(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023270
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】括り罠
(51)【国際特許分類】
A01M 23/34 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
A01M23/34
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126086
(22)【出願日】2020-07-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】310002721
【氏名又は名称】一般財団法人日本森林林業振興会
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋二
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA02
2B121BA32
2B121EA21
(57)【要約】
【課題】捕獲対象の害獣を確実に捕獲すると共に害獣に指定されていない熊の誤捕獲を防止する。
【解決手段】拡縮可能な罠用ループLが一端部11a側に形成されたワイヤー11、および罠用ループLを縮小させる付勢力を発生するスプリング13を有する本体部10と、スプリング13によって付勢された状態で先端部に巻き付けられている罠用ループLを支持すると共に内部に踏み板が設けられた第1筒状体21を有する支持部20とを備え、第1筒状体21の内部に挿入された捕獲対象獣の脚部によって踏み板が踏み付けられたときに先端部から外れて縮小した罠用ループLによって脚部を括るように構成され、第1筒状体21の先端部に巻き付けられた罠用ループLおよび第1筒状体21の開口部を覆うように支持部20に装着可能なカバー30を備え、カバー30には、捕獲対象獣の脚部を挿通させるための切り込みSが形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡縮可能な罠用ループが一端部側に形成されたワイヤー、および前記罠用ループを縮小させる付勢力を発生する付勢部材を有する本体部と、前記付勢部材によって付勢された状態で先端部に巻き付けられている前記罠用ループを支持すると共に内部に踏み板が設けられた第1筒状体を有する支持部とを備え、前記第1筒状体の前記内部に挿入された捕獲対象獣の脚部によって前記踏み板が踏み付けられたときに前記先端部から外れて縮小した前記罠用ループによって当該脚部を括るように構成された括り罠であって、
前記第1筒状体の前記先端部に巻き付けられた前記罠用ループおよび当該第1筒状体の開口部を覆うように前記支持部に装着可能なカバーを備え、前記カバーには、前記捕獲対象獣の前記脚部を挿通させるための切り込みが形成されている括り罠。
【請求項2】
前記支持部は、前記第1筒状体を収容可能な第2筒状体と、筒の一部を切り欠いた部分筒状に形成されて前記第2筒状体の先端部から当該第2筒状体の軸線方向に突出するように当該第2筒状体の外周面に取り付けられた突出部とを備え、
前記第1筒状体の外周面と前記突出部の内周面と前記第2筒状体の前記先端部の端面とによって構成される溝部に前記罠用ループが延在すると共に、前記突出部の切り欠き部分から当該突出部の外側に前記罠用ループの基部が延出する状態で当該罠用ループを支持可能に構成されている請求項1記載の括り罠。
【請求項3】
前記カバーの中央部に挿通孔が形成されると共に、前記挿通孔を中心とする放射状に前記切り込みが形成されている請求項1または2記載の括り罠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣捕獲用の括り罠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、害獣を捕獲する際に用いられる器具として、下記特許文献1に開示された括り罠が知られている。この括り罠は、踏板本体、一対の帯板、設置枠、および締付け可能な括り輪部が一端側に形成された括りワイヤーを備えて構成されている。この括り罠では、害獣の足が踏板本体の上に乗ったときに、踏板本体が下がって設置枠の底面に接する。この際に、各帯板が回転し、各帯板に装着されている括りワイヤーの括り輪部が外れると共に括りワイヤーに装着されているコイルバネ部材の弾性力によって括り輪部が縮小して害獣の足を括る。これにより、害獣を捕獲することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3177935号公報(第5-7頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来の括り罠には、解決すべき以下の課題がある。具体的には、従来の括り罠では、イノシシやニホンジカ等の害獣として指定された動物だけではなく、害獣には指定されず逆に保護対象となっていたり捕獲に当たって特別な許可が必要であったりする熊が誤捕獲されることがある。この場合、熊が誤捕獲されたときには、熊に麻酔を注射して括り罠から解放して回復後に森林に放すという作業が条例等で義務づけられている地域もある。このため、このような地域では、熊の誤捕獲によって大きな費用が発生すると共に捕獲者の安全を確保するのが困難であるという課題が生じている。この対策として、誤捕獲された熊の力で破壊される程度の低強度の材料で括り罠を構成する方法もあるが、このような括り罠では、捕獲対象の害獣の捕獲自体が困難となるという課題が生じる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、捕獲対象の害獣を確実に捕獲すると共に害獣に指定されていない熊の誤捕獲を防止し得る括り罠を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の括り罠は、拡縮可能な罠用ループが一端部側に形成されたワイヤー、および前記罠用ループを縮小させる付勢力を発生する付勢部材を有する本体部と、前記付勢部材によって付勢された状態で先端部に巻き付けられている前記罠用ループを支持すると共に内部に踏み板が設けられた第1筒状体を有する支持部とを備え、前記第1筒状体の前記内部に挿入された捕獲対象獣の脚部によって前記踏み板が踏み付けられたときに前記先端部から外れて縮小した前記罠用ループによって当該脚部を括るように構成された括り罠であって、前記第1筒状体の前記先端部に巻き付けられた前記罠用ループおよび当該第1筒状体の開口部を覆うように前記支持部に装着可能なカバーを備え、前記カバーには、前記捕獲対象獣の前記脚部を挿通させるための切り込みが形成されている。
【0007】
また、請求項2記載の括り罠は、請求項1記載の括り罠において、前記支持部は、前記第1筒状体を収容可能な第2筒状体と、筒の一部を切り欠いた部分筒状に形成されて前記第2筒状体の先端部から当該第2筒状体の軸線方向に突出するように当該第2筒状体の外周面に取り付けられた突出部とを備え、前記第1筒状体の外周面と前記突出部の内周面と前記第2筒状体の前記先端部の端面とによって構成される溝部に前記罠用ループが延在すると共に、前記突出部の切り欠き部分から当該突出部の外側に前記罠用ループの基部が延出する状態で当該罠用ループを支持可能に構成されている。
【0008】
また、請求項3記載の括り罠は、請求項1または2記載の括り罠において、前記カバーの中央部に挿通孔が形成されると共に、前記挿通孔を中心とする放射状に前記切り込みが形成されている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の括り罠によれば、第1筒状体の先端部に巻き付けられた罠用ループおよび第1筒状体の開口部を覆うように支持部に装着可能に構成されたカバーを備え、捕獲対象獣の脚部を挿通させるための切り込みをカバーに形成したことにより、捕獲対象獣である害獣の脚部によってカバーが踏み付けられたときには、切り込みによって分割されたカバーが第1筒状体の内部側に弾性変形して捕獲対象獣の脚部をカバーの中央部に案内してカバーを挿通させて第1筒状体の内部に確実に挿入させ、罠用ループによって脚部を確実に括ることができる結果、捕獲対象獣を確実に捕獲することができる。また、この括り罠によれば、カバーを備えたことにより、保護対象獣である熊の脚部によってカバーが踏み付けられたときには、切り込みによって分割されたカバーが第1筒状体の内部側に弾性変形して脚部の足裏と第1筒状体の踏み板とによって挟み込まれて脚部と罠用ループとの間に介在するため、罠用ループによる熊の脚部の括りを防止して、熊の誤捕獲を防止することができる。
【0010】
また、請求項2記載の括り罠によれば、第1筒状体を収容可能な第2筒状体と、第2筒状体の外周面に取り付けられた突出部とを備え、第1筒状体の外周面と突出部の内周面と第2筒状体の端面とによって構成される溝部に罠用ループが延在すると共に、突出部の切り欠き部分から罠用ループの基部が延出する状態で罠用ループを支持可能に支持部を構成したことにより、罠用ループを支持部で確実に支持すると共に、第1筒状体の踏み板が踏み付けられたときに第1筒状体を第2筒状体の基端部側に容易に移動させることができる。このため、この括り罠によれば、罠用ループが風や地震等の自然現象によって第1筒状体から外れる誤作動を防止すると共に、捕獲対象獣の脚部によってカバーが踏み付けられたときに罠用ループを確実に正常作動させることができる。
【0011】
また、請求項3記載の括り罠によれば、カバーの中央部に挿通孔を形成すると共に、挿通孔を中心とする放射状に切り込みを形成したことにより、裏面の面積が比較的小さい捕獲対象獣の脚部でカバーが踏み付けられたときにカバーをより変形し易くすることができるため、捕獲対象獣の脚部を第1筒状体の内部により確実に挿入させて罠用ループによって脚部をより確実に括ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】括り罠1の組立て方法を説明する第1の説明図である。
【
図3】括り罠1の組立て方法を説明する第2の説明図である。
【
図4】括り罠1の設置方法を説明する説明図である。
【
図5】括り罠1の動作を説明する第1の説明図である。
【
図6】括り罠1の動作を説明する第2の説明図である。
【
図7】括り罠1の動作を説明する第3の説明図である。
【
図8】括り罠1の動作を説明する第4の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、括り罠の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
最初に括り罠の一例としての括り罠1の構成について説明する。括り罠1は、害獣捕獲用の罠であって、
図1に示すように、本体部10、支持部20およびカバー30を備えて構成されている。
【0015】
本体部10は、
図1に示すように、ワイヤー11、縮小防止ストッパ12、スプリング13、スプリングケース14、キャップ15、スプリング用ストッパ16およびスイベル17を備えて構成されている。
【0016】
ワイヤー11は、一例として、直径が4mm以上のワイヤーで構成されている。また、ワイヤー11の一端部11a側には、一端部11aに設けられた環状部Rに他端部11bを通すことによって拡縮可能な罠用ループLが形成されている。縮小防止ストッパ12は、罠用ループLの中間部位に取り付けられて、罠用ループLが予め規定した径以下に縮小するのを防止する機能を有している。
【0017】
スプリング13は、付勢部材の一例であって、
図1に示すように、ワイヤー11を挿通させた状態でワイヤー11の一端部11a側に配置されて、罠用ループLを縮小させる付勢力を発生する。スプリングケース14は、ワイヤー11を挿通させる孔が底部に形成された有底の円筒状に構成され、圧縮した状態のスプリング13を収容する(
図2参照)。キャップ15は、スプリングケース14の開口部に嵌合可能に形成されている。また、キャップ15は、ワイヤー11を挿通させた状態で罠用ループLの基部Lb(ワイヤー11の環状部R:
図2参照)に係止されて、スプリング13の付勢力を罠用ループLの基部Lbに作用させる。スプリング用ストッパ16は、スプリングケース14の底部よりもワイヤー11の他端部11b側に配設され、図外のネジの締め付けおよび緩めによって任意の位置に固定することで、スプリング13を圧縮させて付勢力を発生する状態に維持する機能を有している。
【0018】
スイベル17は、
図1に示すように、ワイヤー11の中間部11cに取り付けられて、ワイヤー11の一端部11a側と他端部11b側とを回転可能に連結することによってワイヤー11の捻れを防止する。
【0019】
支持部20は、
図1に示すように、第1筒状体21、第2筒状体22および突出部23を備えて構成されている。
【0020】
第1筒状体21は、
図2に示すように、円筒状に形成されて、スプリング13によって付勢された状態で先端部21aの外周面21bに巻き付けられている罠用ループLを支持可能に構成されている。また、同図に示すように、第1筒状体21の内部21dには、踏み板21eが設けられている。この場合、第1筒状体21は、一例として、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料で形成されている。
【0021】
第2筒状体22は、
図3に示すように、第1筒状体21を収容可能に構成されている。具体的には、第2筒状体22は、同図に示すように、内径が第1筒状体21の外径よりもやや大きい円筒状に形成されている。この場合、第2筒状体22は、第1筒状体21と同様の材料で形成されている。
【0022】
突出部23は、
図3に示すように、筒(この例では、円筒)の一部を切り欠いた(以下、切り欠いた部分を「切り欠き部分23b」ともいう)部分筒状(部分的に筒状の形状:部分円筒状)に形成され、第2筒状体22の先端部22aから第2筒状体22の軸線方向(同図における上方向)に突出するように第2筒状体22の外周面22bに図外の固定金具等で取り付けられている。この場合、突出部23は、第1筒状体21と同様の材料で形成されている。
【0023】
この括り罠1では、
図3に示すように、第1筒状体21の外周面21bと突出部23の内周面23aと第2筒状体22の先端部22aの端面22cとによって構成される溝部Gに罠用ループLが延在すると共に、突出部23の切り欠き部分23bから突出部23の外側に罠用ループLの基部Lbが延出するように罠用ループLを配置することが可能となっている。
【0024】
カバー30は、
図1に示すように、円形の主板31と、主板31から突出する鍔部32と、主板31の外周部から直角(またはほぼ直角)に折り曲げられた帯状の側板33とを備え、
図3に示すように、第1筒状体21に巻き付けられた罠用ループLを覆うようにして支持部20に装着可能に構成されている。この場合、カバー30は、可撓性を有する材料(一例として、樹脂の薄板)で形成されている。
【0025】
また、
図1に示すように、カバー30の主板31には、中央部に挿通孔Hが形成されると共に、挿通孔Hを中心として放射状に切り込みSが形成されている。この場合、挿通孔Hの直径は、捕獲対象獣の種類等に応じて適宜の大きさに規定することができるが、例えば、イノシシやニホンジカ等(有蹄類)の捕獲対象獣の蹄部の長さと同等かそれよりもやや大きめの直径であって、かつ保護対象獣の熊の足部の長さよりも小さい直径に規定するのが好ましい。また、カバー30の鍔部32は、括り罠1を設置する際にカバー30の上に被せる土や枯れ葉等が罠用ループLの基部Lbやスプリング13に落下するのを防止する機能を有し、カバー30の側板33は、支持部20に装着したカバー30の位置ずれを防止する機能を有している。
【0026】
このカバー30は、裏面の面積が比較的小さい蹄部102を有するイノシシやニホンジカ等の捕獲対象獣100(害獣:
図5参照)を確実に捕獲し、足裏の面積が大きく足裏全体を使って歩行する蹠行動物である熊200(保護対象獣)の誤捕獲を防止する機能を有しており、これについては、後述する括り罠1の動作において詳細に説明する。
【0027】
この括り罠1では、
図5,6に示すように、第1筒状体21の内部21dに挿入された捕獲対象獣100の蹄部102(脚部101)によって第1筒状体21の踏み板21eが踏み付けられたときに、第1筒状体21の先端部21aから罠用ループLが外れ、この際にスプリング13(
図2参照)の付勢力で罠用ループLが縮小することによって脚部101を罠用ループLで括るように構成されている。
【0028】
次に、括り罠1の使用方法、および括り罠1の動作について図面を参照して説明する。
【0029】
最初に、括り罠1の設置方法(仕掛け方法)について説明する。まず、捕獲対象獣100の通り道となり得る場所を設置場所として選択する。次いで、
図4に示すように、設置場所の地面に支持部20を埋設可能な大きさの穴を掘る。
【0030】
続いて、括り罠1を組み立てる。具体的には、スプリング用ストッパ16のネジを緩めて移動可能な状態とし、次いで、ワイヤー11を引き出して、罠用ループLが第1筒状体21の外径よりも大きくなるように調整する。続いて、
図2に示すように、罠用ループLを第1筒状体21の先端部21aに巻き付ける。次いで、スプリングケース14をキャップ15に近接させることで、スプリング13を圧縮させつつスプリングケース14内に収容し、続いて、スプリング用ストッパ16をスプリングケース14の基端部(同図における下端部)に移動させて、次いで、スプリング用ストッパ16のネジを締め付けて固定する。これにより、スプリング13の圧縮によって発生する付勢力が罠用ループLを縮小させる向きに罠用ループLの基部Lbに作用する状態が維持されると共に、罠用ループLがスプリング13の付勢力によって第1筒状体21の先端部21aを締め付けて第1筒状体21によって支持された状態が維持される。
【0031】
続いて、
図3に示すように、第2筒状体22の外周面22bに取り付けられている突出部23の切り欠き部分23bに罠用ループLの基部Lbが位置するようにして、第2筒状体22の内側に第1筒状体21を挿入する。この際に、第1筒状体21の外周面21bと突出部23の内周面23aと第2筒状体22の先端部22aの端面22cとによって構成される溝部G(
図4も参照)に罠用ループLが延在する(収納される)と共に、突出部23の切り欠き部分23bから突出部23の外側に罠用ループLの基部Lbが延出し、この状態で罠用ループLが支持される。また、第1筒状体21の先端部21aを締め付けている罠用ループLが第2筒状体22の端面22cに当接して、第2筒状体22の基端部22d側への第1筒状体21の移動(落下)が防止される。
【0032】
次いで、
図4に示すように、地面に掘った穴に支持部20を埋設し、続いて、第1筒状体21の先端部21aに巻き付けた罠用ループLを覆うようにして、支持部20にカバー30を装着する。次いで、土や枯れ葉等をカバー30の上に被せてカモフラージュする。続いて、ワイヤー11の他端部11b(
図1参照)を立木に結びつける。以上により、括り罠1の設置が完了する。
【0033】
次に、設置した括り罠1の動作について説明する。
図5に示すように、例えば、裏面の面積が比較的小さい蹄部102を有するイノシシやニホンジカ等(有蹄類)の捕獲対象獣100(害獣)が、蹄部102(脚部101)で括り罠1のカバー30を踏み付けたときには、切り込みS(
図1参照)によって分割されたカバー30の主板31が第1筒状体21の内部21d側に弾性変形し、これに伴って主板31の中央部の挿通孔H(
図1参照)が拡大(拡径)する。このため、捕獲対象獣100の脚部101が、弾性変形した主板31によって主板31の中央部に案内されて挿通孔Hを挿通し、第1筒状体21の内部21dに確実に挿入される。次いで、第1筒状体21の内部21dに設けられている踏み板21eが蹄部102によって踏み付けられたときには、
図6に示すように、第1筒状体21が第2筒状体22の基端部22d側に移動(下動)する。
【0034】
続いて、
図6に示すように、第1筒状体21の先端部21aが第2筒状体22の先端部22aよりも基端部22d側に位置するまで第1筒状体21が移動したときには、第1筒状体21の先端部21aに巻き付けられていた罠用ループLが先端部21aから外れ、スプリング13の付勢力によって罠用ループLが縮小する。この際には、同図に示すように、蹄部102がカバー30の主板31よりも下方に位置して罠用ループLと蹄部102との間にカバー30が介在していないため、罠用ループLによって脚部101が括られる。この場合、カバー30の主板31に挿通孔Hおよび切り込みSを形成したことで、捕獲対象獣100の脚部101が第1筒状体21の内部21dに確実に挿入される結果、罠用ループLによって捕獲対象獣100の脚部101を確実に括ることができ、捕獲対象獣100を確実に捕獲することが可能となる。
【0035】
一方、
図7に示すように、足裏の面積が大きく足裏全体を使って歩行する蹠行動物である熊200(保護対象獣)が、足部202(脚部201)で括り罠1のカバー30を踏み付けたときには、切り込みS(
図1参照)によって分割されたカバー30の主板31が第1筒状体21の内部21d側に弾性変形するものの、足部202が挿通孔Hを挿通することはなく、弾性変形した主板31が足部202の足裏と第1筒状体21の踏み板21eとによって挟み込まれた状態となる。また、この状態では、
図7に示すように、足部202(脚部201)と罠用ループLとの間に弾性変形した主板31が介在している。
【0036】
次いで、
図8に示すように、踏み板21eに対する足部202の踏み付けによって、第1筒状体21の先端部21aが第2筒状体22の先端部22aよりも基端部22d側に位置するまで第1筒状体21が移動したときには、第1筒状体21の先端部21aに巻き付けられていた罠用ループLが先端部21aから外れ、スプリング13の付勢力によって罠用ループLが縮小する。この場合、同図に示すように、弾性変形したカバー30の主板31が足部202の足裏と第1筒状体21の踏み板21eとによって挟み込まれて、足部202(脚部201)と罠用ループLとの間に弾性変形した主板31が介在している。このため、罠用ループLによる熊200の脚部201の括りが防止され、熊200の誤捕獲が防止される。
【0037】
このように、この括り罠1によれば、第1筒状体21の先端部21aに巻き付けられた罠用ループLおよび第1筒状体21の開口部21cを覆うように支持部20に装着可能に構成されたカバー30を備え、捕獲対象獣100の脚部を挿通させるための切り込みSをカバー30に形成したことにより、捕獲対象獣100(害獣)の蹄部102(脚部101)によってカバー30が踏み付けられたときには、切り込みSによって分割されたカバー30が第1筒状体21の内部21d側に弾性変形して捕獲対象獣100の脚部101を主板31の中央部に案内して挿通孔Hを挿通させて第1筒状体21の内部21dに確実に挿入させて、罠用ループLによって脚部101を確実に括ることができる結果、捕獲対象獣100を確実に捕獲することができる。また、この括り罠1によれば、カバー30を備えたことにより、熊200(保護対象獣)の足部202(脚部201)によってカバー30が踏み付けられたときには、切り込みSによって分割されたカバー30が第1筒状体21の内部21d側に弾性変形して足部202の足裏と第1筒状体21の踏み板21eとによって挟み込まれて足部202と罠用ループLとの間に介在するため、罠用ループLによる熊200の脚部201の括りを防止して、熊200の誤捕獲を防止することができる。
【0038】
また、この括り罠1によれば、第1筒状体21を収容可能な第2筒状体22と、第2筒状体22の外周面22bに取り付けられた突出部23とを備え、第1筒状体21の外周面21bと突出部23の内周面23aと第2筒状体22の端面22cとによって構成される溝部Gに罠用ループLが延在すると共に、突出部23の切り欠き部分23bから罠用ループLの基部Lbが延出する状態で罠用ループLを支持可能に支持部20を構成したことにより、罠用ループLを支持部20で確実に支持すると共に、第1筒状体21の踏み板21eが踏み付けられたときに第1筒状体21を第2筒状体22の基端部22d側に容易に移動させることができる。このため、この括り罠1によれば、罠用ループLが風や地震等の自然現象によって第1筒状体21から外れる誤作動を防止すると共に、捕獲対象獣100の足部202によってカバー30が踏み付けられたときに罠用ループLを確実に正常作動させることができる。
【0039】
また、この括り罠1によれば、カバー30の主板31の中央部に挿通孔Hを形成すると共に、挿通孔Hを中心とする放射状に切り込みSを形成したことにより、裏面の面積が比較的小さい捕獲対象獣100の蹄部102でカバー30が踏み付けられたときに主板31をより変形し易くすることができるため、捕獲対象獣100の脚部101を第1筒状体21の内部21dにより確実に挿入させて罠用ループLによって脚部101をより確実に括ることができる。
【0040】
なお、括り罠は、上記の構成に限定されず、適宜変更することができる。例えば、カバーの構成は上記したカバー30の構成に限定されず適宜変更することができる。具体的には、主板31に挿通孔Hを形成しない構成を採用することもできる。この場合、主板31に挿通孔Hを形成しない構成のカバー30を用いたとしても、イノシシやニホンジカ等の捕獲対象獣100の蹄部102(脚部101)の裏面面積が比較的小さく、かつ切り込みSによって主板31が容易に変形するため、脚部101が第1筒状体21の内部21dに容易に挿入される。また、帯状の側板33に代えて、各種形状(例えば、矩形、半円形および台形等)の複数の片を側板とする構成を採用することもできる。また、側板33を備えずに、第2筒状体22の口径よりも大きく形成した主板31でカバー30を構成することもできる。また、鍔部32を備えていない構成を採用することもできる。
【0041】
また、第1筒状体21および第2筒状体22を円筒状に形成し、突出部23を部分円筒状に形成した例について上記したが、平面視多角形の筒状や平面視楕円形の筒状に形成した第1筒状体21および第2筒状体22、並びにこれらに対応する平面視形状の部分筒状に形成した突出部23を採用することもできる。また、第1筒状体21、第2筒状体22および突出部23を備えて構成した支持部20に代えて、第1筒状体21だけで構成した支持部20を採用することもできる。
【0042】
また、付勢部材としてスプリング13を用いる構成例について上記したが、他の付勢部材(例えば、ゴム等の弾性体)を用いることもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 括り罠
10 本体部
11 ワイヤー
11a 一端部
13 スプリング
20 支持部
21 第1筒状体
21a 先端部
21b 外周面
21c 開口部
21d 内部
21e 踏み板
22 第2筒状体
22a 先端部
22b 外周面
22c 端面
23 突出部
23a 内周面
23b 切り欠き部分
30 カバー
100 捕獲対象獣
101 脚部
102 蹄部
G 溝部
H 挿通孔
L 罠用ループ
Lb 基部
S 切り込み