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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022023963
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】金融資産管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20220201BHJP
   G06Q 40/06 20120101ALI20220201BHJP
【FI】
G06Q40/04
G06Q40/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179042
(22)【出願日】2021-11-01
(62)【分割の表示】P 2016210629の分割
【原出願日】2016-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】598049322
【氏名又は名称】株式会社三菱UFJ銀行
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】堀池 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】池谷 敦夫
(57)【要約】
【課題】顧客の運用方針をできるだけ反映した資産運用を容易に行うこと。
【解決手段】本発明の金融資産管理方法は、第1金融資産から第2金融資産にシフトするときの交換レートに関する条件を条件記憶領域に登録する条件登録部と、預け入れされた金融資産に応じた第1金融資産を資産記憶領域に記録する資産記録部と、第1金融資産が記録されてから第1設定時間が経過したときにおける第1金融資産から第2金融資産にシフトするための交換レートが、条件を満たしているか否かを判定し、条件が満たされていない場合には条件が満たされるまで第1設定時間が経過する度に条件が満たされているか否かを再び判定する判定部と、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金融資産から第2金融資産にシフトするときの交換レートに関する条件を条件記憶領域に登録する条件登録部と、
預け入れされた金融資産に応じた第1金融資産を資産記憶領域に記録する資産記録部と、
前記第1金融資産が記録されてから第1設定時間が経過したときにおける前記第1金融資産から第2金融資産にシフトするための交換レートが、前記条件を満たしているか否かを判定し、前記条件が満たされていない場合には前記条件が満たされるまで前記第1設定時間が経過する度に前記条件が満たされているか否かを再び判定する判定部と、
を含み、
前記第1金融資産は、それぞれインカムゲインが決められた複数種類の金融資産から選択された一の種類の金融資産であり、
前記条件を満たさない場合に、前記複数種類の金融資産のそれぞれに対応するインカムゲインに基づいていずれかの種類の金融資産を選択し、選択した種類の金融資産に前記第1金融資産を変更する変更部をさらに含む、金融資産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融資産を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金融資産を管理、運用する際に外貨を購入して預金等で運用する場合がある。運用の方法は様々であり、その方法によっては人的作業では運用が難しいこともある。例えば、為替先物取引における運用を実現することができる外貨運用支援システムが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-150788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、為替差益を期待した運用の場合には、運用方法の一例として外貨定期預金がある。一般的には、外貨預金は預入期間の途中で通貨の見直しができない。そのため、顧客が考えていた運用方針に従うと、一度円貨に戻すべき情勢の変化(為替の変動など)が生じたとしても、その対応をとることができなかった。
【0005】
本発明の目的の一つは、顧客の運用方針をできるだけ反映した資産運用を容易に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、第1金融資産から第2金融資産にシフトするときの交換レートに関する条件を条件記憶領域に登録する条件登録部と、預け入れされた金融資産に応じた第1金融資産を資産記憶領域に記録する資産記録部と、前記第1金融資産が記録されてから第1設定時間が経過したときにおける前記第1金融資産から第2金融資産にシフトするための交換レートが、前記条件を満たしているか否かを判定し、前記条件が満たされていない場合には前記条件が満たされるまで前記第1設定時間が経過する度に前記条件が満たされているか否かを再び判定する判定部と、を含む、金融資産管理システムが提供される。
【0007】
前記判定部において前記条件が満たされていると判定された場合には、前記資産記憶領域に記録された前記第1金融資産を前記第2金融資産にシフトする第1シフト部をさらに含んでもよい。
【0008】
前記資産記憶領域の記録が前記第1金融資産から前記第2金融資産にシフトされてから第2設定時間が経過すると、前記資産記憶領域に記録された前記第2金融資産を前記第1金融資産にシフトする第2シフト部をさらに含んでもよい。
【0009】
前記判定部による判定は、前記金融資産が預け入れされてから第3設定時間が経過するまでは、前記第2シフト部によって前記資産記憶領域に前記第1金融資産が記録された場合においても実行されてもよい。
【0010】
前記第1金融資産は、それぞれインカムゲインが決められた複数種類の金融資産から選択された一の種類の金融資産であり、前記第2シフト部は、前記第2金融資産を前記第1
金融資産にシフトするときに、前記複数種類の金融資産に対応するインカムゲインに基づいて前記第1金融資産とする金融資産の種類を選択してもよい。
【0011】
前記第1金融資産は、それぞれインカムゲインが決められた複数種類の金融資産から選択された一の種類の金融資産であり、前記条件を満たさない場合に、前記複数種類の金融資産のそれぞれに対応するインカムゲインに基づいていずれかの種類の金融資産を選択し、選択した種類の金融資産に前記第1金融資産を変更する変更部をさらに含んでもよい。
【0012】
前記第1金融資産は、それぞれインカムゲインが決められた複数種類の金融資産から選択された一の種類の金融資産であり、前記第1金融資産の種類に対して、所定の条件を満たすインカムゲインに対応する金融資産の種類が存在する場合に、当該所定の条件を満たす金融資産の種類に前記第1金融資産を変更する変更部をさらに含んでもよい。
【0013】
前記第1金融資産は、それぞれインカムゲインが決められた複数種類の金融資産から選択された一の種類の金融資産であり、前記条件には、前記第1金融資産の種類に対応するインカムゲインに関する条件がさらに含まれてもよい。
【0014】
また、本発明の一実施形態によると、金融資産に対応するインカムゲインに関する条件を条件記憶領域に登録する条件登録部と、預け入れされた金融資産に応じた第1金融資産を資産記憶領域に記録する資産記録部と、所定時間毎に、複数種類の金融資産のインカムゲインのうち前記第1金融資産に対応するインカムゲインに対して前記条件を満たす金融資産の種類が存在するか否かを判定する判定部と、前記条件を満たすインカムゲインに対応する金融資産が存在する場合に、当該条件を満たす金融資産の種類に前記第1金融資産の種類を変更する変更部を含む、金融資産管理システムが提供される。
【0015】
前記金融資産の種類は通貨の種類であり、前記インカムゲインは金利であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、顧客の運用方針をできるだけ反映した資産運用を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態におけるシステムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態における資産管理情報の例を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態における金融資産管理方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態における資産運用設定画面を説明する図である。
図5】本発明の第1実施形態におけるシフト処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1実施形態における資産運用例を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態における金融資産管理システムの機能構成を説明する図である。
図8】本発明の第2実施形態における金利監視処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態におけるシステムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態におけるシステムについて、図面を参照しながら詳細に説明する
【0020】
[金融システムの構成]
図1は、本発明の第1実施形態におけるシステムの構成を示すブロック図である。金融資産管理システム1は、管理サーバ10、および管理サーバ10に接続された顧客データベース50を含む。管理サーバ10は、取引サーバ70と接続している。管理サーバ10は、インターネット、通信回線などのネットワークNWを介して通信端末80と情報の送受信を行う。通信端末80は、スマートフォンである。なお、通信端末80は、ネットワークNWに接続して他の装置と通信可能な携帯端末であればよく、例えば、携帯電話、ノートパソコン、デスクトップパソコン等であってもよい。取引サーバ70は、為替取引等の各種金融取引を行うためのサーバである。
【0021】
金融資産管理システム1は、顧客から預け入れられた金融資産を管理および運用する。この例では、円貨で預け入れられた金融資産を外貨として運用する。このとき、運用方針が、通信端末80を介して運用方針が設定される。金融資産管理システム1は、この運用方針によって、外貨資産を一時的に円貨資産にシフトしたり、外貨の種類(USD、EUR等)を変更したりして運用する。管理サーバ10は、このような運用を行うための処理を実行するためのサーバである。
【0022】
管理サーバ10は、制御部11および通信モジュール13を有する。制御部11は、CPUなどの演算処理回路、不揮発性メモリ、ハードディスクなどの記憶装置を有し、記憶装置に記憶されたプログラムをCPUにより実行して、各種機能を管理サーバ10において実現させる。制御部11が有する記憶装置は、プログラムを記録した記録媒体の一例ともいえる。通信モジュール13は、制御部11の制御により、ネットワークNWと接続して、ネットワークNWに接続された通信端末80など、他の装置と情報の送受信を行う。
【0023】
なお、制御部11において実行されるプログラムは、磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供されてもよい。この場合には、管理サーバ10は、記録媒体を読み取る装置を備えていればよい。また、各プログラムは、ネットワークNW経由でダウンロードされてもよい。
【0024】
顧客データベース50は、顧客から預け入れられた金融資産を記憶する。また、顧客データベース50は、設定された運用方針に関する情報も記憶する。データベースに登録された情報を、以下の説明では資産管理情報という。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態における資産管理情報の例を示す図である。資産管理情報は、顧客IDに対して、金融資産情報、預入日、期間、交換日、レート、交換条件、金利優先の有無が関連付けられた情報である。金融資産情報は、円貨資産(第2金融資産)、外貨資産(第1金融資産)および外貨の種類を示す情報である。外貨の種類は、アメリカドル(USD)、ユーロ(EUR)等の区別をする情報である。
【0026】
預入日は、円貨資産を預け入れて運用を開始した日である。期間は、預け入れた金融資産を運用する期間(例えば「5Y」は5年を示す)である。交換日は、円貨資産と外貨資産とをシフトした日である。すなわち、円貨資産にデータがある場合には、外貨資産から円貨資産へシフトした日を示している。一方、外貨資産にデータがある場合には、円貨資産から外貨資産へシフトした日を示している。レートは、円貨資産と外貨資産とをシフトしたときの交換レートを示している。この例では、外貨の1通貨単位に対する円貨への交換レートが示されている。この交換レートは、TTS(Telegraphic Transfer Selling)に対応する値である。例えば、顧客「cd67890」は、円貨を外貨(USD)にシフ
トしたときの交換レート(TTS)が107円であることを示している。
【0027】
交換条件は、運用方針として設定される条件の一つであり、この例では、外貨資産を一時的に円貨資産にシフトする処理を発生させる条件を示す。例えば、+2%という交換条件は、円貨資産を外貨資産にシフトしたときの交換レート(TTS)に対して、予め決められた時点での交換レート(TTB:Telegraphic Transfer Buying)により、2%以上
の為替差益が見込まれることを条件としている。例えば、TTS=100円で外貨資産にシフトした場合、TTBが102円以上であれば、交換条件が満たされて、外貨資産が一時的に円貨資産にシフトされる。交換条件が満たされなければ、円貨資産へのシフトは行われない。予め決められた時点とは、運用を見直す時期として定期的に設定されたタイミングである。以下、このタイミングを中間満期(詳細は後述)の時点という場合がある。なお、この例では、交換条件を相対値(割合)で規定していたが、絶対値(例えば、+2円)として定めてもよい。
【0028】
また、交換レートのみならず、金利による資産増加分も考慮した設定として扱ってもよい。例えば、交換条件が+2%である場合、以下の場合に交換条件が満たされる。まず、最後に外貨資産にシフトしたときの元資産(円貨資産)を資産Aとする。その後の中間満期時点において外貨運用における金利増加分を含めて再び円貨資産にシフトしたときの円貨資産を資産Bとする。資産Aに対して資産Bが2%以上の増加となる場合には、+2%という条件が満たされることになる。このように、交換条件には、交換レートに関する条件に加えて通貨に対応する金利に関する条件が含まれていてもよい。
【0029】
金利優先設定については、外貨での運用の際に、金利が高い外貨を優先することによって複数の外貨の種類での運用を認めるか否かを示している。金利優先「有り」は、金利に基づいて(例えば、金利の高い)別の種類の外貨への変更を認める設定である。金利優先「無し」は、別の種類の外貨への変更を認めない設定である。
【0030】
[金融資産管理システムの動作]
続いて、上記の金融資産管理システム1の動作を、図3を用いて説明する。
【0031】
図3は、本発明の第1実施形態における金融資産管理方法を示すフローチャートである。管理サーバ10に対して通信端末80がアクセスをし、資産運用を申し込む処理を入力すると、図3に示す処理を含む金融資産管理方法が実行される。まず、管理サーバ10は、通信端末80に対して、運用方針の設定を受け付けて、運用方針の条件を含む資産管理情報を顧客データベース50に登録する処理(条件登録処理)を実行する(ステップS101)。条件登録処理では、まず、管理サーバ10が通信端末80に対して、運用方針を設定するための画面(資産運用設定画面)を提供する。これによって、通信端末80のディスプレイには、資産運用設定画面が表示される。
【0032】
図4は、本発明の第1実施形態における資産運用設定画面を説明する図である。資産運用設定画面DAは、運用方針として設定される内容を入力するための領域D1~D5を含む。領域D1は、運用する円貨資産を設定するための領域である。領域D2は、運用期間(資産の預入期間)を設定する領域である。領域D3は、外貨資産を一時的に円貨資産にシフトする処理を発生させる条件を設定する領域である。領域D4は、運用の際の基準となる外貨の種類を設定する領域である。領域D5は、外貨での運用の際に、金利が高い外貨を優先し、領域D4で設定した外貨の種類以外の運用(複数の外貨を用いた運用)を認めるか否かを設定する領域である。ユーザによって、領域D1~D5への入力がされた後に設定ボタンB1が操作されると、管理サーバ10は、領域D1~D5に入力された情報を、運用方針の設定として受け付ける。
【0033】
図3に戻って説明を続ける。管理サーバ10は、通信端末80から運用方針の設定を受け付けて顧客データベース50に登録すると、設定に応じて顧客からの資産を預け入れる処理(資産預入処理)を実行する(ステップS103)。管理サーバ10は、受け付けた設定に基づいて、顧客データベース50の資産管理情報に登録する。続いて、管理サーバ10は、預入日から予め設定された時間が経過して中間満期に到達すると、預け入れられた円貨資産を、取引サーバ70を介して、領域D4で指定された種類の外貨資産にシフトする(ステップS105)。例えば、領域D4で指定された外貨の種類がUSDであれば、管理サーバ10は、最初の中間満期時点において、円貨資産からアメリカドルにシフトする。
【0034】
管理サーバ10は、円貨資産から外貨資産へのシフトをすると、この外貨資産を資産管理情報に記録する処理(資産記録処理)を実行する(ステップS107)。このとき、管理サーバ10は、円貨資産から外貨資産へのシフトをした日(交換日)および交換レートについても、シフト後の資産とともに登録する。以下に説明する処理において、円貨資産から外貨資産へのシフトを行ったとき、および外貨資産から円貨資産へのシフトを行ったときも、この登録方法は同様である。一方、外貨資産から円貨資産へのシフトを行ったときは、必ずしも交換レートについては登録しなくてもよい。
【0035】
続いて、管理サーバ10は、預入日から設定した時間(第3設定時間)が経過して運用期間(預入期間)が終了するまで、シフト処理を実行し(ステップS200)、運用期間が終了すると、金融資産管理方法に含まれる処理が終了する。シフト処理は、設定された運用方針に従って、円貨資産と外貨資産とのシフトを行う処理である。シフト処理について、図5を用いて説明する。
【0036】
図5は、本発明の第1実施形態におけるシフト処理を示すフローチャートである。シフト処理が開始されると、まず、制御部11は、中間満期までの時間を計測するための基準日を規定するために初期化を行う(ステップS201)。制御部11は、上記初期化を行った後から第1設定時間が経過し、または預入期間が終了するまで待機する(ステップS211;No、ステップS213;No)。第1設定時間は、中間満期までの時間であり、この例では、1か月として定められている。この第1設定時間は、上述した資産運用設定画面において、顧客が運用方針の条件の1つとして指定できるようにしてもよい。
【0037】
制御部11は、第1設定時間が経過し中間満期に到達したと判定した場合(ステップS211;Yes)には、外貨資産を円貨資産にシフトするときの交換レートを取引サーバ70から取得して、この交換レートが交換条件を満たしているか否かを判定する(ステップS221)。制御部11は、交換条件を満たすと判定した場合(ステップS221;Yes)には、取引サーバ70を介して外貨資産を円貨資産にシフトし(ステップS223)、資産管理情報に登録する(第1シフト処理)。円貨資産にシフトされる外貨資産は、中間満期までの第1設定時間(1か月)に対応する金利により、増加されている。したがって、外貨資産にシフトしたときの交換レート(TTS)と、円貨資産にシフトするときの交換レート(TTB)とが同一であり為替差益が存在しない場合であっても、外貨の種類に対応する金利により資産が増加する。金利による資産増加は、いずれの期間においても行われる。
【0038】
そして、制御部11は、中間満期までの時間を計測するための初期化を行う(ステップS225)。制御部11は、上記初期化を行った後から第2設定時間を経過し、または預入期間が終了するまで待機する(ステップS231;No、ステップS233;No)。第2設定時間は、第1設定時間と同じく中間満期までの時間であり、この例では、1か月として定められている。この第2設定時間についても、上述した資産運用設定画面において、顧客が運用方針の1つの条件として指定できるようにしてもよい。なお、第1設定時
間と第2設定時間とが異なっていてもよい。
【0039】
制御部11は、第2設定時間が経過し中間満期に到達したと判定した場合(ステップS231;Yes)には、再び、取引サーバ70を介して円貨資産を外貨資産にシフトし(ステップS243)、資産管理情報に登録する(第2シフト処理)。そして、制御部11は、ステップS201の処理に戻り、中間満期までの時間を計測するための初期化を行う。
【0040】
一方、制御部11は、ステップS221の判定において交換条件を満たさないと判定した場合(ステップS221;No)には、金利優先設定があるか否かを判定する(ステップS251)。制御部11は、金利優先設定があると判定した場合(ステップS251;Yes)には、取引サーバ70または金利を参照可能なサーバを介して、金利条件を満たす外貨の種類があるか否かを判定する(ステップS271)。金利条件を満たす外貨とは、現在の資産としての外貨の種類(外貨A)と、その他の外貨の種類とにおいて金利を比較し、外貨Aの金利よりも予め決められた設定値(例えば、1%)以上高い金利を有する外貨を示す。上述した資産運用設定画面において、顧客が運用方針の1つの条件として、この設定値を指定できるようにしてもよい。また、上述した資産運用設定画面において、顧客が運用方針の一つとして判定の対象となる外貨の種類、すなわち運用対象としての外貨の種類を予め指定できるようにしてもよい。
【0041】
制御部11は、金利優先設定がないと判定した場合(ステップS251;No)、または金利条件を満たす外貨の種類がないと判定した場合(ステップS271;No)には、ステップS201の処理に戻り、中間満期までの時間を計測するための初期化を行う。
【0042】
一方、制御部11は、金利条件を満たす外貨の種類があると判定した場合(ステップS271;Yes)には、金利条件を満たす別の種類の外貨を選択して、取引サーバ70を介して、選択した種類の外貨に変更するように外貨資産をシフトし(ステップS273)、資産管理情報に登録する(変更処理)。複数の種類の外貨が金利条件を満たす場合には、所定のルール(例えば、運用対象の外貨のうち最も高い金利のもの)にしたがっていずれかが選択される。このルールについても、上述した資産運用設定画面において、顧客が運用方針の1つの条件として指定できるようにしてもよい。そして、制御部11は、ステップS201の処理に戻り、中間満期までの時間を計測するための初期化を行う。
【0043】
制御部11は、ステップS213の判定処理またはステップS233の判定処理において、預入期間が終了したと判定した場合(ステップS213;Yes、ステップS233;Yes)には、シフト処理を終了し、そのまま、図3に示す金融資産管理方法による処理も終了する。これにより、顧客は、設定した運用方針により運用された金融資産を受け取る。なお、預入期間終了後における金融資産の通貨の種類が指定されている場合には、その通貨へのシフトが行われる。預入期間終了後に受け取る通貨の種類は、運用設定画面において設定できるようにしてもよい。以上が、金融資産管理方法についての説明である。
【0044】
続いて、上述した金融資産管理方法による金融資産の運用例について、図6を用いて説明する。
【0045】
図6は、本発明の第1実施形態における資産運用例を示す図である。この例では、交換条件は+2%とする。まず、最初に1か月の定期預金として円貨資産が預入される(SS1)。1か月が経過して中間満期に到達すると、そのときの交換レート(TTS=100円/1USD)で外貨資産(USD)にシフトされ、外貨の定期預金となる(SS2)。さらに1か月が経過したときの交換レート(TTB)は、105円/1USDであった。
この場合、交換レートが+2%以上に変化しているため交換条件を満たす。したがって、円貨資産にシフトされ、円の定期預金となる(SS3)。
【0046】
さらに1か月が経過すると、そのときの交換レート(TTS=103円/1USD)で外貨資産(USD)に外貨資産にシフトされる(SS4)。さらに1か月が経過したときの交換レート(TTB)は、104円/1USDであった。この場合、交換レートが+2%以上に変化していないため交換条件を満たさない。
【0047】
このとき、金利優先設定がない場合、または金利優先設定があっても金利条件を満たさない場合、外貨の種類の変更は無く、そのまま1か月の定期預金が継続される(SS5)。さらに1か月が経過したときの交換レート(TTB)は、130円/1USDであった。この場合、交換レートが最後にシフトしたときのレートに対して、+2%以上に変化しているため交換条件を満たす。したがって、円貨資産にシフトされ、円の定期預金となる(SS6)。
【0048】
一方、SS4において、金利優先設定があり、金利条件を満たす外貨(この例ではEUR)が存在する場合、外貨の種類をUSDからEURに変更(シフト)して、EURの定期預金となる(SS7)。さらに1か月が経過したときの交換レート(TTB)は、EURからUSDに換算したときの130円/1USDであった。この場合、交換レートが最後にシフトしたときのレートに対して、+2%以上に変化しているため交換条件を満たす。したがって、円貨資産にシフトされ、円の定期預金となる(SS8)。
【0049】
この例では、5か月分の運用例を示したが、設定された預入期間が終了するまでの間、交換レートと交換条件との関係に従って、円貨資産と外貨資産とのシフトが繰り返される。このように、上述した金融資産管理方法によれば、事前に顧客が設定した運用方針にしたがって、円貨資産と外貨資産との間でシフトされて金融資産が運用される。したがって、顧客は運用方針を設定すればよいため、顧客の運用方針をできるだけ反映した資産運用を容易に行うことができる。
【0050】
[金融資産管理システムの機能構成]
図7は、本発明の第1実施形態における金融資産管理システムの機能構成を説明する図である。図7に示す例では、管理サーバ10に関する機能と、顧客データベース50に関する機能とを分けて記載している。なお、これらの機能は、さらに多くの装置(サーバ等)が協働することによって分散されて処理されてもよい。また、管理サーバ10において顧客データベース50の機能を有していてもよい。
【0051】
管理サーバ10は、条件登録部110、資産記録部130、判定部150、第1シフト部160、第2シフト部170、および変更部190を含む。顧客データベース50は、条件記憶領域510および資産記憶領域530を含む。
【0052】
条件記憶領域510は、資産管理情報のうち、交換条件等、運用方針に係る設定を記憶する領域である。資産記憶領域530は、資産管理情報のうち金融資産を記憶する領域である。金融資産は、この例では円貨資産(第1金融資産)および外貨資産(第2金融資産)に対応する。ここでいう外貨資産とは、外貨の種類によらず、円貨以外の通貨全ての資産を示す。
【0053】
条件登録部110は、通信端末80を介して設定された運用方針を、条件記憶領域510に登録する。この処理は、図3に示すステップS101に対応する。この運用方針には、少なくとも外貨資産から円貨資産にシフトするときの交換レートに関する条件(交換条件)が含まれる。資産記録部130は、運用されている円貨資産および外貨資産を、資産
記憶領域530に記録する。この処理は、図3に示すステップS107対応する。
【0054】
判定部150は、外貨資産が資産記憶領域530に記録されてから、第1設定時間が経過したときに円貨資産から外貨資産にシフトするための交換レートが、交換条件を満たしているか否かを判定する。この判定は、条件が満たされるまで第1設定時間が経過する度に行われる。この処理は、図5に示すステップS211、221、251、271、273に対応する。この処理は、第2シフト部170によるシフトによって外貨資産が資産記憶領域530に記録された場合にも実行される。そして、金融資産が預け入れられてから第3設定時間が経過して預入期間が終了するまで続く。
【0055】
第1シフト部160は、判定部150によって交換条件を満たしていると判定された場合には、資産記憶領域530に記録された外貨資産を円貨資産にシフトする。この処理は、図5に示すステップS223に対応する。
【0056】
第2シフト部170は、第1シフト部160によって外貨資産から円貨資産にシフトされてから、第2設定時間が経過すると、資産記憶領域530に記録された円貨資産を外貨資産にシフトする。この処理は、図5に示すステップS231、243に対応する。なお、これによって外貨資産が資産記憶領域530に記録された場合にも、上記の判定部150における処理が実行される。
【0057】
変更部190は、金利優先設定がある場合に用いられる機能であって、判定部150によって交換条件を満たしていないと判定された場合であり、かつ、金利条件を満たす通貨(この例では、外貨)の種類があると判定した場合に、外貨資産を、金利条件を満たす別の種類の通貨に変更(シフト)する。この処理は、図5に示すステップS273に対応する。以上が、金融資産管理システム1における機能構成の説明である。
【0058】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、金利優先設定がある場合に外貨資産を円貨資産にシフトする交換条件が満たされなかった場合に、金利条件を満たす外貨の種類があれば、その外貨の種類に変更するようにシフトしていた。すなわち、中間満期に到達するときに、外貨の種類が変更される場合があった。第2実施形態では、各通貨の金利を監視し、中間満期に到達しなくても金利条件を満たす外貨の種類がある場合には、外貨の種類を変更する。
【0059】
図8は、本発明の第2実施形態における金利監視処理を示すフローチャートである。上述したシフト処理において、金融資産が外貨資産である期間において、各通貨の金利を監視する処理(金利監視処理)が並行して処理される。
【0060】
制御部11は、この処理が開始されてから円貨にシフトされた場合(ステップS501;Yes)には金利監視処理を終了する。一方、制御部11は、円貨にシフトされていない場合(ステップS501;No)、すなわち外貨資産のままである場合には、金利条件を満たす外貨の種類があるか否かを判定する(ステップS503)。金利条件を満たす外貨とは、第1実施形態と同様に、現在の資産としての外貨の種類(外貨A)と、その他の外貨の種類とにおいて金利を比較し、外貨Aの金利よりも予め決められた設定値(例えば、1%)以上高い金利を有する外貨を示す。この設定値についても、上述した資産運用設定画面において、顧客が運用方針の1つの条件として指定できるようにしてもよい。
【0061】
制御部11は、金利条件を満たす外貨の種類がないと判定した場合(ステップS503;No)には、ステップS501の処理に戻る。
【0062】
一方、制御部11は、金利条件を満たす外貨の種類があると判定した場合(ステップS
2503;Yes)には、外貨資産を、金利条件を満たす別の種類の外貨に変更(シフト)し(ステップS505)、資産管理情報に登録する。そして、制御部11は、ステップS501の処理に戻る。
【0063】
<変形例>
以上、本発明の実施形態およびその実施例について説明したが、本発明は以下のように、様々な態様で実施可能である。
【0064】
(1)上述した実施形態において、制御部11は、円貨資産を外貨資産にシフトする際に、複数種類の外貨から、それぞれの外貨に対応する金利に基づいて外貨の種類を選択するようにしてもよい。外貨の種類は、例えば、金利の高い外貨としてもよい。なお、選択される外貨の種類は、資産運用設定画面などにより予め設定された種類の中から選択されるようにしてもよい。
【0065】
(2)上述した実施形態では、金融資産として円貨資産および外貨資産を例示したが、金利のようなインカムゲインを生じる金融資産であれば、他の資産であってもよい。例えば、外貨資産に代わる金融資産は、株また不動産であってもよい。株であれば、交換レートに株価が対応し、金利に配当が対応する。また、第1金融資産の種類として、通貨の種類を例示した。株であれば、第1金融資産の種類として、株を発行した会社に対応する。
【0066】
(3)上述した実施形態では、管理サーバ10の機能構成は、条件登録部110、資産記録部130、判定部150、第1シフト部160、第2シフト部170、および変更部190を含んでいたが、必ずしも全ての構成を含む場合に限らない。例えば、管理サーバ10は、条件登録部110、資産記録部130および判定部150を含む構成であってもよい。この場合、判定部150の判定結果は、別の装置において用いられてもよい。別の装置における処理は、第1シフト部160、第2シフト部170、および変更部190に相当する処理でなくてもよい。例えば、判定結果が、顧客への通知に用いられてもよいし、金融取引に用いられてもよい。もちろん、管理サーバ10は、条件登録部110、資産記録部130および判定部150に対して、第1シフト部160を含む構成であってもよい。そして、管理サーバ10は、さらに第2シフト部170を含む構成であってもよい。
【0067】
(4)上述した第2実施形態における金利監視処理は、第1実施形態での金融資産管理方法における処理と並行するものに限られない。例えば、所定の種類の通貨として預け入れられた金融資産を、あらかじめ設定された期間が終了するまで、金利監視処理の方法を用いて通貨の種類を変更していくようにしてもよい。この場合には、条件登録部110は、金融資産に対応する金利(インカムゲイン)に関する金利条件を条件記憶領域に登録する。資産記録部130は、預け入れされた通貨を資産記憶領域に記録する。判定部150は、所定時間毎に、複数種類の金融資産のインカムゲインのうち資産記憶領域に記憶された通貨に対応する金利に対して、金利条件を満たす通貨の種類が存在するか否かを判定する。変更部190は、金利条件を満たす通貨が存在する場合に、資産記録領域に記憶された通貨を、金利条件を満たす通貨の種類に変更(シフト)する。一方、この例では、第1シフト部160および第2シフト部170は不要とすることもできる。
【0068】
(5)上述した実施形態において、中間満期までの時間(第1設定時間、第2設定時間)は、1か月を例示した。この時間は、1か月、1日といった単位ではなく、1時間、1分、1秒といったさらに短い時間単位であってもよい。
【0069】
(6)上述した実施形態において、運用対象の通貨の種類のうち金利条件を満たす別の種類の通貨を選択して、選択した種類の通貨に変更するように外貨資産をシフトする変更処理を行っている。このときの運用対象の通貨の種類は、予め設定されていてもよいし、顧
客が運用方針の1つの条件として指定できるようにしてもよい。なお、直近の1か月の交換レートが、予め設定された下落率よりも大きい通貨の種類については、運用対象から除外されるように条件が決められてもよい。このようにすると、金利が高くても通貨自体の価値の喪失によって結果として大きな損失を被るリスクを低減することができる。
【0070】
(7)金融資産管理システム1による資産運用を行うときには、通常の定期預金に適用される金利よりも上乗せするようにしてもよい。このとき、金利の上乗せは、円貨資産および外貨資産の双方に対して適用されてもよいし、いずれ一方(例えば円貨資産)に対してのみ適用されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…金融資産管理システム、10…管理サーバ、11…制御部、13…通信モジュール、50…顧客データベース、70…取引サーバ、80…通信端末、110…条件登録部、130…資産記録部、150…判定部、160…第1シフト部、170…第2シフト部、190…変更部、510…条件記憶領域、530…資産記憶領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8