IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーダブリューエックスティー アイソトープ テクノロジー グループ、インコーポレイテッドの特許一覧

特開2022-23877モリブデン酸チタン及びそれを作る方法
<>
  • 特開-モリブデン酸チタン及びそれを作る方法 図1
  • 特開-モリブデン酸チタン及びそれを作る方法 図2
  • 特開-モリブデン酸チタン及びそれを作る方法 図3A
  • 特開-モリブデン酸チタン及びそれを作る方法 図3B
  • 特開-モリブデン酸チタン及びそれを作る方法 図4
  • 特開-モリブデン酸チタン及びそれを作る方法 図5
  • 特開-モリブデン酸チタン及びそれを作る方法 図6
  • 特開-モリブデン酸チタン及びそれを作る方法 図7
  • 特開-モリブデン酸チタン及びそれを作る方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023877
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】モリブデン酸チタン及びそれを作る方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 39/00 20060101AFI20220201BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20220201BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20220201BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20220201BHJP
   G21G 4/08 20060101ALI20220201BHJP
   C22B 34/34 20060101ALN20220201BHJP
   C22B 34/12 20060101ALN20220201BHJP
   B22F 1/00 20220101ALN20220201BHJP
   B22F 1/142 20220101ALN20220201BHJP
【FI】
C01G39/00 Z
C22B3/06
C22B3/44 101A
C22B3/22
G21G4/08 T
C22B34/34
C22B34/12
B22F1/00 P
B22F1/00 R
B22F1/142
【審査請求】有
【請求項の数】71
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021170199
(22)【出願日】2021-10-18
(62)【分割の表示】P 2019567498の分割
【原出願日】2018-02-23
(31)【優先権主張番号】62/463,020
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/592,737
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/902,086
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519307539
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティー アイソトープ テクノロジー グループ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル ザ セカンド、ウィリアム アール
(72)【発明者】
【氏名】バーガー、アール ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ、ベンジャミン アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボハノン、バーバラ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】フェウォックス、クリストファー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】インマン、ジェイムズ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ナイガールド、エリク ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ポリッケ、ティモシー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】プレイテ、スティーブン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リッジウェイ、ロジャー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シルテルム、スティーブ ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィギンス、ブライアン ブレイク
(57)【要約】
【課題】モリブデン酸チタン材料を生成するための方法。
【解決手段】本発明の方法は、液体媒体中の金属モリブデン(Mo)材料と第1の酸を反応させて、Mo組成物を得る工程、及びMo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程を含む。Ti-Mo組成物は、塩基でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成するための方法であって、
液体媒体中の金属モリブデン(Mo)材料を第1の酸と反応させて、Mo組成物を得る工程、
前記Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程、及び
前記Ti-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の酸が、鉱酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鉱酸が、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、ホウ酸、臭化水素酸、過塩素酸、ヨウ化水素酸、ハロゲン酸及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記鉱酸が、塩酸、硝酸、硫酸及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記液体媒体が、水性媒体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体媒体中の前記金属Mo材料を、前記第1の酸と反応させる工程が、約0.1:1から約10:1の範囲の前記Mo材料対前記第1の酸のモル比で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記液体媒体中の前記金属Mo材料を前記第1の酸と反応させるステップが、前記金属Mo材料に、酸化、溶解、又は酸化及び溶解の組合せを施す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液体媒体中の前記金属Mo材料を、前記第1の酸と反応させるステップが、この反応から形成される金属酸化物に、酸化、溶解、又は酸化及び溶解の組合せを施す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水性媒体の加熱、前記水性媒体からの除熱、又はその両方により、前記水性媒体の温度を制御することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記水性媒体の前記温度を制御することが、前記水性媒体を25℃超に加熱することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水性媒体の前記温度を制御することが、前記水性媒体の前記温度を約80℃未満に維持することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記水性媒体の前記温度を制御することが、前記水性媒体の前記温度を約70℃未満に維持することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記水性媒体の前記温度を制御することが、前記水性媒体の前記温度を約60℃未満に維持することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記水性媒体の前記温度を制御することが、前記水性媒体の前記温度を約50℃未満に維持することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記水性媒体の前記温度を制御することが、前記水性媒体の前記温度を約40℃未満に維持することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記反応の少なくとも一部の間、前記金属Mo材料及び前記水性媒体を撹拌することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
撹拌することが、前記金属Mo材料及び前記水性媒体を機械的に混合することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記チタン源が、塩化チタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記塩化チタンが、塩化チタン(III)(TiCl)、塩化チタン(II)(TiCl)、四塩化チタン(TiCl)、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記Mo組成物と前記チタン源を合わせて、前記Ti-Mo組成物を得る工程が、前記チタン源を前記Mo組成物に添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記Mo組成物と前記チタン源を合わせる工程が、約0.1:1から約10:1の、チタン対Moのモル比に達するまで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記チタン源を前記Mo組成物に添加することが、液滴、スプレー、ミスト及びそれらの組合せからなる群から選択される形態での前記チタン源の前記Mo組成物への添加を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記Mo組成物と前記チタン源を合わせて、前記Ti-Mo組成物を得る工程が、第2の酸を前記Mo組成物に添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の酸が、鉱酸を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の酸が、塩酸を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の酸を添加することが、前記チタン源を前記Mo組成物に添加することと同時に行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記Mo組成物と前記チタン源を合わせる工程の終わりに、前記Ti-Mo組成物が、約3以下の最終pHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記Ti-Mo組成物をpH調整する工程が、塩基を添加して、pHを約4から約9の範囲とすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記Ti-Mo組成物をpH調整するための前記塩基が、水酸化アンモニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記Ti-Mo組成物をpH調整する工程が、前記塩基を前記Ti-Mo組成物に滴下で添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記Ti-Mo組成物をpH調整する工程の間、前記Ti-Mo組成物をpH調整する工程の後で、又はその両方で、前記Ti-Mo組成物を冷却することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記Ti-Mo組成物を冷却することが、前記Ti-Mo組成物の前記温度を、約0℃から約20℃に低下させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記Ti-Mo-99組成物を冷却することが、前記Ti-Mo組成物の前記温度を約3℃から約10℃に低下させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
複数の前記Ti-Mo微粒子を、前記液体媒体から分離する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
複数の前記Ti-Mo微粒子を、前記液体媒体から分離する工程が、前記Ti-Mo組成物を濾過して、複数の前記Ti-Mo微粒子の少なくとも大半を保持することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記Ti-Mo組成物を濾過することが、金属濾過面の利用を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
複数の前記Ti-Mo微粒子の少なくとも大半が、前記金属濾過面上に保持される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記Ti-Mo組成物が、複数の前記Ti-Mo微粒子を前記液体媒体から分離する工程の間、約0℃から約20℃の温度を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
複数の前記Ti-Mo微粒子に熱エネルギーを施す工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
複数の前記Ti-Mo微粒子に熱エネルギーを施す工程が、複数の前記Ti-Mo微粒子を赤外線に曝露することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記赤外線が、約700nmから約1400nmの波長を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
複数の前記Ti-Mo微粒子に熱エネルギーを施す工程が、複数の前記Ti-Mo微粒子に、複数種の固体無機塩を結晶化させるのに十分な量の熱エネルギーを曝露することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
複数の前記Ti-Mo微粒子が、多孔マトリックスを含み、複数種の前記固体無機塩の少なくとも一部が、前記多孔マトリックス内に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
複数の前記Ti-Mo微粒子を粉砕する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
粉砕する工程が、複数の前記Ti-Mo微粒子に熱エネルギーを施した後で行われる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
粉砕する工程が、湿式粉砕を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
複数の前記Ti-Mo微粒子の粉砕後における平均サイズが、約10ミクロンから約1275ミクロンの範囲である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
複数の前記Ti-Mo微粒子の粉砕後における平均サイズが、約630ミクロンから約1015ミクロンの範囲である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
複数の前記Ti-Mo微粒子を水で洗浄する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
複数の前記Ti-Mo微粒子を乾燥させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
複数の前記Ti-Mo微粒子に放射線照射する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
金属モリブデン標的に放射線照射して、前記金属Mo材料を得る工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記金属モリブデン標的が、複数の金属モリブデンディスク、管状カプセル部品、又はその両方を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
請求項1に記載の方法により調製される、モリブデン酸チタン。
【請求項55】
モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成するための方法であって、
液体媒体中の金属モリブデン(Mo)材料を、第1の酸で全体的又は部分的に酸化させて、Mo組成物を得る工程、
前記Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程、及び
前記Ti-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程
を含む方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法により調製される、モリブデン酸チタン。
【請求項57】
モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成するための方法であって、
液体媒体中の金属モリブデン(Mo)材料を、第1の酸で全体的又は部分的に溶解して、Mo組成物を得る工程、
前記Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程、及び
前記Ti-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程
を含む方法。
【請求項58】
モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成するための方法であって、
液体媒体中の金属モリブデン(Mo)材料と第1の酸を合わせて、Mo組成物を得る工程、
前記Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程、及び
前記Ti-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程
を含む方法。
【請求項59】
複数の細孔、チャネル、又はその両方を含む構造を含む複数のTi-Mo微粒子、及び
前記構造に存在する1種又は複数の無機塩
を含む、モリブデン酸チタン(Ti-Mo)材料。
【請求項60】
1種又は複数の前記無機塩が、硝酸アンモニウムを含む、請求項59に記載の材料。
【請求項61】
1種又は複数の前記無機塩が、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、水酸化アンモニウム及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項59に記載の材料。
【請求項62】
複数の前記Ti-Mo微粒子の平均サイズが、約10ミクロンから約1275ミクロンの範囲である、請求項59に記載の材料。
【請求項63】
複数の前記Ti-Mo微粒子の平均サイズが、約630ミクロンから約1015ミクロンの範囲である、請求項59に記載の材料。
【請求項64】
前記Ti-Mo材料が、30%以上の溶出効率を有する、請求項59に記載の材料。
【請求項65】
前記Ti-Mo材料が、70%以上の溶出効率を有する、請求項64に記載の材料。
【請求項66】
前記Ti-Mo材料が、80%以上の溶出効率を有する、請求項65に記載の材料。
【請求項67】
前記Ti-Mo材料が、溶出カラムに配置され、全テクネチウム含有量の少なくとも90%が、水性液体を前記Ti-Mo材料に通過させることにより、前記Ti-Mo材料から放出される、請求項59に記載の材料。
【請求項68】
前記水性液体が、水、生理食塩水、希酸及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項67に記載の材料。
【請求項69】
請求項59に記載のモリブデン酸チタン材料を含む、キャスク移送ケース。
【請求項70】
少なくとも3mLの体積を有する溶出カラム、及び請求項59に記載のモリブデン酸チタン材料を含む、テクネチウムを生成するための系。
【請求項71】
前記溶出カラムが、3mL超の体積を有する、請求項70に記載の系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許商標庁に2018年2月22日に出願された米国非仮特許出願番号第15/902,086号の優先権を主張し、米国特許商標庁に2017年2月24日出願された米国仮特許出願第62/463,020号、及び米国特許商標庁に2017年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/592,737号の優先権を主張する。それらの開示は、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
ここで開示される発明は、全般的に、テクネチウム-99mジェネレータ(Mo-99/Tc-99mジェネレータ)における使用に適しているモリブデン酸チタン材料、及び、それを作る方法に関する。
【背景技術】
【0003】
テクネチウム-99m(Tc-99m)は、核医学(例えば、医用画像診断)に最も一般的に使用される放射性同位体である。Tc-99m(mは準安定である)は、典型的には患者に注入され、これは、ある種の設備で使用される場合、患者の内臓を撮像するために使用される。しかし、Tc-99mは、6時間の半減期しか有していない。したがって、容易に利用できるTc-99m源は、特に関心を集め、且つ/又は、少なくとも核医学分野では必要とされる。
【0004】
Tc-99mの半減期が短いことを考慮して、Tc-99mは、典型的には、Mo-99/Tc-99mジェネレータにより必要な場所で、及び/又は必要な時に得られる(例えば、薬局、病院などで)。Mo-99/Tc-99mジェネレータは、崩壊しつつあるモリブデン-99(Mo-99)源から、生理食塩水をそのMo-99材料に通過させることにより、テクネチウムの準安定同位体(すなわちTc-99m)を抽出するのに使用される装置である。Mo-99は不安定であり、66時間の半減期でTc-99mに崩壊する。Mo-99は、典型的には、高濃縮ウラン標的(93%ウラン-235)の放射線照射から高中性子束原子炉で生成され、Mo-99/Tc-99mジェネレータの製造現場に運ばれる。次いで、Mo-99/Tc-99mジェネレータを、これらの中心的な場所から全国の病院及び薬局へと流通させる。生産現場の数は限定されており、限定された数の利用できる高中性子束原子炉で化合されるので、Mo-99の供給は、中断及び不足の影響を頻繁に受けやすく、核医学的手順に遅延が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、テクネチウム-99mジェネレータ(Mo-99/Tc-99mジェネレータ)での使用に適した材料を生成する方法が、少なくとも依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つ又は複数の実施例は、前述の問題の1つ又は複数に取り組むことができる。本発明によるある種の実施例は、テクネチウム-99mジェネレータにおける使用に適しているモリブデン酸チタン(Ti-Mo)、例えば、多孔Ti-Mo材料を生成するための方法を提供する。本明細書で使用されている「モリブデン酸チタン」という用語は、一般的に、モリブデン酸チタン、チタン-モリブデン、チタン酸モリブデン、又はMo-Ti種若しくはTi-Mo種の任意の形態を指す。本発明のある種の実施例による方法は、液体媒体(例えば、水性媒体)中の金属モリブデン(Mo)材料と、第1の酸(例えば、鉱酸)を反応させて、Mo組成物を得る工程、及び、Mo組成物とチタン源(例えば、TiCl)を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程を含み得る。本発明のある種の実施例による方法は、Ti-Mo組成物を塩基(例えば、水酸化アンモニウム)でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程(本明細書では互換的に粒子と呼ばれる)をさらに含み得る。本発明のある種の実施例によれば、Ti-Mo微粒子は、液体媒体から単離又は分離し得る。本発明のある種の実施例によれば、単離したTi-Mo微粒子は、液体媒体残量を内部に含むスラリーの形態を取り得る。単離したTi-Mo微粒子に、熱エネルギーを施して、Ti-Mo微粒子を少なくとも部分的に乾燥させ、且つ/又は部分的に結晶化させること、並びに、個々のTi-Mo微粒子のTi-Moマトリックスにより画定される多孔網状組織内で複数種の無機塩を結晶化させることができる。例えば、1つ又は複数のTi-Mo微粒子は、複数の細孔及び/又はチャネルを内部に含む多孔マトリックスを含むことができ、結晶化した無機塩の少なくとも一部は、細孔及び/又はチャネル内に存在する。Ti-Mo微粒子の細孔及び/又はチャネルの少なくとも一部の中で無機塩を結晶化した後で、一緒に凝集し得るTi-Mo微粒子は、粉砕し、結晶化した無機塩を除去するために洗浄してもよい。本発明のある種の実施例によれば、この方法は、金属モリブデン標的に放射線照射して、本明細書で論じられているMo材料を得る工程を含み得る。すなわち、金属モリブデン標的に放射線照射してMo材料を得る工程は、液体媒体中で金属Mo材料と第1の酸を合わせる前に実行し得る。金属モリブデン標的は、例えば、金属モリブデンを含む管状カプセル、及び管状カプセルに収容される複数の金属モリブデン内部部品(例えば、ボール、ロッド、ワイヤー、ディスク)を含み得る。或いは、例えば、金属モリブデン標的は、1つ又は複数の金属モリブデン部品(例えば、ボール、ロッド、ワイヤー、ディスク)であってよく、これは、単体で、又は、例えばロッドと一連のディスクの組合せで使用される。これに関して、本発明のある種の実施例は、本明細書で開示されている方法に従って生成されたTi-Mo材料を含む。
【0007】
さらに別の態様では、本発明は、複数の細孔、チャネル、又はその両方を含む多孔構造を含む複数のTi-Mo微粒子を含むTi-Mo材料を提供する。これに関して、複数のTi-Mo微粒子の1つ又は複数は、独立して、複数の細孔、チャネル、又はその両方を含む多孔構造(例えば、個々のTi-Mo粒子により画定される多孔マトリックス)を含み得る。Ti-Mo材料は、本発明のある種の実施例によれば、1種又は複数の固体無機塩をさらに含むことができ、1種又は複数の無機塩の少なくとも一部を、多孔構造(例えば、個々のTi-Mo粒子により画定される多孔マトリックス)の細孔及び/又はチャネル内に配置し得る。これに関して、本発明のそのような実施例は、いくつかの例において、望ましい場合はさらなる処理のための中間生成物を含み得る。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、複数のTi-Mo微粒子を含み、1つ又は複数のTi-Mo微粒子が、複数の細孔、チャネル、又はその両方を含む多孔構造を含むTi-Mo材料を提供する。
【0009】
本発明のある種の実施例によれば、方法は、複数のTi-Mo微粒子を含む得られたTi-Mo材料に放射線照射する工程を含み得る。例えば、放射線照射は、Ti-Mo材料を溶出容器に装填する前に実行し得る。
【0010】
本発明のある種の実施例によれば、Ti-Mo材料は、30%以上の溶出効率、80%以上、90%以上、又は95%以上の溶出効率を有する。Ti-Mo材料は、本発明のある種の実施例によれば、溶出カラム(例えば、テクネチウム-99mジェネレータ)中に配置することができ、全テクネチウム含有量の少なくとも90%(例えば、少なくとも95%又は少なくとも99%)が、水性液体(例えば、水、生理食塩水、希酸)をTi-Mo材料に通過させることによりTi-Mo材料から放出される。
【0011】
本発明の他の実施例は、本明細書に記載されている。
【0012】
次に、本発明は、本発明の、すべてではないが一部の実施例が示されている添付の図面について以下でより詳しく説明される。実際に、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書で明記されている実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施例は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように示されている。同じ数字は全体を通して同じ要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例によるモリブデン酸チタン材料を生成するための方法のブロック図である。
図2】モリブデン酸チタンの表面で、及び、モリブデン酸チタンの内部又は細孔から外へと成長する、いくつかの無機塩結晶を含むモリブデン酸チタン材料を示す図である。
図3A】少量の残留無機塩結晶を含む、粉砕後及び洗浄後のモリブデン酸チタン材料を示す図である。
図3B】残留無機塩結晶がない、粉砕後及び洗浄後のモリブデン酸チタン材料を示す図である。
図4】本発明の一実施例によるMo材料を得るように放射線照射するための金属モリブデート標的を例証する図である。
図5図4により例証される金属モリブデート標的の断面図を例証する図である。
図6】本発明の一実施例によるキャスク移送ケースを例証する図である。
図7図6で例証されているキャスク移送ケースの断面図を例証する図である。
図8】本発明の実施例によるモリブデン酸チタン材料を生成するための方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明は、本発明の、すべてではないが一部の実施例が示されている添付の図面について以下でより詳しく説明される。実際に、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書で明記されている実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施例は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように示されている。本明細書、及び添付の特許請求の範囲に使用されているように、単数形の「a」、「an」、「the」は、文脈からそうでないと明らかに示されない限り、複数の指示を含む。
【0015】
本発明は、ある種の実施例に従って、例えば、テクネチウム-99mジェネレータにおける使用に適している多孔Ti-Mo材料などの、モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成するための方法を提供する。本明細書で使用されている「モリブデン酸チタン」という用語は、一般的に、モリブデン酸チタン、チタン-モリブデン、チタン酸モリブデン、又は、Mo-Ti種若しくはTi-Mo種の任意の形態を指す。
【0016】
ある種の実施例によれば、本方法は、液体媒体中の金属モリブデン(Mo)材料(例えば、様々な粒径及び形状の粉末及びバルク固体を含む多様な形態の固体モリブデン金属)と、酸(複数可)(例えば、鉱酸)を反応させて、Mo組成物(例えば、Moの溶液)を得る工程、並びに、Mo組成物とチタン源(例えば、TiCl)を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程を含み得る。金属モリブデンは通常、例えば、Mo粉末が流体静力学的に圧縮され、焼結される粉末冶金技術により生成される。本発明のある種の実施例によれば、金属モリブデン材料は、Mo原子を含み得る、本質的にMo原子からなり得る、又は、Mo原子からなり得る。金属モリブデン材料の非限定的な実例は、天然Mo、濃縮Mo(Mo-98が濃縮されたMoを含むが、それらに限定されない)、Mo合金(Mo含有量が50%を超え、合金をなす他の構成成分(複数可)が、化学的にMoから容易に分離される任意の材料を含むが、それらに限定されない)を含むが、それらに限定されない。
【0017】
本発明のある種の実施例による方法は、Ti-Mo組成物を塩基(例えば、水酸化アンモニウム)でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程をさらに含み得る。本発明のある種の実施例によれば、固体Ti-Moを生成するための方法は、金属Mo材料が、単一のポット中で(すなわち、同一のタンク又はポット中で)固体Ti-Mo微粒子に変換される単一ポット方法を含み得る。
【0018】
ある種の実施例によれば、利用される酸(複数可)は、1つ又は複数の鉱酸又は過酸化水素を含み得る。これに関して、金属Moとの組合せに適している鉱酸は、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、ホウ酸、臭化水素酸、過塩素酸、ヨウ化水素酸、ハロゲン酸(例えばHAt、Atはアスタチンである)、又はそれらの任意の組合せを含み得る。ある種の実施例によれば、鉱酸は、塩酸、硝酸又はそれらの組合せを含み得る。これに関して、金属Moは、液体媒体中に浸漬し、撹拌することができるが、先述の酸の1つ又は複数を添加して、液体媒体のpHを低下させる。ある種の実施例によれば、液体媒体中の金属モリブデン(Mo)材料と、第1の酸を反応させる工程は、金属Mo材料、及び/又はそれにより形成される任意の金属酸化物に、酸化、溶解、他の反応プロセス又はそれらの組合せを含むがそれに限定されない方法を施し得る。本発明のある種の実施例によれば、液体媒体は、水性媒体を含み得る。これに関して、液体媒体は、水を含み得る。本発明のある種の実施例によれば、液体媒体は、水からなり、そこに金属Mo及び先述の酸の1つ又は複数が添加される。
【0019】
本発明のある種の実施例によれば、液体媒体中の金属モリブデン(Mo)材料と第1の酸を反応させる工程は、Mo対酸(Mo:酸)が約0.1:1から約10:1の範囲のモル比で行われ得る。
【0020】
金属Moを反応させる工程は、金属Moが反応中の任意の時点で浸漬される、液体媒体(例えば、水性媒体)の温度を制御することをさらに含み得る。これに関して、液体媒体(例えば、水性媒体)の温度制御は、液体媒体の加熱、液体媒体からの除熱、無加熱、又はそれらの組合せを含み得る。加熱及び/又は除熱は、多様な公知の伝熱方式(例えば、内部タンクコイル、熱交換器、ジャケット付タンクなど)により達成し得る。本発明のある種の実施例によれば、例えば、液体媒体の温度は、反応の間中、液体媒体の加熱及び/又はそれからの除熱により、望ましいように制御できる。本発明のある種の実施例によれば、例えば、熱は、金属Moが浸漬される液体媒体に、液体媒体の温度を、約25℃以上、約35℃以上、約45℃以上、約55℃以上などに上昇させるのに十分なほど加えてもよい。液体媒体の温度は、上昇を開始することがある。これに関して、放出される熱を除去することにより、液体媒体の温度を制御することは、例えば、少なくとも安全上の問題に関して、望ましいことがある。液体媒体が、任意の補助化学薬品(co-chemicals)を含む場合、そのような化学薬品の沸点は、液体媒体が達する望ましい最大温度を少なくとも部分的に左右することがある。本発明のある種の実施例によれば、液体媒体の温度は、液体媒体の温度を、例えば、液体媒体からの除熱により、約80℃以下にて維持することにより制御し得る。本発明のある種の実施例によれば、液体媒体の温度は、液体媒体の温度を、約100℃以下にて、約80℃以下にて、約70℃以下にて、約60℃以下にて、約50℃以下にて、約40℃以下にて維持することにより制御し得る。
【0021】
反応させる工程は、工程の少なくとも一部の間、金属Mo材料及び液体媒体を撹拌することをさらに含み得る。これに関して、金属Mo材料及び液体媒体の撹拌により、酸(すなわち、1つ又は複数の鉱酸)を添加することで液体媒体のpHが低下するように、金属Mo材料と液体媒体の相互反応が改善し得る。例えば、撹拌により、液体媒体中で金属Mo材料の酸への接触を改善でき、酸化、溶解又はそれらの組合せを含むが、それらに限定されない、生じた任意の反応プロセスの速度を上げることができる。本発明のある種の実施例によれば、例えば、撹拌は、金属Mo材料及び液体媒体を機械的に混合することを含み得る。本発明のある種の実施例によれば、撹拌は、内部タンクのバッフルを利用して、金属Mo及び液体媒体の上下方向の混合を促進することにより改善できる。
【0022】
本発明のある種の実施例によれば、金属Mo材料を合わせる工程は、この工程の少なくとも一部の間、金属Mo材料が浸漬される液体媒体に、1つ又は複数の酸を添加すること、液体媒体の温度を制御すること、並びに金属Mo材料及び液体媒体を撹拌することを同時に含み得る。次いで、生じたMo組成物(例えば、Moの溶液)に、さらなる処理を施してもよい。
【0023】
本発明のある種の実施例によれば、モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成するための方法が提供され、この方法は、金属モリブデン(Mo)材料を、液体媒体中において、第1の酸で全体的又は部分的に酸化させて、Mo組成物を得る工程、Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程、及びTi-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程を含む。
【0024】
本発明のある種の実施例によれば、モリブデン酸チタン(Ti-Mo)を生成するための方法が提供され、この方法は、金属モリブデン(Mo)材料を、液体媒体中において、第1の酸で全体的又は部分的に溶解させて、Mo組成物を得る工程、Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程、及びTi-Mo組成物を塩基でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程を含む。
【0025】
前述の実施例における、酸化及び/又は溶解するためのプロセスパラメータ及び/又はプロセス条件は、反応させる工程に関して、本明細書で論じられているものと同一であってもよい。
【0026】
本発明のある種の実施例によれば、Mo組成物の形成後、方法は、Mo組成物とチタン源(例えば、TiCl)を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程を含み得る。チタン源は、塩化チタンを含み得る。本発明のある種の実施例によれば、塩化チタンは、塩化チタン(III)(TiCl)、塩化チタン(II)(TiCl)、四塩化チタン(TiCl)又はそれらの任意の組合せを含み得る。Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程は、本発明のある種の実施例によれば、チタン源をMo組成物に添加することを含み得る。本発明のある種の実施例によれば、Mo組成物は、チタン源を添加する間に撹拌又は混合される。
【0027】
チタン源のMo組成物への添加は、例えば、チタン源のMo組成物への滴下による添加を含み得る。これに関して、チタン源のMo組成物への添加は、撹拌中のMo組成物に、一度に一滴(例えば、0.05mL)のチタン源を投与することを含み得る。本発明のある種の実施例によれば、1分当たりMo組成物に添加されるチタン源の液滴の数は、変化させてもよい。使用できるチタン源の他の投与形態は、ミスト、スプレー又はそれらの組合せを含むが、それらに限定されない。Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程は、酸(例えば、第2の鉱酸)をMo組成物に添加することも含み得る。本発明のある種の実施例によれば、温度は、好ましくは、チタン源が酸と添加される場合は、約25℃から約35℃の範囲に低下させてもよい。酸は、上で開示されている鉱酸を含み得る。例えば、チタン源及びMo組成物を合わせる間にMo組成物に添加される鉱酸は、塩酸を含み得る。本発明のある種の実施例によれば、チタン源及び酸(例えば、塩酸)は、同時にMo組成物に添加し得る。例えば、チタン源は、本明細書で開示されている1つ又は複数のチタン含有化合物(例えば、TiCl)及び酸(例えば、塩酸)を、例として含む液体組成物を含み得る。これに関して、チタン源の添加は、チタンを含有する化合物(複数可)及び酸の同時添加を含み得る。本発明のある種の実施例によれば、生じたTi-Mo組成物は、Mo組成物とチタン源を合わせる工程の終わりに、約3以下(例えば、約2以下又は約1以下)の最終pHを含み得る。本発明のある種の実施例によれば、Mo組成物とチタン源(例えば、TiCl)を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程は、チタン対Moのモル比(Ti:Mo)が約0.1:1から約10:1に達するまで行われ得る。
【0028】
本発明のある種の実施例による方法は、Ti-Mo組成物を塩基(例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム及び金属水酸化物(複数可))でpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程をさらに含み得る。本発明のある種の実施例によれば、Ti-Mo組成物のpHは、塩基で約4から約9の範囲のpHに調整される。したがって、本発明のある種の実施例では、Ti-Mo組成物のpHは、最小で以下:約4、4.5、5、5.5、6、6.5及び7のいずれか、並びに/又は最大で約9、8.5、8、7.5、7、6.5及び6に調整し得る。Ti-Mo組成物のpHを調整している間に、Ti-Mo組成物に、撹拌、例えば機械的撹拌を施してもよい。
【0029】
本発明のある種の実施例によれば、Ti-Mo組成物のpHの調整は、塩基を滴下により添加することを含み得る。これに関して、塩基のTi-Mo組成物への添加は、Ti-Mo組成物の撹拌と同時に1滴(例えば、0.05mL)の塩基を、投与することを含み得る。本発明のある種の実施例によれば、Ti-Mo組成物に1分当たり添加される塩基の液滴の数は、変化させてもよい。
【0030】
pHを調整する工程後のTi-Mo組成物は、pHの調整から複数の沈殿したTi-Mo微粒子を含み、pHを調整する間、及び/又はpHを調整した後で、冷却する、又は冷やす工程を施してもよい。本発明のある種の実施例によれば、Ti-Mo組成物を冷却する工程は、Ti-Mo組成物の温度を、約0℃から約20℃(例えば、約3℃から約10℃)に低下させることを含み得る。従って、本発明のある種の実施例では、Ti-Mo組成物を冷却する工程は、Ti-Mo組成物の温度を、最小で以下:約3℃、5℃、8℃、10℃及び12℃のいずれか、並びに/又は最大で約20℃、15℃、12℃及び10℃に低下させることを含み得る。これに関して、冷却する工程は、多孔Ti-Mo微粒子内、及び/又は、多孔Ti-Mo微粒子の表面内における無機塩のさらなる結晶化を促進し得る。以下により詳細に記載されているように、さらなる固体無機塩は、続いて溶解及び/又は除去する場合、テクネチウム原子がTi-Mo微粒子から流出する経路を備えた多数のひび、穴/細孔、及び/又はチャネルを形成し得る。
【0031】
Ti-Mo組成物に複数のTi-Mo微粒子が沈殿した後で、上で論じられている冷却する工程を施すか否かに関係なく、Ti-Mo組成物に、分離操作(例えば、固-液分離)を施してもよい。これに関して、本発明のある種の実施例による方法は、複数のTi-Mo微粒子を液体媒体(例えば、望ましくないバルク液体媒体)から分離する工程を含み得る。これに関して、Ti-Mo微粒子は、望ましくない液体媒体から単離又は分離し得る。本発明のある種の実施例によれば、単離したTi-Mo微粒子は、液体媒体残量を内部に含むスラリーとしての形態を取り得る。本発明のある種の実施例によれば、複数のTi-Mo微粒子を液体媒体から分離する工程は、Ti-Mo組成物を濾過(例えば、真空濾過)する、又は遠心分離機にかけることを含んで、複数のTi-Mo微粒子の少なくとも大半を保持することができる。媒体の濾過は、紙、焼成金属、金属メッシュ又はそれらの組合せを含み得るが、それらに限定されない。第1及び/又は第2の濾過媒体を使用してもよい。分離する工程は、金属濾過面の利用を含むことができ、複数のTi-Mo微粒子の少なくとも大半は、金属濾過面上に保持される。上記のように、単離された、又は保持されたTi-Mo微粒子は、液体媒体残量を内部に含むスラリーとしての形態を取り得る。
【0032】
本発明のある種の実施例によれば、単離された、又は保持されたTi-Mo微粒子(例えば、スラリーの形態で)に、熱エネルギーを施して、Ti-Mo微粒子を少なくとも部分的に乾燥させ、且つ/又は部分的に結晶化させること、並びに、個々のTi-Mo微粒子のTi-Moマトリックスにより画定される多孔網状組織内で複数種の無機塩を結晶化させることができる。熱エネルギーに曝露している間、Ti-Mo微粒子を混入した残留液体媒体は、蒸発し始め、無機塩は結晶化し、且つ/又はサイズが成長する。本発明のある種の実施例によれば、無機塩の少なくとも一部は、Ti-Mo微粒子の多孔構造(例えば、Ti-Moの多孔マトリックス)内部で結晶化し、サイズが成長する。例えば、単離された、又は保持されたTi-Mo微粒子に、熱エネルギーを施して、Ti-Mo微粒子を少なくとも部分的に乾燥させ、且つ/又は部分的に結晶化させること、並びに、複数種の無機塩を、個々のTi-Mo微粒子のTi-Moマトリックスにより画定される多孔網状組織内で結晶化させる、且つ/又は成長させることができる。例えば、Ti-Mo微粒子の1つ又は複数は、複数の細孔及び/又はチャネルを内部に含む多孔マトリックスを含むことができ、結晶化した無機塩の少なくとも一部は、細孔及び/又はチャネル内に存在する。本発明のある種の実施例によれば、無機塩は、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、及び/又は水酸化アンモニウムを含む。しかし、モリブデン酸チタン分子は、ある強固な結晶状態ではなく、若干非晶質の固体状態で留まる。
【0033】
複数のTi-Mo微粒子に熱エネルギーを施す工程は、本発明のある種の実施例によれば、複数のTi-Mo微粒子を赤外線に曝露することを含み得る。本発明のある種の実施例によれば、赤外線は、約700nmから約1400nmの波長を有する。従って、本発明のある種の実施例では、赤外線は、最小で以下:約700、750、800、850、900、920、940、960、980及び1000nmのいずれか、並びに/又は最大で約1400、1300、1200、1150、1100、1080、1060、1040、1020及び1000nmの波長を有し得る。
【0034】
本発明のある種の実施例によれば、熱エネルギー源は、対流熱、フリーズドライ、赤外線ヒーター、例えば発光ダイオード(LED)、石英結晶、石英赤外線発熱体及び赤外光を発する白熱電球の1つ又は複数を含み得る。本発明のある種の実施例によれば、作用温度は、約20℃から約80℃になるよう制御できる。これに関して、作用温度は、最小で以下:約20℃、30℃、40℃、45℃、50℃、55℃及び60℃のいずれか、並びに/又は最大で約80℃、75℃、70℃、65℃及び60℃を含み得る。
【0035】
Ti-Mo微粒子に熱エネルギーを施した後で、Ti-Mo微粒子の多孔構造/マトリックス内に位置する無機塩結晶を含むTi-Mo微粒子に、任意選択で、粉砕又はすり潰し操作を施してもよい。無機塩(例えば、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、及び/又は水酸化アンモニウム)を結晶化した後で、Ti-Mo微粒子の細孔及び/又はチャネルの少なくとも一部内で、共に凝集し得るTi-Mo微粒子に、粉砕又はすり潰し操作を施して、より易流動性の材料を得ることができる。本発明のある種の実施例によれば、Ti-Mo微粒子は、多くの市販のミル、例えばボールミル、ハンマーミル、高圧粉砕ロール、タワーミル及び湿式ミル(例えば、円錐型の湿式ミル)により粉砕し得る。
【0036】
本発明のある種の実施例によれば、粉砕する工程の後で、複数のTi-Mo微粒子の平均サイズは、約10ミクロンから約1275ミクロン(例えば、約100ミクロンから約200ミクロン、約630ミクロンから約1015ミクロン)を有し得る。本発明のある種の実施例によれば、例えば、粉砕する工程の後で、複数のTi-Mo微粒子の平均サイズは、最小で以下:約10、50、75、125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、925及び950ミクロンのいずれか、並びに/又は最大で約1275、1250、1225、1200、1175、1150、1125、1100、1050、1000及び950ミクロンを含み得る。
【0037】
本発明のある種の実施例によれば、精選した粒径は、メカニカルフィルター、ケミカルフィルター又はそれらの組合せにより選択できる。
【0038】
本発明のある種の実施例に従って粉砕したTi-Mo微粒子に、洗浄する工程を施してもよい。洗浄する工程は、例えば、無機塩を溶解及び/又は除去して、個々のTi-Mo微粒子の多孔構造内部を広げる、又は利用できるようにするのに望ましいことがある。上記のように、多孔Ti-Mo微粒子は、その中の複数の細孔及び/又は内部チャネルを含み得る。細孔及び/又はチャネル内の無機塩を溶解及び/又は除去すると、テクネチウム原子(例えば、Tc-99m)の放出に利用できるTi-Mo微粒子の表面積は、大幅に増大する。これに関して、Ti-Mo微粒子は、内部で利用できる多孔構造が、テクネチウムを放出及び/又は抽出するための経路をより多く備えるので、無孔性微粒子よりも多い量の、テクネチウム原子(例えば、Tc-99m)放出に利用できるモリブデン酸チタン原子を含み得る。本発明のある種の実施例によれば、洗浄する工程は、無機塩(例えば、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、及び/又は水酸化アンモニウムを含む無機塩)を溶解及び/又は除去できる液体で、Ti-Mo微粒子を洗浄することを含み得る。本発明のある種の実施例によれば、Ti-Mo微粒子は、水でフラッシュして、無機塩を溶解及び/又は除去できる。無機塩(例えば、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、及び/又は水酸化アンモニウム)の溶解度は、温度に応じて上昇する可能性があるので、Ti-Mo微粒子をフラッシュする、又はすすぐのに使用される液体(例えば水)は、昇温させて(例えば、70℃から85℃の水)、無機塩の溶解及び/又は除去を速くすることができる。ある種の実施例によれば、或いは、Ti-Mo微粒子は、液体中に沈め、且つ/又は浸漬し、次いで排出してもよい。本発明のそのような実施例では、Ti-Mo微粒子は、新しい液体中に沈め、且つ/又は浸漬し、続いて1回超排出して、十分な量の無機塩を除去する必要があり得る。
【0039】
本発明のある種の実施例によれば、洗浄したTi-Mo微粒子は、収集し、乾燥させて、洗浄液の大半を除去できる。乾燥操作は、特に限定されない。洗浄後のTi-Mo微粒子を乾燥させた後で、Ti-Mo微粒子は、共に凝集する傾向があり得る。したがって、Ti-Mo微粒子に、第2の粉砕プロセスを施してもよく、第2の粉砕プロセスは、乾式粉砕プロセスを含み、第2の粉砕工程の後で、複数のTi-Mo微粒子は、約50ミクロンから約1275ミクロン(例えば、約100ミクロンから約200ミクロン、約630ミクロンから約1015ミクロン)を含み得る。本発明のある種の実施例によれば、例えば、第2の粉砕工程の後で、複数のTi-Mo微粒子の平均サイズは、最小で以下:約10、50、75、125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、925及び950ミクロンのいずれか、並びに/又は最大で約1275、1250、1225、1200、1175、1150、1125、1100、1050、1000及び950ミクロンを含み得る。
【0040】
本発明のある種の実施例によれば、方法は、金属モリブデン標的に放射線照射して、本明細書で論じられているMo材料を得る工程を含み得る。金属モリブデン標的は、例えば、管状カプセルを含むことができ、このカプセルは、金属モリブデン、及び、管状カプセル内部に収容されている複数の金属モリブデン内部部品(例えば、ボール、ロッド、ワイヤー、ディスク)を含む。例えば、管状カプセルは、第1の末端、第2の末端、並びに、第1の末端及び第2の末端を接続する壁を含んで、その中の空洞を画定することができる。これに関して、複数の金属モリブデン内部部品(例えば、ボール、ロッド、ワイヤー、ディスク)は、管状カプセル内の空洞中に詰めることができる。本発明のある種の実施例によれば、少なくとも第1の末端は、複数の金属モリブデン内部部品(例えば、ボール、ロッド、ワイヤー、ディスク)を入れるため、及び任意選択で入れないための空洞に接触できるように構成できる。これに関して、少なくとも第1の末端(又は末端上の部分)は、管状カプセルから除去して空洞に接触できるように構成できる。本発明のある種の実施例によれば、反応させる工程における金属Mo材料は、複数の金属モリブデン内部部品、管状カプセル、又はその両方を含む。
【0041】
金属モリブデン標的は、z方向の長さ、幅及び厚さをそれぞれ有する複数の金属モリブデンディスク(例えば、円形ディスク)を含み得る。これに関して、厚さは、長さ及び幅の両方を下回る値を有し得る。本発明のある種の実施例によれば、厚さは、約2ミクロンから約260ミクロン(例えば、約10ミクロンから約150ミクロン)を含む。本発明のある種の実施例によれば、例えば、厚さは、最小で以下:約2、10、20、30、40、50、60、70、80、90及び100ミクロンのいずれか、並びに/又は最大で約275、260、250、225、200、175、150、140、130、120、110及び100ミクロンを含む。本発明のある種の実施例によれば、複数の金属モリブデンディスクは、管状カプセルの内側において、並列でz方向に詰められる。本発明のある種の実施例によれば、複数の金属モリブデンディスクは、カプセルなしで使用してもよい。本発明のある種の実施例によれば、金属モリブデンディスクは、金属モリブデンシートから、例えばスタンピング加工により形成し得る。本発明のある種の実施例によれば、反応させる工程における金属Mo材料は、複数の金属モリブデンディスク、管状カプセル部品、又はその両方を含む。
【0042】
図1は、本発明による例示的実施例を例証する。詳細には、図1は、操作10で、金属モリブデン標的に放射線照射して、金属Mo材料を得る任意選択の工程(破線により指し示されている)を含み、その後、金属Mo材料(例えば、操作10から入手した、或いは第三者から入手した)を液体媒体中において、少なくとも第1の酸と反応させて、操作20でMo組成物を得る方法を例証する。図1に例証したように、方法は、操作30で、Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得る工程、及び、操作40で、Ti-Mo組成物を、塩基でpH約4から約9にpH調整して、複数のTi-Mo微粒子を沈殿させる工程を含む。図1の例示的実施例に例証したように、操作60での複数のTi-Mo微粒子を液体媒体から分離する工程の前に、操作50で、Ti-Mo組成物に、任意選択で、Ti-Mo組成物を冷却する工程を施してもよい。操作60後に単離したTi-Mo微粒子には、操作70で、複数のTi-Mo微粒子に熱エネルギーを曝露する工程、続いて、操作80で、複数のTi-Mo微粒子を粉砕する工程を施してもよい。図1の詳細な例示的実施例により例証されているように、次いで、方法は、操作90で、複数のTi-Mo微粒子を洗浄する(例えば、無機塩を除去するために)任意選択の工程、続いて、操作100で、第2の乾燥させる工程を含み得る。図1で示されているように、方法は、操作110で、乾燥後のTi-Mo微粒子を再度粉砕(例えば、乾式粉砕)する任意選択の工程を含み得る。図2は、例えば、モリブデン酸チタン510の表面上で、及び、モリブデン酸チタンの内部又は細孔から外へと成長するいくつかの無機塩結晶520を含むモリブデン酸チタン材料500を示す。これに関して、操作90で、洗浄する工程は、広範な、図2で示されている大多数の(又は実質的にすべての)無機塩結晶520を溶解及び/又は除去できる。図3Aは、例えば、少量の残留無機塩結晶520を含む、粉砕後及び洗浄後のモリブデン酸チタン材料を示す一方、図3Bは、残留無機塩結晶がない(又は実質的にない)、粉砕後及び洗浄後のモリブデン酸チタン材料を示す。
【0043】
上記のように、放射線照射して、Mo材料を得ることができる金属モリブデン標的は、管状カプセル及び/又は複数の金属モリブデン部品(例えば、ボール、ロッド、ワイヤー、ディスク)を含み得る。図4は、例えば、第1の末端610、第2の末端620、並びに、第1の末端及び第2の末端を接続して、その内部で空洞(図5で例証されている)を画定する壁630を含む管状カプセル600を例証する。図5は、図4により例証されている管状カプセル600の断面図を例証し、空洞640を示す。これに関して、複数の金属モリブデン内部部品(例えば、ボール、ロッド、ワイヤー、ディスク)は、管状カプセル空洞内に詰められ得る。
【0044】
金属モリブデン標的は、本発明のある種の実施例によれば、例えば、核分裂炉中での中性子捕獲により放射線照射し得る。本発明のある種の実施例によれば、本明細書で開示されているMo材料は、例えば、核分裂炉(例えば、回収ウラン、低濃縮ウラン及び高濃縮ウラン)、粒子促進剤及び中性子捕獲を含む多様なMo生成技術により得られ得る。本発明のある種の実施例によれば、金属モリブデン標的は、Mo標的が挿入できるいずれかのタイプの原子炉により放射線照射し得る。原子炉の非限定的な実例は、高中性子束同位体原子炉(HFIR)、CANDU炉(例えば、CANDU炉、CANDU6炉、CANDU9炉、改良型CANDU炉(ACR)など)を含むが、それらに限定されない。原子炉の他の非限定的な実例は、ミズーリ大学研究炉(MURR)、米国標準技術研究所(NIST)の原子炉、MIT核研究炉(MITR)、及び新型試験炉(ATR)を含むが、それらに限定されない動力炉及び研究炉である。
【0045】
これに関して、本発明のある種の実施例によれば、本明細書で開示されているMo材料の出所は、特に限定されない。
【0046】
さらに別の態様では、本発明は、複数の細孔、チャネル、又はその両方を含む多孔構造を含む複数のTi-Mo微粒子を含むTi-Mo材料を提供する。これに関して、複数のTi-Mo微粒子の1つ又は複数は、独立して、複数の細孔、チャネル、又はその両方を含む多孔構造(例えば、個々のTi-Mo粒子により画定される多孔マトリックス)を含み得る。Ti-Mo材料は、本発明のある種の実施例によれば、1種又は複数の無機塩(例えば、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム及び/又は水酸化アンモニウム)をさらに含むことができ、1種又は複数の無機塩の少なくとも一部は、多孔構造(例えば、個々のTi-Mo粒子により画定される多孔マトリックス)の細孔及び/又はチャネル内に配置し得る。これに関して、本発明のそのような実施例は、いくつかの例において、望ましい場合は、さらに処理するための中間生成物を含み得る。本発明のある種の実施例によれば、例えば、複数のTi-Mo微粒子の平均サイズは、最小で以下:約10、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、925及び950ミクロンのいずれか、並びに/又は最大で約1275、1250、1225、1200、1175、1150、1125、1100、1050、1000及び950ミクロンを含み得る。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は、複数のTi-Mo微粒子を含むTi-Mo材料を提供し、Ti-Mo微粒子の1つ又は複数は、複数の細孔、チャネル、又はその両方を含む多孔構造を含む。本発明のある種の実施例によれば、Ti-Mo材料は、30%以上の溶出効率、80%以上、90%以上又は95%以上の溶出効率を有する。本発明のある種の実施例によれば、Ti-Mo材料は、溶出カラムに配置して、テクネチウム-99mジェネレータを設けることができ、全テクネチウム含有量の少なくとも90%(例えば、少なくとも95%又は少なくとも99%)が、Ti-Mo材料に水性液体(例えば、水、生理食塩水、希酸)を通過させることにより、Ti-Mo材料から放出される。これに関して、本発明のある種の実施例は、大きい溶出カラム(例えば、テクネチウム-99mジェネレータ)の使用を可能にする。例えば、標準的な20ミリリットル生理食塩水での溶出は、標準的な3ミリリットルの大きさの溶出カラムよりはるかに大きい溶出カラムからテクネチウムを抽出できる。したがって、本発明のある種の実施例により、予想より小さいMo放射能からTc-99mの標的放射能の達成が可能となる。その結果、当業界へ商業的に実用的な生成物を供するために、低中性子束の原子炉を使用でき、より多数の原子炉が適切なMo生成に関与できる。
【0048】
これに関して、本発明のある種の実施例により、標準的な3ミリリットルのサイズを上回る(例えば、5mL、10mL、12mL、15mL、20mL、25mL、30mL、60mL又は100mL)溶出カラム(例えば、テクネチウム-99mジェネレータ)の使用が可能となり、その結果、テクネチウムの望ましい標的放射能を生じる低中性子束炉の使用が、今や実行可能である。例えば、商用目的のテクネチウムの十分に高い比放射能を発生するのに従来は利用できなかった低中性子束炉を、本発明のある種の実施例によれば、今や実行可能に利用し得る。これに関して、多様な原子炉を使用して、本発明のある種の実施例に従って処理するのにMoを供給できる。
【0049】
上記のように、本発明のある種の実施例によるTi-Mo材料によって、標準的な3ミリリットルのサイズを上回る(例えば、5mL、10mL、12mL、15mL、20mL、25mL、30mL、60mL又は100mL)溶出カラムの使用が可能となり、その結果、テクネチウムの望ましい標的放射能を生じる低中性子束の原子炉の使用が、今や実行可能である。したがって、本発明は、多様な原子炉(例えば高中性子束及び/又は低中性子束の原子炉)を、Tc-99mを生成するためのサプライチェーンに統合できる、多様な大きさの溶出カラムを受け入れるように構成された溶出ピッグ(elution pig)も提供する。本発明のある種の実施例によれば、溶出ピッグは、3mL、5mL、10mL、12mL、15mL、20mL、25mL、30mL、60mL、100mL又はそれらの任意の組合せを含む異なる大きさの多様な溶出カラムを受け入れるように構成できる。
【0050】
さらに別の態様では、本発明は、キャスク移送ケース及びプロセスを提供する。高度に放射性のMo材料を原子炉から化学処理(例えば、チタン源への添加)する場所へと移動させるために、本発明のある種の実施例は、望ましくない用量の放射能から人員を防御できるキャスク移送ケースを提供する。キャスク移送ケースは、Mo材料を安全に装填し、Mo材料を原子炉プールから化学処理する場所へと移送することもでき、装填していないMo材料も同様である。図6は、例えば、ハウジング(例えば、鉛を含む)1110、及び、ハウジングのボディを介して少なくとも部分的に突き出る回転軸1130につながったダイアル1120を含む、キャスク移送ケース1000の例示的実施例を例証する。図6で示されているように、ダイアル1120は、回転させて、キャスク移送ケース1000の作動状態を指し示すことができる。図6で示されているように、例えば、「L1」は、以下により詳細に論じるように、キャスク移送ケースが、材料注入口ポート1140を経由して、放射性材料を第1の場所に装填した作動状態であることを指し示す。図6で示されているように、キャスク移送ケース1000は、複数の装填箇所(例えば「L1」、L2」及び「L3)を含む。例えば、図7は、図6の断面図であり、本発明のある種の実施例によるキャスク移送ケース1000の内部構造を例証する。図7で示されているように、材料注入口ポート1140は、入口導管1150に動作可能に接続される。図7は、例えば、注入口ポート1140を介して、また、入口導管1150中に挿入される放射性Mo材料600を例証する。図7で示されているように、回転軸1130は内部導管ハウジング1160につながり、これは、内部導管ハウジングにより画定される1つ又は複数の内部導管1170を画定する。これに関して、1つ又は複数の内部導管1170は、内部導管ハウジング1160の全長にわたって伸張する。これに関して、1つ又は複数の内部導管1170の長さは、内部導管ハウジングが、回転軸1130を中心として自由に回転できるように、その中に装填されている材料(例えば、放射性Mo材料600)の長さを超える長さを有する。本発明のある種の実施例によれば、内部導管1170の1つは、ダイアル1120が材料の装填を指し示すように位置させる場合、入口導管1150と配列できる。したがって、キャスク移送ケース1000中に装填される材料(例えば、放射性Mo材料600)は、注入口ポート1140を介して挿入させ、入口導管1150を介して移動させ、配列した内部導管1170の内側に置くことができる(例えば、装填した材料の底面は、ハウジング1110の底の内部に置くことができ、内部導管1170により閉じ込められる)。図7で示されているように、ハウジング1110は、ダイアルが落下する材料の作動状態(例えば、図7の「D1」、D2」及び「D3」)を指し示すように位置する場合、キャスク移送ケースに装填した材料が、内部導管1170に落下し、そこから放出できるように、内部導管ハウジング1160の下に位置する出口導管1180も含む。そのような作動状態では、内部導管1170は、装填した材料が内部導管から落下し、出口導管を通過し、流出口ポート1190を介してキャスク移送ケース100から出るように、出口導管1180と配列できる。図6により例証されているように、キャスク移送ケースは、キャスク移送ケースが移送される準備ができている、又は、その中に装填した任意の材料が、注入口ポート1140又は流出口ポート1190を介して出る危険性なしで再配置できることを指し示す作動状態(例えば、図7における「XFER」)を含み得る。例えば、キャスク移送ケース1000が、本発明のある種の実施例に従って移送する作動状態である場合、内部導管1170に、入口導管1150又は出口導管1180と配列されているものはない。すなわち、入口導管1150は、内部導管1170のいずれとも配列されておらず、且つ/又は出口導管1180は、内部導管1170のいずれとも配列されていない。これに関して、キャスク移送ケース1000は、その中に配置された放射性材料を移送するように再配置するのに安全と考えられる。
【0051】
本発明のある種の実施例によれば、複数のTi-Mo微粒子を含むTi-Mo材料は、キャスク移送ケース又は溶出カラム中に装填する前に、放射線照射してもよい。この放射線照射後の工程は、プロセスの初期段階で金属モリブデン標的に放射線照射する任意選択の工程を排除することができる。そのような放射線照射後のプロセス工程のうち、化学プロセスを放射線制御なしで行うことにより、放射性廃棄物の生成を低下又は排除することができ、金属-Mo粒子の初期放射能をより高くする処理時間が短縮されることは特に利点である。
【0052】
図を参照すると、図8は、モリブデン酸チタン材料を生成するための方法ブロック図である。図8は、本発明による放射線の照射後を例証する。図8に例証したように、方法は、液体媒体中の金属Mo材料と少なくとも第1の酸を反応させて、Mo組成物を得る工程820を含む。方法は、工程830では、Mo組成物とチタン源を合わせて、Ti-Mo組成物を得ることを含み、工程840では、Ti-Mo組成物を塩基でpH約4から約9にpH調整して、複数のTi-Mo粒子を沈殿させることを含む。図8の例示的実施例に例証したように、複数のTi-Mo粒子を液体媒体から分離する工程860の前に、Ti-Mo組成物に、任意選択で、Ti-Mo組成物を冷却する工程850を施してもよい。工程860の後で、単離したTi-Mo粒子は、複数のTi-Mo粒子に熱エネルギーを曝露する工程870、続いて、複数のTi-Mo粒子を粉砕する工程880を施してもよい。図8の詳細な例示的実施例により例証されているように、次いで、方法は、複数のTi-Mo粒子を洗浄する任意選択の工程890、続いて、第2の乾燥させる工程900を含み得る。図8で示されているように、方法は、乾燥後のTi-Mo粒子を再度粉砕(例えば、乾式粉砕)する任意選択の工程910を含み得る。図8の詳細な例示的実施例により例証されているように、次いで、方法は、溶出カラム中に装填する前に、生じたTi-Mo粒子に放射線照射する任意選択の工程920を含み得る。
【0053】
本発明に対するこれらの、及び他の改変及び変化は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者により実践することができ、これは、添付の特許請求の範囲により詳細に記載されている。さらに、様々な実施例の態様は、全体的又は部分的に互換し得ることは理解すべきである。さらに、当業者は、先述の説明が単なる例であり、そのような添付の特許請求の範囲にさらに記載されている本発明を限定することは意図されていないと認識する。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲は、本明細書に含有されているものの例示的な説明に限定されるべきではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8