(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024025
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】悪性腫瘍治療用製剤及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20220201BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/4412 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20220201BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20220201BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20220201BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20220201BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20220201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220201BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220201BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220201BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220201BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220201BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20220201BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220201BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K45/00
A61K31/513
A61K31/4412
A61K31/53
A61K31/7068
A61K31/337
A61K31/4745
A61K31/475
A61K33/24
A61K31/282
A61K39/395 T
A61K31/436
A61K31/4375
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61P1/00
A61P1/16
A61P13/10
A61P25/00
A61P15/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183080
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2018503434の分割
【原出願日】2017-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2016042662
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 晃敬
(72)【発明者】
【氏名】五月女 裕
(57)【要約】 (修正有)
【課題】顕著に優れた抗腫瘍効果を示し、副作用の少ないFGFR阻害剤を用いた新規な癌治療方法を提供する。
【解決手段】一般式(I)
[式中、R
1は、同一又は相異なって、C
1-C
6アルキル基を示し;X
1及びX
2は、各々独立してN又はCHであり;Y及びZは特定の基である。]で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含有することを特徴とする、悪性腫瘍の治療のための組合せ製剤。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
[式中、R
1は、同一又は相異なって、C
1-C
6アルキル基を示し;
X
1及びX
2は、各々独立してN又はCHであり;
Yは、一般式(A)
【化2】
で表される基(ここで、
【化3】
で表される2価の部分は、含窒素C
3-C
10ヘテロシクロアルキレン基を示す)、一般式(B)
【化4】
で表される基(ここで、
【化5】
で表される2価の部分は、C
3-C
10シクロアルキレン基を示す)、又は、一般式(C)
【化6】
で表される基(ここで、
【化7】
で表される2価の部分は、C
6-C
12アリーレン基を示す)であり;
R
2は、水素原子、C
2-C
6アルキニル基、-C(=O)OR
x、-C(=O)N(R
x)(R
y)、ヒドロキシC
1-C
6アルキル基、ジ(C
1-C
6アルキル)アミノC
1-C
6アルキル基、又はR
3を有していてもよいC
2-C
9ヘテロアリール基であり;
R
3は、C
1-C
6アルキル基、又はジ(C
1-C
6アルキル)アミノC
1-C
6アルキル基であり;
Zは、-C(R
4)=C(R
5)(R
6)、又は-C≡C-R
7であり;
R
4、R
5及びR
6は、同一又は相異なって、水素原子、ハロゲン原子、R
8を有していてもよいC
1-C
6アルキル基、又は一般式(D)
【化8】
で表される基(ここで、
【化9】
で表される1価の部分は、含窒素C
3-C
10ヘテロシクロアルキル基を示す)であり、
R
7は、水素原子、C
1-C
6アルキル基、又はヒドロキシC
1-C
6アルキル基であり;
R
8は、-OR
x、又は-N(R
x)(R
y)であり;
R
9は、C
1-C
6アルキル基、ハロゲン原子、又は-OR
xであり;
R
x及びR
yは、同一又は相異なって、水素原子、C
1-C
6アルキル基、C
3-C
10シクロアルキル基、ジ(C
1-C
6アルキル)アミノC
1-C
6アルキル基、又はC
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル基であり;
lは、0~3の整数であり;
mは、1~3の整数であり;
nは、0~2の整数である。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び
代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩
を含有することを特徴とする、悪性腫瘍の治療のための組合せ製剤。
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩が、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩である請求項1記載の組合せ製剤。
【請求項3】
他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩が、ピリミジン系代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、又は分子標的薬である請求項1又は2記載の組合せ製剤。
【請求項4】
ピリミジン系代謝拮抗剤が、5-フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、カペシタビン、及びゲムシタビンからなる群より選択される請求項3記載の組合せ製剤。
【請求項5】
ピリミジン系代謝拮抗剤1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を000.1~10モル投与することを特徴とする請求項3記載の組合せ製剤。
【請求項6】
アルカロイド系抗腫瘍剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、及びビンブラスチンからなる群より選択される請求項3記載の組合せ製剤。
【請求項7】
アルカロイド系抗腫瘍剤1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を0.01~200モル投与することを特徴とする請求項3記載の組合せ製剤。
【請求項8】
プラチナ製剤が、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンからなる群より選択される請求項3記載の組合せ製剤。
【請求項9】
プラチナ製剤1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を0.001~50モル投与することを特徴とする請求項3記載の組合せ製剤。
【請求項10】
分子標的薬が、低分子分子標的薬、及び抗体分子標的薬からなる群より選択される請求項3記載の組合せ製剤。
【請求項11】
抗体分子標的薬が、ラムシルマブ、及びベバシズマブからなる群より選択される請求項10記載の組合せ製剤。
【請求項12】
抗体分子標的薬1mgに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を0.005~1mg投与することを特徴とする請求項10記載の組合せ製剤。
【請求項13】
低分子分子標的薬が、エベロリムス、MK2206、及びトランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1,2-c]ピリド[3,4-e][1,3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノールからなる群より選択される請求項10記載の組合せ製剤。
【請求項14】
低分子分子標的薬1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を1~1000モル投与することを特徴とする請求項10記載の組合せ製剤。
【請求項15】
他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩が葉酸代謝拮抗剤である請求項1又は2記載の組合せ製剤。
【請求項16】
葉酸代謝拮抗剤がメトトレキサートである請求項15記載の組合せ製剤。
【請求項17】
他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がアルキル化剤である請求項1又は2記載の組合せ製剤。
【請求項18】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を同時に、別個に、又は連続して投与することを特徴とする、請求項1~17のいずれか1項記載の組合せ製剤。
【請求項19】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の投与経路が同じであるか、又は投与経路が異なる、請求項1~18のいずれか1項記載の組合せ製剤。
【請求項20】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物。
【請求項21】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の抗腫瘍効果増強剤。
【請求項22】
代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩と併用することを特徴とする、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む抗腫瘍剤。
【請求項23】
代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を投与された癌患者を治療するための、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む抗腫瘍剤。
【請求項24】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の抗腫瘍効果増強剤製造のための使用。
【請求項25】
代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の抗腫瘍効果を増強するための、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項26】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩とを、必要な患者に投与することを特徴とする、腫瘍の治療方法。
【請求項27】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、悪性腫瘍治療用キット。
【請求項28】
腫瘍が、肺癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆道癌、膵臓癌、結腸直腸癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、甲状腺癌、骨・軟部腫瘍、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、頭頸部癌、脳腫瘍、及び皮膚癌からなる群より選択される、請求項1~19のいずれか1項記載の組合せ製剤、請求項20記載の医薬組成物、請求項21記載の抗腫瘍効果増強剤、請求項22若しくは23記載の抗腫瘍剤、請求項24若しくは25記載の使用、又は請求項26記載の方法。
【請求項29】
腫瘍が、胃癌、胆道癌、子宮癌、膀胱癌、及び脳腫瘍からなる群より選択される、請求項1~19のいずれか1項記載の組合せ製剤、請求項20記載の医薬組成物、請求項21記載の抗腫瘍効果増強剤、請求項22若しくは23記載の抗腫瘍剤、請求項24若しくは25記載の使用、又は請求項26記載の方法。
【請求項30】
腫瘍が胃癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がパクリタキセル、ドセタキセル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、オキサリプラチン、シスプラチン、及びラムシルマブからなる群より選択される、請求項1~19のいずれか1項記載の組合せ製剤、請求項20記載の医薬組成物、請求項21記載の抗腫瘍効果増強剤、請求項22若しくは23記載の抗腫瘍剤、請求項24若しくは25記載の使用、又は請求項26記載の方法。
【請求項31】
腫瘍が胆道癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がゲムシタビン、及びシスプラチンからなる群より選択される、請求項1~19のいずれか1項記載の組合せ製剤、請求項20記載の医薬組成物、請求項21記載の抗腫瘍効果増強剤、請求項22若しくは23記載の抗腫瘍剤、請求項24若しくは25記載の使用、又は請求項26記載の方法。
【請求項32】
腫瘍が膀胱癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がメトトレキサート、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、アテゾリズマブからなる群より選択される、請求項1~19のいずれか1項記載の組合せ製剤、請求項20記載の医薬組成物、請求項21記載の抗腫瘍効果増強剤、請求項22若しくは23記載の抗腫瘍剤、請求項24若しくは25記載の使用、又は請求項26記載の方法。
【請求項33】
腫瘍が脳腫瘍であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩が、イリノテカン、ベバシズマブ、及びテモゾロミドからなる群より選択される、請求項1~19のいずれか1項記載の組合せ製剤、請求項20記載の医薬組成物、請求項21記載の抗腫瘍効果増強剤、請求項22若しくは23記載の抗腫瘍剤、請求項24若しくは25記載の使用、又は請求項26記載の方法。
【請求項34】
腫瘍が子宮体癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩が、5―フルオロウラシル、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドキソルビシン、シクロフォスファミドからなる群より選択される、請求項1~19のいずれか1項記載の組合せ製剤、請求項20記載の医薬組成物、請求項21記載の抗腫瘍効果増強剤、請求項22若しくは23記載の抗腫瘍剤、請求項24若しくは25記載の使用、又は請求項26記載の方法。
【請求項35】
治療対象の腫瘍においてFGFRが変異している、請求項1~19のいずれか1項記載の組合せ製剤、請求項20記載の医薬組成物、請求項21記載の抗腫瘍効果増強剤、請求項22若しくは23記載の抗腫瘍剤、請求項24若しくは25記載の使用、又は請求項26記載の方法。
【請求項36】
治療対象の腫瘍が他の抗腫瘍効果を有する化合物に対して耐性を有している、請求項1~19のいずれか1項記載の組合せ製剤、請求項20記載の医薬組成物、請求項21記載の抗腫瘍効果増強剤、請求項22若しくは23記載の抗腫瘍剤、請求項24若しくは25記載の使用、又は請求項26記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪性腫瘍の治療のための組合せ製剤及び医薬組成物に関し、より具体的には特定のFGFR阻害剤と抗腫瘍剤との併用による悪性腫瘍の治療のための製剤及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平均寿命の延長等に伴い、疾患による死亡原因として癌、すなわち悪性腫瘍が高い比率を占めるようになっている。悪性腫瘍の治療法としては、大きく分けて外科的手術、放射線療法、化学療法が挙げられる。化学療法に用いられる薬剤、すなわち抗腫瘍剤としては、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤等の他、抗体又は低分子化合物の分子標的薬が開発されている。
【0003】
また、いくつかのシグナル伝達経路の異常と発癌との関連が報告されており、線維芽細胞増殖因子(FGF;fibroblast growth factor)/線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR;fibroblast growth factor receptor)シグナル伝達の異常とヒトの各種癌との関連性についても報告がある。ヒトの癌におけるFGF/FGFRシグナルの異常な活性化は、FGFRの過剰発現及び/又は遺伝子増幅、遺伝子変異、染色体転座、又はリガンドであるFGFの過剰産生によるオートクリン又はパラクリン機構に起因するとされている(非特許文献1、2、3)。また、このようなシグナル伝達異常は、ヒトの癌における既存の化学療法抗腫瘍剤又は他の受容体型チロシンキナーゼ阻害薬による治療に対する抵抗性の原因の1つとされている(非特許文献4)。
【0004】
従って、FGF/FGFRシグナル伝達を標的とする療法は、既存の化学療法抗腫瘍剤又は他の受容体型チロシンキナーゼ阻害薬を含む分子標的薬の薬効を増強する薬剤として、或いはこれらに治療抵抗性となった癌腫や不応性の癌腫に対し、単独又は他の薬剤との併用により有効な治療手段を提供できるものと期待される。現在、抗腫瘍剤として複数のFGFR阻害剤の臨床開発が進行しており、例えばAZD4547では、5-FU、シスプラチン、抗EGFR抗体、ドセタキセル、等の他の抗腫瘍剤との併用試験も実施されている(非特許文献5、6)。また、ピリミジン系代謝拮抗剤であるゲムシタビンについて、FGFR阻害剤との併用が有望であることが示唆されている(非特許文献7)。
【0005】
一方、FGFR阻害効果を有する二置換ベンゼンアルキニル化合物が報告されており(特許文献1)、これらの化合物が特定のFGFR2変異を持つ癌に有効であること(特許文献2)、投与スケジュールとして間歇投与が有用であり得ること(特許文献3)も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2013/108809パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2015/008844パンフレット
【特許文献3】国際公開WO2015/008839パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Clin. Oncol. 24, 3664-3671 (2006)
【非特許文献2】Mol. Cancer Res. 3, 655-667 (2005)
【非特許文献3】Cancer Res., 2085-2094 (2010)
【非特許文献4】Nature. 26;487(7408):505-9 (2012)
【非特許文献5】Clin Cancer Res. 2572-83 (2013)
【非特許文献6】Oncotarget. 2009-22 (2015)
【非特許文献7】Drug Resistance Updates 9(2006),1-18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
治療効果の高い抗腫瘍剤であっても、副作用や毒性が高いものは、慎重に使用することが必要であり、場合によっては使用できない場合もある。また、患者によって効果に違いが見られることや、同じ抗腫瘍剤の長期投与によって、効果が低下する場合があることも知られている。
本発明は、顕著に優れた抗腫瘍効果を示し、副作用の少ないFGFR阻害剤を用いた新規な癌治療方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、一般式(I)で表される化合物と他の抗腫瘍効果を有する化合物の併用について検討したところ、一般式(I)で表される化合物又は他の抗腫瘍効果を有する化合物を単独で使用する場合と比較して、顕著な毒性の増悪を示すことなく、さらに抗腫瘍効果が顕著に増強することを見出した。
すなわち本発明は、次の[1]~[36]を提供するものである。
【0010】
[1]一般式(I)
【化1】
[式中、R
1は、同一又は相異なって、C
1-C
6アルキル基を示し;
X
1及びX
2は、各々独立してN又はCHであり;
Yは、一般式(A)
【化2】
で表される基(ここで、
【化3】
で表される2価の部分は、含窒素C
3-C
10ヘテロシクロアルキレン基を示す)、一般式(B)
【化4】
で表される基(ここで、
【化5】
で表される2価の部分は、C
3-C
10シクロアルキレン基を示す)、又は、一般式(C)
【化6】
で表される基(ここで、
【化7】
で表される2価の部分は、C
6-C
12アリーレン基を示す)であり;
R
2は、水素原子、C
2-C
6アルキニル基、-C(=O)OR
x、-C(=O)N(R
x)(R
y)、ヒドロキシC
1-C
6アルキル基、ジ(C
1-C
6アルキル)アミノC
1-C
6アルキル基、又はR
3を有していてもよいC
2-C
9ヘテロアリール基であり;
R
3は、C
1-C
6アルキル基、又はジ(C
1-C
6アルキル)アミノC
1-C
6アルキル基であり;
Zは、-C(R
4)=C(R
5)(R
6)、又は-C≡C-R
7であり;
R
4、R
5及びR
6は、同一又は相異なって、水素原子、ハロゲン原子、R
8を有していてもよいC
1-C
6アルキル基、又は一般式(D)
【化8】
で表される基(ここで、
【化9】
で表される1価の部分は、含窒素C
3-C
10ヘテロシクロアルキル基を示す)であり、
R
7は、水素原子、C
1-C
6アルキル基、又はヒドロキシC
1-C
6アルキル基であり;
R
8は、-OR
x、又は-N(R
x)(R
y)であり;
R
9は、C
1-C
6アルキル基、ハロゲン原子、又は-OR
xであり;
R
x及びR
yは、同一又は相異なって、水素原子、C
1-C
6アルキル基、C
3-C
10シクロアルキル基、ジ(C
1-C
6アルキル)アミノC
1-C
6アルキル基、又はC
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル基であり;
lは、0~3の整数であり;
mは、1~3の整数であり;
nは、0~2の整数である。]
で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び
代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩
を含有することを特徴とする、悪性腫瘍の治療のための組合せ製剤。
[2]一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩が、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩である[1]記載の組合せ製剤。
[3]他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩が、ピリミジン系代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、又は分子標的薬である[1]又は[2]記載の組合せ製剤。
[4]ピリミジン系代謝拮抗剤が、5-フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、カペシタビン、及びゲムシタビンからなる群より選択される[3]記載の組合せ製剤。
[5]ピリミジン系代謝拮抗剤1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を000.1~10モル投与することを特徴とする[3]記載の組合せ製剤。
[6]アルカロイド系抗腫瘍剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、及びビンブラスチンからなる群より選択される[3]記載の組合せ製剤。
[7]アルカロイド系抗腫瘍剤1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を0.01~200モル投与することを特徴とする[3]記載の組合せ製剤。
[8]プラチナ製剤が、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンからなる群より選択される[3]記載の組合せ製剤。
[9]プラチナ製剤1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を0.001~50モル投与することを特徴とする[3]記載の組合せ製剤。
[10]分子標的薬が、低分子分子標的薬、及び抗体分子標的薬からなる群より選択される[3]記載の組合せ製剤。
[11]抗体分子標的薬が、ラムシルマブ、及びベバシズマブからなる群より選択される[10]記載の組合せ製剤。
[12]抗体分子標的薬1mgに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を0.005~1mg投与することを特徴とする[10]記載の組合せ製剤。
[13]低分子分子標的薬が、エベロリムス、MK2206、及びトランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1,2-c]ピリド[3,4-e][1,3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノールからなる群より選択される[10]記載の組合せ製剤。
[14]低分子分子標的薬1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を1~1000モル投与することを特徴とする[10]記載の組合せ製剤。
[15]他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩が葉酸代謝拮抗剤である[1]又は[2]記載の組合せ製剤。
[16]葉酸代謝拮抗剤がメトトレキサートである[15]記載の組合せ製剤。
[17]他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がアルキル化剤である[1]又は[2]記載の組合せ製剤。
[18]一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を同時に、別個に、又は連続して投与することを特徴とする、[1]~[17]記載の組合せ製剤。
[19]一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の投与経路が同じであるか、又は投与経路が異なる、[1]~[18]記載の組合せ製剤。
[20]一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物。
[21]一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の抗腫瘍効果増強剤。
[22]代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩と併用することを特徴とする、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む抗腫瘍剤。
[23]代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を投与された癌患者を治療するための、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む抗腫瘍剤。
[24]一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の抗腫瘍効果増強剤製造のための使用。
[25]代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の抗腫瘍効果を増強するための、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
[26]一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩とを、必要な患者に投与することを特徴とする、腫瘍の治療方法。
[27]一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、悪性腫瘍治療用キット。
[28]腫瘍が、肺癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆道癌、膵臓癌、結腸直腸癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、甲状腺癌、骨・軟部腫瘍、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、頭頸部癌、脳腫瘍、及び皮膚癌からなる群より選択される、[1]~[19]のいずれか記載の組合せ製剤、[20]記載の医薬組成物、[21]記載の抗腫瘍効果増強剤、[22]若しくは[23]記載の抗腫瘍剤、[24]若しくは[25]記載の使用、又は[26]記載の方法。
[29]腫瘍が、胃癌、胆道癌、子宮癌、膀胱癌、及び脳腫瘍からなる群より選択される、[1]~[19]のいずれか記載の組合せ製剤、[20]記載の医薬組成物、[21]記載の抗腫瘍効果増強剤、[22]若しくは[23]記載の抗腫瘍剤、[24]若しくは[25]記載の使用、又は[26]記載の方法。
[30]腫瘍が胃癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がパクリタキセル、ドセタキセル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、オキサリプラチン、シスプラチン、及びラムシルマブからなる群より選択される、[1]~[19]のいずれか記載の組合せ製剤、[20]記載の医薬組成物、[21]記載の抗腫瘍効果増強剤、[22]若しくは[23]記載の抗腫瘍剤、[24]若しくは[25]記載の使用、又は[26]記載の方法。
[31]腫瘍が胆道癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がゲムシタビン、及びシスプラチンからなる群より選択される、[1]~[19]のいずれか記載の組合せ製剤、[20]記載の医薬組成物、[21]記載の抗腫瘍効果増強剤、[22]若しくは[23]記載の抗腫瘍剤、[24]若しくは[25]記載の使用、又は[26]記載の方法。
[32]腫瘍が膀胱癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がメトトレキサート、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、アテゾリズマブからなる群より選択される、[1]~[19]のいずれか記載の組合せ製剤、[20]記載の医薬組成物、[21]記載の抗腫瘍効果増強剤、[22]若しくは[23]記載の抗腫瘍剤、[24]若しくは[25]記載の使用、又は[26]記載の方法。
[33]腫瘍が脳腫瘍であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩が、イリノテカン、ベバシズマブ、及びテモゾロミドからなる群より選択される、[1]~[19]のいずれか記載の組合せ製剤、[20]記載の医薬組成物、[21]記載の抗腫瘍効果増強剤、[22]若しくは[23]記載の抗腫瘍剤、[24]若しくは[25]記載の使用、又は[26]記載の方法。
[34]腫瘍が子宮体癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩が、5―フルオロウラシル、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドキソルビシン、シクロフォスファミドからなる群より選択される、[1]~[19]のいずれか記載の組合せ製剤、[20]記載の医薬組成物、[21]記載の抗腫瘍効果増強剤、[22]若しくは[23]記載の抗腫瘍剤、[24]若しくは[25]記載の使用、又は[26]記載の方法。
[35]治療対象の腫瘍においてFGFRが変異している、[1]~[19]のいずれか記載の組合せ製剤、[20]記載の医薬組成物、[21]記載の抗腫瘍効果増強剤、[22]若しくは[23]記載の抗腫瘍剤、[24]若しくは[25]記載の使用、又は[26]記載の方法。
[36]治療対象の腫瘍が他の抗腫瘍効果を有する化合物に対して耐性を有している、[1]~[19]のいずれか記載の組合せ製剤、[20]記載の医薬組成物、[21]記載の抗腫瘍効果増強剤、[22]若しくは[23]記載の抗腫瘍剤、[24]若しくは[25]記載の使用、又は[26]記載の方法。
【0011】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2016-042662号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抗腫瘍剤の副作用の発症を抑えつつ、高い抗腫瘍効果(特に、腫瘍縮小効果、増殖遅延効果(延命効果))を奏する癌治療を行うことが可能である。ひいては、癌患者の長期間の生存をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】化合物1とテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1)を単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。A:薬剤投与群及びコントロール群の相対腫瘍体積(RTV)を示す。
【
図1B】化合物1とS-1を単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。B:薬剤投与群及びコントロール群のマウスの体重変化率を示す。
【
図1C】化合物1とS-1を単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。C:第15日目における化合物1とS-1の単独又は併用での効果(T/C(%))を示す。
【
図2A】化合物1とパクリタキセルを単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。A:薬剤投与群及びコントロール群の相対腫瘍体積(RTV)を示す。
【
図2B】化合物1とパクリタキセルを単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。B:薬剤投与群及びコントロール群のマウスの体重変化率を示す。
【
図2C】化合物1とパクリタキセルを単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。C:第15日目における化合物1とパクリタキセルの単独又は併用での効果(T/C(%))を示す。
【
図3A】化合物1とシスプラチンを単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。A:薬剤投与群及びコントロール群の相対腫瘍体積(RTV)を示す。
【
図3B】化合物1とシスプラチンを単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。B:薬剤投与群及びコントロール群のマウスの体重変化率を示す。
【
図3C】化合物1とシスプラチンを単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。C:第11日目における化合物1とシスプラチンの単独又は併用での効果(T/C(%))を示す。
【
図4A】化合物1とゲムシタビンを単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。A:薬剤投与群及びコントロール群の相対腫瘍体積(RTV)を示す。
【
図4B】化合物1とゲムシタビンを単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。B:薬剤投与群及びコントロール群のマウスの体重変化率を示す。
【
図4C】化合物1とゲムシタビンを単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。C:第15日目における化合物1とゲムシタビンの単独又は併用での効果(T/C(%))を示す。
【
図5A】化合物1とエベロリムスを単独で又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。A:薬剤投与群及びコントロール群の相対腫瘍体積(RTV)を示す。
【
図5B】化合物1とエベロリムスの単独又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。B:薬剤投与群及びコントロール群のマウスの体重変化率を示す。
【
図5C】化合物1とエベロリムスの単独又は併用して用いた場合の抗腫瘍効果を示す。C:第15日目における化合物1とエベロリムスの単独又は併用での効果(T/C(%))を示す。
【
図6A】SNU-16細胞株の細胞増殖率に対する化合物1と5-FUとの併用効果を示す(5-FU:化合物1=1250:1の場合)。
【
図6B】SNU-16細胞株の細胞増殖率に対する化合物1と5-FUとの併用効果を示す(5-FU:化合物1=1000:1の場合)。
【
図6C】SNU-16細胞株の細胞増殖率に対する化合物1と5-FUとの併用効果を示す(5-FU:化合物1=500:1の場合)。
【
図7A】様々な癌腫に対する化合物1との併用効果をコンビネーションインデックス値で示す。A:種々の濃度の5-FUと化合物1との併用効果。
【
図7B】様々な癌腫に対する化合物1との併用効果をコンビネーションインデックス値で示す。B:種々の濃度のシスプラチンと化合物1との併用効果。
【
図7C】様々な癌腫に対する化合物1との併用効果をコンビネーションインデックス値で示す。C:種々の濃度のパクリタキセルと化合物1との併用効果。
【
図7D】様々な癌腫に対する化合物1との併用効果をコンビネーションインデックス値で示す。D:種々の濃度のゲムシタビンと化合物1との併用効果。
【
図8A】AKT阻害剤MK2206と化合物1との併用によってアポトーシスの誘導が生じることを示す。A:種々の濃度のMK2206と化合物1との併用効果。
【
図8B】AKT阻害剤MK2206と化合物1との併用によってアポトーシスの誘導が生じることを示す。B:種々の濃度の化合物1とMK2206との併用効果。
【
図9】ヒト子宮体癌株AN3CAにおいてAKT阻害剤MK2206と化合物1との併用によってアポトーシスの誘導が生じることを示す。
【
図10A】ヒト子宮体癌株AN3CAの細胞生存率に対する化合物1とエベロリムスとの併用効果を示す。
【
図10B】ヒト子宮体癌株AN3CAの細胞生存率に対する化合物1とMK2206との併用効果を示す。
【
図11】ヒト子宮体癌株AN3CA内のタンパク質AKT、ERK、mTOR及びS6のリン酸化に対する化合物1とエベロリムス又はMK2206との併用効果を示す。
【
図12A】ヒト非小細胞肺癌株HCC4006、NCI-H1650及びNCI-H322のEGFRの状態を示す。
【
図12B】HCC4006細胞株の細胞生存率に対する化合物1とゲフィチニブとの併用効果を示す。
【
図12C】NCI-H1650細胞株の細胞生存率に対する化合物1とゲフィチニブとの併用効果を示す。
【
図12D】NCI-H322細胞株の細胞生存率に対する化合物1とゲフィチニブとの併用効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、第一の実施形態として、上記一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有することを特徴とする、悪性腫瘍の治療のための組合せ製剤を提供する。
【0015】
本願明細書において「C1-C6アルキル基」とは、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1~4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基(C1-C4アルキル基)であり、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基である。
【0016】
本願明細書において「C3-C10シクロアルキル基」とは、炭素数3~10の単環式若しくは多環式のシクロアルキル基を示し、好ましくは炭素数3~6の単環式のシクロアルキル基(C3-C6シクロアルキル基)であり、具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、デカリル基等が挙げられ、好ましくはシクロプロピル基、シクロブチル基である。
【0017】
本願明細書において、一般式(A)
【化10】
(式中、R
2及びlは、前記と同義である)
で表される基の2価の部分(moiety)
【化11】
とは、窒素原子を少なくとも1個環内に含み、更に酸素原子又は硫黄原子から選択される同種又は異種のヘテロ原子を0~2個環内に含む、炭素数3~10の2価のヘテロシクロアルキレン基(含窒素C
3-C
10ヘテロシクロアルキレン基)を示し、好ましくは窒素原子を1~3個環内に含み、更に酸素原子を0~1個環内に含む炭素数3~5のヘテロシクロアルキレン基(含窒素C
3-C
5ヘテロシクロアルキレン基)であり、具体的にはアゼチジニレン基、ピロリジニレン基、ピペリジニレン基、ピペラジニレン基、モルホリニレン基、オクタヒドロキノリニレン基、オクタヒドロインドリレン基等が挙げられ、好ましくはアゼチジニレン基、ピロリジニレン基、ピペリジニレン基、ピペラジニレン基、モルホリニレン基である。
一般式(A)
【化12】
で表される基は、
【化13】
で表される2価の含窒素C
3-C
10ヘテロシクロアルキレン基上の窒素原子の一つが結合手を有し、もう一方の結合手が置換基(-(CH
2)
l-)に結合し、その環上には置換基R
2を有することを意味する。
【0018】
本願明細書において一般式(B)
【化14】
(式中、R
2及びlは、前記と同義である)
で表される基の2価の部分
【化15】
とは、炭素数3~10の単環式若しくは多環式の2価のシクロアルキレン基(C
3-C
10シクロアルキレン基)を示し、好ましくは炭素数3~6の単環式の2価のシクロアルキレン基(C
3-C
6シクロアルキレン基)であり、具体的にはシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、デカリレン基等が挙げられ、好ましくはシクロプロピレン基、(1,2-又は1,3-)シクロブチレン基である。
【0019】
一般式(B)
【化16】
は、
【化17】
で表される2価のC
3-C
10シクロアルキレン基の一つの結合手が隣接するアミノ基(NH)に結合し、もう一方の結合手が置換基(-(CH
2)
l-)に結合し、その環上には置換基R
2を有することを示す。
【0020】
本願明細書において一般式(C)
【化18】
(式中、R
2及びlは、前記と同義である)
で表される基の2価の部分
【化19】
とは、炭素数6~12の2価のアリーレン基(C
6-C
12アリーレン基)を示し、具体的にはフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、好ましくはフェニレン基である。
【0021】
一般式(C)
【化20】
は、
【化21】
で表される2価のC
6-C
12アリーレン基の一つの結合手が隣接するアミノ基(NH)と結合し、もう一方の結合手が置換基(-(CH
2)
l-)に結合し、その環上には置換基R
2を有することを示す。
【0022】
本願明細書において一般式(D)
【化22】
(式中、R
9、m及びnは、前記と同義である)
で表される基の1価の部分
【化23】
とは、窒素原子を少なくとも1個環内に含み、更に酸素原子又は硫黄原子から選択される同種又は異種のヘテロ原子を0~2個環内に含む炭素数3~10のヘテロシクロアルキル基(含窒素C
3-C
10ヘテロシクロアルキル基)を示し、好ましくは窒素原子を1~3個環内に含み、更に酸素原子を0~1個環内に含む炭素数3~5のヘテロシクロアルキル基(含窒素C
3-C
5ヘテロシクロアルキル基)であり、具体的にはアゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基、オクタヒドロキノリニル基、オクタヒドロインドリニル基等が挙げられ、好ましくはアゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリノ基である。
【0023】
一般式(D)
【化24】
は、
【化25】
で表される前記含窒素C
3-C
10ヘテロシクロアルキル基上の窒素原子の一つが置換基(-(CH
2)
m-)に結合し、その環上には置換基(-(R
9)
n)を有することを示す。
【0024】
本願明細書において「C2-C9ヘテロアリール基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる同種又は異種のヘテロ原子を1~3個含む、単環式又は二環式の炭素数2~9のヘテロアリール基を示し、好ましくは窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる同種又は異種のヘテロ原子を1~3個含む、単環式の炭素数2~5のヘテロアリール基(単環式C2-C5ヘテロアリール基)であり、具体的にはチエニル基、フリル基、ピロリル基、トリアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサジアゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソベンゾフリル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基等が挙げられ、好ましくは1,3,4-オキサジアゾリル基である。
【0025】
本願明細書において「C2-C6アルキニル基」とは、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を含む炭素数2~6の直鎖状又は分枝状のアルキニル基を示し、具体的にはエチニル基、2-プロピニル基、2-ヘキシニル基等が挙げられ、好ましくはエチニル基である。
【0026】
本願明細書において「ヒドロキシC1-C6アルキル基」とは、ヒドロキシ基を1個有する炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示し、具体的にはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシへキシル基等が挙げられ、好ましくはヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシブチル基である。
【0027】
本願明細書において「ジ(C1-C6アルキル)アミノC1-C6アルキル基」とは、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を2個有するアミノ基を有する炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示し、好ましくは炭素数1~4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を2個有するアミノ基を有する炭素数1~4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基(ジ(C1-C4アルキル)アミノC1-C4アルキル基)であり、具体的にはジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ジメチルアミノブチル基、ジメチルアミノペンチル基、ジメチルアミノヘキシル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ジエチルアミノブチル基、ジエチルアミノペンチル基、ジエチルアミノヘキシル基、ジプロピルアミノメチル基、ジブチルアミノメチル基、ジペンチルアミノメチル基、ジヘキシルアミノメチル基、エチル(メチル)アミノメチル基等が挙げられ、好ましくはジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基である。
【0028】
本願明細書において「C1-C6アルコキシC1-C6アルキル基」とは、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基を有する炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示し、好ましくは炭素数1~4の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基を有する炭素数1~4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基(C1-C4アルコキシC1-C4アルキル基)であり、具体的にはメトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、メトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシペンチル基、エトキシヘキシル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペンチルオキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基等が挙げられ、好ましくは2-メトキシエチル基である。
【0029】
本願明細書において「ハロゲン原子」としては、具体的には塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
【0030】
一般式(I)中、X1及びX2において好ましい組合せとしては、(1)X2がNの場合、X1はN又はCHであり、(2)X2がCHの場合、X1はCHである。
一般式(I)中、lとしては、好ましくは0又は1である。
【0031】
一般式(I)中、Yとしては、一般式(A)
【化26】
(式中、R
2及びlは、前記と同義である)
で表される基、又は一般式(C)
【化27】
(式中、R
2及びlは、前記と同義である)
で表される基が好ましく、一般式(A)で表される基の2価の部分
【化28】
がピロリジニレン基、アゼチジニレン基、ピペリジニレン基であるか、一般式(C)で表される基の2価の部分
【化29】
がフェニレン基であるのがより好ましい。
【0032】
一般式(I)中、Y及びZにおいて好ましい組合せとしては、Yが一般式(A)
【化30】
(式中、R
2及びlは、前記と同義である)
で表される基の場合、Zは-C(R
4)=C(R
5)(R
6)又は-C≡C-R
7であり、Yが一般式(B)又は一般式(C)で表される基
【化31】
(式中、R
2、lは、前記と同義である)
の場合、Zは-C(R
4)=C(R
5)(R
6)である。
【0033】
一般式(I)中、R1としては、好ましくはC1-C4アルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0034】
一般式(I)中、R2としては、好ましくは水素原子、C2-C6アルキニル基、-C(=O)ORx、ヒドロキシC1-C4アルキル基、又はR3を有していてもよいC2-C9ヘテロアリール基であり、より好ましくはエチニル基、メトキシカルボニル基、ヒドロキシメチル基、又はR3を有していてもよい1,3,4-オキサジアゾリル基である。
【0035】
一般式(I)中、R3としては、好ましくはC1-C4アルキル基又はジ(C1-C4アルキル)アミノC1-C4アルキル基であり、より好ましくはメチル基又はジメチルアミノメチル基である。
【0036】
一般式(I)中、R4としては、好ましくは水素原子又はハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子又はフッ素原子であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0037】
一般式(I)中、R
5及びR
6としては、好ましくは水素原子、R
8を1個有しても良いC
1-C
4アルキル基、又は一般式(D)
【化32】
(式中、R
2及びlは、前記と同義である)
で表される基であり、より好ましくは水素原子、R
8を有するメチル基、又は一般式(D)
【化33】
(式中、R
9、m及びnは、前記と同義である)
で表される基である。
【0038】
一般式(I)中、mとしては、好ましくは1である。
一般式(I)中、R9としては、C1-C4アルキル基、フッ素原子、又は水酸基が好ましく、メチル基、フッ素原子、又は水酸基がより好ましい。
一般式(I)中、nとしては、好ましくは0又は1である。
【0039】
一般式(I)中、R7としては、好ましくは水素原子、C1-C4アルキル基、又はヒドロキシC1-C4アルキル基であり、より好ましくは水素原子、ヒドロキシメチル基、メチル基、又は2-ヒドロキシ-2-メチル-エチル基である。
【0040】
一般式(I)中、R8としては、好ましくは水酸基、又は-N(Rx)(Ry)である。ここで、Rx及びRyは、好ましくは水素原子、C1-C4アルキル基、C3-C10シクロアルキル基、又はC1-C4アルコキシC1-C4アルキル基であり、さらに好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、又は2-メトキシエチル基である。
【0041】
本発明化合物において、一般式(I)中、R1がC1-C4アルキル基であり;X1及びX2は、各々独立してN又はCHであり;Yは、一般式(A)又は一般式(C)
【0042】
【化34】
で表される基であり;R
2は、水素原子、C
2-C
6アルキニル基、-C(=O)OR
x、ヒドロキシC
1-C
4アルキル基、又はR
3を有していてもよいC
2-C
9ヘテロアリール基であり;R
3は、C
1-C
4アルキル基又はジ(C
1-C
4アルキル)アミノC
1-C
4アルキル基であり;Zは、-C(R
4)=C(R
5)(R
6)又は-C≡C-R
7であり;R
4は、水素原子又はハロゲン原子であり;R
5及びR
6は、同一又は相異なって、水素原子、R
8を有していてもよいC
1-C
4アルキル基、又は一般式(D)
【化35】
で表される基であり;R
7は、水素原子、C
1-C
4アルキル基、又はヒドロキシC
1-C
4アルキル基であり;R
8は、水酸基、又は-N(R
x)(R
y)であり;R
9は、C
1-C
4アルキル基、フッ素原子、又は水酸基であり;R
x及びR
yは、同一又は相異なって、水素原子、C
1-C
4アルキル基、C
3-C
10シクロアルキル基、又はC
1-C
4アルコキシC
1-C
4アルキル基であり;lが0又は1であり、mが1であり、nが0又は1である化合物が好ましい。
【0043】
本発明化合物において、一般式(I)中、R
1がC
1-C
4アルキル基であり;X
1及びX
2において、(1)X
2がNの場合、X
1はN又はCHであり、(2)X
2がCHの場合、X
1はCHであり;Yにおいて、一般式(A)
【化36】
で表される基の2価の部分
【化37】
がピロリジニレン基、アゼチジニレン基、ピペリジニレン基であり、又は一般式(C)
【化38】
で表される基の2価の部分
【化39】
がフェニレン基であり;
(a)Yが一般式(A)
【化40】
(式中、R
2は水素原子、エチニル基、メトキシカルボニル基、ヒドロキシメチル基、又はR
3を有していてもよい1,3,4-オキサジアゾリル基であり;R
3はC
1-C
4アルキル基であり;lは0又は1である)
で表される基の場合、Zは-C(R
4)=C(R
5)(R
6)又は-C≡C-R
7であり、
(b)Yが一般式(C)
【化41】
(式中、R
2は水素原子であり;lは0又は1である)
で表される基の場合、Zは-C(R
4)=C(R
5)(R
6)であり;R
4は、水素原子又はフッ素原子であり;R
5及びR
6は、同一又は相異なって、水素原子、R
8を有するC
1-C
4アルキル基、又は一般式(D)
【化42】
で表される基であり;R
7は、水素原子、ヒドロキシメチル基、メチル基、又は2-ヒドロキシ-2-メチル-エチル基であり;R
8は-N(R
x)(R
y)であり;R
9は、C
1-C
4アルキル基、フッ素原子、又は水酸基であり;R
x及びR
yは、同一又は相異なって、水素原子、C
1-C
4アルキル基、C
3-C
10シクロアルキル基、又はC
1-C
4アルコキシC
1-C
4アルキル基であり、mが1であり、nが0又は1である化合物がより好ましい。
【0044】
本発明化合物において、一般式(I)中、R
1がメチル基又はエチル基であり;X
1及びX
2において、(1)X
2がNの場合、X
1はN又はCHであり、(2)X
2がCHの場合、X
1はCHであり;Yにおいて、2価の部分
【化43】
がピロリジニレン基、アゼチジニレン基、ピペリジニレン基、又は2価の部分
【化44】
がフェニレン基であり;
(a)Yが一般式(A)
【化45】
(式中、R
2は水素原子、エチニル基、メトキシカルボニル基、ヒドロキシメチル基、又はメチル基を有していてもよい1,3,4-オキサジアゾリル基であり;lは0又は1である)
で表される基の場合、Zは-C(R
4)=C(R
5)(R
6)又は-C≡C-R
7であり、
(b)Yが一般式(C)
【化46】
(式中、R
2は水素原子であり;lは1である)
で表される基の場合、Zは-C(R
4)=C(R
5)(R
6)であり;R
4は、水素原子であり;R
5及びR
6は、同一又は相異なって、水素原子、R
8を有するメチル基、又は一般式(D)
【化47】
で表される基の1価の部分
【化48】
がピロリジニル基、ピペリジニル基、アゼチジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基であり;R
7は、水素原子、ヒドロキシメチル基、メチル基、又は2-ヒドロキシ-2-メチル-エチル基であり;R
8は-N(R
x)(R
y)であり;R
9は、メチル基、フッ素原子、又は水酸基であり;R
x及びR
yは、同一又は相異なって、水素原子、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、又は2-メトキシエチル基であり;mが1であり、nが0又は1である化合物がさらに好ましい。
【0045】
一般式(I)の化合物として具体的な好適な化合物は以下のものが例示できる:
(1)(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
【0046】
(2)(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-イン-1-オン;
【0047】
(3)(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジエトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
【0048】
(4)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
【0049】
(5)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-ヒドロキシブタ-2-イン-1-オン;
【0050】
(6)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0051】
(7)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(シクロプロピルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0052】
(8)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(イソプロピルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0053】
(9)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(エチル(メチル)アミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0054】
(10)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(シクロブチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0055】
(11)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(ジエチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0056】
(12)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(tert-ブチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0057】
(13)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(イソプロピル(メチル)アミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0058】
(14)1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(ピペリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0059】
(15)(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(3-フルオロピロリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0060】
(16)(R)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(3-フルオロピロリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0061】
(17)1-((2S,4S)-4-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
【0062】
(18)1-((2S,4S)-4-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)-2-エチニルピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
【0063】
(19)(S)-1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ピロリジン-1-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0064】
(20)(S)-1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
【0065】
(21)(S)-1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ピロリジン-1-イル)-4-(ピロリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0066】
(22)(S)-1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ピロリジン-1-イル)-4-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0067】
(23)(S)-1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ピロリジン-1-イル)ブタ-2-イン-1-オン;
【0068】
(24)(S)-1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ピロリジン-1-イル)-4-ヒドロキシ-4-メチルペント-2-イン-1-オン;
【0069】
(25)1-((S)-3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ピロリジン-1-イル)-4-((S)-3-フルオロピロリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0070】
(26)(S)-1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ピロリジン-1-イル)-4-(ピペリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0071】
(27)1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
【0072】
(28)1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0073】
(29)1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(ピロリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0074】
(30)1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(アゼチジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0075】
(31)1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(エチル(メチル)アミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0076】
(32)1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(イソプロピルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0077】
(33)1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(ジエチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0078】
(34)1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)-4-((2-メトキシエチル)(メチル)アミノ)ブタ-2-エン-1-オン;
【0079】
(35)1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0080】
(36)(S)-1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0081】
(37)(R)-1-(3-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)アゼチジン-1-イル)-4-(3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン;
【0082】
(38)(2S,4S)-メチル 1-アクリロイル-4-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)ピロリジン-2-カルボキシレート;
【0083】
(39)1-((2S,4S)-4-(4-アミノ-5-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-7-イル)-2-(1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン;
【0084】
(40)(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピロロ[3,2-c]ピリジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン。
【0085】
このうち、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オンが好ましい。
【0086】
上記の本発明の組合せ製剤の一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、特に限定するものではないが、例えば国際公開WO2013/108809号(特許文献1)に記載の製造方法に基づき合成することができる。
【0087】
一般式(I)で表される化合物の一例である(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オンは、下記の構造を有する二置換ベンゼンアルキニル化合物である。本明細書において、上記化合物を簡便のために「化合物1」と記載する。化合物1は、上記国際公開WO2013/108809号において実施例化合物2として記載されている。
【0088】
【0089】
本発明において、一般式(I)で表される化合物はそのまま、又は薬学的に許容される塩の形態で使用することができる。一般式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩としては、特に限定するものではないが、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等の有機酸との付加塩、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩、エチルアミン塩、アルギニン塩等の有機塩基との塩等が挙げられる。
【0090】
一般式(I)で表される化合物は、優れたFGFR阻害作用を有し、副作用の軽減された抗腫瘍剤であるが、種々の他の抗腫瘍効果を有する化合物と併用した場合に、顕著な毒性の増悪を示すことなく、他の抗腫瘍効果を有する化合物の抗腫瘍効果を増強する作用を有する。
【0091】
従って、本発明の組合せ製剤は、一般式(I)で表される化合物とは異なる1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の個数は1つ又は複数が挙げられ、好ましくは1つである。他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩は、代謝拮抗剤(プリン系代謝拮抗剤、ピリミジン系代謝拮抗剤、葉酸代謝拮抗剤等)、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬(低分子分子標的薬・抗体分標的薬等)、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される。
【0092】
ここで、「他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩」とは、一般式(I)で表される化合物がFGFR阻害作用に基づく抗腫瘍剤であるため、一般式(I)で表される化合物を除くことを意図するものである。他の抗腫瘍効果を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、代謝拮抗剤(プリン系代謝拮抗剤、葉酸代謝拮抗剤、ピリミジン系代謝拮抗剤)、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬(低分子分子標的薬、抗体分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)、抗腫瘍性抗生物質、アルキル化剤等が挙げられ、より具体的には、
【0093】
フルダラビン、クラドリビン、ネララビン等のプリン系代謝拮抗剤;
5-フルオロウラシル(5-FU)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1またはS-1、商品名:「ティーエスワン」)、テガフール・ウラシル配合剤(UFT、商品名:「ユーエフティ」)、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合剤(TAS-102、商品名:「ロンサーフ」)、カペシタビン、ドキシフルリジン、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(FdUrd)、ゲムシタビン、シタラビン等のピリミジン系代謝拮抗剤;
ペメトレキセド、メトトレキサート等の葉酸代謝拮抗剤;
【0094】
パクリタキセル(商品名:「タキソール」、「アブラキサン」等が販売されており、パクリタキセルには、アルブミン結合パクリタキセル(例えばABI-007)やPEG結合パクリタキセルなどの誘導体を含む)、ドセタキセル(商品名「タキソテール」等)、カバジタキセル、エリブリン、イリノテカン、ノギテカン、エトポシド、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンブラスチン等のアルカロイド系抗腫瘍剤;
シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン等のプラチナ製剤;
【0095】
イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、スニチニブ、ダサチニブ、エベロリムス、テムシロリムス、セルメチニブ、トラメチニブ、ソラフェニブ、アファチニブ、レゴラフェニブ、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1,2-c]ピリド[3,4-e][1,3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール(本明細書中で「化合物2」と記載する)若しくはその薬学的に許容される塩、8-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン(MK2206)若しくはその薬学的に許容される塩等の低分子分子標的薬;
トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ、ベルツズマブ、リツキシマブ、ラムシルマブ等の抗体分子標的薬;
ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブ、イピリムマブ、トレメリムマブ、アバタセプト等の免疫チェックポイント阻害薬;
ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC等の抗腫瘍性抗生物質;及び
シクロフォスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、プロカルバジン、メルファラン等のアルキル化剤;
が挙げられる。
【0096】
上記の低分子分子標的薬には、種々の作用機序のものが含まれる。例えばゲフィチニブは、EGFR阻害作用によって抗腫瘍効果を発揮することが知られており、EGFR阻害剤と呼ばれている。また、種々の癌細胞においてMAPK、PI3K/AKT/mTOR、及びNF-κBシグナル伝達経路が異常に活性化していることが知られており、これらのシグナル伝達経路の阻害剤も本発明において抗腫瘍剤として使用することができる。
【0097】
例えば、AKT阻害作用によって抗腫瘍効果を発揮することが知られているAKT阻害剤として、
トランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1,2-c]ピリド[3,4-e][1,3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール(化合物2)若しくはその薬学的に許容される塩、
8-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン(MK2206)若しくはその薬学的に許容される塩
等を挙げることができる。
【0098】
上記の化合物2は、国際公開WO2012/137870号の実施例32に記載された化合物であり、上記文献に記載の製造方法に基づき合成することができる。
また、mTOR阻害作用によって抗腫瘍効果を発揮することが知られているmTOR阻害剤として、エベロリムス等を挙げることができる。
【0099】
ピリミジン系代謝拮抗剤は上記化合物等が挙げられ、好ましくは5-フルオロウラシル(5-FU)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、ゲムシタビンであり、より好ましくは、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、ゲムシタビンであり、特に好ましくはテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤である。
【0100】
アルカロイド系抗腫瘍剤は上記化合物等が挙げられ、好ましくはパクリタキセルである。
プラチナ製剤は上記化合物等が挙げられ、好ましくはシスプラチンである。
【0101】
低分子分子標的薬は上記化合物等が挙げられ、好ましくはAKT阻害剤、mTOR阻害剤、EGFR阻害剤であり、より好ましくはAKT阻害剤、mTOR阻害剤である。
【0102】
他の抗腫瘍効果を有する化合物は上記化合物等が挙げられ、好ましくはピリミジン系代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、又は低分子分子標的薬である。より好ましくは、他の抗腫瘍効果を有する化合物はピリミジン系代謝拮抗剤、植物アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、AKT阻害剤、mTOR阻害剤である。さらに好ましくは、他の抗腫瘍効果を有する化合物は、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、ゲムシタビン、パクリタキセル、シスプラチン、エベロリムス、又はトランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1,2-c]ピリド[3,4-e][1,3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノール(化合物2)若しくはその薬学的に許容される塩、8-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン(MK2206)若しくはその薬学的に許容される塩、エベロリムスであり、特に好ましくは、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤及びパクリタキセルである。また、他の抗腫瘍効果を有する化合物は、その薬理効果を減じることなく、若しくはその薬理効果の増強のために、例えば体内における薬物動態の向上、標的部位への送達性の向上、分解抑制等のために、誘導体として、また複合体として提供されるものであっても良い。
上記の抗腫瘍剤の作用機序、投与量及び治療適用対象はそれぞれ知られており、当業者であればこれらの抗腫瘍剤を、必要な情報と共に入手することができる。
【0103】
当業者に知られている通り、抗腫瘍効果に優れた薬剤であっても、その副作用のために患者に新たな苦痛を強いることとなる場合がある。本発明の組合せ製剤は、抗腫瘍効果の増強によって薬剤の投与量・投与頻度を低減することができ、結果として副作用の抑制に有効であり得る。
【0104】
本発明の組合せ製剤によって治療できる悪性腫瘍としては、特に制限するものではないが、例えば、上皮性癌(呼吸器癌、消化器癌、生殖器癌、分泌系癌、乳癌等)、肉腫、造血器腫瘍、中枢神経系腫瘍、末梢神経系腫瘍等が挙げられる。
【0105】
具体的な呼吸器癌としては肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌等)等が挙げられる。具体的な消化器癌としては食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆道癌(胆嚢癌、胆管癌、肝内胆管癌、肝外胆管癌等)、膵臓癌、結腸直腸癌(結腸癌、直腸癌等)等が挙げられる。具体的な生殖器癌としては卵巣癌、子宮癌(子宮頚癌、子宮体癌等)、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍等が挙げられる。具体的な分泌系癌としては甲状腺癌等が挙げられる。具体的な肉腫としては骨・軟部腫瘍等が挙げられる。具体的な造血器腫瘍としては白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等が挙げられる。具体的な中枢神経系腫瘍としては頭頸部癌、脳腫瘍等が挙げられる。具体的な末梢神経系腫瘍としては皮膚癌等が挙げられる。
【0106】
本発明における治療対象としての悪性腫瘍は、さらに好ましくは、肺癌、食道癌、胃癌、胆道癌(胆嚢癌、胆管癌、肝内胆管癌、肝外胆管癌)、子宮体癌、膀胱癌、乳癌、骨・軟部肉腫、多発性骨髄腫、脳腫瘍であり、特に好ましくは胃癌、胆道癌(胆嚢癌、胆管癌、肝内胆管癌、肝外胆管癌)、子宮体癌、膀胱癌、脳腫瘍である。
【0107】
本発明の治療対象となる胃癌において、本発明の組合せ製剤の中で好適に使用できる他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩としては、ピリミジン系代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、抗腫瘍性抗生物質が挙げられ、好ましくは、パクリタキセル、ドセタキセル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、オキサリプラチン、シスプラチン、及びラムシルマブからなる群より選択され、より好ましくは、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、パクリタキセルである。
【0108】
本発明の治療対象となる胆道癌において、本発明の組合せ製剤の中で好適に使用できる他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩としては、ピリミジン系代謝拮抗剤、プラチナ製剤が挙げられ、好ましくは、ゲムシタビン及びシスプラチンである。
【0109】
本発明の治療対象となる膀胱癌において、本発明の組合せ製剤の中で好適に使用できる他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩としては、ピリミジン系代謝拮抗剤、葉酸代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、抗腫瘍性抗生物質、免疫チェックポイント阻害薬が挙げられ、好ましくは、メトトレキサート、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、アテゾリズマブからなる群より選択される。
【0110】
本発明の治療対象となる脳腫瘍において、本発明の組合せ製剤の中で好適に使用できる他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩としては、抗体分子標的薬、アルカロイド系抗腫瘍剤、アルキル化剤が挙げられ、好ましくは、イリノテカン、ベバシズマブ、及びテモゾロミドからなる群より選択される。
【0111】
本発明の治療対象となる子宮体癌において、本発明の組合せ製剤の中で好適に使用できる他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩としては、ピリミジン系代謝拮抗剤、プラチナ製剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、抗腫瘍性抗生物質、アルキル化剤が挙げられ、好ましくは、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドキソルビシン、シクロフォスファミドからなる群より選択される。
【0112】
本発明の組合せ製剤では、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及びピリミジン系代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を、複数の製剤に分けて製剤化しても良いし、単一の製剤にまとめて製剤化しても良い。また、本発明の組合せ製剤では、一般式(I)で表される化合物又は薬学的に許容される塩及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩以外の有効成分をさらに含有しても良いが、好ましくは一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩のみを有効成分として含有する組合せ製剤である。
【0113】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として製剤中に含有せしめる場合、各有効成分を、それぞれ必要に応じて薬学的担体と配合し、予防又は治療目的に応じて各種の投与形態を採用可能である。投与形態として、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられるが、経口剤が好ましい。経口剤としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、シロップ剤等の形態とすることができ、特に限定するものではない。これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。製剤又は医薬組成物には、投与形態によって、また必要に応じて適切な賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤等の担体を添加することができる。
【0114】
また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、通常成人(体重60kg)1日あたり一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩として約1~1000mgであり、好ましくは1日あたり約10~500mgであり、より好ましくは1日あたり約20~300mgである。
【0115】
なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、1日あたり一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩として約1~200mgであり、好ましくは1日あたり2~100mgであり、より好ましくは1日あたり4~50mgであり、さらに好ましくは1日あたり10~40mgである。
【0116】
なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、1日あたり一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩として約2~1000mgであり、好ましくは1日あたり10~500mgであり、より好ましくは1日あたり20~200mgであり、さらに好ましくは1日あたり50~160mgである。
【0117】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩が、2種又はそれ以上の異なる製剤として別個に製剤化されている場合、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤と、上記の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤とは、同時に、別個に、又は連続して投与することができる。別個に投与する場合の投与間隔は特に限定するものではなく、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩のそれぞれの効果、及び併用効果が最適に発揮されるように選択することができる。また、連続して投与する場合、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤と、他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤との投与順序はいずれでも良い。
【0118】
本発明の組合せ製剤において、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤の投与経路は同じであっても良く、又は異なっていても良い。例えば、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤、及び他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤を、共に経口投与とすることができる。あるいはまた、例えば一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤を経口投与とし、他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む製剤を静脈内注射とすることもできる。投与経路は、投与される有効成分に応じて、また患者における悪性腫瘍の進行度、患者の全身状態等を考慮して適宜決定することができる。
【0119】
本発明の組合せ製剤は、手術前、及び手術後のいずれでも患者に投与することもができ、手術できない患者においても投与することができる。また、本発明の組合せ製剤には、さらに抗腫瘍効果を高めるための薬剤を含むことができ、また副作用を軽減するための薬剤を含むことができる。
【0120】
本発明の一態様として、例えば胃癌の治療のために、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩とピリミジン系代謝拮抗剤であるテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤とを併用することができ、両薬剤を組合せ製剤の有効成分として、あるいは下記に記載する医薬組成物の有効成分としていずれも経口投与することができる。
【0121】
また、本発明の別の態様として、例えば胃癌の治療のために、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩とアルカロイド系抗腫瘍剤であるパクリタキセルとを併用することができ、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を経口投与とし、パクリタキセルを静脈内投与とすることができる。
【0122】
本発明の一態様として、例えば胆道癌の治療のために、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩とアルカロイド系抗腫瘍剤であるゲムシタビンとを併用することができ、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を経口投与とし、ゲムシタビンを静脈内投与とすることができる。
【0123】
また、本発明の別の態様として、例えば胆道癌の治療のために、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩とプラチナ製剤であるシスプラチンとを併用することができ、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を経口投与とし、シスプラチンを静脈内投与とすることができる。
【0124】
本発明の一態様として、例えば膀胱癌の治療のために、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩とプラチナ製剤であるシスプラチンとを併用することができ、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を経口投与とし、シスプラチンを静脈内投与とすることができる。
【0125】
本発明の一態様として、例えば脳腫瘍の治療のために、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩とアルキル化剤であるテモゾロミドとを併用することができ、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を経口投与とし、テモゾロミドを静脈内投与若しくは経口投与とすることができる。
【0126】
本発明の一態様として、例えば子宮体癌の治療のために、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩とプラチナ製剤であるシスプラチン、ピリミジン系代謝拮抗剤であるゲムシタビン、又は分子標的薬であるエベロリムスを併用することができ、それぞれの薬剤の投与経路及び投与頻度は適宜決定することができる。
【0127】
一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩との投与若しくは配合割合は、抗腫瘍効果の増強効果を奏する範囲であれば特に制限されないが、他の抗腫瘍効果を有する化合物が1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩をフリー体として0.001~1000モル程度、好ましくは0.01~100モル程度とすればよい。
【0128】
例えば、他の抗腫瘍効果を有する化合物がピリミジン系代謝拮抗剤である場合には、ピリミジン系代謝拮抗剤1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.001~10モルであり、好ましくは0.01~1モルとすればよい。
【0129】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がアルカロイド系抗腫瘍剤である場合には、アルカロイド系抗腫瘍剤1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~200モルであり、好ましくは0.1~100モルとすればよい。
【0130】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がプラチナ製剤である場合には、プラチナ製剤1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.001~50モルであり、好ましくは0.01~10モルとすればよい。
【0131】
他の抗腫瘍効果を有する化合物が低分子分子標的薬である場合には、低分子分子標的薬1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は1~1000モルであり、好ましくは10~100モルとすればよい。
【0132】
例えば他の抗腫瘍効果を有する化合物がmTOR阻害剤である場合には、mTOR阻害剤1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は1~1000モルであり、好ましくは10~100モルとすればよい。
【0133】
他の抗腫瘍効果を有する化合物が抗体分子標的薬である場合には、抗体分子標的薬1mgに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.005~1mgであり、好ましくは0.01~0.5mgとすればよい。
【0134】
例えば、他の抗腫瘍効果を有する化合物がテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(ピリミジン系代謝拮抗剤)である場合には、テガフール1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.01~10モル、好ましくは0.1~2モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、テガフール1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~1モルであり、好ましくは0.05~0.5モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、テガフール1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~10モルであり、好ましくは0.1~3モルとすればよい。
【0135】
他の抗腫瘍効果を有する化合物が5-フルオロウラシル(ピリミジン系代謝拮抗剤)である場合には、5-フルオロウラシル1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.0001~1モル、好ましくは0.0005~0.5モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、5-フルオロウラシル1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.0001~0.1モルであり、好ましくは0.005~0.05モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、5-フルオロウラシル1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.0001~1モルであり、好ましくは0.001~0.5モルとすればよい。
【0136】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がカペシタビン(ピリミジン系代謝拮抗剤)である場合には、カペシタビン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.001~1モル、好ましくは0.005~0.1モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、カペシタビン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.001~0.1モルであり、好ましくは0.005~0.05モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、カペシタビン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.005~0.5モルであり、好ましくは0.01~0.1モルとすればよい。
【0137】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がゲムシタビン(ピリミジン系代謝拮抗剤)である場合には、ゲムシタビン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.001~1モル、好ましくは0.005~0.1モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、ゲムシタビン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.001~0.1モルであり、好ましくは0.005~0.05モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、ゲムシタビン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.005~1モルであり、好ましくは0.01~0.1モルとすればよい。
【0138】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がパクリタキセル(アルカロイド系抗腫瘍剤)である場合には、パクリタキセル1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.01~10モル、好ましくは0.05~5モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、パクリタキセル1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~1モルであり、好ましくは0.05~0.5モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、パクリタキセル1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.1~10モルであり、好ましくは0.2~5モルとすればよい。
【0139】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がドセタキセル(アルカロイド系抗腫瘍剤)である場合には、ドセタキセル1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.05~10モル、好ましくは0.1~5モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、ドセタキセル1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.05~1モルであり、好ましくは0.1~0.5モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、ドセタキセル1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.1~10モルであり、好ましくは0.5~5モルとすればよい。
【0140】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がイリノテカン(アルカロイド系抗腫瘍剤)である場合には、イリノテカン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.01~2モル、好ましくは0.02~1モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、イリノテカン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~1モルであり、好ましくは0.2~0.1モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、イリノテカン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.05~2モルであり、好ましくは0.1~1モルとすればよい。
【0141】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がビンブラスチン(アルカロイド系抗腫瘍剤)である場合には、ビンブラスチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を1~200モル、好ましくは5~100モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、ビンブラスチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は1~30モルであり、好ましくは5~20モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、ビンブラスチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は5~200モルであり、好ましくは10~100モルとすればよい。
【0142】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がシスプラチン(プラチナ製剤)である場合には、シスプラチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.01~50モル、好ましくは0.05~10モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、シスプラチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~10モルであり、好ましくは0.05~2モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、シスプラチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.1~10モルであり、好ましくは0.2~6モルとすればよい。
【0143】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がオキサリプラチン(プラチナ製剤)である場合には、オキサリプラチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.01~5モル、好ましくは0.05~2モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、オキサリプラチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~1モルであり、好ましくは0.05~0.5モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、オキサリプラチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.05~5モルであり、好ましくは0.1~2モルとすればよい。
【0144】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がカルボプラチン(プラチナ製剤)である場合には、カルボプラチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.001~1モル、好ましくは0.01~0.5モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、カルボプラチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.001~0.1モルであり、好ましくは0.01~0.1モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、カルボプラチン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~1モルであり、好ましくは0.05~0.5モルとすればよい。
【0145】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がエベロリムス(低分子分子標的薬)である場合には、エベロリムス1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を1~1000モル、好ましくは10~100モルとすればよい。
【0146】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がラムシルマブ(抗体分子標的薬)である場合には、ラムシルマブ1mgに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.01~1mg、好ましくは0.02~0.5mgとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、ラムシルマブ1mgに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~0.2mgであり、好ましくは0.02~0.1mgとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、ラムシルマブ1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.02~1mgであり、好ましくは0.05~0.5mgとすればよい。
【0147】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がベバシズマブ(抗体分子標的薬)である場合には、ベバシズマブ1mgに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.005~1mg、好ましくは0.01~0.5mgとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、ベバシズマブ1mgに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.005~0.1mgであり、好ましくは0.01~0.1mgとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、ベバシズマブ1mgに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~1mgであり、好ましくは0.05~0.5mgとすればよい。
【0148】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がアテゾリズマブ(免疫チェックポイント阻害薬)である場合には、アテゾリズマブ1mgに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.001~1mg、好ましくは0.01~0.5mgとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、アテゾリズマブ1mgに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.001~0.1mgであり、好ましくは0.01~0.05mgとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、アテゾリズマブ1mgに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~1mgであり、好ましくは0.03~0.5mgとすればよい。
【0149】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がメトトレキサート(葉酸代謝拮抗剤)である場合には、メトトレキサート1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.1~20モル、好ましくは0.2~5モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、メトトレキサート1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.1~2モルであり、好ましくは0.2~1モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、メトトレキサート1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.5~10モルであり、好ましくは1~5モルとすればよい。
【0150】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がドキソルビシン(抗腫瘍性抗生物質)である場合には、ドキソルビシン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.05~20モル、好ましくは0.1~10モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、ドキソルビシン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.05~2モルであり、好ましくは0.1~1モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、ドキソルビシン1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.1~20モルであり、好ましくは0.5~10モルとすればよい。
【0151】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がテモゾロミド(アルキル化剤)である場合には、テモゾロミド1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.001~1モル、好ましくは0.01~0.5モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、テモゾロミド1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.001~0.1モルであり、好ましくは0.01~0.05モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、テモゾロミド1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.01~1モルであり、好ましくは0.05~0.5モルとすればよい。
【0152】
他の抗腫瘍効果を有する化合物がシクロフォスファミド(アルキル化剤)である場合には、シクロフォスファミド1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を0.001~1モル、好ましくは0.01~0.3モルとすればよい。なお、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を連日投与する場合、シクロフォスファミド1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.001~0.1モルであり、好ましくは0.01~0.05モルとすればよい。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の1日あたりの投与量を隔日投与する場合、シクロフォスファミド1モルに対して、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の好適な使用量範囲は0.005~1モルであり、好ましくは0.01~0.2モルとすればよい。
【0153】
本発明はまた、第二の実施形態として、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を提供する。
【0154】
本発明の医薬組成物は、上記の組合せ製剤が一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩とを別個の製剤中に含むものであるのに対して、これらを同じ組成物中に有効成分として含有する。組成物中の一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩との配合割合は上記した範囲内とすることができる。
【0155】
本発明はまた、第三の実施形態として、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の抗腫瘍効果増強剤を提供する。
【0156】
本発明はまた、第四の実施形態として、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩と併用することを特徴とする、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む抗腫瘍剤を提供する。
【0157】
本発明は更に、第五の実施形態として、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、悪性腫瘍治療用キットを提供する。
【0158】
本発明は更に、第六の実施形態として、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩を投与された癌患者を治療するための、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む抗腫瘍剤を提供する。
【0159】
本発明は更に、第七の実施形態として、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の抗腫瘍効果増強剤製造のための使用を提供する。
【0160】
本発明は更に、第八の実施形態として、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩の抗腫瘍効果を増強するための、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0161】
本発明は更に、第九の実施形態として、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩とを、必要な患者に投与することを特徴とする、腫瘍の治療方法を提供する。
【0162】
本発明の実施形態において、野生型のFGFRをもつ腫瘍だけでなく、FGFRが増幅、又は変異している腫瘍に対しても高い効果を発揮することが認められている。従って、本発明の治療対象としては、特に限定するものではないが、野生型のFGFR、又はFGFRが増幅、もしくは変異している腫瘍も含まれる。本発明の治療対象としては、特定の野生型FGFRをもつ腫瘍に限られないが、好ましくは野生型FGFR3をもつ腫瘍である。また、本発明の治療対象としては、特定のFGFRの増幅に限られないが、好ましくはFGFR1もしくはFGFR2の増幅をもつ腫瘍である。さらに、本発明の治療対象としては、特定のFGFRの変異をもつ腫瘍に限られないが、好ましくはFGFR2の変異をもつ腫瘍である。
【0163】
また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、他の抗腫瘍効果を有する化合物に対して耐性を有する腫瘍に対しても効果的に使用することができる。例えば、EGFR阻害剤であるゲフィチニブは、長期間の使用によって効果が低下することが知られているが、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩との併用によって腫瘍細胞の生存率を顕著に低下させることができる。また、一般式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩以外のFGFR阻害剤に対して耐性を有する腫瘍に対しても効果的に使用することができる。
【実施例0164】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。本発明は実施例により十分に説明されているが、当業者により種々の変更や修飾が可能であろうことは理解される。したがって、そのような変更や修飾が本発明の範囲を逸脱するものでない限り、それらは本発明に包含される。実施例で用いた各種試薬は、特に記載の無い限り市販品を使用した。
【0165】
[実施例1:ヒト胃癌細胞株SNU-16のヌードマウス皮下移植腫瘍に対する化合物1とS-1との併用による抗腫瘍効果の測定]
Clin Cancer Res. 2013;19(9):2572-83.を参考に、ヒト胃癌株SNU-16(American Type Culture Collection社より入手)の細胞懸濁液を8×106cells/マウスとなるように、6週齢の雄性BALB/cAJcl-nu/nuマウス(日本クレア株式会社)の皮下に移植した。群分け(n=10/群)は、細胞懸濁液移植後、腫瘍体積(tumor volume,TV)を下式より算出し、TVが100~300mm3となったマウスを選別し、各群の平均TVが均等になるように割り付けた。群分けを実施した日を0日目(Day0)とした。
TV(mm3)=(長径×短径2)/2(長径及び短径の単位はmm)
【0166】
化合物1は、5または15mg/kg/日、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1、配合モル比1:0.4:1)は、テガフールが8.3mg/kg/日となるようにして、1日1回14日間の連日経口投与を行った。
【0167】
尚、化合物1の投与量は、本皮下移植マウスモデルでの薬効用量に相当する15mg/kg、及び併用効果を確認するための低用量5mg/kgとし、S-1の投与量は、ヌードマウスにおける最大耐用量等を考慮して設定した。
【0168】
抗腫瘍効果は、判定日における比較対象となる2群の相対腫瘍体積(Relative Tumor Volume: RTV)の平均値の差を評価指標とした。RTVは、測定日と群分け日のTVから、次式により算出した。また、薬剤投与群とコントロール群のRTVの平均値から、T/C(%)を算出した。
RTV=(測定日のTV)/(群分け日のTV)
T/C(%)=(判定日における各薬剤投与群の平均RTV)/(判定日におけるコントロール群の平均RTV)×100
【0169】
その結果、化合物1(5及び15mg/kg)での処置、及びS-1(8.3mg/kg)での処置は、皮下移植したSNU-16腫瘍の増殖を各々単独で抑制し、判定日におけるT/C(%)は、83.6%、69.0%及び84.3%であった。これに対して、5及び15mg/kgの化合物1と8.3mg/kgのS-1の組み合わせでの併用処置は、各薬剤単独での処置に比べ腫瘍増殖を更に抑制し、それぞれのT/C(%)は54.4%及び43.9%であった。
【0170】
化合物1及びS-1を併用した際の腫瘍増殖抑制効果は、各薬剤を単独で処置した際の効果を指標に計算的に予測された両薬剤の併用効果(T/C=70.5%及び58.2%)を上回っていたことから、相乗的な併用効果を示すことが明らかとなった(P<0.05;Bliss法、Student’s t検定)。以上の結果を
図1A及びCに示す。一方、化合物1とS-1との併用群における平均体重変化率は、各薬剤単独での体重変化率と比べ、有意な差は認められなかった(
図1B)。
【0171】
[実施例2:ヒト胃癌細胞株SNU-16のヌードマウス皮下移植腫瘍に対する化合物1とパクリタキセルとの併用による抗腫瘍効果の測定]
実施例1と同様にして、ヒト胃癌株SNU-16の細胞懸濁液を8×106cells/マウスとなるように、6週齢の雄性BALB/cAJcl-nu/nuマウス(日本クレア株式会社)の皮下に移植した。群分け(n=10/群)は、細胞懸濁液移植後、腫瘍体積(TV)が100~300mm3となったマウスを選別し、各群の平均TVが均等になるように割り付けた。
【0172】
化合物1は、5または15mg/kg/日となるよう1日1回14日間の連日経口投与を行い、パクリタキセルは、投与溶液の溶解限界量に基づき60mg/kg/日となるよう、1日目(Day1)に単回尾静脈注投与を行った。
【0173】
抗腫瘍効果は、判定日における比較対象となる2群の相対腫瘍体積(RTV)の平均値の差を評価指標とした。また、薬剤投与群とコントロール群のRTVの平均値から、T/C(%)を算出した。
【0174】
その結果、化合物1(5及び15mg/kg)での処置、及びパクリタキセル(60mg/kg)での処置は、皮下移植したSNU-16腫瘍の増殖を各々単独で抑制し、判定日におけるT/C(%)は、83.6%、69.0%及び12.9%であった。これに対して、5及び15mg/kgの化合物1と60mg/kgのパクリタキセルの組み合わせでの併用処置は、各薬剤単独での処置に比べ腫瘍増殖を更に抑制し、それぞれのT/C(%)は3.1%及び1.5%であった。
【0175】
化合物1及びパクリタキセルを併用した際の腫瘍増殖抑制効果は、各薬剤を単独で処置した際の効果を指標に計算的に予測された両薬剤の併用効果(T/C=10.8%及び8.9%)を上回っていたことから、相乗的な併用効果を示すことが明らかとなった(P<0.05;Bliss法、Student’s t検定)。以上の結果を
図2A及びCに示す。一方、パクリタキセル投与後のマウスでは一時的な体重減少が見られ、パクリタキセルによる副作用が示された。化合物1とパクリタキセルとの併用群における平均体重変化率は、各薬剤単独での体重変化率と比べ、有意な差は認められなかった(
図2B)。
【0176】
[実施例3:ヒト子宮体癌株AN3CAのヌードマウス皮下移植腫瘍に対する化合物1とシスプラチンとの併用による抗腫瘍効果の測定]
Glynecol Oncol. 2014;132(2):468-73.を参考に、ヒト子宮体癌株AN3CA(American Type Culture Collection社より入手)の細胞懸濁液を1×107cells/マウスとなるように、6週齢の雌性BALB/cAJcl-nu/nuマウス(日本クレア株式会社)の皮下に移植した。生着した腫瘍を、マウスから取り出し、2mm角のフラグメントとなるように細切した後、6週齢の雌性BALB/cAJcl-nu/nuマウスの皮下に移植した。群分け(n=6/群)は、移植後、腫瘍体積(TV)が100~300mm3となったマウスを選別し、各群の平均TVが均等になるように割り付けた。
【0177】
化合物1は、15mg/kg/日となるよう、1日1回14日間の連日経口投与を行い、シスプラチンは、7mg/kg/日となるよう、1日目に尾静脈から投与を行った。シスプラチンの投与量7mg/kgは、ヌードマウス単回投与における最大耐用量に相当する。
【0178】
抗腫瘍効果は、判定日における比較対象となる2群の相対腫瘍体積(RTV)の平均値の差を評価指標とした。また、薬剤投与群とコントロール群のRTVの平均値から、T/C(%)を算出した。
【0179】
その結果、化合物1(15mg/kg)での処置、及びシスプラチン(7mg/kg)での処置は、皮下移植したAN3CA腫瘍の増殖を各々単独で抑制し、判定日におけるT/C(%)は、各々46.0%及び53.0%であった。これに対して、15mg/kgの化合物1と7mg/kgのシスプラチンの組み合わせでの併用処置は、各薬剤単独での処置に比べ腫瘍増殖を更に抑制し、T/C(%)は14.9%であった。
【0180】
化合物1及びシスプラチンを併用した際の腫瘍増殖抑制効果は、各薬剤を単独で処置した際の効果に対して,統計的に有意な上乗せ効果があった(P<0.05;Aspin-Welch t検定)。また、化合物1及びシスプラチンを併用した際の腫瘍増殖抑制効果は、各薬剤を単独で処置した際の効果を指標に計算的に予測された両薬剤の併用効果(T/C=24.4%)と比べ、それを更に上回るものであった(Bliss法)。以上の結果を
図3A及びCに示す。一方、シスプラチン投与後のマウスでは一時的な体重減少が見られ、シスプラチンによる副作用が示された。化合物1とシスプラチンとの併用時におけるマウスの経時的な体重推移は、シスプラチン単独処置時の体重変化と比較して、増悪は認められなかった(
図3B)。
【0181】
[実施例4:ヒト子宮体癌株AN3CAのヌードマウス皮下移植腫瘍に対する化合物1とゲムシタビンとの併用による抗腫瘍効果の測定]
実施例3と同様にして、ヒト子宮体癌株AN3CAの細胞懸濁液を1×107cells/マウスとなるように、6週齢の雌性BALB/cAJcl-nu/nuマウス(日本クレア株式会社)の皮下に移植した。生着した腫瘍を、マウスから取り出し、2mm角のフラグメントとなるように細切した後、6週齢の雌性BALB/cAJcl-nu/nuマウスの皮下に移植した。群分け(n=6/群)は、移植後、腫瘍体積(TV)が100~300mm3となったマウスを選別し、各群の平均TVが均等になるように割り付けた。
【0182】
化合物1は、15mg/kg/日となるよう、14日間の連日経口投与を行い、ゲムシタビンは、100mg/kg/日となるよう、1日目及び8日目に尾静脈から投与を行った。ゲムシタビンの投与量は、J Pharmacol. Exp Ther., 2008;325:484-490等の報告に基づき、薬効が期待できる100mg/kgに設定した。
【0183】
抗腫瘍効果は、判定日における比較対象となる2群の相対腫瘍体積(RTV)の平均値の差を評価指標とした。また、薬剤投与群とコントロール群のRTVの平均値から、T/C(%)を算出した。
【0184】
化合物1(15mg/kg)での処置、及びゲムシタビン(100mg/kg)での処置は、皮下移植したAN3CA腫瘍の増殖を各々単独で抑制し、判定日におけるT/C(%)は、各々42.1%及び75.5%であった。これに対して、15mg/kgの化合物1と100mg/kgのゲムシタビンの組み合わせでの併用処置は、各薬剤単独での処置に比べ腫瘍増殖を更に抑制し、T/C(%)は24.7%であった。
【0185】
化合物1及びゲムシタビンを併用した際の腫瘍増殖抑制効果は、化合物1を単独で処置した際の効果に対して増強傾向が有り(P=0.0594;Aspin-Welch t検定)、また、ゲムシタビンを単独で処置した際の効果に対しては、統計的に有意な上乗せ効果があった(P<0.05;Aspin-Welch t検定)。化合物1及びゲムシタビンを併用した際の腫瘍増殖抑制効果は、各薬剤を単独で処置した際の効果を指標に計算的に予測された両薬剤の併用効果(T/C=31.8%)と比べ、それを上回るものであった(Bliss法)。以上の結果を
図4A及びCに示す。一方、化合物1とゲムシタビンとを併用した際のマウスの経時的な体重推移は、ゲムシタビン単独処置時の体重変化と比較しても、顕著な増悪は認められなかった(
図4B)。
【0186】
[実施例5:ヒト子宮体癌株AN3CAのヌードマウス皮下移植腫瘍に対する化合物1とエベロリムスとの併用による抗腫瘍効果の測定]
実施例3と同様にして、ヒト子宮体癌株AN3CAの細胞懸濁液を1×107cells/マウスとなるように、6週齢の雌性BALB/cAJcl-nu/nuマウス(日本クレア株式会社)の皮下に移植した。生着した腫瘍を、マウスから取り出し、2mm角のフラグメントとなるように細切した後、6週齢の雌性BALB/cAJcl-nu/nuマウスの皮下に移植した。群分け(n=6/群)は、移植後、腫瘍体積(TV)が100~300mm3となったマウスを選別し、各群の平均TVが均等になるように割り付けた。
【0187】
化合物1は、15及び50mg/kg/日となるよう、14日間の連日経口投与を行い、エベロリムスは、2mg/kg/日となるよう、14日間の連日経口投与を行った。エベロリムスの投与量は、Neoplasia,2013;15:1391-1399等の報告に基づき、薬効が期待できる2mg/kgに設定した。
【0188】
抗腫瘍効果は、判定日における比較対象となる2群の相対腫瘍体積(RTV)の平均値の差を評価指標とした。また、薬剤投与群とコントロール群のRTVの平均値から、T/C(%)を算出した。
【0189】
化合物1(15及び50mg/kg)での処置、及びエベロリムス(2mg/kg)での処置は、皮下移植したAN3CA腫瘍の増殖を各々単独で抑制し、判定日におけるT/C(%)は、33.3%、12.6%及び27.1%であった。これに対して、15及び50mg/kgの化合物1と2mg/kgのエベロリムスの組み合わせでの併用処置は、各薬剤単独での処置に比べ腫瘍増殖を更に増強し、T/C(%)は5.1%及び1.9%であった。
【0190】
化合物1及びエベロリムスを併用した際の腫瘍増殖抑制効果は、各薬剤を単独で処置した際の効果に対して、統計的に有意な上乗せ効果があった(P<0.05;Aspin-Welch t検定)。また、化合物1及びエベロリムスを併用した際の腫瘍増殖抑制効果は、各薬剤を単独で処置した際の効果を指標に計算的に予測された両薬剤の併用効果(T/C=9.0%及び3.4%)に比べ、それを上回るものであった(Bliss法)。以上の結果を
図5A及びCに示す。一方、化合物1とエベロリムスとを併用した際のマウスの経時的な体重推移は、エベロリムス単独処置時の体重変化と比較しても、顕著な増悪は認められなかった(
図5B)。
【0191】
[実施例6:インビトロにおける化合物1と5-FUとの併用による腫瘍増殖抑制効果の評価]
<A 材料及び方法>
Clin Cancer Res. 2013;19(9):2572-83.を参考に、ヒト胃癌細胞株SNU-16は、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI-1640培地にて培養した。細胞は、37℃、5% CO2条件下で維持し、1週当たり1~2回、1:5~1:20の比率で継代維持した。
【0192】
<細胞生存率アッセイ>
細胞生存率の測定は、CellTiter-Glo(プロメガ社製)を用いて実施した。細胞を常法により回収後、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI-1640培地に懸濁し、96ウェルプレートに播種した。播種数は1ウェルあたり2000個/80μLとした。37℃、5% CO2で24時間インキュベートしたのち、化合物1と5-FUないしVehicle(DMSO)を含む培地を10μL添加した。化合物1の濃度は、100μMを最大終濃度とし、3倍希釈系列で10濃度を設定した。5-FUは、80、100及び200μMを最大濃度とする3種類の3倍希釈系列を、それぞれ10濃度ずつ設定した。各薬剤単独の群に加え、両薬剤を同時に添加した群も並行して調製した。細胞への薬剤添加後、37℃、5% CO2でさらに72時間インキュベートした。細胞生存率は、1ウェルあたり100μLのCellTiter-Glo液を添加し、10分間室温でインキュベートしたのち、各ウェルの化学発光量をプレートリーダー(ARVO)で測定することで算出した。薬剤添加時の細胞生存率は、次式に従い、コントロール群を100%とした場合の比率として算出した。
細胞生存率(%)=(薬剤添加時の化学発光量)
/(コントロール群の化学発光量)×100
また、Fa(Fraction of Affect)値は、細胞生存率の100分の1の値を1から減算することにより算出した。
【0193】
各薬剤が50%の細胞増殖抑制効果を示す際の濃度IC50は、メジアンエフェクト解析ソフトウェアCalcuSyn 2.0(CalcuSyn,Inc.)を使用して決定した。次に、薬剤の各組み合わせ濃度におけるコンビネーションインデックス(CI)値を決定した。2薬剤の併用効果の有無の判定は、CIの値が1を超える場合、1に等しい場合、または1未満の場合に、それぞれ、拮抗、相加または相乗作用を示すと判断した(表1、Pharmacol Rev. 2006;58(3):621-81、 BMC Complement Altern Med. 2013;13:212.、Anticancer Res. 2005;25(3B):1909-17.)。
【0194】
【0195】
また、SNU-16細胞において化合物1と5-FUの濃度の組み合わせによって算出されたFa値から、Fa=0.5(ED50に対応)、0.75(ED75に対応)、0.9(ED90に対応)となるような両薬剤の濃度の組み合わせを抽出し、CalcuSyn(株式会社ヒューリンクス)による線形曲線フィッティングへ供して、CIを得た。
【0196】
<B 結果>
化合物1と5-FUとの併用は、実施した3種類の濃度比率のいずれの組み合わせにおいても相乗効果が認められた(
図6A~6C)。特に、化合物1の添加濃度が10~200nMの濃度域においては、CI=0.3~0.4と強い相乗効果が認められた。下記の表2に、5-FUと化合物1との比率を1250:1、1000:1、500:1とした場合のそれぞれのコンビネーションインデックス値を、併用時の細胞増殖抑制効果が50%、75%および90%を示した時点(ED50、ED75、及びED90)毎に示す。
【0197】
上記の結果から、5-FU1モルに対して、化合物1又はその薬学的に許容される塩を0.0008~0.002モルの範囲で使用した場合に好適な併用効果が得られることが確認された。
【0198】
【0199】
[実施例7:化合物1及び5-FU、パクリタキセル、シスプラチン、またはゲムシタビンとのインビトロ併用効果の評価]
<A 材料及び方法>
ヒト胃癌細胞株SNU-16(American Type Culture Collection社より入手)、ヒト乳癌細胞MFM223(European Collection of cell cultures社より入手)、ヒト肺癌細胞株H1581(American Type Culture Collection社より入手)、DMS114(American Type Culture Collection社より入手)、及びLK2(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手))、ヒト子宮体癌株(AN3CA(American Type Culture Collection社より入手)、及びMFE280(DSファーマバイオメディカル株式会社より入手))、ヒト膀胱癌株(RT112/84(European Collection of cell cultures社より入手))は、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI-1640、DMEM、またはMEM培地のいずれかを用いて培養した。いずれの細胞も37℃、5% CO2で維持し、1週当たり1~2回、1:5~1:20の比率で継代・維持した。使用した細胞名と由来癌腫及びFGFRの変異情報を以下に記す。
【0200】
【0201】
<細胞生存率アッセイ>
細胞生存率の測定は、CellTiter-Gloを使用して実施した。細胞を常法により回収し、10%ウシ胎仔血清を含む上記培地に懸濁した後、96ウェルプレートに播種した。播種数は1ウェルあたり2000個/80μLとした。細胞を37℃、5% CO2で24時間インキュベートしたのち、化合物1と5-FU、パクリタキセル、シスプラチンまたはゲムシタビンないしVehicleを含む培地を10μL添加した。
【0202】
それぞれの薬剤に対する細胞の感受性を考慮して、
化合物1は、10、100及び1000nMから始まる3倍希釈系列4点及びゼロ濃度(DMSO)、
5-FUは10及び100μMから始まる3倍希釈系列5点及びゼロ濃度(DMSO)、
パクリタキセルは100nMから始まる3倍希釈系列5点及びゼロ濃度(DMSO)、
シスプラチンは60及び166μMから始まる3倍希釈系列5点及びゼロ濃度(DMSO)、
ゲムシタビンは30、100、300及び10000nMから始まる3倍希釈系列5点及びゼロ濃度(DMSO)
とし、それぞれの組み合わせについて検討した。
【0203】
薬剤添加後の細胞を、37℃、5% CO2でさらに72時間インキュベートした。細胞生存率は、1ウェルあたり100μLのCellTiter-Glo液を添加し、10分間室温でインキュベートしたのち、化学発光量をプレートリーダーであるARVOで測定し算出した。薬剤添加時の細胞生存率は、実施例6と同様にして算出した。
また、Fa(Fraction of Affect)値を、細胞生存率の100分の1の値を1から減算することにより算出した。
【0204】
次に、薬剤の各組み合わせ濃度におけるコンビネーションインデックス(CI)値を決定した。2種の薬剤の併用効果の有無の判定は、CIの値が1を超える場合、1に等しい場合、または1未満の場合に、それぞれ、拮抗、相加または相乗作用を示すと判断した。
【0205】
異なる5種の癌組織に由来する細胞株8株において、化合物1と化学療法剤とを併用した際のCI値を算出し、
図7に各条件におけるCI値をプロットした。
図7の横軸に化合物1の濃度(nM)を、凡例に抗腫瘍剤の濃度をそれぞれ記載した。
【0206】
<B 結果>
化合物1は、5-FU、パクリタキセル、シスプラチンまたはゲムシタビンとの併用において、幅広い化学療法剤の濃度域で、CI<1を示す相乗的な併用効果を示した。また、化合物1自身の濃度も、1.1~111 nMの領域において相乗的併用効果が確認された。さらに、化合物1による化学療法剤の相乗的な効果増強は、化学療法剤の作用機序に依らず認められた。加えて、相乗的な併用効果が認められた癌細胞種は、異なるタイプのFGFRの異常(増幅、点変異及び転座)を有しており、その種類に依らず相乗的効果を示すことが明らかとなった。
【0207】
より具体的に説明すると、
図7Aに示すように、化合物1の添加濃度が11~100nMの濃度域において、化合物1と5-FUとの併用は、CI<1となる相乗効果が認められ、ヒト肺癌細胞株DMS114において、CI<0.5となる強い相乗効果が認められた。
【0208】
また、
図7Bに示すように、化合物1の添加濃度が3.3~111nMの濃度域において、化合物1とシスプラチンとの併用は、CI<1となる相乗効果が認められた。
【0209】
また、
図7Cに示すように、化合物1の添加濃度が10~33nMの濃度域において、化合物1とパクリタキセルとの併用は、CI<1となる相乗効果が認められた。
【0210】
また、
図7Dに示すように、化合物1の添加濃度が3.7~111nMの濃度域において、化合物1とゲムシタビンとの併用は、CI<1となる相乗効果が認められ、ヒト子宮体癌株AN3CAにおいて、CI<0.5となる強い相乗効果が認められた。
【0211】
[実施例8:化合物1とAKT阻害剤との併用効果の評価]
<A 材料及び方法>
ヒト子宮体癌株AN3CAは、10%ウシ胎仔血清を含むMEM培地を用いて培養した。細胞は、37℃、5% CO2で維持し、1週当たり1~2回、1:5~1:20の比率で継代した。
【0212】
<細胞生存率アッセイ>
細胞生存率を測定は、CellTiter-Gloを使用して実施した。細胞を常法により回収し、10%ウシ胎仔血清を含む上記培地に懸濁した後、96ウェルプレートに播種した。細胞の播種数は、1ウェルあたり2000個/80μLとした。細胞を37℃、5% CO2で24時間インキュベートしたのち、化合物1とAKT阻害剤である8-[4-(1-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン(MK2206)ジヒドロクロリドないしVehicleを含む培地を10μL添加した。化合物1は、0.03μMを最大終濃度とする3倍希釈系列の5濃度を設定し、MK2206ジヒドロクロリドは、フリー体換算で1μMから最大とする3倍希釈系列の4濃度を設定した。コントロールとしてDMSO添加群を準備し、化合物1単独、MK2206ジヒドロクロリド単独及び両薬剤の組み合わせについて、それぞれの濃度で検討した。細胞を37℃、5% CO2でさらに72時間インキュベートした(3日目)。1ウェルあたり100μLのCellTiter-Glo液を添加し、10分間室温でインキュベートしたのち、化学発光量をプレートリーダーであるARVOで測定した。得られたデータからVehicle群に対する増殖抑制効果を算出した。
【0213】
3日目におけるコントロール群の化学発光量(S)と薬剤添加日におけるコントロール群の化学発光量(B)との大小関係から、以下に従い、各薬剤濃度における細胞増殖抑制率を計算し、グラフを作成した。
・3日目の化学発光量(S)>薬剤添加日の化学発光量(B)の場合
細胞増殖率=(濃度Xの薬剤Aで処理した際の3日目の化学発光量-B)/(S-B)
・3日目の化学発光量(S)<薬剤添加日の化学発光量(B)の場合
細胞増殖率=-(濃度Xの薬剤Aで処理した際の3日目の化学発光量-B)/B
(式中、薬剤Aは、化合物1またはMK2206ジヒドロクロリドに該当し、濃度Xは、上記希釈系列のいずれかの濃度を示す。)
【0214】
<B 結果>
FGFR2の変異を有するAN3CA子宮内膜癌細胞株において、化合物1とMK2206ジヒドロクロリドとの併用により、薬剤単独での細胞増殖抑制効果に比べ、各薬剤の濃度に依存した細胞増殖抑制効果の増強が観察された(
図8A及びB)。特に、化合物1とMK2206ジヒドロクロリドとを高濃度で併用した場合(例えば、化合物1が0.01μM以上で、MK2206が0.1μM以上の組み合わせの場合)において、薬剤添加時点での細胞数を下回る殺細胞的な効果が認められ、アポトーシスの誘導が生じていることが示された。
【0215】
上記の結果から、MK2206を1モルに対して、化合物1又はその薬学的に許容される塩を0.001~1モルの範囲で使用した場合に好適な併用効果が得られることが確認された。
【0216】
[実施例9:化合物1とAKT阻害剤との併用効果の評価(アポトーシス誘導の確認)]
<A 材料及び方法>
ヒト子宮体癌株AN3CAは、10%ウシ胎仔血清を含むMEM培地を用いて培養した。細胞は、37℃、5% CO2で維持し、1週当たり1~2回、1:5~1:20の比率で継代した。
【0217】
<細胞生存率アッセイ>
CellEventTM Caspase-3/7 Green Detection Reagent (invitrogen)を使用して、併用によるアポトーシス誘導の有無を観測した。細胞を常法により回収し、10%ウシ胎仔血清を含む上記培地に懸濁し、12ウェルプレートに播種した。播種数は1ウェルあたり1×106個/800μLとした。細胞を37℃、5% CO2で24時間インキュベートしたのち、化合物1とMK2206ジヒドロクロリドないしVehicleを含む培地を100μL添加した。化合物1の添加濃度は、終濃度10nMとし、MK2206ジヒドロクロリドはフリー体換算で300nMとし、それぞれ単独の場合(対照としてDMSOを添加)または両薬剤併用の場合を比較検討した。薬剤添加後、細胞を37℃、5% CO2で24時間インキュベートした。アポトーシスの検出は、細胞に1ウェルあたり1μLのCellEventTM Caspase-3/7 Green Detection Reagent (invitrogen)液を添加し、30分間37℃でインキュベートしたのち、蛍光顕微鏡下で明視野での細胞像と蛍光シグナルを測定し行った。認められた蛍光シグナルはCaspase3/7の誘導を示し、この強弱をアポトーシス様の細胞死の誘導の有無とした。
【0218】
<B 結果>
図9に示す通り、薬剤未添加群及び、化合物1もしくはMK2206ジヒドロクロリドを単独で添加した細胞では、細胞死の誘導はほとんど認められなかった。一方で、化合物1及びMK2206ジヒドロクロリドの両薬剤を添加した群では、細胞死の誘導を示す強い蛍光染色像が確認され、両薬剤の併用による顕著なアポトーシス誘導効果が示された。
【0219】
[実施例10:化合物1とAKT阻害剤もしくはmTOR阻害剤との併用による抗腫瘍効果に対する評価]
<A 材料及び方法>
ヒト子宮体癌株AN3CAは、10%ウシ胎仔血清を含むMEM培地で培養した。細胞は、37℃、5% CO2で維持し、1週当たり1~2回、1:5~1:20の比率で継代維持した。
【0220】
<細胞生存率アッセイ>
CellTiter-Gloを使用して、細胞生存率を測定した。細胞を常法により回収し、10%ウシ胎仔血清を含む上記培地に懸濁し、96ウェルプレートに播種した。播種数は1ウェルあたり2000個/80μLとした。37℃、5% CO2で24時間インキュベートしたのち、化合物1とMK2206ジヒドロクロリドもしくはmTOR阻害剤であるエベロリムス、ないしVehicleを含む培地を播種した細胞へ10μLずつ添加した。化合物1は、最高終濃度を0.16μMとし、2倍希釈系列の計10濃度を設定し、MK2206ジヒドロクロリドは、フリー体換算で最高終濃度を6.4μMとし、2倍希釈系列の計10濃度を設定し、エベロリムスは、最高終濃度を0.032μMとし、2倍希釈系列の計10濃度を設定した。対照にはDMSOを添加し、各薬剤単独及び化合物1との併用について検討した。細胞に薬剤を添加した後、37℃、5% CO2でさらに72時間インキュベートした。1ウェルあたり100μLのCellTiter-Glo液を添加し、10分間室温でインキュベートしたのち、化学発光をプレートリーダーであるARVOで測定した。得られたデータからVehicle群に対する増殖抑制効果を、実施例7及び8と同様に算出した。
【0221】
実施例6と同様に、各薬剤が50%の細胞増殖抑制効果を示す際の濃度であるIC50は、メジアンエフェクト解析ソフトウェアCalcuSyn 2.0(CalcuSyn,Inc.)を使用して決定した。次に、薬剤の各組み合わせ濃度におけるコンビネーションインデックス(CI)値を決定した。
【0222】
また、AN3CA細胞において化合物1とMK2206ジヒドロクロリドもしくはエベロリムスの濃度の組み合わせによって算出されたFa値から、Fa=0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9となるような両薬剤の濃度の組み合わせを抽出し、CalcuSynによる線形曲線フィッティングへ供して、CIを得た。
【0223】
<B 結果>
Fa=0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9となるような両薬剤の組み合わせにおけるCI値を算出し、表4に記載した。表の括弧内は薬剤のモル比を表す。化合物1とエベロリムスまたはMK2206ジヒドロクロリドとの併用は、試験を実施したいずれの薬効域においても、CI値が0.3を下回る強力な相乗作用を示すことが確認された(
図10A及びB、表4)。
【0224】
上記の結果から、エベロリムス1モルに対して、化合物1又はその薬学的に許容される塩を5モルの範囲で使用した場合に好適な併用効果が得られることが確認された。
【0225】
また、MK2206を1モルに対して、化合物1又はその薬学的に許容される塩0.025モルを使用した場合に好適な併用効果が得られることが確認された。
【0226】
【0227】
[実施例11:化合物1とAKT阻害剤もしくはmTOR阻害剤との併用がMAPK/ERK経路及びPI3K/AKT経路に与える影響]
<A 材料及び方法>
10%ウシ胎仔血清を含むMEM培地中において、ヒト子宮体癌株AN3CAを増殖させた。細胞は、37℃、5% CO2で維持し、1週当たり1~2回、1:5~1:20の比率で継代した。
【0228】
<ウェスタンブロット>
細胞内におけるERK、AKT、mTOR及びS6のリン酸化量は、ウェスタンブロット法により検出した。細胞を常法により回収し、10%ウシ胎仔血清を含む上記培地に懸濁し、12ウェルプレートに播種した。播種数は、1ウェルあたり1×106個/800μLとした。細胞を37℃、5% CO2で24時間インキュベートしたのち、化合物1とMK2206ジヒドロクロリドもしくはエベロリムス、ないしVehicleを含む培地を100μL添加した。化合物1は、終濃度10及び100nMとなるように細胞へ添加した。同様に、MK2206ジヒドロクロリドはフリー体換算で終濃度5μM、エベロリムスは終濃度3nMとし、薬剤単独及びそれぞれの組み合わせを検討した。対照として、終濃度が0.2%となるようDMSOを添加した。
【0229】
細胞を37℃、5% CO2で2時間インキュベートした後、RIPA Buffer[組成;50mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM NaCl、5mM EDTA、 1%(w/w)Nonidet P-40、0.1%(w/w)デオキシコレートナトリウム、 0.1%(w/w)SDS]を用いて細胞溶解液を調製した。リン酸化AKT、リン酸化ERK、リン酸化mTOR、リン酸化S6及びGAPDH量について、常法に従いウェスタンブロット法を用いて検出した。
【0230】
<B 結果>
図11に示す通り、AN3CA細胞を化合物1で24時間処理したところ、10及び100nMのいずれの濃度においても、ERKのリン酸化を強く阻害した。一方、MK2206ジヒドロクロリドまたはエベロリムス単独での処理は、AKTのリン酸化またはmTORリン酸化をそれぞれ阻害した。また、化合物1とMK2206ジヒドロクロリドとの併用においては、ERK及びAKTのリン酸化が共に阻害され、特にS6タンパク質のリン酸化に関しては、併用によってのみ強い阻害が確認された。また、化合物1とエベロリムスとの併用においては、ERKのリン酸化とS6タンパク質のリン酸化の同時阻害が、両薬剤を併用した場合にのみ観察された。
【0231】
上記の結果から、エベロリムス1モルに対して、化合物1又はその薬学的に許容される塩を0.002~0.02モルの範囲で使用した場合に好適な併用効果が得られることが確認された。
【0232】
また、MK2206を1モルに対して、化合物1又はその薬学的に許容される塩を0.002~0.02モルの範囲で使用した場合に好適な併用効果が得られることが確認された。
【0233】
[実施例12:EGFR阻害剤の抵抗性要因としてのFGF/FGFR経路の活性化と、化合物1の添加による影響]
<A 材料及び方法>
ヒト肺癌株HCC4006(American Type Culture Collection社より入手)、NCI-H1650(American Type Culture Collection社より入手)、及びNCI-H322(DSファーマバイオメディカル株式会社社より入手)は、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI培地を用いて培養した。いずれの細胞も、37℃、5% CO2で維持し、1週当たり1~2回、1:5~1:20の比率で継代維持した。
【0234】
<細胞生存率アッセイ>
CellTiter-Gloを使用して、細胞生存率を測定した。細胞を常法により回収し、10%ウシ胎仔血清を含む上記培地に懸濁し、96ウェルプレートに播種した。播種数は1ウェルあたり2000個/70μLとした。細胞を37℃、5% CO2で24時間インキュベートしたのち、化合物1、EGFR阻害剤であるゲフィチニブ、Vehicle(DMSO)、または化合物1とゲフィチニブの2薬剤を含む培地を10μL添加した。また、細胞でのFGF/FGFR経路を活性化した場合の効果を検討するため、リガンドであるFGF2もしくはFGF7を添加し、未添加時と比較した。化合物1は終濃度100nM、ゲフィチニブは終濃度10μMを最高濃度とする3倍希釈系列を計10濃度設定した。対照にはDMSOを添加し、また、FGF2は10ng/mL、FGF7は100ng/mLとなるよう培地へ加えた。
【0235】
細胞を37℃、5% CO2で72時間インキュベートした後、1ウェルあたり100μLのCellTiter-Glo液を添加し、10分間室温でインキュベートしたのち、化学発光量をプレートリーダー(ARVO)で測定した。得られたデータからVehicle群に対する増殖抑制効果を算出した。
【0236】
<B 結果>
肺癌由来のHCC4006株やNCI-H1650株は、EGFR阻害剤感受性のEGFR exon9の欠損を有する(
図12A)が、FGFRのリガンドであるFGF7を添加することで、ゲフィチニブの薬効が減弱した(
図12B及びC)。ここに化合物1を添加し、FGF添加によるFGFR活性化を阻害すると、ゲフィチニブの効果はリガンド未添加時と同程度まで回復し、またはそれ以上に増強された。EGFR変異を有さないFGFR発現株であるNCI-H322においても、同様の化合物1の効果が認められた(
図12D)。以上より、FGF/FGFRシグナルがEGFR阻害剤の抵抗・低感受性要因となっている肺癌に対して、化合物1とEGFR阻害剤との併用が有効であることが示された。
【0237】
また、上記の結果から、ゲフィチニブ1モルに対して、化合物1又はその薬学的に許容される塩を0.01~1モルの範囲で使用した場合に好適な併用効果が得られることが確認された。
本発明により、従来知られていた抗腫瘍剤の単独投与と比較して抗腫瘍効果を顕著に増大させることができると共に、薬剤抵抗性を有していた腫瘍に対する効果も得られるため、悪性腫瘍に対する化学療法の可能性を大きく広げることができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
代謝拮抗剤、アルカロイド系抗腫瘍剤、プラチナ製剤、分子標的薬、抗腫瘍性抗生物質、及びアルキル化剤から選択される1つ又は複数の他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩と併用することを特徴とする、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を含む抗腫瘍剤。
代謝拮抗剤が、5-フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、カペシタビン、及びゲムシタビンからなる群より選択される請求項1記載の抗腫瘍剤。
代謝拮抗剤1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を000.1~10モル投与することを特徴とする請求項1又は2に記載の抗腫瘍剤。
アルカロイド系抗腫瘍剤1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を0.01~200モル投与することを特徴とする請求項1又は4に記載の抗腫瘍剤。
プラチナ製剤1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を0.001~50モル投与することを特徴とする請求項1又は6に記載の抗腫瘍剤。
分子標的薬が、エベロリムス、MK2206、及びトランス-3-アミノ-1-メチル-3-(4-(3-フェニル-5H-イミダゾ[1,2-c]ピリド[3,4-e][1,3]オキサジン-2-イル)フェニル)シクロブタノールからなる群より選択される請求項1記載の抗腫瘍剤。
分子標的薬1モルに対して、(S)-1-(3-(4-アミノ-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩を1~1000モル投与することを特徴とする請求項1又は9に記載の抗腫瘍剤。
腫瘍が、肺癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆道癌、膵臓癌、結腸直腸癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、甲状腺癌、骨・軟部腫瘍、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、頭頸部癌、脳腫瘍、及び皮膚癌からなる群より選択される、請求項1~10のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。
腫瘍が胃癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がパクリタキセル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、及びシスプラチンからなる群より選択される、請求項1~11のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。
腫瘍が胆道癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がゲムシタビン、及びシスプラチンからなる群より選択される、請求項1~11のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。
腫瘍が膀胱癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩がゲムシタビン、パクリタキセル、及びシスプラチンからなる群より選択される、請求項1~11のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。
腫瘍が子宮体癌であり、かつ他の抗腫瘍効果を有する化合物又はその薬学的に許容される塩が、5―フルオロウラシル、ゲムシタビン、シスプラチン、及びパクリタキセルからなる群より選択される、請求項1~11のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。