(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023816
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】血漿収集手順中にIGGの増加した体積を収集するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20220201BHJP
A61M 60/113 20210101ALI20220201BHJP
A61M 60/37 20210101ALI20220201BHJP
A61M 60/279 20210101ALI20220201BHJP
A61M 60/849 20210101ALI20220201BHJP
A61M 60/853 20210101ALI20220201BHJP
【FI】
A61M1/36 119
A61M1/36 123
A61M1/36 153
A61M60/113
A61M60/37
A61M60/279
A61M60/849
A61M60/853
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021120348
(22)【出願日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】63/055,391
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/055,403
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】308020283
【氏名又は名称】フェンウォール、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】マドセン,ジェイムス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】血漿交換手順中にIgGの体積を最適化するためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】血漿交換システムおよび血漿交換システムを操作するための方法は、それによって、濃縮赤血球(RCC)の貯留部32は、第1の吸引サイクルの前に分離器14をプライミングし、システムの空気をパージするために使用される抗凝固剤を受け入れるための第1の室と、分離された赤血球を受け入れるための第2の室を有する。RCC貯留部の第2の室の全容積が分離された赤血球を受け取り、ACプライム体積がないため、第1の吸引サイクルでより多くの全血が処理され、血漿交換手順中に収集される免疫グロブリンG(IgG)の総体積が多くなる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライミング段階と、少なくとも1つの収集段階と、少なくとも1つの再注入段階とを有する、第1の吸引段階中に処理される全血の体積を最大化するための血漿交換手順を実行する方法であって、
a)プライミング段階中にプライミング流体が流れ込む第1の室と、収集段階中に分離された血液細胞を含む細胞分画が流れ込み、再注入段階中に分離された血液細胞が流れ出る第2の室を備える貯留部と流体連通する複数の管セグメントを有する使い捨て流体流セットを提供し、
b)プライミング流体を使い捨て流体流セット内に導入し、
c)使用されたプライミング流体を前記貯留部の前記第1の室に流し、
d)前記第1の室を出入りする流れを防ぐために1つ以上の前記管セグメントを閉塞することを含む、方法。
【請求項2】
a)全血を前記使い捨て流体流セットに導入することと、b)前記全血を血漿分画と細胞分画に分離することと、c)前記細胞分画を前記貯留部の前記第2の室内に流すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞分画を前記第2の室の外に流すことをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
使用されたプライミング流体を前記貯留部の前記第1の室内に保持し、それを前記使い捨て流体流回路とともに血漿交換手順の完了時に廃棄することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
使用されたプライミング流体を前記貯留部の前記第1の室内に保持し、それを前記使い捨て流体流回路とともに血漿交換手順の完了時に廃棄することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
使用されたプライミング流体を前記貯留部の前記第1の室内に保持し、それを前記使い捨て流体流回路とともに血漿交換手順の完了時に廃棄することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記プライミング溶液は抗凝固溶液である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
e)分離器と、
f)前記分離器の出口に接続される第1の管セグメントと、
g)第2の管セグメントと、
h)第1の内部室と第2の内部室を備え、それぞれが前記第1の管セグメントと流体連通である第1のポートと前記第2の管セグメントと流体連通である第2のポートを有する貯留部
とを備える、アフェレーシスシステムのための使い捨て流体流セット。
【請求項9】
前記第1の内部室の前記第1のポートを前記第1の管セグメントに接続する第3の管セグメントと、前記第1の内部室の前記第2のポートを前記第2の管セグメントに接続する第4の管セグメントと、前記第2の内部室の前記第1のポートを前記第1の管セグメントに接続する第5の管セグメントと、前記第2の内部室の前記第2のポートを前記第2の管セグメントに接続する第6の管セグメントをさらに備える、請求項8に記載の使い捨て流体流セット。
【請求項10】
前記第1の内部室は、前記第1の内部室から前記前記第2の内部室内に流体があふれることを許容する開放された上端を有する、請求項8に記載の使い捨て流体流セット。
【請求項11】
前記第1の内部室は、前記第1の内部室から前記前記第2の内部室内に流体があふれることを許容する開放された上端を有する、請求項9に記載の使い捨て流体流セット。
【請求項12】
耐久性のハードウェア構成要素と請求項9に記載の使い捨て流体流セットを備える血漿交換手順を実施するためのシステムであって、
前記耐久性のハードウェア構成要素は、
前記第3の管セグメントと前記第5の管セグメントを通る流れを制御するための第1の管クランプと、
前記第4の管セグメントと前記第6の管セグメントを通る流れを制御するための第2の管クランプと、
血漿交換手順のプライミング、収集、または、再注入段階に関連して、前記第3の管セグメントと前記第4の管セグメントと前記第5の管セグメントと前記第6の管セグメントを通る流れを選択的に許可または阻むように前記第1の管クランプと前記第2の管クランプを自動的に作動させるようにプログラムされるプログラム可能な制御部を備える、システム。
【請求項13】
前記プログラム可能な制御部は、さらに、
i)プライミング段階で前記使い捨て流体流セットを通して抗凝固溶液を圧送するように、前記第3の管セグメントを通って前記第1の内部室内に抗凝固剤が流れることを許容し、前記第5の管セグメントを通って前記第2の内部室内に入る流れを防ぐように前記第1の管クランプを作動させ、前記第4の管セグメントを通る流れを許容し、前記第6の管セグメントを通る流れを防ぐように前記第2の管クランプを作動させるようにシステムを操作し、
ii)収集段階で抗凝固剤を全血と混合するように制御された速度で圧送するように、前記第3の管セグメントを通る流れを防ぎ、前記第5の管セグメントを通って前記第2の内部室に入る濃縮赤血球の流れを許容するように前記第1の管クランプを作動させ、前記第4の管セグメントと前記第6の管セグメントを通る流れを阻むように前記第2の管クランプを作動させるようにシステムを操作し、
iii)再注入段階で濃縮された赤血球を前記第2の内部室から圧送するように、前記第3の管セグメントと前記第5の管セグメントを通る流れを阻むように前記第1の管クランプを作動させ、前記第2の内部室から前記第6の管セグメントを通って出る流れを許容し、前記第1の内部室から前記第4の管セグメントを通って出る流れを防ぐように前記第2の管クランプを作動させるようにシステムを操作し、
iv)前記第4の管セグメントと前記第6の管セグメントを閉塞するように前記第2の管クランプを作動させるようにプログラムされている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
耐久性のハードウェア構成要素と請求項10に記載の使い捨て流体流セットを備える血漿交換手順を実施するためのシステムであって、
前記耐久性のハードウェア構成要素は、
前記第3の管セグメントと前記第5の管セグメントを通る流れを制御するための第1の管クランプと、
前記第4の管セグメントと前記第6の管セグメントを通る流れを制御するための第2の管クランプと、
血漿交換手順のプライミング、収集、または、再注入段階に関連して、前記第3の管セグメントと前記第4の管セグメントと前記第5の管セグメントと前記第6の管セグメントを通る流れを選択的に許可または阻むように前記第1の管クランプと前記第2の管クランプを自動的に作動させるようにプログラムされるプログラム可能な制御部を備える、システム。
【請求項15】
前記プログラム可能な制御部は、さらに、
i)プライミング段階で前記使い捨て流体流セットを通して抗凝固溶液を圧送するように、前記第3の管セグメントを通って前記第1の内部室内に抗凝固剤が流れることを許容し、前記第5の管セグメントを通って前記第2の内部室内に入る流れを防ぐように前記第1の管クランプを作動させ、前記第4の管セグメントを通る流れを許容し、前記第6の管セグメントを通る流れを防ぐように前記第2の管クランプを作動させるようにシステムを操作し、
ii)収集段階で抗凝固剤を全血と混合するように制御された速度で圧送するように、前記第3の管セグメントを通る流れを防ぎ、前記第5の管セグメントを通って前記第2の内部室に入る濃縮赤血球の流れを許容するように前記第1の管クランプを作動させ、前記第4の管セグメントと前記第6の管セグメントを通る流れを阻むように前記第2の管クランプを作動させるようにシステムを操作し、
iii)再注入段階で濃縮された赤血球を前記第2の内部室から圧送するように、前記第3の管セグメントと前記第5の管セグメントを通る流れを阻むように前記第1の管クランプを作動させ、前記第2の内部室から前記第6の管セグメントを通って出る流れを許容し、前記第1の内部室から前記第4の管セグメントを通って出る流れを防ぐように前記第2の管クランプを作動させるようにシステムを操作し、
iv)前記第4の管セグメントと前記第6の管セグメントを閉塞するように前記第2の管クランプを作動させるようにプログラムされている、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、血漿交換を実施するためのシステムおよび方法に関し、より具体的には、処置中に収集される免疫グロブリンGの体積が増加する血漿交換のシステムおよび方法に関する。
【0002】
血漿交換は、全血がドナーから取り出され、血漿が細胞の血液成分(赤血球、血小板および白血球)から分離されて保持され、細胞の血液成分がドナーに戻されるアフェレーシス手順である。細胞成分からの血漿の分離は、通常、遠心分離または膜濾過による自動化された手順で達成される。
【0003】
血漿由来の治療法は、多くの血漿提供物が一緒にプールされ、次いでその治療成分に分画される大規模な血漿分画施設を通じて提供される。世界的に、一般的に血漿由来の治療法、特に免疫グロブリンG(IgG)の必要性が高まっている。IgGは、原発性免疫不全症、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、多巣性運動ニューロパチー、二次性免疫不全症など、静脈内または皮下IgGとして使用される場合に複数の適応症がある。
【0004】
自動化された血漿交換手順では、血漿生成物は、抗凝固血漿の総目標体積が収集されるまで、複数の収集および再注入サイクルで収集されることが多い。最近の文献によると、ドナーの血中IgG濃度は血漿採取手順全体で減少し、第1の200mLの血漿採取後に最大の低下を示す。具体的には、ドナーのIgGの9%の低下は、収集された血漿がゼロのベースライン(手順の開始時)から収集された血漿が200mLまで発生し、さらに4%の低下は200mLから800mLの収集まで発生する。例えば、分画のための血漿の大量収集中の免疫グロブリンGレベル(ブルクハート(Burkhardt)ら、Transfusion 2017;56:417-420)を参照せよ。これは、ドナーの初期総血液体積の約9%(200mLの血漿を採取した後)からドナーの初期総血液体積の約13%(800mLの血漿を採取した後)に等しい間質液のシフトに起因していた。
【0005】
複数のドナーからの供給源血漿が組み合わされるので、個々のドナーから収集される体積のわずかな増加でさえ、一緒に加えられるとプールされた血漿中のIgGの総体積の増加に意味のある結果をもたらすので、個々のドナーから収集され得るIgG体積を最大化することが重要である。血漿交換手順の第1の吸引サイクル中に収集されるIgGの体積を最大化できるシステムと方法が開発された場合、各ドナーからより多くのIgGを収集でき、各血漿収集センターで生成されるIgGの総体積が増加する。したがって、本開示により、血漿交換手順中にIgGの体積を最適化するためのシステムおよび方法が提供される。
【発明の概要】
【0006】
本開示により、血漿交換システムを操作するためのシステムおよび方法が提供され、これは、第1の収集サイクルで処理される全血の体積を増加させることによって収集されるIgGの体積の増加をもたらす。
【0007】
第1の態様では、第1の吸引段階中に処理される全血の体積を最大化するように、プライミング段階と、少なくとも1つの収集段階と、少なくとも1つの再注入段階を有する血漿交換手順を実行するための方法が提供される。この方法は、a)プライミング段階中にプライミング流体が流入する第1の室と、分離された血液細胞を含む細胞分画が流入し、分離された血液細胞が再注入段階の間に流れ出る第2の室とを含む貯留部と流体連通する複数の管セグメントを有する使い捨て流体流セットを提供することと、b)プライミング流体を使い捨て流体流セットに導入することと、c)使用済みのプライミング液を貯留部の第1の室内に流すことと、d)第1の室への流入または第1の室からの流出を防ぐために、1つまたは複数の管セグメントを閉塞することを含む。
【0008】
第2の態様では、この方法はさらに以下を含む。a)全血を使い捨て流体流セットに導入する。b)全血を血漿分画と細胞分画に分離する。c)細胞分画を貯留部の第2の室内に流す。
【0009】
第3の態様では、この方法は、細胞分画を第2の室から流出させることをさらに含む。
【0010】
第4の態様では、この方法は、使用済みのプライミング流体を貯留部の第1の室に保持し、血漿交換手順の完了時に使い捨て流体流回路と一緒にそれを処分することをさらに含む。
【0011】
第5の態様では、プライミング溶液は抗凝固剤溶液である。
【0012】
第6の態様では、アフェレーシスシステム用の使い捨て流体流セットが、分離器と、分離器の出口に接続された第1の管セグメントと、第2の管セグメントと、第1の内部室と第2の内部室とを含み、それぞれの室は、第1の管セグメントと流体連通する第1のポートと第2の管セグメントと流体連通する第2のポートを有する貯留部を備える。
【0013】
第7の態様では、使い捨て流体流セットは、第1の内部室の第1のポートを第1の管セグメントに接続する第3の管セグメントと、第1の内部室の第2のポートを第2のポートに接続する第4の管セグメントと、第2の内部室の第1のポートを第1の管セグメントに接続する第5の管セグメントと、第2の内部室の第2のポートを第2の管セグメントに接続する第6の管セグメントをさらに備える。
【0014】
第8の態様では、第1の内部室は、第1の内部室からの流体が第2の内部室にこぼれることを可能にする、開いた上端を有する。
【0015】
第9の態様では、耐久性のハードウェア構成要素と、上記の第6から第8の態様のいずれかの使い捨て流体流セットとを含む、血漿交換手順を実行するためのシステムが提供される。耐久性のハードウェア構成要素は、第3の管セグメントと第5の管セグメントを通る流れを制御するための第1の二連管クランプと、第4の管セグメントと第6の管セグメントを通る流れを制御するための第2の二連管クランプと、血漿交換手順のプライミング、収集または再注入段階の実行に関連して、第3の管セグメント、第4の管セグメント、第5の管セグメント、第6の管セグメントを通る流れを選択的に許可または阻害するように第1の二連管クランプと第2の二連管クランプを自動的に作動させるようにプログラムされる、プログラム可能な制御部を備える。
【0016】
第10の態様では、第1の内部室と第2の内部室を含む流体容器が提供され、それぞれが第1のポートと第2のポートを有し、第1の内部室は、第1の内部室からの流体が第2の内部室内に溢れ出るのを可能にする開放された上端を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本出願のシステムおよび方法での使用に適した例示的な血漿交換機器の斜視図である。
【0018】
【
図2】
図2は、
図2の血漿交換システムで使用可能な使い捨てセットに組み込まれたタイプの回転膜分離器の斜視図であり、詳細を示すために部分が切り取られている。
【0019】
【
図3】
図3は、
図2の血漿交換システムの前面パネルの斜視図であり、それに取り付けられた使い捨てセットの構成要素を示している。
【0020】
【
図4】
図4は、プライミング段階における血漿交換システムの動作を示す概略図である。
【0021】
【
図5】
図5は、収集段階における血漿交換システムの動作を示す概略図である。
【0022】
【
図6】
図6は、戻り段階または再注入段階における血漿交換システムの動作を示す概略図である。
【0023】
【
図7】
図7は、ACプライム中、第1の吸引段階中、第1のRCC戻り/再注入段階中、および、後続の吸引段階または手順の終了が続く第1のRCC戻り/再注入段階後の本開示によるRCC収集容器への流れを順次図示する。
【0024】
【
図8】
図8a~8cは、本開示によるRCC収集容器の斜視図、側面図、および正面図である。
【0025】
【
図9】
図9a~9cは、RCC収集容器の内部に関する詳細を示す断面図であり、
図9aは、RCC収集容器の前壁の後ろに垂直断面が取られた斜視図であり、
図9bは、AC室の前壁の後ろで垂直断面が取られた斜視図であり、
図9cは上面図である。
【0026】
【
図10】
図10は、RCC収集容器と、AC室およびRCC室につながる関連する管セグメントと、管セグメントに関連する二連管クランプとの組み合わせの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示によるシステムおよび方法のより詳細な説明は、以下に記載されている。以下の特定の装置および方法の説明は例示を意図したものであり、考えられるすべての変形または応用を網羅するものではないことを理解されたい。したがって、本開示の範囲は、限定することを意図するものではなく、通常の技術者に生じるであろう変形または実施形態を包含すると理解されるべきである。
【0028】
本開示により、血漿交換システムを操作して、第1の収集サイクルで処理される全血の体積を増加させることにより、血漿交換手順で収集されるIgGの体積を増加させるためのシステムおよび方法が提供される。1回の採取サイクルで処理できる体外血液の量は、分離された赤血球(「赤血球濃縮物」またはRCC)を受け入れるための貯留部の容量によって制限される。使い捨てセットに血液を導入する前にプライミングおよび使い捨てセットから空気を流し出すために使用される抗凝固剤(AC)の体積がRCC貯留部に受け取られるため、第1の吸引サイクルで処理できる体外血液の体積はそのACの体積だけ減少する。
【0029】
本開示により、第1の吸引サイクルで処理することができる体外血液の量は、ACプライム体積および分離された赤血球を受け取るための別個の室をRCC貯留部に提供することによって増加される。RCC室の内容物は、各収集段階の完了後にドナーに戻されるが、ACプライム体積は手順全体を通してAC室内に維持され、手順が完了してドナーとの接続が切断された後、使い捨てキットとともに廃棄される。
【0030】
本明細書でさらに説明するように、AC室およびRCC室のそれぞれは、それに関連する管セグメントを備えた2つのポートを有する。AC室およびRCC室のそれぞれからの1つの管セグメントを含む第1の対の管セグメントは、使い捨てセットの細胞ラインに接続され、一方、AC室およびRCC室のそれぞれからの1つの管を含む第2の対の管セグメントは、使い捨てセットの再注入ラインに接続されている。
【0031】
システムのハードウェア構成要素は、2つの二連管クランプを備えており、1つは管セグメントの各対に作用し、各対の管セグメントに作用して、交互に、一方の対を通る流れ許可し、他方の対を通る流れを防ぎ、または、対の両方の管セグメントを通る流れを防ぐ。ACプライミング中、2つの二連管クランプがRCC貯留部内のAC室に流れを向け、次に血漿収集中に、クランプは分離された赤血球の流れをRCC貯留部のRCC室へ向ける。これにより、ドナーのIgG濃度が最も高い第1の収集サイクルで体外血液体積全体を処理できるようになり、その結果、手順のために追加のIgGが収集される。
【0032】
ここで添付の図面に目を向けると、血漿交換は、全体的に符号10で示されるハードウェア構成要素(
図1に最もよく見られる)と、全体的に符号12で示される使い捨てセット(使い捨てセットがハードウェア構成要素に取り付けられて示されている
図3~6に最もよく見られる)とを含む自動システムで、供給源血漿として処理される血漿を収集するために実行される。
図1~6を参照すると、以下でより詳細に説明するように、使い捨てセット12は、滅菌流体経路内で血液および溶液を輸送するための一体的に接続された分離器、容器、および管からなる。
【0033】
図2に最もよく見られる分離器14は、血液を成分に分離するためにケース20内で回転するためにロータ18に取り付けられた回転膜フィルタ16を有する。回転膜分離器の詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれるシェーンドルファーの米国特許第5,194,145号に記載されている。理解できるように、異なるシステムでは、全血の分離は、遠心分離によって達成され得る。例えば、ウィリアムソンらの米国特許第5,360,542号を参照せよ。
【0034】
血漿交換の間、抗凝固処理された全血は、全血入力ポート22を通って分離器14に入る。血漿は、回転膜フィルタによって分離され、次に血漿出力ポート24を出て、血漿ライン26を通って、血漿収集容器28に入る。濃縮された細胞は、濃縮細胞出力ポート30からRCC貯留部32(以下でより詳細に説明される)にポンプで送られ、ここで細胞はドナーへの再注入まで残る。
【0035】
使い捨てセット12はまた、収集中にドナーからシステムに全血を導入し、再注入中に濃縮細胞をドナーに戻すための管ライン(静脈穿刺針36で終わるドナーライン34)、および、抗凝固化された全血を分離器に輸送するための管ライン(血液ライン38)、濃縮細胞を貯留部に輸送するための管ライン(細胞ライン40)、濃縮細胞を貯留部からドナーラインに輸送するための管ライン(再注入ライン42)、血漿を血漿収集容器に輸送するための管ライン(血漿ライン44)、生理食塩水を輸送するための管ライン(生理食塩水ライン46)、および、抗凝固剤を輸送するための管ライン(ACライン48)を含む。
【0036】
ハードウェア構成要素10は、プログラム可能な制御部50およびオペレータが手順を制御するためのグラフィカルユーザインターフェース(「GUI」)を備えたタッチスクリーン52を含む。たとえば、GUIでは、ドナーID、ドナーの性別、ドナーの身長、ドナーの体重、ドナーの年齢、ドナーのヘマトクリット値/ヘモグロビンのいずれかと、目標生理食塩水注入体積(生理食塩水プロトコルが選択されている場合)と、目標血漿体積を入力することができる。タッチスクリーン52はまた、オペレータがステータス情報を収集し、エラー状態を処理することを可能にする。
【0037】
ACポンプ54、血液ポンプ56、および細胞ポンプ58を含む3つの蠕動ポンプが、ハードウェア構成要素10の前面パネル上に配置されている。ACポンプ54は、全血がドナーからセットに入るときに、制御された速度で抗凝固剤溶液(AC)を血液ライン38に送達する。血液ポンプ56は、手順の収集段階中に抗凝固処理された全血を分離器に送達し、手順の再注入段階中に濃縮された細胞成分および必要に応じて補液をドナーに戻す。細胞ポンプ58は、収集段階中に、濃縮された細胞成分を分離器14から貯留部に送達する。
【0038】
前面パネルはまた、再注入クランプ60、血液クランプ62、生理食塩水クランプ64、および血漿クランプ66を含む、使い捨てセット12の様々な管が取り付けられる4つのクランプを含む。再注入クランプ60は、収集段階(
図5)の間に再注入ライン(42)を遮断するために閉じ、再注入段階(
図6)の間に開いて、血液ポンプ56が貯留部32からドナーに濃縮細胞成分を再注入することを可能にする。血液クランプ62は、収集段階中に開き、抗凝固処理された全血を分離器14にポンプ輸送することを可能にし、再注入段階中に閉じて、血液ライン38を遮断する。生理食塩水クランプ64は、収集段階中および分離された細胞成分の再注入中に、生理食塩水ライン46を遮断するために閉じる。生理食塩水を補液として使用する場合、生理食塩水クランプ64は再注入段階中に開く。血漿クランプ66は、収集段階中に開き、血漿が血漿収集容器28に流入することを可能にし、再注入段階中に閉じる。以下でより詳細に説明するように、再注入クランプ60は二連管クランプであり、第2の二連管クランプ104は、RCC貯留部32の入口につながる細胞ライン40に関連付けられている。
【0039】
図1を参照すると、ハードウェア構成要素10は、現在の血漿収集体積(スケール68)、AC溶液体積(スケール70)、および濃縮された細胞内容物体積(スケール72)を監視するための3つの重量計を含む。このシステムはまた、静脈圧センサー74、分離器圧力センサー76、光学式血液検出器78、および空気検出器80を含む、様々なセンサーおよび検出器を含む。
【0040】
本開示と一致して、RCC貯留部32は、ACプライム体積を受容するための別個のAC室82と、分離された赤血球を受容するための別個のRCC室84とを備えている。RCC貯留部の大きさと容量は、ドナーから引き出される体液の許容される体外容量に関する規制によって制限されている。その結果、別個のAC室により、RCC室を最大許容サイズと容積にすることができ、第1の吸引サイクルで一定体積の血液を分離することができ、その結果、RCC室の全体積が分離された赤血球で満たされる。
【0041】
AC室82は、その上端86で開いており、その結果、アラームまたはエラーによる追加のACプライム体積が、AC室82の上部を越えて、RCC室84にこぼれる可能性がある。AC室82は、その下端に2つのポート88,90を含み、それぞれがそれに関連する管セグメントを有する。管セグメント92は、ポート88に関連付けられ、細胞ライン40と流体連通しており、一方、管セグメント94は、ポート90に関連付けられており、再注入ライン42と流体連通している。同様に、RCC室は、その下端に2つのポート96,98を含み、それぞれがそれに関連する管セグメントを有する。管セグメント100は、ポート96に関連付けられ、細胞ライン40と流体連通しており、一方、管セグメント102は、ポート98に関連付けられており、再注入ライン42と流体連通している。したがって、管セグメント92,100は、細胞ライン40に(例えば、Yコネクタによって)接続される第1の対の管セグメントを形成し、管セグメント94,102は、(これもまた例えばYコネクタによって)再注入ライン42に接続される第2の対の管セグメントを形成する。
【0042】
システムのハードウェア構成要素は、2つの二連管クランプを備えており、各対の管セグメントに1つずつあり、各対の管セグメントに作用して、交互に、一方の対を通る流れを許可し、他方の対を通る流れを阻止し、または、対の両方の管セグメントを通る流れを防ぐ。具体的には、上記の再注入クランプ60は、管セグメント94,102に作用して再注入ライン42を通る流れを制御する二連管クランプである。細胞ライン40を通る流れを制御するために管セグメント92,100に作用する第2の二連管クランプ104が提供される。ACプライミング中、2つの二連管クランプがRCC貯留部内のAC室に流れを向け、次に血漿収集中に、クランプが、分離された赤血球をRCC貯留部のRCC室へ流れを向ける。理解できるように、制御部は、以下に説明するように、血漿交換手順のプライミング、収集、および戻り段階の実行のために、関連する管セグメントを通る流れを制御するために二連管クランプを自動的に作動させるように予めプログラムすることができる。
【0043】
ドナーは、手順全体を通してシステムに接続されている。図示されるように、使い捨てセット12は、単一の静脈穿刺針36を含み、それを通して、全血が収集段階でドナーから引き出され(
図5)、濃縮された細胞が再注入段階でドナーに戻される(
図6)。上記のように、血漿交換手順は、それぞれが収集/分離段階とそれに続く戻りまたは再注入段階を有する複数のサイクルを含み得る。
【0044】
第1の収集段階の前に、使い捨てセットは、ACによってプライミングされ、空気がセットから流される。収集段階の間、全血は血漿および濃縮細胞に分離され、分離された血漿は血漿収集容器28に向けられ、分離された赤血球は貯留部32に向けられる。再注入段階の間、貯留部32からの濃縮された赤血球は、静脈穿刺針36を介してドナーに再注入される。
【0045】
図4および
図7に示されるように、プライミング段階の間、抗凝固剤溶液(AC)は、使い捨てセットを通して制御された速度でポンプで送られ、分離器14をプライミングし、使い捨てセットから空気をパージする。二連管クランプ104は、管セグメント92を通ってAC室82への流れを可能にするが、管セグメント100を通ってRCC室84への流れを遮断するように作動される。二連管クランプ104は、管セグメント94を通ってAC室への流れを可能にするが、管セグメント102からRCC室への流れを遮断するように作動される。これにより、初期ACプライム体積がAC室82を満たすことができる(
図7の106)。
図4は、プライミング段階の第1の状態の間、管セグメント94からAC室への流れおよび管セグメント102からRCC室への流れを遮断する二連管クランプ60を示し、一方、
図7の106は、貯留部32への両方のラインがACで流されて、流体経路から空気を取り除くように、プライミング段階の最終状態の間に両方の管セグメント92,94を通るAC室への流れを示す。
【0046】
図5および
図7に示されるように、収集段階の間、ACは、制御された速度で圧送され、使い捨てセット12に入るときに全血と混合される。抗凝固血液は分離器14に圧送され、そこで血漿は細胞成分から分離され、血漿収集容器28に向けられる。二連管クランプ104は、管セグメント100を通ってRCC室への流れを可能にするが、管セグメント92を通ってAC室への流れを遮断するように作動され、一方、二連管クランプ60は、管セグメント94を通るAC室82からの流れと管セグメント102を通るRCC室84からの流れを阻むように作動される。したがって、分離された赤血球は、分離器14から貯留部32のRCC室84にポンプで送られる(
図7の108)。貯留部32が分離された赤血球の予想される体積に達すると、収集段階は停止する。
【0047】
図6および
図7を参照すると、再注入段階の間、血液ポンプ56は方向を逆にし、濃縮された細胞を貯留部32のRCC室84から再注入ライン34を介してドナーに、そしてアフェレーシス針36にポンプで戻す。二連管クランプ104は、AC貯留部につながる管セグメント92とRCC室につながる管セグメント100の両方を通る流れを防ぐように作動され、一方、二連管クランプ60は、管セグメント102を介してRCC室84からの流れを可能にし、管セグメント94を介したAC室82からの流出を防止するように作動される(
図7の110)。RCCがドナーに戻された後、二連管クランプ60が作動されて、管セグメント94,102の両方を閉塞する(
図7の112)。次に、システムは次の吸引サイクルに進むか、手順を終了する(
図7の114)。理解できるように、ACプライム体積は、手順全体を通してAC室82内で維持され、ドナーに戻されない。収集された血漿の代替液として生理食塩水がドナーに戻される生理食塩水プロトコルが選択された場合、最後の再注入段階の後に生理食塩水注入が続く。
【0048】
収集されたIgGの体積の増加を達成する上での上記のシステムおよび方法の利点は、以下の実施例に見られ得る。
【0049】
実施例1.この実施例のシステムでは、ACプライム体積(プライム・ボリューム)は約30mLである。RCC収集容器には約30mLの容量の別個のAC室があり、RCC室の容量は250mLであるため、第1の収集サイクルで250mLの血液の全体積を処理できる。30mLのACプライム体積と分離された赤血球がRCC収集容器で一緒に組み合わされた場合の220mLよりも多い。第1の収集サイクルで75%の収集効率で処理された追加の30mLの分離赤血球では、ドナーのヘマトクリット値が40の場合、処理された追加の血液54mLには、処理された追加の血漿32.4mLが含まれる(54mL×0.6=32.4mL)。75%の収集効率で処理されている42.4mLの追加血漿は、第1の収集サイクルで収集された24.3mLの追加血漿を生成する(42.4mL×0.75=24.3mL)。RCC収集容器は追加の29.7mLのRCC(54mL-24.3mL)を受け取り、そのうち8.1mLは血漿(32.4mL-24.3mL)であるため、29.7mLの追加のRCCのヘマトクリット値は73%である。この第1のサイクルで収集された24.3mLの追加血漿には、第2の収集サイクルと比較して67mg/dL IgGの濃度が増加し(ブルクハートら、2017)、収集あたり16.3mg IgGの収集が増加した(24.3mL×67mg/dL)。
【0050】
実施例2.この実施例のシステムでは、ACプライム体積(プライム・ボリューム)は約10mLである。RCC収集容器には約10mLの容量の別個のAC室があり、RCC室の容量は200mLであるため、第1の収集サイクルで200mLの血液の全体積を処理できる。10mLのACプライム体積と分離された赤血球がRCC収集容器で一緒に組み合わされた場合の190mLよりも多くなる。第1の収集サイクルで75%の収集効率で処理された追加の10mLの分離赤血球では、ドナーのヘマトクリット値が40の場合、処理された追加の血液18mLには、処理された追加の血漿10.8mLが含まれる(18mL×0.6=10.8mL)。75%の収集効率で処理されている10.8mLの追加の血漿は、第1の収集サイクルで収集された8.1mLの追加の血漿を生成する(10.8mL×0.75=8.1mL)。RCC収集容器は追加の9.9mLのRCC(18mL-8.1mL)を受け取り、そのうち2.7mLは血漿(10.8mL-8.1mL)であるため、9.9mLの追加のRCCのヘマトクリット値は73%である。この第1のサイクルで収集された8.1mLの追加の血漿には、第2の収集サイクルと比較して67mg/dL IgGの濃度が増加し(ブルクハートら、2017)、収集あたり5.4mg IgGの収集が増加した(8.1mL×67mg/dL)。
【0051】
上記の方法およびシステムは、いくつかの態様を有する。第1の態様では、血漿生成物が複数の収集段階で収集され、その間に分離された赤血球がドナーに再注入される、血漿を収集するための方法が提供される。
【0052】
説明される実施形態は、本主題の原理のいくつかの適用の例示であることが理解されよう。本明細書で個別に開示または請求される特徴の組み合わせを含む、請求される主題の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって多数の修正を行うことができる。これらの理由により、特許請求の範囲は上記の説明に限定されず、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【外国語明細書】