(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023852
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】電磁波ビームを整形するための光学装置およびその使用、ビーム処理装置およびその使用、ならびにビーム処理方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/082 20140101AFI20220201BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20220201BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/38 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159550
(22)【出願日】2021-09-29
(62)【分割の表示】P 2020540790の分割
【原出願日】2019-01-28
(31)【優先権主張番号】18153878.6
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503168692
【氏名又は名称】バイストロニック レーザー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラタイ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュタインリン マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シャイディガー ジーモン
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CB03
4E168CB05
4E168CB12
4E168CB19
4E168EA17
(57)【要約】
【課題】電磁波ビームを整形するための改善された光学装置、および/または改善されたビーム処理装置、および/または改善された処理方法を提供すること。
【解決手段】電磁波ビームを整形するための光学装置およびその使用、ビーム処理装置およびその使用、ならびにビーム処理方法が提供される。光学装置は、ビーム伝播方向に配置された光学素子と、ビーム伝播方向に対して垂直な平面のx方向およびy方向のうちの少なくとも1つの方向に、焦点振動経路に沿って焦点の振動を引き起こすための、光学素子に機能的に接続された励振手段とを有する。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波ビームを整形するための光学装置であって、前記ビームが、光源によって生成され、ビーム伝播方向および焦点を有し、前記光学装置は、
ビーム伝播方向に配置された光学素子(7、7a、7b、2b、3、4、70)と、
前記ビーム伝播方向に対して垂直な平面のx方向およびy方向のうちの少なくとも1つの方向に、制御可能な焦点振動経路(24)に沿って前記焦点の振動を引き起こすための、前記光学素子に機能的に接続された励振手段(6、60、66、600)であり、前記x方向と前記y方向とが互いに対して平行でない、励振手段と、
を備え、
前記励振手段が、前記焦点振動のx方向成分を引き起こすための少なくとも第1の励振ユニット(15、17、150)、および前記焦点振動のy方向成分を引き起こすための少なくとも第2の励振ユニット(15、17、150)を有し、前記光学装置(1、100、110、120)が、前記励振手段を制御するための制御ユニット(61)をさらに備え、
それぞれの前記光学素子の前記励振手段への前記機能的な接続が、前記光学素子のみの振動反復運動を引き起こすためであることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置であって、前記焦点振動が少なくとも1つの周波数(ω)を有し、および/または、前記焦点振動経路が経路長(l)を有することを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学装置であって、前記周波数(ω)が100Hz以上、好ましくは2kHz以上であることを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光学装置であって、前記経路長(l)が少なくとも0.1mm、好ましくは0.5mm以上であることを特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光学装置であって、前記励振手段が、前記焦点振動のz方向成分を引き起こすための第3の励振ユニットを有し、前記z方向が前記x-y平面に対して垂直であることを特徴とする光学装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光学装置であって、前記x方向、前記y方向、および前記z方向のうちの少なくとも1つの方向に前記励振手段によって励振可能な前記焦点振動の振幅が±1mm以下であることを特徴とする光学装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の光学装置であって、前記制御ユニット(61)が、既定の2次元および/または3次元のリサージュ図形(24)のデータベースを含み、生成される前記焦点振動経路が前記既定のリサージュ図形のうちの1つ、またはそれらのうちの2つ以上を組み合わせたものに一致するように、前記制御ユニットが前記励振手段を制御するように構成されていることを特徴とする光学装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の光学装置であって、前記制御ユニットが、前記x方向、前記y方向、および前記z方向のうちのいずれかの方向の前記焦点振動の位相を独立に調節するように構成されていることを特徴とする光学装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の光学装置であって、前記制御ユニットが、前記ビームの処理方向、特に切断方向に応じて前記x-y平面で前記振動経路の方向付けをするように構成されていることを特徴とする光学装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の光学装置であって、前記光学素子が、合焦レンズ、平行化レンズ、またはそれらの組合せから選択されたレンズ装置(7、7a、7b)であり、前記レンズ装置が、前記x-y平面に対して平行なX-Y平面(12a、12b)の前記レンズ装置の振動反復運動を与えるように前記励振手段の励振を伝えるために前記励振手段に機能的に接続され、前記レンズ装置の前記振動反復運動が、x方向および/またはy方向の前記焦点の前記振動を引き起こすことを特徴とする光学装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の光学装置であって、前記光学素子が、光ファイバ(2b)、ファイバカップリング(3)、エンドキャップ(4)、またはそれらの任意の組合せのうちの1つであり、前記光学素子の自由端が、前記x-y平面に対して平行なX-Y平面(12a、12b)の前記光学素子の前記自由端の振動反復運動を与えるように前記励振手段の励振を伝えるために前記励振手段に機能的に接続され、前記光学素子の前記自由端の前記振動反復運動が、x方向および/またはy方向の前記焦点の前記振動を引き起こすことを特徴とする光学装置。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の光学装置であって、前記光学素子が、中心を有し、前記ビームを偏向角だけ偏向させるように構成された軸外放物面ミラー(70)であり、前記ミラーが、前記ミラーの前記中心での接平面であるX-Y平面(12a、12b)の前記ミラーの振動反復運動を与えるように前記励振手段の励振を伝えるために前記励振手段に機能的に接続され、前記ミラーの前記振動反復運動が、x方向および/またはy方向の前記焦点の前記振動を引き起こすことを特徴とする光学装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の光学装置であって、それぞれの前記光学素子の前記励振手段への前記機能的な接続が、それぞれの前記光学素子の前記振動反復運動のZ方向成分をさらに与えるように前記励振手段の前記励振を伝えるためであることを特徴とする光学装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の光学装置であって、前記励振手段が、圧電アクチュエータ、水晶発振器、偏心器、振動電磁場を生成するための装置、およびMEMS発振器から選択された少なくとも1つの素子を含むことを特徴とする光学装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の光学装置であって、前記焦点の大きさが、前記光学システムの倍率と前記電磁ビームの初期直径によって制御可能であることを特徴とする光学装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の光学装置であって、前記焦点の大きさが、少なくとも0.1mm、好ましくは0.15mm以上で0.4mm以下であることを特徴とする光学装置。
【請求項17】
電磁波ビームを整形するための請求項1から16のいずれか1項に記載の光学装置の使用。
【請求項18】
電磁波ビームによって処理される材料の表面に前記電磁波ビームを向けるための処理ヘッド、特に切断ヘッドを備えるビーム処理装置、特にビーム切断装置であって、前記処理ヘッドが請求項1から16のいずれか1項に記載の光学装置を含むことを特徴とするビーム処理装置。
【請求項19】
前記電磁波ビームによって切断される材料の表面を切削するためのものであることを特徴とする請求項18に記載のビーム処理装置の使用。
【請求項20】
請求項1から16のいずれか1項に記載の光学装置または請求項18に記載のビーム処理装置を使用したビーム処理方法、特にビーム切断方法であって、
光源(2a)によって電磁波ビームを生成するステップであり、前記ビームがビーム伝播方向および焦点を有する、ステップと、
前記ビームをビーム伝播方向に配置された光学素子(7、7a、7b、2b、3、4、70)に照射するステップと、
前記ビーム伝播方向に対して垂直な平面のx方向およびy方向のうちの少なくとも1つの方向に、焦点振動経路(24)に沿って前記焦点を振動させるステップであり、前記x方向と前記y方向とが互いに対して平行でない、ステップであり、
前記焦点振動が、前記焦点振動の前記x方向成分を引き起こすための少なくとも第1の励振ユニット、および前記焦点振動の前記y方向成分を引き起こすための少なくとも第2の励振ユニット(15、17、150)を有する励振手段(6、60、66、600)によって引き起こされる、ステップと、
前記電磁波ビームによって処理される材料の表面を処理、特に切削するステップと、
を含み、
前記焦点振動は、前記光学素子のみの振動反復運動を引き起こすためのそれぞれの前記光学素子の前記励起手段への機能的な接続を有する励起手段(6、60、66、600)によって引き起こされる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波ビームを整形するための光学装置およびその使用、ビーム処理装置およびその使用、ならびにビーム処理方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
電磁波ビームを使用した被加工物の処理、例えば、金属板のレーザビーム切断に関する主な要望事項は、処理された被加工物の品質を改善することである。
【0003】
例えば、レーザビームを使用して金属板を切断するとき、通常、活性または不活性なアシストガスが用いられる。活性ガスとして酸素を使用すると、金属は、レーザビームによって燃焼温度まで加熱された後、燃焼および気化する。酸素と金属との間の反応は実際には、熱の形態の追加エネルギーを生成し、これが切断プロセスを支える。非常に低粘度の溶融した液体金属は、酸素ジェットの剪断力によって切断部から除去される。窒素などの不活性ガスを用いて切断するとき、素材はレーザパワーのみで溶融され、ガスジェットの運動エネルギーによって切断カーフから吹き飛ばされる。
【0004】
被加工物を高品質に処理するために、最適化されたビーム品質が望まれるが、それは、ビームスポット直径、および必要に応じて、ビームスポット形状を変えることによって実現することができる。ビームスポットは、電磁波ビームの伝播方向に対して垂直な、例えば焦点面内の電磁波ビームの強度分布として理解することができる。処理される被加工物の厚さおよび材料、ならびに特定の処理のタイプに応じてビームスポットを調節すると、ビーム処理装置の性能を向上させることができる。
【0005】
ビーム品質は、例えば、ビームパラメータ積(BPP:Beam Parameter Product)を調節するために、一定の伝播角度でビームスポット直径を変えることによって変えることができる。通常のビーム処理ヘッドを使用してこのタイプのビーム整形を実施するためには、レンズまたは伝送ファイバなどの追加の光学構成部品が必要となる。しかし、高出力レーザビーム(>1kW)で被加工物を処理するときは特に、レーザビームの自由経路内で追加の光学構成部品を使用することは不利になることがある。
【0006】
米国特許第8781269(B2)号には、様々なビームプロファイル特性でレーザビームを生成するための方法が開示されている。レーザビームはマルチクラッドファイバの一方のファイバ端部内に結合される。様々なビームプロファイル特性の出射レーザビームを生成するため、マルチクラッドファイバの内側ファイバコア内、または一方の外側リングコア内のどちらかに入射レーザビームが選択的に結合される。
【0007】
米国特許第9250390(B2)号はレーザビーム材料処理システムを対象としている。導波路内に発射されるレーザビームの入射収束角および/または発射角を変化させることで、出射スポットサイズを連続的に変化させることができる。
【0008】
EP2762263A1は、集光レンズの焦点位置を通過した後に拡がる傾向がある、内径および外径を有するリングビームを用いたレーザ切断を開示している。
【0009】
EP2778746B1には、その厚みプロファイルが互いに逆である2枚の板状光学素子を有するビーム形成用光学装置が記載されている。
【0010】
DE102015101263A1には、交互的な傾斜ファセットを含む円形表面パターンを有し、平行レーザビーム内に配置された2枚の板状光学素子が示されている。
【0011】
米国特許出願公開第20160266393(A1)号には、既知の空間的にコヒーレントな第1の光フィールドを有する光ビームを、システムからの所望の距離で必要な強度分布および平坦な波面を有する第2の光フィールドに変換するフィールドマッピング光学システムおよび方法が開示されており、その変換は、第1の光フィールドと第2の光フィールドとの間に、第2の光フィールドの逆フーリエ変換から得られる中間光フィールドを生成することによって行われる。
【0012】
EP2894004B1は、カメラと可動ミラーを有するレーザ加工用装置を対象としている。DE102014210118A1には、外側ハウジングと、外側ハウジング内に可動に支持された内側ハウジングとを有する光学システムが開示されている。内側ハウジングは、少なくとも平行化レンズおよび合焦レンズを含む。内側ハウジングは、ラジアル軸受によって半径方向に可動である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、電磁波ビームを整形するための改善された光学装置、および/または改善されたビーム処理装置、および/または改善された処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1に記載の電磁波ビームを整形するための光学装置、請求項17に記載の使用、請求項18に記載のビーム処理装置、請求項19に記載の使用、および請求項20に記載のビーム処理方法によって達成される。
【0015】
本発明の1つの実施形態は、電磁波ビームを整形するための光学装置を対象とし、ビームは、光源によって生成され、ビーム伝播方向および焦点を有し、光学装置は、ビーム伝播方向に配置された光学素子と、ビーム伝播方向に対して垂直な平面のx方向およびy方向のうちの少なくとも1つの方向に、制御可能な焦点振動経路に沿って焦点の振動を引き起こすための、光学素子に機能的に接続された励振手段であり、x方向とy方向とが互いに対して平行でない、励振手段とを含み、励振手段は、焦点振動のx方向成分を引き起こすための少なくとも第1の励振ユニット、および焦点振動のy方向成分を引き起こすための少なくとも第2の励振ユニットを有し、光学装置は、励振手段を制御するために制御ユニットをさらに含む。それぞれの光学素子の励振手段への機能的な接続は、光学素子のみの振動反復運動を引き起こすためのものである。
【0016】
焦点振動を引き起こすことにより、上記の実施形態は、x-y平面内のビームスポットの直径を大きくすることができ、その結果、ビームパラメータ積(BPP)が大きくなる。さらに、焦点振動のため、元はビーム光源から出力するビームスポットを、ビームの伝播方向に対して横方向に動かすことができ、それによって、切断プロセスの場合、被加工物の切断エッジへのエネルギー入力が、振動のないビームスポットに比べて改善される。さらに、上記の実施形態の励振手段は、電磁波ビームを供給する任意の装置に通常設けられるビーム処理または切断ヘッドなどの光学素子で具現化することができるので、ビーム整形は、電磁波ビームの自由経路内に配置される追加の光学構成部品を必要とすることなしに実現することができる。電磁波ビームは、例えば、レーザビームであってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、焦点振動は少なくとも1つの周波数(ω)を有することができる。これに加えて、またはこれに代えて、焦点振動経路は経路長(l)を有してもよい。特に、周波数(ω)は100Hz以上、好ましくは2kHz以上であってもよい。さらに、経路長(l)は少なくとも0.1mm、好ましくは0.5mm以上とすることができる。それによって、x-y平面、例えば焦点面内の電磁波ビームの強度分布の可変整形を達成することができる。これは、生成されたビームによる高品質な被加工物の切断などの処理を可能にする。
【0018】
さらなる実施形態によれば、励振手段は、焦点振動のz方向成分を引き起こすための第3の励振ユニットを有し、z方向はx-y平面に対して垂直である。したがって、引き起こされた焦点振動はz方向の成分を含むことができる。
【0019】
さらに、x方向、y方向、およびz方向のうちの少なくとも1つの方向に励振手段によって励振可能な焦点振動の振幅は±1mm以下、好ましくは少なくとも±0.01mmとすることができる。それによって、細かく調節されたビームスポット直径を実現することができる。
【0020】
上記のように、実施形態は、励振手段を制御するための制御ユニットを含む。特に、制御ユニットは、既定の2次元および3次元のリサージュ図形のデータベースを含むことができ、生成される焦点振動経路が既定のリサージュ図形のうちの1つ、またはそれらのうちの2つ以上を組み合わせたものに一致するように、制御ユニットは励振手段を制御するように構成することができる。それによって、焦点の2つ以上の調和振動の重ね合わせを実現することができる。
【0021】
さらに、制御ユニットは、x、y、およびz方向のうちのいずれかの方向の焦点振動の位相を独立に調節するように構成することができる。これによって非常に多様な振動タイプを提供することができる。
【0022】
さらに、制御ユニットは、ビームの処理方向、特に切断方向に応じてx-y平面で振動経路の方向付けをするように構成することができる。それによって、処理方向が曲線をたどるときに振動経路を回転させることができる。さらに、処理方向が直線をたどるとき、振動経路の向きを保つことができる。
【0023】
それぞれの光学素子の励振手段への機能的な接続は、光学素子のみの振動反復運動を引き起こすためのものである。特に、光学素子の振動反復運動は焦点振動を与える。それによって、焦点振動を確実に引き起こすことができる。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、光学素子は、合焦レンズ、平行化レンズ、またはそれらの組合せから選択されたレンズ装置とすることができ、レンズ装置は、x-y平面に対して平行なX-Y平面のレンズ装置の振動反復運動を与えるように励振手段の励振を伝えるために励振手段に機能的に接続され、レンズ装置の振動反復運動は、x方向および/またはy方向の焦点の振動を引き起こす。
【0025】
他の実施形態では、光学素子は、光ファイバ、ファイバカップリング、エンドキャップ、またはそれらの任意の組合せのうちの1つであってもよく、光学素子の自由端は、x-y平面に対して平行なX-Y平面の光学素子の自由端の振動反復運動を与えるように励振手段の励振を伝えるために励振手段に機能的に接続され、光学素子の自由端の振動反復運動は、x方向および/またはy方向の焦点の振動を引き起こす。
【0026】
さらなる実施形態によれば、光学素子は、中心を有し、ビームを偏向角だけ偏向させるように構成された軸外放物面ミラーとすることができ、ミラーは、ミラーの中心での接平面であるX-Y平面のミラーの振動反復運動を与えるように励振手段の励振を伝えるために励振手段に機能的に接続され、ミラーの振動反復運動は、x方向および/またはy方向の焦点の振動を引き起こす。接平面ミラーの中心での接平面におけるミラーの振動反復運動の結果、偏角の変化を生じさせことができる。
【0027】
さらに、それぞれの光学素子の励振手段への機能的な接続は、それぞれの光学素子の振動反復運動のZ方向成分をさらに与えるように励振手段の励振を伝えるためとすることができる。それによって、焦点振動のz成分を実現することができる。
【0028】
さらなる実施形態によれば、励振手段は、圧電アクチュエータ、水晶発振器、偏心器、振動電磁場を生成するための装置、およびMEMS(micro electro mechanical system:微小電気機械システム)発振器から選択された少なくとも1つの素子を含むことができる。これらの実施形態は、光学素子の励振手段への確実な機能的接続、および光学素子の適切な振動反復運動を可能にする。1つの例では、振動電磁場を生成するための装置は、磁石が取り付けられた光学素子から離して光学装置に設けることができ、それによって、光学素子は、作動時、振動電磁場内で浮遊および振動させられる。
【0029】
さらなる実施形態では、焦点の大きさは、光学システムの倍率と電磁ビームの初期直径によって制御可能であってもよい。例えば、焦点の大きさは、少なくとも0.1mm、好ましくは0.15mm以上で0.4mm以下とすることができる。それによって、スポットの大きさの細かな調節を実現することができる。
【0030】
いくつかの実施形態は、電磁波ビームを整形するための上記の実施形態のいずれか1つによる光学装置を使用することを提示する。
【0031】
さらなる実施形態は、電磁波ビームによって処理される材料の表面に電磁波ビームを向けるための処理ヘッド、特に切断ヘッドを含むビーム処理装置、特にビーム切断装置を対象とし、処理ヘッドは上記の実施形態のいずれか1つによる光学装置を含む。
【0032】
さらに他の実施形態は、電磁波ビームによって切断される材料の表面を切削するための上記のさらなる実施形態によるビーム処理装置を使用することを提示する。
【0033】
1つの実施形態によれば、上記の実施形態のいずれかの光学装置および/またはビーム処理装置を使用するビーム処理方法、特にビーム切断方法は、光源によって電磁波ビームを生成するステップであり、ビームがビーム伝播方向および焦点を有する、ステップと、ビームをビーム伝播方向に配置された光学素子に照射するステップと、ビーム伝播方向に対して垂直な平面のx方向およびy方向のうちの少なくとも1つの方向に、焦点振動経路に沿って焦点を振動させるステップであり、x方向とy方向とが互いに対して平行でない、ステップであり、焦点振動が、焦点振動のx方向成分を引き起こすための少なくとも第1の励振ユニット、および焦点振動のy方向成分を引き起こすための少なくとも第2の励振ユニットを有する励振手段によって引き起こされる、ステップと、電磁波ビームによって処理される材料の表面を処理、特に切削するステップとを含み、ここで、焦点振動は、光学素子のみの振動反復運動を引き起こすためにそれぞれの光学素子の励振手段への機能的接続を有する励振手段によって引き起こされる。
【0034】
焦点振動を引き起こすことにより、上記の実施形態は、x-y平面内のビームスポットの直径を大きくすることができ、その結果、ビームパラメータ積(BPP)が大きくなる。さらに、焦点振動のため、元はビーム光源から出力するビームスポットを、ビームの伝播方向に対して横方向に動かすことができ、それによって、切断処理の場合、被加工物の切断エッジへのエネルギー入力が、振動のないビームスポットに比べて改善することができる。この結果、処理された被加工物の切断エッジは改善される、または最適化さえされる。
【0035】
上記の実施形態のビーム処理方法は、上記のような電磁波を整形するためのビーム処理装置および/または光学装置のいずれかの実施形態を使用して変更することができる。
【0036】
上記の実施形態のいくつかは、典型的な実施形態の以下の説明において以下の図を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1a】本発明の1つの実施形態による光学装置1の概略図である。
【
図1b】本発明の実施形態による光学装置100の概略図である。
【
図2a】本発明の実施形態による励振手段6の概略図である。
【
図2b】上記の実施形態による励振手段6の励振ユニット15の概略図である。
【
図2c】本発明の実施形態による励振手段60の概略図である。
【
図2d】本発明の実施形態による励振手段66の概略図である。
【
図3a】本発明のさらなる実施形態による励振手段600の概略図である。
【
図3b】本発明のさらなる実施形態による励振手段の励振ユニット17の概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による光学装置110の概略図である。
【
図5】本発明の実施形態による光学装置120の概略図である。
【
図6】
図1の装置によって得られた焦点領域9、およびその結果生じたビーム直径係数対焦点位置の概略図である。
【
図7】1つの実施形態の制御ユニットに保存された既定の2次元リサージュ図形の例の図である。
【
図8】
図7の右下のリサージュ図形の例、すなわちそれに対応して得られる焦点の振動が電磁波ビームの切断経路に沿っていかに実現されるかを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の図の説明の中では、同じ参照符号は同じ構成部品を指す。全体的に、個々の実施形態に関して異なるところだけを説明する。以下では、実施形態は切断プロセスについて説明されるが、それに限定されない。むしろ、本発明の実施形態を用いて任意のビーム処理プロセスを実行することができる。
【0039】
本発明の実施形態による光学装置は、ビーム伝播方向に配置された光学素子と、ビーム伝播方向に対して垂直な平面のx方向およびy方向のうちの少なくとも1つの方向に、焦点振動経路に沿って焦点の振動を引き起こすための、光学素子に機能的に接続されたレーザ励振手段とを有する。光学素子の励振手段への機能的な接続が、焦点の動きをもたらす光学素子のみの動きを引き起こすためのものである。光学素子の動きは振動反復運動である。
【0040】
図1aは、本発明の1つの実施形態による光学装置1を概略的に示す。光学装置1は、1つの合焦レンズ7によって形成される光学素子を含む。レーザ光源2aはレーザビームを生成し、レーザビームは、レーザ光源2aに結合されたレーザ光導光ファイバ2bによって導かれる。ファイバ2bの自由端には、ファイバカップリング3が設けられている。ファイバカップリング3はエンドキャップ4を含み、エンドキャップ4によって、レーザビームはビーム伝播方向に拡がる。ビームは、ビーム伝播方向に対して垂直な円形のビームスポットを形成する外側ビーム光線5によって限定される。ビームは、伝播方向に配置された合焦レンズ7へ伝播する。ビームは、合焦レンズ7によって、ノズル8に向けて送られ、ノズル8を通って、
図6に示すような焦点を含む合焦領域9を生成する。
【0041】
移動装置(図示せず)を使用して光学素子をビーム伝播方向に対して平行に動かすことによって、焦点の位置をビーム伝播方向に沿って変えることができる。これに代えて、焦点位置をビーム伝播方向に沿って調節するために、ノズル8をビーム伝播方向に対して平行に距離11だけ動かしてもよい。
【0042】
合焦レンズ7は、本実施形態では、合焦レンズ7の振動反復運動を引き起こす励振手段6に機能的に接続されている。励振手段6は、合焦レンズ7の振動反復運動のX方向の成分12aおよびY方向の成分12bを与えるように構成され、XおよびY方向はビーム伝播方向に対して垂直である。
【0043】
本実施形態では、励振手段6によって引き起こされるレンズ7の振動反復運動は、X-Y方向の2つの調和振動を重ね合わせたものに相当する。
【0044】
所望により、レンズ7のX-Y方向の2つの調和振動に、Z方向の動きの成分10をさらに重ね合わせることができる。Z方向の動きはまた、レンズ7の往復反復運動として実行されてもよく、それは、励振手段6の対応する移動装置によって引き起こされる。
【0045】
動作時、励振手段6によって与えられたレンズ7の振動反復運動は、ビーム伝播方向に対して垂直のx方向および/またはy方向、および任意選択的に、ビーム伝播方向に対して平行のz方向のレーザビームの焦点の振動を引き起こす。
【0046】
実施形態によれば、光学素子の動き、特に振動反復運動のみによってノズル内のビームの中央合わせを可能にする、光学素子の変位範囲を与えることができる。
【0047】
図1bは、本発明のさらなる実施形態による光学装置100を概略的に示す。光学装置100は、平行化レンズ7aと合焦レンズ7bとの組合せによって形成される光学素子を含む。
図1aに示した実施形態と比較すると、この実施形態は2つの励振手段6を有し、一方は平行化レンズ7aの振動反復運動を引き起こし、他方は合焦レンズ7bの振動反復運動を引き起こす。本実施形態によれば、両方のレンズ7aおよび7bの振動反復運動は調和的で同一であってもよい。しかし、この実施形態の変形によれば、レンズ7aおよび7bの振動反復運動は、例えば、焦点の特定の振動を引き起こすために互いに異なっていてもよい。
【0048】
図1bに示した装置を動作させると、2つの励振手段6によって引き起こされるレンズ7aおよび7bの振動反復運動は、x方向および/またはy方向、任意選択的にz方向のレーザビームの焦点の振動を引き起こす。
【0049】
実施形態によれば、光学素子は、励振手段に機能的に接続された同じタイプまたは異なるタイプの2つのレンズの組合せとすることができる。
図1bに示した実施形態の平行化レンズ7aおよび合焦レンズ7bなどの2つのレンズを互いに対して異なるように動的に動かすことによって、光学素子全体の変位領域を拡大することができる。
【0050】
合焦レンズ7またはレンズ7aおよび7bの形態の光学素子に関して本書で説明する原理は、(
図4に関して説明するような)ファイバカップリング3または(
図5に関して説明するような)軸外放物面ミラー70などの他の光学素子にも適用することができる。
【0051】
図2aは、本発明の実施形態による励振手段6を概略的に示し、
図1の光学装置1を参照してこれを例示的に説明する。励振手段6は、
図1のX、Y成分12aおよび12bによって示されたX-Y平面にある4つの励振ユニット(発振器)15のカルテシアン配置から形成される。励振ユニット15は、例えば、はんだ、接着剤、またはクランプによって、直交するX方向およびY方向の座標位置でレンズ7の形態の光学素子に取り付けられている。しかし、励振手段6の変形によれば、励振ユニット15の配置は直交しないこともあり得る。4つの励振ユニット15は、電力供給用の電気フィードスルー(図示せず)と、制御ユニット(図示せず)へのデータ伝送接続とを含む取付具16によって光学装置1のハウジング(図示せず)に接続されている。
【0052】
図2bに提示されているように、励振ユニット15はそれぞれ、固体継手14にはめ込まれた1つまたは複数の圧電アクチュエータ13を含み、固体継手14は、圧電変位を、制御ユニットによって定められたX/Y成分に相当する±1mmまでのアクチュエータ移動距離に変換する。圧電アクチュエータ13の長手方向の向きとそれに対応する励振ユニット15の向きは、X-Y平面に対して垂直のZ方向に対して平行とすることができることは言及されるべきである。
【0053】
励振ユニット15のZ方向の剛性は、Z方向に対してこのように平行な向きにすることによって改善することができる。
【0054】
Z成分が、
図1に示すレンズ7の振動反復運動に与えられる場合、上記で励振手段6の中に含まれるものとして言及した移動装置は、励振ユニット15に取り付けられた、励振手段6をZ方向に振動させる追加の圧電アクチュエータ13によって実現することができる。
【0055】
図2cは、励振を電磁駆動によって引き起こす、本発明の実施形態による励振手段60を概略的に示す。この実施形態もまた、
図1の光学装置1を参照して例示的に説明する。励振手段60は、
図1のX、Y成分12aおよび12bによって示されたX-Y平面内の4つの励振ユニット(発振器)150のカルテシアン配置を提供する振動電磁場を生成するための装置を含む。各励振ユニット150は、磁石ハウジング151と、ハウジング内に配置されたコイル152とを有するリニアボイスコイルアクチュエータ(VCA:voice coil actuator)によって形成される。VCAによって生成することができる力は、コイルを通って流れる電流に比例する。励振ユニット150は、例えば、はんだ、接着剤、またはクランプによって、直交するX方向およびY方向の座標位置でレンズ7の形態の光学素子に取り付けられている。あるいは、励振手段60の変形によれば、励振ユニット150の配置は直交していなくてもよい。4つの励振ユニット150は、電力供給用の電気フィードスルー(図示せず)と、制御ユニット(図示せず)へのデータ伝送接続とを含む取付具160によって光学装置1のハウジング(図示せず)に接続されている。磁石ハウジング151とコイル152は、
図2cに示されているものと逆に配置されてもよいことは言及されるべきである。
【0056】
動作中、レンズ7に取り付けられた各VCA150の直線運動は、制御ユニットによって制御され、それにより、所望の焦点振動のx、y成分と平行でそれらに従うレンズ7のXおよび/またはY方向の振動反復運動を提供する。上記で説明した移動装置はまた、励振手段60をZ方向に移動または振動させるための
図2cの実施形態において具現化することができる。
【0057】
図2dは、本発明の実施形態による励振手段66を概略的に示し、この場合も、
図1の光学装置1を参照してこれを例示的に説明する。励振手段66は、
図1のX、Y成分12aおよび12bによって示されたX-Y平面にある2つの励振ユニット(発振器)15から形成される。励振ユニット15は
図2aおよび2bに関して説明したものと同様であり、例えば、はんだ、接着剤、またはクランプによってレンズ7の形態の光学素子に取り付けられている。受動的案内素子117は、光学素子、この実施形態では例えばレンズ7と取付具16との間に配置される。受動的案内素子117は、光学素子をX-Y平面内に保持し、X方向およびY方向の作動を可能にする。励振ユニット15に代えて、
図2cに関して説明したような励振ユニット150、または
図3aに関して説明するような励振ユニット17を代わりに使用することができる。光学素子はまた、
図4に関して説明するようなファイバカップリング3、または
図5に関して説明するような軸外放物面ミラー70として実現することができる。
【0058】
光学素子のX-Y平面の励振ユニット(発振器)のカルテシアン配置を含む実施形態は、X-Y平面内で望むように選択可能な、光学素子の定められた動きを与える。さらに、光学素子の動きは、振動反復運動となるように選ぶことができ、励振手段によって与えられる周波数は変えることができる。好適な励振エネルギーを選ぶことによって、振動振幅は望むように選択することができる。励振ユニットの位相シフトを選択することによって、焦点の動きのパターンを変えることができる。2つの振動励振回路が与えられる場合、
図7に示すようなリサージュ図形に相当する焦点の動きのパターンを実現することができる。
【0059】
上記のように、実施形態は、励振手段を制御するための制御ユニットを含む。いくつかの実施形態では、制御ユニットは、既定の2次元および3次元リサージュ図形のデータベースを含むことができる。生成される焦点振動経路が既定のリサージュ図形のうちの1つ、またはそれらのうちの2つ以上を組み合わせたものに一致するように、制御ユニットは励振手段を制御する、および/または制御することができるように構成することができる。それにより、焦点の2つ以上の調和振動の重ね合わせを実現することができる。したがって、いくつかの例では、制御ユニットは励振手段を制御して、既定のリサージュ図形のうちの1つ、またはそれらのうちの2つ以上を組み合わせたものに一致する焦点振動経路を生成するために、既定の2次元および/または3次元リサージュ図形のデータベースを含む。
【0060】
図3aは、本発明のさらなる実施形態による励振手段600を概略的に示し、この場合も、
図1の光学装置1を参照してこれを例示的に説明する。励振手段600は、4つの励振ユニット17の極配置によって形成され、この配置は、
図1のX、Y成分12aおよび12bによって示される平面に対して平行である。励振ユニット17はそれぞれ、レンズ7と機械的に接触し、X、Y方向に2つの軸線を有する偏心円盤から形成される。
図3bに例示的に示すように、X方向のレンズ7の動きを与える偏心円盤の1つに対して、偏心距離19は、偏心盤の軸線20からX方向のある距離に偏心ロッド(図示せず)の軸線21を配置することによって具現化される。各ロッドは、対応する駆動システム(図示せず)に機能的に接続されている。動作時、それぞれの偏心円盤に取り付けられた各偏心ロッドの回転18は、制御ユニット61によって制御され、それにより、所望の焦点振動のx、y成分と平行でそれらに従うレンズ7のXおよび/またはY方向の振動反復運動を提供する。
【0061】
励振ユニットの極配置を有する実施形態によって、光学素子は、その光学的中心を中心としないで回転することができる。これらの実施形態の変形では、光学素子の偏心距離および/または回転速度を変えることができる。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、制御ユニットは、x、y、およびz方向のいずれかの焦点振動の位相を独立して調節するように構成することができる。
【0063】
図4は、本発明の実施形態による光学装置110を概略的に示し、ここでは、光学素子は、
図1aに示すような、光ファイバ2bの自由端、ファイバカップリング3、およびエンドキャップ4によって形成される。これに代えて、光学素子は、レーザ光導光ファイバ2bの自由端によって形成されてもよい。レーザ光導光ファイバ2bはレーザ光源2aに結合される。エンドキャップ4を含むファイバカップリング3は、
図2aおよび2bを参照して上記で説明したように、励振手段6に機能的に接続される。すなわち、励振手段6は、
図1のX、Y成分12aおよび12bによって示され、焦点振動の平面x-yに対して平行なX-Y平面にある4つの励振ユニット15のカルテシアン配置から形成される。しかし、その代わりに、他の実施形態の励振手段60、66、または600を使用することもできる。本実施形態では、励振ユニット15は、直交するX方向およびY方向の座標位置でファイバカップリング3に取り付けられている。4つの励振ユニット15は、電力供給用の電気フィードスルー(図示せず)と、制御ユニット(図示せず)へのデータ伝送接続とを含む取付具16によって光学装置110の支持部(図示せず)に接続される。励振ユニット15はそれぞれ、
図2bに示すように、固体継手14にはめ込まれた圧電アクチュエータ13を含み、固体継手14は、圧電変位を、制御ユニットによって定められたX/Y成分に相当する±1mmまでのアクチュエータ移動距離に変換する。動作時、励振手段6の励振は、ビーム出口平面によって限定されたファイバ2bの自由端に伝えられる。それにより、光ファイバの自由端のビーム出口面の振動反復運動は、x-y平面に対して平行なX-Y平面で引き起こされる。したがって、光ファイバ2bの自由端の振動反復運動は、x方向および/またはy方向の焦点の振動を引き起こす。上記で説明した移動装置もまた、
図4にZ方向成分10によって示すように、励振手段6をZ方向に移動または振動させるために具現化することができる。
【0064】
図5は、本発明の別の実施形態の光学装置120を概略的に示す。この実施形態によれば、光学素子は、中心を有する軸外放物面ミラー70である。ミラー70は、光源2aから放射されたレーザビームを約90°の偏向角だけ偏向するようにビーム伝播方向に配置されている。しかし、この実施形態の他の例では、他の偏向角が可能な場合がある。ミラー70は、
図2aおよび2bに関して上記で説明したような励振手段6に機能的に接続されている。すなわち、励振手段6は、この実施形態では、ミラーの中心での接平面であるX-Y平面にある4つの励振ユニット15のカルテシアン配置から形成される。この例では、X-Y平面は、焦点振動のx、y成分によって示された平面に対して約45°だけ傾けられている。励振ユニット15は、例えば、はんだ、接着剤、またはクランプによって、直交するX方向およびY方向の座標位置でミラー70の側面に取り付けられている。それにより、動作時、励振手段6の励振はミラー70に伝えられ、X-Y平面のミラー70の振動反復運動を与える。その結果生じるミラー70の振動反復運動は、x方向および/またはy方向の焦点の振動を引き起こす。本実施形態では、励振手段6の代わりに、他の実施形態の励振手段60、66、または600を代替的に使用することができる。
【0065】
図6は、
図2aおよび2bに示した励振手段6を使用して
図1の装置によって得られた焦点領域9、ならびにその結果生じたビームの直径係数対ビーム軸線における位置を概略的に示している。
図6の上図に示すように、振動がなければ、レーザビームは外側ビーム光線5aによって焦点領域9内に限定され、焦点面9aで最小となるビームウエストを有する。しかし、焦点面9a内での焦点の振動は、振動のない場合よりも大きなビームウエストを形成する外側光線5bによって限定されるようにレーザビームを変形させる。したがって、より高いBPPが達成される。遠視野面9bにおいてさえ、
図6の下図に示すように、焦点を振動させることによって生成されたビームスポットは、焦点を振動させないレーザビームのビームスポットよりも大きな直径を有する。したがって、焦点面内での焦点の高速振動運動により、より大きな直径を有するビームスポット、すなわちビーム強度分布が得られる。したがって、焦点の振動のため、被加工物の切断エッジ内へのエネルギー入力は、振動のないビームスポットに比べて改善することができる。さらに、本発明の実施形態を使用して焦点振動を変えることによって、ビームスポット直径、および、それにより、パラメータ積(BPP)は、切断される材料の異なる厚さに対して望むように調節することができる。
【0066】
図7は、1つの実施形態の制御ユニットに保存された既定の2次元リサージュ図形の例を示す。この実施形態によれば、生成される焦点振動経路が、既定のリサージュ図形のうちの1つ、またはそれらのうちの2つ以上を組み合わせたものに一致するように、制御ユニットは励振手段6、60、66、600を制御するように構成される。
【0067】
図7から明らかなように、リサージュ図形に従う振動により、焦点またはビームスポット22は、x-y平面(焦点面)内を移動経路23に沿って往復運動または周回運動することができる。焦点振動は周波数(ω)を有し、焦点振動経路は経路長(l)を有する。焦点が、焦点振動経路の特定の位置nに位置する確率は、焦点の直径(fpd:focal point diameter)/経路長(l)*周波数(ω)によって与えられることに留意されたい。
【0068】
図8は、
図7の右下のリサージュ図形の例、すなわちそれに対応して得られる焦点の振動経路が、レーザビームの切断経路25に沿ってどのように実現されるかを示す。焦点振動のため、より大きな直径を有するビームスポットおよびビーム強度分布が切断経路に沿って与えられる。したがって、被加工物の切断エッジ内へのエネルギー入力は、振動のないビームスポットに比べて改善されることができる。制御ユニットは、処理/切断経路が曲線を形成するときに、焦点のリサージュ図形/振動経路が回転するように、焦点の振動を制御する。すなわち、x-y平面での振動経路/リサージュ図形の向きは、x-y平面での切断ビームの処理/切断方向に依存する。
【0069】
結論
本発明の実施形態を使用して、ビームスポット直径を調節し、それにより、ビームパラメータ積(BPP)を調節することによってビーム処理プロセス、特に切断プロセスを最適化することができ、これは、異なる厚さの材料を処理/切断するのに特に有利である。ファイバレーザおよび一般的な固体レーザの場合、BPPは使用されるファイバの直径によって定まる。本発明の実施形態によって、ファイバレーザおよび固体レーザのBPPですら、焦点振動およびその結果生じるビームスポット直径の変化により、効率的に調節することができる。したがって、動作中にBPPを調節することができるビーム処理ヘッドまたは切断ヘッドを提供することができる。
【0070】
さらに、本発明の実施形態を使用して、焦点振動とその結果生じるビームスポット直径の変化により、電磁波ビームのx-y平面内、例えば焦点面内での強度分布の可変整形を達成することができる。これは、生成されたビームによる被加工物の切断などの高品質処理を可能にする。切断プロセスなどの高品質処理プロセスを達成するために、切断カーフ、レーザ出力、処理/切断速度、ガス圧力、処理/切断方向、および処理/切断される材料のタイプなどの異なるプロセスパラメータに対して必要とされるように、焦点振動のパターンを調整することができる。
【0071】
上述の内容は、本発明の実施形態および例を対象とするが、本発明の他のおよびさらなる実施形態を考案することができる。特に、上記の実施形態および例の互いに非排他的な特徴を互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 光学装置、 2a レーザ光源、 2b レーザ光導光ファイバ、 3 ファイバカップリング、 4 エンドキャップ、 5 外側ビーム光線、 5a 焦点振動なしの外側ビーム光線、 5b 焦点振動ありの外側ビーム光線、 6 励振手段、 7 レンズ、 7a 平行化レンズ、 7b 合焦レンズ、 8 ノズル、 9 焦点領域、 9a 焦点面、 9b 遠視野面、 10 光学素子の動きのZ成分、 11 ノズルの動きのZ成分、 12a 光学素子の動きのX成分、 12b 光学素子の動きのY成分、 13 圧電アクチュエータ、 14 固体継手、 15 励振ユニット、 16 取付具、 17 励振ユニット、偏心円盤、 18 回転、 19 偏心距離、 20 偏心円盤の軸線、 21 偏心ロッドの軸線、 22 ビームスポット、 23 x-y平面内のビームスポットの移動経路、 24 リサージュ図形、 25 切断経路、 60 励振手段、 61 制御ユニット、 66 励振手段、 70 ミラー、 100 光学装置、 110 光学装置、 117 受動的案内素子、 120 光学装置、 150 励振ユニット、 151 磁石ハウジング、 152 コイル、 600 励振手段。