(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024004
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】高濃縮粉末オレオレジン組成物およびその処理工程
(51)【国際特許分類】
A61K 36/18 20060101AFI20220201BHJP
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A61K 36/28 20060101ALI20220201BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20220201BHJP
A61K 36/54 20060101ALI20220201BHJP
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A61K 36/9068 20060101ALI20220201BHJP
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A61P 1/02 20060101ALI20220201BHJP
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A23L 27/10 20160101ALI20220201BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20220201BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220201BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20220201BHJP
【FI】
A61K36/18
A61K36/9066
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A61P37/02
A61K9/48
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A61K9/14
A61K9/06
A61K9/10
A61K9/02
A61K47/02
A61K47/12
A23L27/10 C
A23L29/00
A23L33/105
A23L27/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021182019
(22)【出願日】2021-11-08
(62)【分割の表示】P 2017559463の分割
【原出願日】2016-05-14
(31)【優先権主張番号】2463/CHE/2015
(32)【優先日】2015-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】517390580
【氏名又は名称】パラチュル,ヴィヴェク アナンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パラチュル,ヴィヴェク アナンド
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィチャンドラン,スリパシー
(72)【発明者】
【氏名】パンダ,サンジブ クマール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高濃度で安定性の良い、粉末形態の高濃縮オレオレジンを提供する。
【解決手段】オレオレジン、及び無機水酸化物/無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩を含み、任意で有機酸/無機酸を含む、安定性が増強され、かつ生体利用効率が向上した高濃縮粉末オレオレジン組成物である。有機酸/無機酸を含まないことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレオレジン、無機水酸化物/無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩、及び有機酸/無機酸を含む、安定性が増強され、かつ生体利用効率が向上した高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項2】
オレオレジン、及び無機水酸化物/無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩を含む、安定性が増強され、生体利用効率が向上した高濃縮粉末オレオレジン組成物であって、有機酸/無機酸を含まない、請求項1に記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項3】
前記オレオレジンが、クローブオレオレジン、カレーリーフオレオレジン、ペッパーオレオレジン、カルダモンオレオレジン、チリオレオレジン、トウガラシオレオレジン、パプリカオレオレジン、ジンジャーオレオレジン、クルクマキサンソリザオレオレジン、ウコンオレオレジン、コリアンダーオレオレジン、クミンオレオレジン、セロリオレオレジン、ディルオレオレジン、フェヌグリークオレオレジン、ガーリックオレオレジン、メースオレオレジン、ガルシニア抽出物、フェンネルオレオレジン、タマリンドオレオレジン、シナモンオレオレジン、ナツメグオレオレジン、カシアオレオレジン、ガランガルオレオレジン、パセリオレオレジン、タイムオレオレジン、マリーゴールドオレオレジン、ローズマリーオレオレジン、マスタードオレオレジン、カレーパウダーオレオレジン、バニラオレオレジンから、単独または組み合わせて選択される、香辛料、植物、および薬草オレオレジンを含む、請求項1または2に記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項4】
前記オレオレジンの量は、前組成物中の30~90%、好ましくは70~90%の範囲の量である、請求項1から3のいずれかに記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項5】
前記無機水酸化物/酸化物/塩化物/炭酸塩は、水酸化カルシウム、酸化マンガン、水酸化マグネシウム/酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化亜鉛/酸化亜鉛、水酸化鉄/酸化鉄および水酸化アルミニウム、水酸化セレン/酸化セレン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム/酸化カリウムから単独または組み合わせて選択される、請求項1または2に記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項6】
前記無機水酸化物/酸化物/塩化物/炭酸塩は、全組成物中の0.01~50%の範囲の量である、請求項1、2、5のいずれかに記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項7】
前記有機酸/無機酸は、プロピオン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、安息香酸、および炭酸から、単独または組み合わせて選択される、請求項1に記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項8】
前記有機酸/無機酸は、全組成物中の0.001~20%、好ましくは2~6%の範囲の量である、請求項1から7のいずれかに記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項9】
薬学的に、および栄養補助食品として承認された担体、賦形剤、滑剤、固結防止剤、結合剤、ポリマー(天然または合成)を任意で含む、請求項1から8のいずれかに記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項10】
カプセル、錠剤、サッシェ、グミ、チョコレート、キャンディー、マサラ混合物、食品混合物、飼料混合物、インスタント食品、飲料、ゲル、クリーム、軟膏、スプレー、坐剤、などの様々な剤形に調合される、請求項1から9のいずれかに記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項11】
医薬品または栄養補助食品またはサプリメントのいずれかとして、ならびに食品原材料、飲料原材料、飼料原材料および医薬原材料として、心血管疾患、認知疾患、腸疾患、口腔衛生、眼疾患、皮膚疾患、変形性関節症、肥満、糖尿病、炎症性疾患、呼吸器疾患、疼痛状態、脳疾患、肝臓の健康状態、腎臓の健康状態、免疫障害から選択される、様々な人および動物の治療、および、エネルギー持続性の増強に使用される、請求項10に記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物。
【請求項12】
a)十分な量のオレオレジンを25~80℃の間の温度に加熱するステップと、
b)有機酸/無機酸をステップ(a)に添加し、続いて配合するステップと、
c)ステップ(b)に無機水酸化物/無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩を添加し、続いて5~30分間配合/混合するステップと、
d)ステップ(b)の混合物を冷却し、続いて自由流動性粉末に粉末化するステップを含む、請求項1に記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物を調整する方法。
【請求項13】
前記方法が、ステップ(a)への有機酸/無機酸の添加を行わない、請求項12に記載の高濃縮粉末オレオレジン組成物を調整する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃縮された粉末のオレオレジン組成物(oleoresin composition)およびその処理(preparation、調整、準備)のための工程に関する。
【背景技術】
【0002】
オレオレジンは各香辛料の性質を再現する香辛料から抽出される。オレオレジンは挽いて粉末にした香辛料の溶媒抽出によって得られる抽出物である。オレオレジンは、食品、栄養補助食品、および製薬業界において、幅広い適用分野を有する。インドは香辛料の主要生産国の1つである。高品質な製品を好む傾向の高まりによって、香辛料の使用は、急速にオレオレジンおよび香辛料油(spice oil)に取って代わられている。未加工の香辛料の代わりにこれらの加工製品を輸出することは重要な付加価値となるであろう。より少量の所望の材料を使用して、同等の効果を得られることから、オレオレジンは未加工状態または挽いて粉末状の香辛料よりも経済的である。
【0003】
いくつかの経済的に重要な特性に関して、オレオレジンは未加工の香辛料よりも好ましい。これらの特性のいくつかは、香辛料粉末と比較して、微生物学的有利性、風味と辛味の均一性、保存および移動の容易さを含むが、それらに限定されない。香辛料のオレオレジンは、特に、食肉缶詰、ソース、清涼飲料、医薬品、栄養補助食品、動物用製剤、香料および石鹸、タバコ、製菓および製パン業界など、大規模な食品加工および香辛料業界で、食品の香味付け(flavoring)に幅広く使用される。
【0004】
オレオレジンは、複数の溶媒を使用した香辛料の溶媒抽出とその後の蒸留によって、製造され、その結果、粘性のある液体オレオレジンとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、オレオレジンは、主に液体の形態で入手可能である。液体状のオレオレジンは、様々な不利な点/欠点を有する。主な欠点は、安定性、および、高粘性液体であることによる、粉末製剤(powder formulation、粉末の配合物、調合物)の直接原材料としての使用における制限である。その高粘性により、オレオレジンを含む製品の製造中に、液体オレオレジンを扱うことは極めて困難である。さらに、その高粘性により、粉末状の完成品における液体オレオレジンの均一性を保証することは困難である。粉末製剤の中に塊が形成する可能性があり、製造中の取り扱いを困難にする。さらに、品質問題につながることもある。オレオレジンは液体の形態では安定性が低下し、安定性は3か月から12か月の範囲となるであろう。液体オレオレジンは、様々な医療用用途および栄養補助食品用途のカプセル化を限定する。多くの例では、かかる使用の前にオレオレジンは粉末の形態に変えなければならない。よって、これらすべての問題を軽減するために、オレオレジンの粉末形態はより重要性を増している。
【0006】
液体のオレオレジンを粉末に変える(convert)ために現在採用されている方法は数少ない。
A.オレオレジンは、従来、乾燥運搬装置で混合され/投入され、粉末形状に変えられる。
B.マイクロカプセル化は、オレオレジンを粉末に変えるために使用される別の方法である。揮発性油を保つことでオレオレジンの安定性を増強すること、および、粉末製剤に加えやすい(amicable、親和的である)ことで知られている。マイクロカプセル化
は直接カプセルにすることが可能であり、医薬製品または栄養補助食品に使用される。さらに、粉末化された原材料が有用である、紛体配合および調合の工程において有用である。
C.マルチデキストリンまたはアラビアゴムによる噴霧乾燥は、粉末オレオレジンを得るもう1つの方法である。
【0007】
しかし、上記方法による粉末完成品におけるオレオレジンの最高濃度は30%を下回る。蒸留/オレオレジン低濃度により、一回の投与量の体積(dose volume)が増加し、例えば栄養補助食品や医薬品製剤などの多くの用途での使用を制限し、結果として不十分な生体利用効率をもたらす。
【0008】
現在、より高濃度の(濃度が30%を超える)オレオレジンを含む粉末形態のオレオレジン製品は存在しない。よって、粉末形態の高濃縮オレオレジンに対する必要性がある。粉末形態の高濃縮オレオレジンは、液体オレオレジンを含む調合物に関連する問題の多くを解決するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、一つの態様において、本発明は増強された安定性およびより向上した生体利用効率を有する、高濃縮粉末化オレオレジン組成物(高濃度で粉末化されたオレオレジン組成物)を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、オレオレジン、有機酸/無機酸、及び、無機水酸化物(mineral hydroxide)/無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩を含む高濃縮粉末オレオレジン組成物を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、オレオレジン、及び、無機水酸化物/無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩を含む高濃縮粉末オレオレジン組成物を提供し、前記組成物は有機酸/無機酸を含まない。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は高濃縮粉末オレオレジン組成物の処理(preparation、調整、準備)のための方法(process、工程)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は実施例1の組成物の、ウコンオレオレジン粉末のHPLCクロマトグラフィーのチャートを示している。
【
図2】
図2は実施例5の組成物の、ウコンオレオレジン粉末のHPLCクロマトグラフィーのチャートを示している。
【
図3】
図3は未調合のウコンオレオレジンと、実施例1の調合済の粉末ウコンオレオレジンとの溶解度の比較を示している。
【
図4】
図4は未調合のジンジャーオレオレジンと、実施例22の調合済の粉末ジンジャーオレオレジンとの溶解度の比較を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、本発明の様々な態様が、より完全に理解され認識されるために、好ましい、および、随意的な実施形態に関連して、ここに詳細に記載される。
【0015】
[オレオレジンの供給源(source)]
オレオレジンは、個別の薬草または薬草/香辛料部分を使用して、有機溶媒を用いて抽出されることもまた可能である。薬草部分は、乾燥され、所望の粒子サイズに微粉化(p
ulverize)され、有機溶媒または超臨界CO2を使用して抽出される。抽出は、溶媒を濾過器または反応器内の粉末に挽かれた(grind)薬草/香辛料部分を通過させて濾過することによって実施される。これにより、液体または半固体の抽出物が生じる。オレオレジン、ガムレジン(gum resin)、レジン(resin、樹脂)は一般に市販されている。
【0016】
本発明に使用されるオレオレジンはユニバーサル オレオレジンズ(Universal Oleoresins)およびカンコー イングリディエント リミテッド(Kancor Ingredients Ltd.)から購入または入手される。
【0017】
[用語の略称]
説明の中で使用されている用語「調合された(formulated)、製剤、調合物」は、オレオレジンおよび無機物/酸を含む本発明の組成物を意味する。説明の中で使用されている用語「未調合、調合されていない(unformulated)、製剤化されていない、未調合物」は、オレオレジンのみを含む組成物を意味する。
【0018】
本発明は、それぞれのオレオレジンと比較して増強された安定性を有する高度に濃縮され粉末化されたオレオレジン組成物を開示している。したがって、ある実施形態では、本発明は、高濃縮粉末オレオレジン組成物が、増強された安定性および向上した生体利用効率を有する、オレオレジン、有機酸/無機酸、ならびに、無機水酸化物/無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩を含むことを開示している。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、オレオレジン、および、無機水酸化物/無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩を含む高濃縮粉末オレオレジン組成物を開示し、前記組成物は有機酸/無機酸を含まない。
【0020】
オレオレジンは香辛料/植物、および薬草オレオレジンを含む。薬草オレオレジンとして、以下に限定されないオレオレジン、すなわち、クローブオレオレジン、カレーリーフオレオレジン、ペッパーオレオレジン、カルダモンオレオレジン、チリオレオレジン、トウガラシオレオレジン(Capsicum Oleoresin)、パプリカオレオレジン、ジンジャーオレオレジン(Ginger Oleoresin、ショウガ オレオレジン)、クルクマキサンソリザオレオレジン(Curcuma xanthorrhiza Oleoresin)、ウコンオレオレジン(Tarmeric Oleoresin、ターメリック オレオレジン)、コリアンダーオレオレジン、クミンオレオレジン、セロリオレオレジン、ディルオレオレジン、フェヌグリークオレオレジン(Fenugreek oleoresin)、ガーリックオレオレジン、メースオレオレジン(Mace Oleoresin)、ガルシニア抽出物、フェンネルオレオレジン、タマリンドオレオレジン、シナモンオレオレジン、ナツメグオレオレジン、カシアオレオレジン、ガランガルオレオレジン、パセリオレオレジン、タイムオレオレジン、マリーゴールドオレオレジン、ローズマリーオレオレジン、マスタードオレオレジン、カレーパウダーオレオレジン、バニラオレオレジンのいずれかを単独または組み合わせて含む。組成物中に存在するオレオレジンの量は、30~90%、好ましくは70~90%の範囲である。
【0021】
好適なオレオレジンはウコンオレオレジン、マリーゴールドオレオレジン、フェヌグリークオレオレジン、シナモンオレオレジン、ナツメグオレオレジン、パプリカオレオレジン、トウガラシオレオレジン、および、ジンジャーオレオレジンのいずれかを単独または組み合わせて含む。
【0022】
無機水酸化物/酸化物/塩化物/炭酸塩は、水酸化カルシウム、二酸化マンガン/酸化マンガン、水酸化マグネシウム/酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化亜鉛/酸
化亜鉛、水酸化鉄/酸化鉄および水酸化アルミニウム、水酸化セレン/酸化セレン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム/酸化カリウムから選択されるが、それらに限定されない。最も好ましくは水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムが単独または組み合わせて使用される。水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムは共に粉末形態であり、純度は10-99.9%であり、最終組成物中のそれらの濃度はそれぞれ0.01-50%および0.01-50%の範囲である。
【0023】
有機酸/無機酸は、プロピオン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、安息香酸、リン酸および炭酸から、単独または組み合わせて選択される。最も好ましいものはプロピオン酸である。有機酸の濃度は0.001~20%、好ましくは2~6%の範囲である。
【0024】
従って、好適な実施形態において、本発明は以下を含む高濃縮粉末オレオレジン組成物を提供する。
a)30~90%の量のオレオレジン、
b)0.001~20%の量の有機酸、および、
c)0.01~50%の量の無機水酸化物および/または無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩。
【0025】
本発明はさらに、以下を含む高濃縮粉末オレオレジン組成物を提供する。
a)30~90%の量のオレオレジン、および、
b)0.01~50%の量の無機水酸化物および/または無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩。
ここで、前記組成物は有機酸/無機酸を含まないことを特徴とする。
【0026】
高濃縮粉末オレオレジン組成物は、60~90%のオレオレジンを含み、オレオレジンとカルシウムおよび/または水酸化マグネシウム粉末とを反応させることによって処理される。前記組成物は、オレオレジンを特定の温度範囲で特定の時間、水酸化カルシウムおよび/または水酸化マグネシウムと反応させる独自の工程によって得られる。
【0027】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明は、高濃縮粉末オレオレジン組成物の処理に関する工程を説明しており、その工程は以下のステップを含む。
a)十分な量のオレオレジンを25~80℃、より具体的には40~50℃の温度に加熱するステップ。
b)有機酸/無機酸をステップ(a)に添加し、続いて混合するステップ。
c)ステップ(b)に無機水酸化物/無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩を添加し、続いて5~30分間、配合(blend)/混合(mix)するステップ、および、
d)ステップ(c)の混合物を冷却し、続いて自由流動性粉末に粉末化するステップ。
【0028】
本発明は、有機酸/無機酸を使用しない、高濃縮粉末オレオレジン組成物の処理に関する工程をさらに説明しており、その工程は以下のステップを含む。
a) 十分な量のオレオレジンを25~80℃、より具体的には40~50℃の温度に加熱するステップ。
b)ステップ(a)に無機水酸化物/無機酸化物/無機塩化物/無機炭酸塩を添加し、続いて5~30分間、配合/混合するステップ、および、
c)ステップ(b)の混合物を冷却し、続いて自由流動性粉末に粉末化するステップ。
【0029】
上記工程において、沈降シリカ/ステアリン酸マグネシウムを任意で添加することができる。
【0030】
得られた組成物は、60%を超えるオレオレジンを単独または組み合わせで含む自由流動性粉末(free flowing powder)である。この組成物は、高度に安定的であり、高濃縮のオレオレジンを有する粉末製剤と配合(blend)することが容易である。
【0031】
さらに組成物は、流動特性を高め、最終的なオレオレジンの濃度を調整するために、薬学的におよび栄養補助食品として承認された、担体、賦形剤、滑剤(gliding agent)、固結防止剤、結合剤、ポリマー(天然または合成)を含むことができる。
【0032】
多量のオレオレジンを含む前記組成物は、それぞれの液体オレオレジンと比較して高い安定性を有し、液体オレオレジンは適さないであろう数多くの用途に容易に使用できる。液体オレオレジンは、元来粘性で粘着性があり、したがって、特に、栄養補助食品および医薬品製剤において、液体オレオレジンを含む製品の製造中の取扱いが極めて難しい。さらに、液体オレオレジンはその粘性により、製剤の母材に分散することが困難であり、同様の問題が粉末製剤の調合においても残っている。先に述べた粉末オレオレジンの高濃縮形態は、栄養補助食品および/または医薬品用途のための直接カプセル化または直接錠剤化(tableting)、食品および飲料用途、医療用食品などの様々な用途に使用でき、さらには人および動物の飲食用に、他の乾燥成分との調合が可能となる。
【0033】
食品用途には、治療効果のある量の植物化学物質を送達するためのティーバッグ、コーヒーバッグおよび他の飲料中の成分としての使用が含まれる。
【0034】
本発明の前記組成物は、リポソーム技術、エマルジョンゲル技術、浸透増強剤、生体利用可能な増強剤、腸溶性コーティング、逆腸溶性コーティング、味覚マスキングおよび制御された放出技術を含むコーティング技術を用いてさらに調合することができる。
【0035】
本発明の高濃縮粉末オレオレジン組成物は、医薬品または栄養補助食品またはサプリメントのいずれかとして、ならびに食品原材料、飲料原材料、飼料原材料および医薬品原材料として、心血管疾患、認知疾患、腸疾患、口腔衛生、眼疾患、皮膚疾患、変形性関節症、肥満、糖尿病、炎症性疾患、呼吸器疾患、疼痛状態、脳疾患、肝臓の健康状態、腎臓の健康状態、免疫障害などの様々な人および動物の健康用途に使用することができる。
【0036】
本発明の高濃縮粉末オレオレジン組成物は、カプセル、錠剤、サッシェ(sachet、小袋)、グミ、チョコレート、キャンディー、飲料、インスタント食品、食品混合物、飼料混合物、飼料原材料、食品原材料、ゲル、クリーム、軟膏、スプレー、坐剤などを含むがそれらに限定されない、すべての可能な剤形にさらに調合することができる。
【0037】
本発明の高濃縮粉末オレオレジン組成物は、食品の香味料として使用することができる。
【0038】
本発明の高濃縮粉末オレオレジン組成物は、人、動物の健康および農業を目的として使用することができる。
【0039】
本発明の高濃縮粉末オレオレジン組成物は、より高い安定性、製造中の取扱いの容易さ、輸送の容易さ、栄養補給食品および医薬品の剤形中のオレオレジンの高度な濃縮による投与量の減少、高用量濃度(higher dose concentration)のオレオレジンを含むカプセルまたは錠剤形態での製剤の容易さ、および塊が発生する問題を生じさせずに他の成分との配合が容易であるといった数多くの有益性を有する。
【0040】
本発明の実施形態を図示したいくつかの典型的な例がここに提供される。ただし、これ
らは例示目的に過ぎず、本発明の要素を限定するとみなされるべきではない。
【実施例0041】
実施例1:高濃縮粉末ウコンオレオレジンの調整(preparation)のための組成
【0042】
【0043】
実施例2:実施例1で説明したウコンオレオレジン粉末組成物のクルクミノイドのHPLC分析の結果
【0044】
【0045】
図1は、実施例1の組成のウコンオレオレジン粉末のHPLCクロマトグラフィーのチャートを表している。
【0046】
実施例3:高濃縮粉末ウコンオレオレジンの調整のための組成
【0047】
【0048】
実施例4:実施例3で説明したウコンオレオレジン粉末組成物のクルクミノイドのHPLC分析の結果
【0049】
【0050】
実施例5:高濃縮粉末ウコンオレオレジンの調整のための組成
【0051】
【0052】
実施例6:実施例5で説明したウコンオレオレジン粉末組成物のクルクミノイドのHPLC分析の結果
【0053】
【0054】
図2は、実施例5の組成のウコンオレオレジン粉末のHPLCクロマトグラフィーのチャートを表している。
【0055】
実施例7:高濃縮粉末ウコンオレオレジンの調整のための組成
【0056】
【0057】
実施例8:高濃縮粉末ウコンオレオレジンの調整のための組成
【0058】
【0059】
実施例9:高濃縮粉末ウコンオレオレジンの調整のための組成
【0060】
【0061】
実施例10:高濃縮粉末ウコンオレオレジンの調整のための組成
【0062】
【0063】
実施例11:実施例1の粉末化したウコンオレオレジン組成物の溶解度と、未調合のウコンオレオレジンの溶解度の比較
【0064】
【0065】
図3は、実施例1の粉末ウコンオレオレジン組成物と調合していないウコンオレオレジンの溶解度の比較を表している。活性成分の溶解度は、より高い生体利用効率を示している。溶解度が増強/向上されると、生体利用効率が増強されるであろう。
図3の調合済の
ウコンオレオレジンの淡黄色の溶液は、粉末オレオレジン製品からのクルクミノイドの高い溶解度を示している。したがって、
図3は粉末オレオレジン製品からのクルクミノイドが、調合されていない(製剤化されていない)ウコンオレオレジンよりも高い生体利用効率を有していることを明確に示している。
【0066】
実施例12:高濃縮粉末ウコンオレオレジン組成物(有機酸/無機酸を含む)の調整の工程は、以下のステップを含む。
a)攪拌機に取り付けられた反応器を清浄化する。
b)ステップ(a)の反応器にウコンオレオレジンを添加する。
c)ステップ(b)にプロピオン酸を添加し、続いて攪拌する。
d)25~80℃の温度範囲で、ステップ(c)に水酸化マグネシウム/水酸化カルシウムを添加し、続いて10~30分の間、配合/混合する。
e)ステップ(d)の混合物をステンレス鋼トレイに搬送し、1~24時間乾燥させる
f)ステップ(e)の硬質な混合物を自由流動性粉末に粉末化する。
g)ステップ(f)にMCC(微結晶性セルロース)および二酸化ケイ素を任意で添加する。
h)得られた製品をふるいにかけ、包装する。
【0067】
実施例13:高濃縮粉末ウコンオレオレジン組成物(有機酸/無機酸を含まない)の調整のための工程は、以下のステップを含む。
a)攪拌機に取り付けられた反応器を清浄化する。
b)ステップ(a)の反応器にウコンオレオレジンを添加する。
c)25~80℃の温度範囲で、ステップ(b)に水酸化マグネシウム/水酸化カルシウムを添加し、続いて10~30分の間、配合/混合する。
d)ステップ(c)の混合物をステンレス鋼トレイに搬送し、1~24時間乾燥させる
e)ステップ(d)の硬質な混合物を自由流動性粉末に粉末化する。
f)ステップ(e)にMCC(微結晶性セルロース)および二酸化ケイ素を任意で添加する。
g)得られた製品をふるいにかけ、包装する。
【0068】
実施例14:高濃縮粉末マリーゴールドオレオレジンの調整のための組成
【0069】
【0070】
実施例15:高濃縮粉末マリーゴールドオレオレジンの調整のための組成
【0071】
【0072】
実施例16:高濃縮粉末フェヌグリークオレオレジンの調整の組成
【0073】
【0074】
実施例17:高濃縮粉末フェヌグリークオレオレジンの調整のための組成
【0075】
【0076】
実施例18:高濃縮粉末シナモンオレオレジンの調整のための組成
【0077】
【0078】
実施例19:高濃縮粉末ナツメグオレオレジンの調整のための組成
【0079】
【0080】
実施例20:高濃縮粉末パプリカオレオレジンの調整の組成
【0081】
【0082】
実施例21:高濃縮粉末トウガラシオレオレジンの調整のための組成
【0083】
【0084】
実施例22:高濃縮粉末ジンジャーオレオレジンの調整のための組成
【0085】
【0086】
実施例23:実施例22で説明したジンジェロールオレオレジン粉末組成物のHPLC分析結果
【0087】
【0088】
図4は、未調合のジンジャーオレオレジンと、実施例22の調合済の粉末ジンジャーオレオレジンの溶解度の比較を表している。活性成分の溶解度は、より高い生体利用効率を示している。溶解度が増強/向上されると、生体利用効率が増加されよう。
図4の調合済のジンジャーオレオレジンの、淡黄色の溶液は、粉末オレオレジン製品からのジンジェロールの高い溶解度を示している。したがって、
図4は粉末オレオレジン製品からのジンジェロールが、未調合のジンジャーオレオレジンよりも高い生体利用効率を有していることを明確に提示している。
【0089】
実施例24:高濃縮粉末ジンジャーオレオレジンの調整のための組成
【0090】
【0091】
実施例26:実施例22の粉末ジンジャーオレオレジン組成物と、(マイクロカプセル化された)市販製品との比較、および、本発明の組成物における活性成分がより高い濃度であることの証拠
【0092】
【0093】
実施例27:実施例22の調整済み粉末ジンジャーオレオレジン組成物と、未調整ジンジャーオレオレジンとの比較
【0094】
【0095】
実施例28:高濃縮粉末ジンジャーオレオレジン組成物(有機酸/無機酸を含む)の調整の工程は、以下のステップを含む。
a)攪拌機に取り付けられた反応器を清浄化する。
b)ジンジャーオレオレジンを25~50℃の間の温度に加熱する。
c)ステップ(b)にクエン酸を添加し、続いて配合する。
d)ステップ(c)に水酸化カルシウムを添加し、続いて10~30分の間、配合/混合する
e)ステップ(d)の混合物をステンレス鋼のトレイに搬送し、1~24時間乾燥させる
f)ステップ(e)の硬質な混合物を自由流動性粉末に粉末化する。
g)ステップ(f)にMCC(微結晶性セルロース)および二酸化ケイ素を添加する
h)得られた製品をふるいにかけ、包装する。
【0096】
実施例29:高濃縮粉末ジンジャーオレオレジン組成物(有機酸/無機酸を含まない)を調整するための方法は、以下のステップを含む。
a)攪拌機に取り付けられた反応器を清浄化する。
b)ステップ(a)の反応器にジンジャーオレオレジンを添加し、続いて加熱する。
c)25~50℃の温度範囲で水酸化カルシウムを添加し、続いて10~30分の間、配合/混合する。
d)ステップ(c)の混合物をステンレス鋼のトレイに搬送し、1~24時間乾燥させる。
e)ステップ(d)の硬質な混合物を自由流動性粉末に粉末化する。
f)ステップ(e)にMCC(微結晶性セルロース)および二酸化ケイ素を添加する。
g)得られた製品をふるいにかけ、包装する
【0097】
実施例30:ウコンオレオレジンの未調合の液体と、調合済みの粉末との比較安定性試験データ
【0098】
カプセル、錠剤、サッシェ、グミ、チョコレート、キャンディー、マサラ混合物、食品混合物、飼料混合物、インスタント食品、飲料、ゲル、クリーム、軟膏、スプレー、坐剤、などの様々な剤形に調合される、請求項1から3のいずれかに記載の粉末オレオレジン組成物。
医薬品または栄養補助食品またはサプリメントのいずれかとして、ならびに食品原材料、飲料原材料、飼料原材料および医薬原材料として、心血管疾患、認知疾患、腸疾患、口腔衛生、眼疾患、皮膚疾患、変形性関節症、肥満、糖尿病、炎症性疾患、呼吸器疾患、疼痛状態、脳疾患、肝臓の健康状態、腎臓の健康状態、免疫障害から選択される、様々な人および動物の治療、および、エネルギー持続性の増強に使用される、請求項4に記載の粉末オレオレジン組成物。