(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023416
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】二酸化塩素溶液生成装置および亜塩素酸塩溶液酸性化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20060101AFI20220201BHJP
C02F 1/72 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
C02F1/72 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126349
(22)【出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】594109705
【氏名又は名称】アムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(74)【代理人】
【識別番号】100116056
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 信夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 友則
【テーマコード(参考)】
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D050AA20
4D050AB45
4D050BC04
4D050BD06
4D050CA08
4D050CA10
4D061DA03
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB29
4D061EB30
4D061EB35
4D061ED12
4D061FA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一定濃度の二酸化塩素溶液を長期間安定して生成する装置を提供する。
【解決手段】亜塩素酸塩溶液を酸性化し、酸性化した亜塩素酸塩溶液を二酸化塩素溶液に転化する二酸化塩素溶液生成装置であって、前記亜塩素酸塩溶液を送液する間欠定量ポンプ130と、亜塩素酸塩溶液を希釈するための水を一定量で流通させるための流量調節器110と、亜塩素酸塩溶液と水とを混合して均一濃度の亜塩素酸塩希釈液を得るためのエジェクタ120と、亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段と、酸性化手段により酸性化した亜塩素酸塩希釈液を二酸化塩素溶液に転化する触媒リアクター150と、を有する二酸化塩素溶液生成装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜塩素酸塩溶液を酸性化し、酸性化した亜塩素酸塩溶液を二酸化塩素溶液に転化する二酸化塩素溶液生成装置であって、
前記亜塩素酸塩溶液を送液する間欠定量ポンプと、
前記亜塩素酸塩溶液を希釈するための水を一定量で流通させるための流量調節器と、
前記亜塩素酸塩溶液と、前記水とを混合して均一濃度の亜塩素酸塩希釈液を得るためのエジェクタと、
前記亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段と、
前記酸性化手段により酸性化した亜塩素酸塩希釈液を二酸化塩素溶液に転化する触媒リアクターと、を有することを特徴とする二酸化塩素溶液生成装置。
【請求項2】
前記エジェクタは、少なくとも1つの吸引部を有し、前記吸引部と前記間欠定量ポンプとが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の二酸化塩素溶液生成装置。
【請求項3】
前記流量調節器は、定流量弁であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二酸化塩素溶液生成装置。
【請求項4】
前記間欠定量ポンプは、ダイヤフラム式ポンプであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の二酸化塩素溶液生成装置。
【請求項5】
二酸化塩素溶液の生成量が0.001~1L/minであることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の二酸化塩素溶液生成装置。
【請求項6】
前記亜塩素酸塩溶液の濃度が亜塩素酸イオン濃度として1~10000mg/Lであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の二酸化塩素溶液生成装置。
【請求項7】
前記触媒リアクターは、活性アルミナ担体に白金を0.01~0.25質量%担持させた白金アルミナ触媒を備えていることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の二酸化塩素溶液生成装置。
【請求項8】
前記活性アルミナ担体が、比表面積値50~300m2/g、粒子径0.1~10mmであることを特徴とする請求項7に記載の二酸化塩素溶液生成装置。
【請求項9】
亜塩素酸塩溶液を酸性化する亜塩素酸塩溶液酸性化装置であって、
前記亜塩素酸塩溶液を送液する間欠定量ポンプと、
前記亜塩素酸塩溶液を希釈するための水を一定量で流通させるための流量調節器と、
前記亜塩素酸塩溶液と、前記水とを混合して均一濃度の亜塩素酸塩希釈液を得るためのエジェクタと、
前記亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段と、を有することを特徴とする亜塩素酸塩溶液酸性化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素溶液生成装置および亜塩素酸塩溶液酸性化装置に関する。より特定的には、亜塩素酸塩溶液を酸性化させる亜塩素酸塩溶液酸性化装置を利用した二酸化塩素溶液生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素溶液は、酸化力・殺菌力に優れた物質であり、殺菌剤、漂白剤、および燻蒸消毒剤として商業的に広く利用されている。なお、二酸化塩素溶液は、揮発性が高く、光によって急速に分解が進むため、保管するのに難がある。そのため、二酸化塩素溶液を使用する場合は、使用の都度、現場で生成する必要があった。
【0003】
二酸化塩素溶液を生成する方法としては、亜塩素酸塩溶液を陽イオン交換樹脂と接触させて酸性化し、酸性化した亜塩素酸塩溶液を触媒と接触させて二酸化塩素溶液を生成する方法が知られている(特許文献1 参照)。また、二酸化塩素を含有した殺菌水の生成装置としては、二酸化塩素溶液の濃度のバラツキを抑えるため、亜塩素酸ナトリウム溶液のpHを常時測定し、pHが管理範囲から外れた亜塩素酸ナトリウム溶液を排液することで、二酸化塩素溶液の濃度を安定化する方法が知られている(特許文献2 参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004-536761号公報
【特許文献2】特開2015-217334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で二酸化塩素溶液を生成する場合、陽イオン交換樹脂の交換容量を超えると、陽イオン交換樹脂の再生処理等を行わなければならず、連続的に二酸化塩素溶液を生成できないという問題が生じていた。また、特許文献2に記載の装置を使用した場合、pH計の再現性や測定誤差を考慮すると、pHで検出できる亜塩素酸ナトリウム濃度のバラツキが大きく、亜塩素酸ナトリウム濃度の変化量は少なくとも数百mg/Lであった。そのため、pH管理による二酸化塩素溶液濃度のバラツキ抑制化効果は不十分なものであった。
【0006】
本発明は、かかる従来発明における課題に鑑みてされたものであり、一定濃度の二酸化塩素溶液を長期間安定して生成できる二酸化塩素溶液生成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。
【0008】
本発明の一局面に係る二酸化塩素溶液生成装置は、亜塩素酸塩溶液を酸性化し、酸性化した亜塩素酸塩溶液を二酸化塩素溶液に転化する二酸化塩素溶液生成装置であって、前記亜塩素酸塩溶液を送液する間欠定量ポンプと、前記亜塩素酸塩溶液を希釈するための水を一定量で流通させるための流量調節器と、前記亜塩素酸塩溶液と、前記水とを混合して均一濃度の亜塩素酸塩希釈液を得るためのエジェクタと、前記亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段と、前記酸性化手段により酸性化した亜塩素酸塩希釈液を二酸化塩素溶液に転化する触媒リアクターと、を有することを特徴とする。
かかる構成により、一定濃度の二酸化塩素溶液を長期間安定して生成することができる。これは、間欠定量ポンプとエジェクタとを組み合わせることにより、亜塩素酸塩溶液と水とをより確実に混合させることができるためである。
【0009】
また、好ましくは、前記エジェクタは、少なくとも1つの吸引部を有し、前記吸引部と前記間欠定量ポンプとが接続されていることを特徴とする。
かかる構成により、より確実に水と亜塩素酸塩溶液とを混合させることができる。
【0010】
また、好ましくは、前記流量調節器は、定流量弁であることを特徴とする。
かかる構成により、より確実に流量を一定に保つことができる。定流量弁は、電気的な駆動力を必要としない流量制御弁であり、一時側および二次側の圧力変化が起こった場合も、内部の弁機構により、流量を一定に保つ機構を有している。
【0011】
また、好ましくは、前記亜塩素酸塩溶液を送液する間欠定量ポンプは、ダイヤフラム式ポンプであることを特徴とする。
かかる構成により、より確実に水と亜塩素酸塩溶液とを混合することができる。
【0012】
また、好ましくは、前記二酸化塩素溶液の生成量が0.001~1L/minであることを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは、前記亜塩素酸塩溶液の濃度が亜塩素酸イオン濃度として1~10000mg/Lであることを特徴とする。
【0014】
また、好ましくは、前記触媒リアクターは、活性アルミナ担体に白金を0.01~0.25質量%担持させた白金アルミナ触媒を備えていることを特徴とする。
かかる構成により、二酸化塩素の生成収率をより向上させることができる。
【0015】
また、好ましくは、前記活性アルミナ担体が、比表面積値50~300m2/g、粒子径0.1~10mmであることを特徴とする。
かかる構成により、より安定して酸性化した亜塩素酸塩希釈液と触媒とを反応させることができる。
【0016】
本発明の一局面に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置は、亜塩素酸塩溶液を酸性化する亜塩素酸塩溶液酸性化装置であって、前記亜塩素酸塩溶液を送液する間欠定量ポンプと、前記亜塩素酸塩溶液を希釈するための水を一定量で流通させるための流量調節器と、前記亜塩素酸塩溶液と、前記水とを混合して均一濃度の亜塩素酸塩希釈液を得るためのエジェクタと、前記亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段と、を有することを特徴とする。
かかる構成により、一定濃度の酸性化した亜塩素酸塩溶液を安定して生成することができる。これは、間欠定量ポンプとエジェクタとを組み合わせることにより、亜塩素酸塩溶液と水とをより確実に混合させることができるためである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、一定濃度の二酸化塩素溶液を長期間安定して生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置100を示す図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置200を示す図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置300を示す図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置400を示す図である。
【
図5】本発明の第5の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置500を示す図である。
【
図6】本発明の第6の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置600を示す図である。
【
図7】本発明の第7の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置700を示す図である。
【
図8】本発明の第8の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置800を示す図である。
【
図9】本発明の実施例1に係る二酸化塩素濃度、亜塩素酸濃度、二酸化塩素生成量の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置100について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置100を示す図である。
図1に示すように、二酸化塩素溶液生成装置100は、流量調節器110と、エジェクタ120と、間欠定量ポンプ130と、三室型電解槽140と、触媒リアクター150とを備えている。また、電磁弁160、ニードルバルブ170、軟水器180も備えている。なお、電磁弁160、ニードルバルブ170、軟水器180については、適宜、省略することが可能である。また、三室型電解槽140は、陽極141を備えた陽極室142、陰極143を備えた陰極室144、陽極室142と陰極室144との間に位置するイオン交換室145を有している。陽極室142と陰極室144とイオン交換室145とは、陽イオン交換膜146によって区画されている。
【0021】
本発明の特徴としては、間欠定量ポンプ130とエジェクタ120とを組み合わせた点である。間欠定量ポンプ130とエジェクタ120を使用することで、小流量域においても、亜塩素酸塩溶液と水とを均一に混合することが可能となっている。小流量域においては、間欠定量ポンプ130、または、エジェクタ120のどちらか片方だけでは、均一に混合することはできないため、一定濃度の二酸化塩素溶液を長期間安定して生成することはできない。
【0022】
上述した本発明の第1の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置100を用いて二酸化塩素溶液を生成する方法について、具体的に説明する。軟水器180から供給された水は、電磁弁160、ニードルバルブ170を通り、三室型電解槽140の陽極室142及び陰極室144に送液される。また、水は、流量調節器110を通過して一定流量でエジェクタ120に送液される。なお、エジェクタ120の吸引部側からは、間欠定量ポンプ130にて亜塩素酸塩溶液(一例として亜塩素酸ナトリウム溶液を記載)が注入され、エジェクタ120内部にて亜塩素酸塩溶液と水とが均一に混合され、亜塩素酸塩希釈液となる。
【0023】
亜塩素酸塩希釈液は、三室型電解槽140の入り口側からイオン交換室145に送液される。水および亜塩素酸塩希釈液が送液された際、電圧を印加することにより、陽極141及び陰極143では、以下に示す水の電気分解が起こる。
陽極:2H2O→4H++4e-+O2
陰極:4H2O+4e-→4OH-+2H2
【0024】
陽極141で生成された水素イオンは、陽イオン交換膜146を通り陽極室142からイオン交換室145に移動する。イオン交換室145に供給された亜塩素酸ナトリウム溶液は、ナトリウムイオンの一部または全てがここで水素イオンに置換され、酸性化した亜塩素酸塩希釈液となる。つまり、三室型電解槽140においての電気分解が、亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段となっている。
NaClO2+H+→HClO2+Na+
【0025】
なお、亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段としては、三室型電解槽140を使用する方法に限らず、陽イオン交換樹脂に接触させる方法、カチオン交換膜で区切られた隔膜式電解槽を用いる方法、亜鉛酸塩に酸性物質を添加する方法等でも構わない。
【0026】
ナトリウムイオンは、陽イオン交換膜146を通りイオン交換室145から陰極室144に移動した後、陰極143で生成された水酸基と結合して水酸化ナトリウムとなる。
【0027】
なお、イオン交換室145に陽イオン交換樹脂を充填等していた場合、亜塩素酸塩溶液の金属イオンと水素イオンの置換効率を向上させるとともに、導電性向上にも寄与するため好ましい。
【0028】
イオン交換室145の出口側より排出された酸性化した亜塩素酸塩希釈液は、次いで触媒リアクター150に供給され、触媒リアクター150内の触媒との接触により二酸化塩素溶液に転化される。なお、触媒反応による二酸化塩素の生成は次式により進行するものと考えられる。
【化1】
【0029】
なお、酸性化した亜塩素酸塩希釈液は、徐々に分解が進み塩素酸塩などの副生が生じるため、可及的速やかに触媒と接触・反応させることが望ましい。亜塩素酸塩溶液の酸性化処理から触媒との接触・反応までの時間は、30分間以内が好ましく、10分間以内がより好ましい。
【0030】
本発明の第1の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置100で用いる流量調節器110は、定流量弁を用いている。定流量弁は、電気的な駆動力を必要としない流量制御弁であり、一次側および二次側の圧力変化が起こった場合も内部の弁機構により流量を一定量に保つ機構を有する。なお、流量調節器110に比例制御弁を使用しても構わない。比例制御弁は、流量計からの信号をもとに、弁の開度を調整して流量を制御することができる装置である。
【0031】
本発明の第1の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置100で用いるエジェクタ120は、主流体をノズルから高圧で噴射させることで、ノズル周辺空間の圧力を低下させ(ベンチュリ効果)、外部の第2流体を吸引する装置である。エジェクタ120は、流体の輸送や希釈・混合用途等で幅広く利用されているものである。本発明では、主流体は水であり、外部の第2流体は、亜塩素酸塩溶液である。なお、亜塩素酸塩溶液は、エジェクタ120の吸引部から吸引される。
【0032】
エジェクタ120は、ベンチュリ効果があり、第2流体を吸引する吸引部を1つ以上備えた装置であれば特に制限されることなく使用することができる。例えば、産業分野や工業分野で一般的に利用されている種々のエジェクタ120を使用することができる。本発明で用いるエジェクタ120のノズル径は特に制限されないが、二酸化塩素生成量が1L/min以下の場合、内径はφ3mm以下とするのが好ましい。
【0033】
なお、通常、エジェクタ120で第2流体を吸引する場合、主流体を高流量で流通させる必要があり、例えば、1L/min以下の小流量域では、流体の吸引・混合効果はほとんど得られない。本発明においては、1L/min以下の小流量域においても流体の混合効果が得られるように、エジェクタ120の第2流体を吸引する吸引部と間欠定量ポンプ130とを接続し、第2流体である亜塩素酸塩溶液を間欠定量ポンプ130でエジェクタ120内に注入している。これによって、主流体である水と、第2流体である亜塩素酸塩溶液とを均一濃度に混合している。
【0034】
本発明で用いる間欠定量ポンプ130は、ダイヤフラム式ポンプ、プランジャー式ポンプ、ピストン式ポンプなどが挙げられ、特に、ダイヤフラム式ポンプが好ましい。ダイヤフラム式ポンプの吐出性能は、使用する亜塩素酸塩溶液の濃度および二酸化塩素生成量に応じて適宜選択される。
【0035】
本発明で用いる三室型電解槽140の電極としては、陽極141及び陰極143にチタン基材上に白金をメッキした白金被覆材料を使用しているが、これに限定されるものではない。例えば、陽極141の材料には、黒鉛、黒鉛フェルト、多層黒鉛布、黒鉛織布、炭素等を使用しても構わない。また、陰極143の材料には、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル・クロム合金等を使用しても構わない。なお、陽極141及び陰極143にチタン基材上に白金をメッキした白金被覆材料を使用することで、電解効率や耐久性を向上できる。
【0036】
電極の形状としては、比表面積の大きいエキスパンドメタル、パンチングメタル、網等を使用することが好ましい。ただし、これ以外の形状の電極を使用しても構わない。
【0037】
陽イオン交換膜146としては、耐酸化性に優れるフッ素系陽イオン交換膜を使用している。例えば、ケマーズ社のNAFION(登録商標)112、115、117、旭硝子株式会社のフレミオン(登録商標)、旭化成株式会社のACIPLEX(登録商標)などを用いることができる。
【0038】
イオン交換室145に陽イオン交換樹脂を使用する場合は、スチレン‐ジビニルベンゼン共重合体の強酸性型陽イオン交換樹脂を使用するのが好ましい。また、架橋度としては、架橋度10以上が好ましく、16以上のものを使用するのがより好ましい。なお、これに限らず、スチレン‐ジビニルベンゼン共重合体の弱酸性型陽イオン交換樹脂などを使用しても構わない。
【0039】
市販されている陽イオン交換樹脂として、例えば、三菱ケミカル社のダイヤイオンSK110、SK116、PK220、PK228を用いることが出来る。
【0040】
本発明では、陽極室142および陰極室144に水を流通させているが、導電性を上げる目的で電解質溶液を流通させてもよい。陽極室142に使用する電解質溶液としては、無機酸溶液および有機酸溶液が挙げられ、この中で硫酸溶液および塩酸溶液が好ましい。陰極室144に使用する電解質溶液としては、苛性アルカリ溶液が好ましく、特に、水酸化ナトリウム溶液および水酸化カリウム溶液が好ましい。なお、陰極室144では電解過程で苛性アルカリが生成されるため、電解質溶液は電解開始時のみ流通させればよい。電解質溶液を流通させる代わりに、陽極室142および陰極室144に陽イオン交換樹脂を充填して水を流通させてもよい。
【0041】
本発明の第1の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置100で用いる亜塩素酸塩溶液としては、一例として、亜塩素酸ナトリウムを使用しているが、亜塩素酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を使用しても構わない。亜塩素酸アルカリ金属塩としては、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸バリウムが挙げられる。亜塩素酸塩の形態としては、水溶性、経済性などの観点からナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。なお。上述した亜塩素酸塩は、単独で用いても、2種類以上併用しても構わない。
【0042】
イオン交換室145の入口側より供給する亜塩素酸塩溶液の濃度は、亜塩素酸イオンとして1~10000mg/Lが好ましく、100~7000mg/Lがより好ましく、500~5000mg/Lが特に好ましい。10000mg/L以上では、酸性化した亜塩素酸塩希釈液のpHが低くなりすぎるため、触媒との接触前に亜塩素酸イオンの分解反応が進行して二酸化塩素の収率が低下したり、触媒寿命を低下させる場合がある。また、1mg/L以下では、十分な量の二酸化塩素を生成できない。
【0043】
また、亜塩素酸塩溶液は、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、硝酸等の無機酸及びその塩、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸等の有機酸及びその塩、ポリアクリル酸系ポリマー及びその塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸及びその塩、トリポリリン酸及びその塩等のキレート剤が挙げられる。
【0044】
酸性化亜塩素酸塩溶液のpH値は1.0~3.0が好ましく、1.5~2.5がより好ましい。pH値が1.0より低いと触媒の寿命が短くなる場合があり、pH値が3.0より高いと二酸化塩素の収率が低下する場合がある。
【0045】
軟水器180から供給される水は、例えば水道水、RO水、イオン交換水、軟水を用いることができる。なお、軟水器180を使用せず、蛇口とホース等を繋げて水を供給しても構わない。
【0046】
触媒リアクター150は、酸性化した亜塩素酸塩希釈液を酸化して二酸化塩素を生成する目的で使用される。触媒リアクターに用いる触媒には、活性アルミナ担体に白金を担持させた白金アルミナ触媒(Pt/Al2O3)を使用する。活性アルミナ担体上の白金は、白金原子および白金酸化物のいずれでもよいが、これらの混合物がより好ましい。白金酸化物としては、白金酸化数+2、+4が好ましい。
【0047】
白金の担持量は、0.01~0.50質量%が好ましく、0.01~0.25質量%がより好ましい。担持量が0.01質量%未満では二酸化塩素の生成速度が遅く、0.25質量%より高いと副生物の生成量が増加し二酸化塩素の収率が低下する。
【0048】
触媒に用いる活性アルミナ担体の性状は、比表面積値は50~300m2/gであることが好ましい。また粒子径は0.1~10mmが好ましく、0.3~7mmがより好ましい。
【0049】
活性アルミナ担体は紛体であってもよいが成型担体であることが好ましい。成型担体であれば触媒を固定床として利用でき、所定の条件の下で反応物を流通させることで生成物が得られ、生成物からの触媒の分離も必要無く、産業上有利な触媒であると言える。このような成型担体の形状については、球状担体であることが好ましいが、用途によってペレット状、ハニカム状等の形状にしても構わない。
【0050】
上記成型担体の中でも、内部に空隙を有するものが好ましい。このような成型担体が触媒化されることで空隙を形成する担体の表面に白金が担持される。一方、反応する基質はこの触媒化された担体の空隙に入り込み反応して反応物を生成する。このような空隙は細孔容積として表される。本発明にこのような成型担体を使用する場合、その細孔容積は0.3~0.7mL/gであることが好ましい。
【0051】
触媒に用いる活性アルミナ担体は、チタニア、シリカなど一般的に触媒の担体として使用し得る他の成分を含有していてもよい。
【0052】
触媒は、他の触媒成分や助触媒成分が添加されていてもよい。他の触媒成分としてはパラジウムやロジウム等の金属が挙げられ、助触媒成分としては、金、銅、鉄、ビスマス、バナジウム、クロム等の遷移金属が挙げられる。
【0053】
触媒の調製方法としては、白金前駆体を含む溶液にアルミナ担体を含浸または噴霧し、乾燥、焼成することによって調製することができる。
【0054】
活性アルミナ担体に担持する白金前駆体としては、塩化白金酸、塩化白金酸ナトリウム、塩化白金酸カリウム、塩化白金酸アンモニウム、ヘキサヒドロオクソ白金酸、ジニトロジアンミン白金硝酸、ヘキサアンミン白金クロライド、ヘキサアンミン白金水酸塩、ヘキサアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金クロライド、テトラアンミン白金水酸塩、テトラアンミン白金硝酸塩、白金ブラック、ヘキサヒドロキソ白金酸エタノールアンモニウム、白金アセチルアセトナートから選択された少なくとも一種類以上を用いることができる。
【0055】
活性アルミナ担体には、白金を活性アルミナ担体の外殻側に偏在担持させてもよい。白金を活性アルミナ担体の表面側に偏在担持させた触媒は、触媒反応において最も反応が促進する触媒表面に活性種を集中することで、触媒中の活性種を有効に利用することが可能になり、白金などの高価な貴金属を効率的に使用することができる。
【0056】
触媒は、市販されている白金アルミナ触媒を使用してもよく、こうした触媒としては、例えば、エヌ・イーケムキャット社のNM-103、AlfaAesar社のMFCD0001179が挙げられる。
【0057】
次に、
図2により、本発明の第2の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置200について説明する。
図2ついては、同一の参照符号を付すことによって、詳細な説明は省略する。本実施形態では、主に、本発明の第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0058】
本発明の第2の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置200は、流量調節器110と、エジェクタ120と、間欠定量ポンプ130と、三室型電解槽140と、触媒リアクター150とを備えている。また、電磁弁160、ニードルバルブ170、軟水器180、流量計190も備えている。なお、電磁弁160、ニードルバルブ170、軟水器180、流量計190については、適宜、省略することが可能である。また、二酸化塩素溶液生成装置200では、流量調節器110として、比例制御弁を使用している。比例制御弁を使用する場合、軟水器180とエジェクタ120との間に流量計190を設けることが好ましい。
【0059】
次に、
図3により、本発明の第3の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置300について説明する。
図3ついては、同一の参照符号を付すことによって、詳細な説明は省略する。本実施形態では、主に、本発明の第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0060】
本発明の第3の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置300は、流量調節器110と、エジェクタ120と、間欠定量ポンプ130と、陽イオン交換樹脂塔147と、触媒リアクター150とを備えている。また、電磁弁160も備えている。なお、電磁弁160については、適宜、省略することが可能である。また、二酸化塩素溶液生成装置300では、亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段として、陽イオン交換樹脂が充填された陽イオン交換樹脂塔147を用いた方法を採用している。エジェクタ120から送液された亜塩素酸塩希釈液は陽イオン交換樹脂塔147を通ることで酸性化され、触媒リアクター150で二酸化塩素溶液が生成される。
【0061】
次に、
図4により、本発明の第4の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置400について説明する。
図4ついては、同一の参照符号を付すことによって、詳細な説明は省略する。本実施形態では、主に、本発明の第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0062】
本発明の第4の実施形態に係る二酸化塩素溶液生成装置400は、流量調節器110と、エジェクタ120と、間欠定量ポンプ130と、触媒リアクター150とを備えている。また、電磁弁160も備えている。なお、電磁弁160については、適宜、省略することが可能である。なお、二酸化塩素溶液生成装置400では、亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段として、酸性溶液である塩酸溶液をエジェクタ120内に添加している。具体的には、流量調節器110にて水をエジェクタ120に流通させると共に、エジェクタ120の吸引部に亜塩素酸塩溶液及び塩酸溶液を注入する。なお、エジェクタ120の吸引部は2つあり、各々別の吸引部に亜塩素酸塩溶液及び塩酸溶液が注入している。また、二酸化塩素溶液生成装置400では、間欠定量ポンプ130にダイヤフラム式ポンプを使用している。
【0063】
<亜塩素酸塩溶液酸性化装置>
これまで、二酸化塩素溶液生成装置について述べてきたが、上述した二酸化塩素溶液生成装置から触媒リアクター150を取り除いた場合、亜塩素酸塩溶液酸性化装置として使用することができる。なお、酸性化した亜塩素酸塩溶液は、野菜などの食品の洗浄液として使用することができる。以下、亜塩素酸塩溶液酸性化装置について説明する。
【0064】
図5により、本発明の第5の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置500について説明する。
図5ついては、同一の参照符号を付すことによって、詳細な説明は省略する。
【0065】
図5は、本発明の第5の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置500を示す図である。
図5に示すように、亜塩素酸塩溶液酸性化装置500は、流量調節器110と、エジェクタ120と、間欠定量ポンプ130と、三室型電解槽140と、を備えている。また、電磁弁160、ニードルバルブ170、軟水器180も備えている。なお、電磁弁160、ニードルバルブ170、軟水器180については、適宜、省略することが可能である。また、三室型電解槽140は、陽極141を備えた陽極室142、陰極143を備えた陰極室144、陽極室142と陰極室144との間に位置するイオン交換室145を有している。陽極室142と陰極室144とイオン交換室145とは、陽イオン交換膜146によって区画されている。
【0066】
上述した本発明の第5の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置500を用いて酸性化した亜塩素酸塩溶液を生成する方法について、具体的に説明する。軟水器180から供給された水は、電磁弁160、ニードルバルブ170を通り、三室型電解槽140の陽極室142及び陰極室144に送液される。また、水は、流量調節器110を通過して一定流量でエジェクタ120に送液される。なお、エジェクタ120の吸引部側からは、間欠定量ポンプ130にて亜塩素酸塩溶液(一例として亜塩素酸ナトリウム溶液を記載)が注入され、エジェクタ120内部にて亜塩素酸塩溶液と水とが均一に混合され、亜塩素酸塩希釈液となる。
【0067】
亜塩素酸塩希釈液は、三室型電解槽140の入り口側からイオン交換室145に送液される。水および亜塩素酸塩希釈液が送液された際、電圧を印加することにより、陽極141及び陰極143では、以下に示す水の電気分解が起こる。
陽極:2H2O→4H++4e-+O2
陰極:4H2O+4e-→4OH-+2H2
【0068】
陽極141で生成された水素イオンは、陽イオン交換膜146を通り陽極室142からイオン交換室145に移動する。イオン交換室145に供給された亜塩素酸ナトリウム溶液は、ナトリウムイオンの一部または全てがここで水素イオンに置換され、酸性化した亜塩素酸塩溶液となる。つまり、三室型電解槽140においての電気分解が、亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段となっている。
NaClO2+H+→HClO2+Na+
【0069】
次に、
図6により、本発明の第6の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置600について説明する。
図6ついては、同一の参照符号を付すことによって、詳細な説明は省略する。本実施形態では、主に、本発明の第5の実施形態と異なる構成について説明する。
【0070】
本発明の第6の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置600は、流量調節器110と、エジェクタ120と、間欠定量ポンプ130と、三室型電解槽140とを備えている。また、電磁弁160、ニードルバルブ170、軟水器180、流量計190も備えている。なお、電磁弁160、ニードルバルブ170、軟水器180、流量計190については、適宜、省略することが可能である。また、亜塩素酸塩溶液酸性化装置600では、流量調節器110として、比例制御弁を使用している。比例制御弁を使用する場合、軟水器180とエジェクタ120との間に流量計190を設けることが好ましい。
【0071】
次に、
図7により、本発明の第7の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置700について説明する。
図7ついては、同一の参照符号を付すことによって、詳細な説明は省略する。本実施形態では、主に、本発明の第5の実施形態と異なる構成について説明する。
【0072】
本発明の第7の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置700は、流量調節器110と、エジェクタ120と、間欠定量ポンプ130と、陽イオン交換樹脂塔147とを備えている。また、電磁弁160も備えている。なお、電磁弁160については、適宜、省略することが可能である。また、亜塩素酸塩溶液酸性化装置700では、亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段として、陽イオン交換樹脂が充填された、陽イオン交換樹脂塔147を用いた方法を採用している。エジェクタ120から送液された亜塩素酸塩希釈液は陽イオン交換樹脂塔147を通ることで酸性化される。
【0073】
次に、
図8により、本発明の第8の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置800について説明する。
図8ついては、同一の参照符号を付すことによって、詳細な説明は省略する。本実施形態では、主に、本発明の第5の実施形態と異なる構成について説明する
【0074】
本発明の第8の実施形態に係る亜塩素酸塩溶液酸性化装置800は、流量調節器110と、エジェクタ120と、間欠定量ポンプ130とを備えている。また、電磁弁160も備えている。なお、電磁弁160については、適宜、省略することが可能である。なお、亜塩素酸塩溶液酸性化装置800では、亜塩素酸塩希釈液を酸性化させる酸性化手段として、酸性溶液である塩酸溶液をエジェクタ120内に添加している。具体的には、流量調節器110にて水をエジェクタ120に流通させると共に、エジェクタ120の吸引部に亜塩素酸塩溶液及び塩酸溶液を注入する。なお、エジェクタ120の吸引部は2つあり、各々別の吸引部に亜塩素酸塩溶液及び塩酸溶液が注入している。また、亜塩素酸塩溶液酸性化装置800では、間欠定量ポンプ130にダイヤフラム式ポンプを使用している。
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
<実施例1>
図1に示す二酸化塩素溶液生成装置100を用い、二酸化塩素溶液を生成した。条件としては、原水0.25MPaを二酸化塩素溶液生成装置100内に供給した。流量は、流量調節器110である定量弁で80mL/minとなるよう設定した。間欠定量ポンプ130は、ダイヤフラム式ポンプを用い、25%亜塩素酸ナトリウムを1.32g/minでエジェクタ120内に注入した。エジェクタ120の出口側より排出された亜塩素酸ナトリウム希釈液は、三室型電解槽140内にて酸性化され、酸性化された亜塩素酸ナトリウム希釈液は、触媒リアクター150を通り、二酸化塩素溶液が生成された。なお、実施例1で使用した三室型電解槽140は以下のものを使用した。
【0077】
<三室型電解槽構成>
・イオン交換室:内寸210×127×15mm
・陽極室、陰極室:内寸210×127×20mm
・陽極、陰極:白金コートチタン電極、電極板面積(接液部):267cm2 電極間距離:16mm
・イオン交換樹脂:UBK-16(三菱ケミカル社)、310mL
・陽イオン交換膜:Nafion(登録商標)117(ケマーズ社)、有効膜面積267cm2
【0078】
次に、エジェクタ120から排出された亜塩素酸ナトリウム希釈液と、触媒リアクター150から排出された二酸化塩素溶液を経時的に採取し、滴定法にて濃度を分析した。また、二酸化塩素溶液の生成量も同様に測定し、1000時間運転までの経時変化を確認した。確認した結果を
図9に示す。
図9より、亜塩素酸ナトリウム希釈液の濃度(亜塩素酸イオン濃度として記載)、二酸化塩素溶液濃度、二酸化塩素溶液生成量は、1000時間の連続運転においてほとんど変化は見られず、安定して二酸化塩素溶液を生成することができることが確認できた。
【0079】
<実施例2>
図2に示す二酸化塩素溶液生成装置200を用い、二酸化塩素溶液を生成した。条件としては、実施例1と同様に、原水0.25MPaを二酸化塩素溶液生成装置200内に供給した。流量は、80mL/minとなるよう設定した。なお、流量調節器110は、比例制御弁を使用し、流量計190を軟水器180とエジェクタ120との間に設けた。流量調整は、流量計190より出力される流量のアナログ信号をもとに比例制御弁の開度を自動制御させることで行った。流量調整以外は、実施例1と同条件で試験を行い、安定して二酸化塩素溶液が生成されることが確認できた。
【0080】
<実施例3>
図3に示す二酸化塩素溶液生成装置300を用い、二酸化塩素溶液を生成した。条件としては、実施例1と同様に、原水0.25MPaを二酸化塩素溶液生成装置300内に供給した。流量は、80mL/minとなるよう設定した。エジェクタ120から排出される亜塩素酸ナトリウム希釈液は、陽イオン交換樹脂塔147を通り酸性化され、触媒リアクター150で二酸化塩素溶液が生成された。酸性化手段以外は、実施例1と同条件で試験を安定して二酸化塩素溶液が生成されることが確認できた。なお、実施例3で使用した陽イオン交換樹脂塔147の容量は、500mlのものを使用した。
【0081】
<実施例4>
図4に示す二酸化塩素溶液生成装置400を用い、二酸化塩素溶液を生成した。条件としては、実施例1と同様に、原水0.25MPaを二酸化塩素溶液生成装置400内に供給した。流量は、80mL/minとなるよう設定した。間欠定量ポンプ130として、ダイヤフラム式ポンプを用いて、25wt%亜塩素酸塩溶液と、10wt%塩酸溶液を2つの吸引部を有するエジェクタ120にそれぞれ別の吸引部から注入した。エジェクタ内で希釈・酸性化された亜塩素酸塩溶液は、次いで触媒リアクター150に送られ、二酸化塩素溶液が生成された。なお、亜塩素酸塩は、酸性化すると直ちに不均化反応を起こし、亜塩素酸イオンが減少するため、実施例4では亜塩素酸希釈液の濃度を測定していない。しかし、実施例1~3と同様に、二酸化塩素溶液の濃度および生成量は安定推移することが確認できた。
【0082】
次に、触媒リアクター150の触媒について検討を行った。具体的には、触媒リアクター150内に充填する触媒(白金アルミナ触媒)に担持させる白金担持量の変化における二酸化塩素溶液の濃度変化を検討した。使用した触媒を以下に示す。
【0083】
<白金アルミナ触媒の調整>
球状の活性アルミナAl2O3(粒径φ2-4mm、細孔容積0.51mL、比表面積160m2/g)を所定濃度に調製したジニトロジアンミン白金水溶液に含浸し、金属白金換算で0.01質量%、0.11質量%、0.17質量%、0.25質量%、0.50質量%となるよう吸着させた。これを100℃で20分間乾燥させた後、450℃の大気中で5時間焼成して白金アルミナ触媒を得た。
【0084】
実施例1の二酸化塩素溶液生成装置100の装置と同じ構成で、ただし、上記白金アルミナ触媒を使用して二酸化塩素溶液を生成した。白金担持量の変化による二酸化塩素溶液の濃度を示す表1を以下に示す。なお、実施例5を白金担持量:0.01質量%とし、実施例6を白金担持量:0.11質量%とし、実施例7を白金担持量:0.17質量%とし、実施例8を白金担持量:0.25質量%とし、比較例1を白金担持量:0.50質量%としている。実施例5の二酸化塩素収率は88.1%、実施例6の二酸化塩素収率は85.2%、実施例7の二酸化塩素収率は82.5%、実施例8の二酸化塩素収率は72.1%と高値を示した。なお、比較例1では、二酸化塩素収率は61.0%と低い結果となった。
【0085】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る二酸化塩素溶液生成装置は、一定濃度の二酸化塩素溶液を長期間安定して生成することができるため有用である。
【符号の説明】
【0087】
100、200、300、400 二酸化塩素溶液生成装置
500、600、700、800 亜塩素酸塩溶液酸性化装置
110 流量調節器
120 エジェクタ
130 間欠定量ポンプ
140 三室型電解槽
141 陽極
142 陽極室
143 陰極
144 陰極室
145 イオン交換室
146 陽イオン交換膜
147 陽イオン交換樹脂塔
150 触媒リアクター
160 電磁弁
170 ニードルバルブ
180 軟水器
190 流量計