(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023685
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】イヌの疾患を治療するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20220201BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20220201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220201BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220201BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20220201BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220201BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K35/545
A61P43/00 171
A61P29/00
C12N5/0775 ZNA
C12N15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020126794
(22)【出願日】2020-07-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム 社会還元加速プログラム(SCORE) 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】枝村 一弥
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BB32
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087BB33
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA14
4C087NA20
4C087ZA02
4C087ZA36
4C087ZA66
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZC35
4C087ZC61
(57)【要約】
【課題】イヌの疾患を治療するための、性状の均一性に優れた間葉系幹細胞又はその培養上清を含有する医薬組成物を提供する。
【解決手段】イヌ多能性幹細胞から誘導された間葉系幹細胞又はその分泌物を含有する、イヌの疾患を治療するための医薬組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌ多能性幹細胞から誘導された間葉系幹細胞又はその培養上清を有効成分として含有する、イヌの疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項2】
前記イヌの疾患は、免疫関連疾患、虚血性疾患、後肢虚血、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、脊髄損傷、神経性疾患、全身性炎症性疾患、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、免疫介在性血小板減少症、免疫介在性溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、膠原病、脳梗塞、脊髄梗塞、脳内血腫、脳血管麻痺、肝硬変、腎不全、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、乾癬、表皮水疱症、糖尿病、軟骨等の結合組織の変性及び/又は炎症から起こる疾患、関節軟骨欠損、半月板損傷、離断性骨軟骨症、虚血性骨壊死、変形性関節症、炎症性関節炎、関節リウマチ、ステロイド反応性髄膜動脈炎、自己免疫性水疱症、自己免疫性水疱症、眼疾患、血管新生関連疾患、虚血性心疾患、冠動脈性心疾患、心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、弁膜症、創傷、上皮損傷、線維症、肺疾患及び癌からなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載のイヌの疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項3】
前記イヌの疾患は、全身性炎症性疾患である、請求項1又は2に記載のイヌの疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項4】
前記間葉系幹細胞は、イヌ間葉系幹細胞培養用培地で培養されたものであり、
前記イヌ間葉系幹細胞培養用培地は、血清代替物を含有し、化学的組成が明らかである、
請求項1~3に記載のイヌの疾患を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌの疾患を治療するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化学合成された薬剤を用いても治療できない疾患を治療するために、新たな治療剤の開発が望まれている。これに対し、例えば、ヒトに対しては培養したヒト幹細胞を投与する再生・細胞医療が実施されている。また、イヌの疾患を治療するために、培養したイヌの幹細胞を対象のイヌに投与する治療方法が試みられている。
【0003】
投与する幹細胞としては、動物の成体から比較的容易に採取することができる、間葉系幹細胞が注目されている。間葉系幹細胞は、骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞等、間葉系に属する細胞への分化能をもつ細胞である。
【0004】
動物の疾患の治療のために患者に投与される間葉系幹細胞としては、生体組織に由来する間葉系幹細胞が用いられることが多い。例えば、特許文献1には、骨髄、脂肪等の組織に由来する間葉系幹細胞を含む医薬組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、生体組織に由来する間葉系幹細胞は、性状が不均一である場合がある。
また、性状が不均一な、生体組織に由来する間葉系幹細胞を投与されたイヌは、疾患の治療効果が十分ではない場合がある。
そこで、本発明は、イヌの疾患を治療するための、性状の均一性に優れた間葉系幹細胞又はその培養上清を含有する医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]イヌ多能性幹細胞から誘導された間葉系幹細胞又はその培養上清を有効成分として含有する、イヌの疾患を治療するための医薬組成物。
[2]前記イヌの疾患は、免疫関連疾患、虚血性疾患、後肢虚血、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、脊髄損傷、神経性疾患、全身性炎症性疾患、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、免疫介在性血小板減少症、免疫介在性溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、膠原病、脳梗塞、脊髄梗塞、脳内血腫、脳血管麻痺、肝硬変、腎不全、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、乾癬、表皮水疱症、糖尿病、軟骨等の結合組織の変性及び/又は炎症から起こる疾患、関節軟骨欠損、半月板損傷、離断性骨軟骨症、虚血性骨壊死、変形性関節症、炎症性関節炎、関節リウマチ、ステロイド反応性髄膜動脈炎、自己免疫性水疱症、自己免疫性水疱症、眼疾患、血管新生関連疾患、虚血性心疾患、冠動脈性心疾患、心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、弁膜症、創傷、上皮損傷、線維症、肺疾患及び癌からなる群より選択される一種以上である、[1]に記載のイヌの疾患を治療するための医薬組成物。
[3]前記イヌの疾患は、全身性炎症性疾患である、[1]又は[2]に記載のイヌの疾患を治療するための医薬組成物。
[4]前記間葉系幹細胞は、イヌ間葉系幹細胞培養用培地で培養されたものであり、前記イヌ間葉系幹細胞培養用培地は、血清代替物を含有し、化学的組成が明らかである、[1]~[3]のいずれかに記載のイヌの疾患を治療するための医薬組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イヌの疾患を治療するための、性状の均一性に優れた間葉系幹細胞又はその培養上清を含有する医薬組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】間葉系幹細胞の培養上清が含有し得るタンパク質を示す図である。
【
図2】間葉系幹細胞の培養上清が含有し得るエクソソームの機能を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[医薬組成物]
一実施形態において、本発明は、イヌ多能性幹細胞から誘導された間葉系幹細胞又はその培養上清を有効成分として含有する、イヌの疾患を治療するための医薬組成物を提供する。
【0011】
(間葉系幹細胞)
本実施形態の医薬組成物が含有し得るイヌ間葉系幹細胞は、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞、肝細胞、神経細胞等に分化可能な幹細胞の一種である。
【0012】
本実施形態の医薬組成物が含有し得るイヌ間葉系幹細胞は、イヌ多能性幹細胞から誘導した間葉系幹細胞である。イヌ多能性幹細胞からイヌ間葉系幹細胞を誘導する方法としては、公知の方法を用いることができる。イヌ多能性幹細胞としては、イヌES細胞、イヌiPS細胞が挙げられ、イヌiPS細胞が好ましい。
【0013】
イヌ多能性幹細胞からの間葉系幹細胞への分化誘導方法は、例えば、次に述べるような方法であってもよい。
まず、イヌ多能性幹細胞を浮遊または接着培養にて胚様体を形成させる。この際に用いる培地は特に制限されないが、動物由来の血清を含まない培地であることが好ましく、化学的組成が明らかであり、イヌ以外の動物に由来する物質を含有しないことがより好ましい。この培地は、化学的組成が明らかな、イヌにおいて発現が確認されている増殖因子等のタンパク質等を含有してもよい。
得られた胚様体を、後述する間葉系幹細胞を製造するための培地を用いて培養し、間葉系幹細胞を分化誘導し、増殖させる。
【0014】
また、分化誘導方法は、例えば、次に述べるような方法であってもよい。
まず、イヌ多能性幹細胞を培養して神経堤細胞へ分化させる。この際に用いる培地は特に制限されないが、例えば、トランスフェリン、モノチオグリセロール、アルブミン、インスリン、TGFβ阻害剤(SB431542)、GSK-3β阻害剤(CHIR99021)等を含有する培地であってもよい。この培地は、動物由来の血清を含まない培地であることが好ましく、化学的組成が明らかであり、イヌ以外の動物に由来する物質を含有しないことがより好ましい。この培地は、化学的組成が明らかな、イヌにおいて発現が確認されている増殖因子等のタンパク質等を含有してもよい。
得られた神経堤細胞を、後述する間葉系幹細胞を製造するための培地を用いて培養し、間葉系幹細胞を分化誘導し、増殖させる。
【0015】
また、分化誘導方法は、例えば、次に述べるような方法であってもよい。
まず、イヌ多能性幹細胞を培養して前駆細胞に分化させる。この際に用いる培地は特に制限されないが、TGFβ阻害剤(SB431542)、GSK-3β阻害剤(CHIR99021)、Dorsomorphin等を含有する培地であってもよい。この培地は、動物由来の血清を含まない培地であることが好ましく、化学的組成が明らかであり、イヌ以外の動物に由来する物質を含有しないことがより好ましい。この培地は、化学的組成が明らかな、イヌにおいて発現が確認されている増殖因子等のタンパク質等を含有してもよい。
得られた前駆細胞を、後述する間葉系幹細胞を製造するための培地を用いて培養し、間葉系幹細胞を分化誘導し、増殖させる。
【0016】
イヌ多能性幹細胞から分化させた細胞がイヌ間葉系幹細胞であることは、表面抗原マーカーの発現等により確認することができる。間葉系幹細胞のポジティブマーカー(間葉系幹細胞で発現する表面抗原)としては、例えば、CD44、CD73、CD90、CD105等が挙げられる。また、イヌ間葉系幹細胞のネガティブマーカー(間葉系幹細胞で発現しない表面抗原)としては、例えば、CD45、CD34、CD14、CD11b、CD79、CD19等が挙げられる。
【0017】
(培養上清)
本実施形態の医薬組成物は、間葉系幹細胞に替えて、又は間葉系幹細胞に加えて、間葉系幹細胞の培養上清を含有し得る。
本明細書において、「間葉系幹細胞の培養上清」とは、間葉系幹細胞が増殖し得る条件の下、間葉系幹細胞が増殖し得る培養液を用いて、間葉系幹細胞を培養した後の培養液から間葉系幹細胞を除去したものを意味する。本明細書において、「間葉系幹細胞の培養上清」は、間葉系幹細胞を培養した後の培養液から間葉系幹細胞を除去したものから、イヌの疾患の治療に寄与しない培地成分、水分等を更に除去したものも包含する。
【0018】
本実施形態の医薬組成物が含有し得る培養上清の有効成分としては、例えば、イヌ間葉系幹細胞から分泌されるサイトカイン、エクソソーム等が挙げられる。これらについて、
図1、
図2に模式的に示す。
【0019】
サイトカインとしては、例えば、インターロイキン、ケモカイン、インターフェロン、造血因子、細胞増殖因子、アディポカイン、神経栄養因子等が挙げられる。
サイトカインにより、例えば、免疫、アポトーシス、血管新生、組織幹細胞の成長、細胞・組織の線維化、細胞の走化性等が適切に調節され得る。
免疫を調節するサイトカインとしては、例えば、プロスタグランジンE2、肝細胞増殖因子(HGF)、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、TGF-β1、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、白血病阻止因子(LIF)等が挙げられる。
アポトーシスを調節するサイトカインとしては、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、HGF、IGF-I、スタニオカルシン-1、TGF-β、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、bFGF等が挙げられる。
血管新生を調節するサイトカインとしては、例えば、VEGF、IGF-1、胎盤成長因子(PlGF)、単球走化性因子(MCP-1)、bFGF、IL-6等が挙げられる。
組織幹細胞の成長を調節するサイトカインとしては、例えば、幹細胞因子(SCF)、LIF、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、間質細胞由来因子(SDF-1)、アンジオポエチン1等が挙げられる。
細胞・組織の線維化を調節するサイトカインとしては、例えば、HGF、bFGF等が挙げられる。
細胞の走化性を調節するサイトカインとしては、例えば、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL20、CCL26、CX3CL1、CXCL1、CXCL2、CXCL5、CXCL8、CXCL10、CXCL11、CXCL12等が挙げられる。
【0020】
エクソソームは、細胞から分泌される直径20~120nmの膜で覆われた粒子である。
エクソソームに含まれる生体物質としては、例えば、mRNA、microRNA、DNA等の核酸、タンパク質、リン脂質、コレステロール等の脂質等が挙げられる。
【0021】
<培地>
本実施形態の医薬組成物が含有し得る間葉系幹細胞は、血清代替物を含有し、化学的組成が明らかである培地で培養されたものであってもよい。
以下、この培地を、「間葉系幹細胞を製造するための培地」と称する場合がある。
【0022】
《血清代替物》
間葉系幹細胞を製造するための培地は、血清代替物を含有することが好ましい。
血清代替物とは、血清と類似した成分を含む組成物であり、これを培地に添加することにより、血清非存在下でも細胞の増殖が可能となる。
血清代替物は、化学的組成が明らかなものである。化学的組成の明らかな血清代替物は、例えば、血清が含有していることが既知である物質若しくは当該物質と類似の機能を有する物質を混合することにより作製することができる。また、それらの物質に加えて、適宜、間葉系幹細胞の増殖に寄与する物質等を加えてもよい。準備した組成物が血清代替物として機能するか否かは、例えば、血清含有培地における血清に替えて当該組成物を培地に添加し、イヌ間葉系幹細胞を培養することにより確認することができる。当該培地でイヌ間葉系幹細胞が増殖できる場合、当該組成物はイヌ間葉系幹細胞用の血清代替物として機能すると判断することができる。血清代替物に用いる物質は、イヌ以外の動物に由来する物質でないことが好ましい。なお、本明細書において、「イヌ以外の動物に由来する物質」とは、イヌ以外の動物の生体内に存在し、イヌの生体内には存在しない生体物質を意味する。「イヌ以外の動物に由来する物質」は、イヌ以外の動物から単離された生体物質、及び、イヌ以外の動物の生体内に存在し、イヌの生体内には存在しない、人工的に合成された生体物質を包含する。
【0023】
血清代替物が含有する物質としては、例えば、アルブミン、アミノ酸(例えば非必須アミノ酸)、トランスフェリン、脂肪酸、コラーゲン前駆体、抗酸化成分(例えば2-メルカプトエタノール、3’チオールグリセロール、還元型グルタチオン等)、無機塩類(例えばAgNO3、AlCl3・6H2O、Ba(C2H3O2)2、CdSO4・8H2O、CoCl2・6H2O、Cr2(SO4)3・1H2O、GeO2、Na2SeO3、H2SeO3、KBr、KI、MnCl2・4H2O、NaF、Na2SiO3・9H2O、NaVO3、(NH4)6Mo7O24・4H2O、NiSO4・6H2O、RbCl、SnCl2、ZrOCl2・8H2O、亜セレン酸ナトリウム等)が挙げられる。
【0024】
血清代替物は、市販のものを用いてもよい。市販されている血清代替物としては、例えば、KnockOutTM Serum Replacement(Thermo Fisher Scientific)、Chemically Defined Lipid Concentrate(Thermo Fisher Scientific)、XerumFree(TNCBIO)等が挙げられる。
血清代替物は、一種を用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
《化学的組成が明らかな培地》
間葉系幹細胞を製造するための培地は、化学的組成が明らかであることが好ましい。
本明細書において、培地の「化学的組成が明らかである」とは、培地に含まれる物質、及び、その物質の含有量が明らかであることを意味する。なお、「培地に含まれる物質」とは、培地の作製のために意図的に培地に配合した物質を意味し、培地作製の過程で混入し得る微量の混入物は含まない。
【0026】
動物から採取された血清等は、その組成の全てが明らかではなく、ロットにより成分組成が変化し得る。また、動物から単離されたタンパク質等の生体物質は、意図しない成分が除去できていない可能性がある。そのため、間葉系幹細胞を製造するための培地は、動物から採取された血清、生体物質等を含まない。
【0027】
間葉系幹細胞を製造するための培地は、上記血清代替物と、イヌ間葉系幹細胞の生育に必要な物質を適宜混合して作製することができる。前記物質としては、間葉系幹細胞の培養に従来用いられている公知の物質が挙げられる。
そのような物質としては、例えば、水、塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の無機塩、ピルビン酸ナトリウム等の有機塩等)、アミノ酸(例えば必須アミノ酸、非必須アミノ酸等)、ビタミン(例えばリボフラビン、ビオチン、シアノコバラミン、アスコルビン酸等)、微量元素(例えばセレン、鉄、亜鉛、銅等)、炭素源(例えばD-グルコース等)、鉄源(例えばトランスフェリン等)、ポリアミン類(例えばプトレシン等)、ミネラル(例えばセレン酸ナトリウム等)、有機酸(例えばピルビン酸、乳酸等)、還元剤(例えば2-メルカプトエタノール等)、ステロイド(例えばβ-エストラジオール、プロゲステロン等)、抗生物質(例えばストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、緩衝剤(例えばHEPES等)等、脂質類(例えばリノール酸等)、核酸類(例えばチミジン等)が挙げられる。
【0028】
間葉系幹細胞を製造するための培地は、例えば、化学的組成が明らかな基礎培地に、血清代替物を添加したものであってもよい。「基礎培地」とは、培養対象の細胞の生育に必要な物質を含む培地であり、培養対象が動物細胞である場合、通常、基礎培地に血清成分を添加した培地が用いられる。動物細胞用の基礎培地は、各種提案されている。
基礎培地としては、例えば、BME、BGJb、CMRL1066、Glasgow’s MEM、Improved MEM Zinc Option、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、Medium 199、Eagle MEM、α-MEM、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、ハムF10、ハムF12、ハムF12K、RPMI-1640、Fischer、ATCC-CRCM30、DM-160、DM-201、McCoy’5A、Leibovitz’s L-15、RITC80-7、MCDB105、MCDB107、MCDB131、MCDB153、MCDB201、NCTC109、NCTC135、Waymouth’s MB752/1、CMRL-1066、Williams’ medium E、Brinster’s BMOC-3、E8等が挙げられる。
基礎培地は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
基礎培地は、動物細胞用に販売されている市販のものを用いてもよい。市販の基礎培地としては、例えば、ADSC-1、ADSC-2(KOHJIN BIO)、Fibro Assist(KOHJIN BIO)等が挙げられる。間葉系幹細胞を製造するための培地に用いる基礎培地としては、これらの市販の基礎培地を用いることが好ましい。
【0029】
基礎培地は、化学的組成が明らかであることに加えて、イヌ以外の動物に由来する物質を含まないことが好ましい。
【0030】
間葉系幹細胞を製造するための培地は、動物細胞用の基礎培地に、血清代替物を添加して作製することができる。前記基礎培地には、化学的組成が明らかなものを用いる。基礎培地に対する血清代替物の割合は、特に限定されないが、例えば、5~15体積%とすることができる。市販の血清代替物を用いる場合、製造者のガイドラインに従い、血清代替物の使用量を決定することができる。
【0031】
例えば、間葉系幹細胞の培養培地には、通常、bFGFが用いられている。イヌ間葉系幹細胞の培地にもbFGFが用いられるが、従来のイヌ間葉系幹細胞培地には、ヒト間葉系幹細胞用の培地と同様に、ヒトbFGFが用いられてきた。しかしながら、ヒトbFGFは、ヒト由来のものであり、イヌの生体物質ではないため、ヒトbFGFを含む培地で培養されたイヌ間葉系幹細胞をイヌに移植した場合、イヌ間葉系幹細胞に混入するヒトbFGFにより予期せぬ免疫反応が起こるリスクがある。そのため、bFGFは、イヌbFGFを用いることが好ましい。また、bFGF以外のタンパク質を用いる場合も、イヌ由来のタンパク質を用いることが好ましい。
【0032】
《タンパク質》
間葉系幹細胞を製造するための培地は、化学的組成が明らかな、増殖因子等のタンパク質を含有してもよい。前記タンパク質は、イヌにおいて発現が確認されているタンパク質と同等の機能を有する。前記タンパク質は、イヌ等の動物から採取されたものではないことが好ましい。
【0033】
間葉系幹細胞を製造するための培地が含有するタンパク質は、以下の(1)~(3)のいずれかのアミノ酸配列からなり、イヌにおいて発現が確認されているタンパク質と同等の機能を有する。
(1)イヌにおいて発現が確認されているタンパク質のアミノ酸配列;
(2)イヌにおいて発現が確認されているタンパク質のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列;
(3)イヌにおいて発現が確認されているタンパク質のアミノ酸配列との同一性が95%以上であるアミノ酸配列
【0034】
間葉系幹細胞を製造するための培地が含み得る、イヌにおいて発現が確認されているタンパク質としては、例えば、イヌ繊維芽細胞成長因子(FGF)、イヌ上皮成長因子(EGF)、イヌ血小板由来成長因子(PDGF)、イヌインスリン、イヌインスリン様成長因子(IGF)等が挙げられる。
イヌFGFとしては、例えば、イヌbFGFが挙げられる。
【0035】
イヌbFGFとしては、例えば、以下の(a)~(c)のいずれかのアミノ酸配列からなり、イヌ線維芽細胞に対する増殖促進能を有するタンパク質が挙げられる。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列との同一性が95%以上であるアミノ酸配列
【0036】
配列番号1に示されるアミノ酸配列は、イヌbFGFのアミノ酸配列であり、Genbankのアクセッション番号:XP_003432529として開示されている。
【0037】
前記(b)のアミノ酸配列において、欠失、置換、若しくは付加されてもよいアミノ酸の数としては、1個以上15個以下であってもよく、1個以上10個以下が好ましく、1個以上5個以下がより好ましく、1個以上3個以下がさらに好ましい。
【0038】
なお、(b)における「置換」は、アミノ酸配列中の任意のアミノ酸を、化学的に同様な側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換するものであることが好ましい。例えば、アミノ酸は、側鎖の種類により、酸性アミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン及びヒスチジン)、中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びプロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン及びトレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン及びメチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン及びグルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン)等に分類することができる。一般的に起こり得るアミノ酸の置換としては、例えば、アラニン/セリン、バリン/イソロイシン、アスパラギン酸/グルタミン酸、トレオニン/セリン、アラニン/グリシン、アラニン/トレオニン、セリン/アスパラギン、アラニン/バリン、セリン/グリシン、チロシン/フェニルアラニン、アラニン/プロリン、リシン/アルギニン、アスパラギン酸/アスパラギン、ロイシン/イソロイシン、ロイシン/バリン、アラニン/グルタミン酸、アスパラギン酸/グリシン等が挙げられる。
【0039】
前記(c)のアミノ酸配列からなるタンパク質は、前記(a)のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質であるためには95%以上の配列同一性を有する。係る配列同一性としては、97%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
【0040】
ここで、基準アミノ酸配列に対する、対象アミノ酸配列の配列同一性は、例えば次のようにして求めることができる。まず、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列をアラインメントする。ここで、各アミノ酸配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。続いて、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列において、一致したアミノ酸の数を算出し、下記式にしたがって、配列同一性を求めることができる。
【0041】
「配列同一性(%)」 = [一致したアミノ酸の数]/[対象アミノ酸配列のアミノ酸の総数]×100
【0042】
前記イヌbFGFは、無細胞タンパク質合成系により得られたもの、又は化学合成により得られたものであることが好ましい。無細胞タンパク質合成系により得られるイヌbFGFは、イヌ線維芽細胞に対する増殖促進能を有し、イヌbFGFとして機能する。そのため、無細胞タンパク質合成系により得られるイヌbFGFを、間葉系幹細胞を製造するための培地に用いることにより、イヌ間葉系幹細胞の増殖促進が期待できる。
【0043】
無細胞タンパク質合成系としては、例えば、コムギ胚芽、酵母、昆虫細胞、大腸菌等から得られた細胞抽出液を利用した合成系;翻訳に必要な因子を再構成した合成系等が挙げられる。無細胞タンパク質合成系としては、公知の方法を用いることができる(例えば、特開2019-083825号公報を参照)。
【0044】
タンパク質の化学合成法としては、例えば、t-ブトキシカルボニル(t-Butoxycarbonyl:Boc)法、9-フルオレニルメトキシカルボニル(9-Fluorenylmethoxycarbonyl:Fmoc)法等をあげることができる。
【0045】
(疾患)
本実施形態の医薬組成物は、イヌの疾患を治療するために用いることができる。
イヌの疾患としては、例えば、免疫関連疾患、虚血性疾患、後肢虚血、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、脊髄損傷、神経性疾患、全身性炎症性疾患、移植片対宿主病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、免疫介在性血小板減少症、免疫介在性溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、膠原病、脳梗塞、脊髄梗塞、脳内血腫、脳血管麻痺、肝硬変、腎不全、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、乾癬、表皮水疱症、糖尿病、軟骨等の結合組織の変性及び/又は炎症から起こる疾患、関節軟骨欠損、半月板損傷、離断性骨軟骨症、虚血性骨壊死、変形性関節症、炎症性関節炎、関節リウマチ、ステロイド反応性髄膜動脈炎、自己免疫性水疱症、自己免疫性水疱症、眼疾患、血管新生関連疾患、虚血性心疾患、冠動脈性心疾患、心筋梗塞、狭心症、心不全、心筋症、弁膜症、創傷、上皮損傷、線維症、肺疾患及び癌等が挙げられる。
【0046】
イヌの疾患は、免疫関連疾患であることが好ましい。
免疫関連疾患としては、免疫応答が関わる疾患であれば特に限定されないが、例えば、全身性炎症性疾患、移植片対宿主病(GVHD)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、免疫介在性血小板減少症、免疫介在性溶血性貧血、糖尿病、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、膠原病、ステロイド反応性髄膜動脈炎、多発性硬化症、乾癬、自己免疫性水疱症、関節リウマチ、多発性関節炎等が挙げられる。
免疫関連疾患は、全身性炎症性疾患であることが好ましい。
【0047】
(その他の成分)
本実施形態の医薬組成物は、その他の成分として、疾患に対する治療効果を有する公知の薬剤を含有してもよい。
このような薬剤としては、特に限定されないが、例えば、免疫抑制薬、肝疾患治療薬、心疾患治療薬、炎症性腸疾患治療薬、呼吸器用薬、神経系用薬、循環器用薬、脳循環改善薬等が挙げられる。
公知の薬剤は、一種を用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
免疫抑制薬としては、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビン、バシリキシマブ、タクロリムス水和物、グスペリムス塩酸塩、ミコフェノール酸モフェチル、エベロリムス、あるいは、プレドニゾロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルチカゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン等のステロイド剤等が挙げられる。
【0049】
肝疾患治療薬としては、例えば、B型肝炎治療薬(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル等)、インターフェロン製剤(インターフェロンα、インターフェロンα-2b、インターフェロンβ、ペグインターフェロンα-2a、ペグインターフェロンα-2b等)、C型肝炎治療薬(リバビリン、テラピレビル、シメプレビル、バニプレビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ソホスブビル等)、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム等)、抗凝固剤(乾燥濃縮人アンチトロンビンIII、ガベキサートメシル酸塩、トロンボモデュリンα等)、解毒剤(エデト酸カルシウム二ナトリウム水和物、グルタチオン、ジメチカプロール、チオ硫酸ナトリウム水和物、スガマデスクナトリウム等)、血清アルブミン、肝臓抽出エキス、ウルソデオキシコール酸、グリチルリチン酸、アザチオプリン、ベザフィーブラート、アミノ酸(グリシン、L-システイン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-バリン、L-トレオニン、L-セリン、L-アラニン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-リシン、L-ヒスチジン、L-アルギニン及びこれらの塩等)、ビタミン(トコフェロール、フラビンアデニンジヌクレオチド、リン酸チアミンジスルフィド、ピリドキシン、シアノコバラミン及びこれらの塩等)、抗生物質(スルバクタムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、メロペネム水和物、塩酸バンコマイシン等)等が挙げられる。
【0050】
心疾患治療薬としては、例えば、ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、β遮断薬、抗血小板薬、ワーファリン、カルシウム拮抗薬、硝酸薬、利尿剤、HMG-CoA還元酵素阻害薬、アンカロン等が挙げられる。
【0051】
炎症性腸疾患治療薬としては、例えば、サラゾスルファピリジン、メサラジン等が挙げられる。
【0052】
呼吸器用薬としては、例えば、ジモルホラミン、ドキサプラム塩酸塩水和物、シベレスタットナトリウム水和物、ピルフェニドン、肺サーファクタント、ドルナーゼ アルファ等が挙げられる。
【0053】
神経系用薬としては、例えば、エダラボン、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、フィンゴリモド塩酸塩、リルゾール、タルチレリン水和物等が挙げられる。
【0054】
循環器用薬としては、例えば、ヘプロニカート、ミドドリン塩酸塩、アメジニウムメチルメチル硫酸塩、エチレフリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩等が挙げられる。
【0055】
脳循環改善薬としては、例えば、イフェンプロジル酒石酸塩、ニセルゴリン、イプジラスト、ジヒドロエルゴトキシンメシル酸塩、ニゾフェノンフマル酸塩、ファスジル塩酸塩水和物等が挙げられる。
【0056】
本実施形態の医薬組成物は、イヌの疾患を治療する効果を損なわない範囲であれば、その他の成分として、薬学的に許容される担体や添加物等を含有してもよい。
このような担体、添加物としては、例えば、保存安定性、等張性、吸収性、及び/又は粘性を増加するためのもの等が挙げられる。
より具体的には、このような担体、添加物としては、例えば、等張化剤、増粘剤、糖類、糖アルコール類、防腐剤(保存剤)、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、安定化剤、キレート剤、油性基剤、ゲル基剤、湿潤剤、界面活性剤、懸濁化剤、結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、発泡剤、流動化剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、溶解補助剤、抗酸化剤、甘味剤、酸味剤、着色剤、呈味剤、香料又は清涼化剤等が挙げられる。
薬学的に許容される担体や添加物は、一種を用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
本実施形態の医薬組成物は、製薬上許容し得る媒体により希釈したものでもよい。製薬上許容し得る媒体としては、イヌに投与し得る溶液であれば特に限定されない。
製薬上許容し得る媒体は、例えば、輸液製剤であってもよい。輸液製剤としては、例えば、注射用水、生理食塩液、リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液、アミノ酸液等が挙げられる。
製薬上許容し得る媒体は、一種を用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
本実施形態の医薬組成物は、例えば、注射剤、液剤、経口剤、貼付剤、移植用製剤、ゲル製剤等であってもよい。本実施形態の医薬組成物の形態は、例えば、液状、塊状、シート状であってもよい。
【0059】
本実施形態の医薬組成物の対象への投与経路は、例えば、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、リンパ系投与、髄腔内投与、腹腔内投与、経直腸投与、経腟投与、経皮投与、インプラント、臓器への直接投与、局所への移植等が挙げられる。
【0060】
本実施形態の医薬組成物が含有し得るイヌ間葉系幹細胞は、大量に培養することが容易なイヌ多能性幹細胞から誘導された細胞であるため、このイヌ間葉系幹細胞は大量に作製することが容易であり、その性状は均一性に優れる。
本実施形態の医薬組成物が含有し得る培養上清は、性状の均一性に優れたイヌ間葉系幹細胞の培養上清であるため、この培養上清の性状は均一性に優れている。また、大量に培養することが容易なイヌ多能性幹細胞から誘導されたイヌ間葉系幹細胞を培養して得られる培養上清であるため、大量に作製することが容易である。
そのため、本実施形態の医薬組成物は、医薬品としての均一性に優れ、且つ大量に製造することが可能である。そのため、治療における複数回の投与に好適に用いることができ、疾患の治療効果を十分なものとすることができる。
【0061】
間葉系幹細胞を製造するための培地の化学的組成が明らかである場合、間葉系幹細胞を製造するための培地は、性状の均一性に優れ、ウイルス等の意図しない成分を含有するおそれが少ない。そのため、ウイルス等の意図しない成分を含有するおそれが少なく、性状が均一なイヌ間葉系幹細胞を得ることができる。また、ウイルス等の意図しない成分を含有するおそれが少なく、性状が均一なイヌ間葉系幹細胞の培養上清を得ることができる。
そのため、間葉系幹細胞を製造するための培地の化学的組成が明らかである場合、当該培地を用いて作製されたイヌ間葉系幹細胞及び/又はその培養上清を含有する本実施形態の医薬組成物は、治療における複数回の投与に好適に用いることができ、本実施形態の医薬組成物を投与されたイヌがウイルスに感染するおそれを低減することができ、疾患の治療効果を十分なものとすることができる。
また、間葉系幹細胞を製造するための培地の化学的組成が明らかである場合、間葉系幹細胞を製造するための培地は、イヌの血清を含有しないため、イヌをドナーとして用いることについての倫理的問題を回避することができる。
【0062】
間葉系幹細胞を製造するための培地がイヌ以外の動物に由来する成分を含まない場合、本実施形態の医薬組成物が含有し得るイヌ間葉系幹細胞に、イヌ以外の動物に由来する成分が混入しない。
間葉系幹細胞を製造するための培地がイヌ以外の動物に由来する成分を含まない場合、本実施形態の医薬組成物が含有し得る培養上清は、イヌ以外の動物に由来する成分を含有しない。
そのため、間葉系幹細胞を製造するための培地がイヌ以外の動物に由来する成分を含まない場合、本実施形態の医薬組成物を投与されたイヌが予期せぬ免疫反応を引き起こすおそれを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、イヌの疾患を治療するための、性状の均一性に優れた間葉系幹細胞又はその培養上清を含有する医薬組成物を提供することができる。本発明により提供される医薬組成物は性状の均一性が十分であるため、イヌの細胞医療、再生医療に好適に用いることができる。
【配列表】