(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023501
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/06 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
A45D40/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126482
(22)【出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000140915
【氏名又は名称】株式会社カツシカ
(72)【発明者】
【氏名】並木 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】ワラヴィット・ダムロンワッタナポキン
(57)【要約】
【課題】 カートリッジ単体では使用できず、構成部材を全てリサイクル可能な金属単一素材で成形した場合の問題を解消した、環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器を提供する。
【解決手段】 棒状化粧料を保持した保持筒と、この保持筒を摺動自在に回動不能に内装した身筒と、この身筒を回動自在に内装したスリーブから成り、スリーブと身筒の相対回転により保持筒を上下摺動させる繰り出し機構を備えたカートリッジを、前記身筒の係合穴に係合して身筒に回動を伝達する連結部材を備えたホルダーに着脱可能に装着して成るカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器に於いて、前記カートリッジを構成する部材を金属単一素材により成形し、前記スリーブ内に身筒を脱落不能に保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧料(1)を保持し、側壁に螺合突部(22)を突設した保持筒(2)と、該保持筒(2)を摺動自在に内装し、側壁に保持筒(2)の螺合突部(22)が貫通して保持筒(2)を回動不能にするガイド長孔(34)を軸線方向に長く穿設し、底面(31)に係合穴(311)を穿設した身筒(3)と、該身筒(3)を回動自在に内装し、内側壁に身筒(3)を貫通した螺合突部(22)が螺合するラセン溝(142)を設けたスリーブ(104)から成り、スリーブ(104)と身筒(3)の相対回転により保持筒(2)を上下摺動させる繰り出し機構を備えたカートリッジ(A1)を、
前記身筒(3)の係合穴(311)に係合して身筒(3)に回動を伝達する連結部材(8)を備えたホルダー(B)に着脱可能に装着して成るカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器に於いて、
前記カートリッジ(A1)を構成する保持筒(2)、身筒(3)及びスリーブ(104)が単一素材により成形され、前記スリーブ(104)は上端に棒状化粧料(1)の出没口(41)、下端に折り曲げ部(45)を設け、該出没口(41)の開口縁部(411)と折り曲げ部(45)の間に身筒(3)を脱落不能に保持したことを特徴とする環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項2】
棒状化粧料(1)を保持し、側壁に螺合突部(22)を突設した保持筒(2)と、該保持筒(2)を摺動自在に内装し、側壁に保持筒(2)の螺合突部(22)が貫通して保持筒(2)を回動不能にするガイド長孔(34)を軸線方向に長く穿設し、底面(31)に係合穴(311)を穿設した身筒(3)と、該身筒(3)に回動自在に保持され、内側壁に身筒(3)を貫通した螺合突部(22)が螺合するラセン溝(242)を設けたラセン筒(9)と、該ラセン筒(9)を内壁に止着し、前記身筒(3)を内装したスリーブ(204)から成り、スリーブ(204)と身筒(3)の相対回転により保持筒(2)を上下摺動させる繰り出し機構を備えたカートリッジ(A2)を、
前記身筒(3)の係合穴(311)に係合して身筒(3)に回動を伝達する連結部材(8)を備えたホルダー(B)に着脱可能に装着して成るカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器に於いて、
前記カートリッジ(A)を構成する保持筒(2)、身筒(3)、ラセン筒(9)及びスリーブ(204)が単一素材により成形され、前記スリーブ(204)は上端に棒状化粧料(1)の出没口(41)、下端に折り曲げ部(45)を設け、該出没口(41)の開口縁部(411)と折り曲げ部(45)の間に身筒(3)を脱落不能に保持したことを特徴とするカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項3】
前記カートリッジ(A1、A2)を構成する部材が、アルミニウムの単一素材であることを特徴とする請求項1及び請求項2、いずれかの項記載の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器。
【請求項4】
前記身筒(3)上端に先端が内側にカールした補強ビード(331)を成形し、相対回転するスリーブ(104、204)の開口縁部(411)に接触させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3、いずれかの項記載の環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅、リップグロス、リップクリームなどの棒状化粧料容器に関し、地球環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器の提供に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、口紅、リップグロス、リップクリームなどの棒状化粧料容器に於いて、地球環境に配慮した容器としては、容器自体をカートリッジとホルダーに分割して、カートリッジを交換可能としたカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器が知られている。このカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器は、棒状化粧料を使い切ってしまった際などの廃棄時、カートリッジのみ廃棄すれば良く、廃棄物の削減を図れた(Reduce)。また、ホルダーは繰り返し使用できた(Reuse)。
【0003】
しかも、棒状化粧料を繰り出す繰り出し機構を内装したカートリッジは、現状ある、使い捨てタイプの棒状化粧料繰り出し容器を簡単に転用できた。しかし、転用できるとはいっても、カートリッジ単体で使い捨て繰り出し容器のように使用できてしまう(カートリッジ単体で棒状化粧料の繰り上げ操作ができてしまう)と、カートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の意味をなさなくなってしまう。
【0004】
そこで、特許文献1及び特許文献2に於けるカートリッジ(特許文献1に於いてはカートリッジA、特許文献2に於いてはカートリッジ部A)は、内壁にラセン溝(螺旋条9、螺旋溝3)を螺設したスリーブ(スリーブ11、外筒1)と、棒状化粧料(棒状化粧料1、化粧料5)を保持した保持筒(保持筒2、中皿6)を上下摺動自在に回動不能に保持した身筒(ガイド筒4、内筒2)を相対回転させることにより、棒状化粧料を繰り出す回転繰り出し機構を内装しているが、スリーブ(スリーブ11、外筒1)の下端が身筒(ガイド筒4、内筒2)を覆っており、カートリッジ(カートリッジA、カートリッジ部A)単体では繰り出し操作ができないようになっていた。
【0005】
そして特許文献1では、身筒(ガイド筒4)の底部に丸穴(係合孔7)を設けたパイプ状とし、ホルダー(ホルダーB)には、この丸穴(係合孔7)に差し込み可能な連結筒(係合筒21)を設け、この連結筒(係合筒21)の側面に丸穴(係合孔7)の内側壁に弾性を有して当接、保持する連結片(スプリング片20)を設けて、連結片(スプリング片20)の弾性保持力によりホルダー(ホルダーB)の回転を身筒(ガイド筒4)に伝達していた。
【0006】
また、特許文献2では、身筒(内筒2)の底面に六角形状穴(非円形嵌合孔8)を設け、ホルダー(操作部B)には、この六角形状穴(非円形嵌合孔8)と相似形状で差し込み可能な連結筒(突起7)を設け、ホルダー(操作部B)の六角形状穴(非円形嵌合孔8)に連結筒(突起7)が係合してホルダー(操作部B)の回転を身筒(内筒2)に伝達していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭62-43519号公報(実全昭62-43519)
【特許文献2】実開昭57-155712号公報(実全昭57-155712)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的な棒状化粧料繰り出し容器は、外部に露出する部材を加飾性、強度に優れた金属製素材により成形し、繰り出し機構などの内部構造部材を成形性に優れた合成樹脂製素材により成形するのが一般的であった。この特許文献1及び2に記載されたカートリッジ(カートリッジA、カートリッジ部A)も例外ではなく、特に記載されているわけではないが、各部材が金属製部材と合成樹脂製部材が組み合わされている。しかし、この金属製部材と合成樹脂製部材が組み合わされた容器は、使い切った後は廃棄するしかなく、一段進んだリサイクル(Recycle)ができなかった。
【0009】
カートリッジをリサイクルするためには、リサイクル性が優れた(リサイクル体制が確立している)素材で全ての部材を成形すれば可能である。特にリサイクル性が優れた金属素材により棒状化粧料容器のカートリッジを成形する場合、量産性の関係で薄板をプレス加工などの塑性加工、切断加工などの後加工、加飾、防錆処理などの表面処理の工程を経て部材に成形していた。この加工の関係で、金属素材の端面にバリが発生したり、端面が鋭利になってしまったりする場合があった。このバリや鋭利な端面によって使用者を傷付けないようバリ取り工程を行い、特許文献1や特許文献2のスリーブ(スリーブ11、外筒1)のように端面を外に向けない構造にしていた。また、端面の微小のバリであっても、ザラザラした不快な擦れ合いになってしまうため、合成樹脂と金属など、異材質同士の擦れ合いにして解消していた。しかし、リサイクル性を最優先として、金属単一素材で各部材を成形した場合、不快な擦れ合いが繰り出し回転操作時の操作感に大きな影響を与えてしまった。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、カートリッジ単体では使用できず、カートリッジの構成部材を全て、リサイクルの優等生と言われるアルミニウム素材で成形し、金属単一素材で成形した場合の操作感問題を解消した、リサイクル廃棄可能な環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
棒状化粧料1を保持し、側壁に螺合突部22を突設した保持筒2と、この保持筒2を摺動自在に内装し、側壁に保持筒2の螺合突部22が貫通して保持筒2を回動不能にするガイド長孔34を軸線方向に長く穿設し、底面31に係合穴311を穿設した身筒3と、この身筒3を回動自在に内装し、内側壁に身筒3を貫通した螺合突部22が螺合するラセン溝142を設けたスリーブ104から成り、スリーブ104と身筒3の相対回転により保持筒2を上下摺動させる繰り出し機構を備えたカートリッジA1を、前記身筒3の係合穴311に係合して身筒3に回動を伝達する連結部材8を備えたホルダーBに着脱可能に装着して成るカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器に於いて、前記カートリッジA1を構成する保持筒2、身筒3及びスリーブ104が単一素材により成形され、前記スリーブ104は上端に棒状化粧料1の出没口41、下端に折り曲げ部45を設け、この出没口41の開口縁部411と折り曲げ部45の間に身筒3を脱落不能に保持する。
【0012】
また、棒状化粧料1を保持し、側壁に螺合突部22を突設した保持筒2と、この保持筒2を摺動自在に内装し、側壁に保持筒2の螺合突部22が貫通して保持筒2を回動不能にするガイド長孔34を軸線方向に長く穿設し、底面31に係合穴311を穿設した身筒3と、この身筒3に回動自在に保持され、内側壁に身筒3を貫通した螺合突部22が螺合するラセン溝242を設けたラセン筒9と、このラセン筒9を内壁に止着し、前記身筒3を内装したスリーブ204から成り、スリーブ204と身筒3の相対回転により保持筒2を上下摺動させる繰り出し機構を備えたカートリッジA2を、前記身筒3の係合穴311に係合して身筒3に回動を伝達する連結部材8を備えたホルダーBに着脱可能に装着して成るカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器に於いて、前記カートリッジA2を構成する保持筒2、身筒3、ラセン筒9及びスリーブ204が単一素材により成形され、前記スリーブ204は上端に棒状化粧料1の出没口41、下端に折り曲げ部45を設け、この出没口41の開口縁部411と折り曲げ部45の間に身筒3を脱落不能に保持する。
【0013】
このカートリッジA1、A2を構成する構成部材を、アルミニウムの単一素材としても良い。
【0014】
また、前記身筒3の上端に、先端が内側にカールした補強ビード331を成形し、相対回転するスリーブ104、204の開口縁部411に接触させても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように、棒状化粧料1を繰り出す繰出し機構を構成する部材の、相対回転する身筒3とスリーブ104、204の、片方の身筒3をスリーブ104、204内に回転自在に収納し、身筒3の外部露出部位は底面31の係合穴311近辺のみとなっている。その結果、カートリッジA1、A2単体では身筒3とスリーブ104、204を相対回転させることができず、棒状化粧料1を繰り出せず、カートリッジA1、A2単体での使用は不可能となっている。しかし、カートリッジA1、A2をホルダーBに装着すると、ホルダーBの連結部材8が身筒3の係合穴311に係合して身筒3に回動を伝達可能となる。その結果、スリーブ104、204と身筒3を相対回転させて棒状化粧料1を繰り出し、カートリッジA1、A2を使用できるようになる。
【0016】
また、本発明のカートリッジA1、A2の各部材の形状は、金属薄板を加工して成形できる形状をしている。つまり、リサイクルの優等生と言われるアルミニウム単一素材でも成形できる。この場合、カートリッジA1、A2は、アルミニウム廃棄物として処分、リサイクルでき、環境に配慮した棒状化粧料繰り出し容器を提供できる。
【0017】
また、カートリッジA1、A2は、身筒3の上端を内方向にカールさせた補強ビード331を成形して、身筒3の上端を内側に向けることによって、相対回転する身筒3とスリーブ104、204の接触部分は、上端が補強ビード331と開口縁部411間、下端が身筒3の底面31と折り曲げ部45上面の間となり、端面の擦れ合いが全くないため、不快な操作感となる要因を排除できる。
【0018】
さらに、折り曲げ部45は、身筒3を組付けた後、機械加工により成形しているため、カートリッジA1、A2の抜き差しなど、スリーブ104、204内の身筒3が脱落方向に引っ張られたとしても、スリーブ104、204を破壊しない限り身筒3が脱落するようなことはない。
【0019】
また、カートリッジA1、A2の外部に露出している部材はスリーブ104、204のみであり、その上端は出没口41、下端は折り曲げ部45となっている。この出没口41及び折り曲げ部45はいずれも端面が内側(中心方向)を向いているため、端面が外部に露出しておらず、使用者を傷付ける心配がない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明実施例1のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジ及びホルダー単独時の正面断面図。
【
図2】本発明実施例1のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジをホルダーに装着時の正面断面図。
【
図3】本発明実施例1のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジの斜視図であり、上方向からの斜視図である。
【
図4】本発明実施例1のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジの斜視図であり、下方向からの斜視図である。
【
図5】本発明実施例1のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、カートリッジの分解斜視図である。
【
図6】本発明実施例1のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、組立工程の正面断面図であり、スリーブに保持筒及び身筒をセットする時の正面断面図である。
【
図7】本発明実施例1のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、組立工程の正面断面図であり、保持筒及び身筒のセット後、スリーブ下端を折り曲げ加工する時の正面断面図である。
【
図8】本発明実施例2のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器の、正面断面図である。
【実施例0021】
本発明実施例1のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器を
図1~
図7によって説明する。本発明実施例のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器は、
図1、
図2のようにカートリッジA1をホルダーBに着脱可能に装着して成っている。
【0022】
まず、カートリッジA1について
図1、
図3~
図7により説明する。カートリッジA1は、保持筒2、身筒3、及びスリーブ104より成っている(
図5参照)。この各部材は、リサイクルに適したアルミニウムなどの単一素材より成形されている。
【0023】
保持筒2は、コップ形状をしており、棒状化粧料1の下端部を収嵌保持している。この保持筒2の内周壁には、前記棒状化粧料1に食い込んで棒状化粧料1を保持する複数本の保持リブ21を軸線に平行に、等間隔に均等に突設している。さらに、保持筒2の側壁には、螺合突部22を突設している。この螺合突部22は、保持筒2の側壁に180度間隔で一対設けている。この保持筒2は、身筒3内に上下摺動自在に内装している。
【0024】
この身筒3は、底面31を有した細長いパイプ状をしている。この身筒3の底面31がわ端部は、外径が若干大径に膨らんだ基部32となっている。また、底面31には、正8角形状をした係合穴311を穿設している。身筒3の基部32より上方は、保持筒2を上下摺動自在に収容した収容部33となっている。
【0025】
この収容部33の側壁には、前記保持筒2の螺合突部22が貫通するガイド長孔34を軸線と平行に細長く穿設している。このガイド長孔34は、前記保持筒2の螺合突部22と同数、同間隔で、身筒3の上端にまで達して切り欠かれた状態となっている。その結果、保持筒2は、螺合突部22をガイド長孔34に合わせて、上方より組付けできるようになっている。また、保持筒2は、ガイド長孔34により収容部33内で回動不能の状態で摺動する。さらに、ガイド長孔34には、上端付近に、左側壁341に連続して、軸線に対して直交した左方向に屈曲した上部ポケット342を、ガイド長孔34下端に、右側壁343に連続して、軸線に対して直交した右方向に屈曲した下部ポケット344をそれぞれ設けている。
【0026】
また、この収容部33の上端外側壁には、補強ビード331を軸線に対して直交方向に、周縁部に沿って設けている。この補強ビード331は、内側から外方向に向け突設し、収容部33外径方向に、僅かに大径になるよう成形している。この補強ビード331を成形した関係で、収容部33の先端は内側に曲げられている。この補強ビード331によって、収容部33上端は強度が向上し、ガイド長孔34により切り欠かれているにもかかわらず、変形しにくくなっている。この身筒3は、スリーブ104内に回動自在に内装している。
【0027】
このスリーブ104は、パイプ状をしており、上端には、棒状化粧料1が出没する出没口41を穿設している。この出没口41は、スリーブ104の内径より小径になっており、開口縁部411を有している。この開口縁部411に前記身筒3の収容部33上端(補強ビード331の先端)が当接している。また、スリーブ104の単体時、身筒3の組付け時には、スリーブ104下端が身筒3よりも下方に伸びている(
図6参照)。
【0028】
このスリーブ104内面の、身筒3の収容部33の上部ポケット342から下部ポケット344の間の相対する部分には、ローレット状のラセン溝142(本発明実施例では左ネジ)を螺設している。このローレット状のラセン溝142は、細かい螺旋条を無数条、内周全周にローレットのように螺設したものである。このローレット状のラセン溝142の山径(内径)は、前記身筒3の収容部33外径よりも僅かに大径になっている。このローレット状のラセン溝142には、前記身筒3のガイド長孔34を貫通した保持筒2の螺合突部22が螺合している。なお、この螺合突部22の螺合面221には、隣り合った複数条のラセン溝142が螺合する細かい凹凸を設けている。
【0029】
このスリーブ104内面のラセン溝142の上方、前記身筒3の収容部33の補強ビード331に相対した部位は、摺接部43になっている。この摺接部43の内径は、前記ローレット状ラセン溝42の山径と同径であり、補強ビード331の外径と同径か、僅かに大径となり、身筒3の補強ビード331がスリーブ4内面の摺接部43に線接触するようにして回転抵抗を軽減している。
【0030】
また、スリーブ104内面のラセン溝142の下方、前記身筒3の基部32に相対した部位は、大径部44になっている。この大径部44は、前記摺接部43よりも大径で、前記ローレット状ラセン溝142の谷径とほぼ同径であり、前記基部32の外径よりも若干大径になっている。その結果、スリーブ4内で身筒3が回転自在になっている。
【0031】
また、スリーブ4の下端は、前記身筒3を組付けた後、身筒3より突出した部位を身筒3の基部32に沿って内方向に折り曲げ、折り曲げ部45を設けている。その結果、身筒3の上端、補強ビード331の上端が出没口41の開口縁部411に、身筒3下端の底面31が折り曲げ部45に、それぞれ当接することにより、身筒3がスリーブ104内に回動自在に脱落不能に保持されている。なお、スリーブ104の下面には、身筒3の底面31が露出し、係合穴311が覗けるようになっている。
【0032】
本発明実施例1のカートリッジA1は以上構成である。本発明実施例1のカートリッジA1は、構成部材全てが、アルミニウムなどの金属単一素材により成形されているが、その成形方法は、量産性かプレス成形などの塑性加工が一般的である。本発明実施例1のカートリッジA1の構成部材、保持筒2、身筒3、及びスリーブ104の形状は、
図5に示したように、特に特殊な形状をしているわけでもなく、一般に知られている塑性加工工程により成形できるので、この場での成形方法の説明は省略する。
【0033】
次に、本発明実施例1のカートリッジA1の組立方法について
図6及び
図7により説明する。保持筒2は、螺合突部22を上端にまで切り欠かれたガイド長孔34に合わせ、身筒3の上端より装着する。スリーブ104は、最初は
図6及び
図7に示すように後端の折り曲げ部45が成形されていない。そのため、身筒3及び身筒3に組付けられた保持筒2は、スリーブ104の後端より組込むことができる。身筒3の組付け後、
図4に示すように、スリーブ104後端を中心方向に曲げ加工を行うことにより、折り曲げ部45を成形し、身筒3をスリーブ104の出没口41の開口縁部411と折り曲げ部45の間に回動自在に脱落不能に保持させる。
【0034】
次に、カートリッジA1を装着するホルダーBについて
図2により説明する。ホルダーBは、キャップ5、中筒6、外筒7、及び連結部材8より成っており、中筒6、外筒7、連結部材8が脱落不能に組付けられている。なお、ホルダーBは、繰り返し使用(Reuse)するため、各部材に対する材質の制限はない。
【0035】
外筒7は、有底筒状をしており、外筒7内底部に連結部材8を止着している。
【0036】
中筒6は、両端が開口したパイプ状をしており、外筒7上端より挿入止着されている。この中筒6の下端は、前記連結部材8の鍔状のベース81に当接しており、連結部材8を押さえている。この中筒6の上端部分は、外筒7より上方に突出してキャップ5が抜脱可能に嵌合する嵌合部61になっている。そして、この中筒6を通してカートリッジA1が挿入される。
【0037】
連結部材8は、鍔状のベース81の中央部分に、連結片82を突設している。この連結片82は、カートリッジA1を装着した際、カートリッジA1の係合穴311に侵入するようになっている。この連結片82の水平方向の断面は、前記身筒3の係合穴311よりも若干小さい相似形状をしており、係合穴311に回動不能に係合するようになっている。その結果、ホルダーBの回転を、連結片82を介してカートリッジA1の身筒3へ伝達できるようになっている。また、連結片82の上端は係合穴311内に突出し、連結片82の外側壁には、係合突部821が突出しており、係合穴311の縁部に抜脱可能に係合している。その結果、カートリッジAとホルダーBは、任意に抜脱可能に連結するようになっている。
【0038】
本発明実施例1のカートリッジ式棒状化粧料繰り出し容器は、以上構成である。そのため、カートリッジA1単体では、棒状化粧料1を繰り出す繰り出し機構のうち、相対回転する部材、身筒3とスリーブ104のうち、一方の身筒3がスリーブ104内に内装されているため、身筒3とスリーブ104の相対回転操作ができず、カートリッジA1単体での繰り出し操作、つまりカートリッジA1単独での使用ができないようになっている(
図1参照)。
【0039】
ここで、カートリッジA1をホルダーBに装着すると、ホルダーBの連結部材8の連結片82がカートリッジA1の身筒3の係合穴311に回動不能に係合する。その結果、ホルダーBの回動が身筒3に伝達され、ホルダーBとカートリッジA1の身筒3が一体で回動する様になり、カートリッジA1の繰り出し操作(使用)が可能となる。この身筒3とスリーブ104の相対回転により、身筒3のガイド長孔34により回動を阻止された保持筒2の螺合突部22が、相対回転するスリーブ104のラセン溝142に螺合しているため、螺合作用により保持筒2が上下摺動し、保持筒2に保持された棒状化粧料1がスリーブ104の出没口41より出没する(
図2参照)。
【0040】
更に詳細に説明すると、ホルダーBを保持してスリーブ104を左回転(反時計方向に回転)すると、スリーブ104のラセン溝142に螺合している螺合突部22が身筒3のガイド長孔34の左側壁341に当接してスリーブ104との従動が阻止されるため、ラセン溝142に沿って保持筒2が上昇する。この時、螺合突部22は、ガイド長孔34の左側壁341に当接しながら移動する。ここで、上部ポケット342はガイド長孔34の左側壁341に連接されているため、螺合突部22は上部ポケット342に突入する。この上部ポケット342に入った螺合突部22は上昇不能となり、保持筒2(棒状化粧料1)の上昇限となる。
【0041】
この状態でホルダーBを保持してスリーブ104を逆回転(右回転・時計方向に回転)すると、螺合突部22がスリーブ104のラセン溝142に螺合した保持筒2も従動する。保持筒2の従動により、螺合突部22が身筒3の上部ポケット342を脱し、ガイド長孔34の右側壁343に当接して、スリーブ104の従動が阻止されるため、螺合作用によりラセン溝142に沿って保持筒2が降下する。この時、螺合突部22は、ガイド長孔34の右側壁343に当接しながら移動する。ここで、下部ポケット344はガイド長孔34の右側壁343に連設されているため、螺合突部22は下部ポケット344に突入する。この下部ポケット344に入った螺合突部22は降下不能となり、保持筒2(棒状化粧料1)の下降限となる。
【0042】
以上のように、保持筒2は、上昇限と下降限の間を往復し、螺合突部22がラセン溝142より脱線してしまうようなことはない。また、螺合突部22が上部ポケット342に係合すると、棒状化粧料1の塗布時など、保持筒2に下降方向に応力が加わったとしても、上部ポケット342の水平部分により不用意な降下が阻止される。同様に、螺合突部22が下部ポケット344に係合すると、携帯時の衝撃など、保持筒2の上昇方向に応力が加わったとしても、下部ポケット344により不用意な保持筒2の上昇が阻止される。
【0043】
次に本発明実施例2について
図8により説明する。基本的構成は実施例1と同様であり、相違点は、リサイクル廃棄されるカートリッジA2にある。以下、本発明実施例2のカートリッジA2について説明する。
【0044】
本発明実施例2のカートリッジA2は、保持筒2、身筒3、スリーブ204、及びラセン筒9より成っている。この各部材は、リサイクルに適したアルミニウムなどの単一素材により成形されている。保持筒2は、実施例1と同じ構成であり、身筒3内に上下摺動自在に内装している。身筒3は、実施例1と同じ構成であり、ガイド長孔34が設けられた収容部33外周にラセン筒8を回動自在に保持している。
【0045】
ラセン筒8は、パイプ状をしており、身筒3の収容部33の上部ポケット342から下部ポケット344間に相対する内面には、ラセン溝242を螺設している。このラセン溝242は、前記保持筒2の螺合突部22の数の整数倍の条数を螺設している。このラセン溝242には、前記身筒3のガイド長孔34を貫通した保持筒2の螺合突部22が螺合するのであるが、1つの螺合突部22が1条のラセン溝242に螺合している。このラセン筒8は、スリーブ204内壁に止着されている。
【0046】
このスリーブ204はパイプ状をしており、内径は前記身筒3の基部32の外径よりも若干大径になっている。このスリーブ204の上端には、棒状化粧料1が出没する出没口41を穿設している。この出没口41は、前記スリーブ204の内径よりも小径になっており、開口縁部411を有している。この開口縁部411には、身筒3先端(補強ビード331の先端)が当接している。
【0047】
また、スリーブ204が単体の時には、実施例1と同じように、下端はストレートになっており、保持筒2を組付けた身筒3を下方から挿入できるようになっている。そして、身筒3を組付けた後、スリーブ204の下端(身筒3より下方に突出した部位)を、身筒3の基部32に沿って折り曲げ、折り曲げ部45を成形する。その結果、身筒3の上端(補強ビード331)がスリーブ204の出没口41の開口縁部411に、身筒3下端の底面31が折り曲げ部45にそれぞれ当接することにより、身筒3がスリーブ204内に、回動自在に脱落不能に保持される。なお、スリーブ204の下面には、身筒3の底面31が露出しており、係合穴311が覗けるようになっている。
【0048】
以上が本発明実施例2のカートリッジA2の構成である。各構成部材の成形方法や組立て方法は、本発明実施例1のカートリッジA1と同じである。本実施例2は、実施例1に対してラセン筒8が1パーツ増加してしまう反面、ラセン筒8をラセン溝242専門の部材とすることができるため、実施例1に比べ、制約なくラセン溝242を成形できる。また、スリーブ4内に止着されるため、外観も制約なく成形できる。
実施例に於いては、カートリッジA1、A2の身筒3の係合穴311は、正8角形状で、ホルダーBの連結部材8の連結片82は、係合穴311に対応した相似正8角形状で、しかも上端に係合突部821を設け、カートリッジA1、A2とホルダーBの連結及び回動伝達を行っている。しかし、この連結及び回動伝達を別個の部位、部材で行うことも可能である。例えば、係合穴311と連結片82に係合突部821を設けず、回動伝達のみ行い、カートリッジA1、A2とホルダーBの連結を、別な部位でのアンダーカット係合や、板バネによる弾性保持など、公知の連結方法を利用できる。
また、係合穴311と連結片82の形状も、係合穴311に連結片82を挿入した際、係合して回動が伝達できるような形状であれば、例えば非円形状やカギ穴形状など、公知の形状を自由に設定できる。
また、実施例1に於いて、スリーブ104内面に設けられるラセン溝142は、内面全周に保持筒2の螺合突部22より細かいラセン溝142を無数条、ローレット状に螺設し、1つの螺合突部22が隣り合った複数条のラセン溝142に螺合する構成を説明した。また、実施例2に於いては、ラセン筒9内面に設けられるラセン溝242は、保持筒2の螺合突部22の数の整数倍のラセン溝242を螺設し、1つの螺合突部22が1条のラセン溝242に螺合する構成を説明した。このラセン溝142,242は、逆に螺設することも可能である。つまり、実施例1のスリーブ104内面に、螺合突部22の数の整数倍のラセン溝242を螺設し、実施例2のラセン筒9に、螺合突部22より細かいラセン溝42を無数条、ローレット状に螺設してもよい。