(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023801
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】スマートコントラクトによって管理されるトークン化されたブロックチェーンゲーム資産を効率的に保存、発行、取引するためのコンピュータシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/08 20120101AFI20220201BHJP
【FI】
G06Q20/08 300
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021112543
(22)【出願日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】63/052,601
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/950,390
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521299569
【氏名又は名称】ビッグ タイム スタジオズ エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】BIG TIME STUDIOS LTD.
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 613, George Town, Grand Cayman, KY1‐1107, Cayman Islands
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】アリエル マイリック
(72)【発明者】
【氏名】ソー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ホセ イグナシオ マツァーラ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューゴ アレーギ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス アグスティン サンタンジェロ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スマートコントラクトによって管理されるトークンで表現されたゲーム資産の取引を容易にするボールトアプリケーションを含むコンピュータシステム及び方法を提供する。
【解決手段】ユーザゲーム内インベントリを伴うゲームインベントリ管理システムを有する集中型ゲーム環境と、分散型ネットワークとの間をインタフェースするためのボールトアプリケーションは、ユーザに代わってゲーム資産に対応するトークンを保管し、ユーザの権利を示し、ユーザのゲーム内インベントリから削除すべきゲーム資産についてのリクエストのユーザ選択及びウォレットアドレスの指定を受け取り、選択されたゲーム資産を削除するリクエストに関するメッセージをゲーム環境に伝達し、インベントリから削除するリクエストの確認を受け取り、トランザクションを生成し、トークンを、ボールトスマートコントラクトを介して指定されたウォレットアドレスに転送する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールトアプリケーションとの通信を確立しておりユーザゲーム内インベントリを伴うゲームインベントリ管理システムを有する集中型ゲーム環境と、分散型ネットワークとの間をインタフェースするためのボールトアプリケーションを提供するコンピュータシステムであって、
前記システムは、
コンピュータ実行可能モジュールを格納するメモリと、
前記コンピュータ実行可能モジュールを実行するように構成された少なくとも一つのプロセッサと、を備え、
前記コンピュータ実行可能モジュールは、前記ボールトアプリケーションを有し、
前記ボールトアプリケーションは、前記ボールトアプリケーションへとまたは前記ボールトアプリケーションから、および、1つ以上の分散ネットワークとやり取りを行うように構成された一つ以上の暗号ウォレットへとまたは前記一つ以上の暗号ウォレットから、トークンを移動させるのを容易にするように構成されており、
前記ボールトアプリケーションは、
ユーザに代わってゲーム資産に対応するトークンを保管し、
前記ゲーム環境と通信して、前記ゲーム資産に対するユーザの権利を示し、
ユーザの前記ゲーム内インベントリから削除すべきゲーム資産についてのリクエストのユーザ選択、および、ウォレットアドレスの指定を受け取り、
選択された前記ゲーム資産を削除する前記リクエストに関するメッセージを前記ゲーム環境に伝達し、
前記ゲーム環境から、選択された前記ゲーム資産をユーザの前記ゲーム内インベントリから削除するリクエストの確認を受け取り、
トランザクションを生成して、選択された前記ゲーム資産に対応する前記トークンを、ボールトスマートコントラクトを介して指定された前記ウォレットアドレスに転送する、ように構成されている、システム。
【請求項2】
前記ゲーム資産には、分散型ネットワーク上で取引可能であり前記ゲーム資産の所有権を表すトークン化されたゲーム資産が含まれ、前記ボールトスマートコントラクトは、ゲーム資産がユーザの前記ゲーム内インベントリにある間、ユーザに帰属するトークンをロックするように構成され、
前記ボールトアプリケーションとの通信を介して前記ゲームインベントリ管理システムに移動されたゲーム資産について、前記ゲームインベントリ管理システムは、前記ゲーム資産のトランザクションが、そのトランザクションの一部として対応する前記トークンの転送を行う必要なしに、前記ゲーム内で発生することを可能とするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ボールトは、ファシリテータおよび1つ以上のボールトスマートコントラクトを有し、
前記ファシリテータは、インデクサおよびファシリテータデータベースを備え、
前記インデクサは、前記ボールトスマートコントラクトとやりとりして、トークンの預け入れ、取得および/または引き出しに関連するイベントを検出するように構成されており、
前記ファシリテータデータベースは、イベントデータを格納するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
ユーザが、ボールトアカウントを作成および管理し、一つ以上のウォレットを前記ボールトアカウントに関連付け、トークンを取得、ならびに、トークンを前記アカウントからおよび前記アカウントへと預け入れおよび引き出すことができるように構成されたボールトユーザインターフェースを更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ボールトアプリケーション更には、前記ユーザがトークン化された新しいゲーム資産を簡単に取得できるように成されており、
前記ボールトは、
取得すべきトークン化された資産の選択を受信し、
前記トークン化された資産に関連付けられたトークンIDを取得して保存し、
前記ゲーム管理システムと通信して、前記トークンIDに対応する前記トークンを生成せずに、前記ゲーム資産を前記ゲーム内で使用できるように認証し、
前記トークン化されたゲーム資産を前記ゲーム外において指定されたウォレットにトランザクションするユーザリクエストを受信し、
前記トークンを生成し、
前記トークンを前記指定されたウォレットに転送するトランザクションを生成する、ように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
ボールトユーザインタフェースを更に備え、
前記ボールトユーザインタフェースは、
ユーザの前記一つ以上のウォレットのうちの1つのアイコンを前記ユーザが選択するオプションを表示し、
選択した前記ウォレットに関連付けられているトークンを表示し、
選択されたゲームに預け入れれるゲーム資産に対応するトークンの選択を受信し、
前記ゲーム環境と通信して、前記ゲーム資産に対する前記ユーザの権利を示す、ように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
ボールトユーザインタフェースを更に備え、
前記ボールトユーザインタフェースは、
前記ユーザに関連付けられたゲーム資産を表示し、
ゲームから引き出すゲーム資産の選択を受信し、
ユーザの前記一つ以上のウォレットのうちの1つのアイコンを前記ユーザが選択するオプションを表示し、
前記ゲーム内での前記資産のさらなる使用を防ぐべく、メッセージを前記ゲームインベントリ管理システムに伝達し、
前記ゲーム環境から確認を受信し、
選択した前記ゲーム資産に対応する前記トークンを選択したウォレットへと転送するトランザクションをスマートコントラクトを介して生成する、ように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ボールトユーザインタフェースは、
ユーザがボールトアカウントを作成して前記ボールトアカウントとやり取りするオプションを表示するように構成された表示要素と、
ユーザが一つ以上のユーザウォレットを選択してやり取りするオプションを表示するように構成された表示要素と、
ユーザが転送アイテムコントロールを選択してやり取りするオプションを表示するように構成された表示要素と、
ユーザがデジタル資産の市場を選択してやり取りするオプションを表示するように構成された表示要素と、を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ボールトユーザインタフェースは、ユーザが選択したウォレットについて、選択された前記ウォレット内のユーザの資産を表示するように構成された表示要素と、
取引する一つ以上の表示された資産をユーザが選択するためのオプションを表示するように構成された表示要素と、を備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ゲーム資産は、前記ゲーム内インベントリシステムによって指定されたアイテムIDを有し、
前記ボールトスマートコントラクトは、前記ゲーム資産の前記アイテムIDと前記ゲーム資産に対応するトークンのトークンIDとの関連付けを格納するように構成されている、 請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記ゲームインベントリ管理システムは、アイテムIDに基づいてゲーム資産に関連するゲーム内トランザクションを管理するように構成され、
前記ボールトアプリケーションは、前記ゲーム資産に関連付けられた前記トークンに関連するトランザクションを管理するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記ボールトアプリケーションは、トークン化されたゲーム資産を預け入れるリクエストを処理するように更に構成され、
前記ボールトアプリケーションは、トークンIDと前記ゲーム資産が関連付けられる受取人とを含むトークン預け入れメッセージを、前記ファシリテータに送信し、前記ボールトスマートコントラクトにおける前記トークンをロックするように構成され、
前記ファシリテータは、前記ゲームインベントリ管理システムと通信して、預け入れられた前記トークンに対応する前記ゲーム資産を前記受取人のゲームアカウントインベントリに追加し、アイテムに対応する前記トークンは前記ボールトスマートコントラクトにおいてロックされた状態で、前記ゲーム環境内で前記ゲーム資産を使用可能とするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記ボールトアプリケーションは更に、トークン化されたゲーム資産を引き出すリクエストを処理するように構成され、
前記ボールトアプリケーションは、前記ゲームから引き出すゲーム資産の選択を受信し、指定されたウォレットのトークンIDおよび宛先アドレスと共に引き出しメッセージをファシリテータに送信するように構成され、
前記ファシリテータは、前記ユーザが前記ユーザの前記ゲーム内インベントリに前記ゲーム資産を持っているという確認をゲームインベントリ管理システムから受け取り、前記ボールトコントラクトにメッセージを送信し、
前記ボールトコントラクトは、前記トークンのロックを解除し、前記トークンを指定された前記ウォレットに転送するトランザクションを生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記ファシリテータは、作成トランザクションを処理するように構成されており、
前記ファシリテータは、トークン化されたゲーム資産についての作成リクエストメッセージを受信し、作成メッセージを生成して、トークン情報と共に前記ボールトに送信するように構成され、
前記ボールトスマートコントラクトは、前記トークンを作成し、前記ファシリテータにトークンIDを提供するように構成され、
前記ファシリテータは、前記ゲーム資産を前記ユーザの前記ゲーム内インベントリと関連付けるべく、メッセージを送信するように構成されており、
前記データベースは、前記ゲーム資産のアイテムIDを前記トークンIDと共に保存するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年7月16日に出願された米国特許仮出願第63/052,601号の35U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張するものであり、その内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ゲーム資産の特定のトランザクションをゲーム内集中型データベースアプローチ(分散型ネットワーク、トランザクション毎の手数料をユーザが支払うことを必ずしも含まない)を使用して行うと同時に、その他のトランザクションをブロックチェーンまたはその他の分散型台帳技術(DLT)ネットワークを介して分散型ネットワーク上で管理してユーザにトランザクション毎の分散型ネットワーク手数料を負担させるというハイブリット手法により、スマートコントラクトによって管理されるトークンで表現されたゲーム資産の取引を容易にするボールト(Vault)アプリケーションを含むコンピュータシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
多くのビデオゲームでは、ゲームプレイおよび装飾等に関連して使用される様々なゲーム資産(アセット)が提供されている。多くのゲームでは、ゲーム資産は、ゲーム運営者が管理する集中型データベースの行によって表現されている。ゲームア資産はユーザにライセンスされており、安全な保管のためにも、他人への譲渡、外部市場での取引、および、ゲームから持ち出すことはできなくなっている。ゲーム会社によるゲーム内資産のプレーヤへの「販売」は、ゲーム業界の収益の70%以上を占めると言われている。しかし、プレーヤの視点で見ると、これらのゲーム資産の大部分は譲渡不可能な表に出ない価値として存在している。プレーヤのアカウントが解約されると、ゲーム資産を使用するライセンスが終了し、関連する価値は失われてしまう。
【0004】
このような問題を解決するために、多くのゲーム会社がブロックチェーンを利用したゲーム(以下、ブロックチェーンゲーム)に注目している。ブロックチェーンゲームでは、分散型台帳技術(例えば、ブロックチェーンやその他のDLT)を使用して、ゲーム資産の作成(mint)および管理(および/またはその他の目的)を行う。これらのゲーム資産は、従来のゲーム資産のようにライセンスされたものではなく、プレーヤが真に所有することができる。ブロックチェーンゲーム資産の所有権および譲渡は、通常、分散型ネットワーク(例えば、必ずしもゲーム会社の管理下にあるわけではない)を介して管理される。
【0005】
ブロックチェーンゲーム資産(およびその他のデジタル資産)は、暗号トークンとして表現される場合がある。多くの場合、これらのトークンは、非代替性トークン(Non-Fungible Token:NFT)である。NFTのフォーマットの一例としては、ERC-721と呼ばれるトークンの規格がある。ERC-1155トークンを使用することもできる。トークンは通常、ユーザが管理する暗号ウォレット(以下、略して「ウォレット」と呼ぶ)に関連付けて保管される。ウォレットでは、公開鍵および秘密鍵を持つことができる。公開鍵は、ウォレットの固有のIDまたはアドレスであり、トークンをユーザのウォレットに送信可能とするべく、トランザクションを行う目的でユーザが開示可能である。秘密鍵は、プレーヤがネットワークに送信する各トランザクションに署名してそのプレーヤが自身のウォレットから送信したものであることを検証するためにウォレットによって使用される。
【0006】
イーサリアム(Ethereum)ブロックチェーンを使用するゲームの場合、ウォレットはMetaMask、Fortmatic等のERC-721互換のウォレットを使用することができる。トークンを取得・管理するために、プレーヤがウォレットを取得・維持し、秘密鍵を管理しなければならないということは、他の問題につながる。例えば、プレーヤは、ウォレットに関連するアイテムの紛失リスクを回避するために、秘密鍵を安全に保つ必要がある。秘密鍵を紛失または公開してしまうと、プレーヤはウォレット内のアイテムへのアクセスおよび/または所有権を失うことになる。ウォレットを入手する必要があるために、新規にプレーヤを獲得するには様々な困難が伴う。その結果、従来のゲームとは大きく異なるユーザ体験を強いられている。
【0007】
また、トークンの転送にはコストがかかる場合がある。イーサリアムのメインチェーンで行われるすべてのトランザクションには、イーサ(Ether)で支払われるコストが伴う。イーサは、イーサリアムブロックチェーンに固有の暗号通貨である。このコストは「ガス」料金と呼ばれ、トランザクションを「マイニング(採掘)」(または検証)するネットワークユーザに支払われる。より高い価格を提示したトランザクションは、マイナー(採掘者)が優先的に採掘するので、より早く採掘される。これらトランザクションの市場価格は定期的に変動するが、ネットワークの利用率が高い場合には高くなる傾向がある。トランザクション毎にガス料金を支払う必要があり、その料金が変動することは望ましくない。
【0008】
さらに、従来のゲーム資産やプレーヤのインベントリを管理するための従来の(ブロックチェーンを使わない)ゲーム管理システムをすでに持っているゲーム会社にとって、ブロックチェーンを使った管理アプローチに切り替えることはコストがかかり、混乱を招く可能性がある。通常、ゲームは、技術的な理由またはその他の理由から、どちらかのアプローチを使用している。
【0009】
少なくともこのような理由から、ブロックチェーンゲームは、従来のゲームの問題点をいくつか克服する一方で別の問題を生み出している。このような問題や欠点は、ゲーム資産に対する既知のアプローチにも存在している。
【発明の概要】
【0010】
一例として、本発明は、ERC-721トークンがゲーム資産の所有権を表し、ゲーム資産がゲーム内資産管理システムを介して管理される、トークン化されたゲーム資産に関して説明される。本発明は、特定の例に限定されない。本発明はゲームに関して説明されているが、ゲーム以外の他のデジタル資産およびアプリケーションに適用することができる。他のアプリケーションでは、プレーヤは、一般的にユーザとも称される。本明細書で使用される場合、ブロックチェーンゲームとは、ゲームプレイがブロックチェーンに実装されているかどうかにかかわらず、ブロックチェーンまたはその他のDLTを使用して、ゲーム資産および/またはゲーム経済の少なくとも一部を作成および/または管理するゲームを指す。便宜上、いくつかの例では、イーサリアムブロックチェーンおよび様々なイーサリアム固有のプロトコル(ERC-721トークン等)の使用について言及している。ブロックチェーンの使用、特にイーサリアムブロックチェーンの使用、および、ERC-721トークンの使用に制限することを意図していない。本発明の特徴は、その他のDLTを介しておよび/またはその他のプロトコルを使用して実施することができる。
【0011】
本開示の一態様は、一つまたは複数のハードウェアプロセッサ上で実行され、ファシリテータおよび一つまたは複数のボールトスマートコントラクトを含むボールトを含む、コンピュータ実装ボールトアプリケーションを含むコンピュータに実装されるシステムに関する。ゲームがボールトを使用して動作するように構成されている場合、プレーヤはトークンをボールトに預け入れて、対応するゲーム資産をゲーム内インベントリに追加できる。ボールトは、プレーヤに代わって様々なデジタル資産(ゲーム資産等)を表す暗号トークン(NFT等)を保存し、ゲーム内管理システムと通信して、プレーヤのゲーム内インベントリにゲーム資産の所有権を反映させる。このアプリケーションは、ユーザがアプリケーションインタフェースを介してボールトからおよびボールトへと、ならびに、ウォレットからおよびウォレットへとトークンを移動できるようにするための便利なインタフェースを提供する。
【0012】
預け入れられるトークンは、プレーヤが以前に取得したものであり、ウォレットを持っている場合はウォレットに存在してもよい。これに代えて、プレーヤが暗号ウォレットを持っていない場合でも、プレーヤはボールトインタフェースを介して新しいトークン化されたゲーム資産を取得してもよい(以下で詳しく説明する)。ゲーム資産がゲームインベントリに追加されると、プレーヤは、基になるトークンを処理する必要なく、ゲーム内管理システムの制御下でゲーム内のゲーム資産を使用できる。プレーヤがゲーム資産をゲームから引き出したいと望む場合、プレーヤはボールトインタフェースからゲーム資産を選択し、トークンの転送先のウォレットを指定できる。ボールトはゲーム内管理システムと通信して、プレーヤのインベントリからゲーム資産を取得し、対応するトークンをボールトスマートコントラクトを介して指定されたウォレットアドレスに転送する。これは、独自のブロックチェーンを管理することなく、ブロックチェーンゲーム資産を活用したいゲームオペレータにもメリットがある。
【0013】
プレーヤは、ボールトアカウントを作成し、グラフィカルユーザインタフェースを含むコンピュータに実装されたソフトウェアアプリケーションを介して自分のボールトにアクセスできる。グラフィカルユーザインタフェースは、ボールトインタフェースにアクセス可能な一つまたは複数のデジタル資産市場から入手可能なデジタル資産を表す少なくとも一つのUIを含んでもよい。インタフェースの一つまたは複数は、プレーヤがプレーヤのボールトアカウントを作成および/またはボールトアカウントとやりとりすることを可能にする少なくとも一つのUIを含んでもよい。インタフェースの一つまたは複数は、プレーヤがウォレットを作成および/またはボールトアカウントとやりとりすることを可能にする少なくとも一つのUIを含んでもよい。プレーヤが一つまたは複数の暗号ウォレットを持っている場合、プレーヤは当該ウォレットをボールトアカウントに関連付けることができる。これにより、プレーヤは、ボールトインタフェースを介して、トークンをウォレットから自分のボールトへと、および、自分のボールトからウォレットへと、より簡単に移動させることができる。プレーヤが暗号ウォレットを持っていない場合でも、後述するように、プレーヤはボールトを使用してトークン化されたゲーム資産を取得することができる。プレーヤは、インタフェースから一つまたは複数のデジタル資産を選択して取得することができ、ボールトインタフェースは、プレーヤがデジタル資産に対応するトークンを取得しプレーヤのボールトに預けるの容易にしてもよい。デジタル資産をプレーヤのボールトに入れた後、プレーヤはボールトインタフェースを介して、当該デジタル資産をゲーム内へと移動させたり、自分のウォレット(持っている場合)や他のウォレットに移したりすることができる。また、プレーヤは、ボールトインタフェースを介して、プレーヤのウォレットからゲームへと、自分のボールトへとまたは他のウォレットへとデジタル資産を転送することができます。プレーヤがボールトアカウントを作成しウォレットを関連付けた後、ボールトアプリケーションインタフェースにより、プレーヤはデジタル資産を取得し、デジタル資産を自分のボールトとウォレットとの間で移動させたり、ゲームに出し入れさせたりすることが非常に容易になる。
【0014】
一例として、本発明は、簡単なユーザエクスペリエンスで、ゲーム資産を表すトークン化された資産の預け入れ、購入および引き出しをより効率的かつ費用効果的に行うための技術的解決策を提供する。このアプローチによれば、プレーヤがトークン化されたゲーム資産の購入を希望する場合、システムによってホワイトリストに登録され事前に作成されたボールトスマートコントラクトが使用され(以下で説明)、ユーザがゲーム資産の権利を取得してそれをゲーム内データベース管理システムのプレーヤーのアカウントに記録するのを容易にする。ただし、トークン自体は、ユーザが当該ゲーム資産をゲームから引き出すことを決定するまで、イーサリアム(または他の)ブロックチェーン上のユーザ指定のウォレットに転送されない。このアプローチにより、ユーザは、プレーヤが指定されたウォレットにトークンを転送することを望まない限りおよび望むまで、ブロックチェーントランザクションの完了に関連するオーバーヘッドなしで、ゲームでトークン化されたゲーム資産を使用する権利を取得できる。
【0015】
とりわけ、このアプローチにより、ユーザは、必ずしも暗号ウォレットを持ったり、秘密鍵を管理したり、その他の方法で資産を守ることなく、トークン化されたゲーム資産を取得できる。さらに、プレーヤが暗号ウォレットを持っている場合でも、トークンの発行を延期することにより、トークンがプレーヤのウォレットに発行されるまで、分散型ネットワーク料金を削減または遅らせることができる。
【0016】
本発明はまた、トークン化されたゲーム資産を他のプレーヤと(例えば、ゲーム内で)交換するためのより効率的な解決策をプレーヤに提供し得る。さらに、プレーヤは、ゲーム資産を集中型環境(オンラインビデオゲームプラットフォーム等)から独自の暗号ウォレット(存在する場合)またはその他の指定されたウォレットに転送したり、ウォレットから資産を集中型環境へと預けたりすることができる。
【0017】
本発明の一側面は、トークンがユーザーに転送される前に、集中型ゲーム環境内でゲーム資産が保持および処理されるような態様で、ゲーム資産を表すNFT(例えば、ERC-712トークン)をキュレート、発行、保存および取引するためのコンピュータ実装のシステム、方法並びにプログラムに関する。ユーザがトークン化されたゲーム資産の購入を望む場合、資産はシステムによって展開されたスマートコントラクトに預け入れおよび保持され、システムは、集中型データベース管理システム(例えば、ゲームインベントリ管理システム)と通信してプレーヤのゲーム資産のゲーム内インベントリを管理する。集中型環境内で資産をトランザクションする場合、コストを0まで削減でき、トランザクションの待機時間はほとんどまたは全くありません。
【0018】
各ボールトスマートコントラクトは事前に作成されるが、個々のトークンの発行は、ユーザがトークンをゲームから引き出す場合にのみ発生するため、大幅なコスト削減やトークン発行の延期が可能になる。
【0019】
ゲーム資産には、ゲーム内管理システムによって指定されたアイテムIDが含まれてもよい。本発明の一態様によれば、ゲーム資産のアイテムIDは、そのゲーム資産の「所有権」を表す対応するNFTに関連付けられ得る。NFTにはトークンIDを有してもよい。この関連付けは、以下で説明するように、ボールト(たとえば、ボールトスマートコントラクト)に保存できる。ユーザがゲーム内でゲーム資産を使用すると、集中型ゲームインベントリ管理システムがアイテムIDを使用してトランザクションを管理し、プレーヤのアカウント内のユーザ所有権を反映する。ユーザがゲーム外のトランザクションを行いたい場合、本発明の技術プラットフォーム(例えば、ファシリテータ)は、ゲーム内の資産の更なる使用を防ぐべく(例えば、ゲーム資産をロックする)ゲーム在庫管理システムに通知し、アイテムIDに対応するトークンのトークンIDを特定し、そのトークンをプレーヤが指定した暗号ウォレットに発行する。プレーヤが暗号ウォレットを持っている場合、自分のウォレットを指定することができる。プレーヤは別の暗号ウォレットを指定することもできる。トークンがウォレットに入ると、イーサリアムネットワーク(またはトークンに関連付けられたプロトコルに応じて他の分散型ネットワーク)でトランザクションを実行できる。
【0020】
ゲーム資産には、例えば、ゲーム内の仮想通貨、機能的なゲームプレイアイテム(武器)、非機能的なゲームアイテム(スキン等)、土地、および/または、既存の従来型(非ブロックチェーンゲーム)ゲームで使用される周知のその他のゲーム資産が含まれ得る。ゲーム資産の購入、販売、取引および使用は、通常、ゲーム内管理システムによって管理される。ゲーム資産の各インスタンスには、アイテムIDが含まれてもよい。プレーヤはそれぞれ、ゲーム管理システムを介して、一意のユーザIDおよび電子的に維持されるゲームアカウントを持っていてもよい。プレーヤが所有するゲーム資産のインベントリは、プレーヤのアカウントのアイテムIDのリストとして反映されてもよい。これらの資産のアカウント管理は、通常、ゲームオペレータによって制御される集中型データベース管理システムによって行われる、または、ゲームオペレータに代わって従来のデータベースで管理されます。以下に示すように、トークンは、トークンID等の一意の識別子を持つことができる。
【0021】
このオペレーションを可能にする技術的な解決策を以下に説明する。本発明のその他の側面は、説明の残りの部分から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
一又は複数の実施形態に係る本開示を、添付の図面を参照して以上で詳細に説明する。図面は、説明のためだけに提供されており、典型的または例示的な実施形態を示しているに過ぎない。
【0023】
【
図1】本発明の一態様の全体的なアーキテクチャを示すハイレベルブロック図である。
【0024】
【0025】
【
図3】様々な使用例に応じて、ユーザがゲームアカウントのインベントリへとまたはから、トークン化されたゲーム資産をインポートおよびエクスポートするプロセスの例を示した図である。
【
図4】様々な使用例に応じて、ユーザがゲームアカウントのインベントリへとまたはから、トークン化されたゲーム資産をインポートおよびエクスポートするプロセスの例を示した図である。
【
図5】様々な使用例に応じて、ユーザがゲームアカウントのインベントリへとまたはから、トークン化されたゲーム資産をインポートおよびエクスポートするプロセスの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
当業者であれば、本明細書に記載された実施形態が、具体的な詳細事項がなくともまたは等価な構成を用いても実施され得ることを理解するであろう。他の例として、周知の構造及び装置が、本発明の実施例を不必要に曖昧なものとさせない目的で、ブロック図の形式で示される。
【0027】
本発明の一態様は、従来の閉ループのゲーム経済と、開ループのブロックチェーントークンベースの経済との間の解離に対処するものである。ほとんどの従来のゲームは、閉ループ経済に基づいており、ゲーム内通貨および/またはその他のゲーム資産は、運営者の管理下にある集中型データベースを介して(典型的には、ゲーム運営者によってまたはゲーム運営者に代わる者によって)作成および管理される。ゲーム資産はプレーヤの所有物ではなく(プレーヤにライセンスされているだけである)、ゲーム内でのみ使用することができ、一般的にはゲーム外での取引、販売、交換は許可されていない。従来のゲームでは、利用規約に、プレーヤはゲーム内で「購入」したゲーム資産に対する取消可能なライセンスのみを取得することが明確に記されている。例えば、プレーヤがゲーム内で銃やスキン等のゲーム資産を購入した場合、実際にはゲーム内でゲーム資産を使用するためのライセンスを購入したことになる。プレーヤのアカウントが解約されると、ライセンスも解約され、プレーヤは何の価値も得られない。ただし、これらのゲーム資産の作成や取引に関連して、通常プレーヤが料金を支払うことはない。
【0028】
これとは対照的に、ほとんどのブロックチェーンゲームの経済は開ループ経済であり、使用される暗号通貨やNFTはプレーヤによって完全に所有され、デジタル資産取引所で取引または販売されるように設計されている。利用規約は、通常、デジタル資産の販売を禁止しておらず(場合によっては禁止されている)、ゲーム運営者は、プレーヤがデジタル資産市場でデジタル資産を取引または販売することを容易にしていることが多い。プレーヤのアカウントが解約された場合であっても、プレーヤはデジタル資産を保持したり、取引や売却を行ったりすることができる。ただし、トークンの作成および/またはトークンに関わるトランザクションには、通常、プレーヤが手数料を払う必要がある。
【0029】
トークンのトランザクションでは関連するコストをプレーヤが払う必要があり、特にトランザクションが頻繁に発生する場合および/または価値が低い場合には、トランザクションを躊躇する可能性がある。例えば、トークンがイーサリアムネットワーク上で取引される場合、イーサリアムベースの一回のトランザクションまたは一連のトランザクションには、関連コスト(ガス料金)がかかる。このコストは、ネットワークの分散化の性質、および、DLTプロトコルに従ってトランザクションを検証するようにノード(またはノードオペレータ)にインセンティブを与える必要があることに起因している。
【0030】
本発明の一つの側面は、ゲーム資産の特定の取引を集中型データベース管理アプローチを用いて運営者が実施・管理する(ユーザが一回の取引毎に手数料を払う必要が必然的に発生する)と同時に、他の取引をブロックチェーンまたはその他のDLTネットワークを介して分散型ネットワーク上で管理して、ユーザに一回の取引毎のネットワーク取引手数料を課すことができる、ハイブリッド手法を可能にする技術的解決策に関する。場合によっては、集中型データベースを介して管理するのに最も適した取引は、ゲーム内で発生する取引であり、分散型データベースを介して管理するのに最も適した取引は、ゲーム外で発生する取引、例えば、分散型取引所で発生する取引である。
【0031】
例えば、プレーヤがゲーム内で使用できるゲーム資産を表すトークンの購入を希望する場合、ネットワーク取引コストを削減するために、トークンの実際の作成(ミント)および発行を遅らせることができる。その代わりに、プレーヤのゲーム内アカウント(例えば、オペレータによって管理される)が更新され、そのゲーム資産を使用するためにプレーヤがアクセスしたことが反映されてもよい。これにより、その時点でガス料金やその他の分散型取引手数料を支払う必要がなくなる。そのゲーム資産がプレーヤのアカウントに残っている限り、プレーヤはゲーム資産を使用したり、集中型ゲーム管理データベースシステムを介してゲーム運営者が管理するゲーム内取引(例えば、ゲームプレイのための使用、他のプレーヤとのゲーム内取引、運営者とのゲーム内取引、その他のゲーム内取引)を行うことができる。
【0032】
プレーヤがゲーム外でトークン(例えば、ゲーム資産を表す)のトランザクションを行いたい場合(例えば、分散型取引所での売却やゲーム外のその他のトランザクション)、トークンがまだ作成されていない場合はトークンを作成(ミント)し、プレーヤに関連付けられた暗号ウォレット(持っている場合)またはプレーヤが指定するその他のウォレットに転送することができる。その後、トークンに関連付けられた分散型ネットワークプロトコルに従って許容される任意の方法でトークンのトランザクションを行うことができる。
【0033】
このように、分散型ネットワークを介して実施される、ユーザがゲームにトークンを預ける、ゲームからトークンを取り出すまたはその他のトランザクションを行う際に分散型トランザクション手数料が発生したとしても、ゲーム内の各交換(例えば、集中型ゲームデータベースが管理するトランザクション)に関連する分散型トランザクション手数料は必ずしも発生しない。
【0034】
トランザクションは、(ゲーム環境における)集中型データベースシステムが管理するトランザクション、分散型ブロックチェーン(またはその他のDLT)ネットワークが管理するトランザクション、および、ボールトスマートコントラクトが管理するトランザクションに分類することができる。
【0035】
このハイブリッドなトランザクション管理方法の利点を実現するために、本発明では一連の技術を使用することを考えている。これらの技術については、以下で説明するが、要点としては、これらの技術は集中管理されるゲーム環境とブロックチェーンネットワークとの間をつなぐインタフェースを提供する。インタフェースコンポーネントは、ファシリテータおよびボールト(vault)スマートコントラクトを含む。これにより、プレーヤが既にウォレットに持っているトークンをボールト(vault:金庫)に預け、そのゲーム資産をプレーヤのゲーム内インベントリに反映させることができる。
【0036】
ブロックチェーンネットワークは、分散型ネットワークであってもよい。例えば、ブロックチェーンネットワークは、イーサリアムに基づくネットワークであってもよい。ゲーム環境は、ゲーム資産に対してゲーム内アイテムIDを使用する、ゲームインベントリ管理機能を含むゲーム内管理システムを有するオンライン環境であってもよい。ゲーム資産の少なくとも一部は、トークンがゲーム資産の所有権を表すようにトークン化されていてもよい。オペレーションの例としては、ブロックチェーンネットワークとファシリテータとの間の通信、および、ゲーム環境とファシリテータとの間の通信が含まれる。
【0037】
プレーヤがトークン化された新しいブロックチェーンゲーム資産の取得を望んだ時、通常はプレーヤの暗号ウォレットにトークンが配信されることになり、トークン取引にはネットワークトランザクション手数料が発生し、ユーザは通常、事前に暗号ウォレットを作成しておく必要がある。
【0038】
これに代えて本発明の技術を使用した場合、プレーヤが新しいブロックチェーンゲーム資産の取得を望む時は、トークン(既に存在する場合)はボールトスマートコントラクトに格納され、ファシリテータは集中型ゲームデータベースと通信して、トークンがプレーヤのウォレットに転送されることなくゲーム資産がプレーヤのゲームインベントリアカウントに記録されるようにする。プレーヤがゲームからゲーム資産を引き出すと決定した時または場合は、ファシリテータは集中型ゲームデータベースにメッセージを送信し、このトランザクションの前にプレーヤがゲーム資産を所有し続けていることがプレーヤのゲームアカウントに実際に反映されているかどうかを判断する。反映されていない場合は、トランザクションが拒否される。反映されている場合は、集中型ゲームデータベースは、プレーヤがゲーム資産をトランザクションすることをロックするまたはその他の方法で阻止する。ロックが行われたら、ファシリテータにこのことを確認する。ファシリテータは、ボールトスマートコントラクト(以下に詳細に説明する)と通信し、スマートコントラクトは、(まだ作成されていない場合)トークンを作成して(新しく作成されたまたは以前から存在していた)トークンを指定されたウォレットに転送することができる。このトランザクションが正常に完了した場合、ファシリテータは集中型ゲームデータベースにメッセージを送り、集中型ゲームデータベースは対応するゲーム資産のステータスをロックから譲渡に変更する等してプレーヤのアカウントを更新し、プレーヤがもはやゲーム資産を所有していないことを反映させる。その結果、そのアイテムはプレーヤのアカウントのゲーム内インベントリから削除される。
【0039】
以下の
図1は、スマートコントラクトによって管理されるトークン化されたブロックチェーンゲーム資産の保管、発行および取引に使用できる本発明の一態様の全体的なアーキテクチャを示すハイレベルブロック図である。全体的なシステムとして、ボールトスマートコントラクトモジュール、ファシリテータ(インデクサ(indexer)およびデータベースを含む)、ファシリテータとの通信を確立した一つまたは複数のゲーム環境、および、ゲームインベントリ管理システムを備えてもよい。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のユーザウォレットが、一人のまたは複数のプレーヤに帰属してもよい。
【0040】
プレーヤは、一つ以上のグラフィカル・ユーザ・インタフェース(
図1には示されていない)を使用して、トランザクションを指定することができる。グラフィカル・ユーザ・インタフェースは、プレーヤが、ボールト(vault)アカウントを作成および管理、一つまたは複数のウォレットをボールトアカウントに関連付ける、トークンを取得、預入および引出することを可能にする。例えば、ユーザがボールトアカウントを作成してウォレットを(持っていれば)関連付けると、ユーザは、ウォレットのアイコンを選択し、選んだゲームに預け入れる一つ以上のトークンを選択し、本明細書に記載されているように入金トランザクションを実行させるように選択可能となる。また、プレーヤは、ウォレットを持っているかどうかにかかわらず、本明細書に記載されているように、インタフェースを介してトークンを取得することができる。また、プレーヤはグラフィカル・ユーザ・インタフェースを使用して、ゲーム資産を選択し、トークンの転送先となるウォレットのアイコンを指定することで、ゲームからゲーム資産を引き出すことができる。上記の一つの利点は、複雑なウォレットアドレスではなく、ユーザが、ウォレットのアイコンを選択してトランザクションで使用するウォレットを指定できることである。
【0041】
ファシリテータは、本明細書に記載されているような、より効率的な方法でゲーム資産をゲーム環境に出し入れすることを可能にしてもよい。ファシリテータは、インデクサとデータベースとを備えてもよい。インデクサは、ボールトスマートコントラクトとやりとりして、イベントを検出してもよい。イベントは、トークンの預け入れ、取得および/もしくは引き出し、ならびに/または、その他のイベントに関連していてもよい。データベースは、イベントデータおよびその他の情報を格納してもよい。
【0042】
ボールトスマートコントラクトは、ゲーム資産がプレーヤのゲームインベントリにある間は、プレーヤに帰属するトークンを「ロック」してもよい。トークン化されたゲーム資産がゲーム環境に移動された後では、ゲームインベントリ管理システムは、対応するトークンをトランザクションの一部として転送する必要なく、(集中型データベースを介して)そのトランザクションを発生させることを可能にしてもよい。
【0043】
本明細書でさらに詳述するように、プレーヤが新しいゲーム資産の取得を望む場合、ファシリテータは取得を容易にしてもよい。本明細書で説明するように、本発明の側面は、ユーザがウォレットを持っていなくても、トークン化されたゲーム資産を取得することを可能にできる。ゲーム内管理システムとの通信により、ファシリテータは、ゲーム資産をゲーム環境に移動させてプレーヤのゲーム内インベントリに含めることを可能にしてもよく、その際にトークンを作成する必要はない。むしろ、プレーヤがゲーム環境からゲーム資産を引き出すことを望む時まで、トークンの作成を延期することができる。
【0044】
本明細書でさらに詳しく説明するが、ユーザがトークン化されたゲーム資産を表す既存のトークンを既に持っている場合、ファシリテータは、トークンをボールトスマートコントラクトにロックしたまま、当該ゲーム資産をゲーム環境に預けてプレーヤのゲームアカウントのインベントリに含めることを容易にしてもよい。
【0045】
以下でさらに説明するように、インデクサは、スマートコントラクトに関して発生するイベントを検出するのに使用されてもよい。イベントデータおよびその他のデータは、ファシリテータデータベースに格納されてもよい。
【0046】
図2は、ボールトアプリケーションのグラフィカルユーザインタフェース要素の側面のハイレベル表現を示したものである。簡略化のために一つのUIを示しているが、ここで説明した機能を実現するために複数のUIを使用してもよい。
【0047】
プレーヤは、ボールトアカウントを作成し、グラフィカルユーザインタフェースを含むコンピュータに実装されたソフトウェアアプリケーションを介して自分のボールトにアクセスできる。グラフィカルユーザインタフェースは、ボールトインタフェースを介してアクセス可能な一つまたは複数のデジタル資産市場から入手可能なデジタル資産を表す少なくとも一つのUIを含んでもよい。インタフェースの一つまたは複数は、プレーヤがプレーヤのボールトアカウントを作成および/またはボールトアカウントとやりとりすることを可能にする少なくとも一つのUIを含んでもよい。インタフェースの一つまたは複数は、プレーヤがウォレットを作成および/またはボールトアカウントとやりとりすることを可能にする少なくとも一つのUIを含んでもよい。プレーヤが一つまたは複数のウォレットを持っている場合、プレーヤは当該ウォレットをボールトアカウントに関連付けることができる。これにより、プレーヤは、ボールトインタフェースを介して、トークンをウォレットから自分のボールトへと、および、自分のボールトからウォレットへと、より簡単に移動させることができる。プレーヤがウォレットを持っていない場合でも、後述するように、プレーヤはボールトを使用してトークン化されたゲーム資産を取得することができる。プレーヤは、インタフェースから一つまたは複数のデジタル資産を選択して取得することができ、ボールトインタフェースは、プレーヤがデジタル資産に対応するトークンを取得しプレーヤのボールトに預けるの容易にしてもよい。デジタル資産をプレーヤのボールトに入れた後、プレーヤはボールトインタフェースを介して、当該デジタル資産をゲーム内へと移動させたり、自分のウォレット(持っている場合)や他のウォレットに移したりすることができる。また、プレーヤは、ボールトインタフェースを介して、プレーヤのウォレットからゲームへと、自分のボールトへとまたは他のウォレットへとデジタル資産を転送することができます。プレーヤがボールトアカウントを作成しウォレットを関連付けた後、ボールトアプリケーションインタフェースにより、プレーヤはデジタル資産を取得し、デジタル資産を自分のボールトとウォレットとの間で移動させたり、ゲームに出し入れさせたりすることが非常に容易になる。ボールト表示要素が選択されると、ボールトアプリケーションは、プレーヤのボールト内の資産を表示してもよい。表示されると、プレーヤは自分の資産の一つまたは複数選択してトランザクションを行うことができる。ウォレット表示要素が選択されると、ボールトアプリケーションは、プレーヤのウォレット内の資産を表示してもよい。表示されると、プレーヤは自分のウォレットの資産の一つまたは複数選択してトランザクションを行うことができる。
【0048】
ボールトアプリケーションは、バックエンドでデジタル市場、ウォレットおよびゲーム在庫管理システムに接続できる。これらのボールト機能の使用を可能とするべく、これら接続のセットアップを事前に確立してもよい。
【0049】
例として、UIは、プレーヤのボールトを選択して操作するための表示要素、プレーヤのウォレットを選択して操作するための表示要素、転送アイテムコントロールを選択して操作するための表示要素、および、デジタル資産の市場を選択して操作するための表示要素を有してもよい。
【0050】
図3から
図5は、様々な使用例に応じて、ユーザがゲームアカウントのインベントリへとまたはから、トークン化されたゲーム資産をインポートおよびエクスポートするプロセスの例を示した図である。
[シナリオ1:既存のトークンを預ける]
【0051】
あるシナリオでは、ユーザはすでにトークン化されたゲーム資産(ウォレットに関連付けられている)を持っており、ゲーム資産をゲーム環境にインポートしてプレーヤのゲームアカウントインベントリに含めることを望んでいる。
1.ユーザがトークンを預けることを希望する場合、ボールトは、トークン預け入れメッセージをトークンIDおよび受取人と共に、ファシリテータに送信する。受取人とは、ゲーム資産が関連付けられるプレーヤまたはプレーヤアカウントである。ボールトは、ボールトスマートコントラクトにおける該当するトークンを効果的にロックする。ボールトはそのトークンの保管場所となる。トークンおよびボールトは、イーサリアムネットワーク等の分散型環境と互換性を有してもよい。
2.ファシリテータは、トークンのインポートおよびエクスポートに関して、イーサリアムネットワーク/ボールトコントラクトからイベントをプルする。例えば、トークンがボールトに預けられたことを認識します。
3.トークンがボールト内でロックされると、ファシリテータはゲーム内管理システムと通信して、預け入れられたトークンに対応するゲーム資産を受取人のゲームアカウントインベントリに追加する。
4.プレーヤは、そのような操作のためにトークンを処理する必要なく、ゲーム内でゲーム資産に関する操作を実行することができる。プレーヤのインベントリにアイテムがあるため、アイテムに対応するトークンがボールトスマートコントラクトにロックされた状態であっても、ゲーム環境内でアイテムを使用できる。
[シナリオ2:ゲームからゲーム資産を引き出す]
【0052】
別のシナリオでは、ユーザは、ゲーム資産をゲームから引き出し、対応するトークンを指定されたウォレットに送信すると決定してもよい。
1.ユーザがゲームからゲーム資産を引き出することを(例えば、ゲームからゲーム資産を引き出すオプションを選択し、ウォレットを指定することにより)選択すると、ボールトはトークンIDおよび指定されたウォレットの宛先アドレスと共に引き出しメッセージをファシリテータに送信する。
2.ファシリテータは、ゲーム管理システムと通信して、ゲーム資産がプレーヤのインベントリに存在するか否かを確認する。存在する場合、ゲーム管理システムはゲーム資産をロックして、そのゲーム資産とのそれ以上のゲーム内トランザクションを阻止する。
3.ファシリテータは、ユーザがゲーム資産をインベントリに持っているという確認を受け取った場合、ファシリテータはボールトコントラクトにメッセージを送信する。
4.ボールトコントラクトは(既に存在する場合)トークンのロックを解除し、指定されたウォレットにトークンを転送する。トークンが存在しない場合、トークンが作成された後に、指定されたウォレットに転送される。
5.その後、ゲーム資産はプレーヤのゲーム内インベントリから削除される。
[シナリオ3:作成する場合]
【0053】
別のシナリオでは、リクエストに応じて、ファシリテータはボールトと通信してゲーム資産に対応する新しいトークンを作成することができる。リクエストを受けて、ゲームは、ファシリテータにアイテムを作成するようリクエストする作成要求メッセージを生成し、ファシリテータに送信してもよい。ファシリテーターは、作成メッセージを生成し、トークン情報と共にメッセージをボールトに送信してもよい。必要なトークン情報はトークンによって異なるが、契約アドレスおよびIDが含まれてもよい。ボールトスマートコントラクトはトークンを作成し、ファシリテータに伝達されるトークンIDを提供する。ファシリテータはメッセージを作成して送信し、ゲーム資産をユーザIDに関連付けられたプレーヤのゲーム内インベントリに関連付ける。データベースには、アイテムIDおよびトークンIDが格納される。これにより、特定されたユーザがインベントリを介してゲーム資産を利用できるようになり、トークンがスマートコントラクトにロックされている間、ユーザはゲーム内のアイテムにアクセス、使用および取引できる。まだ作成されていないトークンの引き出し要求に応答してトークンが作成されている場合、スマートコントラクトがトークンを作成すると、指定されたウォレットに当該トークンを送信できる。
【0054】
ボールトは、プレーヤがブロックチェーン摩擦を取り除くためのNFT(ERC20トークン等)を保持するカストディアンエクスチェンジとして機能してもよい。この場合、プレーヤは、希少なブロックチェーンゲーム資産を所有、ゲーム内での使用、および、インスタントトレードを実行できる。ファシリテータは、プレーヤが資産をゲーム環境の内外に転送できるようにするメカニズムを提供してもよい。ボールトは、ERC721標準、ERC1155標準および/または他のNFT標準に準拠するNFTをサポートしてもよい。
【0055】
ファシリテータは、一つまたは複数のゲーム内管理システムと互換性を有してもよい。ファシリテータは、ボールトイベントに応対し、ボールトにアクセスするためのインタフェースの画定も担当する。ファシリテータは、どのゲーム内管理システムが使用されているか、または、インベントリシステムが内部でどのように機能するかに関して、ボールトが不可知であることを許容してもよい。
[使用例]
スマートコントラクト
●SCUC1:ボールトスマートコントラクトとして、EOA(外部所有アカウント)およびCA(契約アカウント)からNFTを受け取ることができる。
1.プレーヤは、自分のアカウントからボールトアドレスにトランザクションを送信する。
2.ボールトコントラクトは、NFTをユーザにマップするイベントを発行する。
●SCUC2:ボールトスマートコントラクトとして、EOAおよびCAにNFTを送信できる。
1.NFTを特定のアドレスに転送するために、トランザクションがボールトコントラクトに送信される。
2.ボールトコントラクトは、ユーザへのNFTのマッピングを削除するイベントを発行する。
[インデクサ使用例]
●IUC1:インデクサとして、ボールトアドレスへのまたはからのNFT転送にインデックスを付けて、所有権を定義できる。
1.転送イベントが監視される。
2.インデクサは、転送インまたは転送アウトに関連するデータを正規化することにより、イベントをデータベースに格納する。
●IUC2:インデクサとして、新しいイベントをボールトに通知する必要がある。
[ボールト]
ボールトアプリケーション(VA)は、ハードウェアプロセッサ(図示せず)上で実行され、ボールトとやりとりすることを希望しているゲームまたは他のソフトウェアとインタフェースする。複数のNFTコントラクトおよびコレクションをサポートするには、セットアップ操作の一部として、ボールト事前作成システムに準拠するようにコントラクトインタフェースを実装する必要がある。このインタフェース(スマートコントラクト)はNFTファクトリとして機能する。様々に実装可能である。以下は単なる例であり、本発明はこれらの実装に限定されない。
●VAUC1:VAとして、NFTを事前に作成するためのエンドポイントを提供できる。
1.UIは、ユーザに対してNFTの作成を希望している。
2.UIは、契約アドレス、ユーザIDおよびオプションIDを使用して@POSTリクエストをVAに送信する。
3.ユーザは、NFTが作成され使用可能となったことを通知する電子メールを受信する。
●VAUC2:VAとして、ボールトからNFTを転送するためのエンドポイントを提供できる。
1.UIは、NFTコントラクトアドレス、NFT IDまたはミントID、受信者アドレス、ユーザIDおよび署名済メッセージを使用して、@POSTリクエストをVAに送信する。
2.VAは転送を確認するために、ユーザの電子メールアカウントに電子メールを送信する。
3.ユーザは電子メールを開き、確認ボタンをクリックする。
4.VAは確認を受信し、NFTを受信者アドレスに送信する。
●VAUC3:VAとして、ユーザが所有するNFTを返すエンドポイントを提供できる。
1.UIは、@GETリクエストをVAに送信して、ユーザが所有するNFTを取得する。
2.VAは、リクエストを行っているユーザが所有するNFTを返す。
[NFTファクトリ(NF)]
NFTファクトリは、実際のNFTコントラクトと相互作用して、新しい資産を事前に作成できる場合にそれらを作成するコントラクトである。実際のNFTコントラクトが必要な機能をサポートしていない場合。
●NFUC1:NFとして、NFインタフェースで定義された関数を実装する。
●NFUC2:NFとして、NFTを作成するべく、ERC721コントラクトに許可されている唯一の住所でなければならない。
●NFUC3:NFとして、DVAアドレスからNFTを作成する呼び出しのみを受け入れる。
【0056】
本明細書において説明される種々の命令によって提供される機能性の説明は例示を目的としたものであり、限定を意図したものではない。命令は何れも説明されるよりも多くのまたは少ない機能性を提供してもよい。例えば、それらの命令のうちの一つまたは複数を取り除いてもよく、その機能性の一部または全てを、それらの命令のうちの他の命令で提供してもよい。
【0057】
本開示の態様は、一つまたは複数のコンピュータプロセッサによって読み取られて実行され得る、機械可読媒体に格納された命令として実装されてもよい。機械可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ装置)によって読み取り可能な形式の情報を保存し伝送する任意のメカニズムを含む。例えば、機械可読記憶媒体は、ROM、RAM、磁気ディスクストレージ媒体、光学ストレージ媒体、フラッシュメモリ装置等のストレージメディアを含む。また、機械可読伝送媒体は、搬送波等の伝搬信号、赤外線信号、デジタル信号またはこれら以外の伝送媒体を含む。本開示において、ファームウエア、ソフトウエア、ルーチンまたは命令は、所定の動作を実行する特定の例示的な態様及び実装形態及びの観点から説明されている。
【0058】
本明細書の記載の十分な理解をもたらすために、説明を目的として多くの具体的な詳細事項が明記された。ただし、本開示の実施形態はこれらの詳細事項の一部なしに実施可能であることは当業者には明らかであろう。場合によっては、説明が不明瞭にならないように、モジュール、構造、プロセス、機能およびデバイスがブロック図形式で示されている。また、機能ブロック図およびフロー図により、データおよび論理フローが表されている。ブロック図およびフロー図の構成要素(例えば、モジュール、ブロック、構造、デバイス、機能等)は、本明細書に明示的に記載および図示されている以外の方法で、様々に組み合わせ、分離、除去、並べ替えおよび置き換え可能である。
【0059】
本明細書における「一つの実施形態」、「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「様々な実施形態」、「特定の実施形態」、「他の実施形態」、「一連の実施形態」等の言葉は、実装に関連して説明された、特定の機能、設計、構造または特性が、本開示の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。例えば、明細書における様々な箇所で「一つの実施形態において」または「ある実施形態において」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではなく、他の実施形態を相互に排除する別個のまたは代替の実装でもない。さらに、「実施形態」等の明示的な言及があるかどうかにかかわらず、様々な機能が説明され、それらは、様々に組み合わされ、いくつかの実装に含まれ得るが、他の実装では様々に省略されてもよい。同様に、いくつかの実施形態においては望ましいまたは必要条件である可能性があるが、他の実施形態においてはそうでない様々な特徴についても説明されている。
【0060】
本明細書で使用される言語は、主に読みやすさおよび教示目的のために選択されており、本発明の主題を描写または制限するために選択されていない可能性がある。本発明の他の実施形態、使用法、および利点は、本明細書を考慮し、本明細書に開示された発明の実施を通じて、当業者に明らかになるであろう。本明細書は例示に過ぎず、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲に基づいてのみ限定されることが意図されている。
【外国語明細書】