(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022980
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】発酵物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 1/04 20060101AFI20220131BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20220131BHJP
C12P 33/00 20060101ALI20220131BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220131BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20220131BHJP
A61K 36/258 20060101ALI20220131BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20220131BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20220131BHJP
A23L 33/11 20160101ALN20220131BHJP
C12N 9/38 20060101ALN20220131BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20220131BHJP
A61P 3/04 20060101ALN20220131BHJP
A61P 9/12 20060101ALN20220131BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C12P1/04 Z
C12P1/00 A
C12P33/00
C12N1/20 A
C12N1/20 E
A23L19/00 Z
A61K36/258
A61K35/744
A61K38/47
A23L33/11
C12N9/38
A61P3/10
A61P3/04
A61P9/12
A61P35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095498
(22)【出願日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2020110562
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517298378
【氏名又は名称】株式会社ナガセビューティケァ
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 久富
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 寿次
(72)【発明者】
【氏名】位上 健太郎
【テーマコード(参考)】
4B016
4B018
4B050
4B064
4B065
4C084
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B016LC07
4B016LE02
4B016LG08
4B016LG16
4B016LK18
4B016LP08
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4B018MD43
4B018MD54
4B018ME01
4B018ME03
4B018ME04
4B018ME05
4B018ME06
4B018ME07
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4B018MF13
4B050CC07
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4B065CA44
4C084AA02
4C084BA44
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4C084ZA42
4C084ZA70
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4C087NA20
4C087ZA42
4C087ZA70
4C087ZB26
4C087ZC35
4C088AB18
4C088AD22
4C088CA25
(57)【要約】
【課題】新規な発酵物の製造方法等を提供する。
【解決手段】ラクターゼによる酵素処理及びラクトバチルス乳酸菌による発酵処理を経て、ニンジンの発酵物を製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクターゼによる酵素処理及びラクトバチルス乳酸菌による発酵処理を経て、ニンジンの発酵物を製造する方法。
【請求項2】
ニンジンが、オタネニンジン、三七ニンジン、アメリカニンジン、竹節ニンジン、ヒマラヤニンジン及びベトナムニンジンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酵素処理において、酵素濃度0.01~20w/v%及び30~60℃で、3~72時間処理する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ラクトバチルス乳酸菌が、ラクトバチルス・カゼイ及びラクトバチルス・ブレビスから選択された少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ラクトバチルス乳酸菌が、ラクトバチルス・カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP-10123)、ラクトバチルス・カゼイ NBRC15883株、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1871株(受託番号NITE P-02661)、及びラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株(受領番号NITE AP-03235、受託番号NITE P-03235)から選択された少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ラクトバチルス乳酸菌が、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株(受領番号NITE AP-03235、受託番号NITE P-03235)を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
酵素処理を、発酵処理と同時に又は発酵処理前に行う、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
発酵処理を、酵素処理と同時に又は酵素処理前に行う、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
発酵物がM1を含有する、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の方法により得られるニンジンの発酵物。
【請求項11】
M1を0.75質量%以上の割合で含有する、ニンジンの発酵物。
【請求項12】
M1を含有し、M3/M1が、HPLCにおける面積比で0.4以下である、ニンジンの発酵物。
【請求項13】
ジンセノシドRb1を含まない、請求項11又は12記載の発酵物。
【請求項14】
M1を0.4質量%以上の割合で含有する、請求項12又は13記載の発酵物。
【請求項15】
請求項10~14のいずれかに記載の発酵物を含有する組成物。
【請求項16】
ラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株(受領番号NITE AP-03235、受託番号NITE P-03235)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
オタネニンジン(Panax ginseng C.A. Meyer)をはじめとするニンジン(薬用人参)は、中国、朝鮮半島、日本を中心に古来より生薬として利用されてきた。その有用成分は、ジンセノシドと呼ばれるダラマン骨格を有したサポニン類(ニンジンサポニン)と言われ、抗酸化、抗糖尿病、抗肥満、抗高血圧、抗がん等の様々な生理作用が研究により見出されている(非特許文献1)。
【0003】
ニンジンサポニンには種々のジンセノシドが存在することが知られている。なかでも、ジンセノシドRb1、Rb2、Rc、Rdのようなプロトパナキサジオールが、腸内細菌によって20(S)-プロトパナキサジオール 20-O-β-d-グルコピラノシド(別名:M1、compound K)に代謝変換された後に、腸管壁を通過して血中へ移行し、上記に示したような生理作用を発揮すると考えられている。
このM1については、発酵オタネニンジンが、M1を含み、マウスやヒトでの試験にて、発酵前よりもストレスが低減されること(特許文献1)、睡眠改善効果が増加することが報告されている(非特許文献2)。
【0004】
なお、発酵オタネニンジンは、オタネニンジンを微生物により発酵させて得られ、前記特許文献1には、当該微生物として、β-グルコシダーゼ、α-アラビノシダーゼ及びα-ラムノシダーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素を生産する微生物であって、好ましくは食品に添加することができる微生物、具体的には、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP-10123)を用いて発酵する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Ginseng Research 37, 261-268(2013)
【非特許文献2】SLEEP 32, 413-421(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規な発酵物の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、M1を効率よく生成しうる発酵物の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、新規な発酵物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、新規な微生物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、酵素処理と、ラクトバチルス乳酸菌(例えば、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株)による発酵処理とを組み合わせることで、新規な発酵物の製造方法を提供できること、中でも、酵素処理において特定の酵素(すなわち、ラクターゼ)を使用することで、効率よくM1を生成しうること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、次の発明等に関する。
[1]
ラクターゼ(ガラクトシダーゼ)による酵素処理及びラクトバチルス乳酸菌(ラクトバチルス属に属する乳酸菌)による発酵処理を経て、ニンジンの発酵物を製造する方法。
[2]
ニンジンが、オタネニンジン、三七ニンジン、アメリカニンジン、竹節ニンジン、ヒマラヤニンジン及びベトナムニンジンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]記載の方法。
[3]
酵素処理において、酵素濃度0.01~20w/v%及び30~60℃で、3~72時間処理する、[1]又は[2]記載の方法。
[4]
ラクトバチルス乳酸菌が、ラクトバチルス・カゼイ及びラクトバチルス・ブレビスから選択された少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
ラクトバチルス乳酸菌が、ラクトバチルス・カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP-10123)、ラクトバチルス・カゼイ NBRC15883株、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1871株(受託番号NITE P-02661)、及びラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株(受領番号NITE AP-03235、受託番号NITE P-03235)から選択された少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
ラクトバチルス乳酸菌が、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株(受領番号NITE AP-03235、受託番号NITE P-03235)を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
酵素処理を、発酵処理と同時に又は発酵処理前に行う、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
発酵処理を、酵素処理と同時に又は酵素処理前に行う、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[9]
発酵物がM1を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
[1]~[9]のいずれかに記載の方法により得られるニンジンの発酵物。
[11]
M1を0.75質量%以上(例えば、0.8質量%以上、0.85質量%以上、0.9質量%以上)の割合で含有する、ニンジンの発酵物。
[12]
M1を含有し、M3/M1が、HPLCにおける面積比で0.4以下である、ニンジンの発酵物。
[13]
ジンセノシドRb1を含まない、[11]又は[12]記載の発酵物。
[14]
M1を0.4質量%以上の割合で含有する、[12]又は[13]記載の発酵物。
[15]
[10]~[14]のいずれかに記載の発酵物を含有する組成物。
[16]
ラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株(受領番号NITE AP-03235、受託番号NITE P-03235)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新規な発酵物の製造方法を提供できる。
このような方法では、特定の酵素処理と特定の乳酸菌を用いた発酵処理とを組み合わせており、発酵(例えば、代謝又は加水分解)を効率よく行いうる[例えば、M1を効率よく生成しうる(M1を高割合で含む発酵物を製造しうる)]。
【0014】
本発明の他の態様では、新規な発酵物を提供できる。このような発酵物は、例えば、前記方法、すなわち、特定の酵素処理と特定の乳酸菌を用いた発酵処理とを組み合わせた方法により製造でき、M1を高割合で含む等の特徴を有しうる。
【0015】
本発明の他の態様では、新規な微生物を提供できる。このような微生物は、ニンジンの発酵処理等に利用でき、特に、上記方法(すなわち、特定の酵素処理と特定の乳酸菌を用いた発酵処理とを組み合わせた方法)における乳酸菌として好適に使用しうる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[製造方法]
本発明では、ラクターゼ(ガラクトシダーゼ)による酵素処理及びラクトバチルス乳酸菌(ラクトバチルス属に属する乳酸菌)による発酵処理を経て、ニンジンの発酵物を製造する。
【0017】
ニンジン(薬用ニンジン)としては、例えば、ウコギ科ニンジン(ウコギ科薬用ニンジン)を使用できる。このようなニンジンは、通常、発酵によりM1を生成可能であってもよい。
【0018】
代表的なニンジン(ウコギ科薬用ニンジン)としては、例えば、オタネニンジン(高麗人参;Korean ginseng:Panax C.A.Meyer)、三七ニンジン(Panax notoginseng Burk.)、アメリカニンジン(Panax quinquefolium L.)、竹節ニンジン(Panax japonicus C.A.Meyer)、ヒマラヤニンジン(Panax Pseudo-ginseng Qall.Subsp.Himalaicus Hara)、ベトナムニンジン(Panax Vuetnamensis Ha et Grushv.)等が挙げられる。
【0019】
ニンジンは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0020】
ニンジンは、天然品(未加工品)であってもよく、加工品であってもよい。加工品としては、例えば、ニンジンの乾燥物、裁断物、粉砕物、抽出物、ペースト等が挙げられる。乾燥方法、裁断方法、粉砕方法、抽出方法、ペースト状化方法は、従来公知の方法を使用することができる。
【0021】
ニンジンは、生干人参、白参、紅参等のいずれであってもよい。
【0022】
ニンジン(加工品)の大きさは、特に限定されないが、例えば、平均長径0.2mm以下であってもよい。
なお、ニンジンは、市販品であってもよい。
【0023】
ニンジンの部位は、特に限定されず、どの部位でも使用することができる。例えば、根、茎、葉、花蕾、果実、全草等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。好ましくは根等であり、より好ましくは、側根、主根等である。
【0024】
酵素処理では、酵素としてラクターゼ[ガラクトシダーゼ(β-ガラクトシダーゼ)]を使用する。
【0025】
酵素は、ラクターゼを含んでいればよく、他の酵素を含んでいてもよい。
【0026】
なお、酵素は、由来する微生物において特に限定されない。例えば、ラクターゼは、菌{例えば、アスペルギルス属[例えば、アスペルギルス オリゼ(ニホンコウジカビ)]等}由来、酵母[例えば、クルベロマイセス属(例えば、クルベロマイセス ラクティス)等]由来等であってもよい。
【0027】
酵素は、市販品であってもよい。例えば、ラクターゼは、天野エンザイム(株)から、ラクターゼ F「アマノ」等として入手できる。
【0028】
酵素処理方法としては、特に限定されず、通常、酵素とニンジンとを接触させて行うことができる。
【0029】
なお、酵素処理は、媒体(反応媒体)の存在下(例えば、水中等)で行ってもよい。
【0030】
酵素処理において、酵素(ラクターゼ)の使用量(割合)は、例えば、ニンジン1質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上程度であってもよい。
【0031】
酵素(ラクターゼ)の使用量(割合)は、例えば、ニンジン1質量部に対して、例えば、0.2質量部以下、好ましくは0.1質量部以下、さらに好ましくは0.08質量部以下程度であってもよい。
【0032】
本発明では、少ない酵素(ラクターゼ)の使用量であっても効率よく発酵物を得ることが可能である。
【0033】
酵素処理(例えば、水等の媒体中での酵素処理)において、酵素の割合(又は濃度、例えば、水等の媒体に対する割合)は、例えば、0.01w/v%以上(例えば、0.05w/v%以上)、好ましくは0.1w/v%以上(例えば、0.5w/v%以上)、さらに好ましくは1w/v%以上であってもよい。
酵素処理において、酵素の割合(濃度)の上限値は、例えば、50w/v%、40w/v%、30w/v%、20w/v%、15w/v%、10w/v%、8w/v%、5w/v%等であってもよい。
【0034】
酵素処理(例えば、水等の媒体中での酵素処理)において、ニンジンの割合(又は濃度、例えば、水等の媒体に対する割合)は、例えば、1w/v%以上(例えば、2w/v%以上)、好ましくは5w/v%以上(例えば、10w/v%以上)、さらに好ましくは15w/v%以上であってもよく、50w/v%以下、40w/v%以下、30w/v%以下等であってもよい。
【0035】
酵素処理において、温度(酵素処理温度)は、例えば、15~80℃(例えば、20~70℃)、好ましくは30~60℃、さらに好ましくは40~55℃程度であってもよい。
【0036】
酵素処理において、時間(酵素処理時間)は、例えば、1時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは8時間以上(例えば、15時間以上)であってもよく、10日以下、8日以下、5日以下、3日(72時間)以下、48時間以下、24時間以下等であってもよい。
【0037】
発酵処理は、微生物として、ラクトバチルス乳酸菌(ラクトバチルス属に属する乳酸菌)を用いて(存在下で)行われる。
【0038】
ラクトバチルス乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidphilus)、ラクトバチルス・ガセリ(L.gasseri)、ラクトバチルス・マリ(L.mali)、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L.buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(L.casei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)、ラクトバチルス・ガリナラム(L.gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L.amylovorus)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L.rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L.kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L.crispatus)、ラクトバチルス・ペントーサス(L.Pentosus)等が挙げられる。
【0039】
菌種(各菌種)において、菌株は特に限定されない。
【0040】
例えば、ラクトバチルス・カゼイ(の菌株)としては、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP-10123)、ラクトバチルス・カゼイ ATCC393株、ラクトバチルス・カゼイ NBRC15883株等が挙げられる。
【0041】
また、例えば、ラクトバチルス・ブレビス(の菌株)としては、ラクトバチルス・ブレビス ATCC14869株、ラクトバチルス・ブレビス JCM1559株、ラクトバチルス・ブレビス NBRC12005株、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1867株、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1868株、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1869株、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1870株、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1871株(受託番号NITE P-02661)、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株(受領番号NITE AP-03235、受託番号NITE P-03235)等を用いることができる。
【0042】
なお、上記微生物は寄託されていてもよい。例えば、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP-10123)は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(住所:郵便番号305-8566 日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、平成15年(2003年)8月11日(受託日)に、受託番号FERM BP-10123として寄託されており、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1871株(受託番号NITE P-02661)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:郵便番号292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、平成30年(2018年)3月6日(受託日)に、受託番号NITE P-02661として寄託されており、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株(受領番号NITE AP-03235、受託番号NITE P-03235)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:郵便番号292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、令和2年(2020年)6月22日(受領日)に受領番号NITE AP-03235として受領された。
【0043】
これらのラクトバチルス乳酸菌の中でも、ラクトバチルス・カゼイ(例えば、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株)、ラクトバチルス・ブレビス(例えば、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1871株)を好適に使用してもよい。
特に、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1871株等は、酵素処理との組み合わせ[さらには、別のラクトバチルス乳酸菌(例えば、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株)との組み合わせ]により、発酵(代謝又は加水分解)の効率を飛躍的に向上しうる。
【0044】
なお、ラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株は、新規な微生物(乳酸菌)である。そのため、本発明は、当該新規な微生物を包含するものとする。この新規な微生物は、前記のように、酵素処理との組み合わせにおいて有用である他、ジンセノシドの中でも、特に、ジンセノシドF2等の発酵(代謝又は加水分解)に有用である等の特性を有するようである。
【0045】
ラクトバチルス乳酸菌(菌種、菌株)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0046】
なお、微生物(発酵処理)は、ラクトバチルス乳酸菌を含む(用いる)限り、他の微生物を含んで(用いて)もよい。
【0047】
発酵処理は、通常、微生物(ラクトバチルス乳酸菌)とニンジンとを接触させて行うことができる。
【0048】
発酵処理(発酵方法)は、媒体中で(媒体において)行ってもよい。
例えば、発酵は、培地において(培地を介して)行ってもよい。
このような媒体を利用する場合、例えば、ニンジンを含有する媒体(培地)に微生物を接種して発酵を行うことができる。
【0049】
なお、培地は、微生物を接種する前に滅菌(処理)してもよい。滅菌方法としては、特に限定されず、例えば、加熱滅菌、高圧蒸気滅菌、ろ過滅菌等が挙げられる。
【0050】
媒体(培地)は、特に限定されないが、例えば、微生物の培養に通常使用される炭素源、窒素源、ミネラル源等を含むもの等を使用することができ、天然培地又は合成培地等のいずれであってもよい。好ましくは液体培地を用いてもよい。
【0051】
窒素源としては、特に限定されないが、無機態窒素源としては、例えば、アンモニア、アンモニウム塩等が挙げられ、有機態窒素源としては、例えば、ペプトン、ポリペプトン、尿素、アミノ酸、タンパク質、大豆ペプチド等のペプチド類等が挙げられる。窒素源は、好ましくは、ペプトン、ポリペプトン、ペプチド等である。また、ミネラル源としては、特に限定されないが、酵母エキスや肉エキスの他、K、P、Mg、S等を含む、例えば、リン酸一水素カリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これらの窒素源、ミネラル源は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
媒体(培地)中の窒素源の濃度は、微生物が生育できる通常の濃度であればよく、特に限定されない。培養開始時の窒素源の濃度は、通常は、約0.05~10重量%が好ましく、約0.1~5重量%がより好ましい。
【0052】
媒体(培地)は、前記の窒素源、ミネラル源に加えて、さらに、炭素源、無機質、pH緩衝剤等を含んでいてもよい。無機質としては、特に限定されないが、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、食塩、鉄、マンガン、モリブデン、各種ビタミン類等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。pH緩衝剤としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム等が好ましく挙げられる。
【0053】
発酵処理(例えば、媒体(培地)における発酵処理)において、ニンジンの割合(又は濃度、例えば、媒体(発酵液)に対する割合)は、特に限定されず、その種類、形状、乾燥状態、培養条件等に応じて適宜選択され得るが、例えば、0.1w/v%以上程度の範囲から選択してもよく、1w/v%以上(例えば、2w/v%以上)、好ましくは5w/v%以上(例えば、10w/v%以上)、さらに好ましくは15w/v%以上であってもよく、50w/v%以下、40w/v%以下、30w/v%以下等であってもよい。
【0054】
また、発酵処理において、ニンジンの割合は、媒体[ニンジンを含まない媒体、ニンジン以外の媒体全量]100質量部に対して、例えば、0.1~100質量部(例えば、0.5~80質量部)、好ましくは1~50質量部(例えば、2~30質量部)、さらに好ましくは3~20質量部(例えば、5~18質量部、10~15質量部等)であってもよい。
【0055】
なお、ニンジンは乾燥処理したもの[例えば、内温約100~180℃で所定時間(約1~6時間)乾燥したもの]であってもよく、乾燥処理したものでない場合、使用量(割合)は、ニンジンを乾燥処理したものに換算したものであっても(例えば、未乾燥のニンジンを使用した場合には、乾燥処理したニンジンの使用量に換算しても)よい。
【0056】
発酵処理において、系中[又は媒体(培地)]のpHは、例えば、3~7程度であってもよく、好ましくは5~6.5程度であってもよい。なお、pHは、制御してもよく、酸又はアルカリを用いて調整してもよい。
【0057】
発酵処理において、温度(発酵処理温度)は、5℃以上(例えば、8℃以上)程度であってもよく、例えば、10℃以上(例えば、12~60℃)、好ましくは15℃以上(例えば、18~55℃)、さらに好ましくは20℃以上(例えば、22~50℃)であってもよく、25~40℃(例えば、25~37℃、28~33℃)等であってもよい。
【0058】
発酵処理において、時間(発酵処理時間)は、発酵条件[例えば、系の組成(微生物量等)、温度等]に応じて適宜選択できるが、例えば、6時間以上(例えば、12時間以上、1日以上)、2日以上、3日以上、5日以上、7日以上等であってもよい。発酵時間の上限は、特に限定されず、3か月、2か月、1か月、25日、21日、14日、10日等であってもよい。
【0059】
上記のように、本発明では、酵素処理と発酵処理を組み合わせるが、これらの処理は、同時に(又は並行して)行ってもよく、一方の処理の後、他方の処理を行ってもよい。
【0060】
なお、他方の処理は、一方の処理後(の処理物)を分離して行ってもよく、一方の処理後、分離することなく、同一の系内において行ってもよい。
【0061】
特に、本発明では、酵素処理を、発酵処理と同時に又は発酵処理前に行うのが好ましく、特に、発酵処理前に(発酵処理に先んじて)行うのが好ましい。
このように2つの処理を組み合わせることで、より効率よく発酵物(例えば、M1を高含量で含む発酵物)を得やすい。
一方、本発明では、熱履歴を低減しやすい、素材へのダメージを低減しやすい、製造プロセスの効率化等の観点から、発酵処理を、酵素処理と同時に又は酵素処理前に行う、特に、発酵処理前に(発酵処理に先んじて)行うのも好ましい。
【0062】
本発明の方法は、酵素処理(酵素処理工程)及び発酵処理(発酵処理工程)を含んで(経て)いればよく、必要により他の処理(工程)を含んで(経て)もよい。例えば、これらの処理の前、間、及び/又は後に、所望により、ろ過、遠心分離、濃縮、限外ろ過、凍結乾燥、粉末化、分画等の処理を行ってもよい。
具体的な例を挙げると、発酵処理の後、滅菌処理(加熱処理等)を行ってもよい。このような滅菌処理を行うことにより、発酵処理で使用した微生物を死滅させることができる。
なお、このような滅菌処理は、発酵処理後の工程によっては、省略する(又は発酵工程後の工程に代替する)ことも可能である。
例えば、発酵処理と並行して又は発酵処理後に、酵素処理を行う場合、滅菌処理(加熱処理等)を行うことなく、酵素処理してもよい。
【0063】
[発酵物、組成物、これらの用途等]
上記のようにして発酵物(ニンジンの発酵物)が得られる。
このような発酵物は、通常、M1[20(S)-プロトパナキサジオール 20-O-β-d-グルコピラノシド、compound K)を含んでいる。
【0064】
このような発酵物は、上記方法を経ることで、効率よくM1が生成されている場合が多い。例えば、M1の生成量(発酵物における含有量)を、発酵処理[ラクトバチルス乳酸菌(例えば、ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(FERM BP-10123)による発酵処理]のみを行った場合を1としたとき、1超、好ましくは1.1以上、さらに好ましくは1.2以上、特に1.3以上(例えば、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、2以上)等とすることもできる。
【0065】
発酵物において、M1の含有量(発酵物における含有量)は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上(例えば、0.2質量%以上)、好ましくは0.3質量%以上(例えば、0.35質量%以上)、さらに好ましくは0.4質量%以上(例えば、0.45質量%以上)等であってもよく、0.5質量%以上(例えば、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.75質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1質量%以上、1.1質量%以上、1.2質量%以上、1.3質量%以上、1.4質量%以上)等であってもよい。
【0066】
なお、発酵物は、M1以外の成分{例えば、ジンセノシドRb2、ジンセノシドRc、ジンセノシドRd、ジンセノシドRe、ジンセノシドRg1、ジぺノシドXVII、M2[20(S)-プロトパナキサジオール 20-O-[β-L-アラビノピラノシル(1→6)-β-D-グルコピラノシド]、M3[20(S)-プロトパナキサジオール 20-O-[β-L-アラビノフラノシル(1→6)-β-D-グルコピラノシド]等]}を含有してもよい。
【0067】
発酵物において、M3とM1の比(M3/M1)は、HPLCにおける面積比(ピークの面積比)で、0.5以下(例えば、0.48以下)程度の範囲から選択でき、0.45以下(例えば、0.43以下)、好ましくは0.42以下(例えば、0.4以下、0.38以下、0.35以下、0.32以下、0.3以下、0.28以下)、さらに好ましくは0.25以下(例えば、0.24以下、0.22以下、0.21以下)であってもよく、0.2以下(例えば、0.19以下、0.18以下、0.16以下、0.15以下等)であってもよい。
【0068】
発酵物は、M3を含有しなくてもよい(又はM1を含有し、HPLCにおける面積比で、M3/M1の値が0であってもよい)。
【0069】
また、発酵物は、ジンセノシドRb1を含んでいてもよいが、ジンセノシドRb1において少ない場合が多く、特に、ジンセノシドRb1を含有しなくてもよい(又はM1を含有し、HPLCにおける面積比で、ジンセノシドRb1/M1の値が0であってもよい)。
【0070】
本発明では、M3やジンセノシドRb1が比較的少ない発酵物が得られやすい。
【0071】
なお、このような発酵物における各成分の有無や割合は、例えば、HPLC(HPLC分析)により確認してもよい。
また、「含有しない」とは、例えば、HPLCにおいて検出(ピークが検出)されないこと(検出限界であること)であってもよい(以下同じ)。
【0072】
本発明には、このような発酵物も含まれる。なお、この発酵物は、上記の方法により得られたものであってもよく、なくても(別異の方法によって得られたものであっても)よい。
【0073】
本発明の発酵物は、そのまま又はその一部(例えば、M1を含む画分)を分離してもよい。また、発酵物は、上記のような方法で使用した成分(例えば、酵素、乳酸菌、培地の成分等)を含んでいてもよい。
【0074】
本発明の発酵物は、組成物を構成してもよい。そのため、本発明には、発酵物を含む組成物も含まれる。
【0075】
本発明の発酵物(又は組成物)は、各種用途、例えば、各種疾患又は症状の予防、改善及び/又は治療等に使用できる。具体的には、本発明の発酵物(又は組成物)は、例えば、抗腫瘍、抗ストレス、糖尿病予防(改善、治療)、抗肥満、育毛、抗健忘症、肝保護作用、抗動脈硬化、老化防止、抗高脂血症、抗血栓、血圧降下作用、免疫機能改善、血糖値低下作用、鎮痛作用、強心作用、抗炎症作用、末梢血流改善作用、止血作用、抗酸化作用、抗筋委縮作用、骨量増加作用、抗感染症(抗インフルエンザ等)、神経保護作用、抗疲労、美肌、美白等の用途に使用してもよい。
【0076】
本発明の発酵物(又は組成物)は、飲食品に含有させる(配合する)等としてもよく、適当な形態としてもよい。例えば、本発明の発酵物(又は組成物)は、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、乳剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤等の経口製剤又は非経口製剤として製剤化してもよい。
【0077】
本発明の発酵物(又は組成物)を摂取(投与)する場合、摂取(投与)条件は、その形態や投与目的、投与対象の種類、年齢、体重、症状によって適宜選択できるが、例えば、M1の有効ヒト投与量として、一日当たり、0.01~100mg/kg(例えば、1~50mg/kg)程度となるよう設定してもよい。投与は、所望の投与量範囲内において、1日内において単回で又は数回に分けて行ってもよい。投与期間も任意である。
【0078】
本発明の発酵物(又は組成物)の接種(投与)対象としては、ヒト、非ヒト動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヤギ、サル、ネズミ等の哺乳類)であってもよい。なお、非ヒト動物は、ペット、家畜、実験動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、サル等)等であってもよい。
【0079】
なお、本発明の発酵物(又は組成物)は、その使用目的や形態(例えば、使用形態、製剤の形態)等に応じて、担体、基剤、添加剤等の他の成分を含んでいてもよい。具体的には、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、及び必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調製剤、防腐剤、抗酸化剤等を含んでいてもよい。
【0080】
組成物において、発酵物の含有割合は、その使用目的や形態等に応じて適宜選択できるが、例えば、0.01質量%以上(例えば、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上等)であってもよく、100質量%未満(例えば、99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下等)であってもよい。
【実施例0081】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
なお、実施例で、使用した乳酸菌、酵素は、下記の通りである。
ラクトバチルス カゼイ ハセガワ菌株(受託番号:FERM BP-10123、以下、A221株)
ラクトバチルス・カゼイ NBRC15883株(別名:JCM1134T、以下、15883株)
ラクトバチルス・ブレビス DNBL1889株(受領番号NITE AP-03235、受託番号NITE P-03235、以下、DNBL1889株)
ラクトバチルス・ブレビス DNBL1871株(受託番号NITE P-02661、以下、DNBL1871株)
【0083】
ラクターゼ:ラクターゼF(メーカー名 天野エンザイム(株))
セルラーゼ:Y-NC(メーカー名 ヤクルト工業(株))
βグルコシダーゼ:アロマーゼ(メーカー名 天野エンザイム(株))
【0084】
試験例1
(1)乳酸菌をそれぞれ一般乳酸菌接種用培地(日水製薬社製)6mLに接種し、28℃で一晩、前培養した。
(2)蒸留水40mLに対してオタネニンジン(ヒゲ人参)末6.5gを添加し、105℃で5分間加熱した。
(3)50℃以下に冷却後、各酵素を400mg加え、55℃、100rpmで振とうし、酵素反応を17時間行った(酵素処理を行った場合のみ、すなわち、乳酸菌発酵処理のみを行う場合には、この工程(3)(さらには工程(2)における105℃で5分間の加熱)は行っていない)。
(4)反応終了後、酵母エキス0.5g、大豆ペプトン0.25g、炭酸カルシウム0.5gを添加して混合し、これを発酵培地として121℃で15分間加熱滅菌した(乳酸菌処理を行った場合のみ、すなわち、酵素処理のみを行う場合には、この工程(4)及び後述の工程(5)は行っていない)。
(5)発酵培地に乳酸菌前培養液をそれぞれ別々に1.5mLずつ添加し、28℃で静置培養させた。
(6)6日後、乳酸菌を死滅させるため加熱処理(110℃で20分間)を行った後、発酵培地をよく振り混ぜて各0.8g採取し、これに同量のエタノールを加え、撹拌後、遠心分離(10,000rpm、5分間)して上清を得た。この上清1mLをSep-Pak C18カートリッジ(Waters社製)に添加して吸着させ、蒸留水及び40%メタノール水溶液で洗浄した後、メタノールによる溶出を行った(酵素処理のみを行った場合、すなわち、乳酸菌発酵処理を行わなかった場合には、発酵培地に替えて工程(3)で得られた酵素処理液を使用)。
(7)溶出したメタノール溶液を10μL取り、下記条件にて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にてM1、M3、Rb1を分析し、酵素処理せず、A221株による乳酸菌発酵処理のみ行った場合のM1のピーク面積に対する相対値(下記表の冒頭、すなわち、工程(3)で使用の酵素を「使用せず」、工程(5)で使用の乳酸菌を「A221」とした場合のM1のピーク面積を1としたときの値)、M3/M1比(M1を検出できたもののみ)、ジンセノシドRb1/M1比(M1を検出できたもののみ)を数値化した。
【0085】
<HPLC分析条件1(M1及びM3の分析)>
カラム:YMC-Pack ODS-A(250 x 4.6mm)
分析温度:40℃
溶離液:60%(V/V)アセトニトリル
流速:1mL/min
検出:203nm
【0086】
<HPLC分析条件2(Rb1及びM1の分析)>
カラム:YMC-Pack ODS-A(250 x 4.6mm)
分析温度:40℃
溶離液:
0-5分:35%(V/V)アセトニトリル
5-35分:35%(V/V)→60%(V/V)アセトニトリルのグラジェエント
35-50分:60%(V/V)アセトニトリル
流速:1mL/min
検出:203nm
【0087】
結果を下記表に示す。
【0088】
【0089】
試験例2
試験例1の「(7)」において、酵素処理せず、A221株による乳酸菌発酵処理のみ行った場合のM1のピーク面積に対する相対値に替えて、酵素処理せず、A221株及びNBRC15883株による乳酸菌発酵処理のみ行った場合のM1のピーク面積に対する相対値(下記表の冒頭、すなわち、工程(3)で使用の酵素を「使用せず」、工程(5)で使用の乳酸菌を「A221及びNBRC15883」とした場合のM1のピーク面積を1としたときの値)を数値化したこと以外は、試験例1と同様にして各工程を行った。
【0090】
結果を下記表に示す。
【0091】
【0092】
試験例3
(1)乳酸菌をそれぞれ一般乳酸菌接種用培地(日水製薬社製)6mLに接種し、28℃で一晩、前培養した。
(2)蒸留水40mLに対してオタネニンジン(ヒゲ人参)末13.0gを添加し、105℃で5分間加熱した。
(3)50℃以下に冷却後、酵素を400mg加え、55℃、100rpmで振とうし、酵素反応を17時間行った(酵素処理を行った場合のみ、すなわち、乳酸菌発酵処理のみを行う場合には、この工程(3)(さらには工程(2)における105℃で5分間の加熱)は行っていない)。
(4)反応終了後、酵母エキス1.0g、大豆ペプトン0.5g、炭酸カルシウム1.0gを添加して混合し、これを発酵培地として121℃で15分間加熱滅菌した。
(5)発酵培地に乳酸菌前培養液をそれぞれ別々に3.0mLずつ添加し、28℃で静置培養させた。
(6)10日後、発酵培地を121℃15分間加熱滅菌した後、室温まで冷却した。
(7)(6)の発酵培地を-20℃の冷凍庫で凍結した後、凍結乾燥を5日間行い、粉末を得た。
(8)得られた粉末を20mg量り取り、50%エタノール水溶液を400μL加え、撹拌後、遠心分離(10,000rpm 5分間)し、上清10μLを試験例1記載のHPLC分析条件1にて分析し、粉末中のM1含有量[W/W(%)(質量%)]を求めた。
また、試験例1と同様にして、M1、M3、Rb1を分析し、M3/M1比(M1を検出できたもののみ)、ジンセノシドRb1/M1比(M1を検出できたもののみ)を数値化した。
【0093】
結果を下記表に示す。
【0094】
【0095】
試験例4
(1)乳酸菌をそれぞれ一般乳酸菌接種用培地(日水製薬社製)6mLに接種し、28℃で一晩、前培養した。
(2)別途、蒸留水40mLに対してオタネニンジン(ヒゲ人参)末6.5gを添加し、更に酵母エキス0.5g、大豆ペプトン0.25g、炭酸カルシウム0.5gを添加して混合し、これを発酵培地として121℃で15分間加熱滅菌した。
(3)発酵培地に乳酸菌前培養液をそれぞれ別々に1.5mLずつ添加し、28℃で静置培養させた。
(4)6日後、発酵培地に各酵素400mgを加え、55℃、1000rpmで振とうし、酵素反応を17時間行った(酵素処理を行った場合のみ、すなわち、乳酸菌発酵処理のみを行う場合には、この工程(4)及び後述の工程(5)は行っていない)。
(5)酵素反応終了後、酵素を失活させるため、90℃で15分間加熱した。
(6)よく振り混ぜて各0.8g採取し、これに同量のエタノールを加え、撹拌後、遠心分離(10,000rpm、5分間)して上清を得た。この上清1mLをSep-Pak C18カートリッジ(Waters社製)に添加して吸着させ、蒸留水及び40%メタノール水溶液で洗浄した後、メタノールによる溶出を行った。
(7)溶出したメタノール溶液を10μL取り、試験例1と同様の条件にて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にてM1、M3、Rb1を分析し、酵素処理せず、A221株による乳酸菌発酵処理のみ行った場合のM1のピーク面積に対する相対値、M3/M1比(M1を検出できたもののみ)、ジンセノシドRb1/M1比(M1を検出できたもののみ)を数値化した。
【0096】
結果を下記表に示す。
【0097】