形物のうち少なくともいずれか1種とを接触させ、接触済みの流体燃料を第2の処理領域に送り出す工程Aと、
前記第2の処理領域内にて、前記接触済みの流体燃料と水素吸蔵合金とを接触させる工程Bとを有し、
前記第2の処理領域の内部又は外部には、少なくとも1つの磁石が設置されており、
前記水素吸蔵合金は、前記磁石の磁場内に配置されていることを特徴とする改質流体燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体の処理装置及び処理方法に関し、例えば、流体燃料改質装置及び改質流体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体燃料を燃焼する燃焼機関では、液体燃料の不完全燃焼による燃焼効率の低下が問題となっている。
【0003】
燃焼効率の低下を解決する装置として、麦飯石とガラス組成物とを含有する第1のガラスボールと、マグネタイトとガラス組成物とを含有する第2のガラスボールとを備えた燃料フィルターが報告されている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1には、「第1のガラスボール中の天然石である麦飯石の遠赤外線と、第2のガラスボール中の磁鉄鉱であるマグネタイトの磁力の放射(即ち、電磁波の照射)を、液体燃料が受けることにより液体燃料のクラスターを小さくすることができるので、クラスターの大きな液体燃料を燃焼するよりもより完全燃焼に近い燃焼をすることができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の燃料フィルターでは、液体燃料のクラスターを小さくすることによって燃焼効率の低下を抑制するが、液体燃料のクラスターを小さくするだけでは、燃焼効率の低下を抑制することが困難である。
【0006】
本開示は、かかる事情を背景として為されたものであって、高い燃焼効率を有する流体燃料を生成することができる流体燃料改質装置及び高い燃焼効率を有する改質流体燃料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、磁石の磁場内に配置された水素吸蔵合金に、遠赤外線の吸収によってクラスターが細分化された流体物質、例えば流体燃料を接触させることによって、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明に係る流体燃料改質装置は、改質前の流体燃料の流入口、改質後の流体燃料の流出口、及び前記流入口と前記流出口とをつなぐ流路を有するケースを備え、前記流路は、前記流入口の下流側に第1の処理領域と、前記第1の処理領域の下流側に第2の処理領域とを有し、前記第1の処理領域には、無機固形物、有機固形物及び有機無機複合固形物のうち少なくともいずれか1種が設置されており、前記第2の処理領域には、水素吸蔵合金が設置されており、前記第2の処理領域の内部又は外部には、少なくとも1つの磁石が設置されており、前記水素吸蔵合金は、前記磁石の磁場内に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る流体燃料改質装置では、前記水素吸蔵合金は、Fe、Co及びNiのうち少なくともいずれか1種の元素と、Pd及びPtのうち少なくともいずれか1種の元素と、を含有する合金であることが好ましい。強磁性を有するFe、Co及びNiのうち少なくともいずれか1種の元素と、水素を活性化する特性を有するPd及びPtのうち少なくともいずれか1種の元素とを合金化することによって、水素と流体燃料との反応を進行させやすくすることができる。
【0010】
本発明に係る流体燃料改質装置では、前記水素吸蔵合金は、金属系基材の表面に設けられた水素吸蔵合金層の形態を有し、前記金属系基材は、Fe、Co及びNiのうち少なくともいずれか1種の元素を含有することが好ましい。水素吸蔵合金層の形態によって、水素吸蔵合金と流体燃料との接触が可能な領域の面積を大きくして、水素吸蔵合金に吸蔵された水素と、流体燃料との接触機会を増加させることができる。また、基材によって、水素吸蔵合金層の形態を有する水素吸蔵合金を補強することができる。
【0011】
本発明に係る流体燃料改質装置では、前記水素吸蔵合金がFe‐Pd合金であり、前記金属系基材がFe元素を含有することが好ましい。水素吸蔵合金の高透磁率化に寄与するFe元素によって、水素と流体燃料との反応をより迅速に進行させやすくすることができる。また、吸蔵可能な水素量の増加に寄与するPd元素によって、水素吸蔵合金の交換時期を延長することができる。
【0012】
本発明に係る流体燃料改質装置では、前記金属系基材は、板材、棒材及び線材のうち少なくともいずれか1つの形状を有し、前記水素吸蔵合金は、前記金属系基材の表面の全面又は一部に配置されることが好ましい。流体燃料が基材に接触することによって攪拌が生じ、水素吸蔵合金に吸蔵された水素と、流体燃料との接触頻度を増加させることができる。
【0013】
本発明に係る流体燃料改質装置では、前記第2の処理領域には、複数の磁石が設置されており、該複数の磁石の対向し合う磁極が同極であることが好ましい。水素吸蔵合金に吸蔵された水素と、流体燃料との反応効率を高めることにより、供給した流体燃料分子に対する改質された流体燃料分子の割合を向上することができる。
【0014】
本発明に係る流体燃料改質装置では、前記水素吸蔵合金が、前記複数の磁石の対向し合う磁極同士の間に設置されることが好ましい。水素吸蔵合金を通る磁束を増加させて、水素と流体燃料との反応を進行させやすくしつつ、供給した流体燃料分子に対する改質された流体燃料分子の割合を向上することができる。
【0015】
本発明に係る流体燃料改質装置では、前記複数の磁石はいずれも、環状形状を有し、かつ、該磁石の環状の中心孔を通って巻き回された導線を有し、前記金属系基材は、線材又は棒材の形状を有し、該線材又は該棒材の一端は前記磁石のうちいずれか一つに巻き回された導線に接続され、該線材又は該棒材の他端は前記一端が接続された導線を有する磁石とは異なる磁石に巻き回された導線に接続され、前記水素吸蔵合金は、前記金属系基材の表面の全面又は一部に配置されていることが好ましい。水素吸蔵合金に作用する磁場の生成を安定化させることができる。
【0016】
本発明に係る流体燃料改質装置では、前記無機固形物は、複数の中実球状の無機固形物であり、かつ、1質量%~80質量%の麦飯石と、20質量%~99質量%のガラス組成物とを含有し、前記ガラス組成物中のSiO2の含有率が30質量%~100質量%であることが好ましい。無機固形物が中実球状であり、かつガラス組成物を含有するため、無機固形物の表面が平滑化されやすく、無機固形物の表面における流体燃料のこびりつきを防止しやすい。また、無機固形物がガラス組成物を含有するため、麦飯石の溶出を防止することができる。
【0017】
本発明に係る流体燃料改質装置では、前記流路は、前記第2の処理領域の下流側に第3の処理領域をさらに有し、前記第3の処理領域には、強磁性組成物が設置されており、前記強磁性組成物は、中実球状であり、かつ、1質量%~80質量%のマグネタイトと、20質量%~99質量%のガラス組成物を含有し、前記ガラス組成物中のSiO2の含有率が30質量%~100質量%であることが好ましい。マグネタイトの磁力によって、流体燃料分子同士の再度のファンデルワールス結合の形成を防止することができる。また、強磁性組成物が中実球状であり、かつガラス組成物を含有するため、強磁性組成物の表面が平滑化されやすく、強磁性組成物の表面における流体燃料のこびりつきを防止しやすい。さらに、強磁性組成物がガラス組成物を含有するため、マグネタイトの溶出を防止することができる。
【0018】
本発明に係る改質流体燃料の製造方法は、第1の処理領域内にて、改質前の流体燃料と、無機固形物、有機固形物及び有機無機複合固形物のうち少なくともいずれか1種とを接触させ、接触済みの流体燃料を第2の処理領域に送り出す工程Aと、前記第2の処理領域内にて、前記接触済みの流体燃料と水素吸蔵合金とを接触させる工程Bとを有し、前記第2の処理領域の内部又は外部には、少なくとも1つの磁石が設置されており、前記水素吸蔵合金は、前記磁石の磁場内に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、高い燃焼効率を有する流体燃料を生成することができる流体燃料改質装置及び高い燃焼効率を有する改質流体燃料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】流体燃料改質装置の一例を一部切開して示す平面図である。
【
図6】基材に設けられた水素吸蔵合金層の一例を示す概略斜視図である。
【
図7】基材に設けられた水素吸蔵合金層の他の一例を示す概略斜視図である。
【
図9】流体燃料改質装置の変形例を一部切開して示す正面図である。
【
図10】磁石、基材及び水素吸蔵合金層の配置関係を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0022】
(燃焼システム)
図1を参照して、燃焼システム900の一態様を説明する。燃料システム900は、例えば、流体燃料タンク210と、流体燃料圧送装置500と、燃焼室300とを備え、この順序で配管により接続されている。流体燃料タンク210は、改質前の流体燃料9aを貯蔵する。改質前の流体燃料9aは、例えば、重油、ディーゼル燃料、ガソリン等の液体燃料である。流体燃料圧送装置500は、例えば、渦流ポンプ又は歯車ポンプである。燃焼室300は、例えば、ボイラー、エンジン又は加熱炉の燃焼室である。
【0023】
流体燃料圧送装置500と燃焼室300とを接続する本流路400には、上流側から第1のT字管410と、第1の開閉弁610と、流量計700と、流体燃料改質装置100と、第2の開閉弁620と、第2のT字管420とが設けられている。本流路400には、さらに、第1のT字管410から分岐しかつ第2のT字管420に合流するバイパス流路450が設けられている。バイパス流路450には、第3の開閉弁630が設けられている。
【0024】
流体燃料圧送装置500は、流体燃料タンク210に貯蔵された改質前の流体燃料9aを第1のT字管410側に圧送する。第1の開閉弁610及び第2の開閉弁620開放し、第3の開閉弁630を閉じた場合、改質前の流体燃料9aは、本流路400を経由し流体燃料改質装置100に流入して、流体燃料改質装置100内部で改質後の流体燃料9dに改質される。その後、改質後の流体燃料9dは、本流路400を通過し、燃焼室300に到達して燃焼される。一方、第1の開閉弁610及び第2の開閉弁620を閉じ、第3の開閉弁630を開放した場合、改質前の流体燃料9aは、バイパス流路450を経由し、燃焼室300に到達して燃焼される。
【0025】
(流体燃料改質装置)
次に、
図2~
図4を参照して、流体燃料改質装置100についてより詳細に説明する。本実施形態に係る流体燃料改質装置100は、改質前の流体燃料9aの流入口11、改質後の流体燃料9dの流出口12、及び流入口11と流出口12とをつなぐ流路13を有するケース1を備え、流路13は、流入口11の下流側に第1の処理領域13aと、第1の処理領域13aの下流側に第2の処理領域13bとを有し、第1の処理領域13aには、無機固形物2、有機固形物(不図示)及び有機無機複合固形物(不図示)のうち少なくともいずれか1種が設置されており、第2の処理領域13bには、水素吸蔵合金3が設置されており、第2の処理領域13bの内部には、少なくとも1つの磁石4a,4bが設置されており、水素吸蔵合金3は、磁石4a,4bの磁場40内に配置されている。
【0026】
ケース1を構成する材料には、磁気を遮蔽する材料又は磁気を透過する材料の少なくともいずれか一方が選択される。磁気を遮蔽する材料としては、例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト・フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、パーマロイ、純鉄、ニッケル等の強磁性体がある。磁気を透過する材料としては、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム等の常磁性体、又は銅、プラスチック等の反磁性体がある。
【0027】
流入口11は、
図1に示す流量計700から流出した改質前の流体燃料9aを、
図2及び
図3に示す方向91に沿って、流路13に流入させる。
【0028】
改質前の流体燃料9a中の複数の燃料分子は、通常、集合してクラスター(不図示)を形成している。当該クラスター(不図示)は水分子を含み得る。以下、当該燃料分子及び水分子を称してクラスター形成分子(不図示)という。改質前の流体燃料9aの温度は、例えば、20~80℃であり、好ましくは30~40℃である。ここで、流体燃料改質装置100の上流側には、改質前の流体燃料9aを加熱する加熱装置(不図示)が設けられてもよい。
【0029】
流路13は、筒構造であることが好ましい。改質前の流体燃料9aが筒構造の軸方向に沿って流路13内を移動することによって、改質前の流体燃料9aが改質されやすくなる。
【0030】
流出口12は、流路13内の改質後の流体燃料9dを、
図2及び
図3に示す方向93に沿って、
図1に示す第2の開閉弁620側に流出させる。
【0031】
流路13の天面には、
図2及び
図3に示すように、流路13の内外を連通する開口部14と、開口部14を密閉する蓋15が設けられることが好ましい。流体燃料改質装置100をメンテナンスするとき、蓋15及び締結部材18を外し、開口部14を開放することによって、流体燃料改質装置100の内部のメンテナンスをしやすくすることができる。また、流路13には、流路13から分岐して流体燃料改質装置100の外部に突出したガス抜き管17が設けられることが好ましい。ガス抜き弁170を開放して流路13内のガスを排出し、気圧を調整することができる。
【0032】
(第1の処理領域)
第1の処理領域13aは、
図2及び
図3に示すように、流路13において、流入口11の下流側に存在する。クラスター(不図示)を形成している改質前の流体燃料9aは、第1の処理領域13aに流入する。
【0033】
〔無機固形物〕
まず、
図3を参照して、第1の処理領域13aに無機固形物2が設置されている形態について説明する。無機固形物2は、3~10μmの波長域の遠赤外線を放射する。改質前の流体燃料9aが、無機固形物2に接触したとき、当該波長域の遠赤外線がクラスター形成分子(不図示)に吸収されることによって、クラスター形成分子(不図示)が分子振動を行い、クラスター(不図示)が細分化する。クラスター(不図示)が細分化された接触済みの流体燃料9bは、第2の処理領域13bに送り出される。
【0034】
無機固形物2は、例えば、尾谷賢,“天然物の遠赤外線放射特性”,北海道立工業試験場報告,1994,No.293,p115‐121に記載の赤外分光放射率の試験方法によって、無機固形物2の表面温度150℃で3~10μmの波長域における赤外分光放射率を試験したとき、0.7以上の赤外分光放射率の最大値を有することが好ましい。このような無機固形物2としては、例えば、麦飯石、ガラス組成物、黒鉛珪石、トルマリン、カオリナイト、ゼオライト、野幌粘土、タルク又はそれら2種以上の組合せである。それら2種以上の組合せの形態としては、例えば、それら2種以上を溶融して得られた溶融物、それら2種以上を焼成して得られた焼成物又はそれら2種以上の破砕混合物がある。
【0035】
無機固形物2は、中実であることが好ましい。ここで「中実」とは、例えば、空隙率が20%以下、好ましくは10%以下であることをいう。空隙率が20%を超える場合、無機固形物2の強度が低下する可能性がある。
【0036】
本実施形態に係る流体燃料改質装置100では、無機固形物2は、複数の中実球状の無機固形物であり、かつ、1質量%~80質量%の麦飯石と、20質量%~99質量%のガラス組成物とを含有し、ガラス組成物中のSiO2の含有率が30質量%~100質量%であることが好ましい。無機固形物2が中実球状であり、かつガラス組成物を含有するため、無機固形物2が平滑な表面を有する溶融物とすることができる。また、無機固形物2がガラス組成物を含有するため、麦飯石の溶出を防止することができる。無機固形物2中の麦飯石の含有率は、20質量%~50質量%が好ましく、無機固形物2中のガラス組成物の含有率は、50質量%~80質量%が好ましい。ここで、ガラス組成物中のSiO2の含有率は、40質量%~85質量%であることが好ましい。ここで「球状」とは、短径と長径との比(短径/長径)が0.8~1.0である形状をいう。無機固形物2の平均短径は、6mm以上16mm以下が好ましく、より好ましくは、7mm以上13mm以下である。
【0037】
中実球状の無機固形物2の表面は、平滑な表面であることが好ましい。改質前の流体燃料9aと無機固形物2とが接触したとき、改質前の流体燃料9aが無機固形物2の表面を滑らかに移動することができるため、無機固形物2の表面における改質前の流体燃料9aのこびりつきを防止することができる。また、中実球状の無機固形物2の表面は、入口細孔がない表面であることが好ましい。改質前の流体燃料9aが、無機固形物2内部に入り込むことなく、無機固形物2の表面を滑らかに移動することができる。
【0038】
設置形態としては、無機固形物2が固定された状態で設けられている形態が好ましい。無機固形物2が第1の処理領域13aよりも下流側に流されることを防ぐことができる。より好ましくは、無機固形物2が着脱可能に固定された状態で設置されている形態である。具体例としては、
図2及び
図3に示すように、無機固形物2が出し入れ自在に充填された有孔ケース20が、流路13の内壁113から伸びる板状固定具16a,16bに着脱可能に差し込まれている形態がある。板状固定具16a,16bは、流路13内を流れる改質前の流体燃料9aが、有孔ケース20内を通過せずに、流路13の内壁113の側に回り込むことを防止することができる。
【0039】
有孔ケース20の前面20a及び後面(不図示)には、
図5に示すように、改質前の流体燃料9aの通過が可能な孔21が設けられている。孔21の孔径は、無機固形物2の平均短径よりも小さいことが好ましい。有孔ケース20に充填された無機固形物2が孔21から漏れないようすることができる。有孔ケース20が複数あるとき、無機固形物2は、例えば、
図2及び
図3に示すように、無機固形物2a,2b,2cに分けられて、それぞれの有孔ケース20に充填されている。有孔ケース20同士は、改質前の流体燃料9aの攪拌が生じやすいように、間隔を開けることが好ましい。
【0040】
有孔ケース20と、無機固形物2とが、流れ方向92に沿って流れる改質前の流体燃料9aに対する抵抗となるため、改質前の流体燃料9aは、例えば
図1に示す流体燃料圧送装置500によって加圧されることが好ましい。このとき、圧力は、0.1MPa以上であることが好ましい。改質前の流体燃料9aと無機固形物2との接触時間は、2秒以上であることが好ましい。改質前の流体燃料9aの流速は、0.5mm/s以上10mm/s以下であることが好ましい。無機固形物2間に対流を発生させ、改質前の流体燃料9aと無機固形物2との接触機会を確保することができる。改質前の流体燃料9aの液面の高さH
Fは、接触機会を減らさないためにも、
図3に示すように有孔ケース20の高さH
C以下であることが好ましい。
【0041】
無機固形物2が着脱可能に固定された状態で設けられている形態の他の具体例としては、改質前の流体燃料9aの通過が可能な貫通孔を有する有孔板状の無機固形物(不図示)が、
図2及び
図3に示す有孔ケース20の場合と同様に、板状固定具16a,16bに着脱可能に差し込まれている形態がある。或いは、円環状、多角環状等の環状の無機固形物が、例えば流路13の内壁から伸びる棒状固定具に着脱可能に通されて、串刺し状になる形態がある(不図示)。
【0042】
〔有機固形物・有機無機複合固形物〕
複数の無機固形物2の一部又は全ては、遠赤外線の放射効果を損なわない限り、有機固形物及び/又は有機無機複合固形物に置換されてもよい(不図示)。有機固形物(不図示)は、例えば、フッ素樹脂、ニトリルゴム又はウレタンゴムである。「有機無機複合固形物」とは、無機固形構成物と有機固形構成物とを組合せた固形物をいう(不図示)。有機無機複合固形物の形態としては、例えば、無機固形構成物及び有機固形構成物のうちいずれか一方の固形構成物の表面に、他方の固形構成物がコーティングされた形態、又は無機固形構成物及び有機固形構成物のうちいずれか一方の母材に、他方の固形構成物の充填材が複数点在している形態がある(不図示)。ここで、無機固形構成物(不図示)の組成は、無機固形物2の場合と同様であり、有機固形構成物(不図示)の組成は、有機固形物(不図示)の場合と同様である。有機固形物及び有機無機複合固形物の空隙率及び表面については、無機固形物2の場合と同様である。
【0043】
(第2の処理領域)
第2の処理領域13bは、
図2及び
図3に示すように、流路13において、第1の処理領域13aの下流側に存在する。第2の処理領域13bと第1の処理領域13aとは、流路13の流れ方向92に沿って連接して一体に形成されることが好ましい。
【0044】
〔水素吸蔵合金〕
第2の処理領域13bには、
図4に示すように、水素吸蔵合金3が設置されている。水素吸蔵合金3は、磁石4a,4bの磁場40内に配置されている。
図4において、磁場40は磁力線を記載することで表現したが、その記載は図の簡素化のために一部省略しており、磁場40は技術常識にしたがってその範囲が把握される。第2の処理領域13bでは、流れ方向92bで移動する接触済みの流体燃料9bが、水素吸蔵合金3に接触する。このとき、磁石4a,4bの磁力によって、接触済みの流体燃料9bにおけるクラスター形成分子同士のファンデルワールス結合を切断又は分散化しつつ、水素吸蔵合金3に吸蔵された水素と磁力との相互作用によって、接触済みの流体燃料9bの燃料分子の水素化、又は燃料分子と水素分子とのファンデルワールス結合等の改質が行われる。改質後、接触済みの流体燃料9bは、水素増加の流体燃料9cとなり、流れ方向92cで第2の処理領域13bよりも下流側に進む。第2の処理領域13bよりも下流側に処理領域を設けない場合、水素増加の流体燃料9cは、改質後の流体燃料となり流出口から流出する(不図示)。
【0045】
本実施形態に係る流体燃料改質装置100では、水素吸蔵合金3は、Fe、Co及びNiのうち少なくともいずれか1種の元素と、Pd及びPtのうち少なくともいずれか1種の元素とを含有する合金であることが好ましい。水素を活性化する特性を有するPd及びPt元素は、水素吸蔵合金3に吸蔵された水素を活性化する特性に寄与することができる。強磁性を有するFe、Co及びNi元素は、水素吸蔵合金3の強磁性に寄与することができる。水素吸蔵合金3の強磁性という性質もまた、磁化によって、水素吸蔵合金3に吸蔵された水素を活性化する特性に寄与することができる。したがって、接触済みの流体燃料9bの改質を進行しやすくすることができる。
【0046】
本実施形態では、金属元素M1と金属元素M2とを合金化した合金をM1‐M2系合金と表記することもある。ここで、「系」とは、金属元素M1及び金属元素M2以外の副成分の金属元素を含んでいてもよいという意味を示す。水素吸蔵合金3の具体例としては、Fe‐Pd系合金、Fe‐Pt系合金、Co‐Pd系合金、Co‐Pt系合金、Ni‐Pd系合金又はNi‐Pt系合金がある。副成分の金属元素の具体例としては、例えば、水素吸蔵合金3がFe‐Pd系合金である場合、Pt元素、Co元素、Ni元素又はPt元素がある。
【0047】
本実施形態に係る流体燃料改質装置100では、
図6~
図8に示すように、水素吸蔵合金3は、金属系基材30の表面30aに設けられた水素吸蔵合金層の形態を有し、金属系基材30は、Fe、Co及びNiのうち少なくともいずれか1種の元素を含有することが好ましい。水素吸蔵合金層の形態によって、水素吸蔵合金3と接触済みの流体燃料9bとの接触が可能な領域の面積を大きくして、水素吸蔵合金3に吸蔵された水素と、接触済みの流体燃料9bとの接触機会を増加させることができる。水素吸蔵合金層の厚さを小さくすると、水素吸蔵合金3の強度が低くなるが、金属系基材30が水素吸蔵合金3を補強することができる。
【0048】
本実施形態に係る流体燃料改質装置100では、水素吸蔵合金3がFe‐Pd合金であり、金属系基材30がFe元素を含有することが好ましい。水素吸蔵合金3の高透磁率化に寄与するFe元素によって、水素吸蔵合金3の強磁性が向上し、吸蔵された水素と、接触済みの流体燃料9bとの反応をより迅速に進行させやすくすることができる。また、Pd元素によって、水素吸蔵合金3の水素吸蔵量を増加させて、水素吸蔵合金3の交換時期を延長することができる。
【0049】
本実施形態に係る流体燃料改質装置100では、金属系基材30は、板材、棒材及び線材のうち少なくともいずれか1つの形状を有し、水素吸蔵合金3は、水素吸蔵合金層として金属系基材30の表面30aの全面又は一部に配置されることが好ましい。接触済みの流体燃料9bが上記の形状を有する金属系基材30に接触すると、接触済みの流体燃料9bには、乱流の発生によって攪拌が生じることが可能となる。したがって、水素吸蔵合金3に吸蔵された水素と、接触済みの流体燃料9bとの接触機会を増加させることができる。
【0050】
表面30aの全面の形態としては、例えば、板材の全面、棒材の全面又は線材の全面がある。表面30aの一部の形態としては、例えば、
図6に示すような板材のいずれか一方の表面の一部若しくは両面それぞれの一部(不図示)がある。このとき、水素吸蔵合金層の外観の形状は、例えば、円形状、つづら折り形状(不図示)、又は複数本平行に並べられた帯の形状(不図示)である。表面30aの一部の他の形態としては、棒材の側面の全体若しくは一部(不図示)、又は
図7及び
図8に示すようなメッシュを構成する線材の表面の一部がある。
【0051】
水素吸蔵合金3の設置形態としては、例えば、
図3及び
図4に示す水素吸蔵合金3の表面が流れ方向92に対して平行になるように設置される形態S1、又は水素吸蔵合金3の表面が流れ方向92に対して角度が生じるように設置される形態S2(不図示)がある。形態S1を採用することによって、接触済みの流体燃料9bのスムーズな流れを確保することができる。一方、形態S2を採用することによって、接触済みの流体燃料9bの攪拌効果を向上させることができる。形態S2の具体例としては、例えば、
図7及び
図8に示すようなメッシュの外観を有し、水素吸蔵合金3として水素吸蔵合金層を備え、かつメッシュの目の粗さが互いに異なる2つの金属系基材30が、流れ方向92に対して垂直に設置されることである。
【0052】
〔磁石及び磁石の磁場〕
磁石4a,4bは、
図3に示すように、第2の処理領域13bの内部に設置される。金属系基材30と同様に、接触済みの流体燃料9bを攪拌することができる。また、磁石4a,4bが、第2の処理領域13bの内部に設置されることによって、第2の処理領域13b内で磁場を発生させることができる。磁石4a,4bは、例えば、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマコバ磁石等の永久磁石、又は電磁石である。磁石4a,4bの磁場40内には、水素吸蔵合金3が配置されている。ここで磁場40内とは、接触済みの流体燃料9bの改質効果が得られる程度に磁石4の磁場40が発生している領域をいい、例えば、磁束密度5mT以上の領域をいう。磁場40外に水素吸蔵合金が配置されても、接触済みの流体燃料9bの改質効果は得られにくい。
【0053】
本実施形態に係る流体燃料改質装置100では、磁石の配置形態として、第2の処理領域13bに配置される磁石が一つである形態、または、第2の処理領域13bに配置される磁石が複数であり、かつ該複数の磁石の対向し合う磁極がN極とS極の関係を有する形態があるが、
図4に示すように、第2の処理領域13bには、複数の磁石4a,4bが設置されており、該複数の磁石4a,4bの対向し合う磁極41a,41bが同極である形態がより好ましい。ここで、磁石4aの磁極41aと、磁石4bの磁極41bとが対向し合っており、対向し合う磁極41a,41bがS極同士又はN極同士である。このような磁場40内に水素吸蔵合金3を配置すると、水素吸蔵合金3に吸蔵された水素が水素吸蔵合金3上を移動できる範囲を広くすることができる。したがって、当該水素と接触済みの流体燃料9bとの反応効率が高められて、接触済みの流体燃料9bの流体燃料分子に対する改質された流体燃料分子の割合を向上することができる。
【0054】
本実施形態に係る流体燃料改質装置100では、水素吸蔵合金3が、複数の磁石4a,4bの対向し合う磁極41同士の間に設置されることが好ましい。対向し合う磁極41の両方によって、水素吸蔵合金3を通る磁束を増加させることができる。水素吸蔵合金3が、強磁性体を含有している金属系基材30の表面30aに設けられた水素吸蔵合金層の形態を有する場合、対向し合う磁極41a,41b同士の間に設置される水素吸蔵合金3の位置関係としては、例えば、金属系基材30が、複数の磁石4a,4bの磁極に付着されている形態(
図4に図示。)、または、付着されずに固定具等によって間隔をあけて固定される形態(不図示)、または、対向し合う磁極41から等距離の地点に水素吸蔵合金3が配置されるように金属系基材30が固定具等で固定される形態(不図示)がある。ここで、複数の磁石4a,4bが同じ磁力を有し、かつ対向し合う磁極41から等距離の地点に水素吸蔵合金3が配置される形態がより好ましい。水素吸蔵合金3に吸蔵された水素と接触済みの流体燃料9bとの反応がより進行しやすくなる。ここで、強磁性体は、例えば、Fe金属、Co金属、Ni金属、Fe基合金、Co基合金又はNi基合金である。
【0055】
(磁石の配置の変形例)
本実施形態では、磁石4a,4bは、第2の処理領域13bの内部に設置される代わりに、第2の処理領域13bの内部に磁力を及ぼすことを条件として、第2の処理領域13bの外部に設置されてもよい。ここで、「第2の処理領域13bの外部」とは、例えば、第2の処理領域13bに対して流路13の内壁を隔てた外側をいう。流路13が、
図3に示すケースの内壁10が流路13の内壁と一致する形態の場合、磁石4a,4bは、例えば、ケース1の外部に設置される。ここで、ケース1を構成する材料には、磁気を透過する材料が選択されることが好ましい。流路13が、ケース1内に流路を形成する別の配管によってケースの内壁10から流路13の内壁が独立した形態(不図示)の場合、磁石4a,4bは、例えば、別の配管の外部に設置される。別の配管を構成する好適な材料は、ケース1を構成する好適な材料と同様である。
【0056】
(第3の処理領域)
本実施形態に係る流体燃料改質装置100では、流路13は、第2の処理領域13bの下流側に第3の処理領域13cをさらに有し、第3の処理領域13cには、強磁性組成物5が設置されており、強磁性組成物5は、中実球状であり、かつ、1質量%~80質量%のマグネタイトと、20質量%~99質量%のガラス組成物を含有し、ガラス組成物中のSiO
2の含有率が30質量%~100質量%である形態であってもよい。ここで強磁性組成物5が中実球状であり、かつガラス組成物を含有するため、強磁性組成物5が平滑な表面を有する。したがって、強磁性組成物5の表面における流体燃料のこびりつきを防止することができる。さらに、強磁性組成物5がガラス組成物を含有するため、マグネタイトの溶出を防止することができる。強磁性組成物5のマグネタイトの含有率は、1質量%~50質量%が好ましく、強磁性組成物5中のガラス組成物の含有率は、50質量%~99質量%が好ましい。ここで、ガラス組成物中のSiO
2の含有率は、40質量%~100質量%であることが好ましい。強磁性組成物5の個別の外径は、6mm以上16mm未満が好ましく、より好ましくは、7mm以上13mm未満である。外径の範囲の確認は、無機固形物2の場合と同様である。第3の処理領域13cでは、水素増加の流体燃料9cが、強磁性組成物5に接触する。このとき、水素増加の流体燃料9cの流体燃料分子が、マグネタイトから放出された磁力を受けることによって、流体燃料分子同士の再度のファンデルワールス結合の形成を防止することができる。接触後、水素増加の流体燃料9cは、改質後の流体燃料9dとなって、流出口から流出される。第3の処理領域13cと第2の処理領域13bとは、流路13の流れ方向92に沿って連接して一体に形成されることが好ましい。強磁性組成物5は、
図2及び
図3に示すように、有孔ケース50に充填され、有孔ケース50が、流路13の内壁から伸びる板状固定具16a,16bに着脱可能に差し込まれていることが好ましい。有孔ケース50は、例えば、
図5に示した有孔ケース20と同様の有孔ケースである。
【0057】
(流体燃料改質装置の変形例)
本実施形態に係る流体燃料改質装置101では、
図9及び
図10に示すように、複数の磁石4a,4bはいずれも、環状形状を有し、かつ、磁石の環状の中心孔4cを通って巻き回された導線25a,25bを有し、金属系基材26は、線材又は棒材の形状を有し、線材又は棒材の一端は磁石のうちいずれか一つに巻き回された導線25aに接続され、線材又は棒材の他端は一端が接続された導線25aを有する磁石4aとは異なる磁石4bに巻き回された導線25bに接続され、水素吸蔵合金28は、金属系基材26の表面の全面又は一部に配置されていることが好ましい。水素吸蔵合金28に作用する磁場の生成を安定化させることができる。
【0058】
流体燃料改質装置101では、ケース1は円筒形状の胴部を有し、円筒の両端には、フランジ51が設けられている。そして、フランジ51に重ね合わさるように円盤状の蓋52がボルト(不図示)によって固定されている。蓋の一方には流入口11が設けられ、他他端側には流出口が設けられている。ケース1を円筒形状とすることで、より耐圧性能が高まり、大型化させることが可能となる。ケース1の円筒形状の胴部にはガス抜き管17が設けられることが好ましい。
【0059】
ケース1の内部には、燃料の流れ方向の上流側から順に、有孔ケース20が例えば3つと、複数の孔が開けられた円板状の金属製の触媒固定プレート23とが、所定の間隔をあけて配置されており、かつ、これらは全ネジボルト22によって間隔が変化しないように固定されている。有孔ケース20及び触媒固定プレート23は全ネジボルト22によって固定されているので、ケース1の内部に収容されると固定具を設けなくても位置決めされることとなる。ケース1の円筒の内径は、有孔ケース20の外径及び触媒固定プレート23の外径よりもわずかに大きく設定されているので、燃料は、有孔ケース20及び触媒固定プレート23を効率よく通過することとなる。
図10において、有効ケース20と触媒固定プレート23に設けられた孔は一部のみを図示している。
【0060】
触媒固定プレート23には、
図10に示すように下流側の面に、所定間隔をあけて2つのU型固定具24a,24bが固定されている。U型固定具24aには磁石4aが嵌め込まれており、U型固定具24bには磁石4bが嵌め込まれている。磁石4aと磁石4bとは同極が向かい合うように対向して配置されている。磁石4aと磁石4bはいずれも環状形状を有し、かつ、磁石の環状の中心孔4cを有している。磁石4aと磁石4bには中心孔4cを通って導線25a,25bが巻き回されている。磁石4aと磁石4bにはこれらを橋渡しするように金属系基材26が接続されている。、金属系基材26は、棒材又は線材であることが好ましいが、巻き加工された線材26がより好ましい。巻き加工された線材26はニクロム線であることがより好ましい。ニクロムの合金組成としては、例えば、80Ni-20Cr、85Ni-15Cr、60Ni-12Cr-26Fe、66Ni-22Cr-10Fe-2Mnである。ニクロム線の代わりにカンタル線(23Cr-69Fe-6Al)を用いてもよい。金属系基材26の表面には、水素吸蔵合金28として水素吸蔵合金層が設けられている。導線25aは、導線27によって金属製の触媒固定プレート23に接続されている。導線25bも、導線(不図示)によって金属製の触媒固定プレート23に接続されている。このような導線の接続関係を持たせることによって、金属製の触媒固定プレート23、磁石4a、磁石4bは等電位状態となり、好ましくはアースされることとなり、磁石4aと磁石4bとによって発生させられる磁場がより一層均一化及び安定化させられる。その磁場の中に巻き加工された線材26とその表面に設けられた水素吸蔵合金層が配置されることとなる。
【0061】
(改質流体燃料の製造方法)
本実施形態に係る改質流体燃料の製造方法は、
図3及び
図4に示すように、第1の処理領域13a内にて、改質前の流体燃料9aと、無機固形物2、有機固形物及び有機無機複合固形物のうち少なくともいずれか1種とを接触させ、接触済みの流体燃料9bを第2の処理領域13bに送り出す工程Aと、第2の処理領域13b内にて、接触済みの流体燃料9bと水素吸蔵合金3とを接触させる工程Bとを有し、第2の処理領域13bの内部又は外部には、少なくとも1つの磁石4が設置されており、水素吸蔵合金3は、磁石4の磁場40内に配置されている。本実施形態に係る改質流体燃料の製造方法では、例えば
図3に示した流体燃料改質装置100に改質前の流体燃料9aを流すことによってその改質が容易に行われる。
【実施例0062】
(比較例1)
図1に示した燃焼システム900において、流体燃料改質装置100の代わりに流体燃料改質装置101を接続して、燃焼試験を行った。
図1において、第3の開閉弁630を開け、第1の開閉弁610及び第2の開閉弁620を閉じた。そして、改質前の流体燃料9aとしてA重油燃料を使用し、A重油燃料をバイパス流路450に経由させ、A重油燃料を改質せずに、燃焼室300として貫流ボイラーの燃焼室に導き、燃焼させた。比較例1は、通常運転に相当し、定常通常燃焼状態として3時間燃焼を継続した。定常通常燃焼状態における燃料噴霧圧は1.10MPa、燃焼温度は318.0℃、空気比1.25、燃焼後の二酸化炭素濃度12.40%、酸素濃度4.20%、燃料使用量は101.59リットルであった。
【0063】
(参考例1)
図1に示した燃焼システム900において、流体燃料改質装置100の代わりに流体燃料改質装置101を接続して、燃焼試験を行った。
図1において、第3の開閉弁630を閉じ、第1の開閉弁610及び第2の開閉弁620を開放した。そして、改質前の流体燃料9aとしてA重油燃料を使用し、A重油燃料を本流路400に経由させる中で流体燃料改質装置101によって改質し、燃焼室300として貫流ボイラーの燃焼室に導き、燃焼させた。比較例1における条件を調整することなく、具体的には燃料噴射圧と酸素量とを調整することなく、そのままの条件で定常燃焼状態とした上で3時間燃焼を継続した。定常燃焼状態における燃料噴霧圧は1.10MPa、燃焼温度は360.9℃、空気比1.21、燃焼後の二酸化炭素濃度12.77%、酸素濃度3.70%、燃料使用量は104.17リットルであった。
【0064】
比較例1が本流体燃料改質装置を導入する前の結果である。これを基準として参考例1では、燃焼温度が上がったものの、燃焼効率が上がっておらず、燃料使用量が2.54%悪化した。これは、参考例1ではA重油燃料が改質されているものの、改質後の燃料を効率的に燃焼させる条件に設定されていないためである。
【0065】
(実施例1)
参考例1において、A重油燃料を効率的に燃焼させるために適正な燃料噴射圧と酸素量に調整した以外は、参考例1と同様にして燃焼試験を行った。適正な燃料噴射圧と酸素量は、通常のボイラーにおいて好適とされる条件に設定した。燃料であるA重油燃料は流体燃料改質装置101を通過することで、燃料成分の分子構造が細分化されるため、細分化された分子がより多くの酸素と結合すると考えられるため、燃焼温度が高くなり、空気比が変わる。そのため、参考例1のようにボイラー効率が落ちてしまう恐れがある。そこで、実施例1では、適正な燃料噴射圧と酸素量に調整して、定常燃焼状態とした上で3時間燃焼を継続した。定常燃焼状態における燃料噴霧圧は1.03MPa、燃焼温度は353.0℃、空気比1.26、燃焼後の二酸化炭素濃度12.33%、酸素濃度4.36%、燃料使用量は86.62リットルであった。
【0066】
参考例1に対して適正な燃料噴射圧と酸素量に調整して、定常燃焼状態とした実施例1によれは、燃焼温度を比較例1よりも高めたにもかかわらず、燃料使用量を、比較例1を基準として14.74%低減させることができた。