(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023518
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】移動体への搭乗偏り抑制システムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20220201BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20220201BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20220201BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20220201BHJP
G16Y 40/50 20200101ALI20220201BHJP
【FI】
B61B1/02
G06Q50/30
G16Y10/40
G16Y40/20
G16Y40/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126511
(22)【出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綿野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】望月 清隆
(72)【発明者】
【氏名】竹田 新
(72)【発明者】
【氏名】田村 例人
【テーマコード(参考)】
3D101
5L049
【Fターム(参考)】
3D101AD10
5L049CC42
(57)【要約】
【課題】 そこで本発明は、移動体を待っている乗客にあらかじめドア毎の混雑状況を知らせることで特定の車両への乗車が偏ってしまうことを抑制できる移動体への搭乗偏り抑制システムを提供する。
【解決手段】搭乗偏り抑制システムは、到着する移動体の各々の乗降口の近傍または乗降口に関連する地面に画像を形成する画像形成装置と、制御部と、ドア毎の混雑度合いを検出するセンサを有しセンサの出力に応じた信号を制御部に出力する混雑検出部と、を有する。画像形成装置は、移動体の乗降口の整列線に沿って延びる画像を形成する。制御部は、整列線に沿って延びる各々の画像の長さ、幅、点滅周期、色の少なくとも一つを、混雑検出部の信号に基づいて設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置を用いた複数の乗降口を有する移動体への特定の乗降口への偏った搭乗を抑制する前記移動体への搭乗偏り抑制システムであって、
到着する前記移動体の各々の前記乗降口の近傍または前記乗降口に関連する地面に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置を制御する制御部と、
前記ドア毎の混雑度合いを検出するセンサを有し、前記センサの出力に応じた信号を前記制御部に出力する混雑検出部と、を有し、
前記画像形成装置は、前記移動体の前記乗降口に対して各々形成された整列線に沿って延びる画像を形成可能であり、
前記制御部は、前記整列線に沿って延びる各々の前記画像の長さ、幅、点滅周期、色の少なくとも一つを、前記混雑検出部の前記信号に基づいて設定する、移動体への搭乗偏り抑制システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記整列線に沿って延びる前記画像の長さと幅の少なくとも一つを、各々の前記乗降口の前記混雑検出部の前記信号に基づいて設定するものであり、
前記制御部は、前記混雑検出部の前記信号が示す混雑度合いが高いほど前記画像の長さおよび/または幅を短い値に設定する、請求項1に記載の移動体への搭乗偏り抑制システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記混雑検出部の前記信号に基づいて前記画像の長さを設定し、
前記制御部は、前記混雑検出部の前記信号が閾値未満と前記閾値以上とで、前記画像の色、幅、点滅周期、文字の少なくとも一つを異ならせる、請求項1に記載の移動体への搭乗偏り抑制システム。
【請求項4】
前記混雑検出部は前記センサとして、移動体の内部の様子を撮像可能なカメラを含む、請求項1に記載の移動体への搭乗偏り抑制システム。
【請求項5】
前記移動体は、複数のドアを有する電車またはバスであり、
前記システムは、前記ドアから所定距離以内の領域における最大乗車可能人数Aと、各々の駅またはバス停での前記ドア毎の降客数を記録したデータベースを有する記録部を備え
前記混雑検出部は、各々の前記ドアの近傍に設けられ、各々の前記ドアから所定距離以内の領域を撮像するカメラを備え、
前記混雑検出部は、
前記カメラが撮像した画像に基づき、現在の前記ドア付近の前記領域内に乗車している乗客数Bを推定し、
前記データベースから、到着した駅またはバス停において、それぞれの前記ドアから降りる乗客数Cを推定し、
到着した駅またはバス停で降車した乗客を加味した上で各々の前記ドア毎の乗りこみ可能な乗客数Dを、A-B+Cから算出し、
算出した前記ドア毎の乗り込み可能な乗客数に応じた信号を出力する、請求項1に記載の移動体への搭乗偏り抑制システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記混雑検出部から取得した信号に応じて、算出した前記ドア毎の乗り込み可能な乗客数が大きいほど前記画像の長さを大きく設定する、請求項5に記載の移動体への搭乗偏り抑制システム。
【請求項7】
前記移動体は、電車であり、
前記制御部は、前記電車がホームへ入線する前に前記画像形成装置に前記画像を表示させる、請求項1に記載の移動体への搭乗偏り抑制システム。
【請求項8】
画像形成装置を用いた複数の乗降口を有する移動体への特定の乗降口への偏った搭乗を抑制する移動体への搭乗偏り抑制方法であって、
前記画像形成装置は、到着する前記移動体の各々の前記乗降口の近傍または前記乗降口に関連する地面に画像を形成するように構成されており、
前記画像形成装置は、前記移動体の前記乗降口に対して各々形成された整列線に沿って延びる画像を形成可能であり、
前記制御部は、前記整列線に沿って延びる各々の前記画像の長さ、幅、点滅周期、色の少なくとも一つを、各々の前記乗降口の混雑状況に基づいて設定する、移動体への搭乗偏り抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体への搭乗偏り抑制システムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などのように、駅には各種の情報を提供する様々な情報提供装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2015-172850公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数のドアを有する電車などの移動体を乗客が利用する場合、乗客はドア毎の混雑状況をあらかじめ把握することができない。このため、混雑しているドアから移動体へ乗客が乗り込もうとしてドアの周辺の混雑がさらに増す一方で、比較的空いているドアの周辺が空いたままとなっている場合がある。
そこで本発明は、移動体を待っている乗客にあらかじめドア毎の混雑状況を知らせることで特定の車両への乗車が偏ってしまうことを抑制できる移動体への搭乗偏り抑制システムおよびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係る移動体への搭乗偏り抑制システムは、
画像形成装置を用いた複数の乗降口を有する移動体への特定の乗降口への偏った搭乗を抑制する前記移動体への搭乗偏り抑制システムであって、
到着する前記移動体の各々の前記乗降口の近傍または前記乗降口に関連する地面に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置を制御する制御部と、
前記ドア毎の混雑度合いを検出するセンサを有し、前記センサの出力に応じた信号を前記制御部に出力する混雑検出部と、を有し、
前記画像形成装置は、前記移動体の前記乗降口に対して各々形成された整列線に沿って延びる画像を形成可能であり、
前記制御部は、前記整列線に沿って延びる各々の前記画像の長さ、幅、点滅周期、色の少なくとも一つを、前記混雑検出部の前記信号に基づいて設定する。
【0006】
本発明の一側面に係る移動体への搭乗偏り抑制方法は、
画像形成装置を用いた複数の乗降口を有する移動体への特定の乗降口への偏った搭乗を抑制する移動体への搭乗偏り抑制方法であって、
前記画像形成装置は、到着する前記移動体の各々の前記乗降口の近傍または前記乗降口に関連する地面に画像を形成するように構成されており、
前記画像形成装置は、前記移動体の前記乗降口に対して各々形成された整列線に沿って延びる画像を形成可能であり、
前記制御部は、前記整列線に沿って延びる各々の前記画像の長さ、幅、点滅周期、色の少なくとも一つを、各々の前記乗降口の混雑状況に基づいて設定する。
【0007】
上述した移動体への搭乗偏り抑制システムおよびその方法によれば、画像形成装置が表示する画像の長さ・幅・点滅周期、色によって、移動体を待っている乗客に、到着する移動体の乗降口毎の混雑状況を地面に表示することができる。これにより、乗客は事前に乗降口毎の混雑状況を比較して、より空いている乗降口の前に移動することができる。これにより、移動体への乗車時に乗降口に混雑の偏りが生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、待っている乗客にあらかじめドア毎の混雑状況を知らせることで特定の車両への乗車が偏ってしまうことを抑制できる移動体への搭乗偏り抑制システムおよびその方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る移動体への搭乗偏り抑制システムが設置された駅を示す図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る移動体への搭乗偏り抑制システムのブロック図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る移動体への搭乗偏り抑制システムによって描かれる画像の一例を示す図である。
【
図4】画像形成装置によって形成される、乗車率毎に設定された画像の態様の一例を示す。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る移動体への搭乗偏り抑制システムが設置された駅を示す図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係る移動体への搭乗偏り抑制システムが設置された駅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る移動体への搭乗偏り抑制システム1(以降、単にシステム1と呼ぶ)が設置された駅を示す図である。
図1に示した例では、本システム1は、電車Tへの搭乗偏りを抑制するために用いられている。システム1は、駅に設置された画像形成装置10により駅のホームHへ、ドアE(乗降口)毎の混雑状況を知らせる画像を表示し、電車Tを待っている乗客を空いているドアEへ誘導することにより、特定のドアEへ人が集中することを抑制する。なお
図1においては、作図の都合上、ホームH上で電車Tを待っている人物Fについては足の輪郭のみを描いている。
【0011】
なお以降の説明でいう乗降口の混雑状況とは、移動体内においてその乗降口の周辺が混んでいるか否かを指している。例えば、移動体の前部と後部に一つずつ乗降口が設けられており、移動体の前部では混んでいるが、後部では空いている場合、前部の乗降口は混んでおり、後部の乗降口は空いているという。システム1は、これから移動体へ乗ろうとする人がその搭乗口を利用して搭乗したときに移動体内が空いているか否かを表示し、移動体内の空いている領域へ搭乗できる乗降口の利用を促すことにより、移動体内部の混雑の偏りを抑制する。つまり本システム1は、どの搭乗口を利用すると車内が空いているかを利用者へ案内するものである。
【0012】
図2は、本実施形態に係るシステム1のブロック図である。
図2に示したように、システム1は、画像形成装置10と、混雑検出部11と、制御部12を備えている。
【0013】
画像形成装置10は、駅のホームH上であって、到着する電車Tの各々のドアEの近傍に画像を形成する。画像形成装置10は、光により画像を描画する。画像形成装置10は、ホームHの天井または庇20に設けられ、ホームHに光を投影して画像を形成する。画像形成装置10は、電車TのドアEの数と同じ数が設けられていてもよい。あるいは一つの画像形成装置10により複数のドアの前の所定の領域にまとめて画像を形成するように構成し、電車TのドアEの数より少ない個数が設けられていてもよい。
【0014】
画像形成装置10は、到着する電車TのドアEに対して各々形成された整列線Sに沿って延びる画像を形成可能とされている。ここで整列線Sとは、ホームH上で電車Tに乗り込むために待っている人達がなしている列に沿った線である。整列線Sは電車Tの進行方向に対して直交する方向に延びていたり、あるいは、電車Tの進行方向に対して斜めに延びている場合もある。
制御部12は、混雑検出部11の出力に基づき、画像形成装置10を制御する。
【0015】
混雑検出部11は、電車TのドアE毎の混雑度合いを検出するカメラ15(センサ)と、該カメラ15が撮像した画像に基づき情報処理を行う加工部14を有している。混雑検出部11は、カメラ15の出力に応じた信号を制御部12に出力する。なお混雑検出部11のセンサとして、可視光カメラや赤外線カメラ、重量センサなどを用いることができる。
【0016】
例えば電車Tの車両の内部領域を、電車Tの進行方向に対して前部と後部に二分割したときに前部に前ドア、後部に後ドアが設けられている場合に、前ドアの混雑度合いとは、車両の内部領域の前部の混雑度合いを指す。混雑検出部11は、カメラ15が撮像した画像に基づき、車両の前部に搭乗している乗客の人数をカウントし、カウントした人数を前部に搭乗可能な最大人数で除して算出される乗車率に応じた信号を制御部12に出力する。この場合、混雑検出部11は、一号車の前ドアの周囲の乗車率に応じた信号、一号車の後ドアの周囲の乗車率に応じた信号、二号車の前ドアの周囲の乗車率に応じた信号、二号車の後ドアの周囲の乗車率に応じた信号、などをそれぞれ識別可能に制御部12に出力する。
【0017】
図3は、画像形成装置10がホームH上に描画した画像を示している。
図4は、画像形成装置10によって形成される、乗車率毎に設定された画像の態様の一例を示している。図示した例では、画像形成装置10は、整列線Sに沿って整列して待っている人たちの左側に帯状または楕円状の画像を形成する。
制御部12は画像形成装置10を制御して、混雑検出部11が出力する信号に基づき、駅のホームH上であって、到着する電車Tの各々のドアE近傍に画像を描画させる。画像形成装置10は、到着する電車TのドアEに対して各々形成された整列線Sに沿って延びる画像を形成する。制御部12は、整列線Sに沿って延びる各々の画像の長さ、幅、点滅周期、色の少なくとも一つを、混雑検出部11の信号に基づいて設定する。なお画像の長さとは、整列線Sに沿った方向の寸法である。画像の幅とは、整列線Sと直交する方向の寸法である。
【0018】
乗車率が0~33%の時には、制御部12は画像形成装置10に、青色の長い帯状の画像を、点滅させることなく形成させる。
乗車率が33~66%の時には、制御部12は画像形成装置10に、青色の帯状の画像を、点滅させることなく形成させる。
乗車率が66~100%の時には、制御部12は画像形成装置10に、青色の短い帯状の画像を、点滅させることなく形成させる。
乗車率が100~150%の時には、制御部12は画像形成装置10に、黄色の楕円状の画像を、ゆっくりとした周期で点滅させて形成させる。
乗車率が150~200%の時には、制御部12は画像形成装置10に、橙色の楕円状の画像を、点滅させて形成させる。
乗車率が200~300%の時には、制御部12は画像形成装置10に、赤色の楕円状の画像を、早い周期で点滅させて形成させる。
なお、帯および楕円の長手方向はいずれも整列線に沿って延びる。
【0019】
このように図示した例では、制御部12は画像形成装置10に、乗車率が0~100%の時には、乗車率に応じて長さのみを異ならせて画像を形成させている。制御部12は画像形成装置10に、乗車率が100~300%の時には、乗車率に応じて色および点滅周期を異ならせて画像を形成させている。制御部12は画像形成装置10に、乗車率が100%を境界にして形状の異なる画像を形成させている。制御部12は画像形成装置10に、乗車率が100%を境界にして画像の点滅する/しないが異なる画像を形成させている。
【0020】
なお
図3および
図4に示した例では、簡単な形状の画像を形成する例を示したが、画像の表示態様はこれらの例に限られない。画像形成装置10は、楕円や帯状の画像の他に、三角形や多角形、円、など他の図形を描いてもよい。また、整列線Sに沿って表示する画像の個数を増減させてもよい。あるいは画像形成装置10は、「空いています」「混んでいます」「乗車率は~%です」などといった文字を画像として表示してもよい。
また、画像の長さや幅は、混雑検出部11の信号に応じて連続的に変化するように構成してもよいし、ステップ状に変化するように構成してもよい。
【0021】
このように本実施形態に係る移動体への搭乗偏り抑制システム1は、
画像形成装置10を用いた複数の乗降口を有する移動体への特定の乗降口への偏った搭乗を抑制する移動体への搭乗偏り抑制システム1である。
移動体への搭乗偏り抑制システム1は、到着する移動体の各々の乗降口の近傍または乗降口に関連する地面に画像を形成する画像形成装置10と、画像形成装置10を制御する制御部12と、ドアE毎の混雑度合いを検出するセンサ(カメラ15)を有しセンサ(カメラ15)の出力に応じた信号を制御部12に出力する混雑検出部11とを有する。
画像形成装置10は、移動体の乗降口に対して各々形成された整列線Sに沿って延びる画像を形成可能である。制御部12は、整列線Sに沿って延びる各々の画像の長さ、幅、点滅周期、色の少なくとも一つを、混雑検出部11の信号に基づいて設定する。
【0022】
このように本実施形態に係るシステム1および方法によれば、画像形成装置10が表示する画像の長さ・幅・点滅周期、色によって、移動体を待っている乗客に、到着する移動体のドアE毎の混雑状況をホームHに表示することができる。これにより、乗客は事前にドアE毎の混雑状況を比較して、より空いているドアEの前の待機列に移動することができる。これにより、車両への乗車時に特定のドアEに混雑の偏りが生じることを抑制することができる。
【0023】
なお、制御部12は、電車Tが入線するより前に混雑検出部11から信号を受け取り、電車Tが入線するより前に画像形成装置10によってホームH上に
図3に示した画像を表示させることが好ましい。例えば電車Tが入線するより1~10分前に混雑検出部11から信号を受け取り、画像形成装置10に画像を表示させる。電車TがホームHに到着するより前に車両毎の混雑状況を知らせることにより、ホームHで待つ人に空いているドアEの待機列へ移動する時間的な猶予を与えることができる。例えばホームHに設置され入線する電車Tを撮像可能なカメラが撮像した画像に基づき、制御部12は電車TがホームHに到着するタイミングを特定することができる。
【0024】
また上述した本実施形態に係るシステムにおいて、制御部12は、整列線Sに沿って延びる画像の長さと幅の少なくとも一つを、混雑検出部11の信号に基づいて設定することが好ましい。制御部12は、混雑検出部11の信号が示す乗車率が高いほど画像の長さおよび/または幅を短い値に設定する。
図3に示した例においては、乗車率が0~33%、33~66%、66~100%と高くなるにつれて、帯状の画像の長さが短く設定されている。このため、帯状の画像の長さが長いほど車内が空いていることを示しやすく、駅で待っている人をより空いているドアEへ導きやすい。
【0025】
また上述した本実施形態に係るシステム1において、制御部12は、混雑検出部11の信号に基づいて画像の長さを設定し、混雑検出部11の信号が閾値未満と閾値以上とで、画像の色、幅、点滅周期、文字の少なくとも一つを異ならせる。
図3および
図4に示した例では、乗車率100%を示す信号が閾値となり、混雑検出部11から乗車率100%未満を示す信号を取得したときは、点滅無し、青色の帯状の画像が形成される。混雑検出部11から乗車率100%以上を示す信号を取得したときは、点滅する楕円状の画像が形成される。このように乗車率が100%を超える場合は、座れる/座れないという状況が生まれるため、画像の表示態様の色、幅、点滅周期、文字の少なくとも一つを異ならせることが好ましい。なお閾値となる乗車率は100%に限らず、200%や300%などに設定してもよい。
【0026】
また上述した本実施形態に係るシステム1において、
移動体は、複数のドアを有する電車またはバスであり、
システム1は、ドアEから所定距離以内の領域における最大乗車可能人数Aと、各々の駅またはバス停でのドアE毎の降客数を記録したデータベース16を備えた記録部13(
図2参照)を備え、
混雑検出部11は、各々のドアEの近傍に設けられ、各々のドアEから所定距離以内の領域を撮像するカメラ15を備えていてもよい。
混雑検出部11は、
カメラ15が撮像した画像に基づき、現在のドアE付近の領域内に乗車している乗客数Bを推定し、
データベース16から、到着した駅またはバス停において、それぞれのドアEから降りる乗客数Cを推定し、
到着した駅またはバス停で降車した乗客を加味した上で各々のドアE毎の乗りこみ可能な乗客数Dを、A-B+Cから算出し、
算出したドアE毎の乗り込み可能な乗客数Dに応じた信号を出力するように構成されていてもよい。
【0027】
駅ごとに電車Tから降りる人の利用頻度の多いドアEが決まっていることが多い。そこで、各々の駅において、どのドアEからどのくらいの人数が降りるかをデータベース16に記録しておくことができる。このようなデータベース16と、カメラ15とを用いれば、当該駅で降りる見込みの人数を加味したドアE周辺の混雑度合いを算出することができる。
【0028】
また、上述したように到着した駅またはバス停で降車した乗客を加味した上で各々のドアE毎の乗りこみ可能な乗客数Dを算出した場合、制御部12はこの乗客数Dが大きいほど画像の長さが大きくなるように設定し、画像形成装置10にこのように設定した画像を形成させるように構成してもよい。
【0029】
<第二実施形態>
図5は、本発明の第二実施形態に係る移動体への搭乗偏り抑制システム101が設置された駅を示す図である。上述した第一実施形態では、画像形成装置10がホームHの庇20に設置された例を説明したが、本発明はこの例に限られない。
【0030】
図5に示したように画像形成装置110は電車(移動体)Tの側面に設けられ、ホームHに光を投影して画像を描画するように構成されていてもよい。この場合、画像形成装置110は例えば電車Tの側面であってドアEの近傍に設けることができる。編成の異なる車両が停車するとドアEの位置が異なる場合があり、ホームHに画像形成装置110を設置した場合には都度描画領域を変更したりする必要が生じるが、電車Tに画像形成装置110を設ける場合には常にドアE付近に描画することができる。
【0031】
電車Tの側面に画像形成装置110を設ける場合には、なるべく低い位置に設けることが好ましい。例えば路面からの高さが1メートル、より好ましくは50センチメートル以内に画像形成装置110を設けることが好ましい。路面と画像形成装置110との距離が近いほど、画像形成装置110が投影する光がそれほど減衰しないうちに路面に到達するので、画像形成装置110は像をより鮮明に描くことができる。また、画像形成装置110が投影する光が、人物Fなどによって邪魔されることなく路面に到達しやすい。
【0032】
<第三実施形態>
あるいは
図6の第三実施形態に係る移動体の搭乗偏り抑制システム201として示したように、画像形成装置210は、ホームHに面一の画面を有し、画面に像を表示する、ホームHに埋め込まれたディスプレイであってもよい。このような構成によれば、人物Fによって光が遮られたり、光量が不足して像が不鮮明になるといった不都合が生じにくい。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0034】
なお電車では、車両の前部の右方および左方の両方にドアが設けられている場合もあるが、乗降時に利用されるドアは右方または左方のドアの一方のみである。このため本発明のシステムにおいて、右方及び左方の両方にドアが設けられている場合であっても、右方のドアの周辺の混雑状況および左方のドアの周辺の混雑状況を個別に考慮する必要はない。また電車によっては右方のドアから乗車し、左方のドアから降車するように運用されている場合がある。このような場合は、システムは、右方のドアの周囲の混雑状況と左方のドアの混雑状況とを個別に考慮する必要はない。いずれの場合であっても、前部の右方のドアと前部の左方のドアの周辺の混雑状況をまとめて前部の混雑状況として把握し、後部の右方のドアと後部の左方のドアの周辺の混雑状況をまとめて後部の混雑状況として把握すればよい。バスや船も同様である。
しかしながら飛行機では機体の右方と左方のドアを同時に使用する場合がある。この場合には、前部の右方のドアの周囲の混雑状況、前部の左方のドアの周囲の混雑状況、後部の右方のドアの周囲の混雑状況、後部の左方のドアの周囲の混雑状況をそれぞれ個別に考慮するように構成してもよい。つまり本発明は、乗降時に乗降に用いられるドアの周囲の混雑状況を考慮するように構成すればよい。
【0035】
上述した説明では、本発明のシステムおよび方法を電車に適用した例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、複数の乗降口を有し、多人数が利用するバス、船、飛行機、あるいは飛行可能な移動体などに本発明を適用することができる。
【0036】
なお、混雑検出部は乗車率を算出し乗車率に応じた信号を制御部に出力すると説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、混雑検出部はドアの周囲の乗客数に応じた信号を制御部に出力するように構成してもよい。
【0037】
なお上述した説明においては、ドア毎の混雑状況を知らせる例を説明したが、車両毎の混雑状況を知らせるように構成してもよい。例えば上述した構成において、一号車の前ドアの周囲の乗車率と一号車の後ドアの周囲の乗車率とを平均して一号車の乗車率を算出し、同様にして他の車両の乗車率を算出することができる。制御部は、一号車の前ドアの近傍および後ドアの近傍に一号車の乗車率に応じた画像を表示させ、他の車両の前ドアおよび後ドアの近傍に各々の車両の乗車率に応じた画像を表示させる。
【0038】
つまり本発明は、以下のように構成してもよい。
画像形成装置を用いた複数の車両を有する移動体への特定の車両への偏った搭乗を抑制する移動体への搭乗偏り抑制システムであって、
到着する移動体の各々の車両の乗降口の近傍または乗降口に関連する地面に画像を形成する画像形成装置と、
画像形成装置を制御する制御部と、
車両毎の混雑度合いを検出するセンサを有し、センサの出力に応じた信号を制御部に出力する混雑検出部と、を有し、
画像形成装置は、移動体の乗降口に対して各々形成された整列線に沿って延びる画像を形成可能であり、
制御部は、整列線に沿って延びる各々の画像の長さ、幅、点滅周期、色の少なくとも一つを、混雑検出部の信号に基づいて設定する、移動体への搭乗偏り抑制システム。
【符号の説明】
【0039】
1,101,201 移動体への搭乗偏り抑制システム
10,110,210 画像形成装置
11 混雑検出部
12 制御部
13 記録部
14 加工部
15 カメラ(センサ)
16 データベース
20 庇
E ドア
F 人物
T 電車