(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023355
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】造粒物の粒子加工方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20220201BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220201BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220201BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220201BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220201BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220201BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20220201BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K9/20
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/04
A61K31/445
A61K31/166
A61K31/167
A61J3/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126235
(22)【出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000202534
【氏名又は名称】増幸産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩
(72)【発明者】
【氏名】駒居 邦男
(72)【発明者】
【氏名】松本 信男
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C047LL07
4C047LL08
4C076AA29
4C076AA30
4C076AA36
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC29
4C076DD28A
4C076DD29A
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4C076EE06A
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4C076EE11H
4C076EE16A
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4C086AA10
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4C086MA05
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4C086MA52
4C086NA02
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4C206AA10
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4C206KA01
4C206MA02
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4C206MA63
4C206MA72
4C206NA02
4C206NA09
4C206ZB11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水に対して難溶性であったり、苦みを有する生理活性薬物粒子を、製剤操作上簡便な方法で、苦味マスクや溶解性を改善した粒状物とする、造粒物の粒子加工方法の提供。
【解決手段】添加剤粒子や200μm以上の粒子割合を10%以下に前処理した生理活性薬物粒子を流動層造粒装置(流動層・噴流流動層装置・転動流動層装置)に仕込み、流動状態を保ちながら、難溶性薬物粒子を水系の結合剤や水系膜剤に配合し、石臼式湿式粉砕装置で湿式粉砕処理し表面積を増大(微細化)させると共に、表面改質されたスラリーをスプレー添加して、吸着、付着、凝集により造粒する、難溶性薬物の造粒物の粒子加工方法。
【効果】打錠(圧縮成型)時に薬物結晶に加わるストレスを低減でき、薬物結晶の歪みを低減できるため、類縁物質の生成を抑制し製品品質の改善を図ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性薬物粒子を水もしくは水溶性高分子に分散、懸濁、一部溶解して石臼式湿式粉砕装置を用い、平均粒子径30μm以下に湿式粉砕し本薬物懸濁液を、A)流動状態にある200μm以上の粒子割合を10%以下に前処理した同種もしくは異種の生理活性薬物粒子、もしくは、添加剤粒子、賦形剤粒子にスプレー添加して、吸着、付着、凝集等により造粒することで、イ)溶解性の改善、ロ)含量均一性の改善、さらに、ハ)苦味マスク、ニ)造粒粒子相互の摩擦抵抗を低減でき、さらに、ホ)圧縮成型(打錠)時に加えられる圧力による薬物結晶の歪みに起因する類縁物質の生成等製品品質の低下を防止する、造粒物の粒子加工方法。
【請求項2】
難溶性薬物が、造粒の困難な難溶性針状結晶粉体であり、石臼式湿式粉砕装置を用い、粒子の長径/短径比が、5以下、望ましくは3以下に湿式粉砕し、流動状態にある添加剤粒子、賦形剤粒子にスプレー添加することで吸着、付着、凝集等による請求項1に示す造粒物の粒子加工方法。
【請求項3】
湿式粉砕時に添加する液が、水もしくは、高分子結合剤水溶液、又は高分子膜剤液、さらに界面張力を下げる物質を0~10%配合した液である請求項1又は2に示す造粒物の粒子加工方法。
【請求項4】
水溶性高分子がPVAコポリマーである請求項1~3の何れか一項に示す造粒物の粒子加工方法。
【請求項5】
撹拌混合装置(撹拌造粒装置)に添加剤粒子を仕込み、ここに石臼式湿式粉砕装置で粉砕処理された薬物含有液を滴下、もしくはスプレー添加し均一分散の後、乾燥する請求項1~4の何れか一項に示す造粒物の粒子加工方法。
【請求項6】
撹拌混合装置(撹拌造粒装置)や流動層造粒装置(流動層装置・噴流流動層装置・複合型流動層造粒装置等)に、200μm以上の粒子割合を10%以下に処理した生理活性薬物粒子を仕込み、撹拌もしくは流動化させ、ここに石臼式湿式粉砕装置を用いて処理した薬液をスプレー添加もしくは滴下する請求項1~5の何れか一項に示す造粒物の粒子加工方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の方法により得られた造粒物の表面に、水系の結合剤もしくは膜剤液中に水不溶性微粒子を0~30%配合した液を用い、単層もしくは複数層のバリア層被膜を施すことにより、幾何標準偏差[「D84.1/D50」=σg]が、1.1~1.5の粒子とすることを特徴とする造粒物の粒子加工方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の方法により得られた造粒物の表面に、可塑剤を配合しない溶出制御膜剤液に一種もしくは複数種の水系高分子膜剤を配合した液をスプレー添加することにより、平均粒子径が200μm以下で、かつ、幾何標準偏差[「D84.1/D50」=σg]が、1.1~1.4であり、さらにフラクタル次元が、1.0~1.2である、表面が滑らかな粒子とすることを特徴とする造粒物の粒子加工方法。
【請求項9】
界面張力を下げる物質が薬液スラリー濃度に対して0~10重量%である請求項1~8の何れか一項に記載の造粒物の粒子加工方法。
【請求項10】
添加剤である賦形剤が、乳糖、結晶セルロース、トウモロコシ澱粉、バレイショ澱粉、部分アルファー化澱粉、D-マンニトール、白糖、ショ糖、ブドウ糖、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム又はカルボシキメチルスターチナトリウム、クロスポビドン(cr-PVP)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)である請求項1~9のいずれか一項に記載の造粒物の粒子加工方法。
【請求項11】
使用する高分子膜剤の高分子化合物がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E,RL、RS)、メタクリル酸コポリマー(L,LD、S)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、メトローズ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート及びエチルセルロース化合物からなる群から選ばれた一種又は二種以上である請求項1~8のいずれか一項に記載の造粒物の粒子加工方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の造粒物の粒子加工方法により得られた造粒物を他の添加剤と混合して打錠する通常の錠剤もしくは口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造粒物の粒子加工方法、すなわち苦味を有する、もしくは、機械的な力により不安定化する薬物含有粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近取り扱われる薬物は、患者のコンプライアンス向上のために製剤的な工夫が重要ポイントになっている。
【0003】
従来、汎用されている最も一般的な流動層造粒法によれば、流動層容器に投入された複数種の原料粉末が、容器底部通気路より吹き込まれた流動化空気により流動化され、ここに上部に敷設した結合剤液用スプレーノズルより噴霧されたミストが、複数種の原料粉末の表面に付着し近傍を浮遊・流動する粒子と接触することで粒子相互の付着・凝集が進行する。より具体的には、浮遊・流動する難溶性薬物と賦形剤に結合剤液(例えばヒドロキシプロピルセルロース水溶液、もしくはヒドロキシプロピルセルロースのアルコール溶液)のミストが付着し粒子の付着・凝集が進行し次第に造粒されて、後の工程のコーティング用核粒子や打錠用粒子を製造している。
【0004】
流動状態にある薬物や賦形剤の微粒子にノズルからスプレー添加された結合剤水溶液ミストにより湿潤されると、結合剤ミストとの付着・凝集力により、近傍を浮遊・流動する粒子と結合し造粒が進行するが、流動中の粒子相互の衝突等による分離力が働き、この分離力は、針状結晶の場合、結合剤ミスとの結合力よりも大きくなり容易に分離する、すなわち造粒されないことになる。
また、微粉末になるほど装置機壁への付着等も増大して生産性は悪くなっている。
難溶性の生理活性薬物において、200μmよりも大きな粒子割合が10%以上あると、錠剤等からの溶出が遅延することで、回収等のトラブルが生じることもある。
【0005】
また、難溶性薬物は、その溶解性の改善のためにハンマーミルやピンミルを用いて微粉砕しているが、この衝撃等のエネルギー伝達により固体から、粗砕、中砕、微粉砕と段階的に小さくしているが、表面積の増加に伴い、微粒子のクッショニング効果によりエネルギー伝達は吸収されるので、粉砕限界値(一説によると3μmの壁とも云われ:0.1μm~3.0μm)が存在する、さらに打錠(圧縮成型)時にも圧力が加えられる、これらの加えられる機械的なエネルギーのために製品品質が低下する物もあるが、湿式粉砕では水等の媒体によりエネルギーが吸収もしくは緩和されるので、原薬粒子の変質は少なくなる。
また、造粒後に打錠する製剤においては、打錠圧(圧縮成型圧)による機械的なエネルギーにより薬物結晶に歪みが生じ製品品質が低下するケースもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、粉砕する際の機械的なエネルギーにより製品品質が低下する薬物や苦味を有する生理活性薬物粒子を、製剤操作上簡便な方法で、苦味マスクや溶解性・安定性を高めた粒子を調製し、さらに当該、造粒粒子の表面に苦味マスクや溶出制御を施した後、他の添加剤と配合し、そのまま(乾式直打法)、もしくは再造粒して打錠する、通常の錠剤や口腔内崩壊錠を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した。従来から固体粒子の表面積を多くして、生理活性薬物の溶解性を改善するために、ハンマーミルやピンミルを用い乾式粉砕しているが、薬物によっては粉砕に作用するエネルギー伝達により薬物結晶に歪みを生じ劣化・不安定化・類縁物質の増加などさまざまな課題もある。このため、湿式粉砕装置(湿式ボールミルや高圧噴出式粉砕機(Microfluidizerやスターバースト))等があるが、これらの装置は、微少流路(80~110μm)を200Mpa程度の高圧、高速(約 500~600m/sec)で噴出しその衝撃で粉砕する構造でありシステムは複雑で、微少流路の摩耗等もある。湿式ボールミルは長時間粉砕となり生産性は悪い。これに対して、装置も簡略され取扱いの容易な石臼式湿式粉砕装置を医薬品原薬用としてこれらの課題を解消する機構について鋭意検討し本発明を完成させた。
水もしくは、水系の高分子結合剤や水系膜剤液中に生理活性化合物(薬物)を高濃度に分散・懸濁・一部溶解させ、循環使用することで、石臼式湿式粉砕装置(摩砕機)、粉砕限界値は、0.1μm~0.001μmと、乾式粉砕における粉砕限界値よりも小さくなり、且つ粉砕における圧力伝達が湿式媒体に吸収されることで、生理活性薬物粒子の変質等不安定化を低減できる生理活性薬物粒子の処理方法。
得られた薬物含有液を、他の添加剤粒子や生理活性薬物粒子にスプレー添加もしくは滴下する生理活性薬物粒子の処理方法。さらに、必要に応じて打錠する生理活性薬物粒子の処理方法。
石臼式湿式粉砕装置(摩砕機)に用いる媒体である水、もしくは高分子水溶液、または水分散液は、ハンマーミルやピンミル等の乾式粉砕の媒体である空気に比較し密度が大きく、原薬粒子に作用するエネルギーが吸収、緩和される、この結果、薬物結晶の歪みが少なく、また、薬物粒子表面に、結合剤溶液や膜剤液が分布するため苦味マスクやコーティングや表面改質され、圧縮成型(打錠)時における粒子間の摩擦抵抗も少なくなり薬物結晶の歪みが低減されるので類縁物質の生成が少ない事を見いだした。
通常の乾式粉砕では高速回転するハンマーミルやピンミル(回転数=7000rpm~12000rpm:周速=約70~120m/sec)を用いて粉砕しているが薬物結晶に直接、粉砕エネルギーが加えられるが、石臼式湿式粉砕装置(摩砕機)では、高分子結合剤水溶液や水系の膜剤中に分散、懸濁、一部溶解して、且つ、低速湿式粉砕(回転数、1000rpm~3000rpm:周速=約10~30m/sec)することで、表面改質とともに、薬物結晶に作用するストレスを緩和するので薬物粒子結晶の歪みは低減できる。
さらに、薬物粒子を水溶性の高分子結合剤、膜剤で表面処理(表面改質)することで、流動性が改善され、打錠(圧縮成型)時のキシミ等が改善され、この粒子を打錠(圧縮成型)しても、薬物結晶に加わる歪みが低減されることで、製品品質の低下は低減できることを見出した。
使用するグラインダーは、無気孔(ノーポーラス)グラインダーで、薬物が砥石中の気泡中に混入しないため交差汚染が無い、材質は超耐摩耗ファインセラミック製(生理的に不活性な炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ等)でありダイヤモンドに次ぐ硬度で、金属製(ハンマー・ピン)等に比較しグラインダー摩損による異物混入はほとんどありません(SUS-304に比較し極めて硬く、ほとんど摩耗しない)。
【0008】
すなわち、本発明は、下記(1)~(14)の発明に関するものである。
(1)難溶性薬物を水もしくは水系の結合剤溶液や膜剤の溶液もしくは分散液中に配合し低速回転(1000rpm~3000rpm:周速換算=約10m/sec~30m/sec)する石臼式湿式粉砕装置(摩砕機)を用い、平均粒子径、30μm以下に湿式粉砕した懸濁液を、流動状態にある添加剤粒子、賦形剤粒子、もしくは、200μm以上の粒子割合が10%以下に前処理した生理活性薬物粒子にスプレー添加することで吸着、付着、凝集等による造粒物の製造方法、さらに必要に応じて得られた薬物含有粒子に他の添加剤を配合し乾式直打法する生理活性薬物粒子の処理方法。
(2)水もしくは、水系高分子結合剤もしくは水系膜剤あるいはこれらの混合液に添加、配合した液、さらに界面張力を下げる物質(界面活性剤もしくはアルコール類含有液)を0~10%配合した液に難溶性薬物と水不溶性添加剤を配合して、石臼式湿式粉砕装置(摩砕機)(スーパーマスコロイダー)を用い、平均粒子径30μm以下に粉砕した懸濁液を用いる前記(1)記載の粒子加工方法
(3)造粒の困難な針状結晶である難溶性生理活性薬物を5~33%配合し湿式粉砕装置で処理することにより、粒子径を小さくし、表面積を増大させた、さらに、表面改質することで溶解性を改善する前記(1,2)記載の粒子加工方法。
(4)添加剤(賦形剤)粒子を流動層造粒装置(通常の流動層・噴流流動層装置・転動流動層装置)に仕込み、流動状態を保ちながら、前記、湿式粉砕処理した薬液をスプレー添加する造粒物の製造法や撹拌装置で添加剤粒子等を撹拌・流動させ、ここに前記薬物含有液をスプレーもしくは滴下した後、乾燥する処理方法。
(5)撹拌混合装置(撹拌造粒装置)や流動層造粒装置(流動層装置・噴流流動層装置・複合型流動層造粒装置等)に、200μm以上の粒子割合を10%以下に処理した生理活性薬物粒子を仕込み、撹拌もしくは流動化させ、ここに石臼式湿式粉砕装置を用いて処理した薬液をスプレー添加もしくは滴下する請求項1~4に示す処理方法。
(6)前記(1)~(5)に記載の方法により得られた造粒物の表面に、水系の結合剤もしくは膜剤液中に水不溶性微粒子を配合した液を用い、単層もしくは複数層の被膜層を施すことを特徴とする造粒物の製造方法。
(7)前記(1)~(6)に記載の方法により得られた造粒物の表面に、可塑剤を配合しない溶出制御膜剤液に一種もしくは複数種の水系高分子膜剤、および不溶性微粒子(例えばタルク、酸化チタン等)を配合した液をスプレー添加することにより、平均粒子径が300ミクロン以下で、さらにフラクタル次元が1.0~1.5の表面が滑らかな粒子とすることを特徴とする造粒物の製造方法。
(8)生理活性薬物が難溶性難溶性薬物である、前記(1)~(7)のいずれかに記載の造粒物の製造方法。
(9)水溶性高分子結合剤が、PVAコポリマー、もしくは、オイドラギット(L-30D-55)である前記(1)~(8)記載の粒子加工方法、PVAコポリマーはその表面の粘着性が少なく、圧縮成形(打錠)時の粒子相互の摩擦抵抗が少なく、さらに、ガスバリアー性が高いので防湿や不快な臭いのマスキングにも適応できる。
(10)界面張力を下げる物質が薬液スラリー濃度に対して0.0~10重量%である前記(1)~(9)のいずれかに記載の造粒物の製造法。
難溶性薬物の溶解性改善としては、微粉砕法や界面活性剤の添加が一般的であるが、品質試験(過酷試験)時の温度により類縁物質が増加する等の難点もあるが、高分子結合剤が界面張力を下げる作用もあるので、一般的な界面活性剤の添加は少なくしても良い。
(11)スプレー添加する薬液の固形分濃度が0.1~33重量%である前記(1)~(10)のいずれかに記載の造粒物の製造方法。
(12)添加剤である賦形剤が、乳糖、結晶セルロース、トウモロコシ澱粉、バレイショ澱粉、部分アルファー化澱粉、D-マンニトール、白糖、ショ糖、ブドウ糖、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム又はカルボシキメチルスターチナトリウム、クロスポビドン(cr-PVP)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)である前記(1)~(10)のいずれかに記載の造粒物の製造方法。
(13)使用する高分子膜剤の高分子化合物がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E,RL、RS)、メタクリル酸コポリマー(L,LD、S)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、メトローズ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート及びエチルセルロース化合物からなる群から選ばれた一種又は二種以上である前記(1)~(12)のいずれかに記載の造粒物の製造方法。
(14)前記(1)~(13)のいずれかに記載の造粒物の製造方法により得られた造粒物を他の添加剤と混合した後、再造粒して打錠する通常の錠剤もしくは口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生理活性薬物粒子を、製剤操作上簡便な方法で、苦味マスクや溶解性を改善した粒状物を製造する方法を提供することができる。さらに、圧縮成型(打錠)等の操作において粒子に加えられる圧力等に起因する薬物結晶の歪み等が低減できるため、本発明の方法により高品質の固形製剤用造粒物を提供することができる。
【0010】
本発明では、一般的に粉体に分類される添加剤粒子(例えば、乳糖、部分α化澱粉やケイ酸カルシウム等)を流動化状態に保持し、ここに、苦味を有する生理活性薬物を高分子結合剤水溶液に分散・懸濁・一部溶解もしくは全溶解して石臼式湿式微粉砕装置を用い平均粒子径、約50μm~数100nmに微粉砕した薬物と水溶性添加剤(例えば、D-マンニトール)を水溶性結合剤液に溶解して、スプレー添加することで、特別に調製した核粒子を用いることなく、50~180μmの薬物含有核粒子が得られることを見いだした。さらに、含量均一性の向上や、ロス、飛散、装置壁面付着が低減でき、収率も向上するため企業にとっては極めて重要なポイントであると考える。また、送液ポンプの採用等により自動化も容易であり、品質管理の点からもメリットは大きい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施に当たり、流動層装置(流動層装置・噴流流動層装置・転動流動層装置)に仕込まれた粒子の粒子径や粒子物性に応じた適正な流動状態(特に過大風量は避ける)を確認しながら、粉体物性(粒子径・形状・溶解性等)に応じたスプレーミスト径・液の粘度等を選定する。ノズル先端のガス体(一般的に圧縮空気)の吐出速度が400m/秒以上で、なおかつ、吐出液速が1m/秒以下とすることで大きめの粒子の付着凝集は抑制しながら、微粒域粒子の付着凝集を促進させる操作(主な要因はミスト径の調節)することで、造粒物の幾何標準偏差[「D84.1/D50」=σg]が1.2~1.5より好ましくは1.2~1.4の範囲となるようにする。
すなわち、噴流流動する粒子サイズに対して、付着した結合剤液滴径が大きいと、近傍にある粒子と付着するが、このことは、粒子の運動エネルギーに起因する分離力とスプレー液滴による結合力とのバランスで決まる。すなわち、分離力>結合力では、粒子の付着・凝集は抑制され、分離力<結合力では、粒子は付着・凝集する。しかし、同じ液滴径であっても、初期の粒子サイズが小さい時には、付着・凝集に寄与しても、粒子径が有る大きさまで成長すると、質量の増加に伴い分離力が大きくなるので、粒子成長は抑制され、この結果粒度分布のシャープな造粒物が得られる。
このようにスプレーする液の粘度や付着力にもよるが、液滴径を制御することで、幾何標準偏差[「D84.1/D50」=σg]を制御することができることを見いだした。
【0012】
本発明において、被覆層を構成する液に配合する微粒子の平均粒子径は、造粒物の平均粒子径の約1/10程度以下が好ましい。微粒子を配合することにより、造粒物表面の凹凸が少なくなり滑らかな粒子が得られる。これをフラクタル次元で表すと、1.0~1.3の滑らかな粒子表面の造粒物が得られる。
粒子の表面に凹凸があると、バリア性や溶出制御に必要な膜剤が多く必要となる。これは、凸部の膜厚は薄くなるので溶出が早くなる、凸部の膜厚を確保するためには、凹部では過剰に添加することになる。このためには表面状態の滑らかな核粒子が重要となる。さらに、圧縮成型(打錠)時に加えられる圧力に起因する薬物結晶の歪みも低減できるため、製品品質の改善が図れる。
そして、本発明のより好ましい造粒物は、幾何標準偏差[「D84.1/D50」=σg]が1.1~1.5の範囲内であり、かつ、フラクタル次元が1.0~1.2の範囲内のものである。
【0013】
流動層造粒装置は、通常、流動層本体、整流板、送風機、吸気フィルター、熱交換機、スプレー装置、集塵装置、排風機等から構成されている。送風ファンから供給される空気は吸気フィルターで清浄化され、熱交換機で加温されて整流板を通じて装置本体に送入されるが、この熱風は、装置に仕込まれた安定化物質の粉体又は賦形剤を懸濁状態、つまり流動状態に保ち、石臼式湿式粉砕装置(摩砕機)を用いて、微細化することにより比表面積を増大させ、溶出率を改善すると共に、高分子結合剤や高分子膜剤、さらに界面活性剤を配合した後、湿式粉砕処理を行うことで表面改質を施すことで、溶解性を高める粒子加工方法。
得られた高濃度スラリー(固形分濃度:10~50%)をスプレー可能な濃度に調整し、流動状態にある添加剤粒子にスプレー添加することで、溶解性を向上させた平均粒子径が50~300μmの薬物含有造粒物を製造する粒子加工方法。
【0014】
撹拌造粒(例えば・バーチカルグラニュレータ)等に添加剤粒子を仕込み撹拌しながら、ここに、湿式粉砕した薬液スラリーをスプレーもしくは滴下し均一分散させ、その後に乾燥して打錠用顆粒を得ることもできる。
【0015】
添加剤としては、乳糖、結晶セルロース、トウモロコシ澱粉、バレイショ澱粉、部分アルファー化澱粉、D-マンニトール、白糖、ショ糖、ブドウ糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム又はカルボシキメチルスターチナトリウム等が挙げられる。これら賦形剤はその一部、またはすべてを結合剤溶液中に溶解もしくは分散・懸濁しても良い。さらにこれら添加剤は、その表面に安定化剤溶液を噴霧するなどの処理方法で安定化処理(表面改質)した後使用するのが好ましい。
【0016】
本発明の造粒法においては、安定化剤粉末や添加剤は造粒の際のシードとして用いられる。その場合の粒度は、平均粒子径が0.1~50μm程度である。
【0017】
本発明において使用される水系高分子膜剤の高分子化合物としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー等を挙げることができ、なかでもヒドロキシプロピルメチルセルロースやポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマーが好ましい。さらに、タルク等の水不溶性添加剤を配合してもよい。
これらの水系高分子膜剤の使用量は、錠剤全重量の1~50重量%が好ましく、より好ましくは、3~30重量%である。
その他、使用することができる製剤上の添加物としては、通常使用されている賦形剤、崩壊剤、結合剤、矯味矯臭剤、着色剤、等張化剤等その他の添加剤が適宜使用できる。
【0018】
溶出制御のための膜剤としては、たとえばアミノアルキルメタクリレートコポリマー(E,RS)、メタクリル酸コポリマー(L,LD、S)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、メトローズ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、及びエチルセルロース系水分散液等の公知の溶出制御膜剤を挙げることができる。これらの膜剤は1種もしくは複数配合してもよい。
崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化澱粉等を挙げることができる。
【0019】
得られた造粒粒子の表面に光安定性を担保するための、遮光性や吸光性のバリア層をコーティング、レイアリングすること、さらに体内各部位で薬物を放出させる溶出制御膜剤をコーティングすることで、光安定性の確保とともに、苦味マスク、溶出制御を行う粒子加工方法。
苦味を有する生理活性薬物を高分子結合剤水溶液に分散・懸濁・一部溶解もしくは全溶解して石臼式粉砕装置(摩砕機)を用い数μm~数100nmに微粉砕し、スプレー添加することで、特別に調製した核粒子(例えば、ノンバレル:フロイント産業製やセルフィア:旭化成ケミカルズ)を用いることなく、50~150μmの薬物含有核粒子が得られることを見いだした。さらに、含量均一性の向上や、ロス、飛散、装置壁面付着が低減でき、収率も向上するため企業にとっては極めて重要なポイントであると考える。また、送液ポンプの採用等により自動化も容易であり、品質管理の点からもメリットは大きい。
【実施例0020】
A)PVAコポリマー30gを5%濃度水溶液500gに、塩酸ドネペジル100gを分散・懸濁・一部溶解した後、石臼式粉砕装置(摩砕機)を用い、グラインダークリアランス(設定値)=100μm:回転数=1500rpmで湿式粉砕し平均粒子径約25μm以下のスラリー600gを得た。
B)平均粒子径:70μmの部分α化澱粉(PCS)500gを噴流流動層造粒機(パウレック社製:MP-01-SPC型)に投入し流動させ、ここにA)で処理した塩酸ドネペジル含有液をスプレー添加してPCSに吸着・レイアリングすることで、平均粒子径約90μm、フラクタル次元、1.3で、幾何標準偏差(σg)1.3の粒度分布がシャープな造粒粒子(核粒子-1)を得た。
B)得られた核粒子-1を噴流流動層造粒機(パウレック社製:MP-01-SPC型)に投入し流動させ、平均粒子径0.5μmに湿式粉砕したタルク72gと80gの糖アルコール(D-マンニトール)をPVAコポリマー水溶液に溶解、分散させた720g(固形分15%)のスラリー液をスプレー添加し、タルク含有のPVAコポリマーでバリア層を形成し、平均粒子径105μmで、幾何標準偏差(σg)1.3、フラクタル次元1.2の表面形状の滑らかなで、30秒間苦味を抑制した粒子を得た。
A)水溶性高分子結合剤(HPC-SSL)5.0%水溶液、1000gに、塩酸ドネペジル、300gを分散・懸濁させ、石臼式湿式粉砕装置(摩砕機)を用い、グラインダークリアランスの(設定値)=10μm:回転数=1800rpmで湿式粉砕し平均粒子径約10μm以下のスラリー600gを得た。さらに、オイドラギットL-30D-55(固形分30%)500gを加え均一分散させた液(1800g)を調製した。
B)噴流流動層装置(MP-01-SPC型)に、部分α化澱粉(PCS)500gを仕込み流動化させ、ここにA)で得られた塩酸ドネペジル含有液をスプレー添加することで、平均粒子径、120μmで、苦味マスクされた塩酸ドネペジル含有粒子を得た。
C)得られた造粒物に他の添加剤を配合して打錠し、苦味マスクされた、崩壊時間約30秒の口腔内崩壊錠を得た。