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  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図1
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図2
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図3
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図4
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図5
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図6A
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図6B
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図6C
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図7
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図8A
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図8B
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図8C
  • 特開-ヒト化またはキメラCD3抗体 図8D
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023862
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】ヒト化またはキメラCD3抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220201BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220201BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220201BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220201BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220201BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220201BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220201BHJP
   C07K 16/42 20060101ALI20220201BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220201BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220201BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12N1/15
C12N5/10
C07K16/42
C12P21/08
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/02
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K39/395 E
A61K39/395 D
【審査請求】有
【請求項の数】35
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168124
(22)【出願日】2021-10-13
(62)【分割の表示】P 2018501159の分割
【原出願日】2016-07-14
(31)【優先権主張番号】PA201500414
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201500413
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201500416
(32)【優先日】2015-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/050296
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ゲンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ラーデメイカー リック
(72)【発明者】
【氏名】アルティンタス イシル
(72)【発明者】
【氏名】エンジェルバーツ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シュールマン ジャニーヌ
(72)【発明者】
【氏名】パレン ポール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体、該ヒト化またはキメラ抗体を含む組成物、および疾患の処置における該ヒト化またはキメラ抗体の使用を提供する。
【解決手段】ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体であって、該抗体が、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、特定のCDR配列を有する参照抗体の3つのCDR配列のうちの1つに変異を含み、該変異が、T31M、T31P、N57、H101、G105、S110、およびY114からなる群より選択される位置のうちの1つにおける変異であり、該位置が、特定の参照配列に従ってナンバリングされている、前記抗体。本発明はさらに、二重特異性抗体、組成物、薬学的組成物、疾患の処置における該抗体の使用、および処置の方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体であって、該抗体が、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、CDR1 SEQ ID NO: 1、CDR2 SEQ ID NO: 2、およびCDR3 SEQ ID NO: 3に示すCDR配列を有する参照抗体の3つのCDR配列のうちの1つに変異を含み、該変異が、T31M、T31P、N57、H101、G105、S110、およびY114からなる群より選択される位置のうちの1つにおける変異であり、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている、前記抗体。
【請求項2】
前記抗体が有する、ヒトCD3に対する結合アフィニティーが、CDR1 SEQ ID NO: 1、CDR2 SEQ ID NO: 2、およびCDR3 SEQ ID NO: 3に示すVH CDR配列を有する参照抗体と比較して低減または増強されている、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
T31MまたはT31P変異を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項4】
位置N57に変異を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
N57E変異を含む、請求項1、2、および4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
位置H101に変異を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
H101GまたはH101N変異を含む、請求項1、2、および6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
位置G105に変異を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
G105P変異を含む、請求項1、2、および8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
位置Y114に変異を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
Y114M、Y114R、またはY114V変異を含む、請求項1、2、および10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
前記VH領域が、
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V];ならびに
l)a)~k)に示す3つのCDR配列のうちのいずれか1つに対して該3つのCDR配列全体で少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するCDR1、CDR2、およびCDR3配列であって、ただし、SEQ ID NO: 1、2、3に示す配列を有さない、CDR1、CDR2、およびCDR3配列
からなる群より選択されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
前記VH領域が、
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]、ならびに
l)a)~k)にて特定されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列であって、該3つのCDR配列全体で、最大で5個のさらなる変異もしくは置換、最大で4個のさらなる変異もしくは置換、最大で3個のさらなる変異もしくは置換、最大で2個のさらなる変異もしくは置換、または、最大で1個のさらなる変異もしくは置換を有し、該変異もしくは置換が、好ましくは、ヒトCD3に対する結合アフィニティーを改変しない、CDR1、CDR2、およびCDR3配列
からなる群より選択されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
前記さらなる変異または置換が、保存的、物理的、または機能的アミノ酸である、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
前記VH領域が、
a)SEQ ID NO: 55に示すVH配列 [T31M]、
b)SEQ ID NO: 59に示すVH配列 [T31P]、
c)SEQ ID NO: 107に示すVH配列 [N57E]、
d)SEQ ID NO: 177に示すVH配列 [H101G]、
e)SEQ ID NO: 185に示すVH配列 [H101N]、
f)SEQ ID NO: 221に示すVH配列 [G105P]、
g)SEQ ID NO: 237に示すVH配列 [S110A]、
h)SEQ ID NO: 245に示すVH配列 [S110G]、
i)SEQ ID NO: 285に示すVH配列 [Y114M]、
j)SEQ ID NO: 293に示すVH配列 [Y114R]、
k)SEQ ID NO: 299に示すVH配列 [Y114V]、および
l)a)~k)に示す配列のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、VH配列
からなる群より選択されるVH配列を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項16】
前記VH領域が、
a)SEQ ID NO: 55に示すVH配列 [T31M]、
b)SEQ ID NO: 59に示すVH配列 [T31P]、
c)SEQ ID NO: 107に示すVH配列 [N57E]、
d)SEQ ID NO: 177に示すVH配列 [H101G]、
e)SEQ ID NO: 185に示すVH配列 [H101N]、
f)SEQ ID NO: 221に示すVH配列 [G105P]、
g)SEQ ID NO: 237に示すVH配列 [S110A]、
h)SEQ ID NO: 245に示すVH配列 [S110G]、
i)SEQ ID NO: 285に示すVH配列 [Y114M]、
j)SEQ ID NO: 293に示すVH配列 [Y114R]、および
k)SEQ ID NO: 299に示すVH配列 [Y114V]
からなる群より選択されるVH配列を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載のヒト化またはキメラ抗体。
【請求項17】
前記結合領域が軽鎖可変(VL)領域を含み、該VL領域が、SEQ ID NO: 6、GTN、およびSEQ ID NO: 7に示すCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
前記結合領域が軽鎖可変(VL)領域を含み、該VL領域が、
a)SEQ ID NO: 8に示すVL配列;
b)SEQ ID NO: 10に示すVL配列、または
c)a)~b)に示す配列のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列
からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項19】
前記VL領域が、SEQ ID NO: 6、GTN、およびSEQ ID NO: 7に示す配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記VH領域が、
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];ならびに
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]
からなる群より選択されるCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項20】
ヒトCD3が、SEQ ID NO: 399にて特定されるヒトCD3εである、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
前記抗体が有する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーが、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.6×10-8 M~9.9×10-8 Mまたは1.0×10-7~9.9×10-7 Mに相当する、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
前記抗体が有する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーが、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.4×10-8~1.0×10-8 Mまたは9.9×10-9~1×10-9 Mに相当する、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項23】
ヒト化抗体である、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項24】
全長抗体である、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項25】
IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの抗体である、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
一価、二価、または多価である、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項27】
第1および第2免疫グロブリン重鎖を含むFc領域を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項28】
前記抗体が第1および第2免疫グロブリン重鎖を含み、該第1および第2免疫グロブリン重鎖の少なくとも一方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPではない、前記請求項のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項29】
前記第1および第2免疫グロブリン重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸がDではない、請求項28に記載の抗体。
【請求項30】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置N297に対応する位置のアミノ酸がNではない、請求項28に記載の抗体。
【請求項31】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれLおよびLではない、請求項28に記載の抗体。
【請求項32】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれFおよびE;またはAおよびAである、請求項28および31のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項33】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれFおよびEである、請求項32に記載の抗体。
【請求項34】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれAおよびAである、請求項32に記載の抗体。
【請求項35】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれL、L、およびDではない、請求項27に記載の抗体。
【請求項36】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびA;またはA、A、およびAである、請求項35に記載の抗体。
【請求項37】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびAである、請求項35~36のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項38】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれA、A、およびAである、請求項35~36のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項39】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、A、Q、およびSである、請求項28に記載の抗体。
【請求項40】
請求項1~39のいずれか一項に記載の抗体の第1結合領域と、該第1抗原結合領域とは異なるターゲットに結合する第2結合領域とを含む、二重特異性抗体。
【請求項41】
第1および第2重鎖を含む、請求項40に記載の二重特異性抗体。
【請求項42】
前記第1および第2重鎖のそれぞれが、少なくともヒンジ領域、CH2およびCH3領域を含み、該第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、該第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、該第1および該第2重鎖が、同じ位置では置換されていない、請求項40~41のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項43】
ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸が、前記第1重鎖においてLであり、かつ、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸が、前記第2重鎖においてRであるか、またはその逆である、請求項42に記載の二重特異性抗体。
【請求項44】
前記第1結合領域が請求項1~27のいずれか一項に従い、かつ、前記第2結合領域が該第1結合領域とは異なるターゲットに結合する、請求項40~43のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項45】
ヒトCD3に結合する抗体の結合アフィニティーを、SEQ ID NO: 1、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域を含む参照抗体と比較して低減させる方法であって、該参照抗体の該3つのCDR配列のうちの1つにおける、T31M、T31P、N57、H101、S110、およびY114の群より選択される位置のうちの1つにおける変異より選択される変異を導入する工程を含み、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている、前記方法。
【請求項46】
前記変異が、T31MまたはT31P変異である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記VH CDR2領域における位置N57に対応する変異を導入する工程を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
位置N57における前記変異が、N57E変異である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記VH CDR3領域におけるH101、S110、およびY114の群より選択される位置に対応する変異を導入する工程を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記VH CDR3領域における前記変異が、H101G、H101N、S110A、S110G、Y114M、Y114R、およびY114Vからなる群より選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ヒトCD3に結合する抗体の結合アフィニティーを、SEQ ID NO: 1、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域を含む参照抗体と比較して増強する方法であって、該VH CDR3における位置G105に対応する変異を導入する工程を含み、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている、前記方法。
【請求項52】
位置G105における前記変異が、G105P変異である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
SEQ ID NO: 1、2、3に示す前記参照抗体のVH領域のCDR中に、最大で5個のさらなる変異、最大で4個のさらなる変異、最大で3個のさらなる変異、最大で2個のさらなる変異、または最大で1個のさらなる変異を導入する工程を含む、請求項45~52に記載の方法。
【請求項54】
増強または低減されている結合アフィニティーを有する前記抗体が、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];ならびに
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]
からなる群より選択されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む、請求項45~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記抗体が有する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーが、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.6×10-8 M~9.9×10-8 Mまたは1.0×10-7~9.9×10-7 Mに相当する、請求項45~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記抗体が有する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーが、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.4×10-8~1.0×10-8 Mまたは9.9×10-9~1×10-9 Mに相当する、請求項45~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記ヒトCD3εがT細胞上に発現している、請求項45~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記ヒトCD3εが、単離された形態にある、例えば、単離されたヒトCD3εペプチドである、請求項45~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
請求項1~44のいずれか一項に記載の1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする、核酸コンストラクト。
【請求項60】
(i)請求項1~16のいずれか一項に記載のヒト化もしくはキメラ抗体の重鎖配列をコードする核酸配列;
(ii)請求項17~18のいずれか一項に記載のヒト化もしくはキメラ抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列;または
(iii)(i)と(ii)の両方
を含む、発現ベクター。
【請求項61】
請求項60記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項62】
組換え真核宿主細胞、組換え原核宿主細胞、または組換え微生物宿主細胞である、請求項61に記載の宿主細胞。
【請求項63】
請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体または請求項28~44に記載の二重特異性抗体を含む、組成物。
【請求項64】
請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体または請求項28~44のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項65】
医薬として使用するための、請求項1~44のいずれか一項に記載の抗体、請求項63に記載の組成物、または請求項64に記載の薬学的組成物。
【請求項66】
がん、感染性疾患、または自己免疫疾患の処置において医薬として使用するための、請求項1~44のいずれか一項に記載の抗体、請求項63に記載の組成物、または請求項64に記載の薬学的組成物。
【請求項67】
疾患の処置において使用するための、請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体、請求項28~44に記載の二重特異性抗体、請求項63に記載の組成物、または請求項64に記載の薬学的組成物。
【請求項68】
疾患の処置用の医薬を調製するための、請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体または請求項28~44に記載の二重特異性抗体の使用。
【請求項69】
がん、感染性疾患、または自己免疫疾患である疾患の処置のための、請求項68に記載の使用。
【請求項70】
請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体、請求項28~44に記載の二重特異性抗体、請求項63に記載の組成物、または請求項64に記載の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、疾患の処置方法。
【請求項71】
前記疾患が、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体、請求項63に記載の組成物、または請求項64に記載の薬学的組成物を対象に投与する工程を含み、任意で該抗体が検出可能な作用物質で標識されている、CD3発現細胞の関与または蓄積を特徴とする疾患を診断する方法。
【請求項73】
請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体を生産するための方法であって、
a)請求項61~62のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養する工程;および
b)培養培地から該抗体を精製する工程
を含む、前記方法。
【請求項74】
請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体または請求項28~44のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む、診断用組成物。
【請求項75】
試料中のCD3抗原またはCD3発現細胞の存在を検出するための方法であって、
a)該試料と、請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体または請求項28~44のいずれか一項に記載の二重特異性抗体とを、該抗体または二重特異性抗体とCD3との間の複合体の形成が可能な条件下で接触させる工程;および
b)複合体が形成されているかどうかを解析する工程
を含む、前記方法。
【請求項76】
以下を含む、試料中のCD3抗原またはCD3発現細胞の存在を検出するためのキット:
i)請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体または請求項28~44のいずれか一項に記載の二重特異性抗体;および
ii)該キットの使用説明書。
【請求項77】
請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体または請求項28~44のいずれか一項に記載の二重特異性抗体に結合する、抗イディオタイプ抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体、該ヒト化またはキメラ抗体を含む組成物、および疾患の処置における該ヒト化またはキメラ抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
分化抗原群(Cluster of Differentiation)3(CD3)は古くから知られており、それゆえに多くの局面において関心の対象となってきた。具体的には、CD3に対して生じた抗体またはCD3を一成分とするT細胞受容体複合体に対して生じた抗体が、知られている。組換えキメラCD3アイソタイプバリアントならびに多くのヒト化OKT3エフェクター機能変異体抗体のインビトロキャラクタリゼーションが、記述されている[1]。
【0003】
急性の同種異系移植片拒絶の治療において、CD3抗体(例えば、ムロモナブ-CD3)が広く使用されてきた。さらに、抗CD3モノクローナル抗体hOKT3ガンマ1(Ala-Ala)による処置は、継続的な免疫抑制薬の投与がない状態で、1型糖尿病の発症後に少なくとも2年間は、Cペプチド応答および臨床パラメータの改良をもたらす[2]。
【0004】
標的抗体療法を改良するための有望なアプローチは、抗原を発現するがん細胞に、細胞傷害性細胞を特異的に送達することによる方法である。腫瘍細胞を効率よく死滅させるためにT細胞を使用するというこのコンセプトは、既に記述されている[3]。しかし、初期の臨床研究はむしろ期待外れで、その理由は主として、二重特異性抗体の低い効力、重篤な有害作用(サイトカインストーム)および免疫原性にあった[4]。二重特異性抗体の設計と応用が進歩したことにより、サイトカインストームという最初の障壁は部分的に克服され、臨床有効性が改良されて用量制限毒性はなくなっている[5]。
【0005】
例えば、一方のアームで腫瘍細胞上の抗原を標的とし、他方のアームで例えばT細胞上のCD3を標的とし、かつFc受容体結合を提供する活性Fcフラグメントを含有する特定の二重特異性抗体は、腫瘍細胞死を誘導することが示されている。結合すると、T細胞と、腫瘍細胞と、抗体Fc領域に結合するエフェクター細胞との複合体が形成される可能性があり、それが腫瘍細胞の死滅につながる[4]。カツマキソマブは、マウスIgG2a/ラットIgG2b重鎖ヘテロ二量体からなり、腹腔内適用後にがん関連腹水の処置について成功を収めている[6]。しかし、マウス/ラットハイブリッドは免疫原性であり[7]、ヒトにおける長期処置には応用することができない。カツマキソマブに起因する高頻度の処置に関連する有害イベントには、カツマキソマブによる(その活性Fcフラグメントによる)強力なポリクローナルT細胞活性化に関係するサイトカイン放出関連症状(すなわち発熱、悪心、嘔吐、悪寒、頻脈および低血圧)[8]~[9]が含まれていた。別の抗体が、HER2を発現する細胞株において細胞傷害を誘発するエルツマキソマブ(HER2×CD3)である。エルツマキソマブは、転移乳がんに関して第II相臨床開発中である[10]~[11]。
【0006】
CD3二重特異性抗体および他のCD3二重特異性抗体ベースのフォーマットの効力は、CD3アームのアフィニティーおよび/または第2アームのターゲットに対するアフィニティー、ならびにターゲット細胞上のターゲットコピー数などの、二重特異性抗体のいくつかの特性に依存する。いくつかのCD3二重特異性抗体は、CD3アフィニティーが低い場合に高い効力を示す(EpCam×CD3 - Bortoletto 2002 PMID 12385030、MT103/ブリナツモマブ対TandAb - Molhoj 2007 PMID 17083975)が、他のCD3二重特異性物質は、高いCD3アフィニティーを用いて高い効力を示す(Reusch 2015, Mabs, PMID 25875246)。いくつかの場合、例えば、抗CD3ターゲティングアームと、選択された腫瘍関連抗原に対する第2アームとから構成される二重特異性抗体で、患者由来のエクスビボで増殖させた活性化T細胞をアーミングする際には、高いCD3アフィニティーが必要とされる。後者の場合、腫瘍細胞の細胞溶解を媒介するように産物を患者中に注入して戻す際に、増殖させたT細胞との相互作用を保持するために、CD3アフィニティーは高いべきである(Reusch 2006 Clin Cancer Res PMID 16397041)。しかし、CD3に対する高アフィニティー抗体は、低アフィニティーリガンドと対照的に、低いコピー数でのTCRトリガリングにそれほど有効ではなく、それは、それらが、T細胞応答の連続的なトリガリング様式よりもむしろ単一サイクルを示す、約1:1の化学量論および直線の用量応答曲線を提示するからである(Viola 1996 Science, PMID 8658175)。換言すると、CD3アームの低いアフィニティーは、T細胞が、1つのターゲットおよび/またはターゲット細胞から他へ柔軟に移動するのを可能にすることができる(Hoffman 2005, PMID: 15688411)。
【0007】
低いCD3アフィニティーは、二重特異性抗体のT細胞に対する偏った局在化(循環における最初の遭遇による)を潜在的に阻止し、したがって、生体内分布を改良し、かつ正常なT細胞免疫応答の干渉を最小化することができる。第2アームのターゲットおよびターゲットコピー数、適応症、ならびに/または投与経路に依存して、産物の最大効力を強化するように、望ましいCD3アフィニティーをカスタマイズすることができる。ある範囲のCD3アフィニティーをカバーするCD3変異体のパネルは、抗体産物あたりにこれらの特定のテーラーメードの必要性を合わせるのに必須でありうる。
【0008】
カニクイザルおよび/またはアカゲザルのCD3に交差反応するCD3抗体が記述されているが[12]~[13]、そのような交差反応性抗体にはさらなる改良が必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、CD3に対して最適化されたアフィニティーを有するヒト化またはキメラCD3抗体を提供することである。したがって、SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される抗体などの参照抗体と比較して最適化されているヒト化またはキメラCD3抗体を提供することが、本発明の目的である。したがって、そのような抗体は、SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される参照抗体と比較して低減または増強されている、CD3に対するアフィニティーを有しうる。SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される抗体よりも低い、CD3に対する結合アフィニティーを有する抗体を提供することが、本発明のさらなる目的である。本発明者らは、SEQ ID NO: 4に示すVH領域配列を有する参照抗体と比較して低減されている、SEQ ID NO: 402に示すCD3ペプチドに対する結合アフィニティーを有する抗体は、参照抗体と比較して、インビトロおよびインビボで同じまたは類似の細胞傷害活性を維持していることを見出した。本発明の別の目的は、SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される参照抗体と比較して低減されている、CD3に対する結合アフィニティーを有するが、参照抗体と同じ細胞溶解活性を保持しているCD3抗体を提供することである。SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される抗体よりも高い、CD3に対する結合アフィニティーを有する抗体を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0010】
本発明は、一局面において、ヒトCD3抗体に結合するヒト化またはキメラ抗体であって、該抗体が、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、CDR1 SEQ ID NO: 1、CDR2 SEQ ID NO: 2、およびCDR3 SEQ ID NO: 3に示すVH CDR配列を有する参照抗体の3つのCDR配列のうちの1つに変異を含み、該変異が、T31M、T31P、N57、H101、G105、S110、およびY114からなる群より選択される位置のうちの1つにおける変異であり、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている、ヒトCD3抗体に結合するヒト化またはキメラ抗体を提供する。SEQ ID NO: 4におけるアミノ酸は、N末端からC末端に向かう方向に、第1のアミノ酸から125番まで、直接数値ナンバリングスキームに従ってナンバリングされている。SEQ ID NO: 4に対応する位置の数値ナンバリングを、図2に示す。さらに、VH CDR領域には、IMGT定義に従って注釈をつけた。
【0011】
本発明の一態様において、抗体は、CDR1 SEQ ID NO: 1、CDR2 SEQ ID NO: 2、およびCDR3 SEQ ID NO: 3に示すVH CDR配列を有する参照抗体と比較して低減または増強されている、ヒトCD3に対する結合アフィニティーを有する。
【0012】
本発明のいくつかの態様において、参照抗体と比較して低減されている、CD3ペプチド(例えば、SEQ ID NO: 402などのヒトCD3分子)に対する結合アフィニティーを有する抗体は、参照抗体と同じ、ターゲット細胞に対する細胞溶解活性を維持しうる。
【0013】
本発明の一態様において、抗体は、SEQ ID NO: 4のN57に対応する位置に変異を含む。一態様において、変異はN57Eである。
【0014】
本発明の一態様において、抗体は、SEQ ID NO: 4のH101Gに対応する位置に変異を含む。一態様において、変異はH101GまたはH101Nである。
【0015】
本発明の一態様において、抗体は、SEQ ID NO: 4のG105に対応する位置に変異を含む。一態様において、変異はG105Pである。
【0016】
本発明の一態様において、抗体は、SEQ ID NO: 4のY114に対応する位置に変異を含む。一態様において、変異は、Y114M、Y114R、またはY114Vである。
【0017】
一態様において、本発明は、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、以下からなる群の1つより選択されるCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体を提供する;
a)SEQ ID NO: 12、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
b)SEQ ID NO: 14、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
c)SEQ ID NO: 16、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
d)SEQ ID NO: 18、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
e)SEQ ID NO: 20、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
f)SEQ ID NO: 22、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
g)SEQ ID NO: 24、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
h)SEQ ID NO: 26、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
i)SEQ ID NO: 28、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
j)SEQ ID NO: 30、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
k)SEQ ID NO: 32、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
l)SEQ ID NO: 34、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
m)SEQ ID NO: 36、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
n)SEQ ID NO: 38、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
o)SEQ ID NO: 40、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
p)SEQ ID NO: 42、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
q)SEQ ID NO: 44、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
r)SEQ ID NO: 46、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
s)SEQ ID NO: 48、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
t)SEQ ID NO: 50、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
u)SEQ ID NO: 52、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
v)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
w)SEQ ID NO: 56、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
x)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
y)SEQ ID NO: 60、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
z)SEQ ID NO: 62、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aa)SEQ ID NO: 64、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bb)SEQ ID NO: 66、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
cc)SEQ ID NO: 68、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
dd)SEQ ID NO: 70、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ee)SEQ ID NO: 72、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ff)SEQ ID NO: 74、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
gg)SEQ ID NO: 76、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hh)SEQ ID NO: 78、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ii)SEQ ID NO: 80、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
jj)SEQ ID NO: 82、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kk)SEQ ID NO: 84、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ll)SEQ ID NO: 86、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
mm)SEQ ID NO: 88、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nn)SEQ ID NO: 90、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
oo)SEQ ID NO: 92、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
pp)SEQ ID NO: 94、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
qq)SEQ ID NO: 96、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
rr)SEQ ID NO: 98、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ss)SEQ ID NO: 1、100、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
tt)SEQ ID NO: 1、102、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
uu)SEQ ID NO: 1、104、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
vv)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ww)SEQ ID NO: 1、108、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
xx)SEQ ID NO: 1、110、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
yy)SEQ ID NO: 1、112、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
zz)SEQ ID NO: 1、114、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aaa)SEQ ID NO: 1、116、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bbb)SEQ ID NO: 1、118、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ccc)SEQ ID NO: 1、120、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ddd)SEQ ID NO: 1、122、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
eee)SEQ ID NO: 1、124、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
fff)SEQ ID NO: 1、126、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ggg)SEQ ID NO: 1、128、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hhh)SEQ ID NO: 1、130、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
iii)SEQ ID NO: 1、132、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
jjj)SEQ ID NO: 1、134、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kkk)SEQ ID NO: 1、136、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
lll)SEQ ID NO: 1、138、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
mmm)SEQ ID NO: 1、140、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nnn)SEQ ID NO: 1、142、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ooo)SEQ ID NO: 1、144、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ppp)SEQ ID NO: 1、146、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
qqq)SEQ ID NO: 1、148、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
rrr)SEQ ID NO: 1、150、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
sss)SEQ ID NO: 1、152、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ttt)SEQ ID NO: 1、154、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
uuu)SEQ ID NO: 1、156、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
vvv)SEQ ID NO: 1、158、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
www)SEQ ID NO: 1、160、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
xxx)SEQ ID NO: 1、162、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
yyy)SEQ ID NO: 1、164、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
zzz)SEQ ID NO: 1、166、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aaaa)SEQ ID NO: 1、168、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bbbb)SEQ ID NO: 1、2、170に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
cccc)SEQ ID NO: 1、2、172に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
dddd)SEQ ID NO: 1、2、174に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
eeee)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ffff)SEQ ID NO: 1、2、178に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
gggg)SEQ ID NO: 1、2、180に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hhhh)SEQ ID NO: 1、2、182に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
iiii)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
jjjj)SEQ ID NO: 1、2、186に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kkkk)SEQ ID NO: 1、2、188に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
llll)SEQ ID NO: 1、2、190に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
mmmm)SEQ ID NO: 1、2、192に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nnnn)SEQ ID NO: 1、2、194に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
oooo)SEQ ID NO: 1、2、196に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
pppp)SEQ ID NO: 1、2、198に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
qqqq)SEQ ID NO: 1、2、200に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
rrrr)SEQ ID NO: 1、2、202に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ssss)SEQ ID NO: 1、2、204に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
tttt)SEQ ID NO: 1、2、206に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
uuuu)SEQ ID NO: 1、2、208に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
vvvv)SEQ ID NO: 1、2、210に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
wwww)SEQ ID NO: 1、2、212に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
xxxx)SEQ ID NO: 1、2、214に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
yyyy)SEQ ID NO: 1、2、216に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
zzzz)SEQ ID NO: 1、2、218に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aaaaa)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bbbbb)SEQ ID NO: 1、2、222に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ccccc)SEQ ID NO: 1、2、224に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ddddd)SEQ ID NO: 1、2、226に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
eeeee)SEQ ID NO: 1、2、228に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
fffff)SEQ ID NO: 1、2、230に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ggggg)SEQ ID NO: 1、2、232に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hhhhh)SEQ ID NO: 1、2、234に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
iiiii)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
jjjjj)SEQ ID NO: 1、2、238に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kkkkk)SEQ ID NO: 1、2、240に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
lllll)SEQ ID NO: 1、2、242に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
mmmmm)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nnnnn)SEQ ID NO: 1、2、246に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ooooo)SEQ ID NO: 1、2、248に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ppppp)SEQ ID NO: 1、2、250に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
qqqqq)SEQ ID NO: 1、2、252に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
rrrrr)SEQ ID NO: 1、2、254に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
sssss)SEQ ID NO: 1、2、256に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ttttt)SEQ ID NO: 1、2、258に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
uuuuu)SEQ ID NO: 1、2、260に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
vvvvv)SEQ ID NO: 1、2、262に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
wwwww)SEQ ID NO: 1、2、264に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
xxxxx)SEQ ID NO: 1、2、266に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
yyyyy)SEQ ID NO: 1、2、268に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
zzzzz)SEQ ID NO: 1、2、270に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aaaaaa)SEQ ID NO: 1、2、272に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bbbbbb)SEQ ID NO: 1、2、274に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
cccccc)SEQ ID NO: 1、2、276に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
dddddd)SEQ ID NO: 1、2、278に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
eeeeee)SEQ ID NO: 1、2、280に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ffffff)SEQ ID NO: 1、2、282に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
gggggg)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hhhhhh)SEQ ID NO: 1、2、286に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
iiiiii)SEQ ID NO: 1、2、288に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
jjjjjj)SEQ ID NO: 1、2、290に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kkkkkk)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
llllll)SEQ ID NO: 1、2、294に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
mmmmmm)SEQ ID NO: 1、2、296に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nnnnnn)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに
oooooo)SEQ ID NO: 1、2、300に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列。
【0018】
すなわち、本発明の発明者らは、本発明の第1の局面において、前記配列のヒト化またはキメラ抗体が、SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される抗体などの参照抗体と比較して最適化された、SEQ ID NO: 402のCD3ペプチドに対する結合アフィニティーを有することを見出した。SEQ ID NO: 4およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される参照抗体は、実施例7により例証されるように、1.5×10-8 Mの、SEQ ID NO: 402のCD3ペプチドに対する結合アフィニティーを有する。本発明のいくつかの態様において、抗体は、実施例7において表6に記載したように、バイオレイヤー干渉法により決定した場合に、例えば1.6×10-8 M~9.9×10-8 Mの結合アフィニティー、または例えば1.0×10-7~9.9×10-7 Mの結合アフィニティーの、1.5×10-8 Mよりも低い、SEQ ID NO: 402のCD3ペプチドに対する結合アフィニティーを有する。本発明のいくつかの態様において、抗体は、例えば1.4×10-8~1.0×10-8 M、例えば9.9×10-9~1×10-9 M、または例えば9.9×10-9~1×10-9 Mの、1.5×10-8 Mよりも高い、SEQ ID NO: 402のCD3ペプチドに対する結合アフィニティーを有する。結合アフィニティーは、KD値に相当する。
【0019】
本発明の一局面において、本発明は、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、以下からなる群の1つより選択されるCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体に関する;
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]、ならびに
l)a)~k)に示す3つのCDR配列のうちのいずれか1つに対して該3つのCDR配列全体で少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するCDR1、CDR2、およびCDR3配列であって、ただし、SEQ ID NO: 1、2、3に示す配列を有さない、CDR1、CDR2、およびCDR3配列。
【0020】
別の局面において、本発明は、結合領域が軽鎖可変(VL)領域を含み、該VL領域が、SEQ ID NO: 6、GTN、7に示すCDRを有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、ヒト化またはキメラ抗体に関する。
【0021】
さらに別の局面において、本発明は、ヒトCD3に結合する抗体の結合アフィニティーを、SEQ ID NO: 1、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域を含む参照抗体と比較して低減させる方法であって、T31M、T31P、N57、H101、S110、およびY114の群より選択される位置のうちの1つにおける変異より選択される、該参照抗体の3つのCDR配列のうちの1つにおける変異を導入する工程を含み、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている方法に関する。
【0022】
本発明の一態様において、方法は、T31MまたはT31Pに対応するVH領域CDR1領域配列における変異を導入する工程を含む。本発明の別の態様において、方法は、N57Eに対応するVH領域CDR2領域における変異を導入する工程を含む。本発明のさらに別の態様において、方法は、H101G、H101N、G105P、S110A、S110G、Y114M、Y114R、またはY114Vより選択されるVH領域CDR3領域における変異を導入する工程を含む。
【0023】
一態様において、CD3はヒトCD3εである。
【0024】
別の局面において、本発明は、本発明の抗体の第1結合領域と、該第1抗原結合領域とは異なるターゲットに結合する第2結合領域とを含む、二重特異性抗体に関する。
【0025】
別の局面において、本発明は、本発明の1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする核酸コンストラクトに関する。
【0026】
別の局面において、本発明は、(i)本発明のヒト化またはキメラ抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、(ii)本発明のヒト化またはキメラ抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列、または(iii)(i)と(ii)の両方を含む発現ベクターに関する。
【0027】
別の局面において、本発明は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0028】
別の局面において、本発明は、本発明の抗体または二重特異性抗体を含む組成物に関する。
【0029】
別の局面において、本発明は、本発明の抗体または二重特異性抗体と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物に関する。
【0030】
別の局面において、本発明は、医薬として使用するための、本発明の抗体もしくは二重特異的抗体、組成物、または薬学的組成物に関する。
【0031】
別の局面において、本発明は、疾患の処置に使用するための、本発明の抗体もしくは二重特異的抗体、組成物、または薬学的組成物に関する。
【0032】
別の局面において、本発明は、疾患の処置を必要とする対象に本発明の抗体もしくは二重特異的抗体、組成物、または薬学的組成物を投与する工程を含む、疾患の処置方法に関する。
【0033】
別の局面において、本発明は、抗体または二重特異的抗体を皮下投与または局所投与する方法に関する。
【0034】
一局面において、本発明は、CD3発現細胞の関与または蓄積を特徴とする疾患を診断する方法に関し、本方法は、検出可能な作用物質で標識されていてもよい本発明のヒト化またはキメラ抗体、本発明の組成物、または本発明の薬学的組成物を対象に投与する工程を含む。
【0035】
別の局面において、本発明は、本発明の抗体または二重特異性抗体を生産するための方法に関し、本方法は、a)本発明の宿主細胞を培養する工程、およびb)培養培地から前記抗体を精製する工程を含む。
【0036】
別の局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のうちのいずれか一つの抗体または二重特異性抗体を含む診断用組成物に関する。
【0037】
一態様において、診断用組成物は、二重特異性抗体による処置から恩恵を受ける患者をスクリーニングおよび選択するのに使用されるコンパニオン診断用である。
【0038】
別の局面において、本発明は、試料中のCD3抗原またはCD3発現細胞の存在を検出するための方法に関し、本方法は、a)前記試料を本発明の抗体または二重特異性抗体と、前記抗体または二重特異性抗体とCD3との複合体の形成が可能な条件下で接触させる工程、およびb)複合体が形成されたかどうかを解析する工程を含む。
【0039】
別の局面において、本発明は、i)本発明の抗体または二重特異性抗体と、ii)キットの使用説明書とを含む、試料中のCD3抗原またはCD3発現細胞の存在を検出するためのキットに関する。
【0040】
別の局面において、本発明は、本発明の抗体に結合する抗イディオタイプ抗体または抗イディオタイプ抗体の対に関する。
[本発明1001]
ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体であって、該抗体が、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、CDR1 SEQ ID NO: 1、CDR2 SEQ ID NO: 2、およびCDR3 SEQ ID NO: 3に示すCDR配列を有する参照抗体の3つのCDR配列のうちの1つに変異を含み、該変異が、T31M、T31P、N57、H101、G105、S110、およびY114からなる群より選択される位置のうちの1つにおける変異であり、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている、前記抗体。
[本発明1002]
前記抗体が有する、ヒトCD3に対する結合アフィニティーが、CDR1 SEQ ID NO: 1、CDR2 SEQ ID NO: 2、およびCDR3 SEQ ID NO: 3に示すVH CDR配列を有する参照抗体と比較して低減または増強されている、本発明1001の抗体。
[本発明1003]
T31MまたはT31P変異を含む、本発明1001~1002のいずれかの抗体。
[本発明1004]
位置N57に変異を含む、本発明1001~1002のいずれかの抗体。
[本発明1005]
N57E変異を含む、本発明1001、1002、および1004のいずれかの抗体。
[本発明1006]
位置H101に変異を含む、本発明1001~1002のいずれかの抗体。
[本発明1007]
H101GまたはH101N変異を含む、本発明1001、1002、および1006のいずれかの抗体。
[本発明1008]
位置G105に変異を含む、本発明1001~1002のいずれかの抗体。
[本発明1009]
G105P変異を含む、本発明1001、1002、および1008のいずれかの抗体。
[本発明1010]
位置Y114に変異を含む、本発明1001~1002のいずれかの抗体。
[本発明1011]
Y114M、Y114R、またはY114V変異を含む、本発明1001、1002、および1010のいずれかの抗体。
[本発明1012]
前記VH領域が、
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V];ならびに
l)a)~k)に示す3つのCDR配列のうちのいずれか1つに対して該3つのCDR配列全体で少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するCDR1、CDR2、およびCDR3配列であって、ただし、SEQ ID NO: 1、2、3に示す配列を有さない、CDR1、CDR2、およびCDR3配列
からなる群より選択されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む、本発明1001~1002のいずれかの抗体。
[本発明1013]
前記VH領域が、
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]、ならびに
l)a)~k)にて特定されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列であって、該3つのCDR配列全体で、最大で5個のさらなる変異もしくは置換、最大で4個のさらなる変異もしくは置換、最大で3個のさらなる変異もしくは置換、最大で2個のさらなる変異もしくは置換、または、最大で1個のさらなる変異もしくは置換を有し、該変異もしくは置換が、好ましくは、ヒトCD3に対する結合アフィニティーを改変しない、CDR1、CDR2、およびCDR3配列
からなる群より選択されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む、本発明1001~1002のいずれかの抗体。
[本発明1014]
前記さらなる変異または置換が、保存的、物理的、または機能的アミノ酸である、本発明1013の抗体。
[本発明1015]
前記VH領域が、
a)SEQ ID NO: 55に示すVH配列 [T31M]、
b)SEQ ID NO: 59に示すVH配列 [T31P]、
c)SEQ ID NO: 107に示すVH配列 [N57E]、
d)SEQ ID NO: 177に示すVH配列 [H101G]、
e)SEQ ID NO: 185に示すVH配列 [H101N]、
f)SEQ ID NO: 221に示すVH配列 [G105P]、
g)SEQ ID NO: 237に示すVH配列 [S110A]、
h)SEQ ID NO: 245に示すVH配列 [S110G]、
i)SEQ ID NO: 285に示すVH配列 [Y114M]、
j)SEQ ID NO: 293に示すVH配列 [Y114R]、
k)SEQ ID NO: 299に示すVH配列 [Y114V]、および
l)a)~k)に示す配列のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、VH配列
からなる群より選択されるVH配列を有する、本発明1001~1002のいずれかの抗体。
[本発明1016]
前記VH領域が、
a)SEQ ID NO: 55に示すVH配列 [T31M]、
b)SEQ ID NO: 59に示すVH配列 [T31P]、
c)SEQ ID NO: 107に示すVH配列 [N57E]、
d)SEQ ID NO: 177に示すVH配列 [H101G]、
e)SEQ ID NO: 185に示すVH配列 [H101N]、
f)SEQ ID NO: 221に示すVH配列 [G105P]、
g)SEQ ID NO: 237に示すVH配列 [S110A]、
h)SEQ ID NO: 245に示すVH配列 [S110G]、
i)SEQ ID NO: 285に示すVH配列 [Y114M]、
j)SEQ ID NO: 293に示すVH配列 [Y114R]、および
k)SEQ ID NO: 299に示すVH配列 [Y114V]
からなる群より選択されるVH配列を有する、本発明1001~1002のいずれかのヒト化またはキメラ抗体。
[本発明1017]
前記結合領域が軽鎖可変(VL)領域を含み、該VL領域が、SEQ ID NO: 6、GTN、およびSEQ ID NO: 7に示すCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1018]
前記結合領域が軽鎖可変(VL)領域を含み、該VL領域が、
a)SEQ ID NO: 8に示すVL配列;
b)SEQ ID NO: 10に示すVL配列、または
c)a)~b)に示す配列のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列
からなる群より選択される、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1019]
前記VL領域が、SEQ ID NO: 6、GTN、およびSEQ ID NO: 7に示す配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記VH領域が、
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];ならびに
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]
からなる群より選択されるCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、本発明1017の抗体。
[本発明1020]
ヒトCD3が、SEQ ID NO: 399にて特定されるヒトCD3εである、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1021]
前記抗体が有する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーが、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.6×10-8 M~9.9×10-8 Mまたは1.0×10-7~9.9×10-7 Mに相当する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1022]
前記抗体が有する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーが、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.4×10-8~1.0×10-8 Mまたは9.9×10-9~1×10-9 Mに相当する、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1023]
ヒト化抗体である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1024]
全長抗体である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1025]
IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの抗体である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1026]
一価、二価、または多価である、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1027]
第1および第2免疫グロブリン重鎖を含むFc領域を含む、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1028]
前記抗体が第1および第2免疫グロブリン重鎖を含み、該第1および第2免疫グロブリン重鎖の少なくとも一方において、EUナンバリングに従うヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置における1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPではない、前記本発明のいずれかの抗体。
[本発明1029]
前記第1および第2免疫グロブリン重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸がDではない、本発明1028の抗体。
[本発明1030]
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置N297に対応する位置のアミノ酸がNではない、本発明1028の抗体。
[本発明1031]
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれLおよびLではない、本発明1028の抗体。
[本発明1032]
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれFおよびE;またはAおよびAである、本発明1028および1031のいずれかの抗体。
[本発明1033]
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれFおよびEである、本発明1032の抗体。
[本発明1034]
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれAおよびAである、本発明1032の抗体。
[本発明1035]
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれL、L、およびDではない、本発明1027の抗体。
[本発明1036]
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびA;またはA、A、およびAである、本発明1035の抗体。
[本発明1037]
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびAである、本発明1035~1036のいずれかの抗体。
[本発明1038]
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれA、A、およびAである、本発明1035~1036のいずれかの抗体。
[本発明1039]
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、A、Q、およびSである、本発明1028の抗体。
[本発明1040]
本発明1001~1039のいずれかの抗体の第1結合領域と、該第1抗原結合領域とは異なるターゲットに結合する第2結合領域とを含む、二重特異性抗体。
[本発明1041]
第1および第2重鎖を含む、本発明1040の二重特異性抗体。
[本発明1042]
前記第1および第2重鎖のそれぞれが、少なくともヒンジ領域、CH2およびCH3領域を含み、該第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、該第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、該第1および該第2重鎖が、同じ位置では置換されていない、本発明1040~1041のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1043]
ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸が、前記第1重鎖においてLであり、かつ、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸が、前記第2重鎖においてRであるか、またはその逆である、本発明1042の二重特異性抗体。
[本発明1044]
前記第1結合領域が本発明1001~1027のいずれかに従い、かつ、前記第2結合領域が該第1結合領域とは異なるターゲットに結合する、本発明1040~1043のいずれかの二重特異性抗体。
[本発明1045]
ヒトCD3に結合する抗体の結合アフィニティーを、SEQ ID NO: 1、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域を含む参照抗体と比較して低減させる方法であって、該参照抗体の該3つのCDR配列のうちの1つにおける、T31M、T31P、N57、H101、S110、およびY114の群より選択される位置のうちの1つにおける変異より選択される変異を導入する工程を含み、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている、前記方法。
[本発明1046]
前記変異が、T31MまたはT31P変異である、本発明1045の方法。
[本発明1047]
前記VH CDR2領域における位置N57に対応する変異を導入する工程を含む、本発明1045の方法。
[本発明1048]
位置N57における前記変異が、N57E変異である、本発明1047の方法。
[本発明1049]
前記VH CDR3領域におけるH101、S110、およびY114の群より選択される位置に対応する変異を導入する工程を含む、本発明1045の方法。
[本発明1050]
前記VH CDR3領域における前記変異が、H101G、H101N、S110A、S110G、Y114M、Y114R、およびY114Vからなる群より選択される、本発明1049の方法。
[本発明1051]
ヒトCD3に結合する抗体の結合アフィニティーを、SEQ ID NO: 1、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域を含む参照抗体と比較して増強する方法であって、該VH CDR3における位置G105に対応する変異を導入する工程を含み、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている、前記方法。
[本発明1052]
位置G105における前記変異が、G105P変異である、本発明1051の方法。
[本発明1053]
SEQ ID NO: 1、2、3に示す前記参照抗体のVH領域のCDR中に、最大で5個のさらなる変異、最大で4個のさらなる変異、最大で3個のさらなる変異、最大で2個のさらなる変異、または最大で1個のさらなる変異を導入する工程を含む、本発明1045~1052の方法。
[本発明1054]
増強または低減されている結合アフィニティーを有する前記抗体が、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];ならびに
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]
からなる群より選択されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む、本発明1045~1053のいずれかの方法。
[本発明1055]
前記抗体が有する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーが、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.6×10-8 M~9.9×10-8 Mまたは1.0×10-7~9.9×10-7 Mに相当する、本発明1045~1054のいずれかの方法。
[本発明1056]
前記抗体が有する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーが、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.4×10-8~1.0×10-8 Mまたは9.9×10-9~1×10-9 Mに相当する、本発明1045~1054のいずれかの方法。
[本発明1057]
前記ヒトCD3εがT細胞上に発現している、本発明1045~1057のいずれかの方法。
[本発明1058]
前記ヒトCD3εが、単離された形態にある、例えば、単離されたヒトCD3εペプチドである、本発明1045~1057のいずれかの方法。
[本発明1059]
本発明1001~1044のいずれかの1つまたは複数のアミノ酸配列をコードする、核酸コンストラクト。
[本発明1060]
(i)本発明1001~1016のいずれかのヒト化もしくはキメラ抗体の重鎖配列をコードする核酸配列;
(ii)本発明1017~1018のいずれかのヒト化もしくはキメラ抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列;または
(iii)(i)と(ii)の両方
を含む、発現ベクター。
[本発明1061]
本発明1060の発現ベクターを含む、宿主細胞。
[本発明1062]
組換え真核宿主細胞、組換え原核宿主細胞、または組換え微生物宿主細胞である、本発明1061の宿主細胞。
[本発明1063]
本発明1001~1027のいずれかの抗体または本発明1028~1044の二重特異性抗体を含む、組成物。
[本発明1064]
本発明1001~1027のいずれかの抗体または本発明1028~1044のいずれかの二重特異性抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
[本発明1065]
医薬として使用するための、本発明1001~1044のいずれかの抗体、本発明1063の組成物、または本発明1064の薬学的組成物。
[本発明1066]
がん、感染性疾患、または自己免疫疾患の処置において医薬として使用するための、本発明1001~1044のいずれかの抗体、本発明1063の組成物、または本発明1064の薬学的組成物。
[本発明1067]
疾患の処置において使用するための、本発明1001~1027のいずれかの抗体、本発明1028~1044の二重特異性抗体、本発明1063の組成物、または本発明1064の薬学的組成物。
[本発明1068]
疾患の処置用の医薬を調製するための、本発明1001~1027のいずれかの抗体または本発明1028~1044の二重特異性抗体の使用。
[本発明1069]
がん、感染性疾患、または自己免疫疾患である疾患の処置のための、本発明1068の使用。
[本発明1070]
本発明1001~1027のいずれかの抗体、本発明1028~1044の二重特異性抗体、本発明1063の組成物、または本発明1064の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、疾患の処置方法。
[本発明1071]
前記疾患が、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患である、本発明1070の方法。
[本発明1072]
本発明1001~1027のいずれかの抗体、本発明1063の組成物、または本発明1064の薬学的組成物を対象に投与する工程を含み、任意で該抗体が検出可能な作用物質で標識されている、CD3発現細胞の関与または蓄積を特徴とする疾患を診断する方法。
[本発明1073]
本発明1001~1027のいずれかの抗体を生産するための方法であって、
a)本発明1061~1062のいずれかの宿主細胞を培養する工程;および
b)培養培地から該抗体を精製する工程
を含む、前記方法。
[本発明1074]
本発明1001~1027のいずれかの抗体または本発明1028~1044のいずれかの二重特異性抗体を含む、診断用組成物。
[本発明1075]
試料中のCD3抗原またはCD3発現細胞の存在を検出するための方法であって、
a)該試料と、本発明1001~1027のいずれかの抗体または本発明1028~1044のいずれかの二重特異性抗体とを、該抗体または二重特異性抗体とCD3との間の複合体の形成が可能な条件下で接触させる工程;および
b)複合体が形成されているかどうかを解析する工程
を含む、前記方法。
[本発明1076]
以下を含む、試料中のCD3抗原またはCD3発現細胞の存在を検出するためのキット:
i)本発明1001~1027のいずれかの抗体または本発明1028~1044のいずれかの二重特異性抗体;および
ii)該キットの使用説明書。
[本発明1077]
本発明1001~1027のいずれかの抗体または本発明1028~1044のいずれかの二重特異性抗体に結合する、抗イディオタイプ抗体。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】ミュータント対wt UniTE-huCD3-H1L1-T41K分子の結合比のヒートプロット。1より上の比は、wtよりも強い結合を示し、他方、1より下の比は、wtよりも弱い結合を示す。結合は、CD3/TCR-LC13をトランスフェクトしたFreestyle 293-F細胞上で決定した。
図2】VH中に変異を有する作製したライブラリーにおける選択したCD3アフィニティー変異体のアライメント。ヒト化野生型配列(SEQ ID NO: 4)HuCD3-H1において、CDRに下線を引いている。強調表示したアミノ酸は置換である。
図3】フローサイトメトリーにより決定した、ヒト化CD3(UniTE-huCD3-H1L1-T41K)抗体の選択したVHアフィニティー変異体のT細胞結合曲線。図示したアフィニティー変異体は、野生型応答と検出不可能な応答との間の広範囲なT細胞結合能力をカバーする。
図4】非常に低い、検出不可能なT細胞結合を示す、フローサイトメトリーにより決定した、ヒト化CD3(UniTE-huCD3-H1L1-T41K)抗体の選択したVHアフィニティー変異体のT細胞結合曲線。
図5】フローサイトメトリーにより決定した、ヒト化CD3(BisG1-huCD3-H1L1-X-FEAL/ 1014-ハーセプチン-FEAR)抗体の選択したVHアフィニティー変異体のT細胞結合曲線。図示したアフィニティー変異体は、野生型応答と検出不可能な応答との間の広範囲なT細胞結合能力をカバーする。
図6A】アラマーブルーアッセイにより測定した、固形腫瘍細胞株に対するCD3アフィニティー変異体の細胞傷害。(A)NCI-N87細胞、エフェクター細胞(T細胞):腫瘍細胞(NCI-N87細胞)比=3:1、48時間のインキュベーション、n=2のドナー。図示した試験アフィニティー変異体は、全ての試験腫瘍細胞株について、野生型応答と観察されない細胞傷害との間の広範囲な細胞傷害をカバーしている。
図6B】アラマーブルーアッセイにより測定した、固形腫瘍細胞株に対するCD3アフィニティー変異体の細胞傷害。(B)SKOV3細胞、T細胞:SKOV3細胞比=4:1、48時間のインキュベーション、n=2のドナー。図示した試験アフィニティー変異体は、全ての試験腫瘍細胞株について、野生型応答と観察されない細胞傷害との間の広範囲な細胞傷害をカバーしている。
図6C】アラマーブルーアッセイにより測定した、固形腫瘍細胞株に対するCD3アフィニティー変異体の細胞傷害。(C)MDA-MB-231細胞、T細胞:MDA-MB-231細胞比=8:1、48時間のインキュベーション、n=2のドナー。図示した試験アフィニティー変異体は、全ての試験腫瘍細胞株について、野生型応答と観察されない細胞傷害との間の広範囲な細胞傷害をカバーしている。
図7】クロム放出アッセイにより測定した、血液(Daudi)細胞株に対するCD3アフィニティー変異体の細胞傷害。T細胞:Daudi細胞比=10:1、24時間のインキュベーション、1ドナー。図示した試験アフィニティー変異体は、試験腫瘍細胞株について、野生型応答と観察されない細胞傷害との間の広範囲な細胞傷害をカバーする。
図8A】NOD-SCIDマウス中のNCI-N87、ヒトPBMC同時移植モデルにおけるCD3×HER2二重特異性抗体の細胞傷害。HLA-Aが適合した非刺激ヒトPBMCをヒトT細胞の供給源として、NOD-SCIDマウスに用量レベル0.05 mg/kgのCD3アフィニティー抗体とNCI-N87腫瘍細胞を同時に接種した。ヒト化WT CD3(huCD3)および4種の異なるCD3アフィニティー変異体(N57E、H101K、S110A、Y114M)を試験した。(A)0.05 mg/kgの抗体での処置後に経時的に追跡した平均腫瘍体積(1群あたりn=4)。
図8B】NOD-SCIDマウス中のNCI-N87、ヒトPBMC同時移植モデルにおけるCD3×HER2二重特異性抗体の細胞傷害。HLA-Aが適合した非刺激ヒトPBMCをヒトT細胞の供給源として、NOD-SCIDマウスに用量レベル0.5 mg/kgのCD3アフィニティー抗体とNCI-N87腫瘍細胞を同時に接種した。ヒト化WT CD3(huCD3)および4種の異なるCD3アフィニティー変異体(N57E、H101K、S110A、Y114M)を試験した。(B)0.5 mg/kgの抗体での処置後に経時的に追跡した平均腫瘍体積(1群あたりn=4)。
図8C】NOD-SCIDマウス中のNCI-N87、ヒトPBMC同時移植モデルにおけるCD3×HER2二重特異性抗体の細胞傷害。HLA-Aが適合した非刺激ヒトPBMCをヒトT細胞の供給源として、NOD-SCIDマウスに用量レベル0.05 mg/kgのCD3アフィニティー抗体とNCI-N87腫瘍細胞を同時に接種した。ヒト化WT CD3(huCD3)および4種の異なるCD3アフィニティー変異体(N57E、H101K、S110A、Y114M)を試験した。(C)0日目の0.05 mg/kgの抗体での処置後44日目の平均腫瘍体積(1群あたりn=4)。Cのデータについて統計を行った。
図8D】NOD-SCIDマウス中のNCI-N87、ヒトPBMC同時移植モデルにおけるCD3×HER2二重特異性抗体の細胞傷害。HLA-Aが適合した非刺激ヒトPBMCをヒトT細胞の供給源として、NOD-SCIDマウスに用量レベル0.5 mg/kgのCD3アフィニティー抗体とNCI-N87腫瘍細胞を同時に接種した。ヒト化WT CD3(huCD3)および4種の異なるCD3アフィニティー変異体(N57E、H101K、S110A、Y114M)を試験した。(D)0日目の0.5 mg/kgの抗体での処置後44日目の平均腫瘍体積(1群あたりn=4)。Dのデータについて統計を行った。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
一局面において、本発明は、CD3に対して最適化されたアフィニティーを有する、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体に関する。したがって、SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される抗体などの参照抗体と比較して最適化されているヒト化またはキメラCD3抗体を提供することが、本発明の目的である。SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される抗体などの参照抗体と比較して最適化されたインビボの効力を有する抗体を提供することが、本発明のさらなる目的である。SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される抗体よりも低い、CD3に対する結合アフィニティーを有する抗体を提供することが、本発明のさらなる目的である。SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される抗体よりも高い、CD3に対する結合アフィニティーを有する抗体を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0043】
一局面において、本発明は、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体であって、該抗体が、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、CDR1 SEQ ID NO: 1、CDR2 SEQ ID NO: 2、およびCDR3 SEQ ID NO: 3に示すCDR配列を有する参照抗体の3つのCDR配列のうちの1つに変異を含み、該変異が、T31M、T31P、N57、H101、G105、S110、およびY114からなる群より選択される位置のうちの1つにおける変異であり、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体に関する。SEQ ID NO: 4におけるアミノ酸は、N末端からC末端に向かう方向に、第1のアミノ酸から125番まで、直接数値ナンバリングスキームに従ってナンバリングされている。SEQ ID NO: 4に対応する位置の数値ナンバリングを、図2に示す。さらに、CDR領域には、IMGT定義に従って注釈をつけた。
【0044】
本発明の一態様において、抗体は、CDR1 SEQ ID NO: 1、CDR2 SEQ ID NO: 2、およびCDR3 SEQ ID NO: 3に示すVH CDR配列を有する参照抗体と比較して低減または増強されている、ヒトCD3に対する結合アフィニティーを有する。
【0045】
本発明のいくつかの態様において、参照抗体と比較して低減されている、CD3ペプチド(例えば、SEQ ID NO: 402などのCD3分子)に対する結合アフィニティーを有する抗体は、参照抗体と同じ、ターゲット細胞に対する細胞溶解活性を維持しうる。
【0046】
本発明の一態様において、抗体は、T31MまたはT31P変異を含む。位置T31は、SEQ ID NO: 4に従う。
【0047】
本発明の一態様において、抗体は、位置N57に変異を含む。位置N57は、SEQ ID NO: 4に従う。一態様において、変異はN57Eである。
【0048】
本発明の一態様において、抗体は、位置H101に変異を含む。位置H101は、SEQ ID NO: 4に従う。一態様において、変異はH101GまたはH101Nである。
【0049】
本発明の一態様において、抗体は、位置G105に変異を含む。位置G105は、SEQ ID NO: 4に従う。一態様において、変異はG105Pである。
【0050】
本発明の一態様において、抗体は、位置Y114に変異を含む。位置Y114は、SEQ ID NO: 4に従う。一態様において、変異は、Y114M、Y114R、またはY114Vである。
【0051】
SEQ ID NO: 4およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される参照抗体は、実施例7により例証されるように、1.5×10-8 MのKD値に相当する、SEQ ID NO: 402のCD3ペプチドに対する結合アフィニティーを有する。
【0052】
本発明のいくつかの態様において、抗体は、実施例7に記載したバイオレイヤー干渉法により決定した場合に、例えば1.6×10-8 M~9.9×10-8 Mの結合アフィニティー、または例えば1.0×10-7~9.9×10-7 Mの結合アフィニティーの、1.5×10-8 Mよりも低い、SEQ ID NO: 402のCD3ペプチドに対する結合アフィニティーを有する。本発明のいくつかの態様において、抗体は、例えば1.4×10-8~1.0×10-8 M、例えば9.9×10-9~1.0×10-9 Mなどの、1.5×10-8 Mよりも高い、SEQ ID NO: 402のCD3ペプチドに対する結合アフィニティーを有する。
【0053】
一態様において、本発明は、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、以下からなる群の1つより選択されるCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体に関する;
a)SEQ ID NO: 12、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
b)SEQ ID NO: 14、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
c)SEQ ID NO: 16、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
d)SEQ ID NO: 18、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
e)SEQ ID NO: 20、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
f)SEQ ID NO: 22、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
g)SEQ ID NO: 24、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
h)SEQ ID NO: 26、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
i)SEQ ID NO: 28、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
j)SEQ ID NO: 30、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
k)SEQ ID NO: 32、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
l)SEQ ID NO: 34、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
m)SEQ ID NO: 36、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
n)SEQ ID NO: 38、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
o)SEQ ID NO: 40、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
p)SEQ ID NO: 42、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
q)SEQ ID NO: 44、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
r)SEQ ID NO: 46、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
s)SEQ ID NO: 48、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
t)SEQ ID NO: 50、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
u)SEQ ID NO: 52、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
v)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
w)SEQ ID NO: 56、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
x)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
y)SEQ ID NO: 60、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
z)SEQ ID NO: 62、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aa)SEQ ID NO: 64、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bb)SEQ ID NO: 66、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
cc)SEQ ID NO: 68、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
dd)SEQ ID NO: 70、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ee)SEQ ID NO: 72、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ff)SEQ ID NO: 74、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
gg)SEQ ID NO: 76、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hh)SEQ ID NO: 78、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ii)SEQ ID NO: 80、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
jj)SEQ ID NO: 82、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kk)SEQ ID NO: 84、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ll)SEQ ID NO: 86、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
mm)SEQ ID NO: 88、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nn)SEQ ID NO: 90、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
oo)SEQ ID NO: 92、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
pp)SEQ ID NO: 94、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
qq)SEQ ID NO: 96、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
rr)SEQ ID NO: 98、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ss)SEQ ID NO: 1、100、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
tt)SEQ ID NO: 1、102、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
uu)SEQ ID NO: 1、104、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
vv)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ww)SEQ ID NO: 1、108、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
xx)SEQ ID NO: 1、110、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
yy)SEQ ID NO: 1、112、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
zz)SEQ ID NO: 1、114、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aaa)SEQ ID NO: 1、116、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bbb)SEQ ID NO: 1、118、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ccc)SEQ ID NO: 1、120、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ddd)SEQ ID NO: 1、122、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
eee)SEQ ID NO: 1、124、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
fff)SEQ ID NO: 1、126、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ggg)SEQ ID NO: 1、128、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hhh)SEQ ID NO: 1、130、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
iii)SEQ ID NO: 1、132、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
jjj)SEQ ID NO: 1、134、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kkk)SEQ ID NO: 1、136、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
lll)SEQ ID NO: 1、138、3に示すCDR配列;
mmm)SEQ ID NO: 1、140、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nnn)SEQ ID NO: 1、142、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ooo)SEQ ID NO: 1、144、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ppp)SEQ ID NO: 1、146、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
qqq)SEQ ID NO: 1、148、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
rrr)SEQ ID NO: 1、150、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
sss)SEQ ID NO: 1、152、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ttt)SEQ ID NO: 1、154、3に示すCDR配列;
uuu)SEQ ID NO: 1、156、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
vvv)SEQ ID NO: 1、158、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
www)SEQ ID NO: 1、160、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
xxx)SEQ ID NO: 1、162、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
yyy)SEQ ID NO: 1、164、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
zzz)SEQ ID NO: 1、166、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aaaa)SEQ ID NO: 1、168、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bbbb)SEQ ID NO: 1、2、170に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
cccc)SEQ ID NO: 1、2、172に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
dddd)SEQ ID NO: 1、2、174に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
eeee)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ffff)SEQ ID NO: 1、2、178に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
gggg)SEQ ID NO: 1、2、180に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hhhh)SEQ ID NO: 1、2、182に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
iiii)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR配列;
jjjj)SEQ ID NO: 1、2、186に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kkkk)SEQ ID NO: 1、2、188に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
llll)SEQ ID NO: 1、2、190に示すCDR配列;
mmmm)SEQ ID NO: 1、2、192に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nnnn)SEQ ID NO: 1、2、194に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
oooo)SEQ ID NO: 1、2、196に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
pppp)SEQ ID NO: 1、2、198に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
qqqq)SEQ ID NO: 1、2、200に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
rrrr)SEQ ID NO: 1、2、202に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ssss)SEQ ID NO: 1、2、204に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
tttt)SEQ ID NO: 1、2、206に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
uuuu)SEQ ID NO: 1、2、208に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
vvvv)SEQ ID NO: 1、2、210に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
wwww)SEQ ID NO: 1、2、212に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
xxxx)SEQ ID NO: 1、2、214に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
yyyy)SEQ ID NO: 1、2、216に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
zzzz)SEQ ID NO: 1、2、218に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aaaaa)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bbbbb)SEQ ID NO: 1、2、222に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ccccc)SEQ ID NO: 1、2、224に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ddddd)SEQ ID NO: 1、2、226に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
eeeee)SEQ ID NO: 1、2、228に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
fffff)SEQ ID NO: 1、2、230に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ggggg)SEQ ID NO: 1、2、232に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hhhhh)SEQ ID NO: 1、2、234に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
iiiii)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
jjjjj)SEQ ID NO: 1、2、238に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kkkkk)SEQ ID NO: 1、2、240に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
lllll)SEQ ID NO: 1、2、242に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
mmmmm)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nnnnn)SEQ ID NO: 1、2、246に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ooooo)SEQ ID NO: 1、2、248に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ppppp)SEQ ID NO: 1、2、250に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
qqqqq)SEQ ID NO: 1、2、252に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
rrrrr)SEQ ID NO: 1、2、254に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
sssss)SEQ ID NO: 1、2、256に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ttttt)SEQ ID NO: 1、2、258に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
uuuuu)SEQ ID NO: 1、2、260に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
vvvvv)SEQ ID NO: 1、2、262に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
wwwww)SEQ ID NO: 1、2、264に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
xxxxx)SEQ ID NO: 1、2、266に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
yyyyy)SEQ ID NO: 1、2、268に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
zzzzz)SEQ ID NO: 1、2、270に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aaaaaa)SEQ ID NO: 1、2、272に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bbbbbb)SEQ ID NO: 1、2、274に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
cccccc)SEQ ID NO: 1、2、276に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
dddddd)SEQ ID NO: 1、2、278に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
eeeeee)SEQ ID NO: 1、2、280に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ffffff)SEQ ID NO: 1、2、282に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
gggggg)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hhhhhh)SEQ ID NO: 1、2、286に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
iiiiii)SEQ ID NO: 1、2、288に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
jjjjjj)SEQ ID NO: 1、2、290に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kkkkkk)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
llllll)SEQ ID NO: 1、2、294に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
mmmmmm)SEQ ID NO: 1、2、296に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nnnnnn)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに
oooooo)SEQ ID NO: 1、2、300に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列。
【0054】
一態様において、本発明は、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、以下からなる群の1つより選択されるCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体に関する;
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]、ならびに
l)a)~k)に示す3つのCDR配列のうちのいずれか1つに対して該3つのCDR配列全体で少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するCDR1、CDR2、およびCDR3配列であって、ただし、SEQ ID NO: 1、2、3に示す配列を有さない、CDR1、CDR2、およびCDR3配列。
【0055】
一態様において、本発明は、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、以下からなる群の1つより選択されるCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体に関する;
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V];ならびに
a.および
l)a)~k)にて特定されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列であって、該3つのCDR配列全体で、最大で5個のさらなる変異または置換、最大で4個のさらなる変異または置換、最大で3個のさらなる変異または置換、最大で2個のさらなる変異または置換、あるいは、最大で1個のさらなる変異または置換を有し、該変異または置換が、好ましくは、ヒトCD3に対する結合アフィニティーを改変しない、CDR1、CDR2、およびCDR3配列。
【0056】
一態様において、本発明は、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、以下からなる群由来のVH配列のうちの1つを含む、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体に関する;
a)SEQ ID NO: 13に示すVH配列;
b)SEQ ID NO: 15に示すVH配列;
c)SEQ ID NO: 17に示すVH配列;
d)SEQ ID NO: 19に示すVH配列;
e)SEQ ID NO: 21に示すVH配列;
f)SEQ ID NO: 23に示すVH配列;
g)SEQ ID NO: 25に示すVH配列;
h)SEQ ID NO: 27に示すVH配列;
i)SEQ ID NO: 29に示すVH配列;
j)SEQ ID NO: 31に示すVH配列;
k)SEQ ID NO: 33に示すVH配列;
l)SEQ ID NO: 35に示すVH配列;
m)SEQ ID NO: 37に示すVH配列;
n)SEQ ID NO: 39に示すVH配列;
o)SEQ ID NO: 41に示すVH配列;
p)SEQ ID NO: 43に示すVH配列;
q)SEQ ID NO: 45に示すVH配列;
r)SEQ ID NO: 47に示すVH配列;
s)SEQ ID NO: 49に示すVH配列;
t)SEQ ID NO: 51に示すVH配列;
u)SEQ ID NO: 53に示すVH配列;
v)SEQ ID NO: 55に示すVH配列;
w)SEQ ID NO: 57に示すVH配列;
x)SEQ ID NO: 59に示すVH配列;
y)SEQ ID NO: 61に示すVH配列;
z)SEQ ID NO: 63に示すVH配列;
aa)SEQ ID NO: 65に示すVH配列;
bb)SEQ ID NO: 67に示すVH配列;
cc)SEQ ID NO: 69に示すVH配列;
dd)SEQ ID NO: 71に示すVH配列;
ee)SEQ ID NO: 73に示すVH配列;
ff)SEQ ID NO: 75に示すVH配列;
gg)SEQ ID NO: 77に示すVH配列;
hh)SEQ ID NO: 79に示すVH配列;
ii)SEQ ID NO: 81に示すVH配列;
jj)SEQ ID NO: 83に示すVH配列;
kk)SEQ ID NO: 85に示すVH配列;
ll)SEQ ID NO: 87に示すVH配列;
mm)SEQ ID NO: 89に示すVH配列;
nn)SEQ ID NO: 91に示すVH配列;
oo)SEQ ID NO: 93に示すVH配列;
pp)SEQ ID NO: 95に示すVH配列;
qq)SEQ ID NO: 97に示すVH配列;
rr)SEQ ID NO: 99に示すVH配列;
ss)SEQ ID NO: 101に示すVH配列;
tt)SEQ ID NO: 103に示すVH配列;
uu)SEQ ID NO: 105に示すVH配列;
vv)SEQ ID NO: 107に示すVH配列;
ww)SEQ ID NO: 109に示すVH配列;
xx)SEQ ID NO: 111に示すVH配列;
yy)SEQ ID NO: 113に示すVH配列;
zz)SEQ ID NO: 115に示すVH配列;
aaa)SEQ ID NO: 117に示すVH配列;
bbb)SEQ ID NO: 119に示すVH配列;
ccc)SEQ ID NO: 121に示すVH配列;
ddd)SEQ ID NO: 123に示すVH配列;
eee)SEQ ID NO: 125に示すVH配列;
fff)SEQ ID NO: 127に示すVH配列;
ggg)SEQ ID NO: 129に示すVH配列;
hhh)SEQ ID NO: 131に示すVH配列;
iii)SEQ ID NO: 133に示すVH配列;
jjj)SEQ ID NO: 135に示すVH配列;
kkk)SEQ ID NO: 137に示すVH配列;
lll)SEQ ID NO: 139に示すVH配列;
mmm)SEQ ID NO: 141に示すVH配列;
nnn)SEQ ID NO: 143に示すVH配列;
ooo)SEQ ID NO: 145に示すVH配列;
ppp)SEQ ID NO: 147に示すVH配列;
qqq)SEQ ID NO: 149に示すVH配列;
rrr)SEQ ID NO: 151に示すVH配列;
sss)SEQ ID NO: 153に示すVH配列;
ttt)SEQ ID NO: 155に示すVH配列;
uuu)SEQ ID NO: 157に示すVH配列;
vvv)SEQ ID NO: 159に示すVH配列;
www)SEQ ID NO: 161に示すVH配列;
xxx)SEQ ID NO: 163に示すVH配列;
yyy)SEQ ID NO: 165に示すVH配列;
zzz)SEQ ID NO: 167に示すVH配列;
aaaa)SEQ ID NO: 169に示すVH配列;
bbbb)SEQ ID NO: 171に示すVH配列;
cccc)SEQ ID NO: 173に示すVH配列;
dddd)SEQ ID NO: 175に示すVH配列;
eeee)SEQ ID NO: 177に示すVH配列;
ffff)SEQ ID NO: 179に示すVH配列;
gggg)SEQ ID NO: 181に示すVH配列;
hhhh)SEQ ID NO: 183に示すVH配列;
iiii)SEQ ID NO: 185に示すVH配列;
jjjj)SEQ ID NO: 187に示すVH配列;
kkkk)SEQ ID NO: 189に示すVH配列;
llll)SEQ ID NO: 191に示すVH配列;
mmmm)SEQ ID NO: 193に示すVH配列;
nnnn)SEQ ID NO: 195に示すVH配列;
oooo)SEQ ID NO: 197に示すVH配列;
pppp)SEQ ID NO: 199に示すVH配列;
qqqq)SEQ ID NO: 201に示すVH配列;
rrrr)SEQ ID NO: 203に示すVH配列;
ssss)SEQ ID NO: 205に示すVH配列;
tttt)SEQ ID NO: 207に示すVH配列;
uuuu)SEQ ID NO: 209に示すVH配列;
vvvv)SEQ ID NO: 211に示すVH配列;
wwww)SEQ ID NO: 213に示すVH配列;
xxxx)SEQ ID NO: 215に示すVH配列;
yyyy)SEQ ID NO: 217に示すVH配列;
zzzz)SEQ ID NO: 219に示すVH配列;
aaaaa)SEQ ID NO: 221に示すVH配列;
bbbbb)SEQ ID NO: 223に示すVH配列;
ccccc)SEQ ID NO: 225に示すVH配列;
ddddd)SEQ ID NO: 227に示すVH配列;
eeeee)SEQ ID NO: 229に示すVH配列;
fffff)SEQ ID NO: 221に示すVH配列;
ggggg)SEQ ID NO: 223に示すVH配列;
hhhhh)SEQ ID NO: 225に示すVH配列;
iiiii)SEQ ID NO: 227に示すVH配列;
jjjjj)SEQ ID NO: 229に示すVH配列;
kkkkk)SEQ ID NO: 231に示すVH配列;
lllll)SEQ ID NO: 233に示すVH配列;
mmmmm)SEQ ID NO: 235に示すVH配列;
nnnnn)SEQ ID NO: 237に示すVH配列;
ooooo)SEQ ID NO: 239に示すVH配列;
ppppp)SEQ ID NO: 241に示すVH配列;
qqqqq)SEQ ID NO: 243に示すVH配列;
rrrrr)SEQ ID NO: 245に示すVH配列;
sssss)SEQ ID NO: 247に示すVH配列;
ttttt)SEQ ID NO: 249に示すVH配列;
uuuuu)SEQ ID NO: 251に示すVH配列;
vvvvv)SEQ ID NO: 253に示すVH配列;
wwwww)SEQ ID NO: 255に示すVH配列;
xxxxx)SEQ ID NO: 257に示すVH配列;
yyyyy)SEQ ID NO: 259に示すVH配列;
zzzzz)SEQ ID NO: 261に示すVH配列;
aaaaaa)SEQ ID NO: 263に示すVH配列;
bbbbbb)SEQ ID NO: 265に示すVH配列;
cccccc)SEQ ID NO: 267に示すVH配列;
dddddd)SEQ ID NO: 269に示すVH配列;
eeeeee)SEQ ID NO: 271に示すVH配列;
ffffff)SEQ ID NO: 273に示すVH配列;
gggggg)SEQ ID NO: 275に示すVH配列;
hhhhhh)SEQ ID NO: 277に示すVH配列;
iiiiii)SEQ ID NO: 279に示すVH配列;
jjjjjj)SEQ ID NO: 281に示すVH配列;
kkkkkk)SEQ ID NO: 283に示すVH配列;
llllll)SEQ ID NO: 285に示すVH配列;
mmmmmm)SEQ ID NO: 287に示すVH配列;
nnnnnn)SEQ ID NO: 289に示すVH配列;
oooooo)SEQ ID NO: 291に示すVH配列;
pppppp)SEQ ID NO: 293に示すVH配列;
qqqqqq)SEQ ID NO: 295に示すVH配列;
rrrrrr)SEQ ID NO: 297に示すVH配列;
ssssss)SEQ ID NO: 299に示すVH配列、および
tttttt)SEQ ID NO: 301に示すVH配列。
【0057】
一態様において、本発明は、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、以下からなる群より選択されるVH配列のうちの1つを含む、ヒトCD3に結合するヒト化またはキメラ抗体に関する;
a)SEQ ID NO: 55に示すVH配列 [T31M]、
b)SEQ ID NO: 59に示すVH配列 [T31P]、
c)SEQ ID NO: 107に示すVH配列 [N57E]、
d)SEQ ID NO: 177に示すVH配列 [H101G]、
e)SEQ ID NO: 185に示すVH配列 [H101N]、
f)SEQ ID NO: 221に示すVH配列 [G105P]、
g)SEQ ID NO: 237に示すVH配列 [S110A]、
h)SEQ ID NO: 245に示すVH配列 [S110G]、
i)SEQ ID NO: 285に示すVH配列 [Y114M]、
j)SEQ ID NO: 293に示すVH配列 [Y114R] 、および
k)SEQ ID NO: 299に示すVH配列 [Y114V] 。
【0058】
本発明の一態様において、ヒト化またはキメラ抗体は、軽鎖可変(VL)領域を含む結合領域を含み、該VL領域は、以下からなる群より選択されるCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む;
a)SEQ ID NO: 6、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
b)SEQ ID NO: 302、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
c)SEQ ID NO: 304、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
d)SEQ ID NO: 306、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
e)SEQ ID NO: 308、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
f)SEQ ID NO: 310、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
g)SEQ ID NO: 312、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
h)SEQ ID NO: 314、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
i)SEQ ID NO: 316、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
j)SEQ ID NO: 318、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
k)SEQ ID NO: 320、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
l)SEQ ID NO: 322、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
m)SEQ ID NO: 324、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
n)SEQ ID NO: 326、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
o)SEQ ID NO: 328、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
p)SEQ ID NO: 330、GTN、7に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
q)SEQ ID NO: 6、GTN、332に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
r)SEQ ID NO: 6、GTN、334に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
s)SEQ ID NO: 6、GTN、336に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
t)SEQ ID NO: 6、GTN、338に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
u)SEQ ID NO: 6、GTN、340に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
v)SEQ ID NO: 6、GTN、342に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
w)SEQ ID NO: 6、GTN、344に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
x)SEQ ID NO: 6、GTN、346に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
y)SEQ ID NO: 6、GTN、348に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
z)SEQ ID NO: 6、GTN、350に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
aa)SEQ ID NO: 6、GTN、352に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
bb)SEQ ID NO: 6、GTN、354に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
cc)SEQ ID NO: 6、GTN、356に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
dd)SEQ ID NO: 6、GTN、358に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ee)SEQ ID NO: 6、GTN、360に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ff)SEQ ID NO: 6、GTN、362に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
gg)SEQ ID NO: 6、GTN、364に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
hh)SEQ ID NO: 6、GTN、366に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ii)SEQ ID NO: 6、GTN、368に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
jj)SEQ ID NO: 6、GTN、370に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
kk)SEQ ID NO: 6、GTN、372に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ll)SEQ ID NO: 6、GTN、374に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
mm)SEQ ID NO: 6、GTN、376に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
nn)SEQ ID NO: 6、GTN、378に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
oo)SEQ ID NO: 6、GTN、380に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
pp)SEQ ID NO: 6、GTN、382に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
qq)SEQ ID NO: 6、GTN、384に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
rr)SEQ ID NO: 6、GTN、386に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
ss)SEQ ID NO: 6、GTN、388に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
tt)SEQ ID NO: 6、GTN、390に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列;
uu)SEQ ID NO: 6、GTN、392に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列、ならびに
vv)SEQ ID NO: 6、GTN、394に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列。
【0059】
本発明の別の態様において、ヒト化またはキメラ抗体は、軽鎖可変(VL)領域を含む結合領域を含み、該VL領域は、以下からなる群より選択されるVL配列のうちの1つを含む;
a)SEQ ID NO: 8に示すVL配列;および
b)SEQ ID NO: 10に示すVL配列。
【0060】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子のフラグメント、またはそのいずれかの誘導体であって、典型的な生理条件下に、かなりの期間の半減期で、例えば少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日以上などの期間の半減期で、または他の任意の機能的に定義される期間(例えば、抗原への抗体結合に関連する生理的応答を誘発し、促進し、強化し、かつ/または調整するのに十分な時間、および/または抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)の半減期で、抗原に特異的に結合する能力を有するものを指すものとする。抗原と相互作用する結合領域(本明細書では結合ドメインという用語を使用する場合もあり、どちらの用語も同じ意味を有する)は、免疫グロブリン分子の重鎖と軽鎖の両方の可変領域を含む。抗体(Ab)の定常領域は、宿主組織または宿主因子、例えば免疫系のさまざまな細胞(例えばエフェクター細胞およびT細胞)ならびに補体系の構成要素、例えば補体活性化の古典経路における最初の構成要素であるC1qなどへの免疫グロブリンの結合を媒介しうる。上に示したように、本明細書において使用する抗体という用語は、別段の明言がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、抗原に特異的に相互作用する(例えば結合する)能力を保っている抗体のフラグメントを包含する。抗体の抗原結合機能は全長抗体のフラグメントによって発揮されうることが示されている。用語「抗体」に包含される結合性フラグメントの例として、(i)Fab'またはFabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント、またはWO2007059782(Genmab A/S)に記載の一価抗体;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域のジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインから本質的になるFdフラグメント;ならびに(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインから本質的になるFvフラグメントが挙げられる。さらにまた、Fvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされているが、組換え法を使用し、それらをVL領域とVH領域とがペアになって一価分子を形成している単一のタンパク質鎖にすることを可能にする合成リンカーによって、それらを接合してもよい(一本鎖抗体または一本鎖Fv(scFv)として公知である;例えばBird et al., Science 242, 423-426(1988)およびHuston et al., PNAS USA 85, 5879-5883(1988)参照)。そのような一本鎖抗体は、別段の注記がある場合を除き、または文脈上明確に示される場合を除き、抗体という用語に包含される。そのようなフラグメントは一般に抗体の意味に含まれるが、それらは全体として、またそれぞれ個別に、本発明のユニークな特徴であり、異なる生物学的性質および有用性を呈する。本発明との関連においてこれらの抗体フラグメントおよび他の有用な抗体フラグメントについては、本明細書においてさらに議論する。別段の指定がある場合を除き、抗体という用語がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに酵素切断、ペプチド合成、および組換え技法などといった任意の公知の方法によって得られる抗原に特異的に結合する能力を保っている抗体フラグメント(抗原結合性フラグメント)も包含することを理解すべきである。作製される抗体は任意のアイソタイプであることができる。
【0061】
本明細書において使用する用語「免疫グロブリン重鎖」、「免疫グロブリンの重鎖」または「重鎖」は、免疫グロブリンの鎖の一つを指すものとする。重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)と、免疫グロブリンのアイソタイプを定義づける重鎖定常領域(本明細書ではCHと略記する)とから構成される。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3から構成される。重鎖定常領域はさらにヒンジ領域を含みうる。本明細書において使用する用語「免疫グロブリン」は、2対のポリペプチド鎖からなる構造的に関連する糖タンパク質の一クラスを指すものとし、1対は軽(L)鎖、1対は重(H)鎖であって、4本全てがジスルフィド結合によって相互に連結されうる。免疫グロブリンの構造は詳しく特徴づけられている(例えば[14]参照)。免疫グロブリン(例えばIgG)の構造では、いわゆる「ヒンジ領域」にあるジスルフィド結合によって2つの重鎖が相互に接続されている。重鎖と同じく各軽鎖も、典型的には、数個の領域、すなわち軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)と軽鎖定常領域(本明細書ではCLと略記する)とから構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLから構成される。また、VH領域とVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性領域(すなわち配列および/または構造的に画定されるループの形態が超可変性でありうる超可変領域)に、さらに細分することができ、それらの間には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存度の高い領域が散在している。VHとVLは、それぞれ典型的には、3つのCDRと4つのFRから構成され、それらがアミノ末端からカルボキシ末端に向かって次の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4([15]参照)。CDR配列は、IMGTが提供する方法を使用して決定することができる[16]~[17]。
【0062】
本明細書において使用する用語「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリン(サブ)クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)またはその任意のアロタイプ、例えばIgG1m(za)およびIgG1m(f)[SEQ ID NO:407])を指す。したがって、一態様において抗体は、IgG1クラスまたはその任意のアロタイプの免疫グロブリン重鎖を含む。さらに、各重鎖アイソタイプを、カッパ(κ)軽鎖またはラムダ(λ)軽鎖と組み合わせることができる。
【0063】
本明細書において使用する用語「キメラ抗体」は、可変領域が非ヒト種に由来し(例えば齧歯類に由来し)、定常領域がヒトなどの異なる種に由来する抗体を指す。キメラ抗体は抗体工学によって作製することができる。「抗体工学」とは、さまざまな種類の抗体修飾に使用される一般的な用語であり、当業者には周知のプロセスである。特にキメラ抗体は、[18]に記載の標準的DNA技法を使って作製することができる。したがってキメラ抗体は遺伝子操作された組換え抗体でありうる。いくつかのキメラ抗体は、遺伝子的または酵素的に操作された抗体である。キメラ抗体の作製は当業者に知られているので、本発明のキメラ抗体の作製は、本明細書に記載する方法以外の方法で行うこともできる。治療用のキメラモノクローナル抗体は抗体免疫原性を低減するために開発される。それらは、典型的には、関心対象の抗原に特異的な非ヒト(例えばマウス)可変領域と、ヒト定常抗体重鎖および軽鎖ドメインとを含有しうる。キメラ抗体に関連して使用する用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の両方のCDRおよびフレームワーク領域を含む領域を指す。
【0064】
本明細書において使用する用語「ヒト化抗体」は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を持つように修飾された非ヒト可変ドメインとを含有する、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、全体として抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同ヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)上に移植することによって、達成することができる([19]~[20]参照)。親抗体の結合アフィニティーおよび特異性を完全に再構成するには、親抗体(すなわち非ヒト抗体)からのフレームワーク残基をヒトフレームワーク領域中に置換すること(復帰変異)が必要かもしれない。構造相同性モデリングは、抗体の結合特性にとって重要なフレームワーク領域中のアミノ酸残基を同定するのに役立ちうる。したがってヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、任意で非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を含む主としてヒトのフレームワーク領域、および完全にヒトの定常領域を含みうる。任意で、アフィニティーや生化学的特性などの好ましい特徴を持つヒト化抗体を得るために、必ずしも復帰変異ではない追加のアミノ酸修飾を適用してもよい。
【0065】
本発明のいずれかの局面または態様によるヒト化またはキメラ抗体は、「ヒト化またはキメラCD3抗体」、「本発明のヒト化またはキメラ抗体」、「CD3抗体」、または「本発明のCD3抗体」と呼ぶことができ、これらは全て、文脈上矛盾が生じる場合を除き、同じ意味および目的を有する。
【0066】
非ヒト起源の抗体のアミノ酸配列はヒト起源の抗体とは異なるので、ヒト患者に投与した場合に非ヒト抗体は潜在的に免疫原性である。しかし、抗体が非ヒト起源であるにもかかわらず、そのCDRセグメントはそのターゲット抗原に結合する抗体の能力を担っており、ヒト化はその抗体の特異性および結合アフィニティーを維持することを目指している。このように非ヒト治療用抗体のヒト化は、人間におけるその免疫原性を最小限に抑えると同時に、そのヒト化抗体が非ヒト起源の抗体の特異性および結合アフィニティーを維持するように行われる。
【0067】
本明細書において使用する用語「結合領域」は、抗体の一領域であって、例えば細胞、細菌またはビリオン上に存在するポリペプチドなどといった何らかの分子に結合する能力を有する領域を指す。
【0068】
本明細書において使用する用語「結合」は、前もって決定された抗原またはターゲットへの抗体の結合を指し、その抗原またはターゲットへの結合は、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術により、BIAcore 3000計器において、抗原をリガンドとし、かつ抗体を分析物として決定した場合に、典型的には、約10-6M以下、例えば10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、または約10-11M以下のKDに相当するアフィニティーで起こり、前もって決定された抗原でも近縁の抗原でもない非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)に対する結合に関するそのアフィニティーの10分の1以下、例えば100分の1以下、例えば1,000分の1以下、例えば10,000分の1以下、例えば100,000分の1以下のKDに相当するアフィニティーで前もって決定された抗原に結合する。アフィニティーがどの程度低いかはその抗体のKDに依存するので、抗体のKDが非常に低い場合(すなわち抗体が高度に特異的である場合)、抗原に対するアフィニティーの低さは、非特異的抗原に対するアフィニティーと比較して、10,000分の1以下になりうる。本明細書において使用する用語「KD」(M)は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
【0069】
本明細書において使用する用語「ヒトCD3」は、T細胞補助受容体タンパク質複合体の一部であって4つの異なる鎖から構成されているヒト分化抗原群3タンパク質を指す。CD3は他の種にも見出されるので、本明細書において使用する用語「CD3」は、文脈上矛盾が生じる場合を除き、ヒトCD3に限定されない。哺乳動物の場合、この複合体は、CD3γ(ガンマ)鎖(ヒトCD3γ鎖Swissprot P09693またはカニクイザルCD3γ Swissprot Q95LI7)、CD3δ(デルタ)鎖(ヒトCD3δ Swissprot P04234またはカニクイザルCD3δSwissprot Q95LI8)、2つのCD3ε(イプシロン)鎖(ヒトCD3ε Swissprot P07766、またはカニクイザルCD3ε Swissprot Q95LI5、またはアカゲザルCD3ε Swissprot G7NCB9)およびCD3ζ(ゼータ)鎖(ヒトCD3ζ Swissprot P20963、カニクイザルCD3ζ Swissprot Q09TK0)を含有している。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として公知である分子と会合して、Tリンパ球において活性化シグナルを生成する。TCR分子とCD3分子は共にTCR複合体を構成する。
【0070】
Swissprot番号として言及されるアミノ酸配列がタンパク質の翻訳後に除去されるシグナルペプチドを含むことは、当業者には知られている。したがって、細胞表面上に存在するCD3などのタンパク質はシグナルペプチドを含まない。特に、表1に列挙するアミノ酸配列は、そのようなシグナルペプチドを含有していない。表1に列挙するようなタンパク質は「成熟タンパク質」と呼ぶことができる。したがってSEQ ID NO:398は、成熟ヒトCD3δ(デルタ)のアミノ酸配列を表し、SEQ ID NO:399は成熟ヒトCD3ε(イプシロン)のアミノ酸配列を表し、SEQ ID NO:403は成熟カニクイザルCD3εのアミノ酸配列を表し、SEQ ID NO:404は成熟アカゲザルCD3εのアミノ酸配列を表す。このように本明細書において使用する用語「成熟」は、シグナル配列またはリーダー配列を一切含まないタンパク質を指す。
【0071】
シグナルペプチド配列の相同性、長さ、および切断部位位置が、タンパク質によってかなり多様であることは周知である。シグナルペプチドは異なる方法で決定することができ、例えば本発明のSEQ ID NO:399はSignalPアプリケーション(http ://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/で利用可能)に従って決定された。
【0072】
ある特定の態様では、本発明のヒト化またはキメラ抗体が、CD3のイプシロン鎖、例えばヒトCD3のイプシロン鎖(SEQ ID NO:399)に結合する。さらに別の特定の態様では、本ヒト化またはキメラ抗体が、ヒトCD3ε(イプシロン)(SEQ ID NO:402)のN末端部分のアミノ酸1~27内のエピトープに結合する。そのような特定の態様において、抗体は、さらに、他の非ヒト霊長類種、例えばカニクイザル(カニクイザルCD3イプシロンSEQ ID NO:403)および/またはアカゲザル(アカゲザルCD3イプシロンSEQ ID NO:404)と交差反応しうる。
【0073】
本明細書において定義づけるCDR配列を含み、さらにフレームワーク領域を含む本発明の抗体は、CDR配列外の配列が相違しうるが、それでも元の抗体と比較して完全な結合能力を保っている。したがって本発明は、本明細書に記載するいずれかの配列と一定の配列同一性を有する可変領域のアミノ酸配列を含む抗体にも関係する。
【0074】
本発明との関連において使用する用語「配列同一性」は、2つの配列を最適に整列するために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、それらの配列が共有する同一位置の数の関数としての2つの配列の間のパーセント同一性を指す(すなわち%相同性=100×同一位置の数/位置の総数)。2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間のパーセント同一性は、例えばE. MeyersおよびW. Millerのアルゴリズム[21]を使って決定することができる。加えて、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム[22]を使って決定することもできる。多重アライメントは、好ましくは、(例えばVector NTI Advance(登録商標)ソフトウェアバージョン11.5(Invitrogen Inc.)で使用されている)Clustal Wアルゴリズム[23]を使って行われる。
【0075】
したがって、本発明の一態様において、抗体は、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域は、以下からなる群の1つより選択される3つのCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む;
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V];ならびに
l)a)~k)に示す3つのCDR配列のうちのいずれか1つに対して該3つのCDR配列全体で少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、CDR1、CDR2、およびCDR3配列であって、ただし、SEQ ID NO: 1、2、3に示す配列を有さない、CDR1、CDR2、およびCDR3配列。
【0076】
本文書の配列表1に示すように、VH領域は、125アミノ酸の配列からなる。したがって、その124アミノ酸の位置が上に列挙した第1のVH配列のうちの1つと同一である、125アミノ酸からなる第2のVH配列は、該第1のVH配列と99,2%の配列同一性を有する。その120アミノ酸の位置が上に列挙した第1のVH配列のうちの1つと同一である、125アミノ酸からなる第2の配列は、該第1のVH配列と96%の配列同一性を有する。その115アミノ酸の位置が上に列挙した第1のVH配列のうちの1つと同一である、125アミノ酸からなる第2の配列は、該第1のVH配列と92%の配列同一性を有する。
【0077】
そのある特定の態様において、VH領域は、前記群にて特定されるVH配列の少なくとも1つに対して少なくとも96%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0078】
本発明の一態様において、変異は、VH領域のフレームワーク領域中に位置する。したがって、いくつかの態様において、VH領域の3つのCDR配列は、本発明の抗体と100%同一であるが、アミノ酸変動が、VH領域のフレームワーク領域中で起こりうる。そのようなフレームワーク領域中のアミノ酸変動は、好ましくは、CDRがSEQ ID NO: 407の参照フレーム中に含まれる場合の抗体と比較して、CD3に対する抗体の結合アフィニティーを変化させえない。
【0079】
配列同一性における変動を引き起こすVH配列中の変異は、好ましくは、保存的、物理的、または機能的アミノ酸でありうる。アミノ酸の類似アミノ酸との置換は、親抗体の機能性を保つ可能性を増大しうる。
【0080】
本発明の一態様において、抗体はヒト化抗体である。
【0081】
本発明の一態様において、抗体は全長抗体である。
【0082】
本発明のヒト化抗体は、ヒト可変フレームワーク領域として使用するのに適度な相同性を有する重鎖および軽鎖ヒト配列を同定するために、重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列をヒト生殖細胞系可変領域配列のデータベースと比較することによって、作製することができる。一連のヒト化重鎖および軽鎖可変領域は、例えばマウスのCDRをフレームワーク領域(上述のように同定されるもの)に移植し、必要であれば、抗体結合効率の回復にとって決定的に重要であるかもしれないと同定された残基をその特定マウス配列に復帰変異させること(フレームワーク領域中のヒトアミノ酸残基の1つまたは複数をその特定位置の非ヒトアミノ酸に戻すように変異させること)によって設計することができる。次に、iTope(商標)およびTCED(商標)([24]、[25]、および[26])などのインシリコ技術の適用によって決定される、潜在的T細胞エピトープの出現率が最低である変異体配列を選択することができる。
【0083】
さらに、本発明のヒト化抗体を「脱免疫化」(deimmunize)することもできる。本発明のヒト化抗体のようなタンパク質配列内での、ヒトT細胞エピトープの存在は、それらがヘルパーT細胞を活性化する潜在能力を有することから、免疫原性リスクプロファイルを大きくする可能性があるので、脱免疫化(deimmmunization)が望ましいかもしれない。ヘルパーT細胞のそのような活性化は脱免疫化によって回避することができる。脱免疫化は、抗体の結合アフィニティーを著しく低減することなくT細胞エピトープを除去するために、ヒト化抗体のアミノ酸配列に変異を導入することによって行うことができる。
【0084】
したがって本発明の一態様では、(i)非ヒト全重鎖可変配列および/または全軽鎖可変配列をヒト生殖細胞系配列のデータベースと比較する工程、(ii)非ヒト配列に対して最も高い相同性を有するヒト生殖細胞系配列を選択することでヒト化配列を得る工程、(iii)必要であれば復帰変異によってヒト化配列を最適化する工程、および(iv)適切な発現系において前記配列を発現させる工程を含む方法によって、ヒト化抗体を生産することができる。
【0085】
したがって本発明の全長抗体は、(i)非ヒト重鎖可変配列および軽鎖可変配列をヒト生殖細胞系配列のデータベースと比較する工程、(ii)非ヒト配列に対して最も高い相同性を有するヒト生殖細胞系配列を選択する工程、(iii)選択したヒト生殖細胞系中に非ヒトCDRを移植することでヒト化配列を得る工程、(iv)必要であれば復帰変異によってヒト化配列を最適化する工程、(v)定常重鎖および軽鎖配列を同定する工程、および(vi)適切な発現系において完全重鎖配列および完全軽鎖配列を発現させる工程を含む方法によって生産することができる。したがって本発明の全長抗体は、実施例1で述べるように生産することができる。CDR配列または全可変領域配列のいずれかから出発して全長抗体を生産することは、当業者には知られている。したがって、本発明の全長抗体を作製する方法は、当業者にはわかるであろう。
【0086】
本明細書において使用する用語「完全重鎖配列」は、重鎖可変配列と定常重鎖配列とからなる配列を指す。
【0087】
本明細書において使用する用語「完全軽鎖配列」は、軽鎖可変配列と定常軽鎖配列とからなる配列を指す。
【0088】
復帰変異は標準的DNA変異誘発法によって導入することができる。そのようなDNA変異誘発の標準的技法は[18]に記載されている。あるいは、Quickchange(商標)Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)などの市販のキットを使用するか、デノボDNA合成によって所望の復帰変異を導入することができる。
【0089】
したがって一態様では抗体がヒト化抗体である。
【0090】
キメラ抗体は、非ヒト(例えばマウス)抗体の定常領域配列の全てをヒト起源の定常領域配列で置換することによって作製することができる。したがって、キメラ抗体には完全に非ヒトの可変領域配列が維持される。したがって本発明のキメラ抗体は、適切な発現系において非ヒト重鎖可変(SEQ ID NO:405)、非ヒト軽鎖可変配列(SEQ ID NO:406)、ヒト定常重鎖配列およびヒト定常軽鎖配列を発現させ、それによって全長キメラ抗体を作製する工程を含む方法によって生産することができる。代替的方法を使用することもできる。キメラ抗体を生産するそのような方法は当業者に知られているので、本発明のキメラ抗体の生産方法は当業者にはわかるであろう。したがって、本発明のキメラ抗体を作製するために、非ヒト(例えばマウス)VHまたはVL配列に本発明の変異を導入するであろう。
【0091】
したがって一態様では抗体がキメラ抗体である。
【0092】
一態様では、抗体が全長抗体である。本明細書において使用する用語「全長抗体」は、当該アイソタイプの野生型抗体に通常見出されるものに対応する重鎖および軽鎖定常および可変ドメインを全て含有する抗体(例えば親抗体または変異体抗体)を指す。
【0093】
一態様において、抗体は、第1および第2免疫グロブリン重鎖を含むFc領域を含む。
【0094】
本明細書において使用する用語「Fc領域」は、N末端からC末端に向かう方向に、少なくともヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含む領域を指す。Fc領域はヒンジ領域のN末端側にCH1領域をさらに含みうる。
【0095】
本明細書において使用する用語「ヒンジ領域」は、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指す。したがって、例えばヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、Kabatに記載のEuナンバリングでアミノ酸216~230に対応する。
【0096】
別段の明言がある場合を除き、または文脈上矛盾が生じる場合を除き、定常領域配列のアミノ酸は、本明細書では、Euナンバリングインデックス(Eu-index of numbering)([27]に記載)に従ってナンバリングされ、これを「Kabatに記載のEuナンバリングで」、「KabatのEuナンバリングで」、または「Euナンバリングシステムで」という。
【0097】
本明細書において使用する用語「CH1領域」または「CH1ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のCH1領域を指す。したがって例えばヒトIgG1抗体のCH1領域は、Euナンバリングシステムでアミノ酸118~215に対応する。ただし、CH1領域は本明細書に記載する他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0098】
本明細書において使用する用語「CH2領域」または「CH2ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指す。したがって例えばヒトIgG1抗体のCH2領域はEuナンバリングシステムでアミノ酸231~340に対応する。ただし、CH2領域は本明細書に記載する他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0099】
本明細書において使用する用語「CH3領域」または「CH3ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指す。したがって例えばヒトIgG1抗体のCH3領域はEuナンバリングシステムでアミノ酸341~447に対応する。ただし、CH3領域は本明細書に記載する他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0100】
一態様では、免疫グロブリン重鎖のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択される。免疫グロブリン重鎖は、IgG1m(f)(SEQ ID NO:407)など、各免疫グロブリンクラス内の任意のアロタイプであることができる。したがって、ある特定の態様では、免疫グロブリン重鎖のアイソタイプが、IgG1またはその任意のアロタイプ、例えばIgG1m(f)(SEQ ID NO:407)である。
【0101】
T細胞受容体(TCR)の一部である抗原CD3を標的とする場合は、T細胞特異的な細胞死滅機序が望ましい。他のエフェクター機能、例えば補体活性化は必要ではないだろうから、エフェクター機能の低減が望ましい。C1q結合は補体カスケードにおける第1段階であるため、抗体の補体依存性細胞傷害(CDC)能の指標として役立つ。抗体に対するC1qの結合を回避することができれば、補体カスケードの活性化も回避することができる。
【0102】
したがって一態様では、抗体は、該抗体へのC1qの結合が野生型抗体と比較して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、または100%低減するように修飾されたFc領域を含み、ここではC1q結合はELISAによって決定される。好ましい態様では、抗体は、該抗体へのC1qの結合が野生型抗体と比較して少なくとも99%~100%低減するように修飾されたFc領域を含み、ここではC1q結合はELISAによって決定される。
【0103】
本明細書において使用する用語「修飾された」は、野生型Fc領域のアミノ酸配列とは同一でないFc領域のアミノ酸配列を指す。すなわち、例えばC1qの結合部位、他のエフェクター分子の結合部位、またはFc受容体(FcR)に対する結合などを改変するために、野生型Fc領域の特定位置にあるアミノ酸残基が置換され、欠失し、または挿入されている。アミノ酸配列のそのような修飾は、1つまたは複数のアミノ酸を保存的アミノ酸で置換することによって調製するか、1つまたは複数のアミノ酸を、野生型に存在するアミノ酸と物理的および/または機能的に類似する代替アミノ酸で置換することによって調製することができる。非保存的アミノ酸で置換することによって置換を調製することもできる。
【0104】
本発明に関して、アミノ酸は保存的アミノ酸または非保存的アミノ酸と記述することができ、したがってアミノ酸を相応に分類することができる。アミノ酸残基は、代替的な物理的性質および機能的性質によって画定されるクラスに分類することもできる。したがってアミノ酸のクラスは、以下の表の1つまたは両方に反映させることができる。
【0105】
保存的クラスのアミノ酸残基
アミノ酸残基の代替的な物理的および機能的分類
【0106】
本発明に関して、ヒト化またはキメラ抗体などの抗体における置換は、
元のアミノ酸-位置-置換後のアミノ酸
の形で示される。
【0107】
よく知られているアミノ酸の命名法を参照して、任意のアミノ酸残基を示すための記号XaaおよびXを含む三文字記号または一文字記号を使用する。したがって「L234F」または「Leu234Phe」という表記は、抗体がアミノ酸位置234に、フェニルアラニンによるロイシンの置換を含むことを意味する。
【0108】
所与の位置におけるアミノ酸の他の任意のアミノ酸への置換は、
元のアミノ酸-位置、すなわち例えば「L234」
と言及される。
【0109】
元のアミノ酸および/または置換アミノ酸が2つ以上のアミノ酸を含みうるが、全てのアミノ酸を含むわけではない修飾については、それら2つ以上のアミノ酸を「,」または「/」によって区切ることができる。例えば、位置234におけるフェニルアラニン、アルギニン、リジンまたはトリプトファンによるロイシンの置換は、「Leu234Phe,Arg,Lys,Trp」または「Leu234Phe/Arg/Lys/Trp」または「L234F,R,K,W」または「L234F/R/K/W」または「L234→F,R,KまたはW」である。
【0110】
本発明についてはこのような指定を可換的に使用しうるが、それらは同じ意味と目的を有する。
【0111】
さらにまた、「置換」という用語は、他の19種類の天然アミノ酸のいずれか一つへの、または他のアミノ酸、例えば非天然アミノ酸への置換を包含する。例えば位置234におけるアミノ酸Lの置換には以下の置換のそれぞれが含まれる:234A、234C、234D、234E、234F、234G、234H、234I、234K、234M、234N、234Q、234R、234S、234T、234V、234W、234P、および234Y。なお、これは234Xという指定に等しく、ここではXが元のアミノ酸以外の任意のアミノ酸を指定している。これらの置換は、L234A、L234Cなど、またはL234A,Cなど、またはL234A/C/などと指定することもできる。同じことが、本明細書において言及するありとあらゆる位置に、同様に当てはまり、そのような置換のいずれか一つが具体的に本明細書に含まれる。
【0112】
本発明の抗体はアミノ酸残基の欠失も含みうる。そのような欠失は「del」で表され、例えばL234delのような記述が含まれる。したがってそのような態様では、位置234のロイシンがアミノ酸配列から欠失している。
【0113】
「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は、本明細書では、可換的に使用されうる。
【0114】
本発明の一態様において、抗体は、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域は、以下からなる群の1つより選択される3つのCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む;
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]、ならびに
l)a)~k)にて特定されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列であって、該3つのCDR配列全体で、最大で5個のさらなる変異または置換、最大で4個のさらなる変異または置換、最大で3個のさらなる変異または置換、最大で2個のさらなる変異または置換、あるいは、最大で1個のさらなる変異または置換を有し、該変異または置換が、好ましくは、ヒトCD3に対する結合アフィニティーを改変しない、CDR1、CDR2、およびCDR3配列。
【0115】
本発明の一態様において、さらなる変異または置換は、保存的、物理的、または機能的アミノ酸である。
【0116】
いくつかの態様において、CD3に対する結合は、T細胞上に存在するCD3などの、全長CD3に対する結合でありうる。他の態様において、CD3に対する結合は、例えばSEQ ID NO: 402に示すCD3ペプチドに対する結合でありうる。CD3ペプチドに対する結合、およびいずれかのさらなる変異がCD3に対する結合を改変しうるか否かは、実施例7において開示されるバイオレイヤー干渉法により決定することができる。
【0117】
一態様において、抗体は、第1および第2免疫グロブリン重鎖を含むFc領域を含む。
【0118】
本明細書において使用する用語「C1q結合」は、抗体がその抗原に結合している場合の、該抗体に対するC1qの結合を指す。本明細書において使用する用語「その抗原に結合している」とは、インビボおよびインビトロの両方での、抗体のその抗原に対する結合を指す。
【0119】
C1q結合に関する場合の、本明細書において使用する用語「低減されている」は、野生型抗体に対するC1q結合と比較した場合に、本発明の抗体に対するC1qの結合を低減するか、最小限に抑えるか、または完全に阻害する、本発明の抗体の能力を指す。
【0120】
ヒトCD3に結合する抗体の結合アフィニティーに関連して使用する場合の、本明細書において使用する用語「低減されている」もしくは「低減する」またはその任意の変種は、参照結合アフィニティーと比較した場合により低い結合アフィニティーを指す。この文脈において、参照結合アフィニティーは、SEQ ID NO: 402のようなCD3ペプチドに結合し、実施例7に記載したバイオレイヤー干渉法により決定した場合の、SEQ ID NO: 4のVH配列およびSEQ ID NO: 8のVL配列により明記される参照抗体の結合アフィニティーであってもよい。
【0121】
本明細書において使用する用語「結合アフィニティー」とは、前もって決定された抗原またはターゲットに対する抗体の結合であって、典型的にはKDに相当するアフィニティーで起こる、結合を指す。本明細書において使用する用語「KD」(M)は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
【0122】
本発明の抗体の比較アッセイにおける使用に関して本明細書において使用する用語「野生型抗体」は、不活性でない点以外は被験抗体と同一である抗体を指す。この文脈において「不活性」という用語は、C1qの結合が(すなわちC1q結合をELISAによって決定した場合に)低減しているか存在しない、修飾Fc領域;PBMCに基づく機能アッセイにて決定されるFc媒介T細胞増殖が(すなわちT細胞増殖を末梢血単核球(PBMC)に基づく機能アッセイで測定した場合に)低減しているか存在しない、修飾Fc領域;および/またはPBMCに基づく機能アッセイにおいて決定されるFc媒介CD69発現が低減しているか存在しない、修飾Fc領域を指す。したがって野生型抗体は、免疫グロブリン重鎖中に天然のアミノ酸を含む。すなわち、例えばC1q、Fc受容体などと相互作用する抗体の能力を改変または低減するかもしれないアミノ酸修飾を何も含まない抗体である。したがってそのような野生型抗体は、例えばC1qに結合することができる活性化抗体のままであるだろう。野生型抗体および本発明の抗体は、抗体を二重特異性抗体にするなどの目的で、エフェクター機能を誘発する抗体の能力に影響を及ぼすアミノ酸修飾ではない他のアミノ酸修飾を含みうる。
【0123】
本明細書において使用する用語「ELISA」は、抗体と色の変化を使って物質を同定する試験である酵素結合免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay)を指す。第1の特異的抗体をプレート表面に取り付ける。そうすることにより、試料からのタンパク質を加えて、該第1の特異的抗体への結合を調べる。試料からの抗体に結合する第2抗体を加える。第2抗体は酵素に連結されており、最終工程では、酵素の基質を含有する物質が加えられる。その後の反応により、検出可能なシグナル(最も一般的には基質の色の変化)が生じる。ELISAの概念は当技術分野において周知であり、ELISAを実施するさまざまな方法は、本発明の抗体を評価するための方法の一部であると考えられる。
【0124】
具体的に述べると、C1qに結合する本発明の抗体の能力は、(i)該抗体を96ウェルプレートにコーティングする工程、(ii)3%血清を加える工程、(iii)抗ヒトC1q抗体を加える工程、(iv)プレートを発色させる工程、および(v)OD405nmを測定する工程を含むELISAによって決定することができる。したがって一態様において、抗体は、該抗体へのC1qの結合が野生型抗体と比較して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%低減するように修飾されたFc領域を含み、ここではC1q結合が、(i)該抗体を96ウェルプレートにコーティングする工程、(ii)3%血清を加える工程、(iii)抗ヒトC1q抗体を加える工程、(iv)プレートを発色させる工程、および(v)OD405nmを測定する工程を含むELISAによって決定される。
【0125】
本明細書において使用する用語「Fc受容体」または「FcR」は、一定の細胞の表面に見出されるタンパク質を指す。FcRは抗体のFc領域に結合する。FcRには、それらが認識する抗体のタイプに基づいて分類される数種類の異なるタイプが存在する。例えばFcγ(ガンマ)受容体はIgGクラスの抗体に結合する。
【0126】
本明細書において使用する用語「Fcγ受容体」、「Fcガンマ受容体」または「FcγR」は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するFc受容体の一群を指し、オプソニン化(被覆)微生物の貪食を誘発するのに最も重要なFc受容体である。このファミリーには、分子構造が異なるために抗体アフィニティーが異なるいくつかのメンバー、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、FcγRIIb(CD32b)、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRIIIb(CD16b)が含まれる。
【0127】
Fcが媒介するエフェクター機能は、ヒト免疫グロブリンG(IgG)分子の生物学的活性の一部を形成する。そのようなエフェクター機能の例としては、例えば、Fc領域へのさまざまなエフェクター分子の結合によって引き金が引かれる抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)が挙げられる。本発明に関して「Fc結合」、「Fc受容体結合」、「FcR結合」、および「FcRに対する抗体Fc領域の結合」は、Fc受容体(FcR)またはエフェクター分子へのFc領域の結合を指す。用語「FcγR結合」および「FcγRI結合」は、それぞれFcガンマ受容体およびFcガンマ受容体IへのFc領域の結合を指す。CD3抗体がT細胞に結合すると、CD3抗体の野生型Fc領域は他の細胞上、例えば単球上に存在するFcRに結合し、それが、T細胞の非特異的Fc媒介活性化につながる。T細胞のそのような非特異的Fc媒介活性化は、望ましくないだろう。T細胞は、標的(またはターゲット特異的)T細胞活性化によっても活性化されうる。そのような標的T細胞活性化は、がんなどの、ある範囲の適応症の処置には、非常に望ましいであろう。本明細書において使用する用語「標的T細胞活性化」は、腫瘍細胞上の腫瘍ターゲットなどといった特異的ターゲットに結合する第1結合領域とCD3などのT細胞特異的ターゲットに結合する第2結合領域とを含む二重特異性抗体を使用することによって、腫瘍細胞などの特異的細胞にT細胞を誘導することを指す。したがって、一方の結合領域がT細胞上に存在するCD3に結合し、かつ他方の結合領域が例えば腫瘍細胞上のターゲット特異的抗原に結合する二重特異性抗体を使用することによって、腫瘍細胞などの特異的細胞へのT細胞のターゲティングを容易にすることができる。非特異的Fc媒介T細胞活性化は依然として考えられるので、Fc媒介架橋によるそのような望ましくない非特異的Fc媒介T細胞活性化は回避すべきであり、そのような活性に関してFc領域を不活性にすることによって無効にすることができる。これにより、該不活性Fc領域と存在するFc受容体の間の相互作用が防止される。
【0128】
本発明の抗体はFc領域中に修飾を含みうる。抗体がそのような修飾を含む場合、その抗体は不活性抗体または非活性化抗体になりうる。本明細書において使用する用語「不活性であること」、「不活性」または「非活性化」は、少なくともどのFcγ受容体にも結合することができず、FcRを介したFc媒介架橋を誘発することができず、またはFc領域を介したターゲット抗原のFcR媒介架橋を誘発することができず、あるいはC1qに結合することができないFc領域を指す。ヒト化またはキメラCD3抗体のFc領域が不活性であることは、単一特異性フォーマットの抗体を使って試験すると好都合であるが、そうして同定された不活性Fc領域は、二重特異性または他のヒト化もしくはキメラ多重特異性CD3抗体に使用することができる。
【0129】
治療用抗体開発を目的として、Fcガンマ受容体およびC1qとの相互作用について抗体のFc領域を非活性にするために、いくつかの変異体を構築することができる。そのような変異体の例を本明細書に記載する。
【0130】
したがって一態様において、抗体は、該抗体が野生型抗体と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%または100%低減したFc媒介T細胞増殖を媒介するように修飾されたFc領域を含み、ここでは該T細胞増殖が末梢血単核球(PBMC)に基づく機能アッセイにおいて測定される。
【0131】
T細胞増殖に関する場合、「低減する」という用語は、野生型抗体が結合したT細胞の増殖と比較した場合に、T細胞の増殖を低減するか、最小限に抑えるか、または完全に阻害する本発明の抗体の能力を指す。T細胞増殖を低減する抗体の能力は、PBMCに基づく機能アッセイによって評価することができる。一態様では、アッセイがヒトPBMCで行われる。別の態様では、アッセイがカニクイザルPBMCで行われる。さらに別の態様では、アッセイがアカゲザルPBMCで行われる。本発明の抗体は交差反応性であるから、本明細書に記載するPBMCに基づくアッセイは、使用する種のPBMCが抗体の交差反応性スペクトル内である限り、T細胞増殖の低減を示すために、例えばヒト、カニクイザルまたはアカゲザルなど、任意の種のPBMCを使って行うことができる。
【0132】
本明細書において使用する用語「末梢血単核球(PBMC)に基づく機能アッセイ」は、本発明の抗体の機能的特徴、例えばT細胞増殖またはCD69発現に影響を及ぼす該抗体の能力を評価するために使用されるアッセイであって、存在する唯一の細胞が末梢血単核球であるアッセイを指す。したがって一態様では、PBMCを1~1000ng/mLの範囲の抗体と共に5%(vol/vol)CO2湿潤インキュベータ中、37℃で3日間インキュベートする工程、増殖細胞のDNA中に組み込まれるBrdUなどの化学化合物を加える工程、5時間インキュベートする工程、細胞をペレット化する工程、細胞を乾燥する工程、任意で細胞を4℃で保存する工程、細胞をELISAプレートにコーティングする工程、抗BrdU-ペルオキシダーゼと共に室温で90分間インキュベートする工程、1mg/mLの2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)で約30分間発色させる工程、反応を停止するために100μLの2%シュウ酸を加える工程、および適切なマイクロプレートリーダーにおいて405nmの吸光度を測定する工程を含む方法によって、T細胞増殖が測定される。
【0133】
本明細書において使用する用語「増殖」は、細胞分裂を背景とする細胞成長を指す。
【0134】
本明細書において使用する用語「BrdU」は、チミジンのホモログである5-ブロモ-2'-デオキシウリジンを指す。BrdUを、限られた期間(例えば4時間)、細胞培養に加えると、それは増殖する細胞のDNA中に組み込まれることになる。細胞を固定した後、組み込まれたBrdUの検出は、抗BrdU-ペルオキシダーゼを用いるELISAにおいて行うことができる。それゆえにBrdU組み込みは増殖の尺度になる。
【0135】
一態様において、抗体は、野生型抗体と比較した場合に該抗体がFc媒介CD69発現を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%または100%低減するように修飾されたFc領域を含み、ここでは該Fc媒介CD69発現が、PBMCに基づく機能アッセイにおいて測定される。
【0136】
特に、T細胞活性化マーカーCD69の発現レベルに関する場合、「低減する」という用語は、CD3に結合しかつFc受容体と相互作用する野生型抗体がT細胞に結合した場合のCD69の発現レベルと比較して、CD69の発現レベルの低減を指す。CD69の発現を低減する抗体の能力は、PBMCに基づく機能アッセイによって評価することができる。したがって一態様では、PBMCを1~1000ng/mLの範囲の抗体と共に5%(vol/vol)CO2湿潤インキュベータ中、37℃で16~24時間インキュベートする工程、細胞を洗浄する工程、4℃においてマウス抗ヒトCD28-PE抗体およびマウス抗ヒトCD69-APC抗体で細胞を染色する工程、およびCD28陽性細胞上のCD69発現をフローサイトメトリーで決定する工程を含む方法によって、CD69の発現が測定される。
【0137】
本明細書において使用する用語「CD69」は、CD69遺伝子によってコードされるヒト膜貫通C型レクチンタンパク質である分化抗原群69を指す。Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞の活性化は、インビボでもインビトロでも、CD69の発現を誘発する。増殖などの細胞活性化イベントに関与するシグナル伝達受容体としてのCD69機能は、リンパ球、例えばナチュラルキラー細胞や、血小板において、また特異的遺伝子の誘発において、シグナル伝達受容体として機能する。
【0138】
本明細書において使用する用語「末梢血単核球(PBMC)に基づく機能アッセイ」は、本発明の抗体の機能的特徴、例えばT細胞増殖またはCD69発現に影響を及ぼす該抗体の能力を評価するために使用されるアッセイであって、存在する唯一の細胞が末梢血単核球であるアッセイを指す。PBMCに基づく機能アッセイは、CD69発現を評価する場合には、(i)PBMCを抗体と共に5%(vol/vol)CO2湿潤インキュベータ中、37℃で約16~24時間インキュベートする工程、(ii)細胞を洗浄する工程、(iii)4℃においてマウス抗ヒトCD28-PE抗体およびマウス抗ヒトCD69-APC抗体で細胞を染色する工程、および(iv)CD28陽性細胞上のCD69発現をフローサイトメトリーで決定する工程を含む。
【0139】
C1qおよびFcガンマ受容体との相互作用に主要な役割を果たすFc領域中のアミノ酸を修飾することができる。修飾することができるアミノ酸位置の例としては、位置L234、L235およびP331が挙げられる。それらの組み合わせ、例えばL234F/L235E/P331Sは、ヒトCD64、CD32A、CD16およびC1qへの結合の大幅な減少を引き起こすことができる。
【0140】
したがって一態様において、L234、L235およびP331に対応する少なくとも1つの位置にあるアミノ酸は、それぞれA、AおよびSであることができる([1]、[28])。また、L234Fアミノ酸置換およびL235Eアミノ酸置換は、Fcガンマ受容体およびC1qとの相互作用が阻止されたFc領域をもたらすことができる([29]~[30])。したがって一態様において、L234およびL235に対応する位置のアミノ酸は、それぞれFおよびEであることができる。D265Aアミノ酸置換は、全てのFcガンマ受容体への結合を減少させ、ADCCを防止することができる([31])。したがって一態様において、D265に対応する位置のアミノ酸はAであることができる。C1qへの結合は、位置D270、K322、P329、およびP331を変異させることによって阻止することができる。これらの位置をD270AまたはK322AまたはP329AまたはP331Aのいずれかに変異させることで、抗体をCDC活性欠損性にすることができる([32])。したがって一態様において、D270、K322、P329およびP331に対応する少なくとも1つの位置にあるアミノ酸は、それぞれA、A、A、およびAであることができる。
【0141】
Fc領域とFcガンマ受容体およびC1qとの相互作用を最小限に抑えるための代替的アプローチは、抗体のグリコシル化部位の除去によるアプローチである。位置N297を例えばQ、A、およびEに変異させることにより、IgG-Fcガンマ受容体相互作用にとって決定的に重要なグリコシル化部位が除去される。したがって一態様において、N297に対応する位置のアミノ酸は、G、Q、AまたはEであることができる([33])。Fc領域とFcガンマ受容体との相互作用を最小限に抑えるための別の代替的アプローチは、以下の変異によって得ることができる:P238A、A327Q、P329AまたはE233P/L234V/L235A/G236del([31])。
【0142】
あるいは、ヒトIgG2およびIgG4サブクラスでは、C1qおよびFcガンマ受容体との相互作用がもともと損なわれていると考えられるが、Fcγ受容体(Fcガンマ受容体)との相互作用も報告されている([34]~[35])。どちらのアイソタイプでも、これらの残存相互作用を阻止して、FcR結合に関連する不必要な副作用の低減をもたらす変異を作ることができる。IgG2の場合、それらにはL234AおよびG237Aが含まれ、IgG4の場合はL235Eが含まれる。したがって一態様において、ヒトIgG2重鎖におけるL234およびG237に対応する位置のアミノ酸は、それぞれAおよびAであることができる。一態様において、ヒトIgG4重鎖におけるL235に対応する位置のアミノ酸は、Eであることができる。
【0143】
IgG2抗体においてFcガンマ受容体およびC1qとの相互作用をさらに最小限に抑えるための他のアプローチとして、[36]および[37]に記載されているものが挙げられる。
【0144】
抗体のヒンジ領域も、Fcガンマ受容体および補体との相互作用に関して重要でありうる([38]-[39])。したがってヒンジ領域における変異またはヒンジ領域の欠失は抗体のエフェクター機能に影響を及ぼすことができる。
【0145】
本明細書において使用する用語「架橋」は、抗体Fc領域への結合を介した、FcR保持細胞による、ターゲット抗原に結合している抗体Fabアーム(一価または二価)の間接的橋かけを指す。したがって、ターゲット抗原保持細胞上にあるそのターゲット抗原に結合する抗体は、FcRを発現する別の細胞と架橋しうる。
【0146】
本明細書において使用する用語「非特異的死滅」は、T細胞または他のエフェクター細胞の細胞傷害機能による細胞の死滅であって、該細胞の腫瘍ターゲット抗原非依存的な活性化によるものを指す。したがって非特異的死滅とは、腫瘍ターゲット保持細胞を、例えばCDCを誘発することなどにより、腫瘍ターゲットに結合する抗体によって死滅させるのではなく、例えば細胞傷害性T細胞によって死滅させうることを意味する。
【0147】
Fc領域中の少なくとも5つの特異的アミノ酸位置の1つまたは複数を修飾することによって、非活性化Fc領域を得ることができる。一態様では、抗体は、第1および第2免疫グロブリン重鎖を含むFc領域を含む。
【0148】
したがって一態様では、抗体が第1および第2免疫グロブリン重鎖を含み、該第1および第2免疫グロブリン重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸は、それぞれL、L、D、N、およびPではない。
【0149】
一態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、L、D、N、およびPではない。
【0150】
別の態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235およびD265に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸が、それぞれL、LおよびDではなく、ヒトIgG1重鎖におけるN297およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれNおよびPである。
【0151】
本明細書において使用する用語「位置~に対応するアミノ酸」とは、ヒトIgG1重鎖におけるアミノ酸位置番号を指す。別段の明言がある場合を除き、または文脈上矛盾が生じる場合を除き、定常領域配列のアミノ酸は、本明細書では、Euナンバリングインデックス([27]に記載)に従ってナンバリングされる。したがって、別の他の配列中のアミノ酸またはセグメント「に対応する」ある配列中のアミノ酸またはセグメントとは、例えばALIGN、ClustalWその他の標準的配列アライメントプログラムを、典型的にはデフォルト設定で使用した場合に、前記他のアミノ酸またはセグメントと整列し、ヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するものである。配列または配列中のセグメントを整列させ、それによって本発明のアミノ酸位置に対応する配列中の位置を決定する方法は、当技術分野において周知であると考えられる。
【0152】
本発明においては、アミノ酸を上述のように定義することができる。
【0153】
重鎖におけるアミノ酸に関して「アミノ酸が~ではない」という用語または類似の表現は、そのアミノ酸が言及された特定アミノ酸を除く他の任意のアミノ酸であることを意味すると理解すべきである。例えば、ヒトIgG1重鎖におけるL234に対応する位置のアミノ酸がLではないとは、そのアミノ酸が、L以外の他の天然アミノ酸または非天然アミノ酸のいずれかでありうることを意味する。
【0154】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸がDではない。
【0155】
一態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるD265に対応する位置のアミノ酸がDではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸がそれぞれNおよびPである。
【0156】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0157】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「疎水性」は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびYからなる群より選択されるアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなるアミノ酸の群から選択される。
【0158】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「極性」は、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒト重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、C、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される。
【0159】
別の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸または酸性アミノ酸である。
【0160】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「脂肪族非荷電」は、A、G、I、L、およびVからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、G、I、L、およびVからなる群より選択される。
【0161】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「芳香族」は、F、T、およびWからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、F、T、およびWからなる群より選択される。
【0162】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「酸性」は、DおよびEからなる群より選ばれる任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、DおよびEからなる群より選択される。
【0163】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、E、F、G、I、L、T、V、およびWからなる群より選択される。
【0164】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、Dではない。
【0165】
一態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるD265に対応する位置のアミノ酸がDではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸がそれぞれNおよびPである。
【0166】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0167】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「疎水性」は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびYからなる群より選択されるアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなるアミノ酸の群から選択される。
【0168】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「極性」は、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒト重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、C、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される。一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなるアミノ酸の群から選択される。
【0169】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒト重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、C、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される。
【0170】
別の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸または酸性アミノ酸である。
【0171】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「脂肪族非荷電」は、A、G、I、L、およびVからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、G、I、L、およびVからなる群より選択される。
【0172】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「芳香族」は、F、T、およびWからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、F、T、およびWからなる群より選択される。
【0173】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「酸性」は、DおよびEからなる群より選ばれる任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、DおよびEからなる群より選択される。
【0174】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、E、F、G、I、L、T、V、およびWからなる群より選択される。
【0175】
さらなる態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置N297に対応する位置のアミノ酸が、Nではない。
【0176】
一態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるN297に対応する位置のアミノ酸がNではなく、ヒトIgG1重鎖における位置P331に対応する位置のアミノ酸がPである。
【0177】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置N297に対応する位置のアミノ酸が、Nではない。
【0178】
一態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるN297に対応する位置のアミノ酸がNではなく、ヒトIgG1重鎖における位置P331に対応する位置のアミノ酸がPである。
【0179】
さらなる態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれLおよびLではない。
【0180】
一態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234およびL235に対応する位置のアミノ酸がそれぞれLおよびLではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸がそれぞれNおよびPである。
【0181】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応するアミノ酸が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、Y、Vからなる群より選択される。
【0182】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0183】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「疎水性」は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびYからなる群より選択されるアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、W、およびYからなる群より選択される。
【0184】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「極性」は、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなるアミノ酸の群より選択される。
【0185】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群より選択される。
【0186】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれLおよびLではない。
【0187】
一態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234およびL235に対応する位置のアミノ酸がそれぞれLおよびLではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸がそれぞれNおよびPである。
【0188】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0189】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、W、およびYからなる群より選択される。
【0190】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなるアミノ酸の群より選択される。
【0191】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群より選択される。
【0192】
別の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸または酸性アミノ酸である。
【0193】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「脂肪族非荷電」は、A、G、I、L、およびVからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、G、I、およびVからなる群より選択される。
【0194】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「芳香族」は、F、T、およびWからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、F、T、およびWからなる群より選択される。
【0195】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「酸性」は、DおよびEからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、DおよびEからなる群より選択される。
【0196】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、D、E、F、G、I、T、V、およびWからなる群より選択される。
【0197】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、FおよびE、またはAおよびAである。
【0198】
一態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれFおよびE、またはAおよびAであり、かつヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、NおよびPである。
【0199】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれFおよびE、またはAおよびAである。
【0200】
一態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれFおよびE、またはAおよびAであり、かつヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれNおよびPである。
【0201】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれFおよびEである。
【0202】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれFおよびEである。
【0203】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、少なくともヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれAおよびAである。
【0204】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、少なくともヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれAおよびAである。
【0205】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれL、L、およびDではない。
【0206】
一態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれL、LおよびDではなく、ヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれNおよびPである。
【0207】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応するアミノ酸が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、Y、V、およびWからなる群より選択され、かつ位置D265に対応するアミノ酸が、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、Y、V、およびWからなる群より選択される。
【0208】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235およびD265に対応する位置のアミノ酸が、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0209】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「疎水性」は、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびYからなる群より選択されるアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなるアミノ酸の群から選択され、かつヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、W、およびYからなる群より選択される。
【0210】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「極性」は、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなるアミノ酸の群より選択され、かつヒト重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、C、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される。
【0211】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群より選択され、かつヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群より選択される。
【0212】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、疎水性アミノ酸または極性アミノ酸である。
【0213】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびYからなるアミノ酸の群から選択され、かつヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、C、F、G、H、I、M、R、T、V、W、およびYからなる群より選択される。
【0214】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなるアミノ酸の群より選択され、かつヒト重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、C、E、H、K、N、Q、R、S、およびTからなる群より選択される。
【0215】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群より選択され、かつヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群より選択される。
【0216】
別の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235およびD265に対応する位置のアミノ酸が、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸または酸性アミノ酸である。
【0217】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「脂肪族非荷電」は、A、G、I、L、およびVからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、G、I、L、およびVからなる群より選択され、かつヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、G、I、およびVからなる群より選択される。
【0218】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「芳香族」は、F、T、およびWからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、F、T、およびWからなる群より選択される。
【0219】
アミノ酸残基に関して本明細書において使用する用語「酸性」は、DおよびEからなる群より選択される任意のアミノ酸残基を指す。したがって一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、DおよびEからなる群より選択される。
【0220】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、E、F、G、I、L、T、V、およびWからなる群より選択され、かつL234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、D、E、F、G、I、T、V、およびWからなる群より選択される。
【0221】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれL、L、およびDではない。
【0222】
一態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれL、L、およびDではなく、かつヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれNおよびPである。
【0223】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、脂肪族非荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸または酸性アミノ酸である。
【0224】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、G、I、L、およびVからなる群より選択され、かつヒトIgG1重鎖における位置L234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、G、I、およびVからなる群より選択される。
【0225】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、DおよびEからなる群より選択される。
【0226】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置D265に対応する位置のアミノ酸が、A、E、F、G、I、L、T、V、およびWからなる群より選択され、かつL234およびL235に対応する位置のアミノ酸が、それぞれ、A、D、E、F、G、I、T、V、およびWからなる群より選択される。
【0227】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびA、またはA、A、およびAである。
【0228】
一態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびA、またはA、A、およびAであり、かつヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれNおよびPである。
【0229】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびA、またはA、A、およびAである。
【0230】
一態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびA、またはA、A、およびAであり、かつヒトIgG1重鎖における位置N297およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれNおよびPである。
【0231】
ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびAである。
【0232】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびAである。
【0233】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれA、A、およびAである。
【0234】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれA、A、およびAである。
【0235】
別の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、A、Q、およびSである。
【0236】
一態様では、前記第1重鎖および第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、A、Q、およびSである。
【0237】
一態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO: 107;59;245;299;285;55;185;179;237;177および293の群における配列のうちのいずれか1つに示すVH配列、SEQ ID NO: 8に示すVL配列を含み、かつ重鎖の少なくとも一方または両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。これにより、SEQ ID NO: 4および8に示すVH配列およびVL配列を含む参照抗体と比較して低減されている、ヒトCD3εに対するアフィニティーを有し、非活性化Fc領域をさらに含む抗CD3抗体の態様が提供される。
【0238】
ある特定の態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO: 107;59;245;299;285;55;185;179;237;177および293に示す配列のうちのいずれか1つに示すVH配列、SEQ ID NO: 10に示すVL配列を含み、かつ重鎖の少なくとも一方または両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。これにより、SEQ ID NO: 4および8に示すVH配列およびVL配列を含む参照抗体と比較して低減されている、ヒトCD3εに対するアフィニティーを有し、非活性化Fc領域、および生産の増強を可能にするVL領域をさらに含む、抗CD3抗体の態様が提供される。
【0239】
別の態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO: 221に示すVH配列、SEQ ID NO: 8または10に示すVL配列を含み、かつ重鎖の少なくとも一方または両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0240】
本発明の一態様において、ヒトIgG1重鎖は、SEQ ID NO: 407に示すIgG1m(f)配列を有する。さらに別の態様において、SEQ ID NO: 407に示すヒトIgG1m(f)中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0241】
本発明の一態様において、ヒトIgG1重鎖は、SEQ ID NO: 409に示すIgG1m(f)配列を有する。
【0242】
一局面において、本発明の抗体は、SEQ ID NO: 408のヒトIgLC2/IgLC3定常ドメインラムダ軽鎖を含む。
【0243】
一局面において、本発明の抗体は、発現レベルおよび/または生産収率を増大させるように軽鎖(LC)および/または重鎖(HC)中で修飾されうる。一態様において、本発明の抗体は、軽鎖(LC)中で修飾されうる。そのような修飾は、当技術分野において公知であり、例えば、Zheng, L., Goddard, J.-P., Baumann, U., & Reymond, J.-L. (2004). Expression improvement and mechanistic study of the retro-Diels-Alderase catalytic antibody 10F11 by site-directed mutagenesis. Journal of Molecular Biology, 341(3), 807-14. doi:10.1016/j.jmb.2004.06.014に記載されている方法に従って行われうる。
【0244】
一局面において、本発明の抗体は、抗体のアフィニティーを改変するように、例えば、抗体のアフィニティーを低減または増強するように、VH領域および/またはVL領域中で修飾されうる。これは、いくつかの設定において有利であって、効力の増強につながりうる。特に、CD3アームの低いアフィニティーは、循環中および腫瘍部位でのT細胞の運動性に影響を及ぼし、したがってT細胞と腫瘍細胞とのより良好な関与につながりうる。MolhOj et al, Molecular Immunology 44 (2007)を参照されたい。特に、これは、CD3抗体が結合アームの1つとして使用される二重特異性フォーマットにおいて有用でありうる。抗体アフィニティーの低減につながる修飾は、当技術分野において公知であり、例えば、Webster et al. Int J Cancer Suppl. 1988;3:13-6を参照されたい。
【0245】
したがって、一態様において、本発明の抗体は、SEQ ID NO: 6、GTN、7に示す配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変(VL)領域、ならびに重鎖可変(VH)領域を含み、該VH領域は、以下からなる群の1つより選択されるCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む;
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];ならびに
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]。
【0246】
別の局面において、本発明は、SEQ ID NO: 10に示す配列を有する軽鎖可変(VL)領域と、以下からなる群の1つより選択される配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変(VH)領域とを含む結合領域を含む、ヒトCD3に結合する抗体を提供する:
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];ならびに
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]。
これにより、SEQ ID NO: 10に示すVL領域中にT41K変異を含む態様が提供され、それにより前記抗体の生産の増大が可能になる。
【0247】
一局面において、本発明は、少なくとも、本明細書に記載するいずれかの局面または態様による抗体の第1結合領域と、第1結合領域とは異なる1つまたは複数のターゲットに結合する1つまたは複数の結合領域とを含む多重特異性抗体に関する。そのような多重特異性抗体は二重特異性抗体であることができる。
【0248】
したがって一局面において、本発明は、本明細書に記載するいずれかの局面または態様による抗体の第1結合領域と、第1結合領域とは異なるターゲットに結合する第2結合領域とを含む二重特異性抗体に関する。
【0249】
「多重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる、例えば少なくとも3つの、典型的にはオーバーラップしていない、エピトープに対する特異性を有する抗体を指す。そのようなエピトープは同じターゲット上にあってもよいし異なるターゲット上にあってもよい。エピトープが異なるターゲット上にある場合、そのようなターゲットは同じ細胞または細胞タイプ上にあってもよいし異なる細胞または細胞タイプ上にあってもよい。
【0250】
「二重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる、典型的にはオーバーラップしていないエピトープに対する特異性を有する抗体を指す。そのようなエピトープは同じターゲット上にあってもよいし異なるターゲット上にあってもよい。エピトープが異なるターゲット上にある場合、そのようなターゲットは同じ細胞または細胞タイプ上にあってもよいし異なる細胞または細胞タイプ上にあってもよい。
【0251】
一態様では、二重特異性抗体が第1重鎖および第2重鎖を含む。
【0252】
Fc領域の修飾に関係する態様および特異的アミノ酸置換に関係する態様は、本発明の任意の二重特異性抗体の一部であると考えられる。したがって一態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方が、本明細書に記載するいずれかの態様において定義するように修飾された1つまたは複数のアミノ酸、例えば不活性Fc領域の提供に関して記載するものを含む。一態様では、該第1重鎖および第2重鎖の両方が、本明細書に記載するいずれかの態様において定義するように修飾された1つまたは複数のアミノ酸、例えば不活性Fc領域の提供に関して記載するものを含む。したがって二重特異性抗体は、本明細書に記載するいずれかの局面または態様にしたがって修飾されたFc領域を含むか、または該第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方が、本明細書に記載するいずれかの局面または態様において定義するように修飾された1つまたは複数のアミノ酸を含む。
【0253】
本発明において使用することができる二重特異性抗体分子の例には、(i)異なる抗原結合領域を含む2つのアームを有する単一抗体、(ii)例えば追加ペプチドリンカーによってタンデムに連結された2つのscFvにより、2つの異なるエピトープに対する特異性を有する一本鎖抗体、(iii)各軽鎖および重鎖が2つの可変ドメインを短いペプチド結合によってタンデムに含有している二重可変ドメイン抗体(dual-variable domain antibody(DVD-Ig(商標))([40])、(iv)化学的に連結された二重特異性(Fab')2フラグメント、(v)ターゲット抗原のそれぞれに対して2つの結合部位を有する四価の二重特異性抗体をもたらす2つの一本鎖ダイアボディ(diabody)の融合物である、TandAb(登録商標)、(vi)多価分子をもたらすscFvとダイアボディとの組み合わせである、フレキシボディ(flexibody)、(vii)プロテインキナーゼA中の「二量体化およびドッキングドメイン」に基づくいわゆる「ドック・アンド・ロック(dock and lock)」分子(Dock-and-Lock(登録商標))、Fabに応用した場合、これは、異なるFabフラグメントに連結された2つの同一Fabフラグメントからなる三価二重特異性結合タンパク質を与えることができる、(viii)例えばヒトFabアームの両端に融合された2つのscFvを含む、いわゆるスコーピオン(Scorpion)分子、および(ix)ダイアボディが含まれる。
【0254】
一態様では、本発明の二重特異性抗体がダイアボディ、クロスボディ(cross-body)、または制御されたFabアーム交換(controlled Fab arm exchange)によって得られる二重特異性抗体、例えば本発明において記載するもののようなDuoBody(登録商標)(例えば[41]に記載されているもの)である。
【0255】
異なる種類の二重特異性抗体の例としては、(i)ヘテロ二量体化を強いるための相補的CH3ドメインを有するIgG様分子、(ii)分子の両面がそれぞれ少なくとも2つの異なる抗体のFabフラグメントまたはFabフラグメントの一部を含有している、組換えIgG様二重ターゲティング分子、(iii)全長IgG抗体が追加のFabフラグメントまたはFabフラグメントの一部に融合されているIgG融合分子、(iv)一本鎖Fv分子または安定化ダイアボディが重鎖定常ドメイン、Fc領域またはその一部に融合されているFc融合分子、(v)異なるFabフラグメントが一つに融合されるか、重鎖定常ドメイン、Fc領域またはその一部に融合されている、Fab融合分子、および(vi)異なる一本鎖Fv分子、または異なるダイアボディもしくは異なる重鎖抗体(例えばドメイン抗体、Nanobodies(登録商標))が互いに融合しているか、重鎖定常ドメイン、Fc領域またはその一部に融合された別のタンパク質または担体分子に融合している、ScFvおよびダイアボディに基づく抗体ならびに重鎖抗体(例えばドメイン抗体、Nanobodies(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0256】
相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例としては、Triomab(登録商標)(Trion Pharma/Fresenius Biotech,[42])、ノブ・イントゥ・ホール(Knobs-into-Holes)(Genentech,[43])、CrossMAb(Roche,[44])および静電マッチ(electrostatically-matched)(Amgen,[45]~[46];Chugai,[47];Oncomed,[48])、LUZ-Y(Genentech, Wranik et al. J. Biol. Chem. 2012, 287(52): 43331-9, doi: 10.1074/jbc.M112.397869. Epub 2012 Nov 1)、DIG-ボディおよびPIG-ボディ(Pharmabcine, WO2010134666, WO2014081202)、ストランド・エクスチェンジ・エンジニアード・ドメイン(Strand Exchange Engineered Domain)ボディ(SEEDbody)(EMD Serono,[49])、Biclonic(Merus, WO2013157953)、FcΔAdp(Regeneron,[50])、二重特異性IgG1およびIgG2(Pfizer/Rinat,[51])、Azymetricスキャフォールド(Zymeworks/Merck,[52])、mAb-Fv(Xencor,[53])、二価二重特異性抗体(Roche, WO2009080254)およびDuoBody(登録商標)分子(Genmab A/S,[41])が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0257】
組換えIgG様二重ターゲティング分子の例としては、デュアル・ターゲティング(Dual Targeting)(DT)-Ig(GSK/Domantis, WO2009058383)、ツー・イン・ワン(Two-in-one)抗体(Genentech, Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614)、架橋(Cross-linked)Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star,[54])、Zybodies(商標)(Zyngenia, LaFleur et al. MAbs. 2013 Mar-Apr;5(2):208-18)、共通軽鎖(common light chain)によるアプローチ(Crucell/Merus,[55])、κλBody(NovImmune, WO2012023053)およびCovX-body(登録商標)(CovX/Pfizer, Doppalapudi, V.R., et al 2007. Bioorg. Med. Chem. Lett. 17,501-506)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0258】
IgG融合分子の例としては、Dual Variable Domain(DVD)-Ig(商標)(Abbott,[56])、デュアルドメイン・ダブルヘッド(Dual domain double head)抗体(Unilever; Sanofi Aventis,[57])、IgG様二重特異性(ImClone/Eli Lilly, Lewis etal. Nat Biotechnol. 2014 Feb;32(2):191-8)、Ts2Ab(MedImmune/AZ, Dimasi et al. J Mol Biol. 2009 Oct 30;393(3):672-92)およびBsAb(Zymogenetics, WO2010111625)、ハーキュリーズ(HERCULES)(Biogen Idec,[58])、scFv融合物(Novartis)、scFv融合物(Changzhou Adam Biotech Inc,[59])およびTvAb(Roche,[59],[60])が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0259】
Fc融合分子の例としては、ScFv/Fc融合物(Academic Institution, Pearce et al Biochem Mol Biol Int. 1997 Sep;42(6):1179-88.)、スコーピオン(SCORPION)(Emergent BioSolutions/Trubion, Blankenship JW, et al. AACR 100 th Annual meeting 2009 (Abstract # 5465);Zymogenetics/BMS, WO2010111625)、デュアル・アフィニティー・リターゲティング・テクノロジー(Dual Affinity Retargeting Technology)(Fc-DART(商標))(MacroGenics,[62],[63])およびDual(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine-China)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0260】
Fab融合二重特異性抗体の例としては、F(ab)2(Medarex/AMGEN)、デュアル-アクション(Dual-Action)またはBis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(登録商標)(DNL)(ImmunoMedics)、二価二重特異性(Bivalent Bispecific)(Biotecnol)およびFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0261】
ScFvに基づく抗体、ダイアボディに基づく抗体およびドメイン抗体の例としては、二重特異性T細胞エンゲイジャー(Bispecific T Cell Engager)(BiTE(登録商標))(Micromet)、タンデム・ダイアボディ(Tandem Diabody)(Tandab)(Affimed)、デュアル・アフィニティー・リターゲティング・テクノロジー(DART(商標))(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Single-chain Diabody)(Academic, Lawrence FEBS Lett. 1998 Apr 3;425(3):479-84)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合物(Merrimack, WO2010059315)およびCOMBODY分子(Epigen Biotech, Zhu et al. Immunol Cell Biol. 2010 Aug;88(6):667-75)、二重ターゲティング(dual targeting)ナノボディ(nanobodies(登録商標))(Ablynx, Hmila et al., FASEB J. 2010)、二重ターゲティング重鎖単独ドメイン抗体(dual targeting heavy chain only domain antibody)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0262】
さらに、本明細書に記載するアッセイ条件を満たす単一特異性抗体はいずれも、二重特異性抗体の基礎を形成しうると考えられる。すなわち、結合領域の1つがCD3に結合する二重特異性抗体は、機能アッセイで試験され本明細書に明言する要件を満たす任意の単一特異性CD3抗体に由来しうる。そのような二重特異性抗体は、参照により本明細書に組み入れられる[41]に記載の方法によって提供されうる。
【0263】
一局面において、本発明の二重特異性抗体は、第1CH3領域を含む第1Fc領域と、第2CH3領域を含む第2Fc領域とを含み、ここで、第1CH3領域と第2CH3領域の配列は異なっており、かつ該第1CH3領域と該第2CH3領域との間のヘテロ二量体相互作用は、該第1CH3領域および該第2CH3領域のホモ二量体相互作用のそれぞれよりも強い状態である。これらの相互作用についてのさらに詳細、およびそれらをいかに達成できるかは、参照により本明細書に組み入れられるWO2011131746およびWO2013060867(Genmab)に提供されている。
【0264】
したがって、ある特定の態様では、前記第1重鎖および第2重鎖のそれぞれが、少なくともヒンジ領域、CH2およびCH3領域を含み、該第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ該第2重鎖では、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、しかも該第1重鎖と該第2重鎖とは同じ位置では置換されていない。この文脈において「置換されている」という用語は、特定アミノ酸位置のアミノ酸が別の天然または非天然アミノ酸で置換されていることを指す。したがって、ヒトIgG1重鎖における位置に対応する位置の「置換」アミノ酸とは、その特定位置にあるアミノ酸が、IgG1重鎖における天然のアミノ酸とは異なることを意味する。
【0265】
一態様では、前記第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がKでもLでもMでもなく、任意で、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がFであり、かつ前記第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、およびY407からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されている。
【0266】
一態様では、前記第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がKでもLでもMでもなく、かつ前記第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がFではなく、任意で、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がKである。
【0267】
一態様では、前記第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がFでもRでもGでもなく、前記第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸が置換されている。
【0268】
一態様では、前記第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がKでもLでもMでもなく、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がFではない。
【0269】
さらに別の態様では、前記第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、かつ前記第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がRであるか、またはその逆である。
【0270】
したがって一態様では、第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がRであり、かつ第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がLである。
【0271】
さらに別の態様では、本発明のヒト化またはキメラCD3抗体が、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方に、上記態様のいずれか一つに開示する不活性化置換、例えばL234F、L235E、およびD265Aの1つまたは複数を含有し、かつ、F405に対応する位置のアミノ酸がFではない。一態様では、本発明のヒト化またはキメラCD3抗体が、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方に、上記態様のいずれか一つに開示する不活性化置換、例えばL234F、L235E、およびD265Aの1つまたは複数と、K409位のさらに別の置換、例えばK409Rとを含有する。特に、一態様では、本発明のヒト化またはキメラCD3抗体が、第1重鎖と第2重鎖の両方に、上記態様のいずれか一つに開示する不活性化置換、例えばL234F、L235E、およびD265Aの1つまたは複数と、F405位の置換、例えばF405Lとを含有する。一態様では、本発明のヒト化またはキメラCD3抗体が、第1重鎖と第2重鎖の両方に、上記態様のいずれか一つに開示する不活性化置換、例えばL234F、L235E、およびD265Aの1つまたは複数と、K409位のさらに別の置換、例えばK409Rとを含有する。そのような抗体は二重特異性抗体を作製するために役立つ。
【0272】
したがって、さらに別の態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸がそれぞれF、E、およびAであり、第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、かつ第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がRである。
【0273】
一態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、A、N、およびPであり、第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、かつ第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がRである。
【0274】
ある代替態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびAであり、第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がRであり、かつ第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がLである。
【0275】
一態様では、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、A、N、およびPであり、第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がRであり、かつ第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がLである。
【0276】
別の態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびAであり、第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、かつ第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がRである。
【0277】
一態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、A、N、およびPであり、第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がLであり、かつ第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がRである。
【0278】
ある代替態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびAであり、第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がRであり、かつ第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がLである。
【0279】
一態様では、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖におけるL234、L235、D265、N297、およびP331に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、A、N、およびPであり、第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸がRであり、かつ第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸がLである。
【0280】
本明細書で述べるように、がん細胞または腫瘍細胞などの特異的ターゲット細胞へのT細胞動員は、ターゲット細胞を死滅させる方法になる。T細胞が媒介する死滅は、第1結合領域でCD3を標的としかつ第2結合領域で別のターゲットを標的とする二重特異性抗体によって得ることができる。したがって一態様では、第1結合領域がヒト化またはキメラCD3抗体に関して本明細書に記載するいずれかの態様に従い、第2結合領域は第1結合領域とは異なるターゲットに結合する。抗体が二重特異性抗体である場合、抗体の少なくとも半分、すなわち抗体の重鎖と軽鎖の対の一つは、本明細書に記載するヒト化またはキメラ抗体であることを理解すべきである。したがって、二重特異性抗体の半分は、CD3に結合する本発明のヒト化またはキメラ抗体であり、他方の半分は、第2のターゲットに結合するヒト化体、キメラ体、完全非ヒト体または完全ヒト体でありうる。したがって一態様では、抗体が、第1重鎖および第2重鎖、第1軽鎖および第2軽鎖を含み、該第1重鎖および該第1軽鎖はヒト化体またはキメラ体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第1結合領域を形成し、かつ該第2重鎖および第2軽鎖は完全ヒト体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第2結合領域を形成し、ここで、該第1結合領域は本明細書に記載するいずれかの局面または態様に従い、かつ該第2結合領域は異なるターゲットに結合する。一態様では、抗体が、第1重鎖および第2重鎖、第1軽鎖および第2軽鎖を含み、該第1重鎖および該第1軽鎖はヒト化体またはキメラ体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第1結合領域を形成し、かつ該第2重鎖および第2軽鎖はヒト化体またはキメラ体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第2結合領域を形成し、ここで、該第1結合領域は本明細書に記載するいずれかの局面または態様に従い、かつ該第2結合領域は該第1結合領域とは異なるCD3エピトープに結合する。
【0281】
本明細書において使用する用語「ジスルフィド架橋」は、2つのシステイン残基の間の共有結合を指す。すなわちこの相互作用はCys-Cys相互作用と呼ぶこともできる。
【0282】
本明細書において使用する用語「ターゲット」は、本発明の抗体の結合領域が結合する分子を指す。抗体の結合に関連して使用する場合、この用語が包含する任意の抗原に対して当該抗体が作られていることを意味する。
【0283】
ある特定の態様では、第1重鎖および第1軽鎖がヒト化体またはキメラ体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第1結合領域を形成し、第2重鎖および第2軽鎖が完全ヒト体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第2結合領域を形成し、ここで、第1結合領域は本明細書に記載するいずれかの局面または態様に従い、第2結合領域は異なるターゲットに結合し、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0284】
ある特定の態様では、第1重鎖および第1軽鎖がヒト化体またはキメラ体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第1結合領域を形成し、第2重鎖および第2軽鎖が完全ヒト体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第2結合領域を形成し、ここで、第1結合領域は本明細書に記載するいずれかの局面または態様に従い、第2結合領域は第1結合領域とは異なるCD3エピトープに結合し、第1重鎖および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0285】
ある特定の態様では、第1重鎖および第1軽鎖がヒト化体またはキメラ体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第1結合領域を形成し、第2重鎖および第2軽鎖が完全ヒト体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第2結合領域を形成し、ここで、第1結合領域は本明細書に記載するいずれかの局面または態様に従い、第2結合領域は異なるターゲットに結合し、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0286】
ある特定の態様では、第1重鎖および第1軽鎖がヒト化体またはキメラ体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第1結合領域を形成し、第2重鎖および第2軽鎖が完全ヒト体であって、ジスルフィド架橋によって接続されて第2結合領域を形成し、ここで、第1結合領域は本明細書に記載するいずれかの局面または態様に従い、第2結合領域は第1結合領域とは異なるCD3エピトープに結合し、第1重鎖と第2重鎖の両方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸は、それぞれF、E、およびAである。
【0287】
別の局面において、本発明は、ヒトCD3に結合する抗体の結合アフィニティーを、SEQ ID NO: 1、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域を含む参照抗体と比較して低減させる方法であって、T31M、T31P、N57、H101、S110、およびY114の群より選択される位置のうちの1つにおける変異より選択される、該参照抗体の3つのCDR配列のうちの1つにおける変異を導入する工程を含み、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている方法に関する。
【0288】
VH領域中のアミノ酸のナンバリングおよび変異している位置は、SEQ ID NO: 4におけるアミノ酸に従う。ナンバリングは、N末端からC末端に向かう方向に、第1のアミノ酸から125番まで、直接数値ナンバリングスキームに従う。SEQ ID NO: 4に対応する位置の数値ナンバリングを、図2に示す。さらに、CDR領域には、IMGT定義に従って注釈をつけた。
【0289】
本発明の一態様において、方法は、T31MまたはT31P変異を導入する工程を含む。位置T31は、SEQ ID NO: 4に従う。
【0290】
本発明の一態様において、方法は、位置N57における変異を導入する工程を含む。位置N57は、SEQ ID NO: 4に従う。一態様において、変異はN57Eである。
【0291】
本発明の一態様において、方法は、位置H101における変異を導入する工程を含む。位置H101は、SEQ ID NO: 4に従う。一態様において、変異はH101GまたはH101Nである。
【0292】
本発明の一態様において、方法は、位置Y114における変異を導入する工程を含む。位置Y114は、SEQ ID NO: 4に従う。一態様において、変異は、Y114、Y114R、またはY114Vである。
【0293】
本発明の一態様において、方法は、H101、S110、およびY114の群より選択される位置に対応するVH CDR3領域における変異に、変異を導入する工程を含む。
【0294】
本発明の一態様において、方法は、H101G、H101N、S110A、S110G、Y114M、Y114R、およびY114Vからなる群より選択される、VH CDR3領域における変異を導入する工程を含む。
【0295】
本発明の一態様において、方法は、変異を導入する工程を含み、ここで、抗体は、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.6×10-8 M~9.9×10-8 Mまたは1.0×10-7~9.9×10-7 Mに相当する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーを有する。
【0296】
本発明の一態様において、方法は、変異を導入する工程を含み、ここで、抗体は、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.4×10-8~1.0×10-8 Mまたは9.9×10-9~1×10-9 Mに相当する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーを有する。
【0297】
本発明の一態様において、抗体は、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.6×10-8 M~9.9×10-8 Mまたは1.0×10-7~9.9×10-7 Mに相当する、SEQ ID NO: 402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーを有する。
【0298】
別の局面において、本発明は、ヒトCD3に結合する抗体の結合アフィニティーを、SEQ ID NO: 1、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域を含む参照抗体と比較して増強する方法であって、位置G105に対応するVH CDR3における変異を導入する工程を含み、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に従ってナンバリングされている方法に関する。
【0299】
本発明の一態様において、方法は、位置G105における変異を導入する工程を含む。位置G105は、SEQ ID NO: 4に従う。一態様において、変異はG105Pである。
【0300】
本発明の一態様において、方法は、SEQ ID NO: 1、2、3に示す参照抗体のVH領域のCDR中に、最大で5個のさらなる変異、最大で4個のさらなる変異、最大で3個のさらなる変異、最大で2個のさらなる変異、または最大で1個のさらなる変異を導入する工程を含む。
【0301】
本発明の一態様において、増強または低減されている結合アフィニティーの方法は、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域は、以下からなる群より選択されるCDR1、CDR2、およびCDR3配列を含む;
a)SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31M];
b)SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [T31P];
c)SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [N57E];
d)SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G];
e)SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101N];
f)SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [G105P];
g)SEQ ID NO: 1、2、236に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110A];
h)SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [S110G];
i)SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114M];
j)SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114R];ならびに
k)SEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [Y114V]。
【0302】
本発明の別の態様において、方法は、N57Eに対応するVH領域CDR2領域における変異を導入する工程を含む。本発明のさらに別の態様において、方法は、H101G、H101N、G105P、S110A、S110G、Y114M、Y114R、またはY114Vに対応するVH領域CDR3領域における変異を導入する工程を含む。別の局面において、本発明は、CD3に対する抗体の結合アフィニティーを低減または増強する方法であって、該抗体が、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、CDR1 SEQ ID NO: 1、CDR2 SEQ ID NO: 2、およびCDR3 SEQ ID NO: 3により示す参照抗体の3つのCDR配列のうちの1つにおける変異を含み、該抗体が、以下のT31M、T31P、N57、H101、G105、S110、およびY114の群より選択される位置のうちの1つにおける変異を含み、該位置が、SEQ ID NO: 4の参照配列に対応している方法に関する。
【0303】
本発明の一態様において、方法は、T31MまたはT31Pに対応するVH領域CDR1領域配列における変異を導入する工程を含む。本発明の別の態様において、方法は、N57Eに対応するVH領域CDR2領域における変異を導入する工程を含む。本発明のさらに別の態様において、方法は、H101G、H101N、G105P、S110A、S110G、Y114M、Y114R、またはY114Vに対応するVH領域CDR3領域における変異を導入する工程を含む。
【0304】
さらに別の局面において、本発明は、CD3に結合する抗体の結合アフィニティーを、SEQ ID NO: 1、2、および3に示すCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む参照抗体と比較して低減させる方法であって、SEQ ID NO: 1、2、または3に示すVH領域CDR1、CDR2、またはCDR3配列のうちの1つにおける変異を導入する工程を含む方法に関する。
【0305】
本発明の一態様において、方法は、以下の位置:T31、N57、H101、S110、またはY114の1つに対応するVH領域の3つのCDR領域の1つにおける変異を導入する工程を含み、ここで、該位置は、SEQ ID NO: 4の参照配列に対応している。
【0306】
本発明の一態様において、方法は、位置T31に対応するVH領域CDR1配列における変異を導入する工程を含み、ここで、該CDR1配列は、SEQ ID NO: 1に示すとおりである。変異をXにより表すと、結果として生じたCDR1配列は、GFTFNXYAとして提示されうる。一態様において、VH領域の3つのCDR配列は、以下の配列
を有しうる。一態様において、VH領域CDR1中の位置T31における変異は、T31MまたはT31P変異である。
【0307】
本発明の一態様において、方法は、位置N57に対応するVH領域CDR2配列における変異を導入する工程を含み、ここで、該CDR2配列は、SEQ ID NO: 2に示すとおりである。変異をXにより表すと、結果として生じたCDR2配列は、
として提示されうる。一態様において、VH領域の3つのCDR配列は、以下の配列
を有しうる。一態様において、VH領域CDR2中の位置N57における変異は、N57E変異である。
【0308】
本発明の一態様において、方法は、位置H101に対応するVH領域CDR3配列における変異を導入する工程を含み、ここで、該CDR3配列は、SEQ ID NO: 3に示すとおりである。変異をXにより表すと、結果として生じたCDR3配列は、
として提示されうる。一態様において、VH領域の3つのCDR配列は、以下の配列
を有しうる。一態様において、VH領域CDR3中の位置H101における変異は、H101GまたはH101N変異である。
【0309】
本発明の一態様において、方法は、位置S110に対応するVH領域CDR3配列における変異を導入する工程を含み、ここで、該CDR3配列は、SEQ ID NO: 3に示すとおりである。変異をXにより表すと、結果として生じたCDR3配列は、
として提示されうる。一態様において、VH領域の3つのCDR配列は、以下の配列
を有しうる。一態様において、VH領域CDR3中の位置H101における変異は、S110AまたはS110G変異である。
【0310】
本発明の一態様において、方法は、位置Y114に対応するVH領域CDR3配列における変異を導入する工程を含み、ここで、該CDR3配列は、SEQ ID NO: 3に示すとおりである。変異をXにより表すと、結果として生じたCDR3配列は、
として提示されうる。一態様において、VH領域の3つのCDR配列は、以下の配列
を有しうる。一態様において、VH領域CDR3中の位置Y114における変異は、Y114M、Y114R、またはY114V変異である。
【0311】
本発明の一態様において、方法は、SEQ ID NO: 1、2、3に示す参照抗体のVH領域の3つのCDRの1つまたは複数中に、最大で3個の変異、最大で2個の変異、または最大で1個の変異を導入する工程を含む。
【0312】
本発明の一態様において、方法は、抗体の重鎖可変フレームワーク領域中に、最大で10個の変異、最大で9個の変異、最大で8個の変異、最大で7個の変異、最大で6個の変異、最大で5個の変異、最大で4個の変異、最大で3個の変異、最大で2個の変異、または最大で1個の変異を導入する工程を含み、該変異は、好ましくは、CD3に対する抗体の結合を、変異を有さない同じ抗体と比較して変更しない。
【0313】
本発明の一態様において、方法は、T31MまたはT31Pより選択されるVH領域CDR1配列における変異を導入する工程を含む。本発明の別の態様において、方法は、N57EのVH領域CDR2配列における変異を導入する工程を含む。本発明のさらに別の態様において、方法は、H101G、H101N、S110A、S110G、Y114M、Y114R、およびY114Vの群より選択されるVH領域CDR3配列における変異を導入する工程を含む。
【0314】
別の局面において、本発明は、CD3に結合する抗体の結合アフィニティーを、SEQ ID NO: 1、2、および3に示すCDR配列を有するCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変(VH)領域を含む参照抗体と比較して増強する方法であって、SEQ ID NO: 1、2、または3に示すVH領域CDR1、CDR2、またはCDR3配列のうちの1つにおける変異を導入する工程を含む方法に関する。
【0315】
本発明の一態様において、方法は、位置G105に対応するVH領域CDR3配列における変異を導入する工程を含み、ここで、該CDR3配列は、SEQ ID NO: 3に示すとおりである。変異をXにより表すと、結果として生じたCDR3配列は、
として提示されうる。一態様において、VH領域の3つのCDR配列は、以下の配列
を有しうる。一態様において、VH領域CDR3中の位置G105における変異は、G105P変異である。
【0316】
核酸コンストラクト、発現ベクター、および宿主細胞
一局面において、本発明は、表1に示す1つまたは複数の配列をコードする核酸コンストラクトに関する。したがって、本発明は、SEQ ID NO: 107;221;59;245;299;285;55;185;179;237;177および293に示す配列のうちのいずれか1つをコードする核酸コンストラクトに関する。
【0317】
さらに別の局面において、本発明は、本発明のヒト化またはキメラCD3抗体の配列をコードする核酸コンストラクト、本発明の核酸コンストラクトを含む発現ベクター、前記発現ベクターを含む宿主細胞、および適当な条件下で前記宿主細胞を培養することによって前記抗体を生産する方法であって、それにより、抗体を生産し、任意で回収する方法に関する。ヒト化CD3抗体は、「huCD3」と表すこともできる。
【0318】
一態様において、本発明は、(i)本発明のヒト化もしくはキメラ抗体の重鎖配列をコードする核酸配列、(ii)本発明のヒト化もしくはキメラ抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列、または(iii)(i)と(ii)の両方を含む発現ベクターを提供する。したがって、発現ベクターは、本明細書に記載するいずれかの局面または態様による1つまたは複数の核酸コンストラクトまたは核酸配列を含む。
【0319】
一態様において、本発明の発現ベクターは、重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列のうちの1つまたは複数をコードする核酸配列を含み、ここで、VH CDR配列は、
からなる群より選択され、かつVL CDR配列は、
に示すCDR配列からなる群より選択される。
【0320】
一態様において、本発明の発現ベクターは、重鎖CDR配列および軽鎖CDR配列のうちの1つまたは複数をコードする核酸配列を含み、ここで、VL領域CDR1、CDR2、CDR3領域のCDR配列は、SEQ ID NO: 6、GTN、7に示すCDR配列を含み、かつVH領域CDR1、CDR2、CDR3領域のCDR配列は、SEQ ID NO: 54、2、3に示すCDR1、CDR2、CDR3;SEQ ID NO: 58、2、3に示すCDR1、CDR2、CDR3;SEQ ID NO: 1、106、3に示すCDR1、CDR2、CDR3;SEQ ID NO: 1、2、176に示すCDR1、CDR2、CDR3;SEQ ID NO: 1、2、184に示すCDR1、CDR2、CDR3;SEQ ID NO: 1、2、220に示すCDR1、CDR2、CDR3;SEQ ID NO: 1、2、236;1、2、244に示すCDR1、CDR2、CDR3;SEQ ID NO: 1、2、244に示すCDR1、CDR2、CDR3;SEQ ID NO: 1、2、284に示すCDR1、CDR2、CDR3;SEQ ID NO: 1、2、292に示すCDR1、CDR2、CDR3、およびSEQ ID NO: 1、2、298に示すCDR1、CDR2、CDR3からなる群より選択される。
【0321】
ある特定の態様では、発現ベクターが、上記アミノ酸配列の1つまたは複数の変異体をコードする核酸配列を含み、該変異体は、最大で25個のアミノ酸修飾、例えば最大で20個、例えば最大で15、14、13、12、または11個のアミノ酸修飾、例えば10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個のアミノ酸修飾、例えば欠失または挿入、好ましくは置換、例えば保存的置換または非保存的置換を有するか、または該配列のいずれかに対して少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも85%の同一性または90%の同一性または95%の同一性、例えば前述のアミノ酸配列のいずれかに対して96%の同一性または97%の同一性または98%の同一性または99%の同一性を有する。本発明は、上述の核酸配列とは異なるが、遺伝コードの多様性ゆえに、本発明の抗体と同じアミノ酸配列をコードする核酸配列にも関係する。例えば、核酸配列が変化しても本明細書に記載するいずれかのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列をもたらしうる。遺伝コードに基づいてそのようなさらなる核酸配列を同定する方法は、当業者には周知である。
【0322】
さらに別の態様では、発現ベクターが、抗体、例えばヒト抗体の、軽鎖、重鎖または軽鎖と重鎖の両方の定常領域をコードする核酸配列をさらに含む。
【0323】
上述のような発現ベクターは、本発明の抗体の組換え生産に使用することができる。
【0324】
本発明に関して発現ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクター、および合成核酸ベクター(発現制御要素の適切なセットを含む核酸配列)など、任意の適切なベクターであることができる。そのようなベクターの例として、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組合せから誘導されるベクター、およびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが挙げられる。一態様では、ヒト化またはキメラCD3抗体をコードする核酸が、裸のDNAまたはRNAベクター、例えば線状発現要素(例えば[64]に記載されているもの)、圧縮された核酸ベクター(例えば[65]および/または[66]に記載されているもの)、pBR322、pUC19/18、またはpUC118/119などのプラスミドベクター、「midge」最小サイズ核酸ベクター(例えば[67]に記載されているもの)、またはCaP04 -沈降コンストラクトなどの沈降核酸ベクターコンストラクト(例えば[68]、[69]、[70]、および[71]に記載されているもの)に含まれる。そのような核酸ベクターとその使用法は当技術分野において周知である(例えば[72]および[73]を参照されたい)。
【0325】
一態様では、ベクターが、細菌細胞におけるヒト化またはキメラCD3抗体の発現に適している。そのようなベクターの例として、例えばBlueScript(Stratagene)、pINベクター([74])、pETベクター(Novagen、ウィスコンシン州マディソン)などの発現ベクターが挙げられる。
【0326】
これに加えてまたはこれに代えて、発現ベクターは酵母系における発現に適したベクターであってもよい。酵母系における発現に適した任意のベクターを使用することができる。適切なベクターとしては、例えばアルファ因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHなどの、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターが挙げられる([75]および[76]に総説がある)。
【0327】
核酸コンストラクトおよび/またはベクターは、新生ポリペプチド鎖などのポリペプチドを細胞周辺腔にまたは細胞培養培地中にターゲティングすることができる分泌配列/局在化配列をコードする核酸配列も含みうる。そのような配列は当技術分野において公知であり、これには、当技術分野において周知の分泌リーダーまたはシグナルペプチド、細胞小器官ターゲティング配列(例えば核局在化配列、ER保持シグナル、ミトコンドリア輸送配列、クロロプラスト輸送配列)、膜局在化/アンカー配列(例えば膜透過停止配列、GPIアンカー配列)などが含まれる。
【0328】
本発明の発現ベクターでは、ヒト化またはキメラCD3抗体をコードする核酸が、任意の適切なプロモーター、エンハンサー、および他の発現促進要素を含むか、またはそれらと関連しうる。そのような要素の例としては、強力な発現プロモーター(例えばヒトCMV IEプロモーター/エンハンサー、ならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモーター)、効果的なポリ(A)終結配列、大腸菌におけるプラスミド生産のための複製起点、選択可能マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、および/または好都合なクローニング部位(例えばポリリンカー)が挙げられる。核酸コンストラクトおよび/またはベクターは、構成的プロモーターではなく、CMV IEなどの誘導性プロモーターも含みうる(これらの用語が一定の条件下での遺伝子発現の程度の記述語であることは、当業者にはわかるであろう)。
【0329】
一態様では、ヒト化またはキメラCD3抗体をコードする発現ベクターを、ウイルスベクターによって宿主細胞または宿主動物に配置し、かつ/または送達することができる。
【0330】
そのような発現ベクターは、ヒト化またはキメラCD3抗体の組換え生産のために試用することができる。
【0331】
一局面において、本発明は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0332】
一局面において、本明細書に記載するいずれかの局面または態様のヒト化またはキメラCD3抗体は、抗体を生産する組換え真核宿主細胞、組換え原核宿主細胞、または組換え微生物宿主細胞を利用して提供される。したがって本発明は、本明細書に定義するヒト化またはキメラCD3抗体または免疫グロブリンを生産する組換え真核宿主細胞、組換え原核宿主細胞、または組換え微生物宿主細胞を提供する。宿主細胞の例としては、酵母、細菌細胞および哺乳動物細胞、例えばCHOまたはHEK-293細胞が挙げられる。例えば一態様では、宿主細胞が、本明細書に記載するヒト化またはキメラCD3抗体の発現をコードする配列を含む細胞ゲノムに安定に組み込まれた核酸配列を含む。別の態様では、宿主細胞が、本明細書に記載のヒト化またはキメラCD3抗体の発現をコードする配列を含む非組込み型の核酸配列、例えばプラスミド、コスミド、ファージミド、または線状発現要素を含む。
【0333】
本明細書において使用する用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、発現ベクターまたは核酸コンストラクトもしくは核酸配列が導入されている細胞を指すものとする。このような用語は、その特定対象細胞を指すだけでなく、そのような細胞の子孫も指すものとすることを理解すべきである。世代を重ねるにつれて変異または環境の影響のいずれかによって一定の修飾が起こりうるので、そのような子孫は、実際には親細胞と同一ではないかもしれないが、それでも本明細書において使用する用語「宿主細胞」の範囲内に包含される。組換え宿主細胞としては、例えば、CHO細胞、HEK-293細胞、PER.C6、NS0細胞、およびリンパ球細胞などの真核宿主細胞、大腸菌などの原核細胞、ならびに植物細胞および真菌などの他の真核宿主が挙げられる。
【0334】
さらに別の局面において、本発明は、本発明のヒト化またはキメラCD3抗体を生産するための方法に関し、本方法は、
a)上述した本発明の宿主細胞を培養する工程、および
b)本発明の抗体を培養培地から回収しかつ/または精製する工程
を含む。
【0335】
さらに別の局面では、ヒト化またはキメラCD3抗体の配列をコードするヌクレオチド配列が、治療用ポリペプチドなどの第2の部分をコードする。例示的な治療用ポリペプチドは本明細書の他の項に記載する。一態様において、本発明は、ヒト化またはキメラCD3抗体融合タンパク質を生産するための方法に関し、本方法は、
a)そのようなヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む宿主細胞を培養する工程、および
b)ヒト化またはキメラCD3抗体融合タンパク質を培養培地から回収しかつ/または精製する工程
を含む。
【0336】
組成物
一局面において、本発明は、本明細書に記載するいずれかの局面および態様による抗体または二重特異性抗体を含む組成物を提供する。
【0337】
一局面において、本発明は、本明細書に記載するいずれか一つの局面および態様に定義する抗体または二重特異性抗体と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0338】
薬学的組成物は、従来の技法、例えば[77]に開示されている技法に従って、薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに他の任意の公知の佐剤および賦形剤を使って製剤化することができる。
【0339】
薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに他の任意の公知の佐剤および賦形剤は、本発明のヒト化またはキメラ抗体および選ばれた投与様式に適しているべきである。薬学的組成物の担体および他の構成要素の適性は、抗原結合に関して、選ばれた本発明の化合物または薬学的組成物の所望の生物学的性質に対する有意な負の影響の欠如(例えば有意でない影響(10%以下の相対的阻害、5%以下の相対的阻害など))に基づいて決定される。
【0340】
本発明の薬学的組成物は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、洗浄剤(例えば非イオン性洗浄剤、例えばTween(登録商標)-20またはTween(登録商標)-80)、安定剤(例えば糖またはタンパク質フリーアミノ酸)、保存剤、組織固定剤、可溶化剤、および/または薬学的組成物に含めるのに適した他の材料も含みうる。
【0341】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対する毒性を伴うことなく、特定の患者、組成物、および投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分量が得られるように、変化させることができる。選択される投薬量レベルは、種々の薬物動態因子、例えば使用される本発明の特定組成物またはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、使用されている特定化合物の排出速度、処置の継続時間、使用される特定組成物と併用される他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態、および既往歴、その他、医学分野において周知の因子に依存するであろう。
【0342】
薬学的組成物は、任意の適切な経路および様式で投与することができる。インビボおよびインビトロで本発明のヒト化またはキメラ抗体を投与する適切な経路は当技術分野において周知であり、当業者であれば選択することができる。
【0343】
一態様では、本発明の薬学的組成物が非経口投与される。
【0344】
本明細書において使用する表現「非経口投与」および「非経口投与される」は、経腸投与および外用投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、これには、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外および胸骨内注射および注入が含まれる。
【0345】
一態様では、上記薬学的組成物が静脈内または皮下注射または注入によって投与される。好ましい態様では、上記薬学的組成物が皮下投与される。
【0346】
薬学的に許容される担体には、本発明のヒト化またはキメラ抗体と生理学的に適合する、ありとあらゆる適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが含まれる。
【0347】
本発明の薬学的組成物に使用することができる適切な水性および非水性の担体の例として、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、綿実油、およびゴマ油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴムおよび注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチル、および/またはさまざまな緩衝液が挙げられる。他の担体は薬学分野では周知である。
【0348】
薬学的に許容される担体としては、滅菌水性溶液または分散液および滅菌注射可能溶液または分散液をその場で調製するための滅菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野において公知である。従来の媒質または薬剤は、それらが活性化合物と不適合でない限り、本発明の薬学的組成物におけるその使用が考えられる。「活性化合物」という場合、それは、本発明のヒト化またはキメラ抗体も指すと考えられる。
【0349】
適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用によって、分散系の場合は必要な粒度を維持することによって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0350】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される酸化防止剤、例えば(1)水溶性酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、亜硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、(2)油溶性酸化防止剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど、および(3)金属キレート物質、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸なども含みうる。
【0351】
本発明の薬学的組成物は、等張剤、例えば糖類、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロール、または塩化ナトリウムも、組成物中に含みうる。
【0352】
本発明の薬学的組成物は、選んだ投与経路に適した1つまたは複数の佐剤、例えば薬学的組成物の貯蔵寿命または有効性を強化しうる保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、保存剤または緩衝剤も含有しうる。本発明のヒト化またはキメラ抗体は、例えばインプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤など、化合物を迅速な放出から保護する担体を使って調製することができる。そのような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を単独で、もしくはワックスと共に、または当技術分野において周知の他の材料を含みうる。そのような製剤を調製するための方法は一般に当業者には公知である(例えば[78]参照)。
【0353】
一態様において、本発明のヒト化またはキメラ抗体は、インビボでの適正な分布が保証されるように製剤化することができる。非経口投与用の薬学的に許容される担体としては、滅菌水性溶液または分散液および滅菌注射可能溶液または分散液をその場で調製するための滅菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野において公知である。従来の媒質または薬剤は、それらが活性化合物と不適合でない限り、本発明の薬学的組成物におけるその使用が考えられる。他の活性化合物または治療用化合物も組成物に組み込むことができる。
【0354】
注射用の薬学的組成物は,典型的には、滅菌状態にあり、かつ製造条件下および貯蔵条件下で安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含有する、水性または非水性の溶媒または分散媒であることができる。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用によって、分散系の場合は必要な粒度を維持することによって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類、ポリアルコール、例えばグリセロール、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長時間吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物に含めることによって、生じさせることができる。滅菌注射可能溶液は、必要量の活性化合物を適当な溶媒に必要に応じて上に列挙したような成分の1つまたは組み合わせと共に組み込み、次に滅菌精密ろ過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、基礎分散媒と必要な他の成分、例えば上に列挙したものからの成分とを含有する滅菌媒体に、活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、活性成分と所望する任意の追加成分との粉末を前もって滅菌ろ過したその溶液から与える真空乾燥および冷凍乾燥(凍結乾燥)である。
【0355】
滅菌注射可能溶液は、必要な量の活性成分を必要に応じて上に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に適当な溶媒に組み込み、次に滅菌精密ろ過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、基礎分散媒と必要な他の成分、例えば上に列挙したものからの成分とを含有する滅菌媒体に、活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、活性成分と所望する任意の追加成分との粉末を前もって滅菌ろ過したその溶液から与える真空乾燥および冷凍乾燥(凍結乾燥)である。
【0356】
治療用途
別の局面において、本発明は、医薬として使用するための、本明細書に記載するいずれかの局面または態様に定義した本発明のヒト化もしくはキメラ抗体または薬学的組成物に関する。
【0357】
別の局面において、本発明は、疾患の処置に使用するための、本明細書に記載するいずれかの局面または態様に定義した本発明のヒト化もしくはキメラ抗体または薬学的組成物に関する。
【0358】
本発明の一態様において、二重特異性抗体、組成物、薬学的組成物は、疾患の処置に使用するためのものである。
【0359】
本発明の一態様において、二重特異性抗体、組成物、薬学的組成物は、疾患の処置に使用するためのものであり、当該疾患は、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患である。
【0360】
本発明のヒト化もしくはキメラ抗体または薬学的組成物は、細胞傷害性T細胞のエフェクター機序が望ましい任意のがんの処置に使用することができる。例えばヒト化またはキメラ抗体は、がん、炎症性障害または自己免疫障害などの障害を処置しまたは防止するために、インビトロまたはエクスビボで培養細胞に投与するか、例えばインビボでヒト対象に投与することができる。本明細書において使用する用語「対象」は、典型的には、ヒト化もしくはキメラ抗体または薬学的組成物に応答するヒトである。対象としては、例えば、ターゲット機能を調整するか直接的または間接的に細胞の死滅につながることによって矯正しまたは改善させることができる障害を有するヒト患者を挙げることができる。
【0361】
別の局面において、本発明は、T細胞の動員が処置または防止に寄与するがんなどの障害を処置しまたは防止するための方法を提供し、本方法は、治療有効量の本発明のヒト化もしくはキメラ抗体または薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。この方法では、典型的には、障害を処置しまたは防止するのに有効な量のヒト化またはキメラ抗体を対象に投与する。
【0362】
ある特定の局面では、本発明は、本明細書に記載のいずれかの局面および態様に定義する本発明のヒト化もしくはキメラ抗体または薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、がんの処置方法に関する。
【0363】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載のいずれかの局面または態様に定義する使用または方法に関し、ヒト化またはキメラ抗体は、CD3と、がん特異的ターゲット、またはがんにおいて過剰発現するかもしくはがんに関連するターゲット、例えばHER2、CD19、EpCAM、EGFR、CD66e(またはCEA、CEACAM5)、CD33、EphA2またはMCSP(またはHMW-MAA)、CD20との両方に特異的に結合する二重特異性抗体であり、疾患が、がん、例えば乳がん、前立腺がん、非小細胞肺がん、膀胱がん、卵巣がん、胃がん、直腸結腸がん、食道がん、および頭頸部の扁平上皮癌、子宮頸がん、膵がん、精巣がん、悪性黒色腫、軟組織がん(例えば滑膜肉腫)、低悪性度型または高悪性度型のB細胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病または急性リンパ性白血病である。
【0364】
ヒト化またはキメラ抗体の有効な投薬量および投薬レジメンは、処置される疾患または状態に依存し、当業者であれば決定することができる。
【0365】
当技術分野において通常の知識を有する医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定し処方することができる。例えば医師は、薬学的組成物に入れて使用されるヒト化またはキメラ抗体の用量を、所望の治療効果を達成するのに必要な用量より低いレベルから開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を漸増させることができる。一般に、本発明の組成物の適切な用量は、特定投薬レジメンで治療効果を生じるのに効果的な最小用量であるヒト化またはキメラ抗体の量である。そのような有効用量は、一般に、上述の因子に依存するであろう。
【0366】
例えば、治療的使用に関する「有効量」は、疾患の進行を安定化するその能力によって測定することができる。がんを阻害する化合物の能力は、例えば、ヒト腫瘍における効力を予測する動物モデル系で評価することができる。あるいは、組成物のこの性質は、ヒト化またはキメラ抗体が持つ細胞成長を阻害する能力または細胞傷害性を誘発する能力を、当業者に公知のインビトロアッセイで調べることによって評価することもできる。治療有効量の治療用化合物、すなわち本発明の治療用ヒト化もしくはキメラ抗体または薬学的組成物は、腫瘍サイズを減少させるか、または他の形で対象における症状を改善することができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重症度、および選択した特定組成物または投与経路などといった因子に基づいて、そのような量を決定することができるであろう。
【0367】
本発明のヒト化またはキメラ抗体の治療有効量の例示的な非限定的範囲は、約0.001~30mg/kg、例えば約0.001~20mg/kg、例えば約0.001~10mg/kg、例えば約0.001~5mg/kg、例えば約0.001~2mg/kg、例えば約0.001~1mg/kg、例えば約0.001、約0.01、約0.1、約1、約5、約8、約10、約12、約15、約18mg/kgである。
【0368】
投与は、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下投与、例えばターゲット部位の近傍への投与であることができる。
【0369】
上記の処置方法および使用における投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば治療応答)を与えるように調節される。例えば、単回ボーラスを投与するか、時間をかけて数回の分割投与を行うか、治療状況の要求に応じて用量を比例的に低減または増加させることができる。
【0370】
一態様では、治療中に、例えば所定の時点において、処置の効力をモニタリングする。
【0371】
所望であれば、薬学的組成物の有効1日用量を、1日のうちに適当な間隔で、任意で単位剤形で、個別に投与される2、3、4、5、6またはそれ以上の部分用量に分けて投与してもよい。別の態様では、望ましくない副作用をいずれも最小限に抑えるために、ヒト化もしくはキメラ抗体または薬学的組成物が、長時間、例えば24時間以上にわたる、緩慢な持続注入によって投与される。
【0372】
本発明のヒト化またはキメラ抗体を単独で投与することは可能であるが、ヒト化またはキメラ抗体は上述のような薬学的組成物として投与することが好ましい。
【0373】
本発明のヒト化またはキメラ抗体の有効用量は、週に1回、2週間に1回または3週間に1回の投与期間を使って投与することもできる。投与期間は、例えば8週間、12週間、または臨床的進行が確立するまでに制限することができる。あるいは、本発明のヒト化またはキメラ抗体の有効用量を、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごとに投与することもできる。
【0374】
一態様では、ヒト化またはキメラ抗体を、mg/m2で計算される1週間量で、注入によって投与することができる。そのような投薬量は、例えば、次式に従い、上記のmg/kg投薬量に基づくことができる:用量(mg/kg)×70:1.8。そのような投与を例えば1~8回、例えば3~5回、繰り返すことができる。投与は、2~24時間の期間、例えば2~12時間の期間にわたる持続注入によって、行うことができる。一態様では、毒性副作用を低減するために、ヒト化またはキメラ抗体を、長時間、例えば24時間以上にわたる、緩慢な持続注入によって投与することができる。
【0375】
一態様では、ヒト化またはキメラ抗体を、週に1回投与した場合に8回まで、例えば4~6回にわたって、固定用量として計算された1週間量で投与することができる。そのようなレジメンは、必要に応じて、例えば6ヶ月後または12ヶ月後に、1回または複数回繰り返すことができる。そのような固定投薬量は、例えば、体重を70kgと見積もった上で、上記のmg/kg投薬量に基づくことができる。投薬量は、投与後に血液中の本発明のヒト化またはキメラ抗体の量を、例えば生物学的試料を採取し、本発明のヒト化またはキメラ抗体の結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用して測定することによって、決定または調節することができる。
【0376】
一態様では、維持療法で、例えば6ヶ月以上の期間にわたって週に1回、ヒト化またはキメラ抗体を投与することができる。
【0377】
がんを発症するリスクを低減し、がんの進行におけるある事象の発生の開始を遅延させ、かつ/またはがんが寛解状態にある場合には、再発のリスクを低減するために、ヒト化またはキメラ抗体を予防的に投与することもできる。
【0378】
非経口組成物は、投与が容易になり、投薬量が均一になるように、投薬単位形に製剤化することができる。本明細書にいう投薬単位形とは、処置される対象への単位投薬量として好適な物理的に離散した単位を指し、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された前もって決定された分量の活性化合物を必要な薬学的担体と共に含有する。本発明の投薬単位形の仕様は、(a)活性化合物に特有の特徴、および達成しようとする具体的治療効果、および(b)個体における感受性の処置のためにそのような活性化合物を配合する際の当技術分野において固有の制約によって規定されるか、またはそれらに直接依存する。
【0379】
がんを発症するリスクを低減し、がんの進行におけるある事象の発生の開始を遅延させ、かつ/またはがんが寛解状態にある場合には、再発のリスクを低減するために、ヒト化またはキメラ抗体を予防的に投与することもできる。他の生物学的因子によって存在することがわかっている腫瘍の位置を特定することが困難な患者では、これがとりわけ有用になりうる。
【0380】
診断用途
本発明のヒト化またはキメラ抗体は、本明細書に記載するヒト化またはキメラ抗体を含む組成物を使って、診断目的にも使用することができる。したがって、本発明は、本明細書に記載のヒト化またはキメラ抗体を使用する診断方法および診断用組成物を提供する。そのような方法および組成物は、例えば疾患を検出しまたは同定することなど、純粋な診断目的に使用することができるし、治療的処置の進展をモニタリングするため、疾患の進行をモニタリングするため、処置後の状態を評価するため、疾患の再発をモニタリングするため、および疾患を発症するリスクを評価するためなどといった目的にも使用することができる。
【0381】
一局面において、本発明は、CD3発現細胞の関与または蓄積を特徴とする疾患を診断する方法に関し、本方法は、本発明のヒト化またはキメラ抗体、本発明の組成物、または本発明の薬学的組成物を対象に投与する工程を含み、任意で該ヒト化またはキメラ抗体は、検出可能な作用物質で標識されている。
【0382】
一局面では、本発明のヒト化またはキメラ抗体が、例えば、前記ヒト化またはキメラ抗体が結合する関心対象の特異的ターゲットを発現する細胞が疾患を示すかまたは病理発生過程に関与する疾患の診断において、患者から採取した試料中のターゲットのレベルまたはその細胞表面に関心対象のターゲットを発現する細胞のレベルを検出することによって、エクスビボで使用される。これは、例えば被験試料を、任意で対照試料と共に、本発明のヒト化またはキメラ抗体と、ターゲットへの抗体の結合が可能な条件下で接触させることによって達成することができる。次に、(例えばELISAを使って)複合体形成を検出することができる。対照試料を試験試料と共に使用する場合は、ヒト化もしくはキメラ抗体または抗体-ターゲット複合体のレベルが両方の試料で解析され、試験試料中の統計的に有意に高いヒト化もしくはキメラ抗体または抗体-ターゲット複合体のレベルは、対照試料と比較して高レベルに存在する試験試料中のターゲットを示す。
【0383】
本発明のヒト化またはキメラ抗体を使用することができる従来のイムノアッセイの例として、ELISA、RIA、FACSアッセイ、プラズモン共鳴アッセイ、クロマトグラフィーアッセイ、組織免疫組織化学、ウェスタンブロット、および/または免疫沈降が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0384】
したがって一態様において、本発明は、CD3発現細胞の関与または蓄積を特徴とする疾患を診断する方法に関し、本方法は、本明細書に記載するいずれかの局面または態様による抗体、二重特異性抗体、組成物または薬学的組成物を対象に投与する工程を含み、任意で抗体は検出可能なラベルで標識されている。
【0385】
一態様において、本発明は、試料中のターゲットまたはターゲットを発現する細胞の存在を検出するための方法に関し、本方法は、
試料を、試料中のターゲットへのヒト化またはキメラ抗体の結合が可能な条件下で、本発明のヒト化またはキメラ抗体と接触させる工程、および
複合体が形成されたかどうかを解析する工程
を含む。試料は、典型的には、生物学的試料である。
【0386】
一態様では、試料が、特異的ターゲットおよび/または前記ターゲットを発現する細胞を含有することがわかっているまたはそれらを含有すると疑われる組織試料である。例えば、ターゲット発現のインサイチュー検出は、患者から組織学標本を取り出し、本発明のヒト化またはキメラ抗体をそのような標本に与えることによって、達成することができる。ヒト化またはキメラ抗体は、標本にヒト化またはキメラ抗体を塗布するか重層することによって与えることができ、次にそれが適切な手段を使って検出される。次に、ターゲットまたはターゲット発現細胞の存在だけでなく、被験組織におけるターゲットまたはターゲット発現細胞の分布も(例えばがん細胞の伝播の評価などに関連して)決定することが可能である。本発明を使用することにより、多種多様な組織学的方法(例えば染色手法)のいずれであっても、そのようなインサイチュー検出を達成するために改変しうることは、当業者には容易に理解されるであろう。
【0387】
上記のアッセイでは、結合した抗体を検出することができるように、ヒト化またはキメラ抗体を検出可能な物質で標識することができる。あるいは、結合した(一次)特異的ヒト化またはキメラ抗体を、検出可能な物質で標識された抗体であって一次特異的ヒト化またはキメラ抗体に結合するもので検出することもできる。さらにまた、上記のアッセイでは、本明細書に記載するいずれかの局面または態様による抗体または二重特異性抗体を含む診断用組成物を使用することができる。したがって一局面において、本発明は、本明細書に記載するいずれかの局面または態様による抗体または二重特異性抗体を含む診断用組成物に関する。
【0388】
試料中のターゲットのレベルは、検出可能な物質で標識されたターゲット標準物質と非標識ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体とを利用する競合イムノアッセイによって推定することもできる。このタイプのアッセイでは、生物学的試料、標識ターゲット標準物質およびターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体を合わせて、非標識ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体に結合した標識ターゲット標準物質の量を決定する。生物学的試料中のターゲットの量は、ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体に結合した標識ターゲット標準物質の量に逆比例する。
【0389】
インビトロ診断技法において使用されるターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体、二次抗体および/またはターゲット標準物質に適したラベルとしては、さまざまな酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、および放射性物質が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。適切な酵素の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライド、およびフィコエリトリンが挙げられる、発光物質の例としてはルミノールが挙げられ、適切な放射性物質の例としては125I、131I、35S、および3Hが挙げられる。
【0390】
一局面では、本発明のターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体が、腫瘍などのターゲット発現組織のインビボイメージングに使用される。インビボ法の場合、例えば(Fab')2、FabおよびFab'フラグメントなどの抗体フラグメントは、迅速な分布動態を持つので、特に有利である。
【0391】
インビボイメージングは任意の適切な技法によって行うことができる。例えば、99Tc、131I、111Inまたは他のガンマ線放出同位体で標識されたターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体(例えば抗体またはフラグメント)を使って、腫瘍などのターゲット発現組織におけるターゲット特異的抗体の蓄積または分布を、ガンマシンチレーションカメラ(例えばElscint Apex 409ECTデバイス)で、典型的には低エネルギー高分解能コリメーターまたは低エネルギー万能コリメーターを使って、イメージングすることができる。あるいは、89Zr、76Br、18Fまたは他の陽電子放出放射性核種による標識を使用し、陽電子放射断層撮影法(PET)を使って、腫瘍におけるターゲット特異的ヒト化もしくはキメラ抗体または抗体フラグメントの分布をイメージングすることもできる。このような技法を利用して得られるイメージは、例えばがん/腫瘍細胞の存在に関するバイオマーカーとしてターゲットを使用する場合などに、患者、哺乳動物、または組織におけるターゲットの生体内分布を評価するために使用することができる。この技法の変法としては、ガンマカメラ技法よりイメージングを改良するための磁気共鳴イメージング(MRI)の使用を挙げることができる。従来のイムノシンチグラフィ法とその原理は、例えば[79]、[80]、および[81]に記載されている。さらにまた、上記に加えて、または上記に代えて、そのようなイメージは、腫瘍を除去するための外科的技法の基礎としても役立ちうる。さらにまた、そのようなインビボイメージング技法は、患者が腫瘍を有することは(他のバイオマーカー、転移などの存在などによって)確認されるが、その腫瘍を伝統的な解析技法では同定することができない状況において、腫瘍の同定および位置特定も可能にする。これらの方法はいずれも本発明の特徴である。
【0392】
本発明が提供するインビボイメージングおよび他の診断方法は、ヒト患者(例えば以前にがんと診断されたことがない患者、またはがんからの回復/寛解期にある患者)における微小転移の検出には特に有用である。
【0393】
一態様において、本発明は、本発明のターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体が、検出を助長する放射線不透過性物質にコンジュゲートされ、そのコンジュゲートヒト化またはキメラ抗体が血流への注射などによって宿主に投与され、宿主における標識ヒト化またはキメラ抗体の存在および場所がアッセイされるインビボイメージング法を提供する。この技法および本明細書に記載する他の診断方法によって、本発明は、ヒト患者またはヒト患者から採取した生物学的試料における疾患関連細胞の存在についてスクリーニングし、かつ/またはターゲット特異的ADC療法に先だってターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体の分布を評価するための方法を提供する。
【0394】
画像診断の場合は、放射性同位体をターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体に直接的にまたは中間官能基を使って間接的に結合させることができる。有用な中間官能基として、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸が挙げられる(例えば[82]参照)。
【0395】
診断方法は、放射性同位体および放射線不透過性物質の他に、色素(例えばビオチン-ストレプトアビジン複合体を使って)、造影剤、蛍光化合物または分子、および磁気共鳴イメージング(MRI)用の増強剤(例えば常磁性イオン)にコンジュゲートされたターゲット特異的抗体を使って行うこともできる(例えば、MRI技法およびMRI増強剤にコンジュゲートされた抗体の調製について記述している[83]を参照されたい)。そのような診断/検出剤は、MRIで使用される作用物質および蛍光化合物から選択することができる。ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体に放射性金属または常磁性イオンを負荷するには、それを、長いテールを有する試薬と反応させ、そのテールに、イオンを結合するための複数のキレート基を取り付ける必要があるかもしれない。そのようなテールは、ポリリジン、多糖などのポリマー、または例えばこの目的に有用であることが公知であるポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビスチオセミカルバゾン、ポリオキシムなどのキレート基を結合させることができるペンダント基を有する他の誘導体化されたまたは誘導体化可能な鎖であることができる。キレートは、標準的な化学を使って、ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体にカップリングすることができる。
【0396】
したがって本発明は、診断用ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体であって、ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体が、造影剤(例えば磁気共鳴イメージング用、コンピュータ断層撮影用、または超音波コントラスト増強剤)、または例えばガンマ放出同位体、ベータ放出同位体、アルファ放出同位体、オージェ電子放出同位体、もしくは陽電子放出同位体でありうる放射性核種にコンジュゲートされているものを提供する。
【0397】
一局面において、本発明は、本発明の抗体または二重特異性抗体を含む診断用組成物に関する。
【0398】
さらに別の局面において、本発明は、試料中のターゲット抗原またはターゲット抗原を発現する細胞の存在を検出するためのキットであって、
本発明のターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体、および
そのキットの使用説明書
を含むキットに関する。
【0399】
したがって一局面において、本発明は、
a)試料を、抗体または二重特異性抗体とCD3の間の複合体の形成が可能な条件下で、本発明の抗体または二重特異性抗体と接触させる工程、および
b)複合体が形成されたかどうかを解析する工程
を含む、試料中のCD3抗原またはCD3発現細胞の存在を検出するためのキットを提供する。
【0400】
一態様において、本発明は、ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体を含む容器、およびターゲットに対するターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体の結合を検出するための1つまたは複数の試薬を含む、がんを診断するためのキットを提供する。試薬としては、例えば蛍光タグ、酵素タグ、または他の検出可能タグを挙げることができる。試薬として、二次もしくは三次抗体または酵素反応のための試薬を挙げることもでき、この場合、その酵素反応は可視化することができる生成物を生じる。一態様において、本発明は、適切な容器中の標識型または非標識型の1つまたは複数の本発明のターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体、間接的アッセイのためのインキュベーション用試薬、およびラベルの性質に依存して、そのようなアッセイにおける検出のための基質または誘導体化剤を含む診断キットを提供する。対照試薬および使用説明書も含めることができる。
【0401】
組織試料または宿主におけるターゲットの存在を検出するために、標識ターゲット特異的抗体などのターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体と共に使用するための診断キットを供給することもできる。そのような診断キット、ならびに本明細書の他の項に記載する治療的使用のためのキットでは、典型的には、ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体を、凍結乾燥形態で容器中に、単独で、またはターゲット細胞またはターゲットペプチドに特異的な追加抗体と一緒に、提供することができる。典型的には、薬学的に許容される担体(例えば不活性希釈剤)および/またはその構成要素、例えばトリス、リン酸塩、または炭酸塩緩衝液、安定剤、保存剤、殺生物剤、不活性タンパク質、例えば血清アルブミンなど(典型的には混合用の別個の容器に入れて)や追加の試薬(やはり典型的には別個の容器に入れて)も含まれる。一定のキットでは、ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体に結合する能力を有する二次抗体であって、典型的には別個の容器に入っているものも含まれる。第2抗体は、典型的にはラベルにコンジュゲートされ、本発明のターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体と類似する方法で製剤化される。上記の、そして本明細書の他の項に記載する方法を使用することにより、がん/腫瘍細胞のサブセットを定義づけ、そのような細胞および関連腫瘍組織を特徴づけるために、ターゲット特異的ヒト化またはキメラ抗体を使用することができる。
【0402】
抗イディオタイプ抗体
さらに別の局面において、本発明は、本明細書に記載する発明のヒト化またはキメラ抗体に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。一態様において、本発明は、本発明の請求項のうちいずれか一項の抗体または本発明の二重特異性抗体に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【0403】
抗イディオタイプ(Id)抗体は、一般に抗体の抗原結合部位に関連するユニークな決定基を認識する抗体である。抗Id抗体は、CD3モノクローナル抗体の供給源と同じ種および遺伝子型の動物を、抗Idを調製しようとしているモノクローナル抗体で免疫化することによって調製することができる。免疫化した動物は、典型的には、これらのイディオタイプ決定基に応答する抗体(抗Id抗体)を生産することによって、免疫化抗体のイディオタイプ決定基を認識し、それに応答することができる。そのような抗体は、例えばUS4,699,880に記載されている。そのような抗体は本発明のさらなる特徴である。
【0404】
抗Id抗体は、さらに別の動物における免疫応答を誘発していわゆる抗抗Id抗体を生産するための「免疫原」としても使用することができる。抗抗Id抗体は、エピトープ的には、抗Id抗体を誘導した元のモノクローナル抗体と同一でありうる。したがって、モノクローナル抗体のイディオタイプ決定基に対する抗体を使用することにより、同一の特異性を持つ抗体を発現する他のクローンを同定することが可能である。抗Id抗体を、任意の適切な技法によって、例えば本発明のCD3特異的抗体に関して本明細書の他の項で述べるような技法によって、変化させ(それによって抗Id抗体変異体を生産し)、かつ/または誘導体化することができる。例えばモノクローナル抗Id抗体を、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの担体にカップリングし、それを使ってBALB/cマウスを免疫化することができる。これらのマウスからの血清は、典型的には、元の/親CD3抗体と同一ではないとしても類似する結合特性を有する抗抗Id抗体を含有するであろう。
【0405】
配列
(表1)
CDR領域には、IMGT定義に従って注釈をつけた。
【実施例0406】
実施例1:ヒト化CD3抗体および非活性化抗体変異体の作製
CD3抗体のヒト化
マウスCD3抗体(US8,236,308、本明細書ではIgG1-CD3と記す)のヒト化は、Antitope(英国ケンブリッジ)により、彼らの改良版生殖細胞系ヒト化(CDR移植)技術(EP0629240)を使って行われた。この技術を使って、1つの異なるVH鎖(SEQ ID NO:4)と2つの異なるVL鎖(SEQ ID NO:8、10)が設計された。当該1つのVHを当該2つのVL鎖と組み合わせることにより、2つの異なる抗体を作製した。これらのヒト化変異体を本明細書ではhuCD3と記す。したがって、本発明のVHとVLを含むヒト化変異体は、例えばIgG1-huCD3-H1L1と記され、これは該特定変異体が、IgG1アイソタイプであり、ヒト化CD3であって、「H1」と名付けられSEQ ID NO:4に定義するVHアミノ酸配列と、「L1」と名付けられSEQ ID NO:8に定義するVLアミノ酸配列とを含むことを意味する。したがって、例えばH1は重鎖可変領域VH1を指し、L1は軽鎖可変領域VL1を指すことになる。
【0407】
具体的に述べると、本明細書に記載する実施例では、変異体IgG1-huCD3-H1L1(SEQ ID NO:4に示すVH1配列とSEQ ID NO:8に示すVL1配列とを含むヒト化CD3)、IgG1-huCD3-L1-T41K(SEQ ID NO:4に示すVH1配列とSEQ ID NO:10に示すVL配列とを含むヒト化CD3)。
【0408】
b12抗体
一部の実施例では、HIV-1 gp120特異的抗体である抗体b12(Barbas, CF. J Mol Biol. 1993 Apr 5;230(3)812-23)を陰性対照として使用した。これを「IgG1-b12」と名付ける。
【0409】
発現
抗体は、後述の非活性化変異を持つか、または非活性化変異を持たず、後述の方法による二重特異性抗体の作製を可能にするCH3ドメイン中の変異を持つ、IgG1,κまたはIgG1,λとして発現させた。293fectin(米国Invitrogen)を基本的に製造者の説明どおりに使用することで、抗体の重鎖と軽鎖の両方をコードするプラスミドDNA混合物を、Freestyle HEK293F細胞(米国Invitrogen)に一過性にトランスフェクトした。
【0410】
抗体の精製
培養上清を0.2μmデッドエンドフィルタでろ過し、5mL MabSelect SuReカラム(GE Health Care)にローディングし、0.1Mクエン酸ナトリウム-NaOH(pH3)で溶出させた。溶出物を2Mトリス-HCl(pH9)で直ちに中和し、12.6mM NaH2P04、140mM NaCl、pH7.4(B.Braun)に対して終夜透析した。あるいは精製に続いて、溶出物をHi Prep脱塩カラムにローディングし、抗体を12.6mM NaH2P04、140mM NaCl、pH7.4(B.Braun)緩衝液に交換した。透析後または緩衝液交換後に、試料を0.2μmデッドエンドフィルタで滅菌ろ過した。純度をSDS-PAGEで決定し、濃度を280nmの吸光度で測定した。精製抗体は2~8℃で保存した。
【0411】
実施例2:ミュータントライブラリーの作製
Quick change変異誘発キット(Stratagene、製造者の説明書に従う)、ならびに鋳型としてHC(p33HGTE-huCD3-H1)およびLC(p33L-huCD3-L1-T41K)発現プラスミドを用いて行ったランダム変異誘発により、点変異を作製した。HCプラスミドは、WO2011110642に記載の一価UniBody-TEフォーマットをコードする。選択した位置にNNSコドンを含有するプライマー(N=G、A、T、またはC、およびS=GまたはC)を用いることにより、それぞれの選択した位置をランダム化した。ミュータントライブラリーで、製造者の説明書に従ってOneShot DH5α(Invitrogen)を形質転換した。
【0412】
コロニー選出およびLEE PCR
それぞれの変異した位置について96クローンを、個別に、50μL LEE(線状発現要素)PCR緩衝液(5μL 10×AccuPrime PCR緩衝液1、44.6μL 水(B.Braun)、0.1μL CMV P f(MAR5)および0.1μL Tk pA r(MAR1)プライマー(100μMストック)、0.2μL Accuprime Taq(Invitrogen))中に選出して、発現プラスミドから発現カセットを増幅した(プロモーターからポリAまで)。LEE PCRを、混合物を、2分94℃、[35秒94℃、30秒55℃、5分68℃]×35、10分72℃でインキュベートすること、およびさらなる使用までの4℃での保存により行った。
【0413】
96コロニーの各ライブラリー(12)を、サンガー塩基配列決定法を用いて配列決定した(Beckman Coulter Genomics、英国)。
【0414】
(表2)LEE PCRのためのプライマー配列
【0415】
実施例3:ミュータントライブラリーの発現およびIgG定量
各ミュータント(合計で12×96)の1.11μL HCおよび1.11μL LC LEE PCR産物を、2.78μLの水に希釈した。5μLのDNA希釈液を用いて、96ウェルプレート中の単一ウェルにトランスフェクトした。
【0416】
1ウェルあたり0.4μLのExpiFectamine(商標)293(Invitrogen、米国)および4.6μLのOpti-MEM(Gibco、米国)を混合して、室温で5分間インキュベートした。次に、Fectin/Opti-MEMミックスを、5μL DNA希釈液に添加して、室温で30分間インキュベートした。最後に、8.3μLのFectin/Opti-MEM/DNAミックスを、117.5μL Expi293F(商標)細胞に添加した。全ての手順の間、Expi293F(商標)細胞を含むプレートを、細胞を浮遊状態に保つように振盪した。トランスフェクション後、細胞を、37℃/8% CO2で5日間インキュベートした。
【0417】
トランスフェクションの5日後に、上清を採取した。上清中の抗体濃度を、Octet RED(ForteBio、米国)を用いてバイオレイヤー干渉法により測定した。
【0418】
実施例4:CD3/ TCR-LC13スクリーニングライブラリーの作製
Freestyle 293-F細胞(Invitrogen、米国)に、ヒトTCRのα鎖およびβ鎖(それぞれSEQ ID NO: 396およびSEQ ID NO: 397)、ヒトCD3δ(SEQ ID NO: 398)、ヒトCD3ε(SEQ ID NO: 399)、ヒトCD3γ(SEQ ID NO: 400)、ならびにヒトCD3ζ(SEQ ID NO: 401)をコードする発現コンストラクトを同時トランスフェクトした。これらの配列において、シグナルペプチド配列は排除されている。トランスフェクションは、製造者の説明書(Invitrogen、米国)に従って行った。トランスフェクションの1日後に、細胞をさらなる使用まで凍結した。
【0419】
実施例5:アフィニティーミュータントのスクリーニング
ホモジニアスアッセイ(用量応答)
配列データに基づいて、配列追跡が高いPHREDスコアを示し、複数の変異はないことを示すミュータントを選択した。入手可能な場合には、変異あたり複数の重複したクローンを選択した。
【0420】
細胞培養上清における組換え生産されたUniBody分子の結合を、蛍光微量アッセイ技術(Fluorometric Micro volume Assay Technology)(FMAT;Applied Biosystems、米国カリフォルニア州フォスターシティ)を用いたホモジニアス抗原特異的結合アッセイにより決定した。アッセイ試験設計において、CD3/TCR-LC13(ヒトCD3およびヒトT細胞受容体(TCR)を一過性に発現したFreestyle 293-F細胞;上述のように生産)ならびにFreestyle 293-F野生型細胞(ヒトTCRを発現しない陰性対照)に対する抗体または一価抗体分子の結合について、用量応答で試料を解析した。用量応答結合の前の、試料正規化のためのIgGレベルを、Octet計器(Fortebio、米国メンロパーク)を用いて測定した。
【0421】
試料の希釈系列を細胞に添加して、CD3に結合させた。その後、一価抗体分子の結合を、蛍光コンジュゲート(ヤギ抗ヒトIgG Fcγ-Alexa647;Jackson ImmunoResearch)を用いて検出した。CD3特異的なヒト化マウス抗体IgG1-HuM291-F405L(Freestyle 293-F細胞において生産)および一価抗体UniTE-huCD3-H1L1-LT41Kを陽性対照として使用し、ChromPure Human IgG, 全分子(Jackson ImmunoResearch)を陰性対照として使用した。試料を、Applied Biosystems 8200 Cellular Detection System(8200 CDS)を用いてスキャンし、試料濃度にわたる総蛍光を、読み取り値として使用した。カウントが50よりも高く、かつカウント×蛍光(総蛍光)が陰性対照よりも少なくとも3倍高かった場合に、試料を陽性と明言した。
【0422】
ヒートマップ
ホモジニアス用量応答スクリーニングから、4パラメータシグモイドモデルを用いて結合曲線をフィットさせた。フィットから、あらゆるミュータントについて最大結合を決定した。ミュータントあたりの平均最大結合を計算し、図1に示すように、wt結合を上回る平均最大間の比として図示した。
【0423】
アライメント
これらのライブラリーにおいて作製した、選択したHCミュータントを整列させて、図2に図示する。CDR領域には、IMGT定義に従って注釈をつけた。配列のナンバリングは、直接ナンバリングスキームに従って注釈をつけている。
【0424】
実施例6‐2-MEA誘発Fabアーム交換による二重特異性抗体の作製
本発明の二重特異性抗体は、WO2011131746およびWO2013060867(Genmab)において開示されている方法の使用により作製してもよい。
【0425】
例として、位置F405Lにおける変異が、一方のIgG1アイソタイプの親抗体に導入されてもよく、位置K409Rにおける変異が、もう一方のIgG1アイソタイプの親抗体に導入されてもよい。
【0426】
これらの2つの親抗体を、それぞれ0.5 mg/mLの最終濃度(等モル濃度)で、100μL トリス-EDTA(TE)の総体積中、25 mM 2-メルカプトエチルアミン-HCl(2-MEA)を伴う還元条件下で、37℃で90分間インキュベートしてもよい。還元剤の2-MEAを、スピンカラム(Microcon遠心式フィルター、30k、Millipore)を製造者のプロトコルに従って用いることにより除去すると、還元反応が停止される。
【0427】
二重特異性抗体は、0.2μmデッドエンドフィルタでろ過してもよく、二重特異性抗体の280 nmでの吸光度(A280)を測定して、その最終濃度を決定してもよい。
【0428】
実施例7:結合データ
下記の全ての結合アッセイについて、選択したhuCD3-H1L1の重鎖変異体のパネルを、さまざまなフォーマットにおいて試験した。
【0429】
(表3)選択した一価抗体-TEフォーマットにおけるhuCD3-H1L1のアフィニティー変異体
【0430】
一価抗体-TEフォーマットにおけるCD3アフィニティーミュータントのOctet結合アフィニティーの決定
選択したアフィニティーVH変異体のパネル(表3)のアフィニティーを、ForteBio Octet HTX上でバイオレイヤー干渉法を用いて決定した。0.4 nmのローディング応答を目指して、Anti-human Fc Capture(AHC)バイオセンサー(ForteBio、英国ポーツマス;カタログ番号18-5060)に600秒間、一価抗体-TEフォーマットにおけるCD3アフィニティーミュータント(2μg/mL)をロードした。UniBody-TEフォーマットの抗体を使用して、CD3アフィニティーミュータントとCD3ε27-GSKaリガンドとの間の一価相互作用アフィニティーを特異的に測定した。ベースライン(150秒)の後、CD3ε27-GSKa(100および1000 nM)の会合(1000秒)および解離(1000秒)を決定した。CD3ε27-GSKaタンパク質は、カッパLCのN末端に融合したヒトCD3εペプチド(アミノ酸1~27)からなる(SEQ ID NO: 402)。計算のために、アミノ酸配列に基づくCD3ε27-GSKaの理論的分子量、すなわち27.1 kDaを使用した。実験は、1000 rpmで振盪しながら30℃で行った。
【0431】
データを、1000秒の会合時間および200秒の解離時間での1:1モデルおよびグローバルフルフィットを用いて、ForteBio Data Analysis Software v8.1で解析した。データ追跡を、参照曲線(CD3ε27-GSKaを伴わないCD3アフィニティーミュータント)を引くことにより補正し、Y軸をベースラインの最後の5秒に整列させて、工程間(interstep)補正およびサビツキー・ゴーレイ(Savitzky-Golay)フィルタリングを適用した。
【0432】
(表4)選択した変異体についての平衡解離定数(KD)
nd=未決定
【0433】
フローサイトメトリー(FACS)でのヒト化CD3(UniTE-huCD3-H1L1-LT41K)のアフィニティー変異体のT細胞結合
精製したヒト化CD3(IgG1-huCD3-H1L1)抗体のVHアフィニティー変異体のT細胞結合を、FACSCanto 752(BD Biosciences)上で蛍光活性化細胞選別を用いて決定した。T細胞を、抗凝固処理したヒトドナー血液試料のバフィーコート画分から単離して、PBS/0.1% BSA/0.02%アジド中に1.8×10E6細胞/mLで再懸濁した。50μLのT細胞懸濁液と50μLの抗体希釈液とを、氷上で96ウェルプレートにおいて混ぜ合わせて、4℃で30分間インキュベートし、PBS/0.1% BSA/0.02%アジドで2回洗浄した。次に、50μL の二次抗体である、PBS/0.1% BSA/0.02%アジド中に1/200希釈したR-フィコエリトリン(PE)コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG F(ab')2(109-116-098、Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.、ペンシルベニア州ウエストグローブ)を染色のために添加し、混合物を4℃で30分間インキュベートして、その後、PBS/0.1% BSA/0.02%アジドで2回洗浄した。細胞を、120μL PBS/0.1% BSA/0.02%アジド中に再懸濁して、PE幾何平均蛍光強度を測定した。GraphPad Prism V5.04ソフトウェア(GraphPad Software、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を用い、非線形回帰(傾き可変のシグモイド用量応答)を用いて結合曲線を解析し、見かけのアフィニティー(KD)は、最大半減結合時の濃度に由来した。図4は、ヒト化CD3(UniTE-huCD3-H1L1-LT41K)のアフィニティー変異体の結合曲線を示し、図5は、ヒト化CD3(UniTE-huCD3-H1L1-LT41K)の低アフィニティー変異体の結合曲線を示す。
【0434】
(表5)一価抗体-TEフォーマットにおけるCD3アフィニティーミュータントの結合データの概要
【0435】
下記の全ての結合アッセイについて、選択した好ましい重鎖変異体のパネルを試験した(表5を参照されたい)。
【0436】
IgG1-huCD3-H1L1-FEALアフィニティーミュータントのOctet結合アフィニティーの決定
選択したIgG1-huCD3-H1L1-FEALフォーマットにおけるCD3アフィニティー変異体のアフィニティーを、ForteBio Octet HTX(ForteBio、英国)上でバイオレイヤー干渉法を用いて決定した(表6)。Anti-human Fc captureバイオセンサー(カタログ:18-5060、ForteBio、英国)に、hIgG(1μg/mL)を600秒間ロードした。ベースライン(200秒)の後、CD3E27-GSKaの会合(1000秒)および解離(2000秒)を、3倍希釈工程(試料希釈液、カタログ:18-5028、ForteBio、英国)の27.11μg/mL~0.04μg/mL(1000 nM~1.4 nM)のCD3E27-GSKa濃度範囲を用いて決定した。計算のために、アミノ酸配列に基づくCD3E27-GSKaの理論的分子量、すなわち27.11 kDaを使用した。実験は、1000 rpmで振盪しながら30℃で行った。各抗体を、少なくとも2回の独立した実験において試験した(表6)。
【0437】
データを、1000秒の会合時間および100秒の解離時間での1:1モデルおよびグローバルフルフィットを用いて、ForteBio Data Analysis Software v8.1で解析した。データ追跡を、参照曲線(CD3E27-GSKaを伴わない抗体)を引くことにより補正し、Y軸をベースラインの最後の10秒に整列させて、工程間補正およびサビツキー・ゴーレイフィルタリングを適用した。0.05 nmより短い応答を有するデータ追跡を、解析から排除した。
【0438】
(表6)
【0439】
IgG1-huCD3-H1L1-FEALアフィニティーミュータントのT細胞結合アフィニティーの決定
ドナーバフィーコート(Sanquin、オランダ国アムステルダム)由来のT細胞を、RosetteSepヒトT細胞濃縮カクテル(カタログ:15021C.1、Stemcell Technologies、フランス国)を製造者の説明書に従って用いることにより単離した。簡潔に言うと、50μLのT細胞単離カクテルを、1 mLのバフィーコートに添加して、室温で20分間インキュベートした。次に、バフィーコートをPBS(カタログ:3623140、B.Braun、ドイツ国)で希釈(1:3、v/v)して、15 mLのリンパ球分離媒質(カタログ:17-829E、Lonza、スイス国)を充填した50 mL falconチューブ(カタログ:227261、Greiner bio-one、オランダ国)にやさしく移した。チューブを、室温、1200×gで20分間、ブレーキなしで遠心分離した。T細胞を密度媒質から収集し、PBSで2回洗浄した。
【0440】
2×10E6 T細胞/mLを、FACS緩衝液中に再懸濁し、50μLを丸底96ウェルプレート(カタログ:650101、Greiner bio-one、オランダ国)中に移した。50μLの5倍希釈の抗体溶液を、5μg/mLから開始して添加し、4℃で30分間インキュベートした。96ウェルプレートを300×gで5分間、4℃で遠心分離し、上清を捨てた。細胞を氷冷FACS緩衝液で、氷上で2回洗浄し、1:200希釈した二次抗体(抗IgG Fcγ-PE(fab)'2、カタログ:109-116-098、Jackson Immuno Research、英国)を添加して100μL/ウェルにし、30分間インキュベートして、FACS緩衝液で2回洗浄した。蛍光強度をFACS Canto上で測定し、幾何平均をFlowJo V10ソフトウェアにより計算した。GraphPad(V6.04)によりグラフを作成した。図5を参照されたい。
【0441】
実施例9:CD3アフィニティーミュータントのインビトロ細胞傷害スクリーニング
固形腫瘍細胞株に対するCD3アフィニティーミュータントの細胞傷害(アラマーブルーアッセイ)
ドナーバフィーコート(Sanquin、オランダ国アムステルダム)由来のT細胞を、RosetteSepヒトT細胞濃縮カクテル(カタログ:15021C.1、Stemcell Technologies、フランス国)を製造者の説明書に従って用いることにより単離した。NCI-N87(25.000細胞/ウェル)(図6A)、SKOV3(16.000細胞/ウェル)(図6B)、およびMDA-MB-231(16.000細胞/ウェル)(図6C)の細胞を、平底96ウェルプレート(カタログ:655180、Greiner-bio-one、オランダ国)中に播種し、37℃で3~5時間、接着させた。T細胞を、以下の比で腫瘍細胞に添加した:NCI-N87細胞:T細胞、1:3;SKOV3細胞:T細胞、1:4;MDA-MB-231細胞:T細胞、1:8。その後、抗体溶液を10倍希釈で添加し、プレートを37℃で2日間インキュベートした。次に、上清を捨て、接着した細胞をPBSで2回洗浄した。10%のdonor bovine serum with iron(カタログ:10371-029、Life Technologies、オランダ国)を含有するRPMI-1640(カタログ:BE12-115F、Lonza、スイス国)培地において調製した10%アラマーブルー(カタログ:DAL1100、Life Technologies、オランダ国)溶液の150μLをウェルに添加し、37℃で3~5時間インキュベートした。吸光度を、Envisionマルチラベルプレートリーダー(PerkinElmer、米国)で測定した。スタウロスポリン(カタログ:S6942、Sigma-Aldrich、米国)処理した細胞を、100%死滅として設定し、無処理の細胞を、0%死滅として設定した。生細胞を、全ての群からスタウロスポリン処理した細胞を引くことにより計算し、無処理の群に対するパーセンテージをプロットした。GraphPad(v6.04)によりグラフを作成した。図6を参照されたい。
【0442】
血液細胞株に対するCD3アフィニティーミュータントの細胞傷害(クロム放出アッセイ)
5×10E6 Daudi細胞/mLを、100μCiクロムを含む完全培養培地中で1時間、振盪条件下、37℃でインキュベートした。次に、細胞を、PBS中で2回洗浄し、5 mLの完全細胞培養培地(RPMI 1640中、10% donor bovine serum with iron)中に再懸濁した。5.000個のDaudi細胞を、丸底96ウェルプレート中に播種した。ドナーバフィーコート(Sanquin、オランダ国アムステルダムより購入)由来のT細胞を、RosetteSepヒトT細胞濃縮カクテル(カタログ:15021C.1、Stemcell Technologies、フランス国)を製造者の説明書に従って用いることにより単離した。T細胞を、(腫瘍細胞:T細胞)1:10の比でDaudi細胞に添加し、その後、2倍希釈の抗体溶液を添加した。プレートを、37℃で24時間インキュベートした。24時間後、プレートを3分間、300×gで遠心分離し、上清を採取して、放射活性を測定した。図7を参照されたい。
【0443】
(表7)
【0444】
実施例10:NOD-SCIDマウス中の(ヒトPBMC+NCI-N87細胞)同時移植モデルにおけるCD3×HER2二重特異性抗体の腫瘍効力
いくつかのCD3×HER2二重特異性抗体のインビボ抗腫瘍効力を、皮下NCI-N87同時移植モデルにおいて評定した(図8)。二重特異性抗体のCD3アームとして、ヒト化WT CD3(huCD3-FEAL)および4種の異なるCD3アフィニティー変異体(N57E、H101K、S110A、Y114M)を使用した。全ての例において、HER2ターゲティングアームは同じ(ハーセプチン-FEAR)であった。
BisG1-huCD3-FEAL×1014-ハーセプチン-FEAR
BisG1-huCD3-N57E-FEAL×1014-ハーセプチン-FEAR
BisG1-huCD3-H101K-FEAL×1014-ハーセプチン-FEAR
BisG1-huCD3-S110A-FEAL×1014-ハーセプチン-FEAR
BisG1-huCD3-Y114M-FEAL×1014-ハーセプチン-FEAR
【0445】
このモデルにおいては、HLA-Aが適合した非刺激ヒトPBMCを、ヒトT細胞の供給源として、2種の異なる用量レベル(0.5および0.05 mg/kg)でNCI-N87腫瘍細胞と同時接種した。
【0446】
マウスを処置群に選別した(1処置群あたりn=4)。0日目に、200μL PBS/0.1% BSA中にHLA-Aが適合したhPBMC(5×10E6、Sanquin)およびNCI-N87(5×10E6)細胞を含有する混合物を、それぞれの雌のNOD-SCIDマウス(NOD.C.B-17-Prkdcscid/J、6~11週齢(Charles-River))の右側腹部に皮下(s.c.)接種した。腫瘍細胞注射の直後に、5種の異なるCD3×HER2抗体の単回静脈内投与(150μL)を、全ての二重特異性抗体について2種の異なる濃度(0.5および0.05 mg/kg)で行った。腫瘍体積を、週あたり少なくとも2回決定した。腫瘍体積(mm3)は、カリパス(PLEXX)測定値から0.52×(長さ)×(幅)2として計算した。
【0447】
NCI-N87細胞(ATCC番号CRL-5822、胃から生じた胃がん)を融解し、10% donor bovine serum with iron(Gibco、カタログ番号10371-029)、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび0.45%グルコース(Sigma、G8769)、ピルビン酸ナトリウム(Cambrex、BE13-115E)、ならびに0.075%炭酸水素ナトリウム(Cambrex、BE17-613E)を補給したRPMI 1640(Lonza、BE12-115F)において培養した。細胞は、CellSTACK培養チャンバーにおいて増殖させ、対数期に採取して、トリパンブルー排除により計数した。
【0448】
各研究のために、hPBMCを、NCI-N87(HLA-A-01,23)についてヒトのHLA-Aが適合したドナーから、Ficoll密度遠心分離によりバフィーコート(Sanquin)から単離した。単離した細胞を、窒素中で凍結し、使用前に融解した。全ての細胞を、PBS/0.1% BSA中で洗浄し、セルストレーナーを通してろ過し、PBS/0.1% BSA中に50×10E6細胞/mLの濃度になるように再懸濁した。
【0449】
結果を、図8に示す。図6A~Bは、処置後の経時的な平均腫瘍体積を示す。図6C~Dは、44日目の平均NCI-N87腫瘍体積のドットプロット表示を示す。全ての群がまだ無傷であった最後の日である44日目の腫瘍体積に対する統計解析(マン・ホイットニー)により、0.05 mg/kgの用量で、対照(PBMC)と比較したBisG1-huCD3-FEAL×1014-ハーセプチン-FEAR、BisG1-huCD3-S110A-FEAL×1014-ハーセプチン-FEAR、およびBisG1-huCD3-Y114M-FEAL×1014-ハーセプチン-FEARの有意な腫瘍成長阻害(p<0.05)が明らかになり、BisG1-huCD3-N57E-FEAL×1014-ハーセプチン-FEARおよびBisG1-huCD3-H101K-FEAL×1014-ハーセプチン-FEARの阻害は明らかにならなかった。0.5 mg/kgの用量では、BisG1-huCD3-FEAL×1014-ハーセプチン-FEARおよび全てのCD3アームアフィニティー変異体が、BisG1-huCD3-H101K-FEAL×1014-ハーセプチン-FEARを除いて、PBS(PBMC)対照群と比較して有意な腫瘍成長(p<0.05)阻害を示した。
【0450】
BisG1-huCD3-FEAL×1014-ハーセプチン-FEAR、BisG1-huCD3-S110A-FEAL×1014-ハーセプチン-FEAR、およびBisG1-huCD3-Y114M-FEAL×1014-ハーセプチン-FEARは、0.05および0.5 mg/kgの投薬量でNCI-N87腫瘍体積を有意に(p<0.05)低減した。BisG1-huCD3-N57E-FEAL×1014-ハーセプチン-FEARは、0.5 mg/kgの投薬量でのみNCI-N87腫瘍体積を有意に(p<0.05)低減した。BisG1-huCD3-H101K-FEAL×1014-ハーセプチン-FEARは、試験した投薬量の両方で、NCI-N87腫瘍成長に影響を及ぼさなかった。
【0451】
参考文献一覧
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
【配列表】
2022023862000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD3に結合するヒト化抗体であって、該抗体が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含む結合領域を含み、該VL領域が、配列番号6、GTN、および配列番号7に示すCDR配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、かつ該VH領域が、配列番号1、配列番号2、および配列番号176に示すCDR配列[H101G]をそれぞれ有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む、前記抗体。
【請求項2】
前記抗体が有する、ヒトCD3に対する結合アフィニティーが、それぞれ配列番号4および8のVHおよびVL領域を含む参照抗体と比較して低減されている、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記VH領域が、配列番号177に示すVH配列 [H101G]を有する、または配列番号177に示す配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するVH配列を有する、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
前記VL領域が、
a)配列番号8に示すVL配列;
b)配列番号10に示すVL配列、または
c)a)~b)に示す配列のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するVL配列
からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
ヒトCD3が、配列番号399にて特定されるヒトCD3εである、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が有する、配列番号402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーが、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値1.0×10-7~9.9×10-7 Mに相当する、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
全長抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプの抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
IgG1アイソタイプの抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
配列番号407に特定されるIgG1m(f)アロタイプの抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
一価、二価、または多価である、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
第1および第2免疫グロブリン重鎖を構成するFc領域を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
前記第1および第2重鎖の少なくとも一方において、ヒトIgG1重鎖における位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびA;またはA、A、およびAである、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体の第1結合領域と、該第1抗原結合領域とは異なるターゲットに結合する第2結合領域とを含む、二重特異性抗体。
【請求項15】
第1および第2重鎖を含み、該第1および第2重鎖のそれぞれが、少なくともヒンジ領域、CH2およびCH3領域を含み、該第1重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、該第2重鎖において、ヒトIgG1重鎖におけるT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、該第1および該第2重鎖が、同じ位置では置換されていない、請求項14に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
ヒトIgG1重鎖におけるF405に対応する位置のアミノ酸が、前記第1重鎖においてLであり、かつ、ヒトIgG1重鎖におけるK409に対応する位置のアミノ酸が、前記第2重鎖においてRであるか、またはその逆である、請求項15に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
前記第1結合領域が請求項1~13のいずれか一項に従い、かつ、前記第2結合領域が該第1結合領域とは異なるターゲットに結合する、請求項1416のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項18】
配列番号1、配列番号2、および配列番号3に示すCDR配列をそれぞれ有するCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む重鎖可変(VH)領域を含むヒトCD3に結合する抗体の結合アフィニティーを、それぞれ配列番号4および配列番号8のVH領域およびVL領域を含む参照抗体と比較して低減させる方法であって、VH CDR3領域にH101G変異を導入する工程を含み、該位置が、配列番号4の参照配列に従ってナンバリングされている、前記方法。
【請求項19】
低減されている結合アフィニティーを有する前記抗体が、重鎖可変(VH)領域を含む結合領域を含み、該VH領域が、配列番号1、2、176にそれぞれ示すCDR1、CDR2、およびCDR3配列 [H101G]を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が有する、配列番号402のヒトCD3εペプチドに対する結合アフィニティーが、バイオレイヤー干渉法により決定した場合のKD値 1.0×10-7~9.9×10-7 Mに相当する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または請求項1417のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコードする、1つまたは複数の核酸コンストラクト。
【請求項22】
(i)請求項1~3のいずれか一項に記載のヒトCD3に結合するヒト化抗体の重鎖配列をコードする核酸配列;または
(ii)請求項1~4のいずれか一項に記載のヒトCD3に結合するヒト化抗体の軽鎖配列をコードする核酸配列;または
(iii)(i)と(ii)の両方
を含む、発現ベクター。
【請求項23】
請求項22記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項24】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または請求項1417のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む、組成物。
【請求項25】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または請求項1417のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項26】
医薬として使用するための、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
がん、感染性疾患、または自己免疫疾患の処置において使用するための、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
疾患の処置において使用するための、請求項25に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
疾患の処置用の医薬を調製するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または請求項1417のいずれか一項に記載の二重特異性抗体の使用。
【請求項30】
前記疾患が、がん、感染性疾患、または自己免疫疾患である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体を生産するための方法であって、
a)請求項23に記載の宿主細胞を培養する工程;および
b)培養培地から該抗体を精製する工程
を含む、前記方法。
【請求項32】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または請求項1417のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む、診断用組成物。
【請求項33】
試料中のCD3抗原またはCD3発現細胞の存在を検出するための方法であって、
a)該試料と、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または請求項1417のいずれか一項に記載の二重特異性抗体とを、該抗体または二重特異性抗体とCD3との間の複合体の形成が可能な条件下で接触させる工程;および
b)複合体が形成されているかどうかを解析する工程
を含む、前記方法。
【請求項34】
以下を含む、試料中のCD3抗原またはCD3発現細胞の存在を検出するためのキット:
i)請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または請求項1417のいずれか一項に記載の二重特異性抗体;および
ii)該キットの使用説明書。
【請求項35】
請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体または請求項1417のいずれか一項に記載の二重特異性抗体に結合する、抗イディオタイプ抗体。