(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023399
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】ビニールハウスのネット巻締機構
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20220201BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
A01G9/24 K
A01G9/14 C
A01G9/24 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126326
(22)【出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】320007516
【氏名又は名称】早川企画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】早川 義美
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029AA01
2B029BB03
2B029NA02
2B029NA17
2B029RA02
2B029RB01
2B029RB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビニールハウスを覆うビニールシートの外側全面を覆うネットの締付けを確実且つスムースに行うネット巻締機構の提供。
【解決手段】ビニールハウス1のネット巻締機構は、山形に形成された多数の骨部材2を前後方向に併設し、該骨部材2に沿って左右方向に巻取り・巻戻し移動可能に可動フィルム9を張設してトンネル状のハウス1を形成し、該ハウス1の外周面を覆いハウス1の外側に前後方向に軸支した巻締軸19によって可動フィルム9に密着させるべく巻締める通気性又は通風性を備えたネット8を設けたビニールハウスであって、上記巻締軸19の軸受部材17を少なくともハウス1の前後端の骨部材2上に設け、ハウス1の屋根面3及び左右両側面4の全長に亘って連続させて被覆することを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山形に形成された多数の骨部材(2)を前後方向に併設し、該骨部材(2)に沿って左右方向に巻取り・巻戻し移動可能に可動フィルム(9)を張設してトンネル状のハウス(1)を形成し、該ハウス(1)の外周面を覆いハウス(1)の外側に前後方向に軸支した巻締軸(19)によって可動フィルム(9)に密着させるべく巻締める通気性又は通風性を備えたネット(8)を設けたビニールハウスであって、上記巻締軸(19)の軸受部材(17)を少なくともハウス(1)の前後端の骨部材(2)上に設け、ハウス(1)の屋根面(3)及び左右両側面(4)の全長に亘って被覆するビニールハウスのネット巻締機構。
【請求項2】
ネット(8)の左右の裾側端部を骨部材(2)側に固定し、当該固定部の中途でネット(8)の外周面側に突出する複数個の軸受部材(17)によって巻締軸(19)を軸支するとともに、軸受部材(17)を挿通させるネット(8)の挿通部(8a)を、巻締操作時に上記軸受部材(17)に対してネット(8)の左右方向の移動を許容する形状及び寸法に形成してなる請求項1に記載のビニールハウスのネット巻締機構。
【請求項3】
ネット(8)が左右及び前後方向に連続した部材として形成された請求項1又は2に記載のビニールハウスのネット巻締機構。
【請求項4】
挿通部(8a)が軸受部材(17)の前後幅と巻締又は巻締めと巻戻しに必要な左右長を備えたスリット状の挿通孔からなる請求項2又は3に記載のビニールハウスのネット巻締機構。
【請求項5】
巻締軸(19)がハウス(1)の棟部に沿って軸支され、ネット(8)の左右両端がハウス(1)の骨部材(2)側に固定されてなる請求項1~4のいずれかに記載のビニールハウスのネット巻締機構。
【請求項6】
ネット(8)が可動フィルム(9)を外表面側から被覆する防風ネット,遮光ネット,防虫ネット,寒冷紗のいずれかである請求項1~5のいずれかに記載のビニールハウスのネット巻締機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビニールハウスの外周を被覆するネットの巻締めを行うビニールハウスのネット巻締機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ビニールハウスのビニールシートの外面に防虫用又は遮光用のネットを被るもの、さらにこれらのシートやネットをアーチ形骨材の外周面に沿って巻き上げるものは特許文献1によって公知であるほか、ビニールシートの安定的な固定をするために隣接骨部材間に締付バンドを巻掛けてこれを巻締めする機構も特許文献2等によって公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3015118号公報
【特許文献2】実用新案登録第4079853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ビニールハウスで特許文献2のように巻上げ可能な可動フィルムの表面にネットを被せ、ビニールシートの外表面をネットを巻付けてシートを安定させるためには、特許文献2に示すフィルム押え具(締付バンド)に代えて、隣接骨材間毎に幅広のネットを巻締め可能に取付ける他はなく、この方法ではハウス全体を隙間なくネットで覆うことは困難であるほか、帯状の多数の締付ネットを取付ける必要があり、コストや労力負担が多大になるという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明のビニールハウスのネット巻締機構は、第1に山形に形成された多数の骨部材2を前後方向に併設し、該骨部材2に沿って左右方向に巻取り・巻戻し移動可能に可動フィルム9を張設してトンネル状のハウス1を形成し、該ハウス1の外周面を覆いハウス1の外側に前後方向に軸支した巻締軸19によって可動フィルム9に密着させるべく巻締める通気性又は通風性を備えたネット8を設けたビニールハウスであって、上記巻締軸19の軸受部材17を少なくともハウス1の前後端の骨部材2上に設け、ハウス1の屋根面3及び左右両側面4の全長に亘って被覆することを特徴とする。
【0006】
第2に、ネット8の左右の裾側端部を骨部材2側に固定し、当該固定部の中途でネット8の外周面側に突出する複数個の軸受部材17によって巻締軸19を軸支するとともに、軸受部材17を挿通させるネット8の挿通部8aを、巻締操作時に上記軸受部材17に対してネット8の左右方向の移動を許容する形状及び寸法に形成してなることを特徴としている。
【0007】
第3に、ネット8が左右及び前後方向に連続した部材として形成されたことを特徴としている。
【0008】
第4に、挿通部8aが軸受部材17の前後幅と巻締又は巻締めと巻戻しに必要な左右長を備えたスリット状の挿通孔からなることを特徴としている。
【0009】
第5に、巻締軸19がハウス1の棟部に沿って軸支され、ネット8の左右両端がハウス1の骨部材2側に固定されてなることを特徴としている。
【0010】
第6に、ネット8が可動フィルム9を外表面側から被覆する防風ネット,遮光ネット,防虫ネット,寒冷紗のいずれかであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
以上のように構成される本発明のネット巻締機構によれば、以下に述べるような効果を奏する。尚、下記以外の詳細な効果は、発明の実施の形態の説明において詳述する。
【0012】
(1)ハウス全体若しくは大部分をフィルムの上から覆って巻締めることができるため、ビニールハウスに対する耐風圧や飛来物からの保護等の強風対策として効果的であり、さらにフィルムを巻き寄せて内部を外気に開放してより強い強風からハウスを守るためにも有用である。
【0013】
(2)またネットとして防虫用,遮光用,低温対策用メッシュ材を用いる場合や、フィルムを開放して露地栽培の環境下での栽培に切換えることも簡単に行えるほか、各種ネットに対応できる汎用性がある。
【0014】
(3)巻締軸の軸受挿通部分が軸受に対して、ネット巻取り又は巻戻し操作時のネットの左右動を許容する左右方向のスリットにする等の形状及び寸法に形成されることによって、ネットの緊締が簡単で且つ少ない操作量によってスムースに行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の機構を適用したビニールハウスの分解斜視図である。
【
図2】本発明のネットの巻締機構の要部を示す斜視図である。
【
図4】本発明の巻締機構におけるネットの裾側端部の固定構造を示す拡大断面図である。
【
図5】(A),(B),(C)は巻締軸へのネットの固定構造と、巻締待期姿勢及び巻締姿勢の1例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図5は本発明のネット巻締機構を適用したビニールハウスの1実施形態を示し、
図1に示すハウス1は、スチールパイプ等からなる多数のアーチ形フレームとして構成される骨部材2を奥行き(前後)方向に所定間隔毎に立設し、上部(屋根部)面3と左右両側面4、出入口6を備えた前後面7をビニールシートで覆うとともに、その外表面(屋根部3と左右両側面4)をネット8で覆って構成されている。ネット8は後述するようにハウス1の左右両側面4の下端裾端と固定されている。
【0017】
上記ネット8は内側のビニールシートの強風や飛来物からの保護,通風の確保,防虫,防鳥,遮光,寒冷対策等の目的に応じて、プラスチック紐等による編成ネット,プレス成形によるシート状メッシュ材等の各種材質又はメッシュ(網目)の大小等が選択される。
【0018】
ビニールシートはハウスの上面と左右両側面を被覆する可動フィルム9と、前後面を覆う端面フィルム11、ハウスの前後端の上面及び両側面を覆う帯状の端部フィルム12、左右の両裾下端部を覆う帯状の裾部フィルム13とで構成されている。
【0019】
ハウス1の棟部には、棟方向(前後方向)に沿って
図3に示すような上部開放形でアリ溝形のチャンネル状断面に板金成形された支持フレーム14が骨部材2にビス止め固定されている。この支持フレーム14には前記可動フィルム9の左右の中央をアリ溝形の内面に沿わせ、底部に特許文献2に示す台形波型の平面タイプのスプリング16を挿入する(
図3参照)ことにより、可動フィルム9を支持フレーム14に取付け固定している。
【0020】
さらに上記支持フレーム14には、
図1~
図3に示すように、上部を円弧状のC形に折曲げた軸受部17aが形成され、その開放端に外向きのL字形の脚部17bを延設して板金形成された軸受部材17が、その脚部17bを挿入して複数個所定間隔毎に配設されるとともに、脚部17bをボルト18により開脚させて支持フレーム14内に固定されている。下端の脚部17bの先端には、弾力性を備えたプラスチック又はゴム等からなるフィルム保護層17cがコーティングされている。
【0021】
支持フレーム14上に直線状に配設された軸受部材17の軸受部17a内には、前後方向のスチールパイプ等からなる巻締軸19が回転可能にハウス全長にわたって挿通軸支され、この巻締軸19には後述するようにネット8の左右方向の中心部が内面側で巻掛けられて着脱可能に取付け固定されており、この巻締軸19を左又は右回りに回転操作することにより、ネット8は棟部方向に引寄せられて下側の可動フィルム9の表面に対して密着すべく巻締めされ、逆回転操作により緩められる。
【0022】
軸受部材17の軸受部17aはネット8の外表面側に突出するが、ネット8側には
図2に示すようにこの軸受部材17を挿通させる挿通部(孔)8aが、各軸受部材17の設置位置毎に左右方向のスリット(長孔)として切抜き形成されている。この例ではスリット状の挿通部8aの左右中心位置に挿通され、上記巻締時にネット8が左方向又は右方向に移動するのを許容する。
【0023】
そしてネット8の左右中心は、隣り合う上記挿通部8a間に被さった状態で、アルミ材等の金属又はFRP等のプラスチック材からなる半円形断面の円筒片状のクリップ21が、外側から巻締軸19の周面に嵌合するように被せられてビス止め固定されている(
図5(A)参照)。その結果ネット8は、クリップ21内面と巻締軸19の周面に挟持されて巻締軸19に固定され、巻締軸19を回転操作することにより、左右両側共に同時に巻締軸19に重なり合って巻取られ、引寄せられて締付けられる(
図5(B)~(C)参照)。
【0024】
尚、図示する例では巻締軸19が左右いずれの回転によっても巻締めできるように、上面に突出した巻締軸19の左右両側にスリット8aが形成されているが、巻締軸19による巻締め方向を左右いずれかの側のみにした場合は、左右いずれかの側のスリット8aは形成する必要がなく、スリット8aの左右長は半減できる。
【0025】
次にネット8の左右両側端の固定構造について説明すると、ハウス1の左右両側面4の下端部では、
図1,
図4に示すように、棟部に使用した支持フレーム14,スプリング16,軸受部材17と同一の支持フレーム14´,スプリング16´,軸受部材17´を用いて、棟部における可動フィルム9の固定と同様の固定方法によってネット8が固定されており、ここでは上記と共通する固定構造の説明を割愛する。
【0026】
但し、ネット8の左右両側端の固定は必ずしも上記の固定構造に限られることなく、例えばハウス1側に取付けられた通常の鋼管等にネット下端を巻付けて端部固定することも可能である。
【0027】
また可動フィルム9は、既述のようにネット8の下側にあって棟部の支持フレーム14に固定されているが、その両端はハウス1の前後長にわたりネット8の下側に前後方向に挿入される鋼管等からなる巻取軸22に巻付固定されている。
【0028】
この巻付け固定は、可動フィルム9の左右両端をチューブ状に折返し固定し、チューブ内部に巻取軸22を挿入し、前述したクリップ21を外側から被せてビス止めする等の方法によって行われ、巻取軸22を棟部の左側では時計方向回転、右側では反時計方向回転させることにより、ハウス1の屋根部3に沿って転動させながら可動フィルム9の両端を巻上げ、逆回転させることによって巻降すことができる。
【0029】
上記可動フィルム9の巻上げにより、ハウス1の巻上げられた部分はネット8のみの被覆となって、この部分は通風や降雨時の雨水確保が自由に行われる。また可動フィルム9全体を巻降してネット8を巻締めることにより、ハウス1の屋根部3及び左右両側面4がフィルム(ビニールシート)で被覆され、且つ屋根部3と左右両側面4において、ビニールシートが骨部材2側に安定的に押付けられる。
【0030】
尚、上記実施形態では棟部に支持フレーム14と軸受部材17及び巻締軸19を設けて一箇所でネット8の両側で巻締める機構としたが、ハウス1の左右両側面4の下端又は一方の下端に同様の巻締機構を設けて、ネット8の左右の下端又は左右の一方の下端を巻締軸9に巻付け固定してネット8の巻締めを行う機構とすることもできる(いずれも図示しない)。
【0031】
この場合、軸受部材17をハウスの前後端のみに設け、前後の軸受部材17,17間でネット端部を巻締軸に巻付け固定することにより、ネット8に挿通孔(スリット)8aを設けない構造にすることができ、前後長の短いビニールハウスに適している。
【0032】
また前後長の長いビニールハウスでは、途中に巻付けたネットとともに巻締軸の撓みを補う一対の受けローラや回転を許容する円弧状の受け具等(図示せず)を一箇所以上設けることにより、巻締軸19の回転を円滑に行うことができる。
【0033】
上記巻締軸19の回転操作は、
図1に示すように、その端部に係合する、例えばウォームを利用した減速機付の巻取機23を、ユニバーサルジョイント付の操作ハンドル24を用いて行われる。また巻取軸22も同様な操作ハンドル26を軸端に係合させて回転操作される。
【符号の説明】
【0034】
1 ハウス
2 骨部材
3 屋根面
4 側面
8 ネット
8a 挿通部(スリット)
9 ネット
17 軸受部材
19 巻締軸