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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023839
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】電子デバイス用ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20220201BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H05K7/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021122548
(22)【出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】202010731057.4
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202021502892.2
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タオ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ピン ワン
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB06
5E322AB08
5E322FA06
5E322FA09
5F136BA04
5F136BA06
5F136EA23
5F136FA23
5F136FA51
5F136FA82
5F136FA88
(57)【要約】
【課題】電子デバイス用ヒートシンクを提供する。
【解決手段】本発明は、ベース部と、ベース部の一面から突出する複数のフィンとを備えるヒートシンクであって、ベース部及びフィンが、独立して、1つ以上の異方性熱伝導フィルムから構成されるヒートシンクを開示している。前記異方性熱伝導フィルムは、Dk値及びDf値が低く、電気絶縁性である。また、ヒートシンクを製造するための方法、及び、少なくとも1つの発熱部品を有する電子デバイスの熱を放散させるための方法も開示している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、前記ベース部の一面から突出する複数のフィンとを備える、電子デバイス用のヒートシンクであって、
前記ベース部は、長さ(L1)が5mm~300mmの範囲にあり、幅(W1)が5mm~300mmの範囲にあり、厚さ(H1)が0.03mm~200mmの範囲にあり、
各フィンは、厚さ(L2)が2.0mm以下であり、幅(W2)がW1の0.5~2.0倍の範囲にあり、突出高さ(H2)が少なくとも3mmであり、
前記フィンの平均数は前記ベース部の長さ10mm当たり0.5~10枚の範囲にあり、
前記ベース部は1つ以上の第1のポリマーフィルムから構成され、
各フィンは1つ以上の第2のポリマーフィルムから構成され、
前記第1のポリマーフィルム及び前記第2のポリマーフィルムは異方性熱伝導フィルムであり、それぞれ独立して、1015Ω・cmを超える体積抵抗率を有し、一方向における面内熱伝導率が直交方向の面内熱伝導率よりも高く、前記高い熱伝導率は10~100W/m・Kの範囲にあり、30GHzにおける誘電率が4以下であり、30GHzにおける誘電正接が0.001以下であり、
前記第1のポリマーフィルム及び前記第2のポリマーフィルムは、5W/m・K以上の熱伝導率を有する充填材を含まないことを条件とする、
ヒートシンク。
【請求項2】
前記第1のポリマーフィルム及び前記第2のポリマーフィルムは、それぞれ独立して、少なくとも75%の結晶化度を有する、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
前記第1のポリマーフィルム及び前記第2のポリマーフィルムは、それぞれ独立して、少なくとも1,000,000g/モルである平均分子量を有するポリマーから構成される、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記第1のポリマーフィルム及び前記第2のポリマーフィルムは、それぞれ独立して、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリヒドロキノン-ジイミダゾピリジン、及びポリ(フェニレンベンゾビスチアゾール)からなる群から選択されるポリマーから構成される、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記第1のポリマーフィルム及び前記第2のポリマーフィルムが同じものである、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項6】
前記フィン及び前記ベース部は、別々の部品であり、レーザはんだ付け、接着、挿入、縫合、又はそれらの組合せによって共に組み立てられる、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項7】
前記ベース部の表面は平坦であり、複数のスロット又はスリットを有する凹凸があり、各スロットは前記フィンの接続部分と一致する形状又は3D形状を有する、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項8】
各フィンの一部分は、前記ベース部に接続され、平坦であるか、くさび形であるか、湾曲しているか、フランジを有するか、又は3D形状のベース部と一致する形状である、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項9】
各フィンは、正方形、長方形、円形、楕円形、六角形、又は不規則な形状のシートである、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項10】
各フィンは、三角形、正方形、長方形、円形、又は六角形の断面形状を有する複数のセルから構成される薄板である、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項11】
前記フィンは、複数の空気経路を有するブロックに相互接続され、各空気経路は、三角形、正方形、長方形、円形、又は六角形の断面形状を有する、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項12】
前記ベース部は、積層、熱成形、縫合、又はこれらの組み合わせによって、及び、任意に、隣接するポリマーフィルム間に接着剤を塗布することによって、複数の前記第1のポリマーフィルムから形成される、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項13】
前記第1のポリマーフィルムは、それぞれのより高い熱伝導方向に対して前記隣接するポリマーフィルム間で0°~90°の範囲の配向角θ1で積層される、請求項12に記載のヒートシンク。
【請求項14】
各フィンは、積層、熱成形、縫合、又はそれらの組み合わせによって、及び、任意に、隣接するポリマーフィルム間に接着剤を塗布することによって、複数の前記第2のポリマーフィルムから形成される、請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項15】
前記第2のポリマーフィルムは、それぞれのより高い熱伝導方向に対して前記隣接するポリマーフィルム間で0°~90°の範囲の配向角θ2で積層される、請求項14に記載のヒートシンク。
【請求項16】
請求項1に記載のヒートシンクを製造するための方法であって、
(i)ベース部と、複数のフィンとを設けることと、
(ii)レーザはんだ付け、接着、挿入、縫合、又はそれらの組み合わせによって、前記フィンを前記ベース部上に組み立てることと、を含み、
前記ベース部は1つ以上の第1のポリマーフィルムから構成され、
前記ベース部の表面は平坦であり、複数のスロット又はスリットを有する凹凸があり、各スロットは前記フィンの接続部分と一致する形状又は3D形状を有し、
各フィンは1つ以上の第2のポリマーフィルムから構成され、
各フィンの前記接続部分は、平坦であるか、くさび形であるか、湾曲しているか、フランジを有するか、又は前記3D形状のベース部と一致する形状である、
方法。
【請求項17】
電子デバイスの熱を放散させるための方法であって、
(a)少なくとも1つの発熱部品を有する電子デバイスを設けることと、
(b)請求項1に記載のヒートシンクを前記発熱部品上に配置することであって、前記ヒートシンクの前記ベース部が前記発熱部品と接触しているか又はその近傍にあることと、
(c)任意に、前記ベース部と前記発熱部品との間に熱伝導性接着剤又は耐熱性接着剤を塗布することと、を含む、
方法。
【請求項18】
電子デバイスであって、少なくとも1つの発熱部品と、請求項1に記載のヒートシンクと、任意に熱伝導性接着剤又は耐熱性接着剤とを備え、前記ヒートシンクは前記発熱部品上に配置され、前記ヒートシンクの前記ベース部は前記発熱部品と接触しているか又はその近傍にあり、存在する場合には前記熱伝導性接着剤又は耐熱性接着剤が前記ベース部と前記発熱部品との間に位置する、
電子デバイス。
【請求項19】
前記発熱部品は、中央処理ユニット、デジタルシグナルプロセッサ、又はグラフィック処理ユニットのためのアプリケーションプロセッサチップである、請求項18に記載の電子デバイス。
【請求項20】
前記発熱部品は発光ダイオードではない、請求項18に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性熱伝導フィルムからなる電子デバイスの放熱用ヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシンクは、発熱デバイスの対流表面積を増加させて放熱を改善するために一般的に用いられている。従来のヒートシンクは、通常、熱伝導率の高い金属、特にアルミニウム及び銅でできている。これらの金属製ヒートシンクは、効率的に熱を放散させるが、それでも尚それらの用途を制限する欠点を有している。固有の問題の1つは、金属製ヒートシンクには導電性があり、高電圧を有する電子デバイス又は露出している回路には適していない。加えて、金属製ヒートシンクは、電磁信号及び/又はエネルギー伝送に干渉して、幾つかの通信デバイスの動作に影響を及ぼす可能性がある。更に、より軽量の電子デバイスの傾向も、金属製ヒートシンクの用途を制限している。
【0003】
熱伝導性ポリマー複合材料は、低コスト、軽量、成形性、可撓性、耐腐食性、非反応性の安定性、及び電気絶縁性のため、ヒートシンクに用いられる金属に代わる良好な代替品である。例えば、伊藤顕らは、(特許文献1)において、(A)熱可塑性樹脂、(B)5W/m・K以上の熱伝導率を有する充填材、及び(C)ロジンを含有する熱可塑性樹脂組成物からなる成形体を含むヒートシンクを開示している。(特許文献1)の表1に示されているように、熱伝導率が5W/m・Kから28W/m・Kに向上した複合体を得るには、ポリアミド樹脂(PA6)中のグラファイトの添加量を33重量%(実施例5)から57重量%(実施例8)に増加させる必要がある。
【0004】
T.C.Tankalaらは、(特許文献2)において、35~80体積%の熱可塑性ポリマーと、ZnS、CaO、MgO、ZnO、TiO2、AlN、BN、MgSiN2、SiC、セラミック被覆グラファイト、グラファイト、膨張グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、及び黒鉛化カーボンブラックを含む、高い又は低い熱伝導率並びに電気抵抗率を有する充填材の組合せとからなるプラスチック製ヒートシンクシステムを開示している。
【0005】
しかし、市販されている熱伝導性ポリマーは、概して、約5W/m・Kの熱伝導率を有している。5W/m・Kより高い熱伝導率を示すポリマー複合材料は、少なくとも30重量%の高い熱伝導性充填材添加量を有する可能性があり、これは通常、ポリマー複合材料の利点を損ない、例えば、より高い密度、低下した機械的特性、並びに成形性及び加工性における困難性の増加を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-093427号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0307501A1号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ベース部と、ベース部の一面から突出する複数のフィンとを備える、電子デバイス用のヒートシンクであって、
ベース部は、長さ(L1)が5mm~300mmの範囲にあり、幅(W1)が5mm~300mmの範囲にあり、厚さ(H1)が0.03mm~200mmの範囲にあり、
各フィンは、厚さ(L2)が2.0mm未満であり、幅(W2)がW1の0.5~2.0倍の範囲にあり、突出高さ(H2)が少なくとも3mmであり、
フィンの平均数はベース部の長さ10mm当たり0.5~10枚の範囲にあり、
ベース部は1つ以上の第1のポリマーフィルムから構成され、
各フィンは1つ以上の第2のポリマーフィルムから構成され、
第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは異方性熱伝導フィルムであり、それぞれ独立して、1015Ω・cmを超える体積抵抗率を有し、一方向における面内熱伝導率が直交方向の面内熱伝導率よりも高く、前記高い熱伝導率は10~100W/m・Kの範囲にあり、30GHzにおける誘電率(Dk)が4以下であり、30GHzにおける誘電正接(Df)が0.001以下であり、
第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは、5W/m・K以上の熱伝導率を有する充填材を含まないことを条件とする、ヒートシンクを提供する。
【0008】
本発明のヒートシンクの一実施形態において、第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは、それぞれ独立して、少なくとも75%の結晶化度を有する。
【0009】
本発明のヒートシンクの別の実施形態において、第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは、それぞれ独立して、少なくとも1,000,000である平均分子量を有するポリマーから構成される。
【0010】
本発明のヒートシンクの更に別の実施形態において、第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは、それぞれ独立して、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)(PBO)、ポリヒドロキノン-ジイミダゾピリジン(PIPD)、及びポリ(フェニレンベンゾビスチアゾール)(PBZT)からなる群から選択されるポリマーから構成される、請求項1に記載のヒートシンク。
【0011】
本発明のヒートシンクの更に別の実施形態において、第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムが同じものである。
【0012】
本発明のヒートシンクの一実施形態において、フィン、及びベース部は、別々の部品であり、レーザはんだ付け、接着、挿入、縫合、又はそれらの組合せによって共に組み立てられる。
【0013】
本発明のヒートシンクの別の実施形態において、ベース部の表面は平坦であり、複数のスロット又はスリットを有する凹凸があり、各スロットはフィンの接続部分と一致する形状又は3D形状を有する。
【0014】
本発明のヒートシンクの更に別の実施形態において、各フィンの一部分は、ベース部に接続され、平坦であるか、くさび形であるか、湾曲しているか、フランジを有するか、又は3D形状のベース部と一致する形状である。
【0015】
本発明のヒートシンクの更に別の実施形態において、各フィンは、長方形、正方形、円形、楕円形、六角形、又は不規則な形状のシートである。
【0016】
本発明のヒートシンクの更なる実施形態において、各フィンは、三角形、正方形、長方形、円形、又は六角形の断面形状を有する複数のセルから構成される薄板である。
【0017】
本発明のヒートシンクの一実施形態において、フィンは、複数の空気経路を有するブロックに相互接続され、各空気経路は、三角形、正方形、長方形、円形、又は六角形の断面形状を有する。
【0018】
本発明のヒートシンクの別の実施形態において、ベース部は、積層、熱成形、縫合、又はこれらの組み合わせによって、及び、任意に、隣接するポリマーフィルム間に接着剤を塗布することによって、複数の第1のポリマーフィルムから形成される。
【0019】
本発明のヒートシンクの更に別の実施形態において、第1のポリマーフィルムは、それぞれのより高い伝導方向に対して隣接するポリマーフィルム間で0°~90°の範囲の配向角θ1で積層される。
【0020】
本発明のヒートシンクの更なる実施形態において、各フィンは、積層、熱成形、縫合、又はそれらの組み合わせによって、及び、任意に、隣接するポリマーフィルム間に接着剤を塗布することによって、複数の第2のポリマーフィルムから形成される。
【0021】
本発明のヒートシンクの一実施形態において、第2のポリマーフィルムは、それらのより高い熱伝導方向に対して隣接するポリマーフィルム間で0°~90°の範囲の配向角θ2で積層される。
【0022】
本発明はまた、本発明のヒートシンクを製造するための方法、電子デバイスの熱を放散させるための方法、及び本発明のヒートシンクを備える電子デバイスも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明の幾つかの実施形態を示す断面図である。
図3】本発明の幾つかの実施形態を示す斜視図である。
図4】0°又は90°である異なる配向角で積層することによって形成される積層体を示す。各異方性熱伝導フィルム及びそれから作成される積層体のより高い熱伝導方向を、黒矢印によって表す。
図5図5(A)は、本発明のヒートシンクを製造するための方法の一実施形態を示す斜視図であり、図5(B)は、結果として得られるヒートシンクの側面図である。
図6】長方形形状のフィンが異方性熱伝導フィルム又はそれから作成される積層体のストリップを折り曲げることによって形成される、本発明の幾つかの実施形態を示す。
図7】ループ状フィンが異方性熱伝導フィルム又はそれから作成される積層体のストリップを折り曲げることによって形成される、本発明の幾つかの実施形態を示す。
図8】電子デバイスの放熱のための本発明の方法の一実施形態を示す斜視図である。
図9】各ヒートシンクサンプルの除熱性能を試験するための熱抵抗体アセンブリを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図中の対象物は、簡潔且つ明確にするために例示されたものであり、必ずしも縮図として描かれたものではないことは、当業者に明らかである。例えば、図中の対象物の一部の寸法は、実施形態の理解の向上を助けるために、他の対象物に対して誇張されている場合がある。
【0025】
本明細書で言及される刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献の全ては、特に断りのない限り、あたかも完全に示されているかのようにあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に明確に援用される。特に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。不一致の場合、定義を含めて本明細書が優先される。
【0026】
特に明記されない限り、全てのパーセント、部、比率等は、重量基準である。
【0027】
本明細書で用いる場合、用語「から製造される」は、「含んでいる」と同義語である。本明細書で用いる場合、用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」、「含有する」若しくは「含有している」、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的包含に及ぶことを意図される。例えば、要素のリストを含む組成物、プロセス、方法、物品又は装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明確に列挙されていないか又はそのような組成物、プロセス、方法、物品若しくは装置に固有の他の要素を含み得る。
【0028】
移行句「からなる」は、明記されていないあらゆる要素、工程、又は原料を除外する。請求項における場合、そのような句は、それらと通常関係がある不純物を除いて列挙されるもの以外の材料の包含を請求項から排除する。語句「からなる」が、前文の直後よりもむしろ、請求項の本体の条項に現れる場合、それは、その条項に記述される要素のみを限定し、他の要素は、全体として請求項から排除されない。
【0029】
移行句「から本質的になる」は、字義どおり考察されるものに加えて、材料、工程、特徴、構成成分、又は要素を含む組成物、方法又は装置を定義するために用いられ、ただし、これらの追加の材料、工程、特徴、構成成分、又は要素が、特許請求される本発明の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないことを条件とする。用語「から本質的になる」は、「含んでいる」と「からなる」との間の中間領域を占める。
【0030】
用語「含む」は、用語「から本質的になる」及び「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図する。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図する。
【0031】
量、濃度又は他の値若しくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲又は上方の好ましい値及び下方の好ましい値の一覧のいずれかとして示される場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかに関わらず、任意の上方の範囲限界又は好ましい値と、任意の下方の範囲限界又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。例えば、「1~5」の範囲が挙げられる場合、挙げられた範囲は、「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」等を含むものと解釈されるべきである。数値の範囲が本明細書で列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、その端点並びにその範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図される。
【0032】
用語「約」が値又は範囲の端点を表すのに用いられる場合、本開示は、言及される特定の値又は端点を含むと理解されるべきである。
【0033】
更に、それとは反対を明確に述べない限り、「又は」は、包括的な「又は」を意味し、排他的な「又は」を意味しない。例えば、条件A「又は」Bは、以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真である(又は存在する)且つBが偽である(又は存在しない)、Aが偽である(又は存在しない)且つBが真である(又は存在する)並びにA及びBが両方とも真である(又は存在する)。
【0034】
本明細書で用いる場合、用語「a」及び「an」は、「少なくとも1つ」及び「1つ、又は2つ以上」の概念を含む。
【0035】
多くの態様及び実施形態を上述してきたが、これらは、例示的であるに過ぎず、限定的ではない。本明細書を読んだ後に、当業者は、他の態様及び実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく可能であることを正しく認識する。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0036】
ヒートシンク
図1を参照すると、本明細書中で開示するものは、ベース部110と、ベース部の一面(即ち、上面)から突出する複数のフィン120とを備えるヒートシンク100であり、ここで、ベース部は長さ(L1)、幅(W1)、及び厚さ(H1)を有し、各フィンは厚さ(L2)、幅(W2)、及びベース部の上面から測定した突出高さ(H2)を有している。
【0037】
ベース部の好ましい寸法は、長さ(L1)が5mm~300mmの範囲にあり、幅(W1)が5mm~300mmの範囲にあり、厚さ(H1)が0.03mm~200mmの範囲である。各フィンの好ましい寸法は、厚さ(L2)が2.0mm以下、若しくは0.03mm~1.5mm、又は0.05mm~1.0mmの範囲にあり、幅(W2)がW1の0.5~2.0倍、若しくはW1の0.7~1.5倍、又はW1と略同じにあり、突出高さ(H2)が3mm以上、若しくは5mm以上、又は10mm以上である。フィンの数は調整可能であり、一般には、フィンの間に十分な空気の流れができるように、ベース部の長さ(L1)の10mm当たり0.5~10枚の範囲にある。
【0038】
本発明のヒートシンクは、ベース部及び複数のフィンの分離された部分によって形成されてもよく、レーザはんだ付け、接着、挿入、縫合、又はそれらの組み合わせによって共に組み立てられてもよい。本発明のヒートシンクは様々な構成を有していてもよく、例えば、ベース部の表面は、図2(A)及び(B)に示すように平坦であってもよいか、又は、図2(C)及び(D)に示すように、フィンの接続部分と一致する形状を切り欠いた複数のスロットを有する凹凸形状であってもよい。フィンの接続部分は、平坦であっても、くさび形であっても、湾曲していても、フランジを有していてもよい(図2(B)を参照)。加えて、図2(E)及び(F)に示すように、ベース部に切り込みの入ったスリットを設けてもよく、ベース部のスリットに帯状の熱伝導性フィルム又はそれから作成された積層体を通すことによって、フィンを形成してもよい(図2(F)を参照)。或いは、ベース部及びフィンは、帯状の熱伝導性フィルム又はそれから作成された積層体を折り曲げることによって作成され、帯が構成を保持するのに十分な剛性を有する限り、別のベース部に取り付けられなくてもよい(図2(G)及び(H)を参照)か、若しくは、図5(B)に示すように、熱伝導性フィルムから構成される積層体ブロックを切断することによって作成されてもよいか、又はベース部を3D形状にし、フィンは3D形状のベース部に一致する形状を有する。別のベース部なしで折り曲げることにより作成されたヒートシンクは、剥離フィルム/紙と共に接着テープに接着されてもよい。前記剥離フィルム/紙は、電子デバイスの発熱部品への良好な取り付けを可能にするために、ヒートシンクが使える状態になった場合に除去されてもよい。
【0039】
本発明のヒートシンクにおいて、各フィンは、正方形、長方形、円形、楕円形、六角形、又は図3(A)に示すように幅方向に見て不規則な形状のシートであってもよい。本発明のヒートシンクにおいて、各フィンはまた、断面形状が三角形、正方形、長方形、円形、又は六角形の複数のセルから構成される薄板であってもよい(図3(B))。更に、フィンは相互接続されて、幅方向に沿って複数の空気経路を有する放熱ブロックを形成してもよく、各空気経路は、三角形、正方形、長方形、円形、又は六角形の断面形状を有していてもよい(図3(C))。
【0040】
当業者であれば、特定の用途及び電子デバイス内のヒートシンクに許容される空間に応じて、フィンの適切な形状及び接続部分の設計を選択することに困難はないであろう。
【0041】
本発明のヒートシンクにおいて、ベース部は少なくとも1層の第1のポリマーフィルムで構成され、フィンは少なくとも1層の第2のポリマーフィルムで構成される。第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは両方とも異方性熱伝導フィルムである。本明細書で用いる場合、用語「熱伝導性」及び「熱伝導率」は、「TC」と省略される可能性があり、例えば、「熱伝導性フィルム」は「TCフィルム」と省略されたり、「より高い熱伝導率方向」は「より高いTC方向」と省略されたりする。各ポリマーフィルムは、独立して、直交方向よりも一方向において高い面内TCを有する。ポリマーフィルムの面貫通方向の熱伝導率は概して低く、1W/m・K以下、又は0.5W/m・K未満である。第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムの詳細を以下で説明する。
【0042】
第1のポリマーフィルムの厚さに応じて、ベース部は、積層、熱成形、縫合、又はこれらの組み合わせによって、任意に隣接するポリマーフィルム間に接着剤を塗布することによって、複数の第1のポリマーフィルムから形成されてもよい。第1のポリマーフィルムは、図4に示す黒矢印により表すように、それらのより高いTC方向に対して隣接するポリマーフィルム間で0°~90°の範囲の配向角θ1で積層されていてもよい。配向角θ1は、30°、45°又は60°等の0°~90°の整数であってもよく、好ましくは、より良好な全体のTC性能及び/又は無駄のないTCフィルムの最大限の使用の理由から、0°又は90°である。結果として得られたベース部は、一方向(単一方向)又は長さ方向及び幅方向の両方のどちらか一方においてより高い面内熱伝導率を有していてもよい。
【0043】
第2のポリマーフィルムの厚さに応じて、各フィンは、積層、熱成形、縫合、又はこれらの組み合わせによって複数の第2のポリマーフィルムから形成されてもよく、任意に、隣接するポリマー薄膜間に接着剤が塗布される。第2のポリマーフィルムは、それらのより高いTC方向に対して隣接するポリマーフィルム間で0°~90°の範囲の配向角θ2で積層される。配向角θ2もまた、上述の理由から0°又は90°であることが好ましい。
【0044】
第1及び第2のポリマーフィルム
ポリマーが1W/m・K未満の熱伝導率を有していることは公知である。しかし、高い結晶化度及び鎖配向を有する配向ポリマー繊維又はフィルムは、より高い熱伝導率を有する傾向がある。ポリマー中の熱エネルギーは、共有結合したポリマー鎖に沿って運ばれる可能性があり、配向ポリマーの場合、熱伝導率は、結晶化度、分子量、及び分子量分布を含む多くの因子に依存する。
【0045】
第1及び第2のポリマーフィルムは、異方性熱伝導率を得るためにポリマー鎖が実質的に整列するように製造される。これらの異方性熱伝導フィルムは、一方向の熱伝導率が直交方向の熱伝導率よりも高く、前記高い熱伝導率の範囲は、約10W/m・K~約100W/m・K、若しくは約20W/m・K~約80W/m・K、又は約30W/m・K~約60W/m・Kである。
【0046】
多くの公知の異方性熱伝導フィルムは、面内熱伝導率を高める(最大400W/m・K)よう、グラファイト、窒化ホウ素等の熱伝導性充填材を組み込んでもよいことに留意されたい。しかし、本発明のヒートシンクにおいて用いられる好適な異方性熱伝導フィルムは、5W/m・K以上の熱伝導率を有する充填材を含んでおらず、その結果、第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムの機械的及び電気的特性は損なわれない。熱伝導性充填材の例には、タルク、アルミナ酸化物、ZnO、MgCO3、ZnS、CaO、MgO、ZnO、TiO2、AlN、BN、MgSiN2、SiC、SiN、グラファイト、膨張グラファイト、セラミック被覆グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、黒鉛化カーボンブラック、カーボンブラック、及びフラーレンを含む。
【0047】
本発明のヒートシンクが、高周波数及び/又は高速の信号を送信及び受信する電子デバイス/部品のための用途を有していてもよいことを考慮すると、第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは、高い抵抗率及び低い信号損失を含む優れた電気特性を有していることが好ましい。第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは、それぞれ独立して、1015Ω・cm未満の抵抗率を有するのが好ましい。第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは、それぞれ独立して、10GHz、若しくは20GHz、又は30GHzにおいて、4以下、若しくは3.2以下、或いは2.8以下、又は2.5以下の誘電率(Dk)、及び10GHz、若しくは20GHz、又は30GHzにおいて、0.001以下、若しくは0.0005以下、又は0.0003以下の誘電正接(Df)を有するのが好ましい。
【0048】
配向ポリマーフィルムは、前駆体フィルムを加熱し、一方向に沿って(即ち、単一方向に)5~100以上の延伸比で数回延伸することによって製造してもよい。代替方法には、押出し成形、スピンコーティング、射出成形、固体押出し、エレクトロスピニング等を含む。前述のプロセスの結果として形成されたポリマーフィルムは、延伸方向における面内熱伝導率が向上しており、概して高結晶質になる。
【0049】
本発明のヒートシンクの幾つかの実施形態において、第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは、それぞれ独立して、少なくとも75%、若しくは少なくとも80%、或いは少なくとも85%、又は少なくとも90%の結晶化度を有する。
【0050】
熱エネルギーが整列したポリマー鎖に沿って運ばれるので、分子鎖の長さは長い方が好ましい。従って、異方性熱伝導フィルムを形成するのに適したポリマーの分子量は極めて高く、少なくとも1,000,000g/モル、又は少なくとも2,000,000g/モルの平均分子量を有し、2,000万g/モル以下の平均分子量を有することが好ましい。
【0051】
本明細書中で用いるのに適した第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは、それぞれ独立して、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)(PBO)、ポリヒドロキノン-ジイミダゾピリジン(PIPD)、及びポリ(フェニレン)ベンゾビスチアゾール(PBZT)からなる群から選択されるポリマーから構成される。
【0052】
製造の容易性及び原料管理を考慮すると、第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは同一であることが好ましい。当業者は、周知の文献の方法に従って、又は市販されているものを購入して、配向ポリマーフィルムを用意することができる。市販されているものは、一般に、繊維の形での異方性TCポリマー材料を提供している。繊維から構成される単一方向積層体もまた、第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムとして用いてもよい。市販されているものの例には、DSM製のDyneema(登録商標)(即ち、UHMWPE繊維/UD積層体)、東洋紡製のZylon(登録商標)HM(即ち、PBO繊維)、及びAkzoNobel製のM5 AS(即ち、PIPD繊維)を含むが、これらに限定されない。
【0053】
異方性フィルムの商業的入手性を考慮すると、第1のポリマーフィルム及び第2のポリマーフィルムは、少なくとも1,000,000g/モルの平均分子量を有するポリエチレンから構成されていることが好ましい。前記ポリエチレンは超高分子量PE(UHMWPE)としても公知である。適切なUHMWPEフィルムの厚さは、約10~約360μm、若しくは約25~約250μm、又は約50~約200μmの範囲を有する。
【0054】
熱伝導性PEフィルムは、E.I.du Pont de Nemours and Company(米国)(以下、「DuPont」と称する)から、異なる厚さを有する商品名Temprion(商標)OHS、及び帝人から、厚さ55μmを有するEndumax(登録商標)フィルムTA23として市販されている。
【0055】
ヒートシンクを製造するための方法
先に述べたように、本発明は、また、本発明のヒートシンクを製造するための方法であって、
(i)ベース部と、複数のフィンとを設けるステップと、
(ii)レーザはんだ付け、接着、挿入、縫合、又はそれらの組み合わせによって、フィンをベース部上に組み立てるステップと、を含み、
ここで、
ベースは1つ以上の第1のポリマーフィルムから構成され、
ベース部の表面は平坦であり、複数のスロット又はスリットを有する凹凸があり、各スロットはフィンの接続部分と一致する形状又は3D形状を有し、
各フィンは1つ以上の第2のポリマーフィルムから構成され、
各フィンの接続部分は、平坦であるか、くさび形であるか、湾曲しているか、フランジを有するか、又は3D形状のベース部と一致する形状である、方法も提供する。
【0056】
フィンは、フィンの高TC方向の少なくとも1つがベース部に垂直であるように、即ち、ヒートシンクの垂直方向に沿って配置されることが好ましいことに留意されたい。しかし、ベース部は、より高い熱伝導方向のうちの1つがヒートシンクの垂直方向又は水平方向のどちらか一方であってもよい。
【0057】
当業者であれば、電子デバイスの発熱部品の位置及び特性に基づいて適切に選択されるベース部上の複数のフィンの大きさ、形状、及び配置を有する本発明のヒートシンクを容易に設計及び作成することができる。例えば、3D形状のベース部及び一致するフィンは、金型を用いる熱成形によって製作されてもよい。一般に、ヒートシンクによって提供される増大した表面積は、また、周囲環境への対流/放射熱伝達を向上させることができる。
【0058】
本発明のヒートシンクは、金属製ヒートシンク固有の欠点を克服する。ポリマーを含有する熱伝導性充填材から構成されるヒートシンクと比較して、本発明のヒートシンクは、設計において極めて柔軟性の高い向上した除熱効率を示す。
【0059】
ヒートシンクの利用
先に述べたように、本発明は、更に、電子デバイスの熱を放散させるための方法であって、
(a)少なくとも1つの発熱部品を有する電子デバイスを設けることと、
(b)本発明のヒートシンクを発熱部品上に配置することであって、ベース部が発熱部品と接触しているか又はその近傍にあることと、
(c)任意に、ヒートシンクと発熱部品との間に熱伝導性接着剤又は耐熱性接着剤を塗布することと、を含む方法を提供する。
【0060】
本発明のヒートシンクは、受動熱交換器として電子デバイス内で用いられてもよく、温度を大幅に変化させることなく任意の熱量を吸収する蓄熱体として機能してもよい。本発明のヒートシンクからの放熱は、周囲又は循環空気流への対流又は放射により達成することができる。
【0061】
電子デバイスは、例えば、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ネットワークシステム、コンピュータ、モニタ、タブレットPC、ラップトップPC、ネットブックPC、テレビ、ビデオゲーム機、スマートウォッチ、自動車部品等であってもよい。しかし、電子デバイスはそれらに限定されず、データを処理する他の任意の電子デバイスであってもよい。
【0062】
電子デバイスは、一般に、チップ関連部品、ネットワーク関連部品、その他の部品、アンテナモジュール等を含んでいてもよい。チップ関連部品の例には、揮発性メモリ(例えば、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM))、不揮発性メモリ(例えば、読出し専用メモリ(ROM))、フラッシュメモリ等のメモリチップ、中央処理装置(例えば、中央処理ユニット(CPU))、グラフィックプロセッサ(例えば、グラフィック処理ユニット(GPU))、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、暗号プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ等のアプリケーションプロセッサチップ、アナログデジタル(ADC)コンバータ、特定用途向け集積回路(ASIC)等のロジックチップ等を含む。これらの中で、CPU、GPU、又はDSPを含むがこれらに限定されないアプリケーションプロセッサチップは、他の電子部品に比べて発熱量が多いことが知られているため、本発明のヒートシンクはその発熱を放散させることに適している。
【0063】
発熱部品及びヒートシンクの両方の表面は、例えば、凸状又は凹状の非平面の境界面を有する可能性があることに留意されたい。効率的な冷却を確実にするために、熱伝導性接着剤又は耐熱性接着剤の薄い層をヒートシンクと発熱部品との間に塗布して間隙を充填してもよい。熱伝導性接着剤又は耐熱性接着剤の塗布は、効率的な熱伝達を保証するだけでなく、ヒートシンクをしっかりと取り付けるため、電子デバイスはモバイルデバイスであってもよい。
【0064】
図8を参照すると、本発明のヒートシンク100は、PCB800の一部である発熱部品810の上に載置される。熱伝導性接着剤又は耐熱性接着剤は、ベース部110と発熱部品810との間の境界面に塗布されてもよい。液状の熱伝導性接着剤又は耐熱性接着剤は、最大1.0mmの厚さを有する薄層を形成するよう、定量吐出、ステンシル、又は噴霧によって、ベース部110又は発熱部品810の接触面に塗布されてもよい。熱伝導性接着剤又は耐熱性接着剤はまた、剥離フィルムの有無に関わらずフィルム又はテープの形で存在してもよい。当業者は、任意の共通の方法又はツールを用いて、容易にそれらを塗布することができる。
【0065】
本明細書中に開示するように、本発明はまた、本発明のヒートシンクを備え、上で説明した方法によって得られる電子デバイスにも関連している。
【0066】
本発明の電子デバイスの一実施形態において、発熱部品は、中央処理ユニット(CPU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、又はグラフィック処理ユニット(GPU)のためのアプリケーションプロセッサチップである。
【0067】
本発明の電子デバイスの別の実施形態において、発熱部品は発光ダイオード(LED)ではない。
【0068】
以下の実施例及び比較例を、1つ以上の実施形態の特定の詳細を説明するために提供する。しかし、本発明の実施形態が説明する特定の詳細に限定されないことは、言うまでもない。
【実施例0069】
材料:
F1:異方性TCフィルム、DuPontから、商品名:TEMPRION(商標)OHSで市販されており、フィルム厚60μm、面内熱伝導率45W/m・K(縦方向)、0.2W/m・K(横方向)、及び面貫通熱伝導率0.2W/m・Kを有し、10GHz及び30GHzにおいて、Dk値はそれぞれ2.3及び2.2であり、Df値はそれぞれ0.00023及び0.00022である。
F2:F1の2層積層体であり、2つのフィルムは、それらのより高い熱伝導方向に対して配向角90°で積層され、従って、縦方向及び横方向の両方において約20W/m・Kの面内熱伝導率を有する。
F3:隣接するフィルム同士の配向角が90°であるF1を4層以上積層したF1の多層積層体。言い換えれば、より高い熱伝導方向を先に配置したフィルムに対して垂直になるように交互に配置することによって、各フィルムを配置する。
F4:厚さ250μmを有するPETフィルムをSunliky社から購入した。カタログ番号:NS2#250MPET。
F5:厚さ50μmのPETフィルムをSunliky社から購入した。カタログ番号:NS2#50MPET。
F6:六方晶窒化ホウ素(h-BN)を13重量%含有する、膜厚110μmのPEフィルム。PEフィルムは、PEペレット(DOWから入手、カタログ番号:XUS61850.00)とh-BN粒子(Dan Dong Institute of Chemical Engineeringから購入)とをブレンドし、次いで、押出してh-BN含有ペレットを形成することによって作製した。h-BN含有ペレットを140℃でホットプレスして、面内TC2.36W/m・K(無方向性)及び貫通面TC0.30W/m・Kを有する異方性TCフィルムを得た。
Adh1:耐熱性アクリル系接着剤、カタログ番号:ELG14010、Elegant社から購入。Adh2:熱伝導率が0.6W/m・Kである熱伝導性接着剤、カタログ番号:TB8005、Elegant社から購入。
【0070】
実施例1の準備
図5に示すように、大きさ20mm(L1)×20mm(W1)×7mm(即ち、H1+H2)を有する多層積層体(F3)を、ウォータージェットカッターを用いて切断し、本発明の一実施形態としてのヒートシンクサンプルを得た。サンプルは、12枚のフィンが等間隔に配置されており、2枚のフィンの間隔は約1.0mmであった。各フィンは、幅20mm(W2)、高さ5mm(H2)、フィン厚(L2)0.6mmであった。結果として得られたヒートシンクサンプルのベース部は、高い方のTC方向がヒートシンクサンプルの垂直方向と一致していた。
【0071】
実施例2の準備
大きさ20mm(L1)×20mm(W1)×2mm(H1)を有する多層積層体(F3)をベース部として用い、高い方の熱伝導方向がヒートシンクサンプルの垂直方向であった。図6に示すように、2層積層体610(F2、大きさ:20mm×120mm)の矩形ストリップを折り曲げて8枚のフィンを形成した後、余分な2層積層体を切断した。各フィンは、厚さ(L2)約0.25mm、高さ(H2)5mm、及びフィン間の間隔約2.5mmを有していた。折り曲げたフィンの1片を、接着剤(adh1)の薄層を塗布することによってベース部620に接着して、本発明の一実施形態である図2(A)に示すような構成を有するヒートシンクサンプルを形成した。
【0072】
実施例3の準備
大きさ20mm(L1)×20mm(W1)×0.36mm(H1)を有する多層積層体(F3)をベース部として用い、高い方の熱伝導方向をヒートシンクサンプルの水平方向とした。実施例2において説明した手順と同様に、2層積層体(F2)(大きさ:20mm×120mm)の矩形ストリップを折り曲げて8枚のフィンを形成した。各フィンは、厚さ(L2)約0.25mm、高さ(H2)5mm、及びフィン間の間隔約2.5mmを有しており、その後、接着剤(adh1)の薄層を塗布することによってベース部に接着し、余分な材料を切断して、本発明の一実施形態である図2(A)に示すような構成を有するヒートシンクサンプルを形成した。
【0073】
実施例4の準備
大きさ20mm(L1)×20mm(W1)×1mm(H1)を有する多層積層体(F3)をベース部として用い、高い方の熱伝導方向をヒートシンクサンプルの水平方向とした。その後、ベース部の表面にナイフで切り込みを入れ、長さ16mmの8本のスリットを形成した。2層積層体(F2)の1片を8枚の矩形フィンに切断し、各フィンは厚さ0.12mm、幅16mm、及び高さ6mmを有していた。各フィンをベース部上のスリットに挿入してヒートシンクサンプルを組み立て、本発明の一実施形態である図2(E)に示すような構成を有するヒートシンクサンプルを形成した。
【0074】
実施例5の準備
大きさ20mm(L1)×20mm(W1)×0.36mm(H1)を有する多層積層体(F3)をベース部として用い、高い方の熱伝導方向をヒートシンクサンプルの水平方向とした。ベース部の表面にナイフで切り込みを入れ、ベース部の幅方向に平行な10本のスリットを形成した。各スリットは、長さ約16mm、及び2つのスリット間の間隔2mmを有していた。単層フィルム(F1、大きさ:16mm×200mm)の矩形片を、底部及び上部から交互にベース部のスリットに挿入し、フィンとして5つのループを形成した(各ループの円周は36mm、高さは約17mm程度と推定)。ヒートシンクサンプルは、本発明の一実施形態である図2(F)に示すような構成とした。
【0075】
実施例6の準備
図7に示すように、本発明の一実施形態として、2層積層体710(F2、大きさ:20mm×380mm)の矩形片を折り曲げて、各ループの円周が40mm、2つのループ間の間隔が約2mm、ベース部縁部から2mmである9つのループを形成し、次いで、剥離フィルムを有する接着テープ720の1片に接着して、ヒートシンクサンプル700を形成した。
【0076】
実施例7の準備
実施例2において説明した手順と同様に、2層積層体(F2、大きさ:20mm×380mm)の矩形片を折り曲げて、高さ20mm(H2)、厚さ0.25mm(L2)の9枚のフィンを形成し、フィン間の間隔を約2mmとした後、剥離フィルムを有する接着テープの1片に接着して、本発明の一実施形態である図2(H)に示すような構成を有するヒートシンクサンプルを形成した。
【0077】
実施例8の準備
実施例2において説明した手順と同様に、2層積層体(F2、大きさ:20mm×150mm)の矩形片を折り曲げて、高さ7mm(H2)、厚さ0.25mm(L2)の9枚のフィンを形成し、フィン間の間隔を約2mmとした後、接着テープの1片に接着して、本発明の一実施形態である図2(H)に示すような構成を有するヒートシンクサンプルを形成した。
【0078】
比較例1(CE1)の準備
実施例6において説明した手順と同様に、50μmのPETフィルム(F5、大きさ:幅20mm×長さ200mm×高さ0.05mm)の矩形片を折り曲げて、各ループの円周38mmを有する5つのループをフィン710として形成した。大きさ20mm(L1)×20mm(W1)×0.25mm(H1)を有する250μmのPETフィルム(F4)をベース部720として用いた。次いで、接着テープの1片を適用することによってループをベース部に接着して、比較ヒートシンクサンプル(図7に示すような)を形成した。
【0079】
比較例2(CE2)の準備
アルミニウムを鋳造したヒートシンクをDongguan Haolong hardware productsから購入して、比較例として用いた。アルミニウムヒートシンクは、20mm(W1)×20mm(L1)×2mm(H1)のベース部と、8枚の等間隔に配置されたフィンとを有していた。各フィンは大きさ20mm(W2)×1mm(L2)×5mm(H2)を有していた。
【0080】
比較例3(CE3)の準備
実施例8において説明した手順と同様に、1片の矩形フィルム(F6、大きさ:20mm×150mm)を折り曲げて、高さ7mm(H2)及び厚さ0.22mm(L2)を有する9枚のフィンを形成し、フィン間の間隔を約2mmとした後、接着テープの1片に接着して、図2(H)に示すような構成を有するヒートシンクサンプルを比較サンプルとして形成した。
【0081】
試験方法
放熱性能評価は、図9に示すような発熱抵抗体アセンブリ900を用いて行った。発熱抵抗体910(8.5mm×10mm×4.5mm、モデル:TO220 35W、Xinlong Electronics製、調整可能な直流電源(図9には図示せず)(カタログ番号30V5A、DP3005ET、MESTEK製)を有する)及びステンレス鋼製ヒートスプレッダ920(10mm×13mm×1mm)を用いて、動作中のパワーチップを模倣した。発熱抵抗体アセンブリ(910及び920)を、熱伝導率0.6W/m・Kを有する熱伝導性接着剤(adh2)によって薄いアルミニウムプレート930(20mm×20mm×0.8mm)に接着した。熱電対940が、アルミニウムプレートの温度を測定するために、薄いアルミニウムプレート930の裏側にテープで取り付けられた。
【0082】
発熱抵抗体910は、4ワットに設定された電力を有し、約10分間加熱され、その結果、アルミニウムプレート930は、熱電対940によって測定されるように5分間に安定した温度に達した。アルミニウムプレートの上部に何のサンプルも配置されていない場合に、定常温度の読み取り値をT1として記録し、これを基準温度として用いた。次いで、図9に示すように、ヒートシンクサンプル100を加熱したアルミニウムプレートの上に置き、温度読み取り値が5分間安定するまでヒートシンクサンプルにより熱を放散させ、T2として記録した。T1及びT2の間の差(ΔT)によって、除熱性能を判断し、データを表1に列挙する。冷却の程度が大きいほど、除熱性能は良好である。
【0083】
体積抵抗率(Ω・cm):ヒートシンクを作成するために用いた各材料(10cm×10cmの大きさ)の体積抵抗率を、ASTM D257法に従って、Keithley6517A電位計/高抵抗計を用いることによって測定した。測定データを表1に列挙する。アルミニウムの体積抵抗率は公開情報から取得した。
【0084】
表1のデータから明らかなように、熱伝導性充填材を含まないポリマーフィルムから作成されたE1~E8の本発明のヒートシンクサンプルは、-11℃~-28℃の範囲の冷却度を有する優れた除熱性能を示した。
【0085】
E6とCE1とを比較すると、両ヒートシンクサンプルは同じ方法で構築され、同様のフィン高さ(約19mm対約18mm)であり、E6のサンプルは、CE1の除熱性能(即ち、+1℃)よりも優れた-25℃の除熱性能を示した。CE1のサンプルは、E6のものよりも多くのフィンを有し、従って、放熱のための総表面積がより大きいことに留意されたい。CE1のサンプルは、TC充填材を含まないPETフィルムで構成されているため、除熱性能が劣ることが予想される。
【0086】
E8とCE3とを比較すると、両ヒートシンクサンプルは同じ構成、フィン数、フィン高さを有し、フィン厚さが僅かに異なるだけであり、E8のサンプルは、CE3の除熱性能(即ち、-3℃)よりもはるかに良好な-17℃の除熱性能を示した。CE3のサンプルは、h-BNを13重量%含有するポリエチレンで構成されていることに留意されたい。ポリマーフィルム/マトリックス中のTC充填材の含有量を増加させて除熱性能を向上させてもよいが、前記高TC充填材含有材料から作成されたヒートシンクは、機械的特性が低下し、望ましくない高いDk/Df値を有することが予想される。
【0087】
更に、E1、E2、E6及びE7のヒートシンクサンプルは、驚くべきことに、CE2のアルミナヒートシンクサンプルに近い除熱性能(-31℃)を示した。結果は、異方性熱伝導フィルムから構成される本発明のヒートシンクが、最適化された設計(例えば、フィン数、フィン高さ、及び構成)を通して、金属製ヒートシンクのものと同様の優れた除熱性能を提供する可能性があることを示唆している。言うまでもなく、本発明のヒートシンクはまた、高い抵抗率、低いDk値及びDf値、並びに軽量等の優れた電子特性を有し、従って、高周波数及び/又は高速用途のための電子デバイスにおける使用にそれらを十分に適したものにする。
【0088】
【表1】
【符号の説明】
【0089】
100 ヒートシンク
110、620 ベース部
120、710 フィン
610 2層積層体
700 ヒートシンクサンプル
720 接着テープ
810 発熱部品
900、910、920 発熱抵抗体アセンブリ
adh2 熱伝導性接着剤
L1 長さ
L2 厚さ
H2 突出高さ
H1 厚さ
W1、W2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】