(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022982
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】水素貯蔵用の混合配位子を有する亜鉛系金属有機構造体(ZIT)
(51)【国際特許分類】
C07C 63/307 20060101AFI20220131BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20220131BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220131BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20220131BHJP
C07F 3/06 20060101ALN20220131BHJP
C07D 233/56 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07C63/307
B01J20/22 A
B01J20/30
C01B3/00 B
C07F3/06 CSP
C07D233/56
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021095761
(22)【出願日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】202021027917
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】518386656
【氏名又は名称】インディアン オイル コーポレイション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INDIAN OIL CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベラ,タパン
(72)【発明者】
【氏名】シン,アマルディープ
(72)【発明者】
【氏名】セムワル,カラダール
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤラジ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】スリバスタヴァ,ウミシュ
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,アロック
(72)【発明者】
【氏名】カプール,グルプリート シン
(72)【発明者】
【氏名】ラマクマール,サンカラ スリ ヴェンカタ
【テーマコード(参考)】
4G066
4G140
4H006
4H048
【Fターム(参考)】
4G066AA53A
4G066AB07A
4G066AB09A
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA26
4G066CA38
4G066DA01
4G066FA03
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4G066FA34
4G140AA42
4H006AA01
4H006AB90
4H006BJ50
4H006BS30
4H048AA01
4H048AB90
4H048AC47
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4H048BC10
4H048BC19
4H048VA20
4H048VA66
4H048VB10
(57)【要約】
【課題】-10℃~25℃で効率的に水素を貯蔵するための金属有機構造体(MOFs)を提供すること。
【解決手段】本発明は、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)および2-メチルイミダゾール(mIm)の混合有機配位子を有する新規なZn(II)系有機金属構造体を、簡単且つ経済的なソルボサーマル法により合成することに関する。合成されたMOFsは、温度-10℃~25℃、および圧力100気圧で水素吸着可能な高表面積(1248m2/g)を有する立方体の形態を有する。また、新規なMOFsの水素吸着能力は0.2~23重量%の範囲である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合配位子を有する亜鉛系金属有機構造体であって、前記混合配位子が1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)と、2-メチルイミダゾール(mIm)との組み合わせを含む、亜鉛系金属有機構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の亜鉛系金属有機構造体であって、立方体の形態を有する亜鉛系金属有機構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の亜鉛系金属有機構造体であって、亜鉛イオンが、2-メチルイミダゾールの1つのイオンと、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の3つのイオンとの四配位型である、亜鉛系金属有機構造体。
【請求項4】
請求項1に記載の亜鉛系金属有機構造体であって、-10℃~25℃で水素を吸着する、亜鉛系金属有機構造体。
【請求項5】
請求項4に記載の亜鉛系金属有機構造体であって、-10℃~10℃で水素を吸着する、亜鉛系金属有機構造体。
【請求項6】
請求項1に記載の亜鉛系金属有機構造体であって、430~470℃の範囲で優れた熱安定性を有する、亜鉛系金属有機構造体。
【請求項7】
請求項1に記載の亜鉛系金属有機構造体であって、1248m2/gの高表面積を有する、亜鉛系金属有機構造体。
【請求項8】
亜鉛系金属有機構造体の合成方法であって、
有機溶媒中に少なくとも1つの亜鉛金属前駆体を添加して亜鉛金属前駆体溶液を調製するステップと、
前記有機溶媒中に少なくとも1つの有機配位子を添加して有機配位子溶液を調製するステップと、
前記亜鉛金属前駆体溶液、前記有機配位子溶液、および前記有機溶媒を混合して反応混合物を得るステップと、
前記反応混合物を100~140℃で12~48時間加熱して、亜鉛系金属有機構造体の沈殿物を得るステップと、
前記亜鉛系金属有機構造体の沈殿物をろ過し、洗浄するステップと、
前記亜鉛系金属有機構造体の沈殿物を精製するステップと、
前記精製した沈殿物を100℃のオーブン内で12~15時間乾燥させるステップと、を含む亜鉛系金属有機構造体の合成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの亜鉛金属前駆体は、酢酸亜鉛二水和物、硝酸亜鉛六水和物、またはそれらの組み合わせのうちの1つから選択される方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの有機配位子は、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、2-メチルイミダゾール、またはそれらの組み合わせのうちの1つから選択される方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、
前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)とエタノールの組み合わせである方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法であって、
前記沈殿物の洗浄は、有機洗浄剤による洗浄、蒸留水による洗浄、またはそれらの組み合わせを含む方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法であって、
前記有機洗浄剤は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)、エタノール、またはそれらの混合物から選択される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛系金属有機構造体(MOFs)およびその合成に関するものである。具体的には、本発明は、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)と、2-メチルイミダゾール(mIm)との混合有機配位子に基づく新規なZn(II)系金属有機構造体(ZIT)に関するものである。ここで、Zn(II)系金属有機構造体(ZIT)は、簡単且つ経済的なソルボサーマル法によって合成される。
【背景技術】
【0002】
金属有機構造体(MOFs)は、ゼオライトや活性炭のような従来の材料の有機的で柔軟な骨格および形態を有する、新興種のハイブリッド材料である。金属有機構造体(MOFs)は、主に金属イオンと有機配位子からなり、一次元、二次元、または三次元の構造を形成する。金属有機構造体(MOFs)の多様な形状および形態は、その性能に顕著な影響を与え、貯蔵、触媒などの多くの技術分野で用いられている。
【0003】
様々なタイプのMOFsが文献で報告されており、そのようなMOFsは合成条件によって異なる形態を有する。また、金属と有機配位子リンカーの選択は、MOFs材料の特性を決定する上で大きな役割を果たす。
【0004】
近年、MOFsの多くの産業上の用途が確認されており、MOFs材料などの商業的合成につながっている。そのため、MOFsの効率的な合成方法を開発する必要があり、主に熱ルート、ソルボサーマルルート、または水熱ルートを含む要求の厳しい研究分野となっている。しかし、ソルボサーマルによるMOFsの合成は、単結晶形成の効率が高いことから、依然として選択される方法に留まっている。さらに、MOFs調製のスケールアップは商業的にも重要であり、効率的で環境に優しい合成方法を開発することには明らかな利点がある。
【0005】
さらに、この20年間で、特に水素貯蔵の技術分野において、広範囲のMOFsとその応用が確認されている。しかし、今日まで、アメリカ合衆国エネルギー省(US DOE)の目標とするH2吸収を達成した特定のMOFsはなかった。さらに、膨大な量の文献やレビュー記事から、ほとんどのMOFsは液体窒素温度および高圧下でのH2吸収に使用されていることがわかる。
【0006】
US2009/0185972A1には、高圧かつ極低温度で水素ガスを貯蔵するための水素貯蔵方法が開示されている。
【0007】
WO2010058123には、金属有機構造体の結晶化多孔質アルミニウムカルボキシ酸の水熱調製方法が開示されている。EP1070538には、ガス分離および精製のための金属有機ポリマーが開示されている。さらに、US20090042000には、スケールアップしたMOFsの調製方法が開示されている。
【0008】
ガス取込のためのより優れた吸着剤を開発するために、混合配位子ベースのMOFsの合成にはいくつかの方法が採用されている。さらに、米国特許第8916722号には、複雑な混合配位子の開骨格材料が記載されている。米国特許第0171107号は、少なくとも1つの金属イオンに配位した2つの有機化合物を含む多孔性金属有機構造体の調製方法に関するものである。ここで、2つの有機化合物のうちの一方は、必要に応じて置換された単環式、二環式、または多環式の飽和または不飽和炭化水素であり、他方の有機化合物は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、またはテトラカルボン酸に由来する。
【0009】
US2006/0252641A1には、複数の帯電多座リンク配位子を含むMOFと、水素分子を貯蔵するための少なくとも1つのオープンメタルサイトを有する複数の金属クラスターとを含む水素貯蔵物質が開示されている。
【0010】
ソルボサーマル法や水熱法を用いたMOFsの技術はかなり向上されてきたものの、混合配位子ベースのMOFsおよびそれらの合成方法は、大規模な工業生産ではほとんど報告されていない。
【0011】
さらに、このような混合配位子ベースのMOFs材料を大規模に工業生産するためには、全体的なコストも重要である。
【0012】
なお、混合配位子ベースのMOFs材料の、-10℃~25℃で効率的にH2を貯蔵する性質については、これまで報告されていない。
【0013】
その上、効率的なH2貯蔵のためには、そのような混合配位子ベースのMOFs材料の熱安定性も重要な要素であり、そのような優れた熱安定性を有するそのような混合配位子ベースのMOFs材料については、これまでほとんど研究されていない。
【0014】
本発明の目的
本発明の目的は、-10℃~25℃で効率的に水素を貯蔵するための金属有機構造体(MOFs)を提供することである。
【0015】
本発明の主な目的は、混合配位子を有する新規な亜鉛系金属有機構造体(Zn-MOFs)を提供することであり、前記Zn-MOFsの形態は立方体であり、高表面積と優れた熱安定性を有する。
【0016】
本発明の主な目的は、混合配位子を有する新規な亜鉛系金属有機構造体(Zn-MOFs)をソルボサーマル法によって合成することである。
【0017】
本発明の他の目的は、混合配位子を有する亜鉛系金属有機構造体(Zn-MOFs)を合成することであり、前記Zn-MOFsは-10℃~10℃で最大のH2貯蔵が可能である。
【0018】
本発明の他の目的は、混合配位子、特に2つの異なる種類の混合配位子の組み合わせを有する亜鉛系金属有機構造体(Zn-MOFs)を合成することである。
【発明の概要】
【0019】
最新技術では、効率的なH2貯蔵を目的とした単一配位子系に基づくMOFsの合成が示されている。しかし、トリメシン酸(BTC)および2-メチルイミダゾール(mIm)のような、2つの異なる種類の混合配位子を組み合わせて、新規のMOFsを調製することは開示されていない。
【0020】
したがって、本発明は、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)と、2-メチルイミダゾール(mIm)との組み合わせからなる混合配位子を有する亜鉛系金属有機構造体(Zn-MOFs)に関するものである。
【0021】
さらに、本発明は、-10℃~25℃で水素吸着が可能な立方体の形態を有する新規混合配位子Zn-MOFsの合成に関するものである。本発明の新規混合配位子Zn-MOFsは、2-メチルイミダゾールの1つのイオンと1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の3つのイオンとの四配位型の亜鉛イオンを含む。
【0022】
さらに本発明は、優れた熱安定性(430~470℃)および高表面積(1248m2/g)を有する新規混合配位子Zn-MOFsの合成に関するものである。
【0023】
本発明の新規な混合配位子Zn-MOFsは、ソルボサーマル法によって合成される。ソルボサーマル法では、金属前駆体と有機配位子とを有機溶媒中で加熱して、金属有機構造体(MOFs)の結晶を形成する。まず、有機溶媒中に少なくとも1つの亜鉛金属前駆体、および、少なくとも1つの有機配位子を添加して、亜鉛金属前駆体溶液、および、有機配位子溶液を調製する。次に、その亜鉛金属前駆体溶液、有機配位子溶液、および有機溶媒を混合して反応混合物を得る。次に、その反応混合物を100~140℃で12~48時間加熱して、亜鉛系金属有機構造体(MOFs)の沈殿物を得る。次に、その亜鉛系金属有機構造体(MOFs)の沈殿物をろ過し、洗浄する。その亜鉛系金属有機構造体(MOFs)の沈殿物を精製した後、精製した沈殿物を100℃のオーブン内で12~15時間乾燥させる。
【0024】
本発明の新規混合配位子Zn-MOFsは、-10℃~25℃で水素を吸着し、-10℃~10℃で最大量のH2貯蔵が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の利点および態様をさらに明確にするために、添付図面に示す特定の実施形態を参照して、本発明をより具体的に説明する。本発明の図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものではないことは理解されたい。
【0026】
【
図1】
図1は、Zn-MOFsのシングルX線構造を示す。
【
図2】
図2は、キャビティ間の細孔径を示すZn-MOFsのパッキング図を示す。
【
図3】
図3は、Zn-MOFsのパッキング図を示す。
【
図4】
図4は、Zn-MOFsのSEM画像を示す。
【
図5】
図5は、Zn-MOFsのXRDパターンを示す。
【
図6】
図6は、Zn-MOFsのTGA曲線を示す。
【
図7a】
図7aは、0℃におけるZn-MOFsのH
2吸着/脱着等温線を示す。
【
図7b】
図7bは、室温(RT)におけるZn-MOFsのH
2吸着/脱着等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の原理の理解を促進するため、図にさらに示した本発明の特定の実施例を参照し、その実施例を説明するにあたり特定の用語を用いる。上述の一般的な説明と以下の詳細な説明とは本開示を説明するものであり、その限定を意図するものではない。それにもかかわらず、本開示の範囲の限定は意図されておらず、例示した組成におけるそのような変更およびさらなる修正、および本明細書に例示されている本開示の原理のそのようなさらなる適用が、本開示が関連する当業者には通常思い浮かぶように企図されていることを理解されたい。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示の属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に提供される方法、および例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。
【0028】
本発明は、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)と、2-メチルイミダゾール(mIm)との組み合わせから選択される混合配位子を有する亜鉛系金属有機構造体(Zn-MOFs)を開示する。亜鉛系金属有機構造体(Zn-MOFs)は、立方体の形態を有する。
【0029】
さらに、本発明のZn-MOFsは、二次構造単位(SBUs)として四面体のZn(II)を含む三次元構造であり、これは混合配位子、つまり、2-メチルイミダゾールおよび1,3,5-ベンゼントリカルボン酸イオンによって構成されている。
【0030】
図1に示すように、Znイオン単位は、1つの2-メチルイミダゾールと、3つの単座キレート化1,3,5-ベンゼントリカルボン酸イオンによって配位されている。
【0031】
亜鉛(Zn)イオンは4配位であり、ZnO3単位は歪んだ四面体構造を有している。二次構造単位(SBUs)としての亜鉛(Zn)イオンは、完全に脱プロトン化された1,3,5-ベンゼントリカルボン酸アニオンと2-メチルイミダゾールによって架橋され、三次元の層状配列を形成している。
【0032】
さらに、固体状態では、亜鉛系金属有機構造体(Zn-MOFs)は、“ab”面に沿って正方形のボックスを形成しており、ボックスの平均寸法は10.735Åである(
図2)。各ボックスは、ホスト分子として顕著に利用できる。さらに、プローブ半径10.735ÅでのPLATONの計算によれば、真空のZn-MOFsの理論上の空隙率は15.8%である(
図3)。
【0033】
さらに、本発明の亜鉛系金属有機構造体は、-10℃~25℃で水素を吸着する。具体的には、本発明の亜鉛系金属有機構造体は、-10℃~10℃で水素を吸着する。本発明の新規の亜鉛系金属有機構造体の水素吸着能力は、0.2~23重量%である。
【0034】
本明細書の以下に示す表1に、文献で報告されたMOFsと、本発明で調製および開示した亜鉛系金属有機構造体(Zn-MOFs)との間での水素吸着の比較調査を示す。文献で報告されたMOFsは、-196℃での水素吸着量が7.1~7.5重量%であり、これは維持が困難であるため、運用コストが高くなる。これに比べて、本発明の亜鉛系金属有機構造体(Zn-MOFs)は、0℃でのH2吸収量が23重量%であり、維持が容易であるため、経済的および操作上の利点がある。
【0035】
【0036】
さらに、本発明の亜鉛系金属有機構造体は、430~470℃の範囲で優れた熱安定性を有する。
【0037】
さらに、本発明の亜鉛系金属有機構造体は、1248m2/gという高表面積を有する。
【0038】
さらに、金属前駆体とそれに対応する有機配位子を用いてMOFsを合成する様々な方法が開発されている。これらの前駆体を用いてソルボサーマル法を改変することで、MOFs結晶を形成することができる。ソルボサーマル合成法は、金属前駆体と有機配位子とを有機溶媒中で加熱して、MOFs結晶を形成する方法である。改良されたソルボサーマル合成法では、MOFs前駆体を含む溶液を所定の平衡温度で長時間維持し、結晶化を誘導するのが一般的である。
【0039】
ソルボサーマル法は一般的に時間がかかるが、均一で再現性の高い材料を提供する。さらに、ソルボサーマル法によるMOFsの合成方法に関する多くの出版物が文献で報告されている。例えば、“Reticular Synthesis and Design of New Materials”,Yaghi他,ネイチャー 423(2003)705-714、“Solvo-thermal synthesis, structure, and properties of metal organic framework isomers derived from a partially fluorinated link”,pachfule他,2011、“Facile and template-free solvo-thermal synthesis of mesoporous/macroporous metal-organic framework nanosheets”,Zhang他,RSC Adv.,2018,8,33059-33064がある。
【0040】
したがって、本発明の新規の混合配位子Zn-MOFsは、簡単且つ経済的なソルボサーマル法によって合成されるものである。ソルボサーマル法では、亜鉛(Zn)金属前駆体と有機配位子を有機溶媒中で加熱し、金属有機構造体(MOFs)結晶を形成する。
【0041】
主な実施形態によれば、本発明は、高表面積と優れた熱安定性を有する、立方体の形態の新規混合配位子Zn-MOFsの合成方法を提供するものである。
【0042】
まず、有機溶媒中に少なくとも1つの亜鉛金属前駆体、および、少なくとも1つの有機配位子を添加して、亜鉛金属前駆体溶液、および、有機配位子溶液を調製する。次に、その亜鉛金属前駆体溶液、有機配位子溶液、および有機溶媒を混合して反応混合物を得る。次に、その反応混合物を100~140℃で12~48時間加熱して、亜鉛系金属有機構造体(MOFs)の沈殿物を得る。次に、その亜鉛系金属有機構造体(MOFs)の沈殿物をろ過し、洗浄する。その亜鉛系金属有機構造体(MOFs)の沈殿物を精製した後、精製した沈殿物を100℃のオーブンで12~15時間乾燥させる。
【0043】
少なくとも1つの亜鉛(Zn)金属前駆体は、酢酸亜鉛二水和物、硝酸亜鉛六水和物、またはそれらの組み合わせのうちの1つから選択される。少なくとも1つの有機配位子は、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸、N-メチルイミダゾール、またはそれらの組み合わせのうちの1つから選択される。有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)およびエタノールの組み合わせである。
【0044】
沈殿物の洗浄は、有機洗浄剤による洗浄、蒸留水による洗浄、またはそれらの組み合わせを含む。ここで、前記有機洗浄剤は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)、エタノール、またはそれらの混合物から選択される。
【0045】
さらに、本発明では、従来のジメチルホルムアミド(DMF)に代えて、ジメチルホルムアミド(DMF)とエタノールの混合溶媒を使用することで、高い回収率で作業工程が大幅に簡略化される。混合溶媒がジメチルホルムアミド(DMF)とエタノールの場合、生成物の収率は50~70%となる。しかし、ジメチルホルムアミド(DMF)のみを溶媒として使用した場合、生成物の収率は40~50%となる。
【0046】
さらに、本願のソルボサーマル法で合成したZn-MOFsの走査電子顕微鏡(SEM)画像を
図4に示す。Zn-MOFsの走査電子顕微鏡(SEM)画像は、粒子の形状が0.6~1.2μmの立方体であることを示している(
図4)。また、立方体によっては角が欠けているが、その代わりにマイクロロッドアレイ(microrod array)が面全体を覆っており、完全な立方体を有するように見える。
図5は、本発明で開示および調製したZn-MOFsのX線回折パターンを示す。
図6は、本発明で開示および調製したZn-MOFsの熱重量分析(TGA)曲線を示す。
図7(a)は、0℃におけるZn-MOFsのH
2吸着/脱着等温線を示し、
図7(b)は、室温(RT)におけるZn-MOFsのH
2吸着/脱着等温線を示し、Zn-MOFs-A(2サイクル目)、Zn-MOFs-B(3サイクル目)、Zn-MOFs-C(4サイクル目)である。
【0047】
Zn-MOFs生成のソルボサーマル合成法
実施例1
酢酸亜鉛二水和物2~5mgをジメチルホルムアミド(DMF)10~30mLに溶解して、亜鉛(Zn)金属前駆体溶液を調製する。同様に、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸(BTC)2~5mgと2-メチルイミダゾール(mIm)0.2~1mgを、ジメチルホルムアミド(DMF)10~30mLに溶解して、有機配位子溶液を調製する。その後、得られた亜鉛(Zn)金属前駆体溶液および前記有機配位子溶液を、10~30分間、超音波処理する。その後、亜鉛(Zn)金属前駆体溶液を丸底フラスコに移し、そこにベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸(BTC)と2-メチルイミダゾール(mIm)の有機配位子溶液を滴下して、反応混合物を得る。さらに、ジメチルホルムアミド(DMF)30~50mLを反応混合物に添加する。その結果として得られた反応混合物を100~140℃で12~48時間加熱することができる。得られた反応沈殿物をろ過し、ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄した後、エタノール/H2O混合液で洗浄する。さらに反応沈殿物は、12~36時間の間隔でジクロロメタン(DCM)を添加して溶媒交換を行い、その後、溶媒をデカンテーションする。この手順を1週間にわたって3回繰り返し、余分なジメチルホルムアミド(DMF)溶媒を除去する。最後に、反応で得られた沈殿物を100℃のオーブンで一晩乾燥させる。
【0048】
本発明の技術的利点
本発明は、従来技術に比べて多くの利点を提供する。本発明で調製したZn-MOFsは、低コストの材料を必要とするため、Zn-MOFsの大規模な工業生産の実現が可能となる。さらに、本発明で調製したZn-MOFsは熱安定性に優れる、すなわち、430~470℃の範囲での熱安定性を有する。さらに、本発明で調整したZn-MOFsは、極低温での貯蔵を示す他の最先端技術のMOFsと比較して、-10℃~10℃でのH2吸収能力に関してより効率的である。温度範囲-10℃~10℃は室温に近いため、極低温と比較して当該温度範囲を維持するのが容易である。
【外国語明細書】