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特開2022-23002自動車用ランプおよびそのランプを含む自動車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023002
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】自動車用ランプおよびそのランプを含む自動車
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/16 20180101AFI20220131BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20220131BHJP
   F21W 103/35 20180101ALN20220131BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220131BHJP
【FI】
F21S43/16
F21V9/32
F21W103:35
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107291
(22)【出願日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0081144
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】507098483
【氏名又は名称】ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ソク ホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ギル ウォン
(57)【要約】
【課題】柔軟性とデザイン自由度に優れた自動車用ランプを製造することである。
【解決手段】本発明の一側面によると、回路基板と、前記回路基板の上面に備えられる複数の光源と、前記回路基板の前記上面に備えられ、前記複数の光源を覆うように備えられる光学樹脂層と、前記光学樹脂層の上面に密着して備えられる蛍光体層とを含み、前記蛍光体層は、樹脂マトリックスと、前記樹脂マトリックス内で分散した蛍光体とを含む自動車用ランプが開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板の上面に備えられる複数の光源と、
前記回路基板の前記上面に備えられ、前記複数の光源を覆うように備えられる光学樹脂層と、
前記光学樹脂層の上面に密着して備えられる蛍光体層とを含み、
前記蛍光体層は、
樹脂マトリックスと、
前記樹脂マトリックス内で分散した蛍光体とを含む、自動車用ランプ。
【請求項2】
前記複数の光源間の距離をPとし、前記光学樹脂層の厚さをT1とし、前記蛍光体層の厚さをT2とした時に、下記[式1]の関係を満たす、請求項1に記載の自動車用ランプ。
[式1]
0.1≦(T1+T2)/P≦2.0
【請求項3】
前記光源の発光ピークは、420nm以上470nm以下の波長を有する、請求項1に記載の自動車用ランプ。
【請求項4】
前記蛍光体は、1μm以上100μm以下の大きさを有する赤色蛍光体を含み、
前記赤色蛍光体は、ガーネット(Garnet)系、シリケート(Silicate)系蛍光体、ナイトライド(Nitride)系蛍光体およびオキシナイトライド(Oxynitride)系蛍光体のうち一つ以上を含む、請求項1に記載の自動車用ランプ。
【請求項5】
前記蛍光体層は、
50~99.9重量%の前記樹脂マトリックスと0.1~50重量%の赤色蛍光体を含む、請求項1に記載の自動車用ランプ。
【請求項6】
前記光学樹脂層および前記樹脂マトリックスは、それぞれ、付加反応型シリコン樹脂組成物を含み、前記付加反応型シリコン樹脂組成物は、メチル基含有シリコン組成物および硬化触媒を含む、請求項1に記載の自動車用ランプ。
【請求項7】
前記付加反応型シリコン樹脂組成物は、前記メチル基含有シリコン組成物100重量部に対して0.0001以上5以下の重量部を有する前記硬化触媒を含む、請求項6に記載の自動車用ランプ。
【請求項8】
前記メチル基含有シリコン組成物は、65~85重量%のメチル基含有ポリシロキサン、13~30重量%のメチル基含有クロロシラン化合物および1~8重量%のメチル基含有ヒドロゲンポリシロキサンを含む、請求項7に記載の自動車用ランプ。
【請求項9】
前記蛍光体は、1.5以上の屈折率を有し、
前記光学樹脂層および前記樹脂マトリックスは、それぞれ、1.3以上1.8以下の屈折率を有する、請求項1に記載の自動車用ランプ。
【請求項10】
前記蛍光体は、1.5以上2.5以下の屈折率を有し、
前記光学樹脂層および前記樹脂マトリックスは、それぞれ、1.4以上1.5以下の屈折率を有する、請求項9に記載の自動車用ランプ。
【請求項11】
前記蛍光体層の上部に備えられ、前記蛍光体層から出射する可視光線が有する波長のうち一部を遮断する光学フィルタ部材をさらに含む、請求項1に記載の自動車用ランプ。
【請求項12】
前記蛍光体層は、
前記蛍光体層の表面に備えられ、窪んだ形状の溝が形成されるパターン領域を含む、請求項1に記載の自動車用ランプ。
【請求項13】
前記パターン領域は、前記蛍光体層の上部表面に備えられる、請求項12に記載の自動車用ランプ。
【請求項14】
前記光学フィルタ部材は、インナーレンズまたはアウターレンズである、請求項11に記載の自動車用ランプ。
【請求項15】
自動車用ランプを含み、
前記自動車用ランプは、
回路基板と、
前記回路基板の上面に備えられる複数の光源と、
前記回路基板の前記上面に備えられ、前記複数の光源をモールドする光学樹脂層と、
前記光学樹脂層の上面に密着して備えられる蛍光体層とを含み、
前記蛍光体層は、
樹脂マトリックスと、
前記樹脂マトリックス内で分散した蛍光体とを含む、自動車。
【請求項16】
前記回路基板の上面のうち少なくとも一部には、前記複数の光源から出射した光を反射させる反射領域が備えられる、請求項15に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ランプおよびそのランプを含む自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前方および後方には、各種のランプが取り付けられる。例えば、自動車の後方に備えられるリアコンビネーションランプは、バック-アップ(back-up)ランプ、テール(tail)ランプ、ストップ(stop)ランプおよびターンシグナル(turn signal)ランプが一つの組立体内に備えられることができる。
【0003】
中でも、テールランプとストップランプは、それぞれ、後方の車両に自分の位置を知らせる機能を果たす尾灯(tail light)の機能と後方の車両に自分が減速していることを知らせる制動灯(stop light)の機能を果たす。かかる尾灯および制動灯は、いずれも赤色光を照射することが一般的である。この際、尾灯は、夜間に常につけているため、ブレーキなどを踏む時に発光する制動灯の機能がスムーズに発揮されるようにするためには、尾灯と同一の色を照射する制動灯の光度が相対的に高く設計される必要がある。
【0004】
一方、従来の自動車用ランプは、大きく、反射面を用いることなくインナーレンズを通じて光を直接外部に配光する直接光方式と、反射面を用いて光を配光する間接光方式が用いられる。例えば、間接光方式を用いる自動車用ランプは、光を照射する光源部の光照射方向を基準に前方に配置され、曲率を有するように形成され、前記光源部から入射した光を反射し、外部に配光する反射面を含む。
【0005】
しかし、従来技術によって直接光または間接光方式を用いる光学系には、少なくとも15mm以上のエアギャップ(air gap)が求められ、反射面だけでなく、光の拡散機能を果たすインナーレンズが必要であるため、自動車用ランプの構造的な自由度が制限されるという問題があった。それだけでなく、インナーレンズを適用する場合、制動灯による停止配光を具現し難いという問題もあった。
【0006】
また、最近、面光源特性を有する有機発光ダイオード(OLED)など、立体効果などの様々な効果を具現するためのランプ光学系に関する研究が活発に行われているが、OLEDランプ光学系のほとんどが北アメリカの配光(STOP)法規を満たしていないという問題があった。
【0007】
したがって、外観性とデザイン自由度を確保し、且つ停止配光法規を満たす自動車用ランプ光学系の開発が求められている。
【0008】
本発明に関する背景技術は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開第5953662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、柔軟性とデザイン自由度に優れた自動車用ランプを製造することである。
【0011】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、点灯時に光均一度に優れた自動車用ランプを製造することである。
【0012】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、停止配光法規を満たし、耐熱性、耐黄変性、耐久性および信頼性に優れた自動車用ランプを製造することである。
【0013】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、構造が単純化して空間の活用性が増大し、生産性および経済性に優れた自動車用ランプを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の一側面によると、回路基板と、前記回路基板の上面に備えられる複数の光源と、前記回路基板の前記上面に備えられ、前記複数の光源を覆うように備えられる光学樹脂層と、前記光学樹脂層の上面に密着して備えられる蛍光体層とを含み、前記蛍光体層は、樹脂マトリックスと、前記樹脂マトリックス内で分散した蛍光体とを含む自動車用ランプが提供される。
【0015】
前記複数の光源間の距離をPとし、前記光学樹脂層の厚さをT1とし、前記蛍光体層の厚さをT2とした時に、下記[式1]の関係を満たすことができる。
[式1]
0.1≦(T1+T2)/P≦2.0
【0016】
前記光源の発光ピークは、420nm以上470nm以下の波長を有することができる。
【0017】
前記蛍光体は、1μm以上100μm以下の大きさを有する赤色蛍光体を含み、前記赤色蛍光体は、ガーネット(Garnet)系、シリケート(Silicate)系蛍光体、ナイトライド(Nitride)系蛍光体およびオキシナイトライド(Oxynitride)系蛍光体のうち一つ以上を含むことができる。
【0018】
前記蛍光体層は、50~99.9重量%の前記樹脂マトリックスと0.1~50重量%の赤色蛍光体を含むことができる。
【0019】
前記光学樹脂層および前記樹脂マトリックスは、それぞれ、付加反応型シリコン樹脂組成物を含み、前記付加反応型シリコン樹脂組成物は、メチル基含有シリコン組成物および硬化触媒を含むことができる。
【0020】
前記付加反応型シリコン樹脂組成物は、前記メチル基含有シリコン組成物100重量部に対して0.0001以上5以下の重量部を有する前記硬化触媒を含むことができる。
【0021】
前記メチル基含有シリコン組成物は、65~85重量%のメチル基含有ポリシロキサン、13~30重量%のメチル基含有クロロシラン化合物および1~8重量%のメチル基含有ヒドロゲンポリシロキサンを含むことができる。
【0022】
前記蛍光体は、1.5以上の屈折率を有し、前記光学樹脂層および前記樹脂マトリックスは、それぞれ、1.3以上1.8以下の屈折率を有することができる。
【0023】
前記蛍光体は、1.5以上2.5以下の屈折率を有し、前記光学樹脂層および前記樹脂マトリックスは、それぞれ、1.4以上1.5以下の屈折率を有することができる。
【0024】
前記蛍光体層の上部に備えられ、前記蛍光体層から出射する可視光線が有する波長のうち一部を遮断する光学フィルタ部材をさらに含むことができる。
【0025】
前記蛍光体層は、前記蛍光体層の表面に備えられ、窪んだ形状の溝が形成されるパターン領域を含むことができる。
【0026】
前記パターン領域は、前記蛍光体層の上部表面に備えられることができる。
【0027】
前記光学フィルタ部材は、インナーレンズまたはアウターレンズであってもよい。
【0028】
前記目的を達成するための本発明の他の側面によると、自動車用ランプを含み、前記自動車用ランプは、回路基板と、前記回路基板の上面に備えられる複数の光源と、前記回路基板の前記上面に備えられ、前記複数の光源をモールドする光学樹脂層と、前記光学樹脂層の上面に密着して備えられる蛍光体層とを含み、前記蛍光体層は、樹脂マトリックスと、前記樹脂マトリックス内で分散した蛍光体とを含む自動車が提供される。
【0029】
前記回路基板の上面のうち少なくとも一部には、前記複数の光源から出射した光を反射させる反射領域が備えられることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、柔軟性とデザイン自由度に優れた自動車用ランプを製造することができる。
【0031】
また、本発明によると、点灯時に、光均一度に優れた自動車用ランプを製造することができる。
【0032】
また、本発明によると、停止配光法規を満たし、耐熱性、耐黄変性、耐久性および信頼性に優れた自動車用ランプを製造することができる。
【0033】
また、本発明によると、構造が単純化して空間の活用性が増大し、生産性および経済性に優れた自動車用ランプを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一例による自動車用ランプの構造を図示した断面図である。
図2】本発明の蛍光体による光源の波長変換を示すグラフである。
図3】本発明による光学フィルタ部材を適用する場合の波長変換効果を示すグラフである。
図4】本発明の他の例による自動車用ランプによって形成された配光パターンを示す写真である。
図5】本発明の実施例1による自動車用ランプを構成する回路基板、複数の光源、光学樹脂層および蛍光体層が積層された構造体が発光する様子を示す写真である。
図6】本発明の実施例1による自動車用ランプが自動車に適用された様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明による自動車用ランプおよび自動車について説明する。
【0036】
[自動車用ランプ]
図1は本発明の一例による自動車用ランプの構造を図示した断面図である。
【0037】
図1に図示されているように、本発明による自動車用ランプ10(以下、「ランプ」とする)は、回路基板100と、回路基板100の上面に備えられる複数の光源200とを含むことができる。図1には、一例として、回路基板100の上面に4個の光源が備えられた様子が図示されている。一方、回路基板100は、プリント回路基板(Printed Circuit Board、PCB)を含むことができる。例えば、回路基板100は、フレキシブルプリント回路基板を含むことができ、回路基板100の厚さは、0.05mm以上5mm以下であってもよい。より好ましくは、回路基板100の厚さは、0.1mm以上1mm以下であってもよい。
【0038】
また、ランプ10は、回路基板100の上面に備えられ、複数の光源200を覆うように備えられる光学樹脂層300と、光学樹脂層300の上面に密着して備えられる蛍光体層400とを含むことができる。したがって、図1に図示されているように、複数の光源200は、光学樹脂層300によってモールドされることができる。光学樹脂層300は、外部の衝撃から複数の光源200を保護し、且つ複数の光源200から出射する光の均一度を確保するための構成であり得る。
【0039】
また、複数の光源200は、回路基板100の上面にフリップチップ(flip chip)方式で備えられることができる。フリップチップ方式とは、回路基板に光源などの素子を取り付ける際に、別の連結構造を用いることなく、回路基板に形成された電極パターンを用いて、素子をそのまま融着させることを意味する。回路基板100に複数の光源200がフリップチップ方式で備えられる場合、光源に取り付けられるワイヤを除去することができるため、外部衝撃または熱衝撃に対する信頼性が向上することができ、光源の発光効率も向上することができる。
【0040】
一方、本発明によると、回路基板100上に備えられる複数の光源200間の距離をPとした時に、Pは、3mm以上10mm以下の値を有することができる。より好ましくは、Pは、4mm以上6mm以下であってもよい。
【0041】
また、複数の光源200は、所定の発光ピークを有することができる。例えば、複数の光源200の発光ピークは、420nm以上470nm以下の波長を有することができる。例えば、光源200は、420nm以上470nm以下の波長の発光ピークを有する青色発光ダイオードを含むことができる。
【0042】
一方、光学樹脂層300の厚さをT1とし、蛍光体層400の厚さをT2とした時に、本発明によると、下記[式1]の関係を満たすことができる。
【0043】
[式1]
0.1≦(T1+T2)/P≦2.0
【0044】
前記[式1]の条件を満たす場合、本発明によるランプ10の光均一度が向上することができる。一例として、光源間の距離Pは、光学樹脂層300の厚さT1と蛍光体層400の厚さT2との和T1+T2と同一であり得る。
【0045】
また、本発明によると、ランプ10が優れた耐久性と曲げ特性を有するように、光学樹脂層300の厚さT1は、3mm以上10mm以下の値を有することができる。より好ましくは、T1は、4mm以上6mm以下であってもよい。
【0046】
一方、本発明によるランプ10の蛍光体層400は、樹脂マトリックス410と、樹脂マトリックス内で分散した蛍光体420とを含むことができる。図1に図示されているように、樹脂マトリックス410内で分散した蛍光体420は、複数の光源200から出射する光を吸収して、発光する時に拡散が同時に行われるようにし、面光源の特性を具現するための構成であり得る。この場合、従来技術による拡散フィラー(filler)を使用した場合よりも光均一度の向上の面で有利である。
【0047】
一方、光拡散性および光の均一度の向上のために、蛍光体420の屈折率は、1.5以上の値を有することができる。より好ましくは、蛍光体420の屈折率は、1.5以上2.5以下であってもよい。
【0048】
また、蛍光体420は、1μm以上100μm以下の大きさを有する赤色蛍光体を含むことができる。この際、蛍光体420の大きさとは、粒子の直径または最大長さを意味し得る。一方、赤色蛍光体は、ガーネット(Garnet)系、シリケート(Silicate)系蛍光体、ナイトライド(Nitride)系蛍光体およびオキシナイトライド(Oxynitride)系蛍光体のうち一つ以上を含むことができる。例えば、前記ガーネット系赤色蛍光体は、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)およびTAG(terbium aluminum garnet)のいずれか一つ以上を含むことができる。また、赤色蛍光体の大きさは、5μm以上50μm以下であってもよい。
【0049】
図2は本発明の蛍光体による光源の波長変換を示すグラフである。
【0050】
例えば、本発明によるランプ10(図1参照)の光源200(図1参照)が約450nmの発光ピークを有する青色光であり、蛍光体420(図1参照)が赤色蛍光体である場合、図2に図示されているように、約450nmの発光ピークを有する青色光から約625nmの発光ピークを有する赤色光への波長の変換が行われたことを確認することができる。
【0051】
一方、本発明によると、光学樹脂層300および樹脂マトリックス410は、それぞれ、付加反応型シリコン樹脂組成物を含むことができる。より詳細には、付加反応型シリコン樹脂組成物は、メチル基含有シリコン組成物および硬化触媒を含むことができる。メチル基含有シリコン組成物の場合、成形性、柔軟性および耐熱性に優れ、長期間使用時に黄変を防止することができ、経済性の面でも有利である。
【0052】
メチル基含有シリコン組成物は、メチル基含有ポリシロキサン、メチル基含有クロロシラン化合物およびメチル基含有ヒドロゲンポリシロキサンを含むことができる。
【0053】
メチル基含有ポリシロキサンは、ポリメチルビニルシロキサン、ジメチルビニル末端ジメチルシロキサン共重合体、メチルビニルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体、ジメチルビニルシロキシ-末端ジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ-末端ジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ-末端トリメチルシロキシ-末端ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体およびトリメチルシロキシ-末端ジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体のうち一つ以上を含むことができる。例えば、ジメチルビニル末端ジメチルシロキサン共重合体を含むことができる。また、メチル基含有ポリシロキサンはメチル基含有シリコン組成物の全重量に対して65~85重量%含まれることができる。この場合、光学樹脂層300と樹脂マトリックス410の柔軟性、耐熱性および信頼性に優れることができる。より好ましくは、メチル基含有ポリシロキサンは、70~75重量%含まれることができる。
【0054】
メチル基含有クロロシラン化合物は、ジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルジメチルクロロシランおよびジエチルメチルクロロシランのいずれか一つ以上を含むことができる。
【0055】
メチル基含有クロロシラン化合物は、メチル基含有シリコン組成物の全重量に対して13~30重量%含まれることができる。この場合、光学樹脂層300と樹脂マトリックス410の架橋密度、耐熱性および機械的物性に優れることができる。より好ましくは、メチル基含有クロロシラン化合物は、15~25重量%含まれることができる。
【0056】
メチル基含有ヒドロゲンポリシロキサンは、1分子当たり1以上、例えば、2以上のケイ素結合したヒドロゲン基を含むことができる。例えば、メチル基含有ヒドロゲンポリシロキサンのケイ素原子と結合するヒドロゲン原子の結合位置は、分子鎖の末端および分子鎖の側鎖のうち一つ以上であり得る。また、メチル基含有ヒドロゲンポリシロキサンは、ジメチルヒドロゲンシロキシ-末端ポリジメチルシロキサンおよびトリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルヒドロゲンシロキサン共重合体のうち一つ以上を含むことができる。
【0057】
また、メチル基含有ヒドロゲンポリシロキサンは、メチル基含有シリコン組成物の全重量に対して1~8重量%含まれることができる。この場合、光学樹脂層300と樹脂マトリックス410の架橋密度、耐熱性および機械的物性に優れることができる。
【0058】
一方、メチル基含有シリコン組成物の全重量に対して、添加剤が、0.001~5重量%さらに含まれることができる。前記添加剤は、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤および難燃剤を含むことができる。
【0059】
一方、上述の硬化触媒は、微粉末白金、白金黒、クロロ白金酸、アルコール-変性クロロ白金酸、クロロ白金酸-オレフィン錯体、クロロ白金酸-アルケニルシロキサン錯体、およびクロロ白金酸-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のうち一つ以上を含むことができる。この際、硬化触媒は、前記メチル基含有シリコン組成物100重量部に対して0.0001重量部以上5重量部以下含まれることができる。
【0060】
また、上述の白金系触媒は、前記メチル基含有シリコン組成物100重量部に対して0.0001重量部以上5重量部以下含まれることができる。この場合、前記付加反応型シリコン樹脂組成物の硬化反応速度の調節が容易である。例えば、白金系触媒は、メチル基含有シリコン組成物100重量部に対して、0.01重量部~3重量部含まれることができる。または、0.03重量部~2重量部含まれることができる。
【0061】
一方、上述の樹脂マトリックスは、1.3以上1.8以下の屈折率を有することができる。一例として、前記樹脂マトリックスは、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアルキル(メタ)アクリレートのうち一つ以上を含むことができる。より好ましくは、樹脂マトリックスの屈折率は、1.4以上1.5以下であってもよい。または、1.4以上1.42以下であってもよい。
【0062】
また、上述の光学樹脂層は、1.3以上1.8以下の屈折率を有することができる。より好ましくは、光学樹脂層の屈折率は、1.4以上1.5以下であってもよい。
【0063】
また、光学樹脂層と蛍光体層の樹脂マトリックス間の屈折率の差は、0.2以下であってもよい。この場合、本発明によるランプの光の均一度に優れることができる。例えば、光学樹脂層と樹脂マトリックスは、同種の付加反応型シリコン樹脂組成物を含むことができる。この場合、光学樹脂層と樹脂マトリックスとの密着力に優れることができる。
【0064】
蛍光層は、50~99.9重量%の樹脂マトリックスおよび0.1~50重量%の赤色蛍光体を含むことができる。この場合、ランプの光均一度が確保されるだけでなく、蛍光層の耐久性と曲げ特性の両方に優れることができる。
【0065】
蛍光層の厚さT2は、0.1mm以上1mm以下であってもよい。例えば、0.3mm以上1mm以下であってもよい。この場合、耐久性および曲げ特性に優れることができる。
【0066】
一方、図1に図示されているように、本発明によるランプ10は、蛍光体層400の上部に備えられ、蛍光体層400から出射する可視光線が有する波長のうち一部を遮断する光学フィルタ部材500をさらに含むことができる。すなわち、光学フィルタ部材500は、蛍光体層400から出射する可視光線のうち一部を遮断して、外部に出射する光の色を変換する構成であり得る。
【0067】
図3は本発明による光学フィルタ部材を適用する場合の波長変換効果を示すグラフである。
【0068】
本発明によるランプ10は、自動車の後方に搭載されるランプであってもよい。この場合、本発明によるランプ10から外部に出射する光は、赤色光であり得る。この場合、本発明による光学フィルタ部材500は、ランプ10の最外側に備えられるレッドアウターレンズであってもよい。すなわち、光学フィルタ部材500がレッドアウターレンズである場合、図3に図示されているように、複数の光源200から出射する光のうち青色波長の光を遮断することで、赤色光が外部に出射することができる。しかし、これとは異なり、光学フィルタ部材500は、ランプ10の内部空間に備えられるレッドインナーレンズであってもよく、インナーレンズまたはアウターレンズとは別に備えられる構成であってもよい。
【0069】
図4は本発明の一例による自動車用ランプによって形成された配光パターンを示す写真である。
【0070】
図4に図示されているように、本発明によるランプ10によって形成された配光パターンには、所定の模様Zが形成され得る。このために、蛍光体層400(図1参照)は、蛍光体層400の表面に備えられ、窪んだ形状の溝が形成されるパターン領域をさらに含むことができる。より詳細には、パターン領域は、蛍光体層400の上部表面に備えられることができる。例えば、かかるパターン領域は、蛍光体層400を製造するための金型にパターン領域に対応する形状を有する溝領域を形成することで備えられることができる。しかし、パターン領域は、様々な方式によって製造されることができる。
【0071】
[実施例1]
(1)付加反応型シリコン樹脂組成物の製造:光学樹脂層および蛍光体層の樹脂マトリックスを製造するために、メチル基含有シリコン組成物100重量部および硬化触媒(白金系触媒)0.001重量部を含む付加反応型シリコン樹脂組成物を準備した。前記メチル基含有シリコン組成物は、ジメチルビニル末端ジメチルシロキサン共重合体75重量%、メチル基含有クロロシラン化合物(クロロトリメチルシランおよびジクロロエチルメチルシランのうち1以上)23重量%、メチル基含有ヒドロゲンポリシロキサン(トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルヒドロシラン共重合体)1重量%および添加剤1重量%を含んでいる。
【0072】
(2)自動車用ランプ用回路基板、複数の光源、光学樹脂層および蛍光体層が積層された構造体の製造:厚さ0.5mmのフレキシブル回路基板(Flexible PCB)および前記回路基板上にフリップチップ(flip chip)方式を用いて、5mmの間隔で複数個配列された複数の光源(発光ピーク450nmの青色発光ダイオード)を準備した。前記回路基板の上部に前記複数の光源を付加反応型シリコン樹脂組成物を用いてモールドし、1.4以上1.5以下の屈折率を有する光学樹脂層を形成した。次に、前記光学樹脂層の表面に蛍光体層を形成して自動車用ランプを製造した。
【0073】
この際、蛍光体層は、付加反応型シリコン樹脂組成物を含んで形成された1.4以上1.5以下の屈折率を有する樹脂マトリックス80~99.5重量%および前記樹脂マトリックスに分散した赤色蛍光体(屈折率が1.5以上2.5以下であるナイトライド(Nitride)系、0.5~20重量%)を含むように製造された。また、前記光学樹脂層と蛍光体層の厚さの和が5mmになるように製造した。
【0074】
図5は本発明の実施例1による自動車用ランプを構成する回路基板、複数の光源、光学樹脂層および蛍光体層が積層された構造体が発光する様子を示す写真である。図5を参照すると、前記実施例1の場合、構造体のフレキシブル特性に優れ、面光源とテール(tail)および停止(stop)配光を具現することができることを確認することができる。
【0075】
[実施例2]
ジメチルビニル末端ジメチルシロキサン共重合体71重量%、メチル基含有クロロシラン化合物(クロロトリメチルシランおよびジクロロエチルメチルシランのうち1以上)25重量%、メチル基含有ヒドロゲンポリシロキサン(トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルヒドロシラン共重合体)2重量%および添加剤2重量%を含むメチル基含有シリコン組成物を適用した以外は、前記実施例1と同一の方法で構造体を製造した。
【0076】
(2)自動車用ランプの製造:前記実施例1および前記実施例2によって製造された構造体を含む自動車用ランプを製造した。
【0077】
従来の三次元レンズを適用した面光源の場合、多数のレンズおよびLED光源が必要であり、そのため、光学系厚さが増加して空間効率性が低く、レンズの射出および組立が難しくて経済性が低く、面積に対する光効率性が低くて制動灯への使用が難しいという問題があった。
【0078】
図6は本発明の実施例1による自動車用ランプが自動車に適用された様子を示す写真である。
【0079】
図6を参照すると、実施例1による自動車用ランプは、最近のデザイントレンドに合わせてランプモジュールのスリム化を具現可能であり、ランプモジュールの組立工程の単純化およびランプの小型化によって生産費用を削減し、従来具現することができなかった幾何学的な形状を容易に具現可能であることを確認することができる。
【0080】
(3)熱衝撃試験:前記実施例1および前記実施例2による自動車用ランプの前記構造体に対して、LGイノテック社の曲げ熱衝撃試験(Bending Thermal Shock Test)を実施した。具体的には、実施例1によって製造された前記構造体を-40±3℃で10分間放置→12℃/minの昇温速度で85±3℃で10分間放置することを1サイクルとし、1000サイクル実施した後、実施例1による構造体を点灯した後、光束(Luminous flux)を測定し、熱衝撃試験前の点灯時の光束と比較して、20%以下に低下すると、合格と判定し、試験片の変色、退色、膨潤、亀裂などの有無を肉眼で観察して評価した。結果、前記実施例1および前記実施例2によって製造された構造体の場合、熱衝撃試験の後、点灯時に、光束が、熱衝撃試験前の光束に比べて2.2%以下に低下しており、変色、退色、膨潤、亀裂などが発生しなかった。
【0081】
[自動車]
本発明による自動車は、自動車用ランプ10(以下、「ランプ」とする)を含むことができる。この際、ランプ10は、自動車の後方に備えられるランプであってもよい。この際、ランプ10は、回路基板100と、回路基板100の上面に備えられる複数の光源200と、回路基板100の上面に備えられ、複数の光源200をモールドする光学樹脂層300と、光学樹脂層300の上面に密着して備えられる蛍光体層400とを含むことができる。この際、蛍光体層400は、樹脂マトリックス410と、樹脂マトリックス410内で分散した蛍光体420とを含むことができる。
【0082】
一方、本発明によると、回路基板100の上面のうち少なくとも一部には、複数の光源200から出射した光を反射させるための反射領域が備えられることができる。複数の光源200から出射する光は、ほとんどが、蛍光体層400に向かって上方に入射するが、一部は、回路基板100に向かって下方に入射することができる。このうち、回路基板100に向かって入射する光は、ランプ10の発光に寄与しないため、ランプ10の性能を低下させる要因として作用することがある。したがって、本発明によると、回路基板100のうち少なくとも一部に反射領域を形成し、複数の光源200から回路基板に入射された光を反射した後、また蛍光体層400に入射するようにすることで、ランプ10の性能の低下を最小化することができる。より好ましくは、反射領域で反射率を極大化するために、反射領域は、白色を有することができる。
【0083】
以上、本発明は、限定された実施例と図面によって説明されているものの、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって、本発明の技術思想と下記の特許請求の範囲の均等範囲内で様々な実施が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
10 ランプ
100 回路基板
200 光源
300 光学樹脂層
400 蛍光体層
410 樹脂マトリックス
420 蛍光体
500 光学フィルタ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6