(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023071
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】起き上がり小法師の様な照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 47/115 20200101AFI20220131BHJP
A63H 33/22 20060101ALI20220131BHJP
F21S 9/02 20060101ALI20220131BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20220131BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20220131BHJP
H05B 45/20 20200101ALI20220131BHJP
H05B 47/19 20200101ALI20220131BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20220131BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220131BHJP
【FI】
H05B47/115
A63H33/22 A
F21S9/02 420
F21V23/00 110
F21V23/00 140
H05B45/10
H05B45/20
H05B47/19
H05B47/16
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021158249
(22)【出願日】2021-09-28
(62)【分割の表示】P 2017210068の分割
【原出願日】2017-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】501041894
【氏名又は名称】チームラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】猪子 寿之
【テーマコード(参考)】
2C150
3K014
3K273
【Fターム(参考)】
2C150CA26
2C150DA37
2C150DC17
2C150DD04
2C150DG01
2C150DG13
2C150DG45
3K014AA01
3K273PA05
3K273QA14
3K273QA15
3K273QA16
3K273RA16
3K273SA11
3K273SA19
3K273SA24
3K273SA40
3K273SA58
3K273SA60
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA22
3K273TA27
3K273TA28
3K273TA39
3K273TA54
3K273UA15
3K273UA22
3K273UA29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】屋外での照明演出に適した斬新な照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置1は,椀形の底面を有し内部に錘部材3が設けられた揺動体2と,揺動体2に内包された発光部240を含む発光制御装置200を備える。発光制御装置200は,揺動体2の動作を検知する動作検知部と,揺動体2の動作に応じて発光部240の発光状態を変化させる発光制御部をさらに含む。動作検知部は,揺動体2の加速度を測定する加速度センサと,その傾倒角度を測定する傾きセンサを有する。発光制御部200は,発光部240を発光させている状態において,揺動体2の動作の加速度が一定の閾値を超えたときに発光部240の少なくとも発光色又は発光強度を含む発光状態を変化させるが,揺動体2の動作の加速度が一定の閾値を超えた場合であっても揺動体2の傾倒角度が一定角度範囲内にあるときには発光部240の当該発光状態を変化させない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椀形の底面を有し,内部の前記底面側に錘部材が設けられた揺動体と,
前記揺動体に内包された発光部を含む発光制御装置と,を備える
照明装置であって,
前記発光制御装置は,
前記揺動体の動作を検知する動作検知部と,
前記動作検知部が検知した前記揺動体の動作に応じて前記発光部の発光状態を変化させる発光制御部をさらに含み,
前記動作検知部は,
前記揺動体の動作の加速度を測定する加速度センサと,
前記揺動体の傾倒角度を測定する傾きセンサを有し,
前記発光制御部は,
前記発光部を発光させている状態において,
前記揺動体の動作の加速度が一定の閾値を超えたときに前記発光部の少なくとも発光色又は発光強度を含む発光状態を変化させ,
ただし,前記揺動体の動作の加速度が一定の閾値を超えた場合であっても,前記揺動体の傾倒角度が一定角度範囲内にあるときには,前記発光部の当該発光状態を変化させない
照明装置。
【請求項2】
前記発光制御部は,前記揺動体の傾倒角度に応じて前記発光部の発光状態を変化させる
請求項1に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,照明装置,照明演出システム及び照明演出方法に関する。具体的に説明すると,本発明は,倒しても起き上がる照明装置や,それを利用した照明演出システム,照明演出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,コンサートやライブなどのイベントで実施される照明演出として,気体を内包した複数のボール(バルーン)の内部にLEDを備えた発光制御装置を搭載し,各ボール内のLEDを同期させつつそれらの発光色を変化させる方法が提案されている(特許文献1)。例えば,特許文献1には,ボール内の発光制御装置がボールの移動を検知したときにLEDの発光色を変化させることや,あるボールの移動に伴って他の複数のボール内のLEDを一斉に変化させることが開示されている。
【0003】
このようなLEDを備えたボールは,例えばイベント会場内で観客の頭上を自由に浮遊しており,観客がボールを突き上げたり投げたりしたときにその移動の加速度などを検知して発光色がリアルタイムに変化する。このため,観客はそのボールの発光による照明演出を楽しむだけでなく,ボールを自由に動かす楽しみを得ることができる。近年このような発光するボールを利用したインタラクティブな照明演出が人気を博している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,浮遊しながら発光するボールは屋内での照明演出に好適なものであるが,その浮遊方向の制御が難しいため,屋外での使用には適さないものであった。また,発光するボールを地面や壁などに固定して使用することも考えられるが,このように固定してしまうとボールの動きが小さくなるため,遊具としての魅力が半減する。
【0006】
そこで,本発明は,発光するボールに代わる斬新な照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は,上記目的を達成する手段について鋭意検討した結果,起き上がる小法師の様な中空状の揺動体の内部にLED等の発光部を搭載することにより,屋外での使用にも適した斬新な照明装置を提供することができるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけばより魅力的な照明演出を実現できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成・工程を有する。
【0008】
本発明の第1の側面は,照明装置に関する。本発明の照明装置は,揺動体と発光制御装置を備える。揺動体は,椀形の底面を有し,内部の底面側に錘部材が設けられている。なお,揺動体の底面は,床や地面との接地面となる。このため,揺動体は,起き上がり小法師の様に,倒れても底面を下側として起き上がるものである。発光制御装置は,揺動体に内包された発光部を含む。このため,発光部が発光すると,揺動体(透明又は半透明のもの)がその内部から照明されることとなる。なお,発光制御装置全体が揺動体の内包されていることが好ましいが,少なくとも発光部が揺動体内に備えられていればよく,その他の発光制御装置を構成する機器(電源等)は揺動体の外部に備わっていてもよい。このような揺動体の内部に発光部を備え付けることで,例えば観客によって押されたときに揺れ動く斬新な照明装置を提供することができる。また,本発明の照明装置は,基本的に揺動体の底面が床や地面に接しているため,屋外での照明演出にも好適に利用することができる。
【0009】
本発明の照明装置において,発光制御装置は,無線通信部(無線通信機器)をさらに含むことが好ましい。無線通信部は,外部の制御装置及び他の照明装置の両方又は一方から送信された発光部の制御情報を受信する。この場合に,発光部は,外部の制御装置や他の照明装置から受信した制御情報に従って発光する。すなわち,照明装置は,外部の制御装置(コンピュータ)を親機としてそれによって発光状態が制御されるものであってもよいし,複数の照明装置の間でピア・トゥ・ピア方式で相互に制御情報を授受するものであってもよい。このように,照明装置に無線通信部を設けておくことで,照明演出の自由度が格段に向上する。
【0010】
本発明の照明装置において,発光制御装置は,動作検知部と発光制御部をさらに含むものであってもよい。動作検知部は,揺動体の動作を検知する。発光制御部は,動作検知部が検知した揺動体の動作に応じて発光部の発光状態を変化させる。これにより,例えば観客が揺動体を揺れ動かしたときに発光状態が変化するため,インタラクティブな照明演出を行うことができる。
【0011】
本発明の照明装置において,動作検知部は,揺動体の動作の加速度を測定する加速度センサを含むものであってもよい。この場合に,発光制御部は,揺動体の動作の加速度が一定の閾値を超えたときに発光部の発光状態を変化させることが好ましい。これにより,例えば観客が揺動体を強く押したときのように,揺動体に強い衝撃が加わったときに発光部の発光状態が変化するようになる。また,揺動体が風などによってゆっくりと揺れ動くときには発光状態は変化をさせないように制御することもできる。
【0012】
本発明の照明装置において,動作検知部は,揺動体の傾倒角度を測定する傾きセンサを含むものであってもよい。この場合に,発光制御部は,揺動体の動作の加速度が一定の閾値を超えた場合であっても,揺動体の傾倒角度が一定角度範囲内にあるときには,発光部の発光状態を変化させない(発光状態の変化をキャンセルする)こととしてもよい。例えば,観客が揺動体の上部を強く押した場合,揺動体は観客の押し動作により一回目の衝撃を受け,その後地面に接触したときに二回目の衝撃を受ける場合があると考えられる。そのような場合に,観客による一回目の衝撃を受けたときに発光状態を変化させ,地面との接触による二回目の衝撃を受けたときには発光状態を変化させないといった制御が可能になる。
【0013】
本発明の照明装置において,動作検知部は,揺動体の傾倒角度を測定する傾きセンサを含むものであってもよい。この場合に,発光制御部は,揺動体の傾倒角度に応じて発光部の発光状態を変化させることとしてもよい。これにより,揺動体の揺れ動く動作によって例えば発光部の発光状態(発光色や発光強度)が徐々に移り変わるような照明演出が可能になる。
【0014】
本発明の発光制御装置は,動作検知部が検知した揺動体の動作情報を,外部の制御装置及び他の照明装置の両方又は一方に送信するための無線通信部をさらに含むこととしてもよい。これにより,ある揺動体の動作に応じて,他の揺動体内の発光部の発光状態を変化させることも可能となる。例えば,ある揺動体が動いて発光状態が変化したときに,その周囲に位置する揺動体も同じように発光状態が変化するような演出が可能となる。
【0015】
本発明の第2の側面は,照明演出システムに関する。本発明の照明演出システムは,一又は複数の照明装置(無線通信部を備えるもの)と,照明装置の発光部の発光状態を制御する制御装置とを備える。制御装置は,発光部を制御する制御情報を発光制御装置へ送信する無線通信部を含む。これにより,制御装置(コンピュータ)を親機とし,他の一又は複数の照明装置を子機として,親機によって子機全体を制御することが可能となる。
【0016】
本発明の第3の側面は,照明演出方法に関する。本発明の照明演出方法は,一又は複数の照明装置(無線通信部を備えるもの)と,照明装置の発光部の発光状態を制御する制御装置とによって実行される。本発明の照明演出方法は,制御装置が発光部を制御する制御情報を発光制御装置へ向けて送信する工程を含む。これにより,照明装置の発光制御装置,制御装置からの制御情報に従って発光部を発光させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば,斬新な照明演出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は,照明演出システムが備える各種装置を模式的に示している。
【
図2】
図2は,各装置の機能構成をしめしたブロック図である。
【
図3】
図3は,揺動体の動作の一例を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0020】
図1は,本発明の実施形態に係る照明演出システム10の全体構成を示している。
図1に示されるように,照明演出システム10は,複数の照明装置1と,制御装置100と,複数の無線信号受信機300を備える。また,各照明装置1は,中空状の揺動体2と,この揺動体2の内部に搭載された発光制御装置200を備える。揺動体2は,地面や床に接する底面が椀状(例えば半球形状)となっており,その内部の底面側に錘部材3が取り付けられている。このため,揺動体2は,起き上がり小法師のように,倒れても起き上がるように形成されている。
【0021】
制御装置100は,本システム全体の制御を行うコンピュータである。発光制御装置200は,LED等の発光部230が揺動体2の内部に内包された装置であり,基本的には発光部230を発光させる制御を行う。発光制御装置200は,複数の揺動体2のそれぞれに搭載されている,また,本実施形態において,発光制御装置200は,自己固有の識別情報を含む近距離無線信号(いわゆるビーコン)を発信しており,無線信号受信機300は,発光制御装置200からの無線信号を受信する。無線信号受信機300は,発光制御装置200からの無線信号を受信すると,その無線信号の受信強度を測定する。制御装置100又は無線信号受信機300は,発光制御装置200からの無線信号の受信強度に基づいて,その無線信号受信機300からその発光制御装置200までの距離を測定する。これにより,制御装置100において,発光制御装置200(すなわち照明装置1)の空間における位置座標をリアルタイムに把握することができるようになっている。
【0022】
発光制御装置200を備えた複数の照明装置1(揺動体2)及び複数の無線信号受信機300はそれぞれ,イベント会場内に配備される。イベント会場については特に制限がなく,屋内であってもよいし屋外であってもよいが,本発明の照明装置1は屋外での運用に適したものである。複数の無線信号受信機300位置は固定されており,無線信号受信機300にはそれぞれ固有の識別情報(ID番号)が割り当てられている。無線信号受信機300のイベント会場(空間)における位置座標は制御装置100にとって既知であり,制御装置100は,各無線信号受信機300の位置座標と識別情報とを関連付けて記憶することで,どの装置がどの座標に位置しているかを把握している。
【0023】
揺動体2は,内部に空気や窒素,ヘリウムなどの気体を含む中空状の球体であり,内部から照射された光が透過するように透明又は半透明の柔軟な弾性材料で形成されている。揺動体2を形成する材料の例は,シリコーンや合成ゴムである。揺動体2の大きさは特に制限されず,その内部に発光制御装置200の発光部を内包できる大きさであればよい。ただし,揺動体2は,観客が立った状態でその上部に容易に触れることのできる高さを有することが好ましい。揺動体2は,0.5m以上又は1m以上の高さを有することが好ましく,例えばその高さは0.5m~3m又は1m~2mであることが好ましい。
【0024】
本システムにおいて,揺動体2は,底面が椀状(半球形状)に形成されており,その底面側の内部に錘部材3が設けられている。揺動体2は,椀状部より上部の形状は特に制限されない。揺動体2は,
図1に示すように全体として卵形をなしているものであってもよいし,椀状の底面と円筒状の上部から構成されるサンドバックの様な形状をなしているものであってもよい。また,錘部材3の重さや取り付け位置は,揺動体2が倒れても,その底面が地面や床に接した状態で揺動体2全体を起き上がらせることのできるように調整されている。錘部材3の例は,砂袋や,鉛などの金属部材であるが,その材料は特に制限されない。錘部材3は,揺動体2全体よりも重い重量を有することが好ましい。
【0025】
なお,照明装置1は,少なくとも発光部230が揺動体2の内部に設けられていればよく,その他の機器(電源など)については揺動体2外部に設けられていてもよい。ただし,照明装置1は,バッテリー(不図示)と発光制御装置200がすべて揺動体2内に包含させているものであることが好ましい。
【0026】
図2は,照明演出システム10を構成する各種装置の機能ブロックを示している。以下では,
図2を参照して各種装置の機能構成について詳しく説明する。
【0027】
制御装置100は,各揺動体2内の発光制御装置200の発光状態の制御など,本システムの全体的な制御を行うコンピュータである。制御装置100は,照明装置1等が配備されたイベント会場内に設置されていることが好ましいが,例えば制御部110の機能をインターネットに接続されたウェブサーバによって実現することもできる。この意味では,制御装置100は,一台のコンピュータによって構築されているものに限られず,複数のコンピュータ(ローカル端末とウェブサーバ等)に機能を分散して構築されたものであってもよい。
【0028】
制御装置100は,制御部110,記憶部120,無線通信部130,操作部140,及び表示部150を含んで構成されている。制御部110としては,CPU又はGPUといったプロセッサを利用することができる。制御部110は,記憶部120に記憶されているプログラムを読み出し,このプログラムに従って所定の演算を行ったり,他の要素を制御する。記憶部120は,制御部110での演算処理に必要な各種データを記憶している。記憶部120のストレージ機能は,例えばHDD及びSDDといった不揮発性メモリによって実現できる。また,記憶部120は,制御部110による演算処理の途中経過などを書き込む又は読み出すためのメモリとしての機能を有してもよい。記憶部120のメモリ機能は,RAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。無線通信部130は,発光制御装置200との間で情報の送受信を行うための通信インターフェースである。無線通信部130としては,Wi-Fi(登録商標)などの公知の無線通信規格に則った通信を行うための無線LANルータなどを採用することができる。操作部140は,マウス,キーボード,タッチパネル,マイクなどの入力装置により構成され,人による操作情報を制御部110に入力する。表示部150は,液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのような表示装置である。表示部150は,操作部140と一体となってタッチパネルディスプレイを構成していてもよい。
【0029】
また,制御装置100の制御部110は,座標情報取得部112,発光データ生成部113,及び動作情報取得部114を含む。これらの各種機能部は,ソフトウェアによって実現されるものであってもよいし,ハードウェアによって実現されるものであってもよい。座標情報取得部112は,複数の照明装置1それぞれの位置座標を取得する。本実施形態では,特定の照明装置1の発光制御装置200が発信する無線信号を複数の無線信号受信機300によって受信することにより,その発光制御装置200の位置座標を制御装置100において算出することとしている。ただし,各照明装置1の位置座標は各発光制御装置200にて算出され,制御装置100の座標情報取得部112に提供されることとしてもよい。発光データ生成部113は,各照明装置1の発光部240を制御するための発光データ(制御情報)を生成する。発光データ生成部113は,記憶部120に予め記憶されている発光データを読み出すこととしてもよいし,発光データをリアルタイムに生成するものであってもよい。また,発光データ生成部113は,各照明装置1の位置座標に応じて,その照明装置1に提供する発光データを決定することとしてもよい。つまり,各照明装置1の位置に応じて,発光部240の発光状態が変わることとなる。動作情報取得部114は,発光制御装置200との通信によって揺動体2の動作情報を取得する。ここで得られた動作情報は,発光データ生成部113における発光データの生成に利用することもできる。
【0030】
発光制御装置200は,制御装置100による制御に従って,揺動体2内に内包された発光部240の発光状態の制御を行う。発光制御装置200は,複数の揺動体2のそれぞれに搭載されており,制御装置100との間で情報の授受を行うことができるとともに,発光制御装置200同士でピア・トゥ・ピア方式で相互に通信することも可能である。例えば,ある発光制御装置200が検知した揺動体2の動作情報を,他の発光制御装置200に発信することもできるし,また制御装置100から受信した制御情報(発光データ等)をある発光制御装置200から他の発光制御装置200へと転送することもできる。基本的には制御装置100から発光制御装置200に発光データが提供されることとなるが,発光制御装置200の間で発光データを転送し合うことで,発光データを複数の発光制御装置200全体に素早く行き渡らせることができる。
【0031】
発光制御装置200は,制御部210,記憶部220,無線通信部230,発光部240,動作検知部250,無線信号発信部260,及びスピーカー270を含んで構成されている。なお,図示は省略するが,揺動体2の内部には発光制御装置200に電力を供給するバッテリーが備え付けられている。制御部210は,CPU又はGPUといったプロセッサである。制御部210は,記憶部220に記憶されているプログラムを読み出し,このプログラムに従って所定の演算を行ったり,他の要素を制御したりする。記憶部220は,制御部210での演算処理に必要な各種データや,スピーカー270から出力する音響データ(効果音やBGM等)を記憶している。また,発光制御装置200の記憶部220には,その発光制御装置200固有の識別情報(ID情報)が格納されている。記憶部220は,HDD及びSDDといった不揮発性メモリや,RAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。無線通信部230は,制御装置100や他の発光制御装置200との間で情報の送受信を行うための通信インターフェースであり,Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの公知の無線通信規格に則った通信を行う。発光部240は,LEDなどの発光素子で構成されている。例えば,発光部240は,赤色LED,緑色LED,及び青色LEDをそれぞれ一又は複数個ずつ有しおり,多階調の色の光を様々な輝度で発光することできるようになっている。動作検知部250は,揺動体2の動作を検知するための各種センサで構成される。動作検知部250の例は,加速度を測定するための加速度センサ,傾倒角度や角速度を測定するための傾きセンサ(例えばジャイロセンサ),あるいは揺動体の振動を検知するための振動センサなどを一つ又は複数個組み合わせて用いることができる。無線信号発信部260は,自己の識別情報を含む無線信号を発信しており,この無線信号は,会場内に設置された複数の無線信号受信機300によって受信される。無線信号はBluetooth(登録商標)などの公知の近距離無線通信を行うための規格に則って無線信号発信部260から発信されており,複数の無線信号受信機300がそれを受信することで,無線信号受信機300又は制御装置100は,発光制御装置200から無線信号受信機300までの距離を測定することができる。スピーカー270は,制御部210による制御に従って,記憶部220に記憶されている音響データに基づいて,効果音やBGMなどの音響を出力する。
【0032】
また,発光制御装置200の制御部210は,発光制御部211,通信制御部212,及び音響制御部213を含む。これらの各機能部は,ソフトウェアによって実現されるものであってもよいし,ハードウェアによって実現されるものであってもよい。発光制御部211は,制御装置100から受信した発光データに基づいて,LED等の発光部240の発光状態を制御する。通信制御部212は,動作検知部250が検知した情報を無線通信部230を介して制御装置100や他の発光制御装置200へ送信したり,記憶部220に記憶されている識別情報を無線信号発信部260を介して発信したりするための制御を行う。音響制御部213は,記憶部220に記憶されている音響データに基づいて,スピーカーを制御して,効果音やBGMなどの音響を出力する。
【0033】
ここで,制御装置100が,複数の照明装置1(発光制御装置200)の位置座標を取得する処理の一例について詳しく説明する。屋外又は屋内のイベント会場内には,複数の無線信号受信機300が備え付けられており,各受信機300には固有のID情報(識別)が割り当てられている。また,発光制御装置200の無線信号発信部260は,固有の識別情報を含む無線信号を常時発信している。各無線信号受信機300は,発光制御装置200が発信している無線信号を受信する。なお,発光制御装置200が発信する無線信号は近距離通信用のものであるため,発光制御装置200の付近(無線信号到達範囲内)に位置する無線信号受信機300のみが,その無線信号を受信することとなる。また,発光制御装置200からの無線信号を受信した無線信号受信機300は,その無線信号に関する情報を制御装置100に送信する。制御装置100の記憶部120には,各無線信号受信機300のID情報に関連付けて,各受信機300が設置されているイベント空間における座標情報が記憶されている。このため,制御装置100の座標情報取得部112は,無線信号受信機300のID情報を参照することで,発光制御装置200から無線信号を受信した無線信号受信機300の位置座標を特定することができる。
【0034】
また,無線信号受信機300は,無線信号の受信強度を測定することができる。無線信号受信機300が無線信号の受信強度に関する情報を制御装置100に提供すると,制御装置100の座標情報取得部112は,この受信強度に関する情報に基づいて,無線信号受信機300から発光制御装置200までの距離を算出することができる。なお,無線信号受信機300に発光制御装置200までの距離を算出させて,求めた距離に関する情報を制御装置100に提供することとしてもよい。このようにして,制御装置100の座標情報取得部112は,発光制御装置200から無線信号を受信した無線信号受信機300の座標位置と,その発光制御装置200から無線信号受信機300までの距離を求める。また,発光制御装置200が発する無線信号を2つ以上の無線信号受信機300によって同時に受信していれば,座標情報取得部112は,2つ以上の無線信号受信機300の座標位置と,それらの無線信号受信機300から発光制御装置200までの距離に基づいて,三角測量法を利用して,無線信号を発している発光制御装置200の現在位置の2次元座標(x,y)又は3次元座標(x,y,z)を求めることが可能である。このようにして,制御装置100の座標情報取得部112は,各発光制御装置200それぞれの現在の座標位置の情報をリアルタイムに取得(算出)できる。また,制御装置100は,各発光制御装置200の現在の座標位置の情報を,それぞれの発光制御装置200に送信してもよい。
【0035】
なお,上記説明では,制御装置100が発光制御装置200の座標位置を演算することとしているが,発光制御装置200自身に自己の座標位置を求めさせて,求めた座標位置を発光制御装置200から制御装置100へ送信するということも可能である。例えばボールが屋外で運用されるような場合には,各発光制御装置200にGPS測定装置を設け,各発光制御装置において現在位置の2次元座標(x,y)を測定することとしてもよい。
【0036】
発光データ生成部113は,上記のようにして取得した各照明装置1(発光制御装置200)の現在の座標位置に基づいて,発光制御装置200の発光部240の発光状態を決定することができる。具体的には,実際の空間における各照明装置1の現在の座標位置に応じて,各照明装置1に対して発光部240の発光状態を制御する発光データを提供する。これにより,各照明装置1の現在の位置情報に応じて,統一性のある照明演出を行うことができる。例えば,イベント会場内を複数の領域に分けて,ある領域に属する照明装置1の色を同系色にしたり,イベント会場内全体でグラデーション的に発光色や発光強度を制御することも可能である。
【0037】
発光データ生成部113は,上記の様にして各照明装置1の発光状態を決定し,その結果に応じて,各照明装置1に提供する固有の発光データを生成する(あるいは記憶部120から読み出す)。発光データは,一定時間の間,各発光制御装置200の発光部240の発光状況を制御するためタイムライン形式のデータであることが好ましい。発光制御装置200は,この発光データに従って,規定された時間の間,発光部240の発光状態を制御することとなる。照明装置1は空間内を移動することも想定されるため,発光データは短時間ごとに小まめに生成されることが好ましい。例えば,1つの発光データで発光状態を制御する時間は,1秒~60秒であることが好ましく,10秒~30秒程度であることが特に好ましい。発光データには,例えば,発光制御装置200固有のID情報と,発光開始時点を指定する情報,発光状態を指定する情報,及び発光終了時点を指定する情報などが含まれる。このようにして,発光データ生成部113において生成された照明装置1ごとの発光データは,無線通信部130を通じて,各照明装置1の発光制御装置200へと送信される。
【0038】
各照明装置1の発光制御装置200は,制御装置100から発光データを受信すると,この発光データに従って,発光制御部211により発光部240の発光状態を制御する。また,例えば,発光制御部211は,一度受信した発光データを記憶部220に記憶し,次の発光データを制御装置100から受信するまで,繰り返し同じ発光データに従った制御を行うこととしてもよい。
【0039】
続いて,揺動体2の動作に応じて発光状態を変化させる処理について説明する。発光制御装置200は,加速度センサや傾きセンサなどからなる動作検知部250を備えており,観客により揺動体2が強く押されたり叩かれたりしたときにその加速度や角速度を測定することで,揺動体2の動作を検知する。動作検知部250が揺動体2の急激な動作(具体的には所定の閾値を超える加速度や角速度の変化量)を検知した場合に,発光制御部211は,発光データによらずに,発光部240の発光状態を変化させることとしてもよい。例えば,発光制御部211は発光部240の発光色などをランダムに変化させてもよいし,動作が検知されている間に発光部240を点滅させるなど,発光状態を適宜変化させることができる。
【0040】
また,制御装置100において生成する発光データに,発光制御装置200において揺動体2の急激な動作を検知したときに発光部240の発光状態を変化させる方法を規定しておいてもよい。例えば,発光データには,揺動体2の急激な動作を検知したときに発光部240を変化させる色などを予め規定しておくことができる。この場合には,発光制御部211は,揺動体2の急激な動作が検知された場合に,発光データに従って発光部240の発光状態を変化させればよい。
【0041】
また,ある発光制御装置200において揺動体2の急激な動作が検知されたときに,発光制御部211は,自身の発光部240の発光状態を変化させることに加えて,その動作の検知情報を無線通信部230を介して,他の発光制御装置200にピア・トゥ・ピア方式で送信することができる。この場合に,検知情報を受け取った他の発光制御装置200は,その検知情報に基づいて,自身の発光部240の発光状態を変化させる。このようにすることで,ある照明装置1(揺動体2)の動作に連動して,他の照明装置1(揺動体2)の発光状態が変化させることが可能である。また,発光制御装置200同士をピア・トゥ・ピア方式で接続することで,制御装置100を介さずに発光制御装置200同士を連動させることができるため,光の変化の連動を迅速化させることができる。
【0042】
図3は,揺動体2の動作の一例を示している。
図3(a)に示されるように,揺動体2は,その底面が椀状となっているため,観客によって押されたり叩かれたりしたとき傾倒することになるが,底面付近に錘部材が配置されているため,その重量によって起き上がることとなる。
【0043】
また,
図3(b)では,揺動体2の傾倒角度を模式的に示している。
図3(b)に示した符号θ1は,水平方向(具体的には地面や床)に対する揺動体2の傾倒角度範囲を示している。角度範囲θ1の例は,10~45度又は0~30度である。例えば揺動体の傾倒角度が角度範囲θ1にあることを発光制御装置200の動作検知部250(具体的には傾きセンサ)が検知している状態において,動作検知部250(具体的には加速度センサ)が急激な動作を検知した場合であっても,発光部240の発光状態は変化しないように規定されている。すなわち,観客が揺動体2の上部を強く押した場合,揺動体2は観客の押し動作により一回目の衝撃を受け,その後地面に接触したときに二回目の衝撃を受ける場合があると考えられる。そのような場合に,観客による一回目の衝撃を受けたときに発光状態を変化させ,地面との接触による二回目の衝撃を受けたときには発光状態を変化させないために,発光状態の変化をOFFにするための角度範囲θ1を予め規定している。
【0044】
なお,上記のように発光状態の変化をOFFにするための角度範囲θ1に代えて,発光状態の変化をONにするための角度範囲θ2を規定しておいてもよい。すなわち,
図3(b)に示した符号θ2では,延長方向に対する揺動体の傾倒角度範囲を示している。角度範囲θ2の例は,10~45度又は0~30度である。例えば揺動体の傾倒角度が角度範囲θ2にあることを発光制御装置200の動作検知部250(具体的には傾きセンサ)が検知している状態に限り,動作検知部250(具体的には加速度センサ)が急激な動作を検知した場合ときに,発光部240の発光状態は変化するように規定されている。このように,発光状態を変化させることのできる角度範囲を予め規定しておいてもよい。
【0045】
また,発光部240の発光状態を変化させるときに,同時に,スピーカー270から効果音などの音響を出力することとしてもよい。すなわち,動作検知部250において揺動体2の急激な動作(具体的には所定の閾値を超える加速度や角速度の変化量)を検知した場合に,音響制御部213は,記憶部220に記憶されている音響データに基づいて,スピーカー270から効果音などの音響を出力させる。揺動体が動作する度にスピーカー270から出力される音響は変化してもよいし,一定の音響を出力し続けることとしてもよい。また,揺動体2の傾倒角度に応じてスピーカーから出力される音響が変化してもよい。
【0046】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は,起き上がり小法師の様な照明装置や,それを利用した照明演出システム,照明演出方法に関する。従って,本発明は,屋外でのイベントや,コンサート,ライブなどエンターテイメント産業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0048】
1…照明装置 2…揺動体
3…錘部材 10…照明演出システム
100…制御装置 110…制御部
112…座標情報取得部 113…発光データ生成部
114…動作情報取得部 120…記憶部
130…無線通信部 140…操作部
150…表示部 200…発光制御装置
210…制御部 211…発光制御部
212…通信制御部 213…音響制御部
220…記憶部 230…無線通信部
240…発光部 250…動作検知部
260…無線信号発信部 270…スピーカー
300…無線信号受信機