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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023807
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】QOL改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20220201BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220201BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20220201BHJP
   A23L 2/02 20060101ALN20220201BHJP
   A23L 2/38 20210101ALN20220201BHJP
【FI】
A23L33/135
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/02 B
A23L2/38 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117733
(22)【出願日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2020126211
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504136993
【氏名又は名称】独立行政法人国立病院機構
(71)【出願人】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 憲広
(72)【発明者】
【氏名】柿山 明香
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 幸司
(72)【発明者】
【氏名】水澤 直美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修一
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD52
4B018MD86
4B018ME07
4B018ME14
4B018MF13
4B117LE10
4B117LG02
4B117LG05
4B117LK12
4B117LK23
4B117LP05
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】日常的に摂取することが容易なQOL改善剤を提供する。
【解決手段】乳酸菌を有効成分とするQOL改善剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌を有効成分とするQOL改善剤。
【請求項2】
乳酸菌が、ラクチプランチバチルス・プランタルムである請求項1に記載のQOL改善剤。
【請求項3】
乳酸菌が、ラクチプランチバチルス・プランタルムYIT 0132(FERM BP-11349)である請求項1に記載のQOL改善剤。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1に記載の乳酸菌を用いた乳酸菌発酵果汁を有効成分とするQOL改善剤。
【請求項5】
果汁が、柑橘類の果汁である請求項4に記載のQOL改善剤。
【請求項6】
果汁が、ミカン属の柑橘類の果汁である請求項4に記載のQOL改善剤。
【請求項7】
花粉症に罹患している動物のQOLを改善するものである請求項1~6の何れか1に記載のQOL改善剤。
【請求項8】
QOLが、社会活動、日常活動、戸外活動、睡眠、身体および精神生活に関するQOLからなる群から選ばれる1種または2種以上である請求項1~7の何れか1に記載のQOL改善剤。
【請求項9】
QOLが、社会活動、日常活動、戸外活動、睡眠、身体および精神生活に関するQOLである請求項1~8の何れか1に記載のQOL改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌を有効成分とするQOL改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
QOL(quality of life)は、「生活の質」等と訳され、ヒト等の動物の身体的な苦痛の軽減、精神的、社会的活動を含めた総合的な活力、生きがい、満足度という意味が含まれる。
【0003】
このQOLを改善することは、ヒト等の動物の生活の質の向上につながるが、これまで提案されているQOL改善剤としては、例えば、コエンザイムQ10を有効成分とするもの(特許文献1)、含硫アミノ酸を有効成分とするもの(特許文献2)等が知られている。
【0004】
しかしながら、上記有効成分は風味等に問題があり、これを日常的に摂取するためには、種々の工夫をする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-179592号公報
【特許文献2】特開2018-150283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、日常的に摂取することが容易なQOL改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、乳酸菌が、日常的に摂取することが可能であり、かつ、QOLを改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すわなち、本発明は、乳酸菌を有効成分とするQOL改善剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のQOL改善剤は、これまでにも食経験のある乳酸菌を有効成分とするものであり、安全で日常的に摂取することが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のQOL改善剤は、乳酸菌を有効成分とするものである。乳酸菌は、特に限定されず、例えば、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・デルブルッキィー サブスピーシーズ.ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキィー サブスピーシーズ.デルブルッキィー(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・マリ(Lactobacillus mali)、ラクトバチルス・プランタルム(ラクトバチルス・プランタルム)(Lactobacillus plantarum)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・プランタルム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ラフィノラクチス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等のエンテロコッカス属細菌を挙げることができ、これらの乳酸菌を1種または2種以上用いることができる。
【0011】
なお、近年ラクバチルス属の乳酸菌は再分類されている(Zheng et al., A taxonomic note on the genus Lactobacillus : Description of 23 novel genera, emended description of the genus Lactobacillus Beijerinck 1901, and union of Lactobacillaceae and Leuconostocaceae. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 2020 Apr; 70(4):2782-2858 DOI 10.1099/ijsem.0.004107)。上記ラクトバチルス属の乳酸菌の分類について、上記文献に基づいて再分類すると以下のようになる。
【0012】
【表1】
【0013】
新分類による乳酸菌としては、ラクチカゼイバチルス・カゼイ(Lacticaseibacillus casei)等のラクチカゼイバチルス属細菌、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・デルブルッキィー サブスピーシーズ.ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキィー サブスピーシーズ.デルブルッキィー(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、等のラクトバチルス属細菌、リジラクトバチルス・サリバリウス(Ligilactobacillus salivarius)等のリジラクトバチルス属細菌、リモシラクトバチルス・ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)等のリモシラクトバチルス属細菌、リコリラクトバチルス・マリ(Liquorilactobacillus mali)等のリコリラクトバチルス属細菌、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)等のラクチプランチバチルス属細菌等、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・プランタルム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ラフィノラクチス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等のエンテロコッカス属細菌を挙げることができ、これらの乳酸菌を1種または2種以上用いることができる。
【0014】
なお、本発明においては、旧分類でラクトバチルス属の乳酸菌がラクトバチルス属の乳酸菌として含まれる。
【0015】
これらの中でもラクチプランチバチルス・プランタルムが好ましく、ラクチプランチバチルス・プランタルムYIT 0132(FERM BP-11349)が特に好ましい。
【0016】
ラクチプランチバチルス・プランタルムYIT 0132は、Lactiplantibacillus plantarum YIT 0132と名付け(旧分類ではラクトバチルス・プランタルムに属し、Lactobacillus plantarum YIT 0132である)、寄託番号FERM BP-11349として平成22年2月24日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に国際寄託されている。
【0017】
乳酸菌の形態は特に限定されず、生菌体であっても死菌体であってもよく、また湿潤菌体でも乾燥菌体でもよい。また、乳酸菌は培養物やその濃縮物、乾燥物等として用いてもよく、菌体の破砕物や抽出物等の菌体処理物であってもよい。
【0018】
本発明のQOL改善剤は、上記乳酸菌に、必要に応じ、薬学的に許容される担体と組み合わせて製剤化できる。
【0019】
薬学的に許容される担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。さらに必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0020】
本発明のQOL改善剤の剤型は特に限定されないが、例えば、液剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、坐剤、外用剤等が挙げられ、常法に従って調製することができる。
【0021】
本発明のQOL改善剤における乳酸菌の含有量は特に限定されるものではないが、QOL改善効果がより有効に発揮されることから、QOL改善剤に含まれる生菌数は10cfu/g以上であることが好ましく、特に10cfu/g~1010cfu/gであることが好ましい。投与方法は経口投与及び非経口投与のいずれでもよいが、投与が容易であり、長期の投与に適しているため経口投与が好ましい。また、その投与量も特に限定されるものではないが、乳酸菌の総菌数として、好ましくは1日当たり10cfu以上、より好ましくは1010cfu以上であり、さらに好ましくは1011cfu以上であり、特に好ましくは1011~1012cfuである。
【0022】
本発明のQOL改善剤は、飲食品の形態でもよく、上記乳酸菌に、公知の食品添加物及び/又は食品素材を配合し、常法に従って調製することができる。その形態は特に限定されず、例えば、液状、錠剤、カプセル、ペースト、顆粒等とすることができる。飲食品としては、発酵乳飲食品、発酵豆乳、発酵果汁、発酵野菜汁等の発酵飲食品、パン、ビスケット、ホットケーキ、麺、錠菓等のデンプンを主体とする食品、ガム、キャンディー、和菓子等の菓子類、ハム、ソーセージ等の畜肉食品、ちくわ、かまぼこ等の魚肉食品、魚介類食品、ドレッシング、醤油、ジャム、ふりかけ等の調味料、茶、ジュース、清涼飲料、酒類等の飲料等が挙げられる。これらの中でも発酵飲食品が好ましく、発酵果汁がより好ましく、乳酸菌発酵果汁がさらに好ましい。
【0023】
上記した乳酸菌発酵果汁は、果汁を乳酸菌で発酵して得られるものであって、乳酸菌を含有しているものをいう。
【0024】
ここで果汁としては、特に限定されないが、例えば、バナナ、リンゴ、ブドウ等の果汁やオレンジ、温州ミカン等のミカン属の柑橘類の果汁等が挙げられる。これらの中でも柑橘類の果汁が好ましく、ミカン属の柑橘類の果汁がより好ましい。果汁のBrixは特に限定されないが、例えば、1~10、好ましくは2~8である。
【0025】
果汁を乳酸菌で発酵させる条件は特に限定されないが、例えば、果汁に乳酸菌を0.1~3.0%、好ましくは0.2~1.0%で接種し、30~37℃、好ましくは33~37℃で、24~48時間、好ましくは36~48時間で培養すればよい。
【0026】
また、培養の際には、果汁にレタス、キャベツ、ニンジン、ケール等の野菜汁、牛乳、生クリーム、脱脂粉乳、全粉乳等の乳成分を添加してもよい。
【0027】
培養後には、風味を調整するために、果糖、ショ糖、ブドウ糖、マルトース、スクラロース、ステビア等の甘味料、pH調整剤等を添加してもよい。
【0028】
乳酸菌発酵果汁は、従来公知の果汁と同様に、濃縮、粉末化、冷凍化等してもよい。
【0029】
また、乳酸菌発酵果汁は、常温保存できることから加熱殺菌をして、乳酸菌を死菌とすることが好ましい。加熱殺菌の条件は、特に限定されないが、例えば、95~100℃で5~60秒等である。
【0030】
乳酸菌発酵果汁の好ましい態様としては、温州ミカンの果汁(Brix1~10)にラクチプランチバチルス・プランタルムYIT 0132を0.4%となるように接種し、好気の条件で発酵させ、最後に加熱殺菌したものである。この乳酸菌発酵果汁は死菌のラクチプランチバチルス・プランタルムを5.0×10cfu/mlで含むものである。
【0031】
斯くして得られる本発明のQOL改善剤は、種々のQOL、例えば、社会活動、日常活動、戸外活動、睡眠、身体および精神生活に関するQOLから選ばれる1種または2種以上を改善することができ、好ましくはこれらの全てのQOLを改善することができる。より詳細には、社会活動に関するQOLとは、人付き合いの支障、他人との会話、電話の支障、まわりの人が気になる等であり、日常活動に関するQOLとは、記憶力低下、仕事や勉強への支障、精神集中不良、思考力の低下、新聞や読書の支障等であり、戸外活動に関するQOLとは、野外活動の支障、外出の支障等であり、睡眠に関するQOLとは睡眠障害等であり、身体に関するQOLとは倦怠、疲労であり、精神生活に関するQOLとは、気分が晴れない、いらいら感、憂鬱、生活に不満足等のQOLのことである。本発明のQOL改善剤は、特に記憶力低下、野外活動の支障、外出の支障、睡眠障害、倦怠感、気分が晴れない、いらいら感、疲労から選ばれる1種または2種以上のQOLを改善することができ、好ましくは倦怠感、気分が晴れないというQOLを改善することができる。また、本発明のQOL改善剤は、これらQOLの改善の中でも花粉症に罹患している動物のQOLを改善することが好ましく、特に、花粉症に罹患している動物の日常活動、戸外活動、睡眠、身体および精神生活に関するQOLから選ばれる1種または2種以上を改善することが好ましい。さらに好ましくは、日常活動、戸外活動、睡眠、身体および精神生活に関するQOLの全てを改善することが好ましい。
【0032】
本発明のQOL改善剤の投与対象は動物であれば特に限定されず、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、牛、馬、羊等の哺乳動物等が挙げられる。本発明のQOL改善剤は特に花粉症に罹患している動物のQOLを改善することから、これらの動物の中でも花粉症に罹患するヒト、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ等の哺乳動物が好ましく、特にヒトが好ましい。
【0033】
本発明のQOL改善剤の投与量は特に限定されないが、例えば、QOL改善剤が乳酸菌発酵果汁を有効成分とする場合には、1日あたりの摂取量を125mlとして、1.0×10cfu/ml~1.0×1010cfu/ml、好ましくは5.0×10cfu/ml以上とする。
【実施例0034】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
実 施 例 1
被験飲料の調製:
温州ミカン(学名:Citrus unshiu)のBrix8の果汁(南海果工株式会社製)にラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)YIT 0132(FERM BP-11349)を、0.4%となるように接種した後、37℃、好気の条件で、2日間培養し、発酵物を得た。この発酵物に、果糖を3%となるように添加したものを100℃で35秒間加熱殺菌して、ラクチプランチバチルス・プランタルムの加熱死菌体を5.0×10cfu/mLで含む乳酸菌発酵果汁を得た。これを125mLずつ紙パックに充填して被験飲料を調製した。これを使用するまで常温で保存した。
【0036】
参 考 例 1
プラセボ飲料の調製:
温州ミカン(学名:Citrus unshiu)のBrix8の果汁(南海果工株式会社製)に、果糖を3%となるように添加したものを100℃で35秒間加熱殺菌して、プラセボ飲料を得た。これを125mLずつ紙パックに充填した。これを使用するまで常温で保存した。
【0037】
実 施 例 2
QOL改善試験(1):
実施例1の被験飲料および参考例1のプラセボ飲料を、下記のようにして選択された花粉症有症者50名ずつに、1日1本で8週間飲用させた(プラセボ対照無作為割付二重盲検並行群間比較試験)。日本アレルギー性鼻炎QOL標準調査票(JRQLQ NO.1:鼻アレルギー診療ガイドライン(2013年度版))に記載のQOLに関する質問6項目を以下の5領域に分類して、飲用期間前(1週間)および飲用期間中(8週間)、被験者は毎週JRQLQの調査票に、以下の評価基準で記入した。被験者ごとに8週間分のデータの平均値を算出し、発酵果汁群、プラセボ群それぞれの被験者全員の平均値を算出した。飲用期間中の各質問項目の平均値から飲用期間前の各質問項目の平均値を引き、プラセボ群(N=50)と発酵果汁群(被験飲料群)(N=50)で、二元配置分散分析を行った。これらの結果を表2に示した。
【0038】
<花粉症有症者の選択>
前年の花粉飛散シーズン(2月~4月)に花粉症症状を呈し、スギ特異的IgEがクラス2以上の者で、花粉症症状の程度が、質問票による昨シーズンの症状スコア(はなかみ(1日の回数)、くしゃみ(1日の回数)、鼻づまりによる口呼吸、鼻のかゆみ、目のかゆみ、涙目・充血について以下の評価基準で評価)が平均2以上の者を、花粉症有症者として選択した。
【0039】
<くしゃみ(1日の回数)、はなかみ(1日の回数)の評価基準>
0点:0回
1点:1-5回
2点:6-10回
3点:11-20回
4点:21回以上
【0040】
<鼻づまりによる口呼吸、鼻のかゆみ、目のかゆみ、涙目・充血の評価基準>
0点:なし
1点:ほとんどなし
2点:ときどき
3点:かなり強い
4点:1日中あり
【0041】
<QOL評価項目及び評価基準>
0点:なし
1点:軽い
2点:ややひどい
3点:ひどい
4点:とてもひどい
【0042】
(1)日常活動
記憶力低下
(2)戸外活動
野外活動の支障
外出の支障
(3)睡眠
睡眠障害
(4)身体
倦怠
(5)精神生活
気分が晴れない
【0043】
【表2】
【0044】
6個の質問項目について解析したところ、記憶力低下(日常活動)、野外活動の支障(戸外活動)、外出の支障(戸外活動)、睡眠障害(睡眠)、倦怠(身体)、気分が晴れない(精神生活)、のスコアにおいて、発酵果汁群はプラセボ群よりも低値を示し、発酵果汁の飲用によりQOLが改善していることが示された(表2)。
【0045】
実 施 例 3
QOL改善試験(2):
実施例1の被験飲料を、下記のようにして選択された鼻炎非発症者72名に、1日1本で8週間飲用させた。実施例2と同様に日本アレルギー性鼻炎QOL標準調査票(JRQLQ NO.1)に記載のQOLに関する質問4項目について、飲用期間前(1週間)および飲用期間中(8週間)、被験者は毎週JRQLQの調査票に、実施例2と同様の評価基準で記入した。被験者ごとに8週間分のデータの平均値を算出し、発酵果汁群、プラセボ群それぞれの被験者全員の平均値を算出した。これらの結果を表3に示した。
【0046】
<鼻炎非発症者の選択>
アレルギー性鼻炎症状のない者。
【0047】
【表3】
【0048】
被験飲料の飲用後、疲労、倦怠、いらいら感、気分が晴れない、のQOLのスコアは飲用前と比べて低値となり、改善していた
【0049】
また、飲用期間中、1週間ごとに被験飲料の風味について、美味しい、普通、美味しくない、の3段階で評価してもらった。その結果、全ての週において85%以上が美味しいまたは普通の評価であり、継続して飲用が可能であった。
【0050】
実 施 例 4
乳酸菌発酵果汁の調製:
温州ミカン果汁をバレンシアオレンジに代えた以外は実施例1と同様の方法で乳酸菌発酵果汁を製造した。これを125mLずつ紙パックに充填した。
【0051】
実 施 例 5
乳酸菌含有果汁飲料の調製:
温州ミカン(学名:Citrus unshiu)のBrix8の果汁(南海果工株式会社製)に、果糖を3%、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)YIT 0132(FERM BP-11349)を0.4%となるように添加したものを100℃で35秒間加熱殺菌して、乳酸菌含有果汁飲料を得た。これを125mLずつ紙パックに充填した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のQOL改善剤は、記憶力低下、野外活動の支障、外出の支障、睡眠障害、倦怠、気分が晴れない、いらいら感、疲労等のQOLの改善に利用できる。