(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023604
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】削孔装置
(51)【国際特許分類】
E21B 7/02 20060101AFI20220201BHJP
E02D 23/08 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
E21B7/02
E02D23/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126654
(22)【出願日】2020-07-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207780
【氏名又は名称】大豊建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 実
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA04
2D129AB13
2D129DB05
2D129DC07
2D129DC13
2D129DC16
2D129DC34
2D129DC53
2D129FA02
(57)【要約】
【課題】削孔作業を効率よく実施できる削孔装置を提供する。
【解決手段】ニューマチックケーソン工法に用いられる削孔装置1である。削孔装置1は、地上走行部2と、地上走行部2に取り付けられるアーム31、32と、アーム32の先端に取り付けられて削孔位置で削孔する削孔部5、5と、削孔部5、5をアーム32に対して削孔位置に復帰可能に移動させる移動機構Mと、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューマチックケーソン工法に用いられる削孔装置であって、
地上走行部と、
前記地上走行部に取り付けられるアームと、
前記アームの先端に取り付けられて削孔位置で削孔する削孔部と、
前記削孔部を前記アームに対して削孔位置に復帰可能に移動させる移動機構と、
を備える、削孔装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記削孔部の進退方向に対して垂直な平面内のスライド機構である、請求項1に記載された削孔装置。
【請求項3】
前記削孔部、及び、前記移動機構は、前記アームに対して傾斜可能に取り付けられている、請求項1又は請求項2に記載された削孔装置。
【請求項4】
前記削孔部、及び、前記移動機構は、空気圧システムによって駆動されている、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された削孔装置。
【請求項5】
前記削孔部のロッドを引き抜く際に、バネの弾性力によって引き抜きを補助する補助機構をさらに備える、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載された削孔装置。
【請求項6】
前記空気圧システムに用いられる複数の機器が、まとめて配置されている、請求項4に記載された削孔装置。
【請求項7】
前記削孔部、及び、前記移動機構を、少なくとも2つずつ備える、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載された削孔装置。
【請求項8】
前記削孔部、及び、前記移動機構の地盤に対する位置を固定する固定部をさらに備える、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載された削孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックケーソン工法で用いられる削孔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ニューマチックケーソン工法において、基礎や地下構造物を構築するに当り、岩盤層を深く掘削して設置する場合がある。岩盤層を掘削するためには、削孔装置を用いて岩盤に削孔し、各孔に装薬して発破をかけて岩盤を粉砕し、粉砕された岩盤を掘削バケットで掬い取って土砂バケットに積み込み、この土砂バケットによりケーソンの外部に搬出している。
【0003】
この削孔作業は、従来は、人力によって実施しており、作業員にとって重労働で負担も大きいものであった。そこで、函内の天井走行式の掘削機に削孔装置を取り付け、機械で削孔するように構成された技術が知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-303075号公報
【特許文献2】特開平11-117656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2を含む従来の削孔装置は、いずれも天井走行式の掘削機に装着されるものであった。したがって、削孔装置を所定の位置に設置する場合に、アームをスイングさせるため、位置をずらす際に同時に高さの調整も必要となり、作業に時間がかかっていた。
【0006】
そこで、本発明は、削孔作業を効率よく実施できる削孔装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の削孔装置は、ニューマチックケーソン工法に用いられる削孔装置であって、地上走行部と、前記地上走行部に取り付けられるアームと、前記アームの先端に取り付けられて削孔位置で削孔する削孔部と、前記削孔部を前記アームに対して削孔位置に復帰可能に移動させる移動機構と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の削孔装置は、ニューマチックケーソン工法に用いられる削孔装置であって、地上走行部と、前記地上走行部に取り付けられるアームと、前記アームの先端に取り付けられて削孔位置で削孔する削孔部と、前記削孔部を前記アームに対して削孔位置に復帰可能に移動させる移動機構と、を備えている。このような構成であれば、必要な場合に削孔部を削孔位置に復帰させることで、アームを固定した状態で削孔作業を効率よく実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】削孔装置の全体の構成を説明する側面図である。
【
図4】切替弁及び操作レバーの説明図である。(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【
図5】削孔装置(削岩アタッチメント)の作用図であり、(a)は削孔状態を示し、(b)はさや管挿入状態を示す。
【
図6】削孔装置の作用を説明する側面図である。(a)は刃口部以外の削孔状況を示し、(b)は刃口部近傍の削孔状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照ながら説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する主旨のものではない。
【実施例0011】
(全体構成)
まず、
図1を用いて本発明の削孔装置1の全体構成を説明する。削孔装置1は、ニューマチックケーソン工法に用いられるものである。ニューマチックケーソンでは、作業室天井スラブと刃口部と地盤で囲まれる作業室内部を外部から送気された高圧空気によって高圧に保持することで、作業室内部への水の侵入を防止するようになっている。このような高圧環境下では、作業を効率化することで、作業室内に人が入って作業する時間をできる限り短縮することが望まれている。
【0012】
作業室内では、掘削機械によって地盤が掘削されるが、近年では、天井走行式の掘削機械によって地盤が掘削されることが一般的である。これと異なり、本実施例で説明する削孔装置1は、地上走行式であり、硬い岩盤層を掘削する際に用いられる。すなわち、削孔装置1は、後に説明するように、岩盤層に削孔・装薬して発破する際に用いられる。
【0013】
(削孔装置の構成)
削孔装置1は、
図1に示すように、作業室内の地盤上(岩盤層上)を走行するための履帯21を有する地上走行部2と、操縦席35が設置されて地上走行部2に旋回自在に搭載される旋回部3と、旋回部3に起伏自在に支持されるアーム31、32と、アーム32の先端に取り付けられる削孔アタッチメント4と、を備えている。
【0014】
(削孔アタッチメント4の構成)
削孔アタッチメント4は、
図2、
図3に示すように、主に、全体が四角形(日の字型)に形成されたフレーム40と、フレーム40に対して横方向(削孔方向に対して垂直な方向)にスライド移動自在に取り付けられる左右の削孔部5、5と、削孔部5、5を削孔方向に対して垂直な方向にスライド移動させる移動機構Mと、から構成されている。
【0015】
フレーム40には、フレーム40をアーム32に傾斜自在に支持させるための取付部41と、フレーム40に横方向(ビット57の穿孔方向と直交する方向)に延設されたレール42、42と、が取り付けられている。そして、レール42、42には、ブラケット51、51を介して、削孔部5、5がスライド移動自在に取り付けられている。
【0016】
削孔部5は、削孔方向に延びる棒状のリーダ50と、フレーム40のレール42、42に嵌合するブラケット51、51と、リーダ50の上端近傍に設置されるエアモータ53と、リーダ50の上端近傍に設置されてエアモータ53によって回転駆動される主動ギヤ54Aと、リーダ50の下端近傍に設置される従動ギヤ54Bと、主動ギヤ54Aと従動ギヤ54Bに掛け回される巻掛伝導部材としてのチェーン52と、チェーン52によってリーダ50に沿って上下方向(削孔方向)に往復移動しつつロッド56に打撃を伝える削岩機55と、削孔方向に打撃を加えつつ移動するロッド56と、ロッド56の先端に取り付けられるビット57と、を備えている。このように、エアモータ53によって駆動することで、削孔部5の重量を軽減して、カウンターウェイトを増やすことなく、そのまま装着できる。
【0017】
すなわち、空気圧システム9によってエアモータ53が回転し、エアモータ53が回転することによって主動ギヤ54Aが回転する。主動ギヤ54Aが回転すると、チェーン52の移動とともに従動ギヤ54Bが回転する。そして、チェーン52を正逆方向に移動することによって、チェーン52に連繋されている削岩機55、ロッド56、及び、ビット57が、上下方向に移動することになる。
【0018】
この他、削孔アタッチメント4のフレーム40には、中央下部に削孔アタッチメント4の地盤に対する位置を固定する固定部7が設置されている。固定部7は、棒状に構成されて、先端部は槍状に尖って地盤に突き挿しやすくなっている。そうすると、移動機構Mによる削孔部5のレール42、42に沿った横移動の間にも、この固定部7が地盤に突き挿されていることで、削孔アタッチメント4のフレーム40の絶対位置は変化しない。したがって、再度削孔する場合には、削孔部5をレール42、42に沿って反対方向に横移動させることで、削孔部5は削孔位置に容易に復帰できる。
【0019】
さらに、本実施例の従動ギヤ54Bには、削孔後に削孔部5のロッド56を引き抜く際に、引き抜きを補助する補助機構8が取り付けられている。補助機構8は、従動ギヤ54Bの回転軸81と、上下に移動可能な軸受82と、軸受82の上方向への移動に反力を与えるバネ83と、から構成されている。削孔部5のロッド56を引き抜こうとした際には、チェーン52を介して従動ギヤ54Bに上向きの力が作用するが、この補助機構8によってこの上向きの力を受けることができる。したがって、急にロッド56が抜けた場合でも、チェーン52の伸びが解放されることで生じる衝撃を緩和することができる。
【0020】
また、フレーム40には、
図4(a)、(b)に示すように、上部に空気圧システム9に用いられる複数の機器が集約されて配置されている。具体的に言うと、機器は、操作用エア入口91、ルブリゲータ92、減圧弁93、削岩機用バルブ94、スライド下部ストッパー操作バルブのコントロールレバー95、削岩機エア入口96、スライド上部ストッパー操作バルブのコントロールレバー97、削岩機55の進退(穿孔・後退)操作用のコントロールレバー98、及び、削岩機55の穿孔時の速度調整用のスピードコントロール99、から構成されている。
【0021】
さらに、本実施例のフレーム40と、削孔部5、5の間には、エアシリンダ6、6が、架け渡されている。このエアシリンダ6は、ヘッド側又はロッド側のいずれかに高圧空気を送ることで、伸縮するようになっている。そして、エアシリンダ6を伸縮することによって、削孔部5を左右(削孔方向と垂直な方向)に移動させることができる。
【0022】
上述したように、フレーム40のレール42、42と、削孔部5のブラケット51、51と、エアシリンダ6、6と、によって、削孔部5をアーム31、32に対して削孔位置に復帰可能に横方向に移動させる移動機構Mが構成される。
【0023】
(作業手順)
次に、
図5(a)、(b)及び
図6(a)、(b)を用いながら、本実施例の削孔装置1を用いた削孔・装薬・発破の作業手順と作用について説明する。
【0024】
1)削岩機55、55をリーダ50、50に設置し、削孔装置1に取り付ける。
2)削孔装置1を削孔箇所の近傍まで移動させ、削孔用のロッド56をスライドさせて位置合わせをする(
図6(a)参照)。刃口部を削孔する場合は、削孔装置1のアーム31、32の各シリンダーを伸縮調整することによって、装置全体を傾斜させることで斜め削孔を行う(
図6(b)参照)。
3)削孔用のロッド56を使用して所定の深さまで削孔する(
図5(a)参照)。削孔はバルブ操作によって実施される。
4)削孔終了後、削孔用のロッド56を引抜き、横にスライドさせ、さや管p(ローディングパイプ)を挿入する(
図5(b)参照)。この際、穴がつぶれて、さや管pが挿入できない場合、横スライドするエアシリンダ6により同じ位置に再度削孔可能である。
5)さや管p(ローディングパイプ)挿入後、装薬して発破をかけて岩盤を掘削する。
【0025】
(効果)
次に、本実施例の削孔装置1の奏する効果を列挙して説明する。
【0026】
(1)上述してきたように、本実施例の削孔装置1は、ニューマチックケーソン工法に用いられる削孔装置1であって、地上走行部2と、地上走行部2に取り付けられるアーム31、32と、アーム32の先端に取り付けられて削孔位置で削孔する削孔部5、5と、削孔部5、5をアーム32に対して削孔位置に復帰可能に移動させる移動機構Mと、を備えている。このような構成によれば、削孔作業を人力によらずに迅速に実施できる。さらに、再削孔が必要な場合には、削孔部5を削孔位置に迅速に復帰させることで、アーム31、32を固定した状態で削孔作業及びさや管挿入作業を効率よく実施できる。また、実施例中で説明したように、削岩機55による削孔をバルブ操作のみで実施できるため、作業員の負担が大幅に低減される。
【0027】
(2)また、移動機構Mは、削孔部5の進退方向に対して垂直な平面内のスライド機構であるから、削孔用のロッド56を横にスライドできるため、位置合わせを簡単かつ短時間で実施できる。また、削孔後にさや管p(ローディングパイプ)を挿入するときに、削孔装置1の全体を移動させる必要がない。加えて、刃口部近傍の掘削の際に移動機構Mを用いても、刃口部と接触することがない。
【0028】
(3)さらに、削孔部5、及び、移動機構Mは、アーム32に対して傾斜可能に取り付けられているため、刃口部近傍などであっても、削孔部5及び移動機構Mを傾斜させて使用すれば、削孔装置1を用いて削孔できる。
【0029】
(4)また、削孔部5、及び、移動機構Mは、空気圧システム9によって駆動されていることで、装置全体を軽量化することができるうえ、削岩機55に使用される空気圧を移動機構Mに転用することができる。したがって、全体の構成を簡略化することができる。すなわち、削孔部5の駆動をエア駆動とすることで、新たな油圧ポンプの設置が不要となり、コストダウンが可能となる。なおエアは外部のコンプレッサから配管を介して供給できる。
【0030】
(5)さらに、削孔部5のロッド56を引き抜く際に、バネ83の弾性力によって引き抜きを補助する補助機構8をさらに備えることで、削孔後にロッド56を引き抜く際に、急にロッド56が抜けた場合でも、チェーン52の伸びが解放されることによって生じる衝撃を緩和することができる。
【0031】
(6)また、空気圧システム9に用いられる複数の機器が、まとめて配置されていることによって、複数の配管・操作バルブが集約されて、全体の構成を簡略化することができる。
【0032】
(7)さらに、削孔部5、及び、移動機構Mを、少なくとも2つずつ備えることで、より迅速に削孔・装薬作業を実施することができる。この場合でも、再度の削孔をする際には、削孔部5を元の削孔位置に復帰させることで迅速に削孔できる。
【0033】
(8)また、削孔部5、及び、移動機構Mの地盤に対する位置を固定する固定部7をさらに備えることで、地盤に対する削孔位置を正確に再現することができる。
【0034】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0035】
例えば、実施例では、削孔部5を2つ備えるダブル(2連)タイプの削孔装置1を例として説明したが、これに限定されるものではなく、削孔部5を1つのみ備えるシングルタイプの削孔装置1であっても本発明を適用できる。