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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023196
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】改変された高親和性ヒトT細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/725 20060101AFI20220131BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220131BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220131BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220131BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07K14/725
C12N5/10
A61K38/17
A61K35/17 Z
A61P35/00
C12N15/12 ZNA
C12P21/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178468
(22)【出願日】2021-11-01
(62)【分割の表示】P 2019190139の分割
【原出願日】2014-11-21
(31)【優先権主張番号】61/907,887
(32)【優先日】2013-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503060525
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ
(71)【出願人】
【識別番号】506139369
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー リサーチ センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シーナ エヌ. スミス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ティー. ハリス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エム. クランツ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エム. シュミット
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ディー. グリーンバーグ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA08
4C084DA45
4C084NA14
4C084ZB261
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】WT1抗原に対する特異性を有するT細胞受容体(TCR)を提供すること。
【解決手段】本TCRは、1本鎖フォーマットにおけるTCRの突然変異ライブラリの発生、続いて酵母の表面における改善された安定性及び親和性に関する選択(即ち、指向性進化)を通じて改変された、より高い親和性のTCRを含む。実施形態では、本TCRは、インビボでの標的とされた送達のための可溶性形態で、または養子T細胞設定においてT細胞内へ導入される遺伝子として使用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の規定の下、2013年11月22日に出願された米国仮特許出願第61/907,887号の利益を主張するものであり、この仮出願はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本開示は、国立衛生研究所により授与された認可番号第R01GM55767号及び第T32GM070421号の下に米国政府支援によりなされた。米国政府は、本開示において特定の権利を有する。
配列リストに関する記載
【0003】
本出願に関連付けられる配列リストは、紙コピーの代わりにテキストフォーマットで提供され、これによって参照により本明細書に援用される。配列リストが含まれるテキストファイルの名称は、IMMU_003_02WO_ST25.txtである。本テキストファイルは、18KBであり、2014年11月21日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0004】
本開示は、インビトロ技術によって改変された高親和性TCRを含む、ウィルムス腫瘍抗原(WT1)に対するT細胞受容体(TCR)、ならびに修飾されたTCR及び1本鎖TCRを生成する方法、ならびに治療的、診断的、及び撮像的方法のためのTCRの対応する使用に関する。
【背景技術】
【0005】
T細胞受容体(TCR)及び抗体は、異なる種類の抗原(リガンド)を認識するように進化した分子である((Murphy(2012),xix,868p.))。TCRは、抗原提示細胞(APC)または任意の有核細胞(例えば、赤血球を除くすべてのヒト体内細胞)の表面上に主要組織適合性複合体(MHC)の生成物の文脈において提示される抗原ペプチドの認識に関与する抗原特異性分子である。対照的に、抗体は典型的には、可溶性または細胞表面抗原を認識し、MHCによる抗原の提示を必要としない。このシステムは、T細胞に、短ペプチドへと細胞内で処理され、細胞内MHC分子に結合され、ペプチド-MHC複合体(pepMHC)として表面に送達される、細胞(ウイルスタンパク質を含む)によって発現された細胞内抗原の全体的な配置をそれらのTCRを介して認識する潜在的な能力を付与する。このシステムは、事実上、任意の外来タンパク質(例えば、変異した癌抗原またはウイルスタンパク質)または異常に発現されたタンパク質が、T細胞の標的として機能することを可能にする((Davis and Bjorkman(1988)Nature,334,395-402;Davis et al.(1998)Annu Rev Immunol,16,523-544;Murphy(2012),xix,868p.)に概観される)。
【0006】
TCRとpepMHCとの相互作用は、結合の親和性(または解離速度)に応じて、T細胞を種々の活性化の状態にさせ得る。TCR認識プロセスは、T細胞が、T細胞活性を刺激するための閾値を上回るMHC分子に結合した外来ペプチドに関する結合親和性を有する1つ以上のTCRが存在するであろう可能性が高いTCRの多様なレパートリーを提供することによって、正常な健康な細胞と、例えば、ウイルスまたは悪性腫瘍を介して形質転換されている細胞とを区別することを可能にする(Manning and Kranz(1999)Immunology Today,20,417-422)。
【0007】
現在、インビトロで培養することによって特定されたヒトまたはマウスのいずれかのT細胞クローンから単離された野生型TCRは、比較的低い結合親和性(K=1~300μM)を有することが示されている(Davis et al.(1998)Annu Rev Immunol,16,523-544)。これについての説明の一部は、胸腺内で発達するT細胞は自己pepMHCリガンド上で負に選択され(耐性誘導)、その結果、高過ぎる親和性を有するT細胞が欠失される(Starr et al.(2003)Annu Rev Immunol,21,139-76)ということであるようである。これらの比較的低い親和性を補うために、T細胞は、細胞表面分子CD4及びCD8がMHC分子(それぞれ、クラスII及びクラスI)に結合し、シグナル伝達活性の媒介においてTCRに相乗作用をもたらす、補助受容体システムを進化させた。CD8は、このプロセスに特に有効であり、極めて低い親和性(例えば、K=300μM)を有するTCRが潜在的な抗原特異性活性を媒介することを可能にする。
【0008】
インビトロで、指向性進化は、特異性pepMHCに関するより高い親和性を有するTCRを発生させるために使用されている。使用されてきた3つの異なるディスプレイ方法は、酵母ディスプレイ(Holler et al.(2003)Nat Immunol,4,55-62;Holler et al.(2000)Proc Natl Acad Sci U S A,97,5387-92)、ファージディスプレイ(Li et al.(2005)Nat Biotechnol,23,349-54)、及びT細胞ディスプレイ(Chervin et al.(2008)J Immunol Methods,339,175-84)である。3つのすべてのアプローチにおいて、プロセスは、TCRの突然変異体の親和性が同族pepMHC(そのT細胞が特異的であった元の抗原)に対して増加された親和性を有するように、野生型TCRの正常な低親和性を示すTCRを改変または修飾することに関与する。したがって、野生型TCRが、CDRのうちの1つ以上における突然変異ライブラリを生成するためのテンプレートとして使用され、より高い親和性を有する突然変異体が、同族ペプチド-MHC抗原への結合によって選択された。
【0009】
本開示では、野生型T細胞受容体、及び酵母ディスプレイによって改変されたウィルムス腫瘍-1(WT1)に対して特異的な高親和性T細胞受容体が開示される。WT1は、腫瘍抑制剤及び癌遺伝子の両方として機能するように説明されている転写因子である。WT1は、白血病及び多様な固形腫瘍において高レベルで発現される(Sugiyama et al.(2010)Japanese Journal of Clinical Oncology 40(5)377-387)。これは、野生型T細胞受容体を有するT細胞を使用したワクチン開発、及び種々の養子T細胞アプローチの標的である。
WT1は、国立癌研究所による上位75個の癌抗原の先順位付けリストの第1位となっている(Cheever et al.(2009)Clin Cancer Res,15,5323-5337)。したがって、例えば、この癌抗原を特異的に標的とする治療剤などの薬剤を特定する必要が存在する。本発明は、例えば、インビボでの標的とされた送達のための可溶性形態で、または養子T細胞設定においてT細胞内へ導入される遺伝子として使用され得る、インビトロで改変された、より高い親和性のTCRを提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Murphy(2012),xix,868p.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、WT1抗原に対する野生型T細胞受容体、及び改善された親和性でWT1抗原に結合するインビトロで改変されたT細胞受容体(TCR)に関する。より具体的には、本開示は、野生型T細胞受容体の配列、ならびに酵母、ファージ、または哺乳動物細胞の表面上のライブラリのディスプレイを通じて選択されるそれらの安定化及び親和性突然変異と、改善された親和性で抗原に結合するためのこれらのライブラリから選択されるTCRタンパク質と、治療的、診断的、または撮像的用途のためのインビトロで選択されるTCR誘導体の使用と、に関する。
【0012】
本発明の一態様は、T細胞クローンに由来するVα及びVβを含むT細胞受容体、またはその抗原結合断片であって、ペプチドWT1及びHLA-A2分子の複合体に結合し、配列番号1に記載されるVβアミノ酸配列及び配列番号2に記載されるVαアミノ酸配列を含む、T細胞受容体に関する。一実施形態では、T細胞受容体を発現する宿主細胞。さらなる実施形態では、宿主細胞は、ヒトT細胞である。
【0013】
本発明の一態様は、野生型T細胞受容体に由来するVα及びVβを含む修飾されたT細胞受容体、またはその抗原結合断片であって、該Vα、Vβ、またはその両方は、野生型T細胞受容体に関して1つ以上の相補性決定領域(CDR)内に突然変異を含み、該修飾されたT細胞受容体は、WT1/HLA-A2として知られるペプチド/MHC抗原(WT1ペプチドRMFPNAPYL(配列番号6)、HLA-A2として知られるMHC生成物に結合される)に結合する、修飾されたT細胞受容体に関する。
【0014】
一実施形態では、T細胞受容体は、配列番号1に記載されるVβアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVβを含み、該T細胞受容体は、WT1/HLA-A2に結合することによって活性を媒介する。
【0015】
別の実施形態では、修飾されたT細胞受容体は、配列番号3に記載されるVβアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む修飾されたVβを含み、該修飾されたT細胞受容体は、10M高い親和性(K値)でWT1/HLA-A2に結合する。
【0016】
別の実施形態では、T細胞受容体は、配列番号2に記載されるVαアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVαを含み、該T細胞受容体は、WT1/HLA-A2に結合することによって活性を媒介する。
【0017】
別の実施形態では、修飾されたT細胞受容体は、配列番号4に記載されるVαアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む修飾されたVαを含み、該修飾されたT細胞受容体は、10M高い親和性(K値)でWT1/HLA-A2に結合する。
【0018】
一実施形態では、T細胞受容体は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む1本鎖T細胞受容体である。
【0019】
一実施形態では、T細胞受容体は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列のS95T、S97N、I103Y、N104Lから選択されるCDR3β内の突然変異のうちの少なくとも1つを含有する。
【0020】
別の実施形態では、T細胞受容体は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列のV29D、S30L、及びQ31Gから選択されるCDR1α内の突然変異のうちの少なくとも1つを含有する。
【0021】
一実施形態では、修飾されたT細胞受容体は、突然変異T細胞受容体の酵母ディスプレイライブラリのインビトロ選択によって発生される。
【0022】
別の実施形態では、修飾されたT細胞受容体は、その標的抗原に結合する可溶性タンパク質として発現される。
【0023】
別の実施形態では、野生型または修飾されたT細胞受容体は、養子T細胞療法のためにT細胞内で発現される。
【0024】
本発明の一態様は、WT1抗原を発現する癌細胞を標的とする治療剤であって、本明細書に説明される修飾されたT細胞受容体を含む、治療剤を提供する。一実施形態では、WT1抗原を発現する癌細胞を標的とする治療剤であって、本明細書に説明される修飾されたT細胞受容体を発現するヒトT細胞を含む、治療剤。一実施形態は、本明細書に説明される治療剤を投与することを含む、WT1抗原を発現する癌を有する対象を治療する方法を提供する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
T細胞クローンに由来するVα及びVβを含むT細胞受容体、またはその抗原結合断片であって、前記T細胞受容体は、ペプチドWT1及びHLA-A2分子の複合体に結合し、前記T細胞受容体は、配列番号1に記載されるVβアミノ酸配列及び配列番号2に記載されるVαアミノ酸配列を含む、前記T細胞受容体。
(項目2)
項目1に記載の前記T細胞受容体を発現する、宿主細胞。
(項目3)
前記細胞は、ヒトT細胞である、項目2に記載の前記宿主細胞。
(項目4)
野生型T細胞受容体に由来するVα及びVβを含む修飾されたT細胞受容体、またはその抗原結合断片であって、前記Vαまたは前記Vβ、またはその両方は、前記野生型T細胞受容体に関して1つ以上の相補性決定領域(CDR)内に突然変異を含み、前記修飾されたT細胞受容体は、ペプチドWT1及びHLA-A2分子の複合体に前記野生型T細胞受容体よりも高い親和性で結合する、前記修飾されたT細胞受容体。
(項目5)
前記修飾されたT細胞受容体は、配列番号3に記載されるVβアミノ酸配列及び配列番号4に記載されるVαアミノ酸配列を含む、項目4に記載の前記修飾されたT細胞受容体。
(項目6)
前記修飾されたT細胞受容体は、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を有する1本鎖T細胞受容体を含む、項目4に記載の前記修飾されたT細胞受容体。
(項目7)
配列番号4に記載される前記Vαアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む修飾されたVα、及び配列番号3に記載される前記Vβアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む修飾されたVβを含む、項目4に記載の前記修飾されたT細胞受容体。
(項目8)
前記修飾されたT細胞受容体は、CDR1α29、CDR1α30、CDR1α31、CDR3β95、CDR3β97、CDR3β103、及びCDR3β104のうちの1つ以上におけるアミノ酸置換を含む、項目4に記載の前記修飾されたT細胞受容体。
(項目9)
前記修飾されたT細胞受容体は、以下のアミノ酸突然変異:TCR Vβ鎖突然変異S95T、S97N、I103Y、及びN104L、ならびにTCR Vα鎖突然変異V29D、S30L、及びQ31G、のうちの1つ以上を含む、項目4に記載の前記修飾されたT細胞受容体。
(項目10)
前記ペプチドWT1及び前記HLA-A2分子の複合体にナノモルまたはより高い親和性で結合する項目4に記載の修飾されたT細胞受容体であって、前記修飾されたT細胞受容体は、10-6M以下のK値で前記複合体に結合する、項目4に記載の前記修飾されたT細胞受容体。
(項目11)
可溶性形態である、項目4に記載の修飾されたT細胞受容体。
(項目12)
前記WT1抗原を発現する癌細胞を標的とする治療剤であって、項目10に記載の前記修飾されたT細胞受容体を含む、前記治療剤。
(項目13)
前記WT1抗原を発現する癌細胞を標的とする治療剤であって、項目4に記載の前記修飾されたT細胞受容体を発現するヒトT細胞を含む、前記治療剤。
(項目14)
項目12に記載の前記治療剤を投与することを含む、前記WT1抗原を発現する癌を有する対象を治療する方法。
(項目15)
項目13に記載の前記治療剤を投与することを含む、前記WT1抗原を発現する癌を有する対象を治療する方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本研究からの種々のWT1/HLA-A2特異性T細胞受容体の整列されたアミノ酸配列を示す。WT1 P22は、WT1/HLA-A2によって刺激されたヒトT細胞クローンから単離された野生型配列を表す。他のTCR配列は、より大きい表面レベル及びより高い親和性に関する酵母ディスプレイ法によって単離された。長方形でハイライトされたCDR3β及びCDR1α内のアミノ酸残基は、酵母ディスプレイによってより高い親和性に関して単離されたTCR内の突然変異である。Vβ鎖に関して示される配列は、上から下へ配列番号1、21、21、3、及び3に対応する。描写されるリンカー配列は、配列番号8である。Vα鎖に関して示される配列は、上から下へ配列番号2、22、4、2、及び4に対応する。
図2図2AはTCR:pepMHC複合体(A6;PDB:1AO7)の側面図を示す3次元図である。α鎖及びβ鎖の可変(V)及び定常(C)領域が示される。示される構造は、TCRのCα領域を含まない。HLA-A2(α1、α2、α3、及びβ2m)は灰色で示され、Taxペプチド(LLFGYPVYV、配列番号7)は黒色で示される。本発明で実験するA6 TCR及びWT1 TCRはすべて、Vα2セグメント(IMGT命名法に基づいてTRAV12とも称される)を使用する。 図2Bはペプチド-MHC(Tax/HLA-A2)上のTCR(CDR)フットプリントの上視図を示す3次元図である。本開示で使用されるWT1 TCRに関して結晶構造は説明されてはいないが、α2 MHCらせん及びペプチドのN末端上に位置付けられたVα領域と、α1 MHCらせん及びペプチドのC末端上に位置付けられたVβ領域とを有するこの斜結合配向は、現在すべての複合体内に観察されている。
図3】ペプチド:HLA.A2に対する改善された親和性のために1本鎖TCRを改変するための方法を示す図である。高親和性TCRを改変するために使用される一般的なプロセスが示される。
図4】1本鎖T細胞受容体断片(Vα-リンカーVβまたはVβ-リンカー-Vα)を改変するための酵母ディスプレイシステムの概略図である。
図5】Vβ3上の立体構造エピトープを認識する2つの抗体によるソート後のWT1 1本鎖TCR変異性ライブラリのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。WT1変異性ライブラリは、Therma hVb3.1 FITC IgG及びBC hVb3.2 FITC IgM抗体、AlexaFluor 647ヤギ抗マウスIgG及びヤギ抗マウスIgM APCの両方の1:10の希釈物を用いて、合計3回のソートで連続的にソートされた。次に、各ソート後に酵母細胞のアリコートは、Therma hVb3.1 FITC IgG、AlexaFluor 647ヤギ抗マウスIgGの1:10希釈物と共に定温放置された。灰色は、二次抗体のみで染色された酵母細胞を示す(図5A)。3回目のソート後に単離された安定したクローンWT1 D13は、Therma hVb3.1 FITC IgG、AlexaFluor 647ヤギ抗マウスIgGの1:10希釈物で染色される(図5B)。
図6】WT1:HLA.A2によるソート後のWT1 1本鎖TCR D13 CDR1αライブラリのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。WT1 D13 CDR1αライブラリは、100~200nMのWT1:HLA-A2ダイマー(DimerX、BD Pharmingenから入手)、APC-結合ヤギ抗マウス二次抗体を用いて合計5回のソートで連続的にソートされた。次に、各ソート後の酵母細胞のアリコートを、100nMのWT1:HLA-A2ダイマー(DimerX、BD Pharmingenから入手)と共に、続いてAPC-結合ヤギ抗マウス二次抗体と共に定温放置した。灰色は、二次抗体のみで染色された酵母細胞を示す(図6A)。5回目のソート後に単離されたクローンWT1 D13.1は、100nMのWT1:HLA-A2ダイマー(DimerX、BD Pharmingenから入手)で、続いてAPC-結合ヤギ抗マウス二次抗体で染色される(図6B)。
図7】WT1:HLA.A2によるソート後のCDR3ライブラリと組み合わされたWT1 1本鎖TCR D13.1のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。CDR3ライブラリと組み合わされたWT1 D13.1は、10~100nMのWT1:HLA-A2ダイマー(DimerX、BD Pharmingenから入手)、APC-結合ヤギ抗マウス二次抗体を用いて合計3回のソートで連続的にソートされた。次に、各ソート後の酵母細胞のアリコートを、100nMのWT1:HLA-A2ダイマー(DimerX、BD Pharmingenから入手)と共に、続いてAPC-結合ヤギ抗マウス二次抗体と共に定温放置した。灰色は、二次抗体のみで染色された酵母細胞を示す(図7A)。3回目のソート後に単離された改善された結合クローンWT1 D13.1.1は、100nMのWT1:HLA-A2ダイマー(DimerX、BD Pharmingenから入手)、続いてAPC-結合ヤギ抗マウス二次抗体で染色される(図7B)。
図8-1】WT1:HLA-A2ダイマー及びモノマーに関する高親和性TCR、WT1 D13.1.1の結合特性を示す。図8Aは、種々の濃度のWT1:HLA-A2 Igダイマー、続いて二次として蛍光標識抗Ig抗体で染色された高親和性scTCR WT1 D13.1.1のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。図8Bは、種々の濃度のビオチン化WT1:HLA-A2モノマー、続いて二次的にSA-PE(1:100)で染色された高親和性scTCR WT1 D13.1.1のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。図8Cは、WT1:HLA-A2ダイマー濃度に対してプロットされた、図7Aのヒストグラムの平均蛍光強度(MFI)値を示す折れ線グラフである。図8Dは、WT1:HLA-A2モノマー濃度に対してプロットされた、図8Bのヒストグラムの平均蛍光強度(MFI)値を示す折れ線グラフである。
図8-2】WT1:HLA-A2ダイマー及びモノマーに関する高親和性TCR、WT1 D13.1.1の結合特性を示す。図8Aは、種々の濃度のWT1:HLA-A2 Igダイマー、続いて二次として蛍光標識抗Ig抗体で染色された高親和性scTCR WT1 D13.1.1のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。図8Bは、種々の濃度のビオチン化WT1:HLA-A2モノマー、続いて二次的にSA-PE(1:100)で染色された高親和性scTCR WT1 D13.1.1のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。図8Cは、WT1:HLA-A2ダイマー濃度に対してプロットされた、図7Aのヒストグラムの平均蛍光強度(MFI)値を示す折れ線グラフである。図8Dは、WT1:HLA-A2モノマー濃度に対してプロットされた、図8Bのヒストグラムの平均蛍光強度(MFI)値を示す折れ線グラフである。
図9】大腸菌内で発現された可溶性高親和性TCR WT1 D13.1.1の結合を示す。図9A~Dは、初めに、ペプチドを伴わずに(図9A)、陰性対照ペプチドTaxと共に(図9B)、陰性対照ペプチドMART-1と共に(図9C)、またはペプチドWT1と共に(図9D)定温放置され、続いてビオチン標識WT1-D13.1.1TCRと共に定温放置された、ヒトT2(HLA-A2+)細胞のフローサイトメトリー分析を示す一連のヒストグラムである。図9Eは、WT1-D13.1.1TCRは、(この範囲内の親和性の過小評価におけるフローサイトメトリーの細胞洗浄として)少なくとも260nMの最小親和性(K値)を有したことを示す滴定を描写するグラフである。
図10】マウスT細胞における野生型P22、D13.1、D13.0.1、及びD13.1.1TCRの活性を示す。単離されたマウスCD8(図10A)及びCD4(図10B)T細胞は、P22、D13.1、D13.0.1、及びD13.1.1TCRを形質導入された(修飾されたTCRは、Vβ領域内のD13「安定化」突然変異:F48S及びD51Gを含有しなかった)。形質導入されたT細胞は、次にHLA-A2+APC及び種々の濃度のWT1ペプチドと共に定温放置された。24時間の定温放置後、標準ELISAを使用してIFN-γ濃度が測定された。
図11】CD8 T細胞内の高親和性TCR WT1 D13.1.1は、WT1構造的類似ヒトペプチドのパネルに対して活性を示さなかったことを示す。WT1構造的類似ペプチドは、WT1ペプチド(配列番号6)の9個の残基の各々において保存的突然変異を有するペプチドに関するヒトプロテオームの探索を通じて決定された。次に、最も高い親和性でHLA-A2に結合すると予測された10個のペプチドが合成された。ペプチド番号1~10は、それぞれ配列番号25~34に対応する。マウスCD8 T細胞は単離され、D13.1.1TCRを形質導入され(Vβ領域内のD13安定化突然変異、F48S及びD51Gを含有しなかった)、それぞれのペプチド及びHLA-A2+APCと共に24時間定温放置された。
図12】WT1-特異性TCRの例示的な治療的用途を例証する図である。図12Aは、可溶性治療用生成物としての使用のためのTCRフォーマットの5つの例を描写する:1)Vα-Vβ配向またはVβ-Vα配向のいずれかにおける1本鎖TCR(変異した高親和性Vドメインは、アスタリスクで示される)、2)抗体の定常領域ドメインにフレーム内で融合された1本鎖TCR、3)軽鎖または重鎖のいずれかの定常領域へのフレーム内免疫グロブリン融合体、4)薬物に直接結合された1本鎖TCR(または2及び3に示される免疫グロブリン融合体)、及び5)二重特異性薬剤を発生させるように1本鎖Fv(VL-リンカー-VH)にフレーム内で連結された1本鎖TCR。図12Bは、酵母ディスプレイによって単離された高親和性可変ドメイン(V)を使用する細胞に基づいた療法の2つの例を描写する(または、野生型TCR VドメインもヒトT細胞を用いた養子T細胞療法のために使用されてもよい)。TCRは、1)キメラ抗原受容体(CAR)内の1本鎖受容体、ならびに2)全長α及びβ TCRとして、養子T細胞療法においてT細胞による発現のために哺乳動物細胞ベクター中にクローン化される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、WT1/HLA-A2に結合するTCR(P22)の野生型Vβ領域のアミノ酸配列である。
【0027】
配列番号2は、WT1/HLA-A2に結合するTCR(P22)の野生型Vα領域のアミノ酸配列である。
【0028】
配列番号3は、WT1/HLA-A2に高い親和性で結合するTCR(D13.1.1)の修飾されたVβ領域のアミノ酸配列である。
【0029】
配列番号4は、WT1/HLA-A2に高い親和性で結合するTCR(D13.1.1)の修飾されたVα領域のアミノ酸配列である。
【0030】
配列番号5は、WT1/HLA-A2に高い親和性で結合する1本鎖TCR(WT1-D13.1.1)のアミノ酸配列である。
【0031】
配列番号6は、WT-1抗原のアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号7は、Tax抗原のアミノ酸配列である。
【0033】
配列番号8は、リンカーのアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号9は、プライマーSplice 4Lのポリヌクレオチド配列であるである。
【0035】
配列番号10は、WT1-D13 CDR1αライブラリPreSOE#1を発生させるために使用される逆方向プライマーのポリヌクレオチド配列であるである。
【0036】
配列番号11は、WT1-D13 CDR1αライブラリPreSOE#2を発生させるために使用される順方向プライマーのポリヌクレオチド配列であるである。
【0037】
配列番号12は、プライマーT7のポリヌクレオチド配列であるである。
【0038】
配列番号13は、WT1-D13.1CDR3 β1ライブラリのPreSOE#1を発生させるために使用される逆方向プライマーのポリヌクレオチド配列であるである。
【0039】
配列番号14は、WT1-D13.1CDR3 β1ライブラリのPreSOE#2を発生させるために使用される順方向プライマーのポリヌクレオチド配列であるである。
【0040】
配列番号15は、WT1-D13.1CDR3 β2ライブラリのPreSOE#1を発生させるために使用される逆方向プライマーのポリヌクレオチド配列である。
【0041】
配列番号16は、WT1-D13.1CDR3 β2ライブラリのPreSOE#2を発生させるために使用される順方向プライマーのポリヌクレオチド配列であるである。
【0042】
配列番号17は、WT1-D13.1CDR3α1 ライブラリのPreSOE#1を発生させるために使用される逆方向プライマーのポリヌクレオチド配列である。
【0043】
配列番号18は、WT1-D13.1CDR3α1 ライブラリのPreSOE#2を発生させるために使用される順方向プライマーのポリヌクレオチド配列であるである。
【0044】
配列番号19は、WT1-D13.1CDR3α2 ライブラリのPreSOE#1を発生させるために使用される逆方向プライマーのポリヌクレオチド配列であるである。
【0045】
配列番号20は、WT1-D13.1CDR3α2 ライブラリのPreSOE#2を発生させるために使用される順方向プライマーのポリヌクレオチド配列であるである。
【0046】
配列番号21は、WT1/HLA-A2に高い親和性で結合するTCR(D13)の修飾されたVβ領域のアミノ酸配列である。
【0047】
配列番号22は、WT1/HLA-A2に高い親和性で結合するTCR(D13)の修飾されたVα領域のアミノ酸配列である。
【0048】
配列番号23は、インフルエンザAペプチドのアミノ酸配列である。
【0049】
配列番号24は、変異型インフルエンザAペプチドのアミノ酸配列である。
【0050】
配列番号25~34は、10個のWT1変異型ペプチドのアミノ酸配列である。
【0051】
以下の説明は、本開示の理解を促進するように意図されるが、限定的であるようには意図されない。
【0052】
概して、本明細書で使用される用語及び語句は、それらの当該分野において認識される意味を有し、それらは当業者に既知である標準的な文章、参考論文、及び文脈を参照することによって見出すことができる。以下の定義は、本開示の文脈におけるそれらの特定の使用を明確にするために提供される。
【0053】
本明細書で使用するとき、「連結された」は、2つの基の間の会合を指し、それは共有または非共有結合性会合であり得る。基は、可変長さペプチド構造的鎖、非アミノ酸化学基、または当該技術分野において既知である他の手段を使用して連結されてもよい。リンカー領域は、タンパク質またはペプチドの2つの機能的または構造的ドメインを作動可能に連結するアミノ酸配列であり得る。
【0054】
本明細書で使用するとき、用語「化学療法剤」は、癌細胞、癌細胞集団、腫瘍、または他の悪性組織の増殖(growth)、増殖(proliferation)、または広がりを低減または予防することができる任意の物質を指す。この用語はまた、任意の抗腫瘍または抗癌剤を包含するようにも意図される。
【0055】
本明細書で使用するとき、用語「有効量」は、薬学的有効量または治療的有効量などの文脈を包含するように意図される。例えば、特定の実施形態では、有効量は、有益な状態、有益な結果、スクリーニング分析における機能的活性、または臨床症状の改善を達成することができる。
【0056】
本明細書で使用するとき、用語「癌細胞」は、当該技術分野において広範に理解される定義を包含するように意図される。一実施形態では、この用語は、ヒトまたは動物における癌の臨床症状の一因となり得る異常に調節された細胞を指す。一実施形態では、この用語は、ヒトまたは動物の身体内の、またはそれらに由来する培養された細胞株または細胞を指し得る。癌細胞は、当該技術分野において理解される通り、多様な分化した細胞、組織、または臓器種類のものであり得る。癌細胞の具体的な例としては、乳癌、結腸癌、皮膚癌、卵巣癌、白血病、肺癌、肝臓癌、精巣癌、食道癌、及び他の種類の癌が挙げられる。
【0057】
本明細書で使用するとき、「治療する」または「治療」は、好ましくは臨床結果を含む、有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療は、疾患もしくは状態の症状の改善か、または疾患もしくは状態の進行の遅延を指し得る。
【0058】
本明細書で使用するとき、「予防」または「予防する」は、疾患または状態の発症または再発の可能性を予防、阻害、または低減するためのアプローチを指す。これはまた、疾患または状態の症状の、発生、または再発の可能性の予防、阻害、または低減も指し、また疾患または状態の発症または再発前の疾患または状態の強度、影響、症状、及び/または負担を低減することも含む。
【0059】
本明細書で使用するとき、「細胞増殖(cell growth)を阻害する」または「細胞の増殖(proliferation of cells)を阻害する」は、細胞の増殖率の低減または停止を指す。例えば、腫瘍細胞の増殖を阻害することによって、腫瘍の大きさの増加速度は低下され得る。他の実施形態では、腫瘍は、同じ大きさに留まるか、または大きさが減少、即ち、退行し得る。具体的な実施形態では、細胞増殖(cell growth)または細胞の増殖(proliferation of cells)の速度は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%阻害される。
【0060】
用語「野生型」及び「wt」は、本明細書において互換的に使用され、抗原に対する特異性を有する、自然に発生する、または修飾されていないTCR、例えば、起源または親T細胞クローンから単離された可変領域をコードするアミノ酸配列またはポリヌクレオチドを有するTCRに関して使用される。
【0061】
アミノ酸配列を提示する図及び表内では、野生型は、「wt」と指定される場合もある。下記に提示される配列内の一番上の配列では、ダッシュ記号は、アミノ酸が整列のwtまたは一番上の配列に存在するものと同一であることを示す。文字は、一番上の配列からその位置に置換がなされていることを示す。
【0062】
本明細書で使用するとき、用語「修飾された」、「変異型」、「突然変異体」、「変異した」、及び「由来する」T細胞受容体は、起源または野生型T細胞クローンと比較して1つ以上の突然変異を有する可変領域のTCR配列を指す。修飾されたTCRの例としては、より高い親和性のTCRが挙げられる。
【0063】
コード配列は、タンパク質のアミノ酸配列、またはtRNAもしくはrRNAなどの機能的RNAをコードする遺伝子またはcDNAの一部である。
【0064】
相補または相補的配列は、Watson-Crick塩基対規則に従ってクレオチドの別の配列と水素結合2本鎖を形成するヌクレオチドの配列を意味する。
【0065】
下流は、DNAまたはRNA内の相対位置を指し、鎖の3’末端に向かう領域である。
【0066】
発現は、構造的RNA(rRNA、tRNA)またはメッセンジャーRNA(mRNA)への遺伝子の転写、及びタンパク質へのmRNAのその後の翻訳を指す。
【0067】
2つの核酸配列は、配列が別々の有機体に由来する場合、かかる有機体が異なる種であるか否かにかかわらず、配列が同一の有機体において同一の配置に一緒に自然に発生しない限り互いに異種である。
【0068】
相同性は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性の範囲を指す。
【0069】
具体的に例示されるTCR配列に機能的に等価であるアミノ酸配列は、単一または複数のアミノ酸置換によって、アミノ酸の付加及び/もしくは欠失によって修飾されているか、または1つ以上のアミノ酸が化学的に修飾されているが、それにもかかわらず本開示の細胞結合もしくは可溶性TCRタンパク質の結合特異性及び高親和性結合活性を保持するアミノ酸配列である。機能に等価であるヌクレオチド配列は、具体的に例示される細胞結合または可溶性TCRタンパク質と実質的に同一の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列である。本開示の文脈において、可溶性TCRタンパク質は、天然細胞結合TCRの部分を欠損し、溶液中で安定している(即ち、概して、タンパク質溶液の標準的な条件下で本明細書に説明されるように取り扱われるときに溶液中で凝集しない)。
【0070】
用語「単離された」は、人工的に自然の状態から変更された組成物、化合物、物質、または分子を指す。例えば、自然に発生する組成物または物質は、その元の環境から変化もしくは除去されているか、またはその両方である場合、単離されている。例えば、生体動物中に自然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、本明細書でこの用語が用いられる通り、その自然の状態の共存材料から分離された同一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されている。
【0071】
核酸構築物は、自然に発生する遺伝子から単離されるか、またはさもなくば自然には存在しないであろう様式で組み合わせられるかもしくは並置される核酸のセグメントを含有するように修飾されている核酸分子である。
【0072】
核酸分子は、3’-5’-リン酸ジエステル結合によって連結されるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれかを含有する1本または2本鎖の線状ポリヌクレオチドを意味する。
【0073】
2つのDNA配列は、結合の性質が互いに対して正常な機能に影響を及ぼす配列の能力に干渉しない場合、作動可能に連結される。例えば、プロモーター領域は、プロモーターがコード配列の転写を達成することができる場合、コード配列に作動可能に連結されるであろう。
【0074】
ポリペプチドは、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸の線状ポリマーである。
【0075】
用語「プロモーター」は、概して80~120塩基対長であり、RNAポリメラーゼが結合し、正しい転写を開始し得る遺伝子の開始部位の上流に位置する、シス作用DNA配列を指す。転写のオン/オフ調節を提供する、及び/または下流コード配列の発現を強化する(増加させる)関連する追加的な転写調節配列が存在し得る。
【0076】
組み換え核酸分子、例えば、組み換えDNA分子は、2つ以上の非同種DNA分子のライゲーションを通じてインビトロで形成される新規の核酸配列(例えば、少なくとも1つのクローン化部位内にクローン化された外来DNAの1つ以上の挿入を含有する組み換えプラスミド)である。
【0077】
用語「形質転換」及び「遺伝子導入」は、異なる遺伝子型の別の細胞に由来する精製された組み換えDNAの外的適用による、その摂取及び対象細胞のゲノム中への統合をもたらす細胞のゲノムの指向修飾を指す。細菌においては、組み換えDNAは、典型的には細菌染色体中に統合されないが、その代わりにプラスミドとして自律的に複製される。用語「形質転換された」及び「遺伝子導入された」は、本明細書において互換的に使用される。例えば、T細胞は、養子T細胞処理の前に本明細書に説明される修飾されたまたは高親和性のTCRをコードするDNA配列を遺伝子導入され得る。
【0078】
上流は、DNAまたはRNA内の任意の部位の5’側を意味する。
【0079】
ベクターは、宿主細胞中で自律的に複製することができ、外来DNAを受け入れることができる核酸分子である。ベクターは、それ自身の複製の起源と、外来DNAの挿入のために使用され得る制限エンドヌクレアーゼのための1つ以上の固有の認識部位と、通常、例えば、抗生物質抵抗性をコードする遺伝子、及び多くの場合は挿入されたDNAの発現のための認識配列(例えば、プロモーター)などの選択可能なマーカーとを運ぶ。一般的なベクターとしては、プラスミドベクター及びファージベクターが挙げられる。
【0080】
高親和性T細胞受容体(TCR)は、野生型TCRよりも標的リガンドへの強い結合を有する改変されたTCRである。高親和性のいくつかの例としては、約10-6M~10-12Mの間、ならびにその中のすべての個々の値及び範囲の標的リガンドの平衡結合定数が挙げられる。この範囲は、野生型親和性であるように報告されるもの(10-4~10-6M)と指向性進化によって単離されているもの(約10-12M)との間の親和性を包含する。
【0081】
サイトカインは、他の細胞に影響を及ぼす細胞によって作られるタンパク質、ペプチド、または糖タンパク質である。
【0082】
哺乳類は、ヒト及び非ヒト哺乳類の両方を含む。
【0083】
遺伝子コードの縮退のため、多数の機能的に等価なヌクレオチド配列が同一のアミノ酸配列をコードすることは、当業者によって理解されるであろう。
T細胞受容体
【0084】
T細胞受容体(TCR)は、T細胞の表面上で対をなしてヘテロダイマー受容体を形成する2つの鎖(αβまたはγδ)からなる。αβ TCRは、体内のほとんどのT細胞上で発現され、MHC制限性抗原の認識に関与することが知られている。αβ TCRの分子遺伝学、構造、及び生化学は、現在十分に研究されている。各α及びβ鎖は、以下の2つのドメインからなる:タンパク質を細胞膜内に留め、CD3シグナル伝達装置の不変サブユニットに関連する定常ドメイン(C)、及び相補性決定領域(CDR)と呼ばれる6つのループを通じて抗原認識を付与する可変ドメイン(V)。Vドメインの各々は、3つのCDRを有する。これらのCDRは、主要組織適合性複合体によってコードされたタンパク質に結合した抗原ペプチド(pepMHC)間で複合体と相互作用する(Davis and Bjorkman(1988)Nature,334,395-402、Davis et al.(1998)Annu Rev Immunol,16,523-544、Murphy(2012),xix,868p.)。
【0085】
TCRの分子遺伝学は、組み合わさってVドメインのコード領域を形成する複数の遺伝子間での遺伝子組み換えのプロセスを明らかにしている。このプロセスは、重及び軽鎖遺伝子がB細胞由来抗体によって示される極めて大きい多様性を発生させるように再配置する抗体発達に類似している(Tonegawa(1988)In Vitro Cell Dev Biol,24,253-65)。T細胞の場合、α鎖Vドメインは、(ヒトでは約75個のうちの)1つのV領域の(ヒトでは約61個のうちの)1つのジョイニング(J)遺伝子セグメントへの再配置によって形成される(図5.8、Janeway,8th edition)。β鎖Vドメインは、(ヒトでは約52個のうちの)1つのV領域の、(ヒトでは2つのうちの)1つの多様性(D)遺伝子、(ヒトでは13個のうちの)1つのジョイニング(J)遺伝子セグメントへの再配置によって形成される(図5.8、(Murphy(2012),xix,868p.))。VαJα及びVβDβJβ遺伝子の再配置の接合は、各鎖のCDR3ループをコードし、それらは、1015を超える異なるTCRの理論的限界を伴ってαβ TCRの極めて大きい多様性(Davis and Bjorkman(1988)Nature,334,395-402)に寄与し、また合計で約1011個のT細胞しか存在しないためヒトにおける達成可能な多様性を優に上回る(Mason(1998)Immunol Today,19,395-404)。これらのループはV遺伝子内部でコードされ、TCRはインビボで体細胞突然変異を受けないため、各鎖の可能なCDR1及びCDR2多様性はV遺伝子の数によって表される。CDR1及びCDR2ループの多様性はCDR3ループと比較して相対的に限定されているが、ペプチド抗原及び/またはMHC生成物に基づく特定のV領域の選択が存在していることが示されるいくつかの例が存在している。
【0086】
クラスI MHC生成物は、8~10のアミノ酸長のペプチドに結合し、それらは体内のすべての有核細胞上で発現される((Rock and Goldberg(1999)Annu Rev Immunol,17,739-79)によって概観される)。抗体抗原間相互作用のすべての結合エネルギーは外来抗原に集中されるのに対して、TCR-ペプチド:MHCの結合エネルギーの大部分は、自己MHC分子に指向される(Manning and Kranz(1999)Immunology Today,20,417-422)。実際、より最近の研究は、CDR1及び/またはCDR2ループの特定の残基は、MHCらせん上の特定の残基と相互作用し、それによってMHC制限性のプロセスの主要因であるMHCのための基礎的な親和性を提供するように進化してきたことを示唆している(Garcia et al.(2009)Nat Immunol,10,143-7、Marrack et al.(2008)Annu Rev Immunol,26,171-203)。
【0087】
1)CD4ヘルパーT細胞(CD8補助受容体を欠損する)の活性を駆動するため、または2)「エフェクター」分子(例えば、二重特異性タンパク質を形成するための抗体Fc領域、毒性薬物、または抗CD3抗体などの抗体scFv)を付着させることによって、細胞の直接的標的のために使用され得る可溶性TCRを発達させるために、正常範囲を超えるペプチド-MHC抗原(クラスI)に対する親和性を有するTCR(所謂、より高い親和性のTCR)の使用に関心が寄せられてきた((Ashfield and Jakobsen(2006)IDrugs,9,554-9、Foote and Eisen(2000)Proc Natl Acad Sci USA,97,10679-81、Holler et al.(2000)Proc Natl Acad Sci U S A,97,5387-92、Molloy et al.(2005)Curr Opin Pharmacol,5,438-43、Richman and Kranz(2007)Biomol Eng,24,361-73)。このアプローチはまた、T細胞が(一部には耐性胸腺及び末梢プロセスにより)潜在的な腫瘍抗原に対する適切な特異性及び結合親和性を有するTCRを発現しないという、一部の癌患者が直面する問題を克服することができた。例えば、300を超えるMHC制限性のT細胞によって規定される腫瘍抗原が特定されている(cancerimmunity.org/peptide/)(Boon and Old(1997)Curr Opin Immunol,9,681-3;Cheever et al.(2009)Clin Cancer Res,15,5323-37)。これらの腫瘍抗原としては、変異したペプチド、分化抗原、及び過剰に発現された抗原が挙げられ、これらのすべては療法の標的として機能することができたであろう。何故なら、目下説明されている癌抗原の大部分は、MHC分子の文脈にて細胞表面においてのみ標的とされ得る細胞内タンパク質に由来したためである。TCRは、この種類の抗原を認識するように進化しているため、治療薬の理想的な候補を作製する。
【0088】
同様に、TCRは、感染細胞中で自然に処理され、細胞表面上にMHC分子によってディスプレイされているウイルスタンパク質に由来するペプチドを検出し得る。HIV及びHTLV中のウイルスゲノムに由来するペプチドを含む、多数のウイルス抗原標的が過去25年間で特定されている(例えば、Addo et al.(2007)PLoS ONE,2,e321、Tsomides et al.(1994)J Exp Med,180,1283-93、Utz et al.(1996)J Virol,70,843-51)。しかしながら、これらの疾患を有する患者は、感染細胞の結合及び破壊のための最適なTCRを欠損する場合がある。最後に、TCRが、高度に特異的であるプロセスにおいて自己免疫標的の受容体拮抗薬として、または局所免疫細胞応答を免疫抑制するための送達剤として使用され得、それによって、一般的な免疫抑制を回避した可能性がある(Molloy et al.(2005)Curr Opin Pharmacol,5,438-43、Stone et al.(2012)Protein Engineering))。
修飾されたT細胞受容体
【0089】
指向性進化は、特異性pepMHCに関するより高い親和性を有するTCRを発生させるために使用されている。使用されてきた3つの異なるディスプレイ方法は、酵母ディスプレイ(Holler et al.(2003)Nat Immunol,4,55-62;Holler et al.(2000)Proc Natl Acad Sci U S A,97,5387-92)、ファージディスプレイ(Li et al.(2005)Nat Biotechnol,23,349-54)、及びT細胞ディスプレイ(Chervin et al.(2008)J Immunol Methods,339,175-84)である。3つのすべてのアプローチにおいて、プロセスは、野生型TCRの正常な低親和性を示すTCRの改変に関与し、その結果、TCRの突然変異体は、特異性pepMHCに対して(即ち、T細胞が特異的であった元の抗原に対して)改善された親和性を有した。したがって、野生型TCRは、CDRのうちの1つ以上における突然変異ライブラリを生成するためのテンプレートとして使用され、続いて、同族ペプチド-MHC抗原への結合によって、より高い親和性を有する突然変異体が選択された。かかるインビトロでの指向性進化は、野生型親和性の単に数倍のみではなくそれを超える親和性を改変するために必要であることは、当該技術分野において周知である。
【0090】
酵母ディスプレイは、関心のタンパク質がAga2-融合体として表面上に発現されることを可能にする(Boder and Wittrup(1997)Nat.Biotech.,15,553-557、Boder and Wittrup(2000)Methods Enzymol,328,430-44)。このシステムは、より高い親和性のTCR、1本鎖抗体、フィブロネクチン、及び他のタンパク質の改変において成功裏に使用されている。酵母ディスプレイシステムでは、TCRは、Vβ-リンカー-VαもしくはVα-リンカー-Vβ形態の安定化1本鎖タンパク質として(Aggen et
al.(2011)Protein Engineering,Design,&Selection,24,361-72、Holler et al.(2000)Proc Natl Acad Sci U S A,97,5387-92、Kieke et al.(1999)Proc Natl Acad Sci U S A,96,5651-6、Richman et al.(2009)Mol Immunol,46,902-16、Weber et al.(2005)Proc Natl Acad Sci U S A,102,19033-8)、または2本鎖ヘテロダイマーとして(Aggen et al.(2011)Protein Engineering,Design,&Selection,24,361-72、Richman et al.(2009)Mol Immunol,46,902-16)ディスプレイされている。2つのマウスTCRが、このシステムを使用してより高い親和性に関して改変されている:2C(MHCクラスI制限性)及び3.L2(MHCクラスII制限性)(Holler et al.(2000)Proc Natl Acad Sci U S A,97,5387-92、Weber et al.(2005)Proc Natl Acad Sci U S A,102,19033-8)。ヒトTCR1本鎖VαVβ断片(scTvまたはscTCRと呼ばれる)もまた、Vα2と呼ばれ、IMGT命名法によりTCRA12としても既知であるヒトVα領域の例外的な安定性を利用することによって、近年発達されている(Aggen et al.(2011)Protein Engineering,Design,&Selection,24,361-72)。この場合、インビトロで改変された1本鎖フォーマットの高親和性T細胞受容体は、安定したタンパク質として酵母表面上に、かつ可溶性形態で大腸菌から発現され得るヒト安定化scTv断片(Vβ-リンカー-Vα)を単離するために使用された。TCRは、ヒトT細胞リンパ球指向性ウイルスTaxタンパク質に由来するペプチドに対して特異的なA6 scTvと、ヒト免疫不全ウイルスGagタンパク質に由来するペプチド(ペプチド:SL977-85)に対して特異的な868scTvとの2つの安定化ヒトscTv断片を含んだ。これらのTCRのどちらも、Vα2遺伝子(IMGT:TRAV12ファミリー)を使用したが、TCRが単離された起源T細胞クローンに由来するCDR3α、CDR1β、CDR2β、及びCDR3β残基を有した。したがって、これらのscTCRのより高い親和性の突然変異体は、それらの同族ペプチド-MHC抗原に対してそれらの起源(親)TCRに各々由来した。
【0091】
第2のシステム、ファージディスプレイでは、関心のタンパク質は、ウイルスコートタンパク質のN末端に融合される(Scott and Smith(1990)Science,249,386-90)。A6、868、及び1G4(MHCクラスI制限性)と呼ばれるものを含む種々のTCRが、この方法を使用してより高い親和性に関して改変されている(Li et al.(2005)Nat Biotechnol,23,349-54、Sami et al.(2007)Protein Eng Des Sel,20,397-403、Varela-Rohena et al.(2008)Nat Med,14,1390-5)。これらのTCRのファージディスプレイは、α及びβ鎖の対作成を促進するために、2つのCドメイン間に非天然ジスルフィド結合を導入することによって可能になった。したがって、このシステムは、それらの同族ペプチド-MHCに対して改変するために起源T細胞クローンに由来する全長(VαCα/VβCβ)ヘテロダイマータンパク質を使用する。
【0092】
TCRを改変するために報告されている第3のシステムは、哺乳動物細胞ディスプレイである(Chervin et al.(2008)J Immunol Methods,339,175-84、Kessels et al.(2000)Proc Natl Acad Sci U S A,97,14578-83)。このシステムは、レトロウイルスベクターを使用して、TCRα及びβ鎖をTCR陰性T細胞ハイブリドーマ内へ導入する。ある研究では(Kessels et al.(2000)Proc Natl Acad Sci U S A,97,14578-83)、選択された突然変異TCRは、同族ペプチド(ASNENMDAM対ASNENMETM、それぞれ配列番号23及び24)に構造的に極めて類似したペプチドに結合することが示された。他の研究では、突然変異TCRの親和性は、同族pepMHCに関して増加されることが示された(Chervin et al.(2008)J Immunol Methods,339,175-84)。かかるより高い親和性のTCRはまた、同族ペプチドの構造的に類似の変異型に対してより高い親和性を示すことも多くの研究で示されている(例えば、(Holler et al.(2003)Nat Immunol,4,55-62))。哺乳動物細胞ディスプレイシステムでは、導入されたTCRは、CD3サブユニットとの複合体においてその天然立体構造の表面上に発現され、完全に機能的なT細胞(シグナル伝達免疫適格)を可能にした。したがって、それらの天然宿主中の全長ヘテロダイマーTCRは、この方法を使用して改変された。
WT1/HLA-A2に結合する高親和性TCR
【0093】
本発明は、野生型TCR及び周知の癌抗原WT1/HLA-A2に対する種々の高親和性TCRを提供する。特定の実施形態では、改変されたTCRは、インビボでの標的とされた送達のための可溶性形態で、または養子移入方法もしくは治療においてT細胞によって組み換え発現されて使用され得る。具体的な実施形態では、TCRの1本鎖VαVβ形態(scTCR)骨格は、エフェクター分子をTCRが結合する場所(例えば、腫瘍)へ送達するために、サイトカイン、毒素、放射性同位体、化学療法剤、または(抗体-薬物結合体に類似した)薬物などのペイロードと共に調製及び使用され得る。TCRはまた、WT1を発現する癌細胞に対する応答を媒介するために、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及び/またはナチュラルキラー(NK)細胞の養子移入などの細胞療法においても使用され得る。本明細書に提供されるscTCR骨格はまた、例えば、放射性同位体または蛍光部分などの検出可能な基への共有結合によって、例えば、TCRのアミン反応性またはスルフヒドリル反応性アミノ酸側鎖を通じて、腫瘍性またはウイルス会合細胞表面抗原の特定を通じて、例えば、悪性またはウイルス感染細胞の診断のためにも使用され得る。
【0094】
一実施形態では、本明細書に説明されるscTCRタンパク質は、酵母、ファージ、または哺乳動物細胞の表面上にディスプレイ可能であり、WT1抗原へのさらにより高い親和性を有するTCRを改変するために使用され得る。一実施形態では、本明細書に説明されるscTCRタンパク質は、原核細胞、例えば、大腸菌、黒色アスペルギルス、アスペルギルス・フィクウム(Aspergillus ficuum)、アワモリコウジカビ、ニホンコウジカビ、トリコデルマ・リーゼイ、ムコール・ミエヘイ、クルイベロミセス・ラクチス、ピチア・パストリス、サッカロマイセス・セレビシエ、バチルス・スブチリスもしくはバチルス・リケニフォルミスなど、昆虫細胞(例えば、キイロショウジョウバエ)、チャイニーズハムスター卵巣細胞株(CHO)などの細胞株を含む哺乳動物細胞、または例えば、植物種(例えば、キャノーラ、ダイズ、トウモロコシ、ジャガイモ、オオムギ、ライムギ、コムギ)、または他の当該技術分野において既知であるタンパク質発現源中で発現され、大量に生成され得る。TCRはまた、例えば、単なる例ではあるが、細胞の表面上の特異性ペプチド/MHCを検出するためにも使用され得る。一実施形態では、開示されるscTCR遺伝子は、DNA構築物中にコードされる好適なペプチド配列の使用によってシグナル伝達ドメインのための遺伝子に連結され、標的とされる細胞を取り除き得るT細胞内へ導入され得る。これらの構築物は、キメラ抗原受容体(CAR)と呼ばれており、scTCRを含有するCARの使用を含む、当該分野において現在広く使用される。
【0095】
提供される1本鎖VαVβ TCRタンパク質において、可変α及び可変β鎖は、抗体1本鎖Fv結合などの当該技術分野において既知であるものを含む、任意の好適なペプチドリンカーを使用して接続される(Bird et al.(1988)Science,242,423-426、Holliger et al.(1993)Proc Natl Acad Sci U S A,90,6444-8、Hoogenboom(2005)Nat Biotechnol,23,1105-16、Turner et al.(1997)J Immunol Methods,205,43-54)。一実施形態では、Vα-L-VβまたはVβ-L-Vαの構造を有する可溶性ヒト1本鎖TCRであって、Lは、VβをVαと連結するリンカーペプチドであり、Vβは、TCR可変β領域であり、Vαは、TCR可変α領域である、可溶性ヒト1本鎖TCRが提供される。
【0096】
一実施形態では、VβVα TCRは、WT1 D13.1.1と呼ばれ、Vβは、グループ3のTCR可変β領域であり、Vα2は、グループ2のTCR可変α領域である(Utz,U.,et al.,1996)(Aggen,D.A.,et al.,2011)。
【0097】
一実施形態では、リンカーペプチドは、5個を超えるリジン残基を含有する。一実施形態では、リンカーペプチドは、5~30個のアミノ酸を含有する。一実施形態では、リンカーペプチドは、GSADDAKKDAAKKDGKS(配列番号8)のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、提供されるscVβVα TCRは、定常領域を含有しない。本明細書でscVβVα TCRという専門用語が使用されるとき、scVβVα TCRはまた、当該技術分野において理解及び使用される専門用語として含まれることが理解される。したがって、Vβ及びVα鎖は、リンカーを通じて任意の構成で互いに接続され得る。
【0098】
本開示の態様では、本開示のVβVα TCRは、約10-6M~10-12Mの平衡結合定数Kでリガンドに特異的に結合する。本開示のこの態様の一実施形態では、リガンドは、ペプチド/MHCリガンドである。一実施形態では、本開示のVβVα TCRは、正常な野生型TCRの親和性と比較してリガンドに対して強化された親和性を有する。
【0099】
生物学的に活性な基
生物学的に活性な基を含む本明細書に説明されるVβVα TCRタンパク質も、提供される。本明細書で使用するとき、「生物学的に活性な基」は、生物学的システムにおいて測定可能または検出可能な効果を引き起こす基である。一実施形態では、生物学的に活性な基は、以下から選択される:抗腫瘍剤、例えば、限定されるものではないが、血管形成阻害剤、酵素阻害剤、微小管阻害剤、DNA挿入剤もしくは架橋剤、DNA合成阻害剤など、サイトカイン、例えば、限定されるものではないが、IL-2、IL-15、GM-CSF、IL-12、TNF-α、IFN-γ、もしくはLT-α(Schrama et al.(2006)Nat Rev Drug Discov,5,147-59、Wong et al.(2011)Protein Eng Des Sel,24,373-83)、抗炎症基、例えば、限定されるものではないが、TGF-β、IL-37、IL-10(Nold et al.(2010)Nat Immunol,11,1014-22、Stone et al.(2012)Protein Engineering)、放射性同位体、例えば、限定されるものではないが、90Yもしくは131Iなど(Reichert and Valge-Archer(2007)Nat
Rev Drug Discov,6,349-56)、毒素、例えば、限定されるものではないが、緑膿菌外毒素A、ジフテリア毒素、もしくはリシンのA鎖(Pastan et al.(2006)Nat Rev Cancer,6,559-65、Schrama et al.(2006)Nat Rev Drug Discov,5,147-59)、薬物、または例えば、1本鎖Fvなどの抗体。
【0100】
本開示のこの態様の一実施形態では、生物学的に活性な基は、細胞毒性分子であり、薬物(例えば、用語「抗体薬物結合体」において)と称される場合もある。本明細書で使用するとき、「細胞毒性」は、細胞に対する毒性を意味する。細胞毒性分子の例としては、限定されるものではないが、ドキソルビシン、メトトレキサート、マイトマイシン、5-フルオロウラシル、ズオカルマイシン、オーリスタチン、マイタンシン、カリチェアミシン、及び上述の分子の類似物が挙げられる(Jarvis (2012)Chemical and Engineering News,90,12-18、Litvak-Greenfeld and Benhar(2012)Adv Drug Deliv Rev、Ricart and Tolcher(2007)Nat Clin Pract Oncol,4,245-55)。細胞毒性分子は、完全な細胞死を引き起こす必要はないが、むしろ、測定可能もしくは検出可能な増殖の阻害または細胞活性の減少を引き起こす必要がある。
【0101】
一実施形態では、本明細書に説明されるTCRは、プロドラッグを薬物に転換することができる酵素に連結される。これは、例えば、薬物の活性形態がTCRによって標的とされる場所において(例えば、腫瘍部位において)作成されることを可能にすることによって、有用である。
【0102】
一実施形態では、生物学的に活性な基は、リンカーを通じて1本鎖TCRに結合され、それは、例えば、TCRの遊離アミン基またはスルフヒドリル基との、標準的な化学反応を通じて達成され得る。
【0103】
別の実施形態では、TCRは、1本鎖抗体断片(scFv)に付着されて、二重特異性薬剤を発生させる。腫瘍抗原に対する1つのscFvと、T細胞のCD3分子に対する1つのscFvと、を含有する二重特異性抗体が、現在医院において成功裏に使用されている(Bargou et al.(2008)Science,321,974-7)。加えて、CD3に対するTCR及びscFvを含有する二重特異性薬剤も報告されている(Liddy et al.(2012)Nat Med,18,980-7)。
【0104】
検出可能な基を含む本明細書に説明される1本鎖VβVα TCRも、提供される。一実施形態では、検出可能な基は、分光法または酵素に基づいた方法によって検出され得る基である。一実施形態では、検出可能な基は、蛍光基、例えば、限定されるものではないが、フルオレセイン、R-フィコエリトリン(PE)、PE-Cy5、PE-Cy7、テキサスレッド、もしくはアロフィコシアニン(APC)など、放射性標識基、例えば、限定されるものではないが、125I、32P、99mTcなど、吸収基、または検出可能な生成物を発生させる特性を有する酵素、例えば、限定されるものではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、もしくはアルカリホスファターゼなどである。
【0105】
当該技術分野において既知である通り、生物学的に活性な基、検出可能な基、またはTCRに付着した他の基は、可撓性ペプチドリンカーを使用してか、または化学的結合によって付着され得、TCRに共有的または非共有的に付着され得る。
【0106】
治療的に有効な分子に連結された有効量の修飾されたTCRを哺乳類に投与することを含む、哺乳類における癌を治療または予防する方法における使用のためのヒトTCRも、本明細書に提供される。具体的な実施形態では、哺乳類は、ヒトである。別の実施形態では、哺乳類は、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、齧歯動物、ウマ)または家畜動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ)である。
【0107】
本明細書に説明される単離された1本鎖TCR(scTCR)、及び大腸菌中で1本鎖を生成するための方法も、提供される。本明細書に説明されるscTCRと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物も提供される。
【0108】
T細胞の表面上に活性TCRを生じるシグナル伝達ドメインに連結されている本明細書に説明されるscVαVβ TCRも、提供される。一実施形態では、このscTCRは、TCRをベクター中にクローン化することと、ベクターを患者のT細胞内へ導入することと、T細胞を患者へと戻して養子移入することと、を含む、哺乳類における癌を治療する方法において使用され得る。
修飾されたTCRポリペプチド及びポリヌクレオチド
【0109】
本開示は、1本鎖T細胞受容体(scTCR)をコードする少なくとも1つのDNAセグメントを含むDNAベクターを企図する。
【0110】
当業者は、標準的な突然変異誘発技術を通じて、本明細書に説明される分析と併せて、変更されたTCR配列を得て、それらを特定の結合親和性及び/または特異性に関して試験することができる。当該技術分野において既知である有用な突然変異誘発技術としては、限定されるものではないが、デノボ遺伝子合成、オリゴヌクレオチド指向突然変異誘発、領域特異性突然変異誘発、リンカースキャニング突然変異誘発、及びPCRによる部位指向突然変異誘発が挙げられる(例えば、Sambrook et al.(1989)及びAusubel et al.(1999)を参照)。
【0111】
修飾されたTCRコード配列の獲得において、当業者は、生物学的活性の損失または低減を伴わずに特定のアミノ酸置換、付加、欠失、及び翻訳後修飾によって修飾され得るTCR由来タンパク質を認識するであろう。具体的には、保存的アミノ酸置換、即ち、1個のアミノ酸の、類似の大きさ、電荷、極性、及び立体構造の別のアミノ酸への置換は、タンパク質の機能を著しく変更する可能性は低いことは周知である。タンパク質の構成要素である20個の標準的なアミノ酸は、以下の通り、4つの群の保存的アミノ酸に広範に分類され得る:非極性(疎水性)基は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、及びバリンを含み、極性(非荷電、中性)基は、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン、及びチロシンを含み、正荷電(塩基性)基は、アルギニン、ヒスチジン、及びリジンを含有し、負荷電(酸性)基は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含有する。1個のアミノ酸のタンパク質の同一の群内の別のものへの置換は、タンパク質の生物学的活性に悪影響を有する可能性は低い。
【0112】
一実施形態では、本開示のscTCRは、安定化されたタンパク質をもたらす可変ドメインの任意の領域(単数または複数)内の追加の突然変異を含有してもよい。一実施形態では、1つ以上の追加の突然変異は、CDR1、CDR2、HV4、CDR3、FR2、及びFR3内のうちの1つ以上である。突然変異誘発に使用される領域は、結晶構造または分子モデルを使用して、関心のリガンド(例えば、抗原)と相互作用するTCRの領域を発生させる、指向性進化によって決定され得る。他の例では、可変領域は、アミノ酸を付加または欠失させて、scTCRとリガンドとの間の所望の相互作用を改変することによって、再成形され得る。
【0113】
本発明のポリペプチドは、修飾されたTCR、及びその抗原結合断片(例えば、scTCR)、ならびにキメラ抗原受容体(CAR)を含む。用語「ポリペプチド」、「タンパク質」、及び「ペプチド」、及び「糖タンパク質」は、互換的に使用され、任意の特定の長さに限定されないアミノ酸のポリマーを意味する。この用語は、ミリスチル化、硫酸化、糖化、リン酸化、及びシグナル配列の付加または欠失などの修飾を除外しない。「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸の1つ以上の鎖であって、各鎖がペプチド結合によって共有的に連結されたアミノ酸を含み、該ポリペプチドまたはタンパク質は、天然タンパク質、即ち、自然に発生する細胞、特に非組み換え細胞、または遺伝子的に改変された細胞、もしくは組み換え細胞によって生成されるタンパク質の配列を有する、ペプチド結合によって非共有的及び/または共有的に一緒に連結された複数の鎖を含むことができ、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然配列の1つ以上のアミノ酸の欠失、付加、及び/もしくは置換を有する分子を含むことができる、アミノ酸の1つ以上の鎖を意味する。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、特に、本開示の修飾されたTCR、もしくはその抗原結合断片、または修飾されたTCR、もしくはその抗原結合断片の1つ以上のアミノ酸の欠失、付加、及び/もしくは置換を有する配列を包含する。したがって、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、アミノ酸鎖のうちの1つ(「モノマー」と呼ばれる)または複数(「マルチマー」と呼ばれる)を含むことができる。
【0114】
本明細書で言及される用語「単離されたタンパク質」は、(1)典型的には自然に共に見出されるであろう少なくともいくつかの他のタンパク質を含まないか、(2)同一の源に由来する、例えば、同一の種に由来する他のタンパク質を本質的に含まないか、(3)異なる種に由来する細胞によって発現されるか、(4)少なくとも約50パーセントのポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、もしくはそれが自然に共に会合される他の材料から分離されているか、(5)「単離されたタンパク質」が自然に共に会合されるタンパク質の部分と、(共有もしくは非共有相互作用によって)会合されていないか、(6)それが自然に会合されないポリペプチドと、(共有または非共有相互作用によって)作動可能に会合されるか、または(7)自然には発生しない、対象タンパク質を意味する。かかる単離されたタンパク質は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、もしくは合成起源のものであり得る他のRNA、またはそれらの任意の組み合わせによってコードされ得る。特定の実施形態では、単離されたタンパク質は、その(治療的、診断的、予防的、研究、ないしは別の)使用に干渉するであろう、その自然環境で見いだされるタンパク質もしくはポリペプチドまたは他の汚染物質を実質的に含まない。
【0115】
具体的な実施形態では、対象の修飾されたTCRは:a)本明細書に説明される修飾されたTCRのα鎖可変領域に対して少なくとも80%同一である、少なくとも85%同一である、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有するTCRα鎖可変領域と、b)本明細書に説明される修飾されたTCRのβ鎖可変領域に対して少なくとも80%同一である、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有するβ鎖可変領域と、を有してもよい。
【0116】
具体的な実施形態では、修飾されたTCRは:a)i.本明細書に説明される選択されたTCRのα鎖CDR1領域に対してアミノ酸配列が同一であるCDR1領域、ii.選択されたTCRのα鎖CDR2領域に対してアミノ酸配列が同一であるCDR2領域、及びiii.選択されたTCRのα鎖CDR3領域に対してアミノ酸が同一であるCDR3領域を含む、TCR α鎖可変領域と、b)i.選択されたTCRのβ鎖CDR1領域に対してアミノ酸配列が同一であるCDR1領域、ii.選択されたTCRのβ鎖CDR2領域に対してアミノ酸配列が同一であるCDR2領域、及びiii.選択されたTCRのβ鎖CDR3領域に対してアミノ酸が同一であるCDR3領域を含む、β鎖可変領域と、を含んでもよく、この場合、TCRはWT1抗原に特異的に結合する。さらなる実施形態では、修飾されたTCR、またはその抗原結合断片は、変異型の修飾されたTCRであり、この場合、該変異型は、Vα及びVβ領域のCDR領域中の最大8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個以上のアミノ酸置換を除いて、選択された修飾されたTCRに同一であるα鎖及びβ鎖を含む。この点において、選択された変異型の修飾されたTCRのCDR領域内に1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または特定の実施形態では、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個以上のアミノ酸置換が存在してもよい。置換は、Vα及び/またはVβ領域のいずれかのCDRにあってもよい。(例えば、Muller,1998,Structure 6:1153-1167を参照)。
【0117】
一実施形態では、修飾されたTCRをコードするポリヌクレオチド、またはその抗原結合断片が提供される。他の関連する実施形態では、ポリヌクレオチドは、修飾されたTCRをコードするポリヌクレオチドの変異型であってもよい。ポリヌクレオチド変異型は、本明細書に説明される修飾されたTCRをコードするポリヌクレオチド配列に対して実質的同一性を有してもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、例えば、本明細書に説明されるTCRをコードする配列などの基準ポリヌクレオチド配列と比較して、本明細書に説明される方法(例えば、下記に説明される、標準的パラメータを使用するBLAST分析)を使用して、少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を含むポリヌクレオチドであってもよい。当業者は、これらの値は、コドン縮退、アミノ酸類似性、リーディングフレーム位置付けなどを考慮することによって、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するように、適切に調整され得ることを認識するであろう。
【0118】
典型的には、ポリヌクレオチド変異型は、好ましくは、その変異型ポリヌクレオチドによってコードされるTCRの結合親和性が、具体的に本明細書に記載されるポリヌクレオチド配列によってコードされるTCRと比べて実質的に縮小されないように、1つ以上の置換、付加、欠失、及び/または挿入を含有するであろう。
【0119】
ポリヌクレオチド配列を比較するとき、下記に説明される通り、最大一致に関して整列されたときに2つの配列中のヌクレオチドの配列が同じであれば、2つの配列は「同一である」と言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、配列を比較窓上で比較して、配列類似性の局所領域を特定及び比較することによって実施される。本明細書で使用するとき、「比較窓」は、通常30~約75個、40~約50個、少なくとも約20個の連続的な位置のセグメントを指し、その中で、2つの配列が最適に整列された後に、配列が同一数の連続的な位置の基準配列と比較され得る。
【0120】
比較のための配列の最適な整列は、生物情報工学ソフトウェアのLasergene suite(DNASTAR,Inc.,Madison,WI)内のMegalignプログラムを使用して、デフォルトパラメータを使用して実施されてもよい。このプログラムは、以下の参考文献に説明されるいくつかの整列スキームを具現化する:Dayhoff,M.O.(1978)A model of evolutionary change in proteins-Matrices for detecting distant relationships.In Dayhoff,M.O.(ed.)Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol.5,Suppl.3,pp.345-358;Hein J.,Unified Approach to Alignment and Phylogenes,pp.626-645(1990)、Methods in Enzymology vol.183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA;Higgins,D.G.and Sharp,P.M.,CABIOS 5:151-153(1989)、Myers,E.W.and Muller W.,CABIOS 4:11-17(1988)、Robinson,E.D.,Comb.Theor 11:105(1971)、Santou,N.Nes,M.,Mol.Biol.Evol.4:406-425(1987)、Sneath,P.H.A.and Sokal,R.R.,Numerical Taxonomy-the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA(1973)、Wilbur,W.J.and Lipman,D.J.,Proc.Natl.Acad.,Sci.USA 80:726-730(1983)。
【0121】
別法として、比較のための配列の最適な整列は、Smith and Waterman,Add.APL.Math 2:482(1981)の局所同一性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の同一性整列アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性探索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装によって(Genetics Computer Group(GCG),575 Science Dr.,Madison,WIのWisconsin Genetics Software Packageの中のGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びTFASTA)または調査によって実施されてもよい。
【0122】
パーセント配列同一性及び配列類似性の決定に好適なアルゴリズム1つの好ましい例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Altschul et al.,Nucl.Acids Res.25:3389-3402(1977)、及びAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に説明される。BLAST及びBLAST 2.0は、2つ以上のポリヌクレオチド間のパーセント配列同一性を決定するために、例えば、本明細書に説明されるパラメータと共に使用され得る。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センターを通じて公的に入手可能である。1つの例証的な例では、累積スコアは、ヌクレオチド配列に関して、パラメータM(整合残基の対に対する獲得スコア、常に>0)及びN(不整合残基に対するペナルティスコア、常に<0)を使用して算出され得る。各方向のワードヒットの伸長は、累積整列スコアが、その最大達成値から量Xだけ降下するとき、累積スコアが、1つ以上の負のスコアを有する残基整列の蓄積によりゼロ以下になるとき、またはどちらかの配列の末端に到達するときに停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、整列の感受性及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関する)は、デフォルトとして11のワード長(W)及び10の予測(E)、ならびにBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照)整列、50の(B)、10の予測(E)、M=5、N=-4、及び両鎖の比較を使用する。
【0123】
特定の実施形態では、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適に整列された配列を少なくとも20個の位置の比較の窓上で比較することによって決定され、比較窓内のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適な整列に関して基準配列(付加または欠失を含まない)と比較されるときに、20パーセント以下、通常5~15パーセント、または10~12パーセントの付加または欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一である核酸塩基が両配列内で発生する位置の数を決定して、整合位置の数を作成し、整合位置の数を基準配列内の位置の総数(即ち、窓の大きさ)で除し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを作成することによって算出される。
【0124】
遺伝子コードの縮退の結果として、本明細書に説明されるTCRをコードする多数のヌクレオチド配列が存在することは、当業者によって理解されるであろう。これらのポリヌクレオチドのうちのいくつかは、例えば、同一抗原に結合する、修飾されたTCRをコードする天然または起源ポリヌクレオチド配列のヌクレオチド配列に対して最小の配列同一性を有する。にもかかわらず、コドン利用の差により変化するポリヌクレオチドは、本開示によって明白に企図される。特定の実施形態では、哺乳動物発現に関してコドン最適化されている配列が、特に企図される。
【0125】
DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどに関与する酵素反応のクローン化、DNA単離、増幅、及び精製のための標準的な技術、ならびに種々の分離技術は、当業者に既知であり、当業者によって一般的に用いられるものである。多数の標準的な技術は、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,New York、Maniatis et al.(1982)Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,New York、Wu(ed.)(1993)Meth.Enzymol.218,Part I、Wu(ed.)(1979)Meth Enzymol.68、Wu et al.(eds.)(1983)Meth.Enzymol.100及び101、Grossman and Moldave(eds.)Meth.Enzymol.65、Miller(ed.)(1972)Experiments in Molecular Genetics,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York、Old and Primrose(1981)Principles of Gene Manipulation,University of California Press,Berkeley、Schleif and Wensink(1982)Practical Methods in Molecular Biology、Glover(ed.)(1985)DNA Cloning Vol.I及びII,IRL Press,Oxford,UK、Hames and Higgins(eds.)(1985)Nucleic Acid Hybridization,IRL Press,Oxford,UK、ならびにSetlow and Hollaender(1979)Genetic Engineering:Principles and Methods,Vols.1-4,Plenum Press,New Yorkに説明される。略語及び命名法は、用いられる場合、当該分野における標準的なものと見なされ、本明細書に記載されるものなどの専門的な論文に一般的に使用される。
【0126】
ヌクレオチド配列間の相同性は、2本鎖DNAハイブリッドの安定性が発生する塩基対の範囲に依存するDNAハイブリダイゼーション分析によって決定され得る。高温及び/または低塩含量の条件は、ハイブリッドの安定性を低減させ、選択された度合いより低い相同性を有する配列のアニールを予防するために変化され得る。例えば、約55%のG-C含量を有する配列に関して、40~50℃、6X SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム緩衝材)、及び0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、約60~70%の相同性を示し、50~65℃、1X SSC、及び0.1%SDSのハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、約82~97%の相同性を示し、52℃、0.1X SSC、及び0.1%SDSのハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、約99~100%の相同性を示す。ヌクレオチド及びアミノ酸配列を比較する(及び、相同性の度合いを測定する)ための広範なコンピュータプログラムも利用可能であり、市販のソフトウェア及び無料ソフトウェアの両方の提供元リストは、Ausubel et al.(1999)に見出される。容易に入手可能な配列比較アルゴリズム及び複数配列整列アルゴリズムは、それぞれ、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,1997)及びClustalWプログラムである。BLASTは、ncbi.nlm.nih.govにてインターネット上で入手可能であり、ClustalWのバージョンはwww2.ebi.ac.ukにて入手可能である。
【0127】
微生物(例えば、黒色アスペルギルス、アスペルギルス・フィクウム、アワモリコウジカビ、ニホンコウジカビ、トリコデルマ・リーゼイ、ムコール・ミエヘイ、クルイベロミセス・ラクチス、ピチア・パストリス、サッカロマイセス・セレビシエ、大腸菌、バチルス・スブチリス、またはバチルス・リケニフォルミス)、昆虫(ショウジョウバエ)、哺乳動物(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞株、CHO)、または植物種(例えば、キャノーラ、ダイズ、トウモロコシ、ジャガイモ、オオムギ、ライムギ、コムギ)の工業用細胞株は、TCRタンパク質の組み換え生成のための宿主細胞として使用されてもよい。特定の実施形態では、高親和性TCRタンパク質または可溶性タンパク質の異種発現の第1のステップでは、TCRまたは可溶性TCRコード配列及び制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、及びターミネーターなどを含むように、発現構築物が組み立てられる。シグナル配列などの他の配列及び選択可能なマーカーも、含まれてもよい。TCRの細胞外発現を達成するために、発現構築物は、分泌シグナル配列を含んでもよい。実施形態では、シグナル配列は、細胞質発現が所望される場合、発現構築物上に含まれない。実施形態では、プロモーター及びシグナル配列は、宿主細胞中で機能的であり、TCRまたは可溶性TCRタンパク質の発現及び分泌を提供する。効率的な転写を確実にするために、転写ターミネーターが含まれてもよい。発現またはタンパク質精製を強化する補助的な配列も、発現構築物中に含まれてもよい。
【0128】
種々のプロモーター(転写開始調節領域)が、本開示に従って使用されてもよい。適切なプロモーターの選択は、提案される発現宿主に依存してもよい。異種源に由来するプロモーターは、それらは選択される宿主中で機能的である限り、使用されてもよい。
【0129】
プロモーターの選択はまた、ペプチドまたはタンパク質生成の所望の効率及びレベルにも依存する。tacなどの誘導性プロモーターは、大腸菌中でのタンパク質発現のレベルを劇的に増加させるために用いられることが多い。タンパク質の過剰発現は、宿主細胞にとって有害な場合もある。その故、宿主細胞増殖は、制限されてもよい。誘導性プロモーターシステムの使用は、宿主細胞が、遺伝子発現の誘導の前に許容される密度で培養され、それによってより高い生成物収率を促進することを可能にする。
【0130】
種々のシグナル配列が、本開示に従って使用されてもよい。TCRコード配列と同種であるシグナル配列が、使用されてもよい。別法として、発現宿主中での効率的な分泌及び処理のために選択または設計されたシグナル配列も、使用されてもよい。例えば、好適なシグナル配列/宿主細胞対としては、B.スブチリス中での分泌のためのB.スブチリスsacBシグナル配列、及びP.パストリス分泌のためのサッカロマイセス・セレビシエα-接合因子またはP.パストリス酸ホスファターゼphoIシグナル配列が挙げられる。シグナル配列は、シグナルペプチダーゼ開裂部位をコードする配列を直接通じてタンパク質コード配列に結合されてもよく、または通常10個未満のコドンからなる短ヌクレオチド架橋を通じてもよく、この場合、架橋は下流TCR配列の正しいリーディングフレームを確実にする。
【0131】
転写及び翻訳を強化するための要素は、真核生物タンパク質発現システムに関して特定されている。例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)プロモーター1000bpを、異種プロモーターのどちらかの側に位置付けることは、植物細胞において転写レベルを10~400倍上昇させ得る。発現構築物はまた、適切な翻訳開始配列も含むべきである。適当な翻訳開始のためのコザックコンセンサス配列を含むような発現構築物の修飾は、翻訳のレベルを10倍増加させ得る。
【0132】
多くの場合、選択的なマーカーが用いられ、これは発現構築物の一部であってもよく、またはそれから分離していてもよく(例えば、発現ベクターによって運ばれる)、その結果、マーカーは関心の遺伝子とは異なる部位で統合する。例としては、抗生物質に対する抵抗力を付与する(例えば、blaは大腸菌宿主細胞に関してアンピシリンに対する抵抗力を付与し、nptIIは多様な原核及び真核細胞にカナマイシンに対する抵抗力を付与する)か、または宿主が最小培地上で増殖することを可能にする(例えば、HIS4はP.パストリスまたはHis-S.セレビシエがヒスチジンの不在下で増殖することを可能にする)マーカーが挙げられる。選択可能なマーカーは、マーカーの独立した発現を可能にするために、それ自身の転写及び翻訳開始及び終了調節領域を有する。抗生物質抵抗性がマーカーとして用いられる場合、選択のための抗生物質の濃度は、概して培地1ml当たり10~600μgの抗生物質の範囲で、その抗生物質に応じて変動するであろう。
【0133】
発現構築物は、既知の組み換えDNA技術(Sambrook et al.,1989;Ausubel et al.,1999)を用いることによって組み立てられる。制限酵素消化及びライゲーションは、DNAの2つの断片を結合するために用いられる基本的なステップである。DNA断片の末端は、ライゲーションの前に修飾を必要とする場合があり、これは、突出の充填、ヌクレアーゼ(例えば、ExoIII)による断片(単数または複数)の末端部分の欠失、部位指向突然変異誘発、またはPCRによる新規の塩基対の付加によって達成されてもよい。選択される断片の結合を促進するために、ポリリンカー及びアダプターが用いられてもよい。発現構築物は典型的には、一連の制限、ライゲーション、及び大腸菌の形質転換を用いる段階で組み立てられる。発現構築物の構築に好適な多数のクローン化ベクターは、当該技術分野において既知であり(λZAP and pBLUESCRIPT SK-1,Stratagene,LaJolla,CA;pET,Novagen Inc.,Madison,WI-Ausubel et al.,1999に記載)、具体的な選択は本開示にとって重要ではない。クローン化ベクターの選択は、発現構築物を宿主細胞内へ導入するために選択される遺伝子移入システムの影響を受けるであろう。各段階の最後に、結果として得られる構築物は、制限、DNA配列、ハイブリダイゼーション、及びPCR分析によって分析されてもよい。
【0134】
発現構築物は、線状かもしくは環状かのいずれかのクローン化ベクター構築物として宿主へ形質転換されてもよく、またはクローン化ベクターから除去され、そのまま使用されるか、もしくは送達ベクター上へ導入されてもよい。送達ベクターは、選択される宿主細胞型中での発現構築物の導入及び維持を促進する。発現構築物は、多数の既知の遺伝子移入システムのいずれかによって宿主細胞内へ導入される(例えば、ナチュラルコンピテンス、化学的に媒介された形質転換、プロトプラスト形質転換、電気穿孔法、遺伝子銃形質転換、遺伝子導入、または結合)(Ausubel et al.,1999;Sambrook et al.,1989)。選択される遺伝子移入システムは、使用される宿主細胞及びベクターシステムに依存する。
【0135】
例えば、発現構築物は、プロトプラスト形質転換または電気穿孔法によってS.セレビシエ細胞内へ導入され得る。S.セレビシエの電気穿孔法は、容易に達成され、スフェロプラスト形質転換に匹敵する形質転換効率をもたらす。
【0136】
モノクローナルまたはポリクローナル抗体、好ましくはモノクローナル、特に、リガンド結合部位以外の部位においてTCRタンパク質と反応性であるものは、当該技術分野において既知である方法によって作製することができ、また多くのものが市販されている。例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories、Goding(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,2d ed.,Academic Press,New York、及びAusubel et al.(1999)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkを参照されたい。
【0137】
特定の標的リガンドに対して特異的である細胞結合または可溶性形態のTCRは、例えば、生物学的標本(細胞、組織標本、生検材料、体液など)をスクリーニングするための、または試験標本中の標的リガンドの存在を検出するための診断プローブとして、有用である。しばしば、TCRは、共有的に、または非共有的にのいずれかで、検出可能なシグナルを提供する物質に結合することによって標識される。好適な標識としては、限定されるものではないが、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光剤、化学発色剤、磁性粒子などが挙げられる。加えて、TCRは、第2の結合分子のためのリガンドに結合され得、例えば、TCRはビオチン化され得る。次に、標的細胞または分子に結合したTCRの検出は、検出可能なストレプトアビジン(蛍光性、放射性、化学発色性、もしくは他の検出可能な分子が付着されるか、または利用可能な発色基質がそれに対して存在する酵素が利用可能であるストレプトアビジン)の結合によって達成され得る。かかる標識及び/または毒性化合物のscTCRに共有結合されるような使用を説明する米国特許としては、限定されるものではないが、第3,817,837号、第3,850,752号、第3,927,193号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号、第4,331,647号、第4,348,376号、第4,361,544号、第4,468,457号、第4,444,744号、第4,640,561号、第4,366,241号、第RE35,500号、第5,299,253号、第5,101,827号、第5,059,413号が挙げられる。
【0138】
標識TCRは、使用される標識に適切な観察機器または方法を使用して検出され得る。蛍光顕微鏡法または蛍光活性化細胞ソートは、標識が蛍光部分であり、標識が放射性核種、γ計数、オートラジオグラフィー、または液体シンチレーション計数である場合に使用することができ、例えば、その方法が分析されている標本及び使用される放射性核種に適切であるという条件で使用することができる。加えて、本明細書に記されるように、MHC構成要素の不在下で標的リガンドのための結合部位の一部ではないTCRの部分を認識した検出可能な分子または粒子が存在する場合に用いられる、二次検出分子または粒子が存在し得る。現場での診断的撮像に有用な化合物は当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,101,827号、同第5,059,413号を参照されたい。インビボでの療法及び/撮像に有用な放射性核種としては、111Indium、97Rubidium、125Iodine、131Iodine、123Iodine、67Gallium、99Technetiumが挙げられる。毒素としては、とりわけジフテリア毒素、リシン、及びトウゴマの実毒素が挙げられるが、但し、TCR-毒素複合体が細胞に結合した後、毒性部分はその細胞毒性効果を発揮し得るように内面化されることが条件である。抗毒素技術は、当該技術分野において周知であり、好適な毒性分子としては、限定されるものではないが、化学療法薬、例えば、ビンデシンなど、抗葉酸剤、例えば、メトトレキサート、シスプラチン、マイトマイシン、アントロシクリン(anthrocycline)、例えば、ダウノマイシン、ダウノルビシン、またはアドリアマイシンなど、及び細胞毒性タンパク質、例えば、リボソーム不活性化タンパク質など(例えば、ジフテリア毒素、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、アブリン、リシン、緑膿菌外毒素A、またはそれらの組み換え誘導体など)が挙げられる。例えば、概してOlsnes and Pihl(1982)Pharmac.Ther.25:355-381、及びMonoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,Eds.Baldwin and Byers,pp.159-179,Academic Press,1985を参照されたい。
【0139】
ペプチド:主要組織適合性複合体への結合を含むTCR分子の一般的な構造ならびに作製及び使用の方法は、開示されている。例えば、PCT/US98/04274号、第PCT/US98/20263号、第WO99/60120号を参照されたい。
薬学的組成物及び治療剤
【0140】
特定の標的リガンドに対して特異的なTCRは、特定の抗原に関連付けられる疾患、例えば、癌などの腫瘍性疾患または障害に罹患すると考えられる、ヒトを含む動物及び哺乳類の治療に有用である。本明細書に説明される方法に従って治療され得る癌の種類の例としては、限定されるものではないが、ウィルムス腫瘍、膀胱癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、肝細胞癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎性癌、皮膚癌、小細胞肺癌、及び精巣癌が挙げられる。
【0141】
治療用生成物は、本明細書に示される材料を使用して作製され得る。治療用生成物の有効量は、対象における測定可能な効果を生み出す最小用量である。治療用生成物は、当業者によって容易に調製される。一実施形態では、本開示のscTCRは、患者に直接投与される。一実施形態では、本開示のscTCRは、当該技術分野において既知である通りPEGまたは免疫グロブリン定常領域に連結される。この実施形態は、血清クリアランスを伸ばす。一実施形態では、scTCRは、薬物を癌細胞などの標的細胞へ送達するために化学療法剤または薬物に連結される。一実施形態では、scTCRは、サイトカインなどの生物学的エフェクター分子に連結される(Tayal and Kalra(2008)Eur J Pharmacol,579,1-12)。一実施形態では、scTCRは、IL-2、IL-12、またはTNFαなどの抗腫瘍活性を有するサイトカインに連結される(Wong et al.(2011)Protein Eng Des Sel,24,373-83)。一実施形態では、scTCRは、IL-10またはIL-13などの免疫阻害サイトカイン連結される(Stone et al.(2012)Protein Engineering)。一実施形態では、scTCRは、別の抗原結合分子に連結されて、二重特異性薬剤を形成する(Miller et al.(2010)Protein Eng Des Sel,23,549-57、Thakur and Lum(2010)Curr Opin Mol Ther,12,340-9)。一実施形態では、二重特異性分子は、抗CD3などの1本鎖Fvに連結されたscTCRで構成され((Bargou et al.(2008)Science,321,974-7、Liddy et al.(2012)Nat Med,18,980-7)、T細胞及び罹患細胞を架橋する。一実施形態では、scTCRは、CD3などのTCRシグナル伝達ドメインに連結されて、キメラ抗原受容体を形成する((Porter et al.(2011)N Engl J Med,365,725-33、Sadelain et al.(2009)Curr Opin Immunol,21,215-23、Stroncek et al.(2012)J Transl Med,10,48)。これらの方法及び、静脈内投与などの他の投与方法は、当該技術分野において既知である。有用用量は、当業者によって決定され得る。
【0142】
scTCR組成物は、当該技術分野において既知である手段のいずれかによって製剤化され得る。それらは典型的には、注射物質、特に、静脈内、腹腔内、もしくは骨膜投与(特定の疾患によって決定される経路による)のためのものとして、または液体溶液かもしくは懸濁液のいずれかとして経鼻もしくは経口投与用の製剤として調製され得る。注射または他の投与の前の、液体中溶液または懸濁液に好適な固体形態も、調製され得る。調製物はまた、例えば、乳化されてもよく、またはリポソーム中にカプセル化されたタンパク質(単数または複数)/ペプチド(単数または複数)であってもよい。
【0143】
活性成分は、薬学的に許容され、また活性成分に適合する賦形剤または担体などの任意選択的な薬学的添加剤と混合されることが多い。好適な賦形剤としては、限定されるものではないが、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組み合わせが挙げられる。注射物質、エアロゾル、または経鼻製剤中のscTCRの濃度は、通常0.05~5mg/mlの範囲である。具体的な有効用量の選択は、当業者によって知られており、過度の実験をすることなく実施される。類似の用量は、他の粘膜表面に投与され得る。
【0144】
加えて、所望により、scTCRを含み得るワクチンは、ワクチンの有効性を強化する湿潤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、及び/または補助剤などの補助物質などの微量の薬学的添加剤を含有してもよい。有効であり得る補助剤の例としては、限定されるものではないが、水酸化アルミニウム、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-Dイソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-nor-ムラミル-L-アラニルl-D-イソグルタミン(CGP 11637、nor-MDPと称される)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2’-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、MTP-PEと称される)、及び、細菌から抽出される3つの構成要素、モノホスホリル脂質A、トレハロースジミコール酸、及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/Tween(登録商標)80乳液中に含有するRIBIが挙げられる。かかる追加的な製剤、及び当該技術分野において既知である投与形態もまた、使用されてもよい。
【0145】
本開示のscTCR、及び/またはTCR可変領域に類似(90%超の同一性)の一次構造を有し、標的リガンドに対する高親和性を維持する結合断片は、中性または塩形態としてワクチン中に製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩としては、限定されるものではないが、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、及び例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、またはマレイン酸などの有機酸を用いて形成される酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基を用いて形成される)が挙げられる。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄など、ならびに有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノ-エタノール、ヒスチジン、及びプロカインに由来してもよい。
【0146】
治療的使用のためのscTCRは、当該技術分野における既知のものに従って、用量製剤に適合した様式で、予防的及び/または治療的に有効である量及び様式で投与される。一般的には1回の投薬量当たり約100~20,000μgのタンパク質の範囲、より一般的には1回の投薬量当たり約1000~10,000μgの範囲である、投与される量。類似の組成物は、例えば、標的リガンドが結合される細胞を検出するために、撮像における使用のための標識scTCRを使用して、類似の方法で投与され得る。投与が必要とされる活性成分の正確な量は、医師または獣医の判断に依存してもよく、またそれぞれに特有であってもよいが、かかる決定は施術者の技術の範囲内である。
【0147】
TCR生成物は、単回投薬で、2回投薬計画で、例えば、2~8週間空けて、または複数回投与計画で付与されてもよい。複数回投与計画は、治療の主要なコースが1~10以上の別々の投薬量と、続いて応答を維持及び/または強化するために必要に応じてその後の時間間隔で投与される他の投薬量と、を含み得るものである。
【0148】
説明または例示されるすべての製剤または構成要素の組み合わせは、別段に記載のない限り、本開示の実践のために使用され得る。物質の具体的な名称は、当業者が同一の物質に異なる名称を付け得ることが知られる通り、例示的であるように意図される。化合物が、その化合物の特定のイソマーまたはエナンチオマーが明示されないように、例えば、式または化学名で、本明細書に説明されるとき、その説明は、説明される化合物の各イソマー及びエナンチオマーを個々にまたは任意の組み合わせで含むように意図される。当業者は、具体的に例示されるもの以外の方法、標的リガンド、生物学的に活性な基、開始材料、及び合成法が、過度の実験に頼ることなく本開示の実践に用いられ得ることを理解するであろう。任意のかかる方法、標的リガンド、生物学的に活性な基、開始材料、及び合成法のすべての当該技術分野において既知である機能的等価物は、本開示に含まれるように意図される。例えば、温度範囲、時間範囲、または組成物範囲など本明細書において範囲が付与される場合はいかなるときも、その所与の範囲に含まれるすべての中間範囲及び部分範囲ならびに個々の値は、本開示に含まれるように意図される。
【0149】
実際の製剤、投与経路、及び用量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る(例えば、Fingl et.al.,in The Pharmacological Basis of Therapeutics,1975,Ch.1p.1を参照)。
【0150】
主治医は、毒性のためまたは機能不全のため、投与をどのように及びいつ終了、中断、または調節するかを理解するあろうことに留意するべきである。反対に、主治医はまた、臨床応答が適切でない場合に治療をより高いレベルに調整することも理解するであろう。関心の障害の管理において投与される投薬量の規模は、治療される状態の重篤度及び投与の経路と共に変動するであろう。状態の重篤度は、例えば、一部には標準的な予測評価法によって評価されてもよい。さらに、投薬量及び恐らくは投薬回数はまた、個々の患者の年齢、体重、及び応答に従って変動するであろう。上述のものに匹敵するプログラムはまた、獣医学においても使用され得る。
【0151】
治療されている具体的な状態及び選択される標的化法に応じて、かかる薬剤は、製剤化され、全身的または局所的に投与されてもよい。製剤化及び投与の技術は、Alfonso and Gennaro(1995)に見出され得る。好適な経路としては、例えば、経口、直腸、経皮、膣内、経粘膜、または腸内投与、筋肉内、皮下、または髄内注射を含む非経口送達、及びくも膜下腔内、静脈内、または腹腔内注射が挙げられ得る。
【0152】
注射のために、本開示の薬剤は、水溶液中で、好ましくは、ハンクス液、リンガー液、または生理食塩水緩衝剤などの生理的に適合可能な緩衝剤中で製剤化されてもよい。経粘膜投与のために、浸透される障壁に適切である浸透剤が製剤中に使用される。かかる浸透剤は、概して当該技術分野において既知である。
【0153】
全身投与に好適な用量への本開示の実践のための本明細書に開示される化合物を製剤化するための薬学的に許容される担体の使用は、本開示の範囲内である。担体の適当な選択及び好適な製造実践により、本開示の組成物、特に溶液として製剤化されるものは、静脈内注射などによって非経口的に投与されてもよい。適切な化合物は、当該技術分野において周知である薬学的に許容される担体を使用して、経口投与に好適な用量へ容易に製剤化され得る。かかる担体は、本開示の化合物が、治療される患者による経口摂取のために錠剤、丸薬、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化されることを可能にする。
【0154】
細胞内に投与されるように意図される薬剤は、当業者に周知である技術を使用して投与されてもよい。例えば、かかる薬剤は、リポソーム内にカプセル化され、次に上記に説明される通りに投与されてもよい。リポソームは、水性内部を有する球状脂質二重層である。リポソーム形成時に水溶液中に存在するすべての分子は、水性内部に組み込まれる。リポソームの内容物は、外部の微環境から保護され、かつ、リポソームは細胞膜と融合するため、細胞質内に効率的に送達される。さらに、それらの疎水性により、小有機分子は細胞内に直接投与され得る。
【0155】
本開示における使用に好適な薬学的組成物としては、意図される目的を達成するような有効量で活性成分が含有される組成物が挙げられる。有効量の決定は、特に、本明細書に提供される詳細な開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0156】
活性成分に加えて、これらの薬学的組成物は、活性化合物の薬学的に使用され得る調製物への処理を促進する賦形剤及び補助物質を含む好適な薬学的に許容される担体を含有してもよい。経口投与のために製剤化される調製物は、錠剤、糖衣錠、カプセル、または溶液の形態であってもよく、遅延放出のために製剤化されるか、または調剤が小腸もしくは大腸に達するときにのみ放出されるように製剤化されるものを含む。
【0157】
本開示の薬学的組成物は、それ自体既知である様式で、例えば、従来的な混合、溶解、粒状化、糖衣錠作製、レビテーティング(levitating)、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスによって製造されてもよい。
【0158】
非経口投与のための薬学的な製剤としては、水溶性形態の活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに、活性化合物の懸濁液が、好適な油性注射懸濁液として調製されてもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどを含有してもよい。任意選択的に、懸濁液はまた、好適な安定剤、または化合物の可溶性を増加させて、高濃度溶液の調製を可能にする薬剤を含有してもよい。
【0159】
経口使用のための薬学的調製物は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、結果として得られた混合物を任意選択的に粉末化し、必要に応じて、好適な補助剤を添加した後に顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって得られ得る。好適な賦形剤は、特に、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖など、セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。所望により、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤が添加されてもよい。
【0160】
糖衣錠コアは、好適なコーティングを用いて提供される。この目的のために、濃縮糖液が使用されてもよく、それは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポール(carbopol)ゲル、ポリエチレングリコール、及び/または二酸化チタン、ラッカー液、ならびに好適な有機溶剤または溶剤混合物を任意選択的に含有してもよい。活性化合物投薬量の異なる組み合わせを特定するまたは特徴付けるために、染料または顔料が錠剤または糖衣錠コーティングに添加されてもよい。
【0161】
経口的に使用され得る薬学的な調製物としては、ゼラチンから作製される押し込み型カプセル、及びゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤とから作製される軟らかい封止カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び任意選択的に安定剤の混合物中に、活性成分を含有し得る。軟カプセル中では、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解または懸濁されてもよい。加えて、安定剤が添加されてもよい。
治療法
【0162】
高親和性TCR及び高親和性TCRを含む薬学的組成物は、例えば、癌、腫瘍、悪性腫瘍、または腫瘍性疾患もしくは障害を有する患者を治療するために使用されてもよい。一実施形態では、癌を有する患者を治療する方法は、本明細書に説明される高親和性TCRを投与することを含む。一実施形態では、高親和性TCRは、WT1に対して特異的である。一実施形態では、TCRは、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVβを含む。別の実施形態では、TCRは、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVαを含む。一実施形態では、高親和性TCRは、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む1本鎖TCRである。別の実施形態では、高親和性TCRは、例えば、化学療法剤などの治療剤と組み合わせて投与される。また別の実施形態では、高親和性TCRは、生物学的に活性な基に結合される。
【0163】
本発明の別の態様は、それを必要とする患者に対するT細胞の養子移入のための方法であって、本明細書に説明される野生型TCRまたは高親和性TCRのいずれかを発現するT細胞を投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、T細胞は、WT1に対して特異的であるTCRをコードするポリヌクレオチドを用いて遺伝子導入されている。一実施形態では、TCRは、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むVβを含む。別の実施形態では、TCRは、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むVαを含む。一実施形態では、高親和性TCRは、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む1本鎖TCRである。
【実施例0164】
以下の実施例は、本開示の非限定的な実施例をさらに説明する。
【0165】
実施例1
ペプチド/HLA-A2抗原に対するより高い親和性のためのTCRの改変
改善された親和性及び安定性のための1本鎖TCRの発見または発生のために使用される一般的な戦略が、図3に示される。このプロセスは、例証される通り6つのステップに関与する。
【0166】
1)ディスプレイのための1本鎖TCRフォーマットとしての、P22などのT細胞クローンに由来するVα及びVβTCR遺伝子(図1に示される配列、及び配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含むVβと配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含むVα)のクローン化。V領域は、HLA-A2との複合体中のHLA-A2制限性抗原ペプチドWT1(配列番号6)を認識する。本発明では、クローンP22に由来するTCR V領域遺伝子(例えば、Dossett et al.(2009)Mol Ther.17(4),742)を1本鎖フォーマット(Vβ-リンカー-Vα)としてクローン化し、酵母表面上での発現のために酵母ディスプレイベクター内に導入した(図4)。
【0167】
2)変異性ライブラリの発生、及び抗Vβ抗体による安定化された変異型に関するFACSまたは電磁ビーズ選択。1本鎖Vα及びVβ TCRは安定化定常領域の欠損により不安定であることが多いため、変異性の突然変異誘発ライブラリは、酵母の表面上での安定した発現を可能にする突然変異の安定化のために選択されるように発生されるが、但し、ファージ及び哺乳動物を含むがこれらに現地されない他のディスプレイフォーマットが使用されてもよい。ファージディスプレイベクター及びクローン化は、1011のライブラリサイズを生じ、一方酵母ディスプレイベクター及び同種組み換えステップは、1010のライブラリサイズを生じている((Benatuil et al.(2010)Protein Eng Des Sel,23,155-9)。固定化したリガンドへの親和性に基づく結合(ファージディスプレイ)または抗原による磁性粒子選択(酵母ディスプレイ)、または標識ペプチド-MHC抗原による蛍光活性化細胞のソート(酵母ディスプレイ)を含む、変異型の選択のために種々の方法が使用されている。折り畳まれたエピトープを認識するTCR Vβに対する抗体の利用、蛍光活性化された細胞ソート(FACS)、または電磁ビーズ選択が、本実施例において改善された抗体結合を有する変異型を単離するために使用される。
【0168】
3)変異性ライブラリの選択から単離したscTCRクローンを、熱安定性に関して評定し、安定化された変異型を、親和性成熟のためのテンプレートとして選択し、配列決定する。典型的には、酵母上の増加された表面レベル及び溶液中でのより高い安定性に寄与する単一部位突然変異が特定される。
【0169】
4)安定化させたscTCR配列を、通常CDR1α、CDR3α、CDR3β内でのCDRライブラリの発生のためのテンプレートとして使用するが、但し、CDR1β、CDR2β、CDR2β、及びHV4を含むがこれらに限定されない他の領域も使用され得る。本開示では、電磁ビーズ選択及び/または蛍光活性化細胞ソート(FACS)を使用することによって、酵母ディスプレイされた変異型をペプチド:MHCへの改善された結合に関してCDRライブラリから選択するが、但し、ファージディスプレイによるパニング(panning)または磁気選択または哺乳動物ディスプレイによるFACSを含むがこれらに限定されない他の方法を利用した選択が使用されてもよい。
【0170】
5)CDRライブラリの選択から単離したscTCRクローンを、それらが改変されたペプチド:MHCへの特異的結合に関して評定する。プラスミドを酵母クローンから取り出し、配列決定する。
【0171】
6)親和性のさらなる改善が必要とされる場合、ステップ5において選択したscTCRクローンが、CDR1α、CDR3α、CDR3βなどの突然変異を選択しなかった他のループまたは領域におけるさらなるライブラリの発生のためのテンプレートとして使用され得るが、但し、CDR1β、CDR2α、CDR2β、及びHV4を含むがこれらに限定されない他の領域も使用され得る。これらのステップの各々の例は、下記にさらに説明される。
【0172】
実施例2
Tax:HLA.A2との複合体におけるVα2を使用するヒトTCR A6の分析
TCRはすべて、類似のIg折り畳み及び結合角度を採用し、pepMHCのTCR認識は、CDRループ上の特異性残基によって完全に媒介される(Garcia et al.(2009)Nat Immunol,10,143-7、Marrack et al.(2008)Annu Rev Immunol,26,171-203、Rudolph et al.(2006)Annu Rev Immunol,24,419-66))。WT1 TCRの結晶構造は本開示の時点で利用可能ではないが、WT1 P22 TCRの同一のVα2ドメインを使用したA6:Taxペプチド:HLA-A2複合体(PDB:1AO7)の構造(Garboczi et al.(1996)Nature,384,134-141)が示される。複合体の側面図は、6つのCDRを含有する可変ドメインの末端が、結合部位の中心領域がペプチドTax上に位置付けられた状態でTax:HLA.A2分子上に結合することを示した(図2A)。結晶構造は定常領域αを含まないが、但し、定常領域は全長構築物を安定化させるのに役立つ。上記に説明されるステップ2において選択される安定化突然変異は、フレームワーク領域内で、例えば、Vα/Vβ接触面、または全長TCR内でCα/VαもしくはCβ/Vβ接触面の接合が生じる場所などで選択されることが多い。
【0173】
6つのCDRループを除く、TCRが「除去された」Tax:HLA-A2複合体の上視図が示される(図2B)。この図は、TCRが ペプチド-MHC上の対角位置を採用することを示し、この発見は現在すべてのTCR:ペプチド-MHC構造に関して観察されている。この配向では、2つのCDR3ループはペプチド上に位置付けられ、またMHC分子のらせんと主に相互作用するCDR1及びCDR2ループに由来する種々の残基が存在する。ステップ4及び6における親和性成熟の目的のために、これらのループは、親和性成熟ライブラリの発生の標的とされることが多いが、但し、他の領域が使用されてもよい。
【0174】
実施例3
WT1 TCRの酵母ディスプレイ
改善された安定性(ステップ2)または改善された親和性(ステップ5)に関する選択を実施するために、TCR突然変異体のライブラリが立体構造エピトープまたはペプチド:MHCリガンドをそれぞれ認識する抗体に結合するためにスクリーニングされ得るディスプレイシステムを使用することが必要である。3つのディスプレイシステムが、より高い親和性に関してTCRを改変するために使用されており、また酵母ディスプレイ、ファージディスプレイ、及びT細胞(哺乳動物細胞)ディスプレイのプロセスのために使用することができた。リボソーム、RNA、DNA、及びCISディスプレイなどの代替的なディスプレイ方法も、このプロセスに好適であり得る。これらのすべての場合において、抗原に対して低い親和性を有する野生型TCRがシステム中にクローン化され、強化された安定性及びペプチド:MHCリガンドに対する親和性を有するTCRを改変するためのテンプレートとして使用された。これらのシステムのいずれも、単一のTCRがライブラリ及び強化された結合特性を有するTCRの選択のためのテンプレートとして使用される、本明細書に説明されるアプローチに適用することができた。
【0175】
本実施例では、酵母ディスプレイをプラットフォームとして使用した(図4)。WT1 TCRを、変異性突然変異誘発を介した安定化突然変異のためのテンプレートとして使用し、選択から単離した安定化させたクローンを、親和性成熟のためのテンプレートとして使用した。
【0176】
実施例4
安定化させたWT1 TCR、WT1-D13の変異性のライブラリの構築及び選択P22と呼ばれるWT1反応性細胞株をテンプレートとして利用して、WT1変異性のライブラリをこれまでに説明されている通りに発生させた(Richman et al.(2009)Methods Mol Biol 504,323-350)。したがって、線状pCT302ベクター、WT1変異性PCR生成物、及び免疫適格EBY100酵母細胞を組み合併せることによって、ヒトWT1変異性scTCRライブラリを酵母ディスプレイベクター内へ導入した。約2.3×10個の独立クローンを含有する結果として得られたライブラリを、電気穿孔法後の酵母の限界希釈アリコートをプレーティングすることによって判断した。ライブラリを、表1に従うFACSによって、ヒトhVβ3、抗hVβ3.1 FITC IgG(Thermo Scientific)、及び抗hVβ3 FITC IgM(Beckman Coulter)を認識する2つの抗体に結合するために選択した。
【表1】
【0177】
熱変性研究を使用して、Vβ3上で折り畳まれたエピトープの認識のためのこれらの抗体を特定した(データは示されていない)。AlexaFluor(登録商標)647ヤギ抗マウスIgG(Life Technologies)及びヤギ抗マウスIgM APC(Invitrogen)二次抗体を使用して、シグナルを増幅させた。3回の反復ソート中に、Vβ3陽性染色集団が現れた(図5A)。3回目のソート後に、改善されたVβ3蛍光に関してWT1-D13と呼ばれるクローンが単離され(図5B)、80℃に加熱したときに熱安定性を示した(データは示されていない)。WT1-D13クローンを、親和性成熟のためのテンプレートとして使用した。
【0178】
実施例5
CDR1αライブラリ構築、及びWT1:HLA.A2、WT1.1に対する強化された結合を有するWT1 TCRの選択
重複伸長によるスプライシング(SOE)によって、変異性のPCRライブラリの選択から単離した安定化WT1-D13クローンを、4個の隣接する残基にわたるCDR1αライブラリの発生のためのテンプレートとして使用した(Horton et al.(1990)Biotechniques,8,528-535)。したがって、線状pCT302ベクター、WT1-D13 CDR1αライブラリPCR生成物、及び免疫適格EBY100酵母細胞を組み合わせることによって、ヒトWT1-D13 CDR1Α α
scTCRライブラリを酵母ディスプレイベクター内へ導入した。約3.1×10個の独立クローンを含有する結果として得られたライブラリを、電気穿孔法後の酵母の限界希釈アリコートをプレーティングすることによって判断した。WT1-D13 CDR1αライブラリを、表2に従ってWT1(RMFPNAPYL、配列番号6)/HLA.A2/Ig ダイマー(BD DimerX)への結合に関してFACSソートした。
【表2】
【0179】
WT1(RMFPNAPYL、配列番号6)/HLA-A2/Igダイマーを用いたFACSによる5回の選択後、やや陽性の染色集団が現れ始めた(図6A)。5回目のソート後に単離したクローンWT1-D13.1は、WT1(RMFPNAPYL、配列番号6)/HLA.A2に対する穏やかな結合改善を示し、さらなる親和性成熟のためのテンプレートとして使用された(図6B)。
【0180】
実施例6
CDR3ライブラリ構築、及びWT1:HLA.A2、WT1.1.1へのさらに強化された結合を有するWT1 TCRの選択
WT1 scTCRの親和し得をさらに改善するために、WT1-D13 CDR1αライブラリから単離したWT1-D13.1クローンをテンプレートとして使用して、CDR3ライブラリを発生させた。各CDR3中に5個の隣接するコドンにわたる縮重コドンを同時に作製する重複伸長によるスプライシング(SOE)PCRによって、WT1-D13.1 CDR3ライブラリを発生さた。したがって、線状pCT302ベクター、WT1-D13.1 CDR3 PCR生成物(即ち、CDR3α1、CDR3α2、CDR3β1、またはCDR3β2ライブラリ)、及び免疫適格EBY100酵母細胞を組み合わせることによって、各WT1-D13.1 CDR3ライブラリを酵母ディスプレイベクター内へ導入した。4つの結果として得られたライブラリをプールし、結果として得られた組み合わせられたライブラリは、電気穿孔法後の酵母の限界希釈アリコートをプレーティングすることによって判定するときに、約3.5×10個の独立クローンを含有した。WT1-D13 CDR3を組み合わせたライブラリを、WT1(RMFPNAPYL、配列番号6)/HLA.A2/Igダイマー(BD DimerX)への結合に関して表3のチャートに従ってFACSソートした。
【表3】
【0181】
WT1(RMFPNAPYL、配列番号8)/HLA-A2/Igダイマーを用いたFACSによる3回の選択後、陽性染色集団が現れ始めた(図7A)。3回目のソート後に単離したクローンWT1-D13.1.1は、WT1(RMFPNAPYL、配列番号8)/HLA.A2に対する増加した結合を示した(図7B)。
【0182】
実施例7
高親和性WT1 TCR、WT1-D13.1.1の結合分析
CDR3ライブラリの選択から単離したWT1-D13.1.1クローンの結合を評定するために、WT1-D13.1.1をディスプレイする酵母を、大腸菌から発現及び精製したWT1(RMFPNAPYL、配列番号6)/HLA.A2ダイマーHLA-A2-Ig)及びモノマーで滴定した。WT-1/A2ダイマーは160pM~500nMで分析し(図8A)、モノマーは6.4nM~4μMで分析した(図8B)。次に、酵母細胞を洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。平均蛍光強度(MFI)を、WT-1/HLA-A2複合体の濃度に対して各ヒストグラムに関してプロットした。非線形回帰分析を使用して値を正規化し、ディマー(dimmer)及びモノマーに関して、25nM及び240nMのKD,app値をそれぞれ決定した(図8C及び8D)。したがって、WT1-D13.1.1はナノモル親和性を示した。
【0183】
実施例8
可溶性高親和性WT1 TCR、WT1-D13.1.1の結合分析
WT1-D13.1.1 scTvが高い親和性でWT1/HLA-A2に特異的に結合することをさらに示すために、可溶性形態のWT1-D13.1.1 scTvを、大腸菌封入体及びC末端BirAタグを介したビオチン化から発現させ、再折り畳みした(Aggen et al.(2011)Protein Engineering,Design,&Selection,24,361-72、Zhang et al.(2007)J Exp Med,204,49-55)。ヒト細胞株T2(HLA-A2+)を、1μMのTax、MART-1、またはWT1ペプチドと共に定温放置し、洗浄した。ペプチドを事前添加していないT2細胞(図9A)、または陰性ペプチドTaxを事前添加したT2細胞(4nM~1μM)(図9B)、ヌルペプチドMART-1を事前添加したT2細胞(4nM~1μM)(図9C)、WT1を事前添加したT2細胞(4nM~1μM)(図9D)上で滴定した。細胞を洗浄し、SA-PEと共に定温放置し、フローサイトメトリーによって分析した。WT1ペプチドを添加した細胞のみがWT1-D13.1.1TCRによって結合され(図9A~D)、可溶性TCRはWT1に対して特異的であることを示した。WT1滴定のTCR濃度に対するMFIのプロットの非線形回帰は、可溶性TCRが260nMの最小K値を示すことを示した(図9E)。
【0184】
実施例9
WT1抗原に対する改善された親和性に関する単離されたTCRの配列分析
WT1特異性(P22、D13、D13.1、D13.0.1、及びD13.1.1)1本鎖TCRの配列が、単離したプラスミドから決定され、図1に示される。P22、D13、D13.1、D13.0.1、及びD13.1.1のVβ鎖のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1、21、21、3、及び3に記載され、P22、D13、D13.1、D13.0.1、及びD13.1.1のVα鎖のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号2、22、4、2、及び4に記載される。D13.0.1は、最終的な親和性成熟scTCR D13.1.1(配列番号5)からCDR1α突然変異体を除去することによって構築されたことに留意されたい。図1の下線付きのアミノ酸位置は、安定化突然変異のための変異性ライブラリ選択から生じた突然変異を示す。ボックス内のアミノ酸位置は、CDRライブラリから選択された親和性強化突然変異体を示す。
【0185】
実施例10
CD8及びCD4 T細胞におけるWT1-P22、WT1-D13.1、WT1-D13.0.1、及びWT1-D13.1.1TCRのインビトロ活性
T細胞における異なるWT1特異性TCRの活性を評定するために、CD8(図10A)及びCD4(図10B)を、AAD遺伝子組み換えマウスから単離した(これらは、HLA-A2のα1及びα2ドメインならびにマウスDのα3ドメインからなるハイブリッドクラスI遺伝子を有するマウスであり、これらのAADマウスは、Jackson Laboratoriesから入手可能である)。抗CD3及び抗CD28抗体に結合したビーズを用いて細胞を活性化させ、次に、Chervin et al,(2013)Gene Ther.20(6):634-44に説明される通り、WT1-P22、WT1-D13.1、WT1-D13.0.1、及びWT1-D13.1.1 TCRを形質導入した(配列は、D13安定化突然変異、Vβ F48S、及びD51Gを含有しなかった)。T細胞を、AADマウスに由来する脾細胞のコンカナバリン(Concanavilin)A刺激によって調製した異なる濃度のペプチドWT1及びAAD芽細胞と共に定温放置した。24時間の定温放置後、ELISAを使用してIFN-γ濃度に関して上清を分析した。CD8 T細胞は、D13.0.1及びD13.1.1 TCRによって最も高い活性を示した(図10A)。CD4 T細胞は、D13.1.1 TCRによってのみ活性化され、D13.1.1はCD8とは独立に活性を媒介し得ることを示している(図10B)。MART1などの他のHLA-A2結合ペプチドとの反応性は観察されなかった。
【0186】
実施例11
CD8 T細胞中のWT1-D13.1.1 TCRは、WT1に構造的に類似したヒトペプチドと反応性ではない
高親和性WT1-D13.1.1 TCRの特異性をさらに決定するために、WT1ペプチドに構造的に類似したペプチドによるインビトロ活性を評定した。WT1ペプチドに構造的に類似したペプチドに関して、WT1の9個の残基における保存的突然変異に基づいてプロテオーム探索を実施した。次に、予測アルゴリズムを介してHLA-A2に対する結合能力に関してヒトプロテオーム中に存在するペプチドにアクセスした。最も高い親和性でHLA-A2に結合すると予測された10個のペプチド(図11)を合成し、高親和性WT1-D13.1.1 TCRを形質導入した活性化されたCD8 T細胞に対する能力に関して試験した。これらのペプチドのいずれも活性を示さず、このTCRは、これらの10個の構造的に類似したペプチドと共に提示されるときに特異性を維持することを示唆している。
【0187】
実施例12
WT1、WT1-D13.1、及びWT1-D13.1.1 TCRの治療的フォーマット
より高い親和性のTCRは、対応する抗原を発現する細胞を標的とするために種々のフォーマットにおいて使用され得ることは、現在よく知られている。したがって、上記に示される改変戦略から発生されるTCRは、図12に例証される通り、可溶性形態で、または養子T細胞療法のためのTCR遺伝子療法においてのいずれかで使用され得ることは、明らかである。
【0188】
材料及び方法
抗体、ペプチド:HLA-A2、MACS、及びフローサイトメトリー試薬
酵母表面発現を検出するために使用される抗体としては、抗HAエピトープタグ(クローン HA.11、Covance)、抗hVβ3 FITC抗体(Clone CH92、Beckman-Coulter)、抗hVβ3.1 FITC抗体(Clone 8F10、Thermo Scientific)、抗hVβ20抗体(Clone ELL1.4、Beckman-Coulter)、我々の実験室で発生された抗Vα2モノクローナル抗体(データは示されていない)、ヤギ抗マウスIgM APC(Life
Technologies)、ヤギ抗マウスIgG F(ab’)AlexaFluor(登録商標)647二次抗体(Invitrogen)、ストレプトアビジン-フィコエリトリン(SA:PE、BD Pharmingen)、及びMACSマイクロビーズ(Miltenyl Biotec)が挙げられる。
【0189】
HLA-A2に結合するペプチド[WT126-134:RMFPNAPYL(配列番号6)]を、Penn State University College of Medicine(Hershey,PA,USA)のMacromolecular Core Facilityにおいて、標準的なF-moc(N-(9-フルオレニル)メトキシカルボニル)化学によって合成した。FACS及びフローサイトメトリー分析のために、組み換え可溶性ダイマーHLA-A2:Ig融合タンパク質(BD(商標)DimerX)を使用した。加えて、UV光下でのUV開裂可能ペプチドの別のHLA.A2制限性ペプチドとの交換によって発生させたモノマーHLA.A2-ビオチン試薬を、フローサイトメトリー及びMACS選択のために利用した(Rodenko et al.(2006)Nat Protoc,1,1120-1132、Toebes et al.(2006)Nat Med,12,246-251)。
【0190】
酵母ディスプレイベクターにおけるscTvのクローン化及び発現
TCR可変領域断片(scTv)を、Trp培地中の増殖を可能にするガラクトース誘導性AGA2融合体を含有する酵母ディスプレイプラスミドpCT302(Vβ-L-Vα)中で発現させた(Boder and Wittrup(2000)Methods Enzymol,328,430-444)。scTv遺伝子の誘導は、形質転換されたEBY100酵母細胞の選択媒体中での定常期への増殖、続いてガラクトース含有培地への移入に関与する。テンプレートWT1 1本鎖TCR遺伝子を、構築物のVα2ドメイン中にF49S突然変異を有する状態でGenscript(Piscataway,NJ,USA)によって合成した(Aggen et al.(2011)Protein Eng Des Sel,24,361-372)。
【0191】
WT1特異性TCR遺伝子を、CTLクローンから単離し(Phillip GreenbergからのWT1に対するTCR遺伝子、例えば、Dossett et al.(2009)Mol Ther.17(4),742)、その遺伝子をGenscriptによって合成し、1本鎖フォーマット(Vβ-リンカー-Vα)としてクローン化し、酵母の表面上での発現のために酵母ディスプレイベクター内へ導入した。scTvshは、リンカー領域GSADDAKKDAAKKDGKS(配列番号8)によって付着される可変的な含有物(variable contains)で構成された(Hoo et al.(1992)Proc Natl Acad Sci USA,89,4759-4763、Weber et al.(2005)Proc Natl Acad Sci USA,102,19033-19038、Aggen et al.(2011)Protein Eng Des Sel,24,361-372)。scTvを、pCT302のNheI及びXhoI制限部位内へ導入した。
【0192】
変異したscTv酵母ディスプレイライブラリの発生、ディスプレイ、及び選択
変異性のPCRを使用して、これまでに説明されている通りに無作為突然変異を発生させた(Richman et al.(2009)Mol Immunol,46,902-916)。同時に4~5個の隣接するコドンにわたる重複伸長によるスプライシング(SOE)PCRによって、CDR1及び3ライブラリを発生させた(Horton et al.(1990)Biotechniques,8,528-535)。
【0193】
WT1-D13 CDR1αライブラリのために、以下のプライマー対を利用してpre-SOE PCR生成物を発生させた:5’-GGC AGC CCC ATA AAC ACA CAG TAT-3’(Splice 4L)(配列番号9)及び5’-ACG ATC GCT ATA GGT GCA GTT CAA TGA TGC AAT AGC ACC TTC CGG GAC ACT TAA TGG GCC GCT-3’(配列番号10)、ならびに5’-ATT GCA TCA TTG AAC TGC ACC TAT AGC GAT CGT NNS NNS NNS NNS TTC TTT TGG TAT AGA CAG TAC AGT GGC AAA TCC CCG-3’(配列番号11)及び5’-TAA TAC GAC TCA CTA TAG GG-3’(T7)(配列番号12)。各対応するPre-SOEを用いて、T7及びSplice 4Lの両方に沿ってSOE PCRを実施した。
【0194】
WT1-D13.1 CDR3ライブラリのために、以下のプライマー対を利用して、4つのライブラリの各々に関してpre-SOE PCR生成物を発生させた:β1: 5’-GGC AGC CCC ATA AAC ACA CAG TAT-3’(Splice 4L)(配列番号9)、及び5’-TGC ACA CAG GTA CAT GGA AGT TTG ATT GGT ACT AGC GCT TTC CAG AAT CAA ACT GAA ACG TTC TTT-3’(配列番号13)、及び5’-AGT ACC AAT CAA ACT TCC ATG TAC CTG TGT GCA NNS NNS NNS NNS NNS GAA CAG TTT TTC GGC CCA GGT ACA AGA TTA ACG GTG-3’(配列番号14)及び5’-TAA TAC GAC TCA CTA TAG GG-3’(T7)(配列番号12);β2:Splice 4L(配列番号9)及び5’-TGC ACA CAG GTA CAT GGA AGT TTG ATT GGT ACT AGC GCT TTC CAG AAT CAA ACT GAA ACG TTC TTT-3’(配列番号15)、及び5’-AGT ACC AAT CAA ACT TCC ATG TAC CTG TGT GCA AGC AGT TCC ATC NNS NNS NNS NNS NNS GGC CCA GGT ACA AGA TTA ACG GTG-3’(配列番号16)及びT7(配列番号12);α1:Splice 4L(配列番号9)及び5’-GGC GCA CAG GTA AGT GGC GCT ATC TGA CGG TTG GCT ATC ACG GAT TAA CAG AGA GAC ATA CTG GGA-3’(配列番号17)、及び5’-CAA CCG TCA GAT AGC GCC ACT TAC CTG TGC GCC NNS NNS NNS NNS NNS AAT ATG CTG ACC TTC GGT GGC GGT ACT CGC TTA ATG-3’(配列番号18)及びT7(配列番号12);α2:Splice 4L(配列番号9)及び5’-GGC GCA CAG GTA AGT GGC GCT ATC TGA CGG TTG GCT ATC ACG GAT TAA CAG AGA GAC ATA CTG GGA-3’(配列番号19)、及び5’-CAA CCG TCA GAT AGC GCC ACT TAC CTG TGC GCC GCG AAT AAC GCG NNS NNS NNS NNS NNS TTC GGT GGC GGT ACT CGC TTA ATG-3’(配列番号20)及びT7(配列番号12)。
【0195】
NheI及びXhoI消化pCT302に沿って変異性またはSOE PCR生成物を電気穿孔することにより、EBY100酵母における同種組み換えによって酵母ライブラリを作製した(Horton et al.(1990)Biotechniques,8,528-535)。ライブラリを、ガラクトース含有培地(SG-CAA)内に48時間誘導し、1mLの1%PBS/BSAで洗浄し、抗体またはペプチド:MHC試薬を用いて図4A、5A、6A、8A、及び9Aに示される濃度で染色した。細胞を洗浄し(1ml、1%PBS/BSA)、最も蛍光であった細胞を、FACS Aria(BD Bioscience)高速ソーターを使用してか、またはQuadroMACS(商標)Separator(Miltenyl Biotec)上でMACS LSカラムによって選択した。単離したクローンの熱安定性を試験するために、染色プロトコルの前に酵母を高温で30分間定温放置した(データは示されていない)。
【0196】
高親和性クローンの単離及び染色
選択の後、限界希釈物をプレーティングすることによってライブラリクローンを単離した。コロニーを増殖させ、ガラクトース含有培地(SG-CAA)内に48時間誘導し、1mLの1%PBS/BSAで洗浄し、種々の濃度のペプチド/HLA.A2 DimerX、ヤギ抗マウスIgG F(ab’)AlexaFluor(登録商標)647二次抗体、または種々の濃度のUV交換ペプチド/HLA.A2、SA-PEを用いて染色した。細胞を洗浄し(1ml、1%PBS/BSA)、Accuri C6フローサイトメータで分析した。
【0197】
Zymoprep(商標)Yeast Plasmid Miniprep II(Zymo Research)を使用してプラスミドを回収し、Subcloning Efficiency(商標)DH5α(商標)Competent Cell(Invitrogen)への熱ショック形質転換により大腸菌内へ導入した。大腸菌細胞を増殖させ、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen)を使用してプラスミドを単離した。個々のクローンの配列を、サンガー法シーケンシングによって決定した。
【0198】
参照による援用及び変異形態に関する記載
【0199】
本明細書に記載されるすべての参考文献、例えば、発行または付与された特許または等価物を含む特許文書、特許出願及び公開、ならびに非特許文献または他の原資料は、各参考文献が本出願において本開示と少なくとも部分的に矛盾しない範囲で、あたかも参照により個々に援用されるかのようにその全体が参照により本明細書に援用され、(例えば、部分的に矛盾する参考文献は、その参考文献の部分的に矛盾する部分を除き参照により援用される)。
【0200】
本明細書に言及されるすべての特許及び公開は、本開示が付随する当該技術分野の技術者の技術のレベルを示す。本明細書に記載される参考文献は、最先端技術を、場合によりそれらの出願日時点のものを示すようにその全体が参照により本明細書に援用され、この情報が本明細書において用いられ得ることが意図され、また必要に応じて、先行研究における特定の実施形態を除外し(例えば、請求権を放棄する)、本明細書内の開示における方法または材料の特定の包含を伴うことなく最先端の方法または材料を使用する。例えば、化合物が特許請求される場合、本明細書に開示される参考文献中に開示される特定の化合物を含む先行研究において(特に参照される特許文書において)既知である化合物は、特許請求の範囲に含まれるように意図されないことが理解されるべきである。
【0201】
本明細書においてマーカッシュ群または他の群分類が使用されるとき、その群のすべての個々の構成員ならびにすべての可能な組み合わせ及び部分的組み合わせは、本開示に個々に含まれるように意図される。
【0202】
本明細書において、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、または「含む(comprising)」が使用される場合、それらは、言及される記載の特長、整数、ステップ、または構成要素の存在を明示するものとして解釈されるべきであるが、1つ以上の他の特長、整数、ステップ、構成要素、またはその群の存在または追加を除外するべきではない。用語「含む(comprising)」または「含む(comprise)」または「含まれる(comprised)」が、例えば、「なる(consisting)/なる(consist)」または「から本質的になる(consisting essentially of)/から本質的になる(consist essentially of)」などの文法的に類似の用語に任意選択的に置き換えられて、それによって必ずしも同一の広がりを有するとは限らないさらなる実施形態を説明する、開示の別個の実施形態も包含されるように意図される。明確化のために、本明細書で使用するとき、「含む(comprising)」は、「有する(having)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「によって特徴付けられる」と同義語であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の記載されていない要素または方法ステップを除外しない。本明細書で使用するとき、「からなる」は、特許請求の範囲における要素に明示されていない任意の要素、ステップ、構成要素、または成分を除外する。本明細書で使用するとき、「から本質的になる」は、特許請求の範囲の基本的及び新規の特徴に物質的に影響を及ぼさない(例えば、活性成分に影響を及ぼさない)材料またはステップを除外しない。本明細書における各例において、用語「含む(comprising)」、「から本質的になる」、及び「からなる」のうちの任意のものは、他の2つの用語のいずれかと置き換えられてもよい。本明細書において例証的に説明される本開示は、本明細書において具体的には開示されない任意の要素(単数または複数)、限定(単数または複数)の不在下で実践されてもよい。
【0203】
本開示を、種々の具体的かつ好ましい実施形態及び技術を参照して説明してきた。しかしながら、多数の変異形態及び修正形態が本開示の精神及び範囲内でなされ得ることが理解されるべきである。本明細書に具体的に説明されるもの以外の組成物、方法、機器、機器要素、材料、任意選択的な特長、手順、及び技術が、過度の実験に頼ることなく本明細書に広範に開示される通りに本開示の実践に適用され得ることは、当業者によって理解されるであろう。本明細書に説明される組成物、方法、機器、機器要素、材料、手順、及び技術の当該技術分野において既知であるすべての機能的等価物、ならびにそれらの一部分は、本開示によって包含されるように意図される。範囲が開示される場合はいかなるときも、すべての部分範囲及び個々の値が包含されるように意図される。本開示は、図面に示されるかまたは本明細書に例示されるものを含む、開示される実施形態によって限定されるべきではなく、それらは限定のためではなく例または例証のために付与されている。本明細書に提供されるいくつかの参考文献は、追加の開始材料、追加の合成方法、及び追加の分析方法、及び本開示の追加の使用に関する詳細を提供するために、参照により本明細書に援用される。
【0204】
当業者は、本開示が目標を実行し、記述される目的及び利点ならびに本明細書に本来備わる目的及び利点を得るように十分に適応されることを、容易に理解するであろう。好ましい実施形態の目下の代表的なものとして本明細書に説明される組成物及び方法及び付属の方法は、例示的であり、本開示の範囲に対する限定であるように意図されない。本開示の趣旨に包含されるそれらの変化及び他の使用は、当業者には想到されるであろう。
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図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
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【配列表】
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