(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023474
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】食器洗浄具
(51)【国際特許分類】
A47L 17/00 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
A47L17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126433
(22)【出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】596070009
【氏名又は名称】サラックス製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】山田 康子
(57)【要約】
【課題】優れた洗浄能力を有すると共に、食器等洗浄後には、ごみ袋として有効利用可能な食器洗浄具を提供する。
【解決手段】合成繊維から成る織布2を折り返して縁部近傍を縫着することにより形成され、上縁部近傍には、織布2が縫着されていない開口部5が形成されており、袋状の形態である。食器洗浄具1は、合成繊維から成る織布2から形成されているので、洗浄能力が高く、食器等を好適に洗浄することができる。また、織布2は、台所用スポンジのような保水性を有しないので、使用後の洗浄や乾燥も容易である。よって、不快な臭気や、細菌類等の発生を防止することができる。また、開口部5が形成された袋状の形態であるので、食器等を洗浄した後に、そのまま廃棄することなく、台所のごみ袋固定具に取り付けて、生ごみ等を廃棄するための、ごみ袋として有効利用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維から成る織布を折り返して縁部近傍を縫着することにより形成され、
上縁部近傍には、前記織布が縫着されていない開口部が形成されており、
袋状の形態であることを特徴とする食器洗浄具。
【請求項2】
逆台形状に形成されており、
前記織布が折り返された折り返し部は、下低部に形成されており、
前記開口部は、前記下低部よりも長い上低部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の食器洗浄具。
【請求項3】
前記合成繊維は、ポリアミド系樹脂を50~100質量%、ポリエステル系樹脂を0~50質量%含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の食器洗浄具。
【請求項4】
前記織布は、平織であって、経糸が上下方向に、緯糸が左右方向に延在するよう織成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の食器洗浄具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器類や調理器具等を手洗いする際に用いられる食器洗浄具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食器類や調理器具等を手洗いする際に用いられる食器洗浄具として、合成樹脂等から成る海綿状の台所用スポンジ等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、軟質スポンジを少なくとも一部分の構成要素とするスポンジたわしが開示されている。同文献のスポンジたわしは、食器、調理器具、洗面台、浴室、トイレなどの洗浄に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術の台所用スポンジ等の食器洗浄具は、食器類等の洗浄に広く用いられているものの、洗浄以外の用途に有効利用できなかった。使用後の食器洗浄具は、その他の利用方法がないので、廃棄されることになる。
【0006】
また、従来技術の台所用スポンジ等は、スポンジ部の吸水性が高いので、洗浄後のスポンジ内に水分が残り易い。そのため、使用後のスポンジ内の水分により、不快な臭いが発生する恐れがある。また、残留水分に起因して細菌類が増殖する恐れもあり、食器類の安全性を確保する等、食品衛生の観点からも注意が必要であった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、優れた洗浄能力を有すると共に、食器等洗浄後には、ごみ袋として有効利用可能な食器洗浄具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の食器洗浄具は、合成繊維から成る織布を折り返して縁部近傍を縫着することにより形成され、上縁部近傍には、前記織布が縫着されていない開口部が形成されており、袋状の形態であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の食器洗浄具によれば、合成繊維から成る織布を折り返して縁部近傍を縫着することにより形成され、上縁部近傍に開口部が形成された袋状の形態である。このように食器洗浄具は、合成繊維から成る織布から形成されているので、洗浄能力が高く、食器等を好適に洗浄することができる。そして、食器洗浄具の織布は、従来技術の台所用スポンジのような保水性を有しないので、使用後の洗浄や乾燥も容易である。よって、不快な臭気や、細菌類等の発生を防止することができ、安全で衛生的な洗浄が可能である。
【0010】
また、本発明の食器洗浄具は、上縁部近傍に開口部が形成された袋状の形態であるので、食器等を洗浄して不要になった場合であっても、そのまま廃棄することなく、生ごみ等を廃棄するための、ごみ袋として有効利用することができる。具体的には、食器洗浄具は、食器等洗浄後には、台所のシンクに設けられた3角コーナー等のごみ袋固定具に、開口部を上方にして取り付けられ、ごみ袋として利用されても良い。
【0011】
また、本発明の食器洗浄具によれば、逆台形状に形成されており、前記織布が折り返された折り返し部は、下低部に形成されており、前記開口部は、前記下低部よりも長い上低部に形成されても良い。このように逆台形状に形成されることにより、ごみ袋として利用する際に、開口部の周縁部を、下方に向かって容易に折り返すことができる。よって、ごみ袋としての使用性が向上する。
【0012】
また、本発明の食器洗浄具によれば、前記合成繊維は、ポリアミド系樹脂を50~100質量%、ポリエステル系樹脂を0~50質量%含んでも良い。これにより、食器等の洗浄に適した繊維性能によって優れた洗浄性能が得られる。また、ごみ袋として利用する際には、織布を通過する水の流れが良好になり、生ごみ等の廃棄に好適な、排水性に優れたごみ袋が得られる。
【0013】
また、本発明の食器洗浄具によれば、前記織布は、平織であって、経糸が上下方向に、緯糸が左右方向に延在するよう織成されても良い。これにより食器洗浄具は、左右方向への伸縮性が高くなり、開口部を開いて、その周縁部を容易に折り返すことができる。よって、ごみ袋として利用する際に、ごみ袋固定具への設置が容易になる。また、上下方向については、伸縮が少ない好適な強度が得られる。これにより、食器洗浄具を、ごみ袋固定具から取り外して廃棄する際には、内部に貯留されている生ごみ等の荷重を織布の経糸でしっかりと支えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る食器洗浄具の概略を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る食器洗浄具の正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る食器洗浄具の(A)織成工程、(B)折り曲げ工程、(C)縫成工程、を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る食器洗浄具の(A)折り返す状態、(B)更に折り返す状態、を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る食器洗浄具を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る食器洗浄具1の概略を示す図であり、食器洗浄具1を前面に向かって右斜め上から見た斜視図である。
【0016】
図1を参照して、食器洗浄具1は、台所等において食器類や調理器具等を手洗いする際に用いられる洗浄具である。また、食器洗浄具1は、生ごみ等を廃棄するための、ごみ袋としても利用可能である。
【0017】
食器洗浄具1は、合成繊維から成る織布2から形成され、上部が開口する袋状の形態を成している。具体的には、食器洗浄具1の下縁部近傍には、織布2を折り返した折り返し部3が形成されている。これにより食器洗浄具1は、
図1において前面側の前布部10と、後面側の後布部11と、を有する。
【0018】
前布部10と後布部11は、左右の縁部近傍が縫着されて縫着部4が形成されており、上縁部近傍は縫着されていない。食器洗浄具1の上部には、開口部5が形成されている。即ち、食器洗浄具1は、上縁部近傍に開口部5が形成された袋状の形態である。
【0019】
食器洗浄具1は、上縁部近傍に開口部5が形成された袋状の形態であるので、食器等を洗浄した後、不要になった場合であっても、そのまま廃棄することなく、ごみ袋として有効利用できる。
【0020】
具体的には、食器洗浄具1は、食器等洗浄後には、例えば、台所のシンク、即ち流しの水槽等、に設けられた3角コーナー等のごみ袋固定具に、開口部5を上方にして取り付けられ、ごみ袋として利用されても良い。
【0021】
図2は、食器洗浄具1の正面図である。
図2に示すように、食器洗浄具1は、前面視略逆台形状に形成されている。詳しくは、食器洗浄具1の上縁部となる上底部12の長さL1は、下縁部となる下底部13の長さL2よりも長い。即ち、L1>L2である。
【0022】
換言すれば、食器洗浄具1の左右の縁部近傍となる脚部14は、上底部12の長さL1が下底部13の長さL2よりも長くなるよう、上方外側に向かって傾斜している。
【0023】
図1及び
図2を参照して、前述の開口部5は、上底部12に形成されている。食器洗浄具1は前面視略逆台形状に形成されているので、開口部5は、折り返し部3の近傍よりも広くなっている。
【0024】
このように食器洗浄具1は、前面視略逆台形状に形成されているので、ごみ袋として利用する際に、開口部5の周縁部を、下方に向かって容易に折り返すことができる。よって、食器洗浄具1は、ごみ袋として使用する際の作業が容易で、使い易い。
【0025】
図1ないし
図3を参照して、織布2は、合成繊維から成る経糸15及び緯糸16から織成された平織の布材である。織布2は、経糸15が上下方向に、緯糸16が左右方向に延在するよう織成されている。
【0026】
これにより食器洗浄具1は、左右方向への伸縮性が高くなる。よって、開口部5を開いて、その周縁部を容易に折り返すことができる。そのため、食器洗浄具1をごみ袋として利用する際に、ごみ袋固定具への設置は容易である。
【0027】
また、食器洗浄具1は、織布2の経糸15が上下方向に延在するよう構成されているので、上下方向については、伸縮が少ない好適な強度が得られる。よって、食器洗浄具1を、ごみ袋固定具から取り外して廃棄する際には、内部に貯留されている生ごみ等の荷重を織布2の経糸15でしっかりと支えることができる。
【0028】
次に、
図3を参照して、食器洗浄具1の製造方法について詳細に説明する。
図3は、食器洗浄具1の製造工程を示す図であり、
図3(A)は織成工程、
図3(B)は折り曲げ工程、
図3(C)は縫成工程、を示している。
先ず、
図3(A)に示すように、織成工程において、食器洗浄具1に用いられる織布2の生地が織成され、略長方形状の形状に裁断される。
【0029】
前述のとおり、織布2は、合成繊維から成る布材である。具体的には、織布2は、平織が好ましく、略長方形状に裁断された織布2の生地に対して、経糸15は長辺方向に延在し、緯糸16は短辺方向に延在する。なお、織布2は、織物であるが、編物でも良い。
【0030】
詳しくは、織布2の経糸15は、例えば、1本の長繊維、即ちフィラメント、から成るモノフィラメント糸であり、その太さは、20~50デニール、好ましくは、20~40デニール、最も好ましくは、30デニールである。
【0031】
緯糸16は、例えば、複数の長繊維から成るマルチフィラメント糸である。緯糸16のフィラメント数は、例えば、8~20フィラメントが好ましく、更に好ましくは、10~16フィラメントである。
【0032】
緯糸16の太さは、250~450デニール、好ましくは、280~340デニール、更に好ましくは、300~320デニールである。また、太さや材質の異なる複数種類、例えば、2~3種類、の緯糸16が用いられても良い。
このような経糸15及び緯糸16が用いられることにより、食器等洗浄に適した優れた洗浄性能が得られると共に、ごみ袋に適した流水性及び強度が得られる。
【0033】
織布2の合成繊維は、ポリアミド系樹脂(ナイロン)を50~100質量%、ポリエステル系樹脂を0~50質量%、更に好ましくは、ポリアミド系樹脂を50~70質量%、ポリエステル系樹脂を30~50質量%、含んでも良い。
【0034】
詳しくは、織布2の経糸15は、ポリアミド系樹脂のみから形成される。緯糸16は、2~3種類の糸を含み、少なくとも1種類の糸は、ポリエステル系樹脂を含んでも良い。例えば、経糸15として、ポリアミド系樹脂のみから成る30デニールのモノフィラメント糸が用いられても良い。また、緯糸16として、ポリアミド系樹脂から成る10フィラメント、300デニールのマルチフィラメント糸と、ポリエステル系樹脂を含む16フィラメント、320デニールのマルチフィラメント糸と、が用いられても良い。
【0035】
このような合成繊維から成る織布2が用いられることにより、食器等の洗浄に適した繊維性能によって優れた洗浄性能が得られる。即ち、洗浄に適した硬さが得られると共に、洗剤の泡立ちが良くなり、泡持ちも優れたものとなる。
また、ごみ袋として利用する際には、織布2を通過する水の流れが良好になり、生ごみ等の廃棄に好適な、排水性に優れたごみ袋が得られる。
【0036】
次に、
図3(B)に示すように、折り曲げ工程が行われる。具体的には、
図3(A)に示す織成工程で織成され略長方形状に裁断された織布2の生地は、上下方向の略中央部、即ち略長方形状の長辺の略中央部、が約180度折り返される。これにより、食器洗浄具1の下底部13となる折り返し部3が形成され、折り返し部3の前方側が前布部10、後方側が後布部11となる。
【0037】
次いで、
図3(C)に示すように、縫成工程が行われる。具体的には、折り返されて前布部10と後布部11が重ねられた織布2の生地は、例えば、ロックミシン等を利用して、左右縁部近傍が斜めに裁断されると共に縫合される。
【0038】
これにより、前面視略逆台形状の織布2が形成され、織布2の前布部10と後布部11は、左右の縁部近傍において互いに縫着されて縫着部4が形成される。また、織布2の前布部10と後布部11は、上縁部近傍が縫着されないので、上底部12には開口部5が形成される。よって、上底部12が開口する袋状の食器洗浄具1が得られる。このように食器洗浄具1は、効率的に製造することができ、生産性に優れている。
【0039】
なお、図示を省略するが、開口部5の周縁部は、ほつれ防止のために、例えば、ロックミシン等を利用して、かがり縫い等が縫製されても良い。これにより、周縁部のほつれが防止されると共に食器等を洗浄する性能も良好になる。
【0040】
また、食器洗浄具1が使用される際には、
図1に示す如く、前布部10及び後布部11の左右端辺部が食器洗浄具1の内部側になるよう、織布2が折り返されても良い。このような形態により、織布2の端辺部ではなく面部分が食器等の表面に接触し易くなり、食器洗浄具1の食器等洗浄性が向上する。
【0041】
次に、
図4を参照して、食器洗浄具1を使用した食器等洗浄について説明する。
図4は、食器洗浄具1を食器等洗浄に使用する例を示す図であり、
図4(A)は折り返す状態、
図4(B)は更に折り返す状態、を示している。
【0042】
食器洗浄具1を食器等洗浄に使用する際には、使用者は、例えば、
図4(A)に示すように、食器洗浄具1を2つ折りにしても良い。即ち、例えば、食器洗浄具1の左右の中心近傍を折り曲げて、左右を重ねるようにしても良い。また例えば、上下の中心近傍を折り曲げて食器洗浄具1を2つ折りにする方法等も勿論可能である。
【0043】
図4(B)に示すように、2つ折りされた食器洗浄具1を、更に折り返して、4つ折りにして使用することも可能である。また、食器洗浄具1は、その他の形状に折り曲げることも勿論可能であり、食器等を洗浄する際には、食器洗浄具1をその他の形状に折り曲げて把持する方法を採用しても良い。
【0044】
このように食器洗浄具1は、2つ折りや4つ折り、その他形状に折り返して使用することが可能である。そのため、使用者は、食器洗浄具1を把持し易く、食器洗浄具1を食器等の表面に好適な強さで擦り付けることができる。また、使用者は、食器洗浄具1の食器等に当接させる面を容易に変更することができる。よって、使用者は、食器等洗浄の作業を容易に行うことができ、また、食器類を綺麗に洗浄することができる。
【0045】
以上説明の如く、本実施形態に係る食器洗浄具1は、合成繊維から成る織布2から形成されているので、洗浄能力が高く、食器等を好適に洗浄することができる。そして、食器洗浄具1の織布2は、従来技術の台所用スポンジのような保水性を有しないので、使用後の洗浄や乾燥も容易である。よって、不快な臭気や、細菌類等の発生を防止することができ、安全で衛生的な洗浄が可能である。
【0046】
また、食器洗浄具1は、前面視略逆台形状であり、上底部12に開口部5が形成された袋状の形態であるので、食器等を洗浄して不要になった場合であっても、そのまま廃棄することなく、生ごみ等を廃棄するための、ごみ袋として有効利用することができる。即ち、食器洗浄具1は、食器等洗浄後には、台所のシンクコーナー用ごみ袋ホルダ等のごみ袋固定具に、開口部5を上方にして取り付けられ、ごみ袋として利用されても良い。
【0047】
なお、食器洗浄具1は、洗面台、浴室、トイレ等、食器類以外の物を洗浄するために用いられても良い。また、食器洗浄具1は、身体を洗う浴用タオル等の代わりとして使用されても良い。即ち、本発明は、上記の洗面台等、食器類以外を洗浄するための洗浄具を含むものとする。
【0048】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 食器洗浄具
2 織布
3 折り返し部
4 縫着部
5 開口部
10 前布部
11 後布部
12 上底部
13 下底部
14 脚部
15 経糸
16 緯糸