(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023362
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】ドラム式製氷機
(51)【国際特許分類】
F25C 1/142 20180101AFI20220201BHJP
【FI】
F25C1/142 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126248
(22)【出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】500320615
【氏名又は名称】エムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】三輪 和宏
(72)【発明者】
【氏名】堀本 貞次
(72)【発明者】
【氏名】市原 竜弥
(57)【要約】
【課題】低温に曝されるドラム式製氷機のドラムと固定軸の間に用いられているシール機構における冷媒の漏洩を完全に防止できるようにしたドラム式製氷機を提供すること。
【解決手段】ドラム3の表面に生成させた氷を刃体19で削り取ることで薄氷を形成するようにしたドラム式製氷機において、ドラム3と、ドラム3の内部に挿通し、ドラム3の内部へ冷媒の供給とドラム3の内部から冷媒の回収を行う固定軸5との間に配設するシール機構10に、柔軟な合成樹脂製の環状のシール部材10aと、環状のシール部材10aに形成された溝10b内に装着された耐食性の金属製のスプリング部材10cとを組み合わせたスプリング荷重式のシール機構10を用いる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムの表面に生成させた氷を刃体で削り取ることで薄氷を形成するようにしたドラム式製氷機において、ドラムと、該ドラムの内部に挿通し、ドラムの内部へ冷媒の供給とドラムの内部から冷媒の回収を行う固定軸との間に配設するシール機構に、柔軟な合成樹脂製の環状のシール部材と、該環状のシール部材に形成された溝内に装着された耐食性の金属製のスプリング部材とを組み合わせたスプリング荷重式のシール機構を用いるようにしたことを特徴とするドラム式製氷機。
【請求項2】
前記固定軸のドラムの内部に挿通した側の端部を自由端にし、ドラムの一端側を機体フレームに軸支し、ドラムの他端側を固定軸に軸支するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のドラム式製氷機。
【請求項3】
前記固定軸のドラムの内部に挿通した側と反対側に、ブロック形状の配管継手をボルト接合によって配設するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のドラム式製氷機。
【請求項4】
前記固定軸に複数の冷媒噴出孔を形成し、該冷媒噴出孔によってドラムの内部へ供給する冷媒の吹き出し速度及び量をコントロールするようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のドラム式製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷機に関し、特に、ドラムの表面に生成させた氷を刃体で削り取ることで薄氷を形成するようにしたドラム式製氷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラムの表面に生成させた氷を刃体で削り取ることで薄氷を形成するようにしたドラム式製氷機が提案され、汎用されている(例えば、特許文献1~2参照。)。
【0003】
この種のドラム式製氷機において、ドラムは、ドラムの表面に氷を生成するために、回転しながらドラムの内部に挿通した固定軸からドラムの内部に冷媒を供給するようにしている。
【0004】
ところで、地球温暖化の観点から、ドラム式製氷機においても使用できる冷媒に制約があり、例えば、オゾン破壊係数ゼロでフロン規制非該当のR-404A(HFC-404A)の場合、従来の冷媒と比較して分子量が小さく、従来のドラム式製氷機のドラムと固定軸の間に用いられているシール機構では、冷媒の漏洩を完全に防止できないという問題があることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-130506号公報
【特許文献2】特開2019-203684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来のドラム式製氷機に用いられているシール機構の有する問題点に鑑み、低温に曝されるドラム式製氷機のドラムと固定軸の間に用いられているシール機構における冷媒の漏洩を完全に防止できるようにしたドラム式製氷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のドラム式製氷機は、ドラムの表面に生成させた氷を刃体で削り取ることで薄氷を形成するようにしたドラム式製氷機において、ドラムと、該ドラムの内部に挿通し、ドラムの内部へ冷媒の供給とドラムの内部から冷媒の回収を行う固定軸との間に配設するシール機構に、柔軟な合成樹脂製の環状のシール部材と、該環状のシール部材に形成された溝内に装着された耐食性の金属製のスプリング部材とを組み合わせたスプリング荷重式のシール機構を用いるようにしたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記固定軸のドラムの内部に挿通した側の端部を自由端にし、ドラムの一端側を機体フレームに軸支し、ドラムの他端側を固定軸に軸支するようにすることができる。
【0009】
また、前記固定軸のドラムの内部に挿通した側と反対側に、ブロック形状の配管継手をボルト接合によって配設するようにすることができる。
【0010】
前記固定軸に複数の冷媒噴出孔を形成し、該冷媒噴出孔によってドラムの内部へ供給する冷媒の吹き出し速度及び量をコントロールするようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のドラム式製氷機によれば、低温に曝されるドラム式製氷機のドラムと固定軸の間に用いられているシール機構における冷媒の漏洩を完全に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のドラム式製氷機の一実施例を示す斜視図である。
【
図2】同ドラム式製氷機を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図5】同ドラム式製氷機を示す
図2のA-A断面図である。
【
図6】同ドラム式製氷機を示す
図2のB-B断面図である。
【
図7】同ドラム式製氷機を示す
図2のC-C断面図である。
【
図8】同ドラム式製氷機を示す
図2のD-D断面図である。
【
図9】同ドラム式製氷機の要部(ドラム)を示す斜視図である。
【
図10】同ドラム式製氷機の要部(ドラム)を示す底面図である。
【
図11】同ドラム式製氷機の要部(ドラム)を示し、(a)は右側面図、(b)は左側面図である。
【
図12】同ドラム式製氷機の要部(ドラム)を示し、(a)は
図11のA-A断面図、(b1)はシール機構(スプリング荷重式シール)の説明図、(b2)は同シール機構の設置状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のドラム式製氷機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1~
図12に、本発明のドラム式製氷機の一実施例を示す。
このドラム式製氷機は、ドラム3の表面に生成させた氷を刃体19で削り取ることで薄氷を形成するようにするもので、ドラム3と、ドラム3の内部に挿通し、ドラム3の内部へ冷媒の供給とドラム3の内部から冷媒の回収を行う固定軸5との間に配設するシール機構10に、柔軟な合成樹脂製の環状のシール部材10aと、環状のシール部材10aに形成された溝10b内に装着された耐食性の金属製のスプリング部材10cとを組み合わせたスプリング荷重式のシール機構を用いるようにしている。
【0015】
固定軸5には、ドラム3の内部へ冷媒の供給を行う冷媒供給路5a及び冷媒噴出孔5bと、ドラム3の内部から冷媒の回収を行う冷媒回収路5c及び冷媒回収孔5dを形成するようにしている。
そして、固定軸5に形成した冷媒噴出孔5bの個数(2個以上の任意の個数。本実施例においては、4個。)及び直径(0.5~2.0mm。本実施例においては、0.8mm。)並びに固定軸5の冷媒噴出孔5bを形成した部分の肉厚(2~10mm。本実施例においては、4.5mm。)によって、ドラム3の内部へ供給する冷媒の吹き出し速度及び量をコントロールするようにしている。
これにより、ドラム3の内部への冷媒の供給及びドラム3の内部からの冷媒の回収を行う構造並びにドラム3の内部へ供給する冷媒の吹き出し速度及び量のコントロールする機構を簡易に構成することができる。
【0016】
固定軸5のドラム3の内部に挿通した側の端部を自由端にし、ドラム3の一端側を機体フレーム20にベアリング1を備えたベアリングハウス2を介して軸支し、ドラム3の他端側を固定軸5にクロスローラベアリング6を介して軸支するようにしている。
これにより、ドラム3の軸支構造を簡略化できる。
ここで、ベアリングハウス2とドラム3との間に、ベアリング1より内側で、Oリング4を配設することによってシールするようにしている。
また、クロスローラベアリング6は、ベアリングホルダ7、ベアリングホルダ9、ロックナット8及び金属カラー13によって所定位置に取り付けられるようにしている。
また、固定軸5のドラム3の内部に挿通した側と反対側の端部は、面に、固定軸5のドラム3の内部に挿通した側と反対側の端部を機体フレーム20に配設した軸受21に回転止めプレート22で回転止めして支持するようにしている。
【0017】
シール機構10には、
図12(b1)及び(b2)に示すように、全芳香族ポリエステル樹脂充填フッ素樹脂等の摺動性に優れた合成樹脂製の環状のシール部材10aと、環状のシール部材10aに形成された溝10b内に装着された316ステンレススチール等の耐食性の金属製のスリットを形成することで屈曲可能に構成した断面U字形のスプリング部材10cとを組み合わせたスプリング荷重式のシール機構(本実施例においては、SPECIALTY FLUID COMPONENTS MANUFACTURING社製の「スプリング荷重式シール」)を用いるようにしている。
ここで、シール機構10は、固定軸5に遊嵌し、ベアリングホルダ9にボルト17で固定されるシール機構押さえ11を介して、押圧状態で取り付けるようにしている。
また、ドラム3とベアリングホルダ7の間及びベアリングホルダ7とベアリングホルダ9の間に、Oリング14、15を配設することによってシールするようにしている。
これにより、低温、具体的には、-50℃程度の温度に曝されるドラム3と固定軸5の間の冷媒の漏洩を防止することができる。
【0018】
固定軸5のドラム3の内部に挿通した側と反対側の端面に、ステンレススチール等の金属製のブロック形状の配管継手12をボルト17で固定するようにしている。
ここで、固定軸5と配管継手12の間に、Oリング16を配設することによってシールするようにしている。
また、配管継手12には、固定軸5の冷媒供給路5aに連通する冷媒供給路12a及び冷媒供給口12bと、固定軸5の冷媒回収路5cに連通する冷媒回収路12c及び冷媒回収口12dを形成するようにしている。
また、冷媒供給口12b及び冷媒回収口12dには、先端に冷媒用接続口を形成した黄銅等の金属製の冷媒用配管(図示省略)を溶接により直接接続したり、先端に冷媒用接続口を形成した黄銅等の金属製のブロック形状の冷媒用配管継手(図示省略)をボルト(図示省略)で固定するようにし、圧縮機、凝縮器等からなる冷凍機(図示省略)との間で冷媒を循環させるようにする。
【0019】
ドラム3は、ギアモータ23の回転駆動力を、モータ側ギア24、チェーン25、ドラム側ギア26及びギアブラケット27を介して伝導することで、回転駆動されるようにしている。
【0020】
ドラム3の表面に生成させる氷の原料である水等の液体は、継手29及び電磁弁30を設けた液供給パイプ28を介して、液面センサ32を備えた液受けトレー31に供給される。
ドラム3は、回転しながら、その下部が、液受けトレー31に貯留された液体に浸漬されるようにし、ドラム3の表面に付着した液体を冷却し、刃体19に到達するまでに凍結させるようにする。
そして、ドラム3の表面に生成させた氷を、刃体19で削り取り、形成された薄氷を、氷ガイド33に沿って落下させ、回収する。
【0021】
以上、本発明のドラム式製氷機について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のドラム式製氷機は、低温に曝されるドラム式製氷機のドラムと固定軸の間に用いられているシール機構における冷媒の漏洩を完全に防止できる特性を有していることから、ドラム式製氷機の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 ベアリング
2 ベアリングハウス
3 ドラム
4 Oリング
5 固定軸
6 クロスローラベアリング
7 ベアリングホルダ
8 ロックナット
9 ベアリングホルダ
10 シール機構
11 シール機構押さえ
12 配管継手
13 金属カラー
14 Oリング
15 Oリング
16 Oリング
17 ボルト
18 ボルト
19 刃体
20 機体フレーム
21 軸受
22 回転止めプレート
23 ギアモータ
24 モータ側ギア
25 チェーン
26 ドラム側ギア
27 ギアブラケット
28 液供給パイプ
29 継手
30 電磁弁
31 液受けトレー
32 液面センサ
33 氷ガイド