(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023385
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】内用液組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20220201BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220201BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20220201BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20220201BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220201BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220201BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L2/00 F
A61K33/26
A61K47/46
A61K47/26
A61K9/08
A61P7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126300
(22)【出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000108339
【氏名又は名称】ゼリア新薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】畠山 勇生
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE05
4B018MD06
4B018MD09
4B018MD76
4B018ME14
4B117LC04
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK08
4B117LK11
4B117LK20
4B117LL02
4C076AA12
4C076BB01
4C076CC14
4C076CC24
4C076CC40
4C076DD22Z
4C076DD30Z
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076DD51
4C076DD61T
4C076DD67T
4C076DD67U
4C076EE57T
4C076EE58
4C076EE58T
4C076FF52
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA11
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA52
4C086NA09
4C086ZA55
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鉄固有の不快臭及び後味を低減した、飲用しやすい鉄含有内用液組成物の提供。
【解決手段】鉄化合物を、鉄として0.01~0.03%(w/v)、ローヤルゼリーを0.2~1.6%(w/v)、スクラロースを0.006~0.08%(w/v)含有する内用液組成物、又はさらにタイソウを含有し、鉄とローヤルゼリーの含有質量比(b/a)が1:20~1:150、ローヤルゼリーが生ローヤルゼリー又は生ローヤルゼリーを凍結乾燥したローヤルゼリーであり、pHが3.5~4.5である内用液組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)鉄化合物を鉄として0.01~0.03%(w/v)、(b)ローヤルゼリーを0.2~1.6%(w/v)、(c)スクラロースを0.006~0.08%(w/v)含有する内用液組成物。
【請求項2】
鉄とローヤルゼリーの含有質量比(b/a)が1:20~1:150である請求項1に記載の内用液組成物
【請求項3】
さらに(d)タイソウを含有する請求項1又は2に記載の内用液組成物。
【請求項4】
(b)ローヤルゼリーが、生ローヤルゼリー又は生ローヤルゼリーを凍結乾燥したローヤルゼリーである請求項1~3のいずれか1項に記載の内用液組成物。
【請求項5】
pHが3.5~4.5である請求項1~4のいずれか1項に記載の内用液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄化合物を含有する内用液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄欠乏性貧血は、食事からの鉄の摂取量不足、妊娠や出産、授乳期、成長が著しい思春期、スポーツ選手などに多い疾患であり、その治療には鉄化合物の経口剤が用いられる。
しかし、鉄化合物含有製剤、特に鉄化合物含有内用液組成物には、鉄由来の不快臭及び後味があり、服用感が著しく悪くなるという問題がある。
この鉄由来の不快臭及び後味を改善する技術として、特定の有機酸を配合する方法(特許文献1)、地黄のエキスを配合する方法(特許文献2)、スクラロースを配合する方法(特許文献3)、γ―アミノ酪酸を配合する方法(特許文献4)、イノシトールを配合する方法(特許文献5)などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-194356号公報
【特許文献2】特開平11-001436号公報
【特許文献3】特開2000-239173号公報
【特許文献4】特開2004-315441号公報
【特許文献5】特開2005-255653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの技術では、鉄由来の不快臭及び後味をマスキングするには十分ではなく、服用感が良好な鉄化合物を含有する内用液組成物を得ることは極めて困難であった。
従って、本発明の課題は、鉄由来の不快臭及び後味が十分にマスキングされ、服用感の良好な鉄化合物含有内用液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、鉄化合物に種々の成分を添加して内用液組成物を製造し、その臭い、後味、飲みやすさについて検討してきたところ、鉄化合物に特定量のローヤルゼリーとスクラロースを組み合わせて配合すれば、鉄化合物特有の臭い、後味が低減され、飲みやすさも良好になることを見出した。さらに、生薬であるタイソウを配合すると、鉄化合物特有の臭い、後味がさらに低減されることも見出した。
【0006】
従って、本発明は、次の発明[1]~[5]を提供するものである。
[1](a)鉄化合物を鉄として0.01~0.03%(w/v)、(b)ローヤルゼリーを0.2~1.6%(w/v)、(c)スクラロースを0.006~0.08%(w/v)含有する内用液組成物。
[2]鉄とローヤルゼリーの含有質量比(a:b)が1:20~1:150である[1]に記載の内用液組成物
[3]さらに(d)タイソウを含有する[1]又は[2]に記載の内用液組成物。
[4](b)ローヤルゼリーが、生ローヤルゼリー又は生ローヤルゼリーを凍結乾燥したローヤルゼリーである[1]~[3]のいずれかに記載の内用液組成物。
[5]pHが3.5~4.5である[1]~[4]のいずれかに記載の内用液組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の内用液組成物は、鉄化合物の不快臭及び後味が十分に低減され、服用感が良好であることから、鉄化合物の服用を必要とするヒトが継続して服用が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の内用液組成物は、(a)鉄化合物を鉄として0.01~0.03%(w/v)、(b)ローヤルゼリーを0.2~1.6%(w/v)、(c)スクラロースを0.006~0.08%(w/v)含有することを特徴とする。
本発明においては、成分(a)、成分(b)及び成分(c)の3成分を併用することに加えて、これらの3成分それぞれの含有量が上記範囲にあることが、鉄化合物の不快臭及び後味を十分に低減し、服用感を良好にする点で重要である。
【0009】
成分(a)の鉄化合物は、本発明の組成物が内用液組成物であることから水溶性鉄化合物であり、具体的には、不快臭、後味が比較的弱い点から、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸鉄ナトリウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄などが好ましく、中でもクエン酸鉄アンモニウム、クエン酸鉄ナトリウムがより好ましい。
鉄化合物(a)の含有量は、鉄化合物の有効性と不快臭、後味の低減効果の観点から、鉄化合物中の鉄成分に換算して、本発明内用液組成物中に、0.01~0.03%(w/v)である。この量が0.01%(w/v)未満では鉄化合物の摂取量が十分でなくなる。また、0.03%(w/v)を超えると、鉄化合物の不快臭、後味を十分に低減できない。好ましい鉄化合物の含有量は、鉄化合物中の鉄成分に換算して0.01~0.024%(w/v)であり、さらに好ましくは0.01~0.020%(w/v)である。
【0010】
成分(b)のローヤルゼリーは、ミツバチの若い働き蜂が花粉や蜂蜜を食べ、体内で分解・合成し、上顎と下顎の咽頭腺などから分泌する乳白色のクリーム状の物質である。ローヤルゼリーには、免疫調節作用、コレステロール低下作用など種々の生理活性があることが報告されている。
本発明で用いられるローヤルゼリーとしては、例えば採取してから加工していないローヤルゼリー(生ローヤルゼリー)、生ローヤルゼリーを凍結乾燥などの方法で乾燥させた乾燥ローヤルゼリー、生ローヤルゼリーまたは乾燥ローヤルゼリーに添加物などを加えた調整ローヤルゼリー、生ローヤルゼリーまたは乾燥ローヤルゼリーを含水アルコールなどで抽出したローヤルゼリー抽出液、その抽出液を濃縮したローヤルゼリーエキス、生ローヤルゼリーまたは乾燥ローヤルゼリーを酵素分解した酵素処理ローヤルゼリーなどを用いることができる。このうち、生ローヤルゼリー、生ローヤルゼリーを凍結乾燥などの方法で乾燥させた乾燥ローヤルゼリー、生ローヤルゼリーまたは乾燥ローヤルゼリーに添加物などを加えた調整ローヤルゼリー、生ローヤルゼリーまたは乾燥ローヤルゼリーを酵素分解した酵素処理ローヤルゼリーがより好ましい。さらに、これらのうち、医薬品、医薬部外品の場合には、日本薬局方に収載されているローヤルゼリーの規格に適合する生ローヤルゼリー及び乾燥ローヤルゼリーを使用するのが望ましい。また、食品の場合は、たとえば全国ローヤルゼリー公正取引委員会の基準に適合する生ローヤルゼリー及び乾燥ローヤルゼリーを使用するのが望ましい。
成分(b)の含有量は、少ない場合は鉄化合物の後味を十分にマスキングできず、多い場合は水不溶性の沈殿を生じるため、ローヤルゼリーの原生薬含量として、本発明内用液組成物中に、0.2~1.6%(w/v)であり、好ましくは0.2~1.4%(w/v)であり、さらに好ましくは0.4~1.2%(w/v)である。
【0011】
本発明内用液組成物における鉄とローヤルゼリーの含有質量比(a:b)は、鉄化合物の不快臭、後味の低減効果の観点から、好ましくは1:20~1:150であり、より好ましくは1:20~1:120、さらに好ましくは1:40~1:100である。ここで、質量比は、鉄化合物中の鉄換算値とローヤルゼリーの原生薬含量との質量比である。
【0012】
成分(c)のスクラロースは、人工甘味料であり、ローヤルゼリーとの併用により、鉄化合物の不快臭、後味の低減効果が得られ、良好な服用感が得られる。
成分(c)の含有量は、鉄化合物の不快臭、後味の低減効果を得、良好な服用感を得る観点から、本発明内用液組成物中に0.006~0.08%(w/v)であり、好ましくは0.006~0.06%(w/v)であり、さらに好ましくは0.012~0.06%(w/v)である。
【0013】
また、本発明の内用液組成物は、更に、生薬である(d)タイソウ(大棗)を含有させることにより、鉄化合物の不快臭、後味の低減効果が増強され、良好な服用感も向上する。
タイソウ(大棗)は、クロウメモドキ科のナツメの果実を乾燥させたものであり、医薬品としては利尿剤、強壮剤などに用いられている。本発明に使用するタイソウとしては、医薬品の場合には、タイソウ乾燥エキス、タイソウ軟エキス及びタイソウ流エキスから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。また、食品の場合にはナツメ抽出物、ナツメ抽出液などを用いることができる。タイソウは、味は甘いが、特異なにおいがあり、鉄化合物の不快臭、後味の低減効果があることは意外であった。
本発明内用液組成物中のこれらタイソウエキス(ナツメ抽出物、ナツメ抽出液を含む)の含有量は、タイソウエキスの量が少ない場合は鉄の後味を十分にマスキングできず、多い場合はタイソウエキスそのものの味が強く出るため、原生薬含量として、好ましくは0.1~2.0%(w/v)、より好ましくは0.2~1.6%(w/v)、さらに好ましくは0.4~1.0%(w/v)である。
【0014】
さらに、本発明の内用液組成物には、前記成分以外の薬効成分または機能性成分、甘味料、香味料、pH調節剤、酸味料、安定化剤、増粘剤、着色剤、溶解補助剤などを含有させることができる。具体的には、トウキ、ショウキョウ、シャクヤクなどの生薬、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチンアミドなどのビタミン類、グリシンなどのアミノ酸、クエン酸又はその塩、リンゴ酸又はその塩などの有機酸又はその塩、アセスルファムカリウム、エリスリトールなどの甘味料、カラメルなどの着色剤、pH調節剤、水などを含有させることができる。
【0015】
本発明の内用液組成物のpHとしては、鉄化合物の不快臭、後味の低減効果が増強され、良好な服用感も向上する点から、好ましくは2.5~5.0であり、より好ましくは3.0~4.5であり、さらに好ましくは3.5~4.5であり、よりさらに好ましくは3.7~4.3である。
【0016】
本発明の内用液組成物は、例えば次に示す方法により製造することができる。各成分を精製水に溶解し、pH調節剤を加えて目的のpHに調整し、精製水を加えて所望の濃度の液とする。この液をろ過して褐色ガラス瓶に充填した後、80℃で15分間加熱殺菌して、内用液組成物を得る。
【0017】
本発明の内用液組成物は、内服用液剤の形態であればよく、医薬品だけでなく、機能性食品、特定保健用食品、清涼飲料水とすることができる。鉄化合物の不快臭、後味が低減され、良好な服用感であることから、継続して服用することができることから、特に医薬品、機能性食品、清涼飲料水として有用である。
【実施例0018】
表1及び表2記載の処方で、各成分を精製水に溶解し、pH調節剤を加えて目的のpHに調整し、精製水を加えて所望の濃度の液に調製した。この液をろ過して褐色ガラス瓶に充填した後、80℃で15分間加熱殺菌して、内用液組成物を得た。
これらの各内用液組成物につき、服用感試験を10人で行った。鉄化合物の後味、臭いについて評価した。また飲みやすさを評価した。また評価の合計点から総合評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0019】
なお、評価基準は次の(1)、(2)及び(3)のとおりである。
(1)鉄化合物の後味、臭いについて
5点:感じない
4点:ほとんど感じない
3点:やや感じる
2点:感じる
1点:かなり感じる
【0020】
(2)飲みやすさ
5点:非常に飲みやすい
4点:飲みやすい
3点:普通
2点:やや飲みにくい
1点:飲みにくい
【0021】
(3)総合評価
(1)(2)の10名の合計点が
86点以上:◎
71点から85点:〇
55点から70点:△
54点以下:×
【0022】
【0023】