(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023682
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】車両用安全支援システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20220201BHJP
G08B 21/24 20060101ALI20220201BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20220201BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20220201BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20220201BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220201BHJP
G01S 13/52 20060101ALI20220201BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220201BHJP
G01S 13/88 20060101ALI20220201BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B21/24
G08B21/00 U
G08B25/04 K
G08B25/00 510M
G06T7/00 660Z
G01S13/52
G08G1/16 F
G01S13/88
A61B5/11 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126791
(22)【出願日】2020-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】516227490
【氏名又は名称】株式会社テクノアクセルネットワークス
(71)【出願人】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100199808
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 昌代
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】230116643
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】有本 和民
(72)【発明者】
【氏名】山内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】梶原 景久
(72)【発明者】
【氏名】速水 淳
【テーマコード(参考)】
4C038
5C086
5C087
5H181
5J070
5L096
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB03
4C038VC01
4C038VC05
5C086AA21
5C086AA22
5C086AA28
5C086BA22
5C086CA06
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA08
5C086DA16
5C086DA33
5C086EA11
5C086GA00
5C087AA02
5C087DD03
5C087DD05
5C087DD14
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG10
5C087GG66
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC27
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
5J070AE09
5J070AE10
5J070AF03
5J070AK14
5L096BA02
5L096BA04
5L096CA02
5L096DA03
5L096GA51
5L096HA00
5L096HA08
5L096JA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】乗員の状態を把握可能な車両用安全支援システムを提供する。
【解決手段】車両用安全支援システム1は、車両に搭乗する1又は複数の乗員の安全を支援する車両用安全支援システムであって、車両内の乗員を監視可能な監視部10と、監視部10からの監視情報10aにより乗員の状態を認識する認識部20と、認識部20からの認識情報20aに基づき、車両の動作の制御又は乗員への通報をする制御部30と、を備える。監視部10は、監視カメラを有し、監視カメラにより車両内の乗員を監視し、その行動を認識部で認識し、制御部で車両の動作の制御又は乗員への通報をすることで車両の安全な走行を確保する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭乗する1又は複数の乗員の安全を支援する車両用安全支援システムであって、
上記車両内の乗員を監視可能な監視部と、
上記監視部からの監視情報により上記乗員の状態を認識する認識部と、
上記認識部からの認識情報に基づき、上記車両の動作の制御又は上記乗員への通報をする制御部と
を備え、
上記監視部が、監視カメラを有する車両用安全支援システム。
【請求項2】
上記監視部が、上記車両内に持ち込まれ得る携行物を特定する携行物特定手段を有し、
上記監視情報が、上記携行物特定手段が特定した携行物情報を含み、
上記認識情報が、
上記携行物が上記車両内に存在するか否かを特定する携行物検知情報と、
上記車両から上記乗員全員が降車したか否かを特定する降車情報と
を含み、
上記降車情報により上記車両から上記乗員全員が降車したことが特定され、上記携行物検知情報により上記携行物が上記車両内に存在することが特定された場合に、上記制御部が、上記携行物が上記車両内に存在することを上記乗員へ通報する請求項1に記載の車両用安全支援システム。
【請求項3】
上記監視部が、監視レーダーを有する請求項2に記載の車両用安全支援システム。
【請求項4】
上記携行物特定手段が、上記監視レーダーにより検知される周期的振動を用いる請求項3に記載の車両用安全支援システム。
【請求項5】
上記認識部が、
上記監視情報から上記乗員の状態を評価関数により数値で表す数値化手段と、
上記数値との大小関係により上記乗員の状態を特定するための閾値を最適化する最適化手段と、
上記認識情報として、上記数値及び上記閾値から上記乗員の状態を特定する認識情報特定手段と
を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用安全支援システム。
【請求項6】
上記監視部が、
予め撮影された乗員のリファレンス画像を登録したデータベースと、
上記監視カメラにより撮影された乗員の撮影画像を、上記リファレンス画像と比較検索することで上記乗員を特定する乗員特定手段と
を有し、
上記乗員特定手段が、上記撮影画像と上記リファレンス画像との一致度を算出可能に構成されており、
上記認識部の最適化手段で、上記一致度を用いる請求項5に記載の車両用安全支援システム。
【請求項7】
上記監視部が、上記車両の周囲の光度を測定する光度計を有し、
上記認識部の最適化手段で、上記光度を用いる請求項5に記載の車両用安全支援システム。
【請求項8】
上記監視部が、上記乗員の生体情報を取得するバイタルセンサを有し、
上記監視情報が、上記バイタルセンサから得られる生体情報を含む請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車両用安全支援システム。
【請求項9】
上記監視部が、
車外から上記車両に接近する人物を検出可能な超音波センサと、
上記人物を認知するための車外カメラ又は車外レーダーと
を有し、
上記監視情報が、上記超音波センサと上記車外カメラ又は車外レーダーとから得られる車外情報を含み、
上記認識情報が、上記車外情報から上記人物が不審者であるか否かを特定する不審者特定情報を含み、
上記制御部が、上記不審者特定情報を用いる請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車両用安全支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用安全支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の安全な走行を確保するため、車外の状況を把握するセンサやカメラ等を搭載した車両が公知である(例えば特開2014-85331号公報参照)。上記公報に記載の車両は、超音波センサと、レーダー及び映像カメラを用いて路肩の空間を認知し、路肩に安全に移動し停車することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、幼児やペットを車内に放置したまま乗員全員が降車したことによる幼児やペットの死亡事故も報告されている。また、車両の走行中に乗員、特にドライバの健康状態の悪化等が事故につながる場合もある。これらの事故に対する車両用安全支援システムも求められている。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、乗員の状態を把握可能な車両用安全支援システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両用安全支援システムは、車両に搭乗する1又は複数の乗員の安全を支援する車両用安全支援システムであって、上記車両内の乗員を監視可能な監視部と、上記監視部からの監視情報により上記乗員の状態を認識する認識部と、上記認識部からの認識情報に基づき、上記車両の動作の制御又は上記乗員への通報をする制御部とを備え、上記監視部が、監視カメラを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用安全支援システムは、乗員の状態を把握可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用安全支援システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の車両用安全支援システムが搭載されている車両を示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図1の車両用安全支援システムの制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本発明の一態様に係る車両用安全支援システムは、車両に搭乗する1又は複数の乗員の安全を支援する車両用安全支援システムであって、上記車両内の乗員を監視可能な監視部と、上記監視部からの監視情報により上記乗員の状態を認識する認識部と、上記認識部からの認識情報に基づき、上記車両の動作の制御又は上記乗員への通報をする制御部とを備え、上記監視部が、監視カメラを有する。
【0011】
当該車両用安全支援システムは、監視カメラにより車両内の乗員を監視し、その行動を認識部で認識し、制御部で車両の動作の制御又は乗員への通報をすることで車両の安全な走行を確保することができる。
【0012】
上記監視部が、上記車両内に持ち込まれ得る携行物を特定する携行物特定手段を有し、上記監視情報が、上記携行物特定手段が特定した携行物情報を含み、上記認識情報が、上記携行物が上記車両内に存在するか否かを特定する携行物検知情報と、上記車両から上記乗員全員が降車したか否かを特定する降車情報とを含み、上記降車情報により上記車両から上記乗員全員が降車したことが特定され、上記携行物検知情報により上記携行物が上記車両内に存在することが特定された場合に、上記制御部が、上記携行物が上記車両内に存在することを上記乗員へ通報するとよい。車両に持ち込まれ、携行物特定部で特定された携行物が、乗員全員が降車した後にも車両に存在している場合、上記携行物は車内への忘れ物と特定できるから、上記制御部が、上記携行物が上記車両内に存在することを上記乗員へ通報することで、忘れ物を抑止することができる。
【0013】
上記監視部が、監視レーダーを有するとよい。監視カメラに加えて監視レーダーを用いることで、例えば毛布等に覆われた対象物等も特定することが可能となるため、監視精度を高められる。
【0014】
上記携行物特定手段が、上記監視レーダーにより検知される周期的振動を用いるとよい。対象物が生物である場合、その心拍や呼吸が監視レーダーにより周期的振動として検知される。従って、監視レーダーにより検知される周期的振動を用いることで、対象が生物か非生物かを特定できる。さらに、その周期、つまり心拍や呼吸数が一定の範囲にある場合、その対象が幼児であると推論することが可能である。従って、携行物特定に監視レーダーにより検知される周期的振動を用いることで、幼児の置き忘れを高い精度で検出することができるようになる。
【0015】
上記認識部が、上記監視情報から上記乗員の状態を評価関数により数値で表す数値化手段と、上記数値との大小関係により上記乗員の状態を特定するための閾値を最適化する最適化手段と、上記認識情報として、上記数値及び上記閾値から上記乗員の状態を特定する認識情報特定手段とを有するとよい。このように乗員の状態を特定するための閾値を最適化することで、上記乗員の状態の特定精度を高めることができる。なお、閾値の最適化には、閾値自体の数値を調整する方法の他、評価関数にバイアス値を加えて相対的に閾値を調整する方法を含むものとする。
【0016】
上記監視部が、予め撮影された乗員のリファレンス画像を登録したデータベースと、上記監視カメラにより撮影された乗員の撮影画像を、上記リファレンス画像と比較検索することで上記乗員を特定する乗員特定手段とを有し、上記乗員特定手段が、上記撮影画像と上記リファレンス画像との一致度を算出可能に構成されており、上記認識部の最適化手段で、上記一致度を用いるとよい。上記一致度は、乗員の個体識別の正当性を表すものと考えられ、換言すれば撮影映像の信頼性を表す。この一致度を用いて最適化手段で閾値を最適化することで、上記乗員の状態の特定精度をさらに高めることができる。
【0017】
上記監視部が、上記車両の周囲の光度を測定する光度計を有し、上記認識部の最適化手段で、上記光度を用いるとよい。監視カメラは光度が低い際に識別力が低下すると考えられ、監視レーダーは光度が低い場合に相対的に識別力が高まる。つまり、上記認識部の最適化手段が光度によって監視カメラ又は監視レーダーからの情報の優先度を調整することで、上記乗員の状態の特定精度をさらに高めることができる。
【0018】
上記監視部が、上記乗員の生体情報を取得するバイタルセンサを有し、上記監視情報が、上記バイタルセンサから得られる生体情報を含むとよい。このように監視情報に生体情報を含めることで、上記乗員の健康状態の悪化に起因する車両の事故を抑止することができる。
【0019】
上記監視部が、車外から上記車両に接近する人物を検出可能な超音波センサと、上記人物を認知するための車外カメラ又は車外レーダーとを有し、上記監視情報が、上記超音波センサと上記車外カメラ又は車外レーダーとから得られる車外情報を含み、上記認識情報が、上記車外情報から上記人物が不審者であるか否かを特定する不審者特定情報を含み、上記制御部が、上記不審者特定情報を用いるとよい。このように不審者特定情報を用いることで、車両あるいは車両内の物品の損害予防を図ることができる。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る車両用安全支援システムについて、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示す車両用安全支援システム1は、
図2に示す車両Xに搭乗する1又は複数の乗員の安全を支援する車両用安全支援システムである。当該車両用安全支援システム1は、車両X内の乗員を監視可能な監視部10と、監視部10からの監視情報10aにより上記乗員の状態を認識する認識部20と、認識部20からの認識情報20aに基づき、車両Xの動作の制御又は上記乗員への通報をする制御部30とを備える。
【0022】
<監視部>
監視部10は、
図3に示すように、光度計101と、監視カメラ102と、監視レーダー103と、超音波センサ104と、車外カメラ105と、車外レーダー106と、バイタルセンサ107と、マイク108と、データベース109と、乗員特定手段110と、携行物特定手段111とを有する。
【0023】
(光度計)
光度計101は、車両Xの周囲の光度112を測定する。光度計101は車両Xの外部の光度を測定してもよいが、車両Xの内部の光度を測定することが好ましい。当該車両用安全支援システム1は、主として車両X内の乗員を監視するものであるため、車両X内の光度を用いる方が監視精度を高められる。なお、測定された光度112は、認識部20へ送られる。
【0024】
(監視カメラ及び監視レーダー)
監視カメラ102及び監視レーダー103は、車両X内の乗員を監視するとともに後述する乗員の特定や携行物の特定に用いられる。監視カメラ102は画像により対象物を特定し、監視レーダー103は反射波によって対象物を特定する。監視カメラ102は、対象物の形や動きを捉え易いが、一方で、対象物を視認できない場合は監視することができない。このため、監視カメラ102に加えて監視レーダー103を用いることで、例えば毛布等に覆われた対象物等も特定することが可能となるため、監視精度を高められる。
【0025】
この監視カメラ102及び監視レーダー103は、車両Xの居住空間全体を監視するものであってもよいが、
図2に示すように、乗員の座席ごとに1組の監視カメラ102及び監視レーダー103が設けられることが好ましい。乗員ごとに1組の監視カメラ102及び監視レーダー103を設けることで、監視精度を高められる。
【0026】
乗員ごとに監視カメラ102及び監視レーダー103が設けられている場合、監視カメラ102の監視領域102aは、
図2に示すように、乗員の顔が位置する場所を中心とした領域とするとよい。監視カメラ102により乗員の顔色、顔の角度、視線の角度、瞬き回数、あくびの有無等が観察できる。一方、監視レーダー103の監視領域103aは、後述する忘れ物の検知精度を高める観点から、座席の周囲も含む広範囲とするとよい。
【0027】
監視情報10aは、監視カメラ102及び監視レーダー103により得られる車内情報113を含む。このように監視情報10aに車内情報113を含めることで、乗員の状態を把握することができる。
【0028】
(超音波センサ、車外カメラ及び車外レーダー)
超音波センサ104、車外カメラ105及び車外レーダー106は車両Xに近づく人物を監視する。具体的には、超音波センサ104は車外から車両Xに接近する人物を検出可能である。また、車外カメラ105及び車外レーダー106は、上記人物を認知するために設けられている。なお、車外カメラ105及び車外レーダー106は、認知精度を高める観点から両方を用いることが好ましいが、いずれか一方であっても認知することは可能である。このため、車外カメラ105及び車外レーダー106のいずれか一方を省略してもよい。
【0029】
超音波センサ104、車外カメラ105及び車外レーダー106は車両Xに近づく人物を監視することから、例えば
図2に示すように、車両Xの両側面にそれぞれ配置することができる。
【0030】
超音波センサ104は、距離の比較的遠い物を捉えやすいため、超音波センサ104の監視領域104aは比較的広く取られ、例えば5m以上20m以下の距離、好ましくは10m以上20m以下の距離にいる人物を捉えるように設定される。また、監視カメラ102はその画像により人物を捉えるため、その監視領域105aは比較的鮮明に人物を捉えられる近距離、例えば5m以下に設定される。車外レーダー106はその中間の距離を主にカバーし、その監視領域106aは例えば5m以上10m以下の距離に設定される。
【0031】
監視情報10aは、超音波センサ104、車外カメラ105、及び車外レーダー106から得られる車外情報114を含む。このように監視情報10aに車外情報114を含めることで、上記人物が不審者であるか否かを特定することができる。
【0032】
(バイタルセンサ)
バイタルセンサ107は、乗員の生体情報115を取得する。具体的にはバイタルセンサ107は、上記乗員の脈拍数、心拍数、心拍間隔、血圧、血糖値、呼吸数などを捉えることができる。中でも脈拍数及び呼吸数を用いるとよい。
【0033】
バイタルセンサ107としては、非接触式のものが好ましく、中でもドップラーセンサを用いたものが精度の観点から特に好ましい。非接触式のバイタルセンサ107を用いる場合、バイタルセンサ107は監視カメラ102等と同じ場所に配置することができる。この場合、車両Xへの取り付け容易性の観点から、バイタルセンサ107を監視カメラ102及び監視レーダー103とユニット化するとよい。
【0034】
また、バイタルセンサ107として接触式のものを用いることもできる。このような接触式のバイタルセンサ107としては、マットセンサが公知であり、例えば車両Xの座席の表面に取り付けることができる。
【0035】
監視情報10aは、バイタルセンサ107から得られる生体情報115を含む。このように監視情報10aに生体情報115を含めることで、乗員の健康状態の悪化に起因する車両Xの事故を抑止することができる。
【0036】
(マイク)
マイク108は、車両X内で乗員が発する言葉を音声情報116として取得する。
【0037】
マイク108は、監視カメラ102等と同じ場所に配置することができる。この場合、車両Xへの取り付け容易性の観点から、マイク108を監視カメラ102及び監視レーダー103とユニット化するとよい。
【0038】
監視情報10aは、マイク108から得られる音声情報116を含む。このように監視情報10aに音声情報116を含めることで、乗員の健康状態の悪化に起因する車両Xの事故を抑止することができる。
【0039】
(データベース)
データベース109は、予め撮影された乗員のリファレンス画像が登録されている。また、データベース109には、車両X内に持ち込まれ得る携行物のリファレンス画像が登録されている。
【0040】
データベース109は、例えば公知の記憶装置により構成され、そのデータ(リファレンス画像)は、後述する乗員特定手段110及び携行物特定手段111から参照される。
【0041】
(乗員特定手段)
乗員特定手段110は、監視カメラ102により撮影された乗員の撮影画像を、データベース109に登録されている乗員のリファレンス画像と比較検索することで上記乗員を特定する。つまり、この乗員特定手段110により、どの座席に誰が着席したのかを特定する乗員情報117を得ることができる。
【0042】
乗員特定手段110は、例えばマイクロコントローラによって実現される。あるいは、専用のマッチング回路で実現してもよい。
【0043】
比較検索する方法としては、所定の評価関数を用意してその評価関数の大小により判定する方法を用いることもできるし、機械学習により学習済みの推定モデル、いわゆるAI(人工知能)を用いてもよい。なお、このような推定モデルを用いた推定には、AIに関する公知の推定技術を用いることができる。
【0044】
監視情報10aは、乗員特定手段110から得られる乗員情報117を含む。乗員の平時の状態は個体差がある。このように監視情報10aに乗員情報117を含めることで、個体差を考慮した乗員の健康状態の把握が可能となり、監視精度を高められる。
【0045】
また、乗員特定手段110は、上記撮影画像と上記リファレンス画像との一致度118を算出可能に構成されている。比較検索に評価関数を用いる場合で、例えば上記撮影画像と上記リファレンス画像とが完全に一致する場合に評価関数値が0となり、差分があるにつれ評価関数値が大きくなるように評価関数が組まれている場合であれば、その評価関数値そのものを一致度118として用いることができる。なお、算出された一致度118は、認識部20へ送られる。
【0046】
(携行物特定手段)
携行物特定手段111は、車両X内に持ち込まれ得る携行物を特定する。
【0047】
携行物特定手段111は、例えばマイクロコントローラによって実現される。このマイクロコントローラは、乗員特定手段110を実現するマイクロコントローラと兼用することができる。あるいは、乗員特定手段110と同様に専用のマッチング回路で実現してもよい。
【0048】
上記携行物としては、幼児、ペット、バッグ、携帯電話等を挙げることができる。これらは後述する認識部20で、乗員全員の降車後も携行物が車両X内に存在すること、すなわち忘れ物の検知の対象となる。
【0049】
上記携行物を特定する方法としては、例えばデータベース109に登録されている携行物のリファレンス画像を用いる方法を採用することができる。
【0050】
この場合、乗員の乗車段階で監視カメラ102(又は車外カメラ105)の画像解析等により携行物が車内に持ち込まれたことを予め検知しておいてもよい。具体的には乗員特定手段110と同様に評価関数を用いる方法やAIを用いる方法により実現できる。このように携行物が持ち込まれたことを予め検知しておくことで、忘れ物の検知精度を高めることができる。また、後述するように監視レーダー103(又は車外レーダー106)を併用するとよく、画像のみでは認識が難しい外部から直接視認できない携行物を検知することができる場合がある。
【0051】
あるいは乗員が車両Xに搭乗する前の持ち物を車外カメラ105又は監視カメラ102の画像解析又はAIにより特定し、その特定した物を携行物としてもよい。この場合、データベース109は不要とできる。データベース109に代えて、例えば携行物の特徴(例えばバッグであれば、赤い、四角形等の特徴)を抽出してのメタデータ、つまり検索用のタグ情報の生成が有効である。さらに、搭乗情報(車両Xに搭乗する場所、時間等)をリンクさせたメタデータを生成してもよい。
【0052】
一方、乗員の降車段階で車両X内に持ち込まれ得る携行物をデータベース109より読み出してもよい。この場合、データベース109に登録された携行物について、乗員全員の降車後も携行物が車両X内に存在するか否かを網羅的に探索することとなる。このように網羅的に探索することで、忘れ物の検知精度を高めることができる。
【0053】
また、上記携行物は車両Xに搭乗する乗員に応じて、すなわち乗員特定手段110で特定した乗員ごとに変えてもよい。
【0054】
監視情報10aは、携行物特定手段111から得られる携行物情報119を含む。このように監視情報10aに携行物情報119を含めることで、忘れ物の検知が可能となる。
【0055】
携行物特定手段111が、監視レーダー103により検知される周期的振動を用いるとよい。対象物が生物である場合、その心拍や呼吸が監視レーダー103により周期的振動として検知される。従って、監視レーダー103により検知される周期的振動を用いることで、対象が生物か非生物かを特定できる。さらに、その周期、つまり心拍や呼吸数が一定の範囲にある場合、その対象が幼児であると推論することが可能である。従って、携行物特定に監視レーダー103により検知される周期的振動を用いることで、幼児の置き忘れを高い精度で検出することができるようになる。
【0056】
幼児の置き忘れを検出する場合、乗員が乗車している間に幼児の乗車の有無を検出しておくとよい。乗員の乗車完了は車両Xの走行開始により把握することができるから、具体的には、携行物特定手段111が、車両Xの走行開始後に監視レーダー103により検知される周期的振動を用いるとよい。また、幼児の特定には、特定精度の観点からバイタルセンサ107の情報を用いるとよい。このように車両Xの走行開始後に上記周期的振動等によって携行物を特定しておくことにより、幼児の置き忘れをさらに高い精度で検出することができるようになる。
【0057】
<認識部>
認識部20は、
図4に示すように、監視情報10aから乗員の状態を評価関数により数値で表す数値化手段201と、上記数値との大小関係により上記乗員の状態を特定するための閾値を最適化する最適化手段202と、認識情報20aとして、上記数値及び上記閾値から上記乗員の状態を特定する認識情報特定手段203とを有する。
【0058】
このように乗員の状態を特定するための閾値を最適化することで、上記乗員の状態の特定精度を高めることができる。以下、当該車両用安全支援システム1の認識部20で認識される認識情報20aについて具体的に説明する。
【0059】
(忘れ物の検知)
当該車両用安全支援システム1は、携行物特定手段111で車両X内に持ち込まれ得ると特定された携行物に対して忘れ物として検知することができる。つまり、認識情報20aが、上記携行物が車両X内に存在するか否かを特定する携行物検知情報204と、車両Xから上記乗員全員が降車したか否かを特定する降車情報205とを含む。降車情報205により車両Xから上記乗員全員が降車したことが特定され、携行物検知情報204により上記携行物が車両X内に存在することが特定された場合に、その携行物を忘れ物として特定することができるためである。
【0060】
携行物検知情報204は、監視情報10aのうち、車内情報113、つまり監視カメラ102及び監視レーダー103の情報を用いて抽出できる。
【0061】
携行物検知情報204を抽出する抽出方法は、例えば座標軸付加工程と、閾値決定工程と、合成工程と、判定工程とを備える。上記抽出方法は、ソフトウェアにより行うこともできるが、処理速度の観点からハードウェアで行うとよい。
【0062】
上記座標軸付加工程では、xy座標を付加したカメラデータ及びレーダーデータをそれぞれ作成する。xy座標を付加することで、上記カメラデータ及び上記レーダーデータの重ね合わせを容易化する。
【0063】
この処理は数値化手段201で行われる。xy座標を付加する前に、監視カメラ102及び監視レーダー103の情報に対してノイズ除去等の前処理を行ってもよい。
【0064】
上記閾値決定工程では、後述する合成工程で使用する適応型バイアス値及び/又は後述する判定工程で使用する評価関数の閾値を決定する。この処理は最適化手段202で行われる。
【0065】
適応型バイアス値とは、複数種の信号を合成する際の重み付け値である。この携行物特定手段111では、カメラデータR及びレーダーデータCを合成して、つまりデータフュージョンにより評価関数Vを得る。このとき例えば重み付け変数a1及びa2があって、下記式1のように評価関数Vを計算するものとする。この場合、f(R)はカメラデータRによって得られる評価関数(スカラ)であり、g(C)はレーダーデータCによって得られる評価関数(スカラ)であり、a1及びa2が適応型バイアス値を表す。このように監視情報10aが複数の情報(監視カメラ102及び監視レーダー103の情報)を含み、それらを融合した評価関数を設けることで、乗員の状態の認識精度を高められる。
V=a1×f(R)+a2×g(C) ・・・1
【0066】
この適応型バイアス値の決定には、監視部10の光度112を用いるとよい。監視カメラ102は光度112が低い際に識別力が低下すると考えられ、監視レーダー103は光度112が低い場合に相対的に識別力が高まる。つまり、光度112によって監視カメラ102又は監視レーダー103からの情報の優先度を調整し、例えば光度112が低い場合にa2が大きくなるように上記重み付け変数a1及びa2を決定することで、上記乗員が忘れ物をしたか否かの特定精度をさらに高めることができる。
【0067】
この適応型バイアス値の決定には、監視部10の一致度118を用いるとよい。一致度118は、乗員の個体識別の正当性を表すものと考えられ、換言すれば撮影映像の信頼性を表す。例えば一致度118が低い場合、監視カメラ102の識別力が低下していると判断できる。例えばこの一致度118が低い場合にa2が大きくなるように上記重み付け変数a1及びa2を最適化することで、上記乗員が忘れ物をしたか否かの特定精度をさらに高めることができる。なお、重み付け変数a1及びa2には光度112と一致度118とを併用することもできる。以下、他の要素についても同様である。
【0068】
また、認識対象画像が特徴に応じて重み付け変数を選択してもよい。例えば車内情報113に含まれる監視カメラ102の画像を最適化手段202に適した入力形式、例えば解像度にリサイズする際に、入力画像がカラー画像か二値画像(赤外画像など)かを判別することが可能である。そこで、予めカラー画像用の重み付け変数と二値画像用の重み付け変数とを用意しておき、判別結果に応じて切り替えるとよい。これにより入力画像に応じて適切な重み付け変数を選択することができる。他にも輝度や彩度あるいはこれらの組み合わせに応じて重み付け変数を選択することも可能であり、その際3以上の重み付け変数が準備されていてもよい。
【0069】
また、忘れ物として検出対象となる携行物の種類に応じて重み付け変数の値を変えてもよい。例えばバッグを検出する場合であれば、監視カメラ102で観測可能なバッグの色と合致する色の情報の重みが高まるように重み付けするとよい。さらに、検出対象となる携行物の形や大きさを用いてもよい。なお、これらの例示においては、必ずしも上記式1の重み付け変数a1及びa2のみで最適化できるものではなく、例えば色の情報を重み付けするためには、上記式1に加えて新たな重み付け変数a1R、a1G、a1Bがあって、RGBの色情報を分離した下記式2を用いることで実現される。
f(R)=a1R×fR(R)+a1G×fG(R)+a1B×fB(R)・・・2
【0070】
当該車両用安全支援システム1では、携行物特定手段111で監視レーダー103により検知される周期的振動を用いることで幼児の置き忘れを検出することができる。以下、幼児を検出する方法について説明する。
【0071】
当該車両用安全支援システム1は、監視カメラ102を有しており、監視カメラ102により対象の幼児が画像認識できる場合、幼児を忘れ物として検出することは容易である。一方、例えば幼児が毛布にくるまって寝ている場合など、監視カメラ102では検出できない場合がある。
【0072】
当該車両用安全支援システム1では、このような場合に監視レーダー103を用いる。監視レーダー103で上述のような毛布にくるまって寝ている幼児を観測した場合、周期的な振動が検知される。この周期的な振動は、幼児の心拍及び呼吸に基づく。従って、この周期的な振動は、幼児に心拍と呼吸の周期的振動を重畳させたものとなる。さらに、幼児の心拍数及び呼吸数には一定の範囲にあることが知られている。これらは一般的な成人やペットとは異なるものである。
【0073】
以上から、監視レーダー103で周期的な振動が検知される場合、その振動の周期を算出し、その振動が上述の心拍数及び呼吸数に対応する2つの周期で構成されている場合、幼児が存在すると推定することができる。このようにして幼児の置き忘れを検知することができる。
【0074】
この幼児の置き忘れ検知においても、カメラデータR及びレーダーデータCを合成して得られた上記式1の評価関数Vを用いることができる。適応型バイアス値であるa1及びa2としては、例えば監視カメラ102で検知可能な場合は、a2=0として監視カメラ102の評価関数を使い、監視カメラ102で検知できない場合に、a2の値を増加させるように制御するとよい。監視カメラ102で検知可能か否かは、監視カメラ102での結果によってもよいが、環境情報によって判断してもよい。この場合、環境情報には、光度112及び監視カメラ102の死角が含まれる。また、上記環境情報にバイタルセンサ107から得られる生体情報115を含めてもよい。
【0075】
なお、例えば幼児の心拍数及び呼吸数のうちのいずれか一方をバイタルセンサ107により捉えてもよい。
【0076】
上記合成工程では、上記カメラデータ及び上記レーダーデータの重ね合わせによりイメージデータの認識を行い、上記携行物が車両X内に存在するか否かを特定するための評価関数の値を算出する。この処理は数値化手段201で行われる。
【0077】
具体的には以下の手順による。時系列で取得した上記カメラデータ及び上記レーダーデータを規定時間間隔でまとめて重ね合わせ処理をしてイメージデータを得る。このように重ね合わせ処理を行うと、例えば動きのある物(生物)と動きのない物(非生物)を区別することができる。
【0078】
次に、この重ね合わせ処理をしたイメージデータを圧縮処理するとともに時系列相関を抽出する。この時系列相関を取ることによって、例えば携行物が監視カメラ102の死角に移動したことなどを検知することができるので、続くマッチング処理で重み付け変数を最適化し易くすることができる。
【0079】
そして、この時系列相関からイメージデータに上記携行物が含まれるか否かを判定するためのマッチング処理を行う。このマッチング処理で、評価関数の値として、マッチングの評価値が算出される。
【0080】
このマッチング処理には例えばAIを用いることができる。具体的には、与えられた環境条件(例えば光度112等)に適応して時々刻々変化する可変テンプレートを用いて機械学習により学習済みの推定モデルを構築し、上記時系列相関を入力として上記携行物とのマッチングを行う。この推定モデルは、例えば監視部10のデータベース109等の車両X内に格納されていてもよく、車両X外の例えばクラウドサーバに格納されていて無線通信等によりアクセスする方式を採用してもよい。なお、上記AIとしては、Yolo(You Only Look Once)のような深層学習ネットワークを用いることができる。
【0081】
このマッチング処理には、例えばマイクロプロセッサの1つの命令で複数のデータを扱う処理方式である低次レイヤ処理と、プログラム制御を用いる高次レイヤ処理を併用するとよい。この際、低次レイヤ処理では、低フレームレートのデータにはHaar-LikeやHOG特徴抽出処理を利用して局所的な濃淡分布や濃度勾配を用いてマッチング処理するとよく、高フレームレートのデータには局所的なエッジ方向別のエッジ強度の特徴量を用いてマッチング処理するとよい。また、高次レイヤ処理では、複数の特徴量を統合するAdaBoost手法を用いてマッチング処理するとよい。
【0082】
上記判定工程では、上記合成工程で算出した評価関数の値と、上記閾値決定工程で決定した閾値との大小関係により上記携行物が含まれるか否かを判定する。例えば上記評価関数の値が上記閾値より大きい場合にその携行物が含まれると判定する。なお、評価関数に依存して上記評価関数の値が上記閾値より小さい場合にその携行物が含まれると判定してもよい。
【0083】
上記携行物が含まれると判定されない場合、上記マッチング処理は、マッチングの評価値が規定値以上となるように可変テンプレートを変更して行うとよい。また、規定時間経過後に再度マッチング処理を行い、直前までのマッチング結果に加算した場合の上記評価値が規定値以下である場合も、同様に可変テンプレートを変更して行うとよい。例えば上述の幼児の検知において、a2=0とする監視カメラ102の評価関数のみを使ったテンプレートで、幼児が検知されない場合、a2の値を増加させて監視カメラ102の評価関数と監視レーダー103の評価関数とを併用するテンプレートに変更することで、幼児の検知能力を高めることができる。
【0084】
降車情報205は、監視情報10aのうち、乗員情報117と、車内情報113とを用いて抽出できる。
【0085】
具体的には、乗員情報117によりどの座席に誰が着席したのかが特定されている。従って、車内情報113により該当する座席に該当する乗員が不在となったことから、その乗員が降車したことを推定することができる。また、車外情報114によりその乗員が車外へ立ち去ったことを確認することがより好ましい。そして、登場した乗員が全て降車したと推定された場合に、乗員全員が降車したことを抽出できる。
【0086】
(健康状態の検知)
当該車両用安全支援システム1は、車内情報113、生体情報115及び音声情報116から乗員の健康状態を認識することができる。つまり、認識情報20aが、各乗員の健康状態を表す健康情報206を含む。
【0087】
具体的には、当該車両用安全支援システム1は、乗員の健康状態として、健康異常の他、居眠り、漫然及び脇見を認識できる。なお、これらの状態は乗員がドライバである場合、事故につながるおそれがあることから、広義で健康状態に含めた。
【0088】
当該車両用安全支援システム1の健康状態の認識方法は、下記式3に示す3つの評価関数を用いる点以外は、忘れ物の検知での携行物検知情報204を抽出する抽出方法と同様に行うことができる。
居眠り:Fx=a1×Dx+b1×Vx
漫然 :Fy=a2×Dy+b2×Vy ・・・3
脇見 :Fz=a3×Dz+b3×Vz
ここで、Dx、Dy、Dzは車内情報113及び音声情報116から求められる評価関数値、Vx、Vy、Vzは生体情報115から求められる評価関数値、a1~a3及びb1~b3は重み付け変数である。
【0089】
車内情報113及び音声情報116に基づく居眠り(Dx)、漫然(Dy)、脇見(Dz)は、例えば車内情報113に基づく乗員の視線、挙動の解析や、音声情報116に基づく乗員の会話の有無やその内容により判定することができ、0(非該当)及び1(該当)の2値又はその間の数値(例えば0.1刻みの11段階)で表現される。なお、この判断にはAIを利用してもよい。
【0090】
生体情報115は、呼吸数と心拍数とを含む。呼吸数と心拍数とにより人は表1に示す状態にあることが知られている。この知見に基づいて、居眠り(Vx)、漫然(Vy)、脇見(Vz)は、表1のカッコ内に数値(左から順にVx、Vy、Vz)を与える。
【0091】
【0092】
表1で、N(標準心拍数)は、乗員固有の値が分かっている場合、その数値を用いればよく、不明な場合は例えば標準的なN=65を採用するとよい。また、乗員の年齢が不明である場合は、代表値として40才とすればよい。呼吸数についても、表1は平均的な18をもとに作成されているが、乗員固有の値が分かっている場合は、その数値で判定することもできる。乗員固有の数値は、例えば監視部10のデータベース109に登録しておき、これを参照すればよい。
【0093】
なお、生体情報115が表1の分類のいずれにも属さない場合、異常事態と考えられるので、上記式3の結果によらず、健康異常と判断する。この場合、例えばVx=Vy=Vz=1とできる。
【0094】
上記重み付け変数a1~a3及びb1~b3と、上記式3の評価関数Fx、Fy、Fzそれぞれの閾値c1、c2、c3とは、最適化手段202で決定される。
【0095】
例えば標準設定としてa1~a3、b1~b3及びc1~c3が全て0.3である場合で説明すると、生体情報115からの情報で健康異常と判断された場合、a1~a3=0、b1~b3=1として、確実に健康異常と判定されるようにするとよい。また、車内情報113及び音声情報116に基づく居眠り(Dx)、漫然(Dy)、脇見(Dz)の判定が不能である場合も同様である。また、a1~a3、b1~b3及びc1~c3の値を乗員ごとに調整してもよい。
【0096】
このように複数の監視情報を融合した評価関数を設けることで、乗員の状態の認識精度を高められる。また、健康状態の検知と同様の構成としているので、処理機構の共通化が図れ、当該車両用安全支援システムの省電力化や低コスト化ができる。
【0097】
(不審者の特定)
当該車両用安全支援システム1は、車外情報114から車外から車両Xに接近する人物が不審者であるか否かを認識することができる。つまり、認識情報20aが、車外情報114から上記人物が不審者であるか否かを特定する不審者特定情報207を含む。
【0098】
車両Xに接近する人物が不審者であるか否かの認識は、以下のようにして行うことができる。まず、超音波センサ104により車両Xへの接近物体を検出する。その接近物体と車両Xとの距離が規定値、例えば10m以下となれば、車外カメラ105及び車外レーダー106により不審者を特定する。不審者の特定は、乗員特定手段110と同様に行うことができる。
【0099】
<制御部>
制御部30は、例えばマイクロコントローラにより実現される。また、制御部30は、車両Xとのインターフェイス部と、携帯電話、クラウドサーバ等の車外の他の機器と通信する通信部とを有する。なお、他の機器との通信には、公知の通信手段を用いることができる。このような通信手段としては、例えばホストコンピュータなしで通信可能なCANインターフェイスを挙げることができる。
【0100】
上記インターフェイス部は、例えば車内ディスプレイ、ホーン、ライト、ドア施錠機構等の全部又は一部とインターフェイス可能に構成されている。これにより、例えば不審者特定情報207に基づいて不審者の接近が検出された場合に、車両Xのクラクション(ホーン)を鳴動させたり、ライトを点滅させたりする制御を行うことができる。
【0101】
上記通信部は、無線ネットワークを通じユーザの携帯電話やクラウドサーバと通信可能に構成されている。これにより、例えば忘れ物を検知した際にユーザの携帯電話にその旨のメッセージを送信することができる。
【0102】
制御部30は、認識情報20aに基づき動作する。以下に、上述した認識部20で認識される認識情報20aである忘れ物の検知、健康状態の検知及び不審者の特定について対応する制御部30の動作について説明する。なお、下記に述べる制御部30の動作は一例であって他の動作を採用してもよい。
【0103】
(忘れ物の検知)
降車情報205により車両Xから上記乗員全員が降車したことが特定され、携行物検知情報204により上記携行物が車両X内に存在することが特定された場合、この携行物は忘れ物であると判断できる。この場合に、制御部30は、上記携行物が車両X内に存在することを上記乗員へ通報する。制御部30が、上記携行物が車両X内に存在することを上記乗員へ通報することで、忘れ物を抑止することができる。
【0104】
(健康状態の検知)
健康情報206により乗員のうちのドライバに居眠り、漫然又は脇見が確認された場合、制御部30はドライバに対して例えば車内ディスプレイやホーン等によりメッセージや音声で警告を発する。これによりドライバの注意を喚起し、事故の発生を抑止できる。
【0105】
(不審者の特定)
不審者の特定では、制御部30は不審者特定情報207を用いる。不審者特定情報207により車両Xへの接近者が不審者と特定された場合、上記通信部により車両Xの所有者へ通報するとともにホーンの鳴動やランプの点灯によって不審者を威嚇するとよい。このように不審者特定情報207を用いることで、車両Xあるいは車両X内の物品の損害予防を図ることができる。
【0106】
逆に、車両Xに接近してくる人物が不審者ではない場合には、ドアの開錠やウェルカムメッセージの表示を行ってもよく、その乗員がドライバである場合は、そのドライバに適したシートの位置、高さ、ミラー角度の調整等を行う機能を有してもよい。
【0107】
また、制御部30は、環境条件に適応して制御を行う環境適用処理部を有してもよい。上記環境適用処理部は、例えば環境条件に基づいて監視カメラ102や監視レーダー103等の動作モードの制御やデジタル信号の波形成形等を行う。
【0108】
上記動作モードの設定制御は、例えば周囲の明るさ(光度112)に基づいた露出の変更を行う。車速や降雨時の雨滴の落下速度を利用できる場合、これに比例したシャッター速度の高速化を行ってもよい。また、温度が観測できる場合は、周囲温度に基づいた監視カメラ102の色温度の設定を行ってもよい。これらは車両X内で利用できるデータに基づいて適宜制御される。なお、車速及び周囲温度は、車両Xに一般に搭載されている情報であるので、これを流用できる。また、雨滴の落下速度は例えば車外カメラ105で撮影される画像の解析により知ることができる。
【0109】
また、上記波形成形では、イメージのエッジ強調、ホワイトバランス、ダイナミックレンジ拡張、圧縮伸長、S/N改善及び各機器の相互連携のためのインターフェイス設定を含む前置処理などが挙げられる。
【0110】
<車両用安全支援システムの制御方法>
当該車両用安全支援システム1の制御方法は、
図5に示すように、車外監視工程S1と、車内監視工程S2と、忘れ物検出工程S3とを備える。
【0111】
(車外監視工程)
車外監視工程S1では、車外から車両Xに接近する不審者を監視する。
【0112】
この車外監視工程S1は、車両Xが停止し、エンジン停止後に車外モードに設定されることで開始される。この車外モードへの移行は、車両Xに搭乗する乗員例えばドライバが設定してもよいし、エンジン停止をトリガーとして自動で設定されてもよい。
【0113】
車外監視モードに設定されると、超音波センサ104がONとなり、車両Xへの接近物体を検出する。超音波センサ104が接近物体を検出した場合は、上述のように認識部20で人物が不審者であるか否かを認識し、不審者特定情報207を認識情報20aに含める。
【0114】
不審者特定情報207により車両Xへの接近者が不審者と特定された場合、制御部30は、例えば上記通信部により車両Xの所有者へ通報するとともにホーンの鳴動やランプの点灯によって不審者を威嚇する。逆に、車両Xに接近してくる人物が不審者ではない場合には、制御部30は、上記人物(乗員)と車両Xとの距離が規定値、例えば1m以内となった場合、上記乗員が車両Xに到着したと判断して、ドアの開錠やウェルカムメッセージの表示を行ってもよく、その乗員がドライバである場合は、そのドライバに適したシートの位置、高さ、ミラー角度の調整等を行う。
【0115】
さらに、監視カメラ102等の情報をもとに乗員全員の乗車完了を判断すれば、車外監視工程S1を終了し、車内監視モード(車内監視工程S2)へ移行する。
【0116】
(車内監視工程)
車内監視工程S2では、乗員、特にドライバの状態を監視する。
【0117】
この車内監視工程S2では、監視カメラ102、監視レーダー103、バイタルセンサ107、マイク108をONとして、乗員の状態を監視する。具体的には、上述したように、監視カメラ102及び監視レーダー103を用いて車両X内の乗員、特にドライバの挙動を監視するとともに、監視カメラ102及び監視レーダー103から得られる乗員の姿勢や顔色の変化、バイタルセンサ107及びマイク108の情報などを基に乗員の健康状態の変化を検出する。このとき異常検出のために、事前に個人の心拍数、顔色等の平常時の属性を例えばデータベース109に格納しておくとよい。
【0118】
異常を検出した際は、制御部30の通信部を用いた既定箇所への通報、音声や映像の配信、車両機器の制御情報の送信を行う。
【0119】
この工程では、乗員降車の確認を合わせて行い、乗客が全員降車したことが確認された場合、忘れ物検出工程S3へ移行する。
【0120】
(忘れ物検出工程)
忘れ物検出工程S3では、特定の携行物が車両X内に存在するか否かを検知する。
【0121】
上記携行物としては、例えばデータベース109に登録された幼児、ペット、バッグ、携帯電話等である。上述したように認識部20で忘れ物の検知を行い、忘れ物があると判断した際は、制御部30の通信部を介して既定の端末に通知する。忘れ物が検出できなければ規定時間、例えば10分後に忘れ物検出工程S3を終了し、車外監視工程S1に移行する。なお、エンジン停止をトリガーとして自動で車外監視工程S1に移行している場合等は、忘れ物検出工程S3の終了を待たずに車外監視工程S1が起動し、両工程が同時進行している場合もあり得る。この場合は、忘れ物検出工程S3を終了し、車外監視工程S1を継続する。
【0122】
<利点>
当該車両用安全支援システム1は、監視カメラ102により車両X内の乗員を監視し、その行動を認識部20で認識し、制御部30で車両Xの動作の制御又は乗員への通報をすることで車両Xの安全な走行を確保することができる。
【0123】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0124】
上記実施形態では、監視部が、光度計と、監視カメラと、監視レーダーと、超音波センサと、車外カメラと、車外レーダーと、バイタルセンサと、マイクと、携行物特定手段と、乗員特定手段と、データベースとを有する場合を説明したが、監視カメラを除くセンサや手段等はその一部又は全部を有さなくともよい。これらから得られる監視情報を用いない車両用安全支援システムでは適宜省略することができる。
【0125】
また、監視部が他の監視手段を有してもよい。このような監視手段としては、例えば携帯電話の電波を検知する電波検知器、携帯電話の位置情報を取得するGPS装置などを挙げることができる。監視部が電波検知器及び/又はGPS装置を有することで、携帯電話が車内に存在することを容易に特定できるので、車両内に持ち込まれ得る携行物が携帯電話を含む場合、より確実に忘れ物として検知することができる。この場合、認識部の最適化手段で、上記電波検知器の電波強度及び/又は上記GPS装置のGPS情報を用いるとよい。
【0126】
上記実施形態では、監視情報として乗員特定手段が特定する乗員情報を含む場合を説明したが、乗員情報は必須の構成要素ではなく、省略可能である。つまり、乗員特定手段が算出する一致度のみを用いる構成も本発明の意図するところである。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上説明したように、本発明の車両用安全支援システムは、乗員の状態を把握可能である。従って、当該車両用安全支援システムを用いることで、ドライバや乗員が車両の走行中から下車するまで連続して安全かつ確実に見守りを行うことができる。
【符号の説明】
【0128】
1 車両用安全支援システム
10 監視部
10a 監視情報
20 認識部
20a 認識情報
30 制御部
101 光度計
102 監視カメラ
102a 監視領域
103 監視レーダー
103a 監視領域
104 超音波センサ
104a 監視領域
105 車外カメラ
105a 監視領域
106 車外レーダー
106a 監視領域
107 バイタルセンサ
108 マイク
109 データベース
110 乗員特定手段
111 携行物特定手段
112 光度
113 車内情報
114 車外情報
115 生体情報
116 音声情報
117 乗員情報
118 一致度
119 携行物情報
201 数値化手段
202 最適化手段
203 認識情報特定手段
204 携行物検知情報
205 降車情報
206 健康情報
207 不審者特定情報
X 車両