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特開2022-23813組換え生産されたRSVタンパク質の精製方法における陰イオン交換クロマトグラフィー用洗浄溶液の改良
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  • 特開-組換え生産されたRSVタンパク質の精製方法における陰イオン交換クロマトグラフィー用洗浄溶液の改良 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023813
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】組換え生産されたRSVタンパク質の精製方法における陰イオン交換クロマトグラフィー用洗浄溶液の改良
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/18 20060101AFI20220201BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20220201BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C07K1/18 ZNA
C07K1/22
A61K39/12
A61P31/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】37
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021120073
(22)【出願日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】63/056949
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】ジル アン クブルベック
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンドラ ペッタウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー リチャード サーム
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA51
4C085CC08
4C085DD34
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA20
4H045BA10
4H045CA01
4H045EA31
4H045GA23
(57)【要約】
【課題】本発明は、RSVタンパク質を含むローディング溶液を陰イオン交換クロマトグラフィー媒質と接触させ、その結果、RSVタンパク質を陰イオン交換クロマトグラフィー媒質に結合させ、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質を少なくとも1種の洗浄溶液で洗浄し、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質からRSVタンパク質を溶出させる、RSVタンパク質の精製方法に関する。
【解決手段】本発明によれば、洗浄溶液は、pHが3.0~6.5の間であり、その結果、宿主細胞タンパク質の除去が強化される。本発明はまた、このような方法によって精製されたRSVタンパク質を含む医薬製品も対象とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え生産されたRSVタンパク質を精製する方法であって、
a)採取された細胞培養液から得られ、RSVタンパク質を含むローディング溶液を、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質と接触させ、それによって、RSVタンパク質を陰イオン交換クロマトグラフィー媒質に結合させ、
b)陰イオン交換クロマトグラフィー媒質を、少なくとも1種の、pHが3.0~6.5の間であるより低いpH洗浄溶液で洗浄し、それによって、宿主細胞タンパク質の除去を強化し、
c)陰イオン交換クロマトグラフィー媒質からRSVタンパク質を溶出させる
陰イオン交換クロマトグラフィーステップを含む、方法。
【請求項2】
ローディング溶液のpHが、7.0~8.5の間、好ましくは、約7.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記より低いpH洗浄溶液のpHが、4.0~6.0の間、好ましくは、4.5~5.5の間、好ましくは、約5.0である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記より低いpH洗浄溶液が、酢酸塩を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記より低いpH洗浄溶液中の酢酸塩の濃度が、56mM~84mMの間、好ましくは、63mM~77mMの間、好ましくは、約70mMである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
RSVタンパク質を溶出させる前に、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質が、少なくとも、pHが7.0~8.0の間、好ましくは約7.5である第1のより高いpH洗浄溶液でさらに洗浄される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のより高いpHの洗浄溶液が、18mM~22mMの間、好ましくは、約20mMの濃度のトリスを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のより高いpHの洗浄溶液が、45mM~55mMの間、好ましくは、約50mMの濃度のNaClを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のより高いpH洗浄溶液を使用する洗浄ステップが、前記より低いpH洗浄溶液を使用する洗浄ステップより前に実施される、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
RSVタンパク質を溶出させる前に、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質が、少なくとも、pHが7.0~8.0の間、好ましくは約7.5である第2のより高いpH洗浄溶液でさらに洗浄される、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のより高いpHの洗浄溶液が、45mM~55mMの間、好ましくは、約50mMの濃度のトリスを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のより高いpHの洗浄溶液が、18mM~22mMの間、好ましくは、約20mMの濃度のNaClを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のより高いpH洗浄溶液を使用する洗浄ステップが、前記より低いpH洗浄溶液を使用する洗浄ステップの後に実施される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
RSVタンパク質が、7.0~8.0の間、好ましくは、約7.5のpHを有する溶出溶液で溶出される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶出溶液が、146mM~180mMの間、好ましくは、約163mMの濃度のNaClを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶出溶液が、18mM~22mMの間、好ましくは、約20mMの濃度のトリスを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
ローディング負荷が、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質1mlあたり7.5mg~15.0mgの間である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
cHAクロマトグラフィーステップをさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
HICクロマトグラフィーステップをさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記陰イオン交換クロマトグラフィー、cHAクロマトグラフィー、およびHICクロマトグラフィーステップが、この順序で順次実施される、請求項18と19に記載の組み合わされた方法。
【請求項21】
RSVタンパク質が、RSVサブグループAからのタンパク質である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
RSVタンパク質が、RSVサブグループBからのタンパク質である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
RSVタンパク質が、RSV Fタンパク質である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
RSV Fタンパク質が、融合前のコンフォメーションの状態である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
RSV Fタンパク質が、1つまたは複数の導入突然変異を含んでいる、いずれかのRSVサブグループについての野生型Fタンパク質の突然変異体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
RSV F突然変異体が、融合前のコンフォメーションの状態で安定化されている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
RSV F突然変異体が、抗体D25またはAM-14に特異的に結合する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
RSVタンパク質が、注射用医薬製品として使用されるように製剤化される、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法によって精製されたRSVタンパク質を含む医薬製品。
【請求項30】
RSVタンパク質が、RSVサブグループAからのタンパク質である、請求項29に記載の医薬製品。
【請求項31】
RSVタンパク質が、RSVサブグループBからのタンパク質である、請求項29に記載の医薬製品。
【請求項32】
RSVタンパク質がRSV Fタンパク質である、請求項29から31のいずれか一項に記載の医薬製品。
【請求項33】
RSV Fタンパク質が、融合前のコンフォメーションの状態である、請求項32に記載の医薬製品。
【請求項34】
RSV Fタンパク質が、1つまたは複数の導入突然変異を含んでいる、いずれかのRSVサブグループについての野生型Fタンパク質の突然変異体である、請求項33に記載の医薬製品。
【請求項35】
RSV F突然変異体が、融合前のコンフォメーションの状態で安定化されている、請求項34に記載の医薬製品。
【請求項36】
RSV F突然変異体が、抗体D25またはAM-14に特異的に結合する、請求項34または35に記載の医薬製品。
【請求項37】
RSVタンパク質が、注射用医薬製品として使用されるように製剤化されている、請求項29から36のいずれか一項に記載の医薬製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願は、EFS-Web経由で電子的に出願され、電子的に提出される.txtフォーマットの配列表を含む。.txtファイルには、2021年7月1日に作成され、サイズが1.24MBである「PC072530A_SeqListing_ST25.txt」という名称が付けられた配列表が収められている。この.txtファイルに収められた配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本文書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチンの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、陰イオン交換クロマトグラフィーステップを含む、組換え生産されたRSVタンパク質の精製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
治療または予防の目的のために使用されるものなどの組換えタンパク質は、遺伝子改変された宿主細胞において生産され、バイオリアクターから採取され、次いで、最終生産物の純度が高度になるように設計された制御された多段階工程において精製される。
【0004】
主な課題の一つは、不純物、特に、治療用タンパク質の生産に使用される宿主細胞によって発現されたタンパク質である残留宿主細胞タンパク質(HCP)の低減である。
【0005】
一方、規制の観点からは、すべてのバイオ医薬製品について、定められた許容HCPレベルにならなくてもよいのではあるが、個々の場合に応じて、関連する安全性リスクおよび有効性に対するマイナスの影響を最小限に抑えるために、HCPのレベルを最小限に抑えることが必要である。
【0006】
治療的または予防的に使用されるタンパク質の精製方法に含まれる従来のステップの一つは、目的タンパク質を含むローディング溶液が、たとえば、クロマトグラフィーカラムの中に配置された樹脂の形態の陰イオン交換クロマトグラフィー媒質に適用される、陰イオン交換クロマトグラフィーステップからなる。
【0007】
そのような陰イオン交換クロマトグラフィーカラムは、
-採取された細胞培養液から得られ、RSVタンパク質を含むローディング溶液を、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質と接触させ、その結果、RSVタンパク質を陰イオン交換クロマトグラフィー媒質に結合させ、
-陰イオン交換クロマトグラフィー媒質を、少なくとも、不純物を除去するための洗浄溶液で洗浄し、
-陰イオン交換クロマトグラフィー媒質からRSVタンパク質を溶出させる、
結合および溶出モードで操作することができる。
【0008】
当該タンパク質は、陰イオン交換体の操作pHが低下するにつれて、結合能力を失うことが一般に予想される。したがって、生産物結合を維持するために、このような方法では、pHが約7.0以上である洗浄溶液が通常は使用される。一般に認められている原理から、タンパク質は、pHが低下するにつれて、表面の負電荷がより弱くなり、したがって、タンパク質が媒質に結合する能力に影響が及ぶことが示唆されるため、より低いpH条件は、通常、陰イオン交換ステップには用いられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2017/109629
【特許文献2】WO2014/160463
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、本発明者らは、グリカンプロファイルにおいてシアル化を有するタンパク質は、余分の負電荷を有し、そのため、より低いpH条件でもタンパク質が陰イオン交換媒質に結合したままとなることが可能になることを見出した。タンパク質に対するグリカン修飾の一環としてのシアル酸分は、表面電荷の総量を増加させ、より低いpH範囲においてタンパク質結合を維持することがわかっている。
【0011】
本発明者らは、pH条件が、HCP低減の重要な要素であったこと、およびより低いpH条件での洗浄溶液の使用が、宿主細胞タンパク質の有効な除去を示したことも見出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質は、少なくとも1種の、pHが3.0~6.5の間であるより低いpH洗浄溶液で洗浄され、その結果、宿主細胞タンパク質の除去が強化される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、
-ローディング溶液のpHは、7.0~8.5の間、好ましくは、約7.5であり、
-前記より低いpH洗浄溶液のpHは、4.0~6.0の間、好ましくは、4.5~5.5の間、好ましくは、約5.0であり、
-前記より低いpH洗浄溶液は、酢酸塩を含み、
-前記より低いpH洗浄溶液中の酢酸塩の濃度は、56mM~84mMの間、好ましくは、63mM~77mMの間、好ましくは、約70mMであり、
-RSVタンパク質を溶出させる前に、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質は、少なくとも、pHが7.0~8.0の間、好ましくは約7.5である第1のより高いpH洗浄溶液でさらに洗浄され、
-前記第1のより高いpH洗浄溶液は、18mM~22mMの間、好ましくは、約20mMの濃度のトリスを含み、
-前記第1のより高いpH洗浄溶液は、45mM~55mMの間、好ましくは、約50mMの濃度のNaClを含み、
-前記第1のより高いpH洗浄溶液を使用する洗浄ステップは、前記より低いpH洗浄溶液を使用する洗浄ステップより前に実施され、
-RSVタンパク質を溶出させる前に、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質は、少なくとも、pHが7.0~8.0の間、好ましくは約7.5である第2のより高いpH洗浄溶液でさらに洗浄され、
-前記第2のより高いpH洗浄溶液は、45mM~55mMの間、好ましくは、約50mMの濃度のトリスを含み、
-前記第2のより高いpH洗浄溶液は、18mM~22mMの間、好ましくは、約20mMの濃度のNaClを含み、
-前記第2のより高いpH洗浄溶液を使用する洗浄ステップは、前記より低いpH洗浄溶液を使用する洗浄ステップの後に実施され、このようなさらなる洗浄ステップによって、一定のpHでの生成物溶出が可能になり、
-RSVタンパク質は、7.0~8.0の間、好ましくは、約7.5のpHを有する溶出溶液で溶出され、
-前記溶出溶液は、146mM~180mMの間、好ましくは、約163mMの濃度のNaClを含み、
-前記溶出溶液は、18mM~22mMの間、好ましくは、約20mMの濃度のトリスを含み、
-ローディング負荷は、陰イオン交換クロマトグラフィー媒質1mlあたり7.5mg~15.0mgの間からなり、
-方法は、cHAクロマトグラフィーステップをさらに含み、
-方法は、HICクロマトグラフィーステップをさらに含み、
-前記陰イオン交換クロマトグラフィー、cHAクロマトグラフィー、およびHICクロマトグラフィーステップは、この順序で順次実施され、
-RSVタンパク質は、RSVサブグループAまたはRSVサブグループBからのタンパク質であり、
-RSVタンパク質は、RSV Fタンパク質であり、
-RSV Fタンパク質は、融合前コンフォメーションの状態であり、
-RSV Fタンパク質は、1つまたは複数の導入突然変異を含んでいる、いずれかのRSVサブグループについての野生型Fタンパク質の突然変異体であり、
-RSV F突然変異体は、融合前コンフォメーションの状態で安定化され、
-RSV F突然変異体は、抗体D25またはAM-14に特異的に結合し、
-RSVタンパク質は、注射用医薬製品として使用されるように製剤化される。
【0014】
本発明のさらなる態様では、本発明の第1の態様に従う方法によって精製されたRSVタンパク質を含む医薬製品が提供される。
【0015】
一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、RSV Fタンパク質である。
【0016】
一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、RSVサブグループAからのRSV Fタンパク質である。
【0017】
一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、RSVサブグループBからのRSV Fタンパク質である。
【0018】
一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、融合前コンフォメーションの状態のRSV Fタンパク質である。
【0019】
一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、RSV F突然変異体タンパク質である。
【0020】
一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、融合前コンフォメーションの状態で安定化されたRSV F突然変異体タンパク質である。
【0021】
一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、三量体型のRSV F突然変異体タンパク質である。
【0022】
好ましい一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、三量体型であり、融合前コンフォメーションの状態で安定化された、RSV F突然変異体タンパク質である。
【0023】
最も好ましい一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、三量体型のRSV F突然変異体タンパク質であって、前記F突然変異体タンパク質のF1ポリペプチドのC末端に連結された三量体形成ドメインを含み、融合前コンフォメーションの状態で安定化されたRSV F突然変異体タンパク質である。
【0024】
特定の一実施形態では、前記三量体形成ドメインは、T4フィブリチンフォルドンドメインである。
【0025】
特定の一実施形態では、前記T4フィブリチンフォルドンドメインは、アミノ酸配列GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL(配列番号40)を有する。
【0026】
好ましい一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、抗体D25および/またはAM-14に特異的に結合するRSV F突然変異体である。本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、抗体D25およびAM-14に特異的に結合するRSV F突然変異体であることが好ましい。
【0027】
異なるRSVサブタイプからの多数の未変性RSV Fタンパク質のアミノ酸配列、およびそのようなタンパク質をコードする核酸配列が、当業界で公知である。たとえば、いくつかのサブタイプA、B、およびウシRSV F0前駆体タンパク質の配列が、WO2017/109629、配列番号1、2、4、6、および81~270に示されており、これらの配列を、本文書と共に提出される配列表に明記している。本明細書における配列番号への言及は、WO2017/109629における配列番号に対するものであり、その配列番号は、本明細書の一部として提出される.txtファイルに収められた配列表に含まれており、その配列表は、その全体が参照により本文書に援用される。
【0028】
未変性RSV Fタンパク質は、すべてのRSVサブタイプにわたる顕著な配列保存を示す。たとえば、F0前駆体分子全域において、RSVサブタイプAとBは、配列同一性が90%であり、RSVサブタイプAおよびBはそれぞれ、ウシRSV Fタンパク質との配列同一性が81%である。F0配列同一性は、RSVサブタイプ内ではいっそう高く、RSV A、B、およびウシそれぞれのサブタイプ内で、RSV F0前駆体タンパク質は、約98%の配列同一性を有する。特定されたRSV F0前駆体配列はほぼすべて、長さが574アミノ酸からなり、通常はC末端細胞質側末端の長さによる、長さの違いは軽微である。種々の未変性RSV Fタンパク質すべてにわたる配列同一性が、当業界で公知である(たとえば、WO2014/160463を参照されたい)。Fタンパク質の配列保存のレベルについてさらに例証するために、代表的なRSV A株およびRSV B株からのF0前駆体ポリペプチド配列における非コンセンサスアミノ酸残基が、それぞれ、WO2014/160463のTable17および18に示されている(非コンセンサスアミノ酸は、RSV A株からの選択されたFタンパク質配列を、ClustalX(v.2)を用いて整列化した後に特定された)。
【0029】
一部の詳細な実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、WO2017/109629において「改変ジスルフィド結合突然変異」と呼ばれる一対のシスチン突然変異を含むRSV F突然変異体であり、この突然変異体は、WO2017/109629のTable1および4~6に示されている例示的な突然変異体のいずれかにあるものと同じ導入突然変異を含む。WO2017/109629のTable1および4~6に示されている例示的なRSV F突然変異体は、102、379、および447位に3つの自然発生置換を有する、RSV A2株の同じ未変性F0配列(配列番号3)を主体としている。突然変異体のそれぞれにおける同じ導入突然変異を、他のいずれかのRSVサブタイプまたは株の未変性F0ポリペプチド配列に生じさせると、配列番号1、2、4、6、および81~270のいずれかに明記される未変性F0ポリペプチド配列などの、異なるRSV F突然変異体に到達しうる。他のいずれかのRSVサブタイプまたは株の未変性F0ポリペプチド配列を主体とし、改変ジスルフィド突然変異のいずれかを含むRSV F突然変異体も、本発明の範囲内にある。一部の特定の実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、S55CとL188C、S155CとS290C、T103CとI148C、L142CとN371Cなどの、55Cと188C、155Cと290C、103Cと148C、および142Cと371Cからなる群から選択される少なくとも1つの改変ジスルフィド突然変異を含むRSV Fタンパク質突然変異体である。
【0030】
他の実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、1つまたは複数の空隙充填突然変異を含むRSV F突然変異体である。用語「空隙充填突然変異」とは、野生型RSV Fタンパク質におけるアミノ酸残基の、成熟RSV Fタンパク質の内部空隙を満たすことが予想されるアミノ酸による置換を指す。一適用例では、そのような空隙充填突然変異は、RSV Fタンパク質突然変異体の融合前コンフォメーションの安定化に寄与する。RSV Fタンパク質の融合前コンフォメーションにおける空隙は、融合前コンフォメーションの状態にあるRSV Fの結晶構造の目視観察や、計算タンパク質設計ソフトウェア(たとえば、BioLuminate(商標)[BioLuminate、Schrodinger LLC、ニューヨーク、2015]、Discovery Studio(商標)[Discovery Studio Modeling Environment、Accelrys、サンディエゴ、2015]、MOE(商標)[Molecular Operating Environment、Chemical Computing Group Inc.、モントリオール、2015]、Rosetta(商標)[Rosetta、University of Washington、シアトル、2015])の使用などの、当業界で公知の方法によって特定することができる。空隙充填突然変異のために置き換えられるアミノ酸としては、通常、小さい脂肪族(たとえば、Gly、Ala、Val)または小さい極性アミノ酸(たとえば、Ser、Thr)が挙げられる。こうしたアミノ酸には、融合前コンフォメーションの状態では埋まっているが、後のコンフォメーションの状態では溶媒に曝されるアミノ酸も含まれうる。補充アミノ酸は、大きい脂肪族アミノ酸(Ile、Leu、Met)または大きい芳香族アミノ酸(His、Phe、Tyr、Trp)にすることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、RSV Fタンパク質突然変異体は、T54H突然変異を含む。
【0031】
一部の詳細な実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、
1)55、62、155、190、または290位にあるSのI、Y、L、H、またはMによる置換、
2)54、58、189、219、または397位にあるTのI、Y、L、H、またはMによる置換、
3)151位にあるGのAまたはHによる置換、
4)147または298位にあるAのI、L、H、またはMによる置換、
5)164、187、192、207、220、296、300、または495位にあるVのI、Y、Hによる置換、および
6)106位にあるRのWによる置換
からなる群から選択される1つまたは複数の空隙充填突然変異を含むRSV Fタンパク質突然変異体である。
【0032】
一部の詳細な実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、1つまたは複数の空隙充填突然変異を含むRSV F突然変異体であり、この突然変異体は、WO2017/109629のTable2、4、および6に示されている突然変異体のいずれかにある空隙充填突然変異を含む。こうしたTable2、4、および6に示されているRSV F突然変異体は、102、379、および447位に3つの自然発生置換を有する、RSV A2株の同じ未変性F0配列(配列番号3)を主体としている。突然変異体のそれぞれにおける同じ導入突然変異を、他のいずれかのRSVサブタイプまたは株の未変性F0ポリペプチド配列に生じさせると、配列番号1、2、4、6、および81~270のいずれかに明記される未変性F0ポリペプチド配列などの、異なるRSV F突然変異体に到達しうる。他のいずれかのRSVサブタイプまたは株の未変性F0ポリペプチド配列を主体とし、1つまたは複数の空隙充填突然変異のいずれかを含むRSV F突然変異体も、本発明の範囲内にある。一部の特定の実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、T54H、S190I、およびV296Iからなる群から選択される少なくとも1つの空隙充填突然変異を含むRSV Fタンパク質突然変異体である。
【0033】
さらに他の実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、1つまたは複数の静電突然変異を含むRSV Fタンパク質突然変異体である。用語「静電突然変異」とは、折り畳み構造において互いに近接する、タンパク質中の残基間のイオン反発を低減する、またはイオン誘引を増大させる、野生型RSV Fタンパク質に導入されたアミノ酸突然変異を指す。水素結合は、イオン誘引の特殊な事例であるため、静電突然変異によって、このような近接した残基間の水素結合が増強される場合もある。一例では、静電突然変異を導入して、三量体安定性を向上させることができる。一部の実施形態では、静電突然変異が導入されて、その融合前コンフォメーションではRSV F糖タンパク質中で極めて近接しているが、その融合後コンフォメーションではそうでない残基間の反発性のイオン相互作用が低減され、または(水素結合を潜在的に含む)誘引性のイオン相互作用が増強される。たとえば、融合前コンフォメーションでは、RSV F糖タンパク質三量体の1つのプロトマーからのAsp486の酸性側鎖が、三量体境界面に位置しており、別のプロトマーからのGlu487およびAsp489の他の2つの酸性側鎖の間に挟まれる構造になっている。他方、融合後コンフォメーションにおいて、Asp486の酸性側鎖は、三量体表面に位置し、溶媒に曝される。いくつかの実施形態において、RSV Fタンパク質突然変異体は、RSV F三量体の別のプロトマーからのGlu487およびAsp489の酸性残基との、反発性のイオン相互作用を低減し、または誘引性のイオン相互作用を増強する静電D486S置換を含む。したがって、一実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、静電D486S置換を含む。通常、静電突然変異の導入によって、RSV Fタンパク質の融合前コンフォメーションまたは融合前三量体コンフォメーションの溶融温度(Tm)は上昇する。
【0034】
融合前または融合前三量体コンフォメーションにおける好ましくない静電相互作用は、融合前または融合前三量体コンフォメーションの状態にあるRSV Fの結晶構造の目視観察や、計算タンパク質設計ソフトウェア(たとえば、BioLuminate(商標)[BioLuminate、Schrodinger LLC、ニューヨーク、2015]、Discovery Studio(商標)[Discovery Studio Modeling Environment、Accelrys、サンディエゴ、2015]、MOE(商標)[Molecular Operating Environment、Chemical Computing Group Inc.、モントリオール、2015]、Rosetta(商標)[Rosetta、University of Washington、シアトル、2015])の使用などの、当業界で公知の方法によって特定することができる。
【0035】
一部の詳細な実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、
1)82、92、または487位にあるEのD、F、Q、T、S、L、またはHによる置換、
2)315、394、または399位にあるKのF、M、R、S、L、I、Q、またはTによる置換、
3)392、486、または489位にあるDのH、S、N、T、またはPによる置換、および
4)106または339位にあるRのF、Q、N、またはWによる置換
からなる群から選択される少なくとも1つの静電突然変異を含むRSV Fタンパク質突然変異体である。
【0036】
一部の詳細な実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、1つまたは複数の静電突然変異を含むRSV F突然変異体であり、この突然変異体は、WO2017/109629のTable3、5、および6に示されている突然変異体のいずれかにある静電突然変異を含む。こうしたTable3、5、および6に示されているRSV F突然変異体は、102、379、および447位に3つの自然発生置換を有する、RSV A2株の同じ未変性F0配列(配列番号3)を主体としている。突然変異体のそれぞれにおける同じ導入突然変異を、他のいずれかのRSVサブタイプまたは株の未変性F0ポリペプチド配列に生じさせると、配列番号1、2、4、6、および81~270のいずれかに明記される未変性F0ポリペプチド配列などの、異なるRSV F突然変異体に到達しうる。他のいずれかのRSVサブタイプまたは株の未変性F0ポリペプチド配列を主体とし、1つまたは複数の静電突然変異のいずれかを含むRSV F突然変異体も、本発明の範囲内にある。一部の特定の実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、突然変異D486Sを含むRSV Fタンパク質突然変異体である。
【0037】
B-2(d)改変ジスルフィド結合突然変異、空隙充填突然変異、および静電突然変異の組合せ
別の態様では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、それぞれ本文書において上述したとおりの、改変ジスルフィド結合突然変異、空隙充填突然変異、および静電突然変異から選択される2つ以上の異なるタイプの突然変異の組合せを含むRSV Fタンパク質突然変異体である。
【0038】
一部の実施形態では、突然変異体は、少なくとも1つの改変ジスルフィド結合突然変異と、少なくとも1つの空隙充填突然変異とを含む。一部の詳細な実施形態では、RSV F突然変異体は、WO2017/109629のTable4に示されているとおりの突然変異の組合せを含む。
【0039】
一部のさらなる実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、少なくとも1つの改変ジスルフィド突然変異と、少なくとも1つの静電突然変異とを含むRSV Fタンパク質突然変異体である。一部の詳細な実施形態では、RSV F突然変異体は、WO2017/109629のTable5に示されているとおりの突然変異の組合せを含む。
【0040】
さらに他の実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、少なくとも1つの改変ジスルフィド突然変異と、少なくとも1つの空隙充填突然変異と、少なくとも1つの静電突然変異とを含むRSV Fタンパク質突然変異体である。一部の詳細な実施形態では、RSV F突然変異体は、WO2017/109629のTable6に示されているとおりの突然変異の組合せを含む。
【0041】
一部の特定の実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、
(1)T103C、I148C、S190I、およびD486Sの組合せ、
(2)T54H、S55C、L188C、およびD486Sの組合せ、
(3)T54H、T103C、I148C、S190I、V296I、およびD486Sの組合せ、
(4)T54H、S55C、L142C、L188C、V296I、およびN371Cの組合せ、
(5)S55C、L188C、およびD486Sの組合せ、
(6)T54H、S55C、L188C、およびS190Iの組合せ、
(7)S55C、L188C、S190I、およびD486Sの組合せ、
(8)T54H、S55C、L188C、S190I、およびD486Sの組合せ、
(9)S155C、S190I、S290C、およびD486Sの組合せ、
(10)T54H、S55C、L142C、L188C、V296I、N371C、D486S、E487Q、およびD489Sの組合せ、ならびに
(11)T54H、S155C、S190I、S290C、およびV296Iの組合せ
からなる群から選択される突然変異の組合せを含むRSV F突然変異体である。
【0042】
一部の詳細な実施形態では、RSV F突然変異体は、導入突然変異の組合せを含み、WO2017/109629のTable4、5、および6に示されている突然変異体のいずれかにおける突然変異の組合せを含む。こうしたTable4、5、および6に示されているRSV F突然変異体は、102、379、および447位に3つの自然発生置換を有する、RSV A2株の同じ未変性F0配列(配列番号3)を主体としている。突然変異体のそれぞれにおける同じ導入突然変異を、他のいずれかのRSVサブタイプまたは株の未変性F0ポリペプチド配列に生じさせると、配列番号1、2、4、6、および81~270のいずれかに明記される未変性F0ポリペプチド配列などの、異なるRSV F突然変異体に到達しうる。他のいずれかのRSVサブタイプまたは株の未変性F0ポリペプチド配列を主体とし、突然変異の組合せのいずれかを含むRSV F突然変異体も、本発明の範囲内にある。
【0043】
一部の他の特定の実施形態では、本発明の方法に従って精製される、組換え生産されたRSVタンパク質は、103位(103C)および148位(148C)にあるシステイン(C)、190位(190I)にあるイソロイシン(I)、ならびに486位(486S)にあるセリン(S)を含むRSV F突然変異体であり、突然変異体は、
(1)配列番号41のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号42のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(2)配列番号41のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号42のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(3)配列番号43のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号44のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(4)配列番号43のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号44のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(5)配列番号45のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号46のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(6)配列番号45のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号46のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(7)配列番号47のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号48のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(8)配列番号47のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号48のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(9)配列番号49のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号50のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(10)配列番号49のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号50のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(11)配列番号279のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号280のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(12)配列番号279のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号280のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(13)配列番号281のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号282のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(14)配列番号281のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号282のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(15)配列番号283のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号284のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(16)配列番号283のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号284のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(17)配列番号285のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号286のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(18)配列番号285のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号286のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(19)配列番号287のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号288のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(20)配列番号287のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号288のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、
(21)配列番号289のアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号290のアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド、ならびに
(22)配列番号289のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF2ポリペプチド、および配列番号290のアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも97%、98%、または99%であるアミノ酸配列を含むF1ポリペプチド
からなる群から選択されるF1ポリペプチドおよびF2ポリペプチドを含む。
【0044】
一部の詳細な実施形態では、F突然変異体タンパク質のF1ポリペプチドのC末端に、三量体形成ドメインが連結されている。特定の一実施形態では、三量体形成ドメインは、アミノ酸配列GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL(配列番号40)などの、T4フィブリチンフォルドンドメインである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】RSV Aローディング溶液について、各洗浄溶液で得られた収率値(生産物回収の百分率)を、pH値に対してプロットした図である。
図2】RSV Bローディング溶液について、各洗浄溶液で得られた収率値(生産物回収の百分率)を、pH値に対してプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
定義
発明の詳細な説明および特許請求の範囲では、以下の定義が使用される。
-用語「採取された細胞培養液」(または「採取CCF」)とは、同じく存在する他の物質から精製されようとする少なくとも1種の目的物質を含有する溶液を指す。採取CCFは、往々にして、多くの生体分子(タンパク質、抗体、ホルモン、ウイルスなど)、低分子(塩、糖、脂質など)、および粒子状物質さえ含有する複雑な混合物である。生体起源の典型的な採取CCFは、水溶液または水性懸濁液となりうるが、溶媒沈殿、抽出などの早期の分離ステップにおいて使用された有機溶媒を含有する場合もある。本発明の種々の実施形態による精製の対象となる、価値のある生体物質を含有しうる採取CCFの例には、限定はしないが、バイオリアクターからの培養上清、均質化された細胞懸濁液、血漿、血漿画分、および乳汁が含まれる。
-用語「ローディング」とは、細胞培養物(採取CCF)またはクロマトグラフィーステップ(すなわち、部分的に精製されている)のいずれかから得られ、クロマトグラフィー媒質にかけられる、目的物質を含有するいずれかの材料を指す。
-用語「ローディング負荷量」とは、媒質の単位体積あたりの物質の質量という単位で測定される、クロマトグラフィーステップのローディングサイクルにおいてクロマトグラフィー媒質にかけられる物質の合計質量を指す。
-用語「不純物」とは、当該タンパク質(または目的タンパク質)とは異なるものであり、最終治療用タンパク質製剤からは排除されることが望ましい、採取CCF中の材料を指す。典型的な不純物には、核酸、タンパク質(HCPおよび低分子量種を含む)、ペプチド、内毒素、ウイルス、および低分子が含まれる。
-用語「原薬」とは、本発明の方法によって取得可能であるような、活性医薬成分としての治療用タンパク質を指す。
-用語「薬物製品」とは、治療用タンパク質を賦形剤と併せて含有する完成剤形を指す。
-用語「賦形剤」とは、最終治療用タンパク質製剤の、治療用タンパク質ではない構成物を意味する。賦形剤には、通常、タンパク質安定剤、界面活性剤、たとえばタンパク質安定化に寄与するアミノ酸などが含まれる。
-別段明記しない限り、数値と関連する用語「約」は、前記値の±5%の範囲を意味する。
【0047】
「HCPの減少」または「HCPの除去を強化する」とは、治療用タンパク質を基準とした存在するHCP種の濃度を、溶出プールにおいて低下させることを意味する。HCPの全般的な減少は、HCP ELISA(最重要ツールとして使用されるのが普通である)やLC-MS/MSなどの、当業界で公知の方法によって測定することができる。
【実施例0048】
ここで、組換え生産されたRSVタンパク質に適用され、種々のAEXクロマトグラフィー洗浄戦略を用いて評価された精製工程に相当する以下の実施例によって、本発明をさらに例証する。実施例は、例証する目的のためだけに提供され、本発明の範囲を限定すると解釈すべきでない。
【0049】
例証となる実施例において、RSVタンパク質は、RSV Aタンパク質またはRSV Bタンパク質のいずれかである。
【0050】
この実施例において、バイオリアクターから集められたローディング溶液中に存在するRSVタンパク質は、
-最初の遠心分離および深層濾過ステップ、
-第1の限外濾過/ダイアフィルトレーションステップ、
-MILLIPORE SIGMAから入手可能なFractogel(商標)EMD TMAE HiCap(M)といった媒質を含むクロマトグラフィーカラムにおいて実施される、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーステップ。GE HEALTHCAREから入手可能なQ Sepharose(商標)、Capto(商標)Q、もしくはCaptoQ ImpRes(商標)樹脂、TOSOH BIOSCIENCEからのTOYOPEARL GigaCap(商標)Q-650M樹脂、またはMILLIPORE SIGMAからのEshmuno(商標)Q樹脂などの別の媒質を使用してもよい。樹脂は、最初に平衡化緩衝液で平衡化される。次いで、カラムにローディングして、目的タンパク質が樹脂に結合するようにする。引き続いて、樹脂を1種または複数の洗浄溶液で洗浄し、溶出緩衝液を適用し、その結果、目的タンパク質が樹脂から溶出プールに溶出される。AEXクロマトグラフィーステップの主目的は、工程由来不純物からのRSVタンパク質の分離である。
-BIO-RADから入手可能なCHT(商標)Ceramic Hydroxyapatite Type I 40μmなどの、炭酸含有ヒドロキシアパタイト(cHA)クロマトグラフィーステップ、
-GE HEALTHCAREから入手可能なButyl Sepharose 4 Fast Flow(商標)樹脂などの媒質を含むクロマトグラフィーカラムにおいて実施される疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)ステップ、
- MILLIPORE SIGMAから入手可能なViresolvePro(商標)フィルターを使用するウイルス濾過ステップ。別法として、旭化成から入手可能なPlanova(商標)フィルターをこのウイルス濾過ステップに使用してもよい。
-第2の限外濾過/ダイアフィルトレーションステップ、および
-最終製剤および濾過ステップ
を順次含む多段階精製工程によって精製される。
【0051】
陰イオン交換クロマトグラフィー-洗浄緩衝液評価
目的タンパク質(RSV AまたはRSV B)を含み、pHが7.5±0.2であるローディング溶液を、Fractogel(商標)EMD TMAE HiCap(M)カラムにローディングした。カラムを、次の平衡化緩衝液、すなわち、20mMのトリス、50mMのNaCl pH7.5で平衡化した。実験は、種々のローディング負荷量の条件で実施し、カラムを、以下で表1に表すとおりの種々の洗浄溶液で洗浄した後、20mMのトリス、163mMのNaCl pH7.5溶出緩衝液でタンパク質を溶出させた。
【0052】
当該タンパク質は、三量体型(表1では「三量体」)である。表1において参照される「対照pH7.5洗浄」は、pH7.5のトリス、NaCl洗浄溶液である。
【0053】
【表1】
【0054】
この実験から、より低いpHの洗浄条件では、pH7.5のより慣例的な洗浄溶液に比べて、生産物損失を最小限に抑えながら、HCP減少が(約1log)強化されうることを認めることができる。このようなより低いpHの洗浄条件では、三量体純度も向上する(86および89%対72%)。
【0055】
実験により、より低いpHの洗浄条件(本実施例におけるpH4.8)では、ローディング負荷量(表1における「樹脂負荷量」)が増大するにつれて、低pH洗浄中の生産物損失が増加することが示唆されている。
【0056】
酢酸塩洗浄溶液について、種々のpH、酢酸塩濃度、およびローディング負荷量で行った別の実験では、より低い洗浄pHが、より良好なHCP除去と対応することが示唆されている。より低い質量負荷量は、より良好なHCP除去およびより良好な収率と対応する。より高い酢酸塩濃度は、より低い収率と対応する。
【0057】
結果は、試験した要素の中で、pH条件がHCP減少の最も重要な要素であること、および生産物回収率については、緩衝液強度が最も重要な要素であることを示している。
【0058】
上述の実験において使用した酢酸塩以外に、クエン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物といった別の陰イオン溶液をこの方法に使用してもよい。
【0059】
陰イオン強度の異なる種々の緩衝液種の影響を評価し、HCP除去に最適な条件を特徴付けるために、さらなる実験を行った。
【0060】
以下の表2に、評価した洗浄条件(塩、濃度、pH)を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
図1および図2では、それぞれ、RSV AおよびRSV Bローディング溶液について、各洗浄溶液で得られた収率値(生産物回収の百分率)を、pH値に対してプロットしている。
【0063】
図1では、RSV Aについて、
(i)緩衝剤強度が増すと、低pH洗浄中の生産物損失のために、収率がより低くなること、
(ii)酢酸塩およびクエン酸塩は、収率が洗浄pHとの相関を示すこと、
(iii)リン酸塩および硫酸塩は、pH3.5でより高い収率を示し、pHにそれほど左右されないこと
が認められる。
【0064】
図2において示されるデータからは、RSV Bについて、
(i)RSV Aについてと同様の傾向が酢酸塩で認められる、すなわち、より低いpHおよび強度の増大がより低い収率をもたらすこと、
(ii)収率が、RSV Aほどは、高い緩衝剤強度に左右されないこと、
(iii)RSV Bでは、RSV Aに比べて低い回収率が認められること
が示唆される。
【0065】
さらなる実験において、RSV AおよびRSV B両方についての複数の洗浄条件(緩衝液タイプ、濃度、pH)の成果を、HCP減少および収率について評価し、好ましい洗浄溶液、すなわち、70mMの酢酸塩、pH5.0と比較した。
【0066】
生成されたデータを、以下の表3として照合した。
【0067】
【表3】
【0068】
表3において、終わりから2番目の縦列に示される、高処理スクリーニング(HTS)法を用いて好ましい洗浄溶液(70mMの酢酸塩、pH5.0)について得られたデータは、史的データに基づいて正規化されており、
-RSV Aについては、70%という収率、および0.9~1.1の間のHCPの対数減少値(LRV)、
-RSV Bについては、65%という収率、および0.9~1.4の間のLRV
を示している。
【0069】
実施された洗浄選別により、緩衝剤強度が増すと、洗浄中の収率減少につながり、洗浄pHが下がると、HCP除去がより良好になることが示唆されている。RSV AおよびRSV Bは、収率およびHCPで同様の傾向を示し、RSV Bの方が低い収率を示した。
【0070】
異なる緩衝液、特に、リン酸塩および硫酸塩は、表3における正規化されたデータを基準として、HCP除去か収率かにおいて一定範囲の有効性を示しており、これらは、酢酸塩の代替物として力強い選択肢である。
【0071】
最後に、pHが7.0~8.5の間、より詳細には、約7.5であるローディング溶液、および陰イオン交換クロマトグラフィー媒質1mlあたり7.5mg~15.0mgの間からなるローディング負荷量では、RSV AおよびRSV Bの両方に適用可能である、AEXクロマトグラフィーカラムのための好ましい低pH洗浄条件は、70mMの酢酸塩およびpH5.0である。
【0072】
前述の実験を根拠として、低pH洗浄溶液について許容されるpHの範囲は、3.0~6.5の間、より好ましくは、4.0~6.0の間、最も好ましくは、4.5~5.5の間となりうる。
【0073】
こうした操作条件では、リン酸塩および硫酸塩が、酢酸塩の代替品として力強い選択肢である。
【0074】
実際の方法では、目的タンパク質(RSV AまたはRSV B)を含むローディング溶液をAEXカラムにローディングする前に、カラムは、平衡化溶液、すなわち、20mMのトリス、50mMのNaCl pH7.5で平衡化される。
【0075】
ローディング後、カラムは、3種の洗浄溶液で連続的に洗浄され、2回目がより低いpH洗浄溶液、1回目および3回目がより高いpHの洗浄溶液である。
-洗浄1回目:20mMのトリス、50mMのNaCl、pH7.5、
-洗浄2回目:70mMの酢酸塩、pH5.0、
-洗浄3回目:50mMのトリス、20mMのNaCl、pH7.5。
【0076】
洗浄溶液についての上述のpH値および組成は、好ましいものではあるが、しかし、HCP減少および収率に関しての許容される成果は、次の条件下でも得られる場合がある。
-第1のより高いpHの洗浄溶液(洗浄1回目)は、pHが7.0~8.0の間でもよい。トリス濃度は、18mM~22mMの間でもよく、NaCl濃度は、45mM~55mMの間でもよい。
-より低いpH洗浄溶液(洗浄2回目)中の酢酸塩の濃度は、56mM~84mMの間、より好ましくは、63mM~77mMの間でもよい。上で論じたような許容されるpHの範囲は、3.0~6.5、好ましくは、4.0~6.0、より好ましくは、4.5~5.5である。
-第2のより高いpHの洗浄溶液(洗浄3回目)は、pHが7.0~8.0の間でもよい。トリス濃度は、45mM~55mMの間でもよく、NaCl濃度は、18mM~22mMの間でもよい。
【0077】
3種の洗浄溶液で連続的にカラムを洗浄することにより行われる洗浄ステップの後、RSVタンパク質が溶出溶液で溶出される。溶出溶液は、146mM~180mMの間、好ましくは、約163mMの濃度のNaClと、18mM~22mMの間、好ましくは、約20mMの濃度のトリスとを含む。溶出溶液のpHは、7.0~8.0の間であり、好ましくは、約7.5である。
【0078】
実施例の後続のクロマトグラフィーステップは、以下の条件で操作されることが好ましい。
【0079】
cHAクロマトグラフィー
生産物をcHAクロマトグラフィーカラムにローディングする前に、カラムは、第1の平衡化緩衝液である0.5Mのリン酸ナトリウム、pH7.2、次いで、第2の平衡化緩衝液である20mMのトリス、100mMのNaCl、13mMのリン酸ナトリウム、pH7.0で平衡化される。
【0080】
AEXクロマトグラフィーカラムから集められ、リン酸塩を加えて調整された生産物プールは、濾過後、cHAクロマトグラフィーカラムにローディングされる。ローディングのpHは、7.1±0.3の値に設定され、ローディング負荷量は、媒質1mlあたり8.0mg~12.0mgの間からなる。
【0081】
カラムは、20mMのトリス、100mMのNaCl、13mMのリン酸ナトリウムを含むpH7.0の洗浄溶液で洗浄される。
【0082】
カラムは、フロースルーモードで操作され、つまり、ローディング流体がカラムにローディングされると、目的タンパク質はカラムを通過し、不純物は媒質に結合する。洗浄は、意図せずに結合された目的タンパク質をカラムから洗い落とすためのものである。
【0083】
HIC
生産物をHICカラムにローディングする前に、カラムは、20mMのリン酸カリウムを含むpH7.0の第1の平衡化緩衝液、次いで、1.1Mのリン酸カリウムを含むpH7.0の第2の平衡化緩衝液で平衡化される。
【0084】
cHAクロマトグラフィーカラムから集められ、リン酸カリウムを加えて調整された生産物プールは、濾過後、HICカラムにローディングされる。ローディングのpHおよび電気伝導度は、それぞれ、7.0±0.3および104±10mS/cmに調整される。ローディング負荷量は、媒質1mlあたり8.0mg~12.0mgの間からなる。
【0085】
カラムは、結合および溶出モードで操作され、その結果、カラムにローディングされた目的タンパク質は、媒質に結合し、次いで、溶出緩衝液の適用によって溶出される。溶出緩衝液を適用する前に、カラムは、媒質に結合した不純物を洗い落とすため、洗浄溶液で洗浄される。
【0086】
このHICステップに使用される洗浄溶液は、1.1Mのリン酸カリウム、pH7.0であり、溶出緩衝液は、448mMのリン酸カリウム、pH7.0である。
【0087】
上述の方法は、組換え生産されたRSVタンパク質を、前記タンパク質を医薬製品の調製に使用することができるような十分な純度で精製するのに適する。特に、そのような精製されたRSVタンパク質は、適切な賦形剤を加えることにより、注射用医薬製品として使用されるように製剤化することができる。
図1
図2
【配列表】
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【外国語明細書】