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特開2022-24078光硬化性組成物、硬化体及び硬化体を用いたガスケット並びに防水構造及びガスケットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024078
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】光硬化性組成物、硬化体及び硬化体を用いたガスケット並びに防水構造及びガスケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/04 20060101AFI20220201BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220201BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20220201BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20220201BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C08F290/04
C08F2/44 A
C08F20/00 510
C08F290/12
C09K3/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186622
(22)【出願日】2021-11-16
(62)【分割の表示】P 2021540862の分割
【原出願日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2020057493
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】花倉 優
(57)【要約】
【課題】光硬化性組成物を硬化させた硬化物について、柔軟性がある一方で、リワーク性があり、耐熱性にも優れた性質を有する光硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】両末端にアクリロイル基を有するテレケリックアクリル重合体と、アクリロイル基を有する多官能アクリル重合体と、単官能アクリルモノマーと、親水性ヒュームドシリカ又は極性基を有するヒュームドシリカの少なくも何れか一方を含むヒュームドシリカと、を含む光硬化性組成物とした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重結合当量が1万以上のアクリル重合体と、
単官能アクリルモノマーと、
親水性ヒュームドシリカ又は極性基を有するヒュームドシリカの少なくも何れか一方を含むヒュームドシリカと、を含む、光硬化性組成物。
【請求項2】
硬化後のマルテンス硬さが0.07~0.75N/mmである請求項1記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
さらに多官能光硬化性モノマーを含む請求項1又は請求項2記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記ヒュームドシリカには、親水性ヒュームドシリカと極性基を有する疎水性ヒュームドシリカとを含む請求項1~請求項3何れか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記極性基を有するヒュームドシリカには、アミノ処理ヒュームドシリカを含む請求項1~請求項4何れか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
テレケリックアクリル重合体22~71質量%と、
多官能アクリル重合体7~54質量%と、
前記単官能アクリルモノマー3~27質量%と、
前記多官能光硬化性モノマー0~10質量%と、
前記ヒュームドシリカ2~20質量%と、を含む請求項3~請求項5何れか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
硬化後の、アルミニウムに対する70℃22時間圧縮後の固着力が0.45N/mm以下である請求項1~請求項6何れか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
硬化後にJIS K6262:2013に準拠した120℃で100時間経過後の圧縮永久歪が40%以下である請求項1~請求項7何れか1項記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項8何れか1項記載の光硬化性組成物の硬化体。
【請求項10】
請求項1~請求項8何れか1項記載の光硬化性組成物の硬化体であるガスケット。
【請求項11】
開口を有するケースと、
前記開口を閉塞する蓋体と、
前記ケース又は前記蓋体の少なくとも何れかに設けられる請求項1~請求項8何れか1項記載の光硬化性組成物の硬化体からなり、前記ケースと前記蓋体との嵌め合わせにより圧縮変形して前記開口を液密に封止するガスケットと、
を備える防水構造。
【請求項12】
請求項1~請求項8何れか1項記載の光硬化性組成物を、シール対象物に塗布する工程と、
塗布された前記光硬化性組成物に活性エネルギー線を照射する工程と、
を含むガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性組成物及びその硬化体、並びにその硬化体を用いたガスケットに関する。加えて本発明は、防水構造及びガスケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布前は液状であり塗布後に光硬化させて硬化体となる光硬化性組成物は、所望部位に塗布した後に十分に硬化させると、封止材やガスケット等として用いることができる。中でもガスケットとするには柔軟性が必要となるため、イソプレン骨格、ブタジエン骨格、又はウレタン骨格等からなりアクリロイル基を有するゴム系オリゴマーを主成分とする液状組成物を光硬化するタイプのガスケットが知られている。こうした技術は例えば、特開2013-49805号公報(特許文献1)等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-49805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした技術は柔軟な処方にすると表面の粘着性が発現し易く、リワーク性に劣る課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、両末端にアクリロイル基を有するテレケリックアクリル重合体と、アクリロイル基を有する多官能アクリル重合体と、単官能アクリルモノマーと、親水性ヒュームドシリカ又は極性基を有するヒュームドシリカの少なくも何れか一方を含むヒュームドシリカと、を含み、硬化後のマルテンス硬さが0.07~0.75N/mmである光硬化性組成物を特徴とする。
【0006】
本発明の一態様は、両末端にアクリロイル基を有するテレケリックアクリル重合体と、アクリロイル基を有する多官能アクリル重合体と、単官能アクリルモノマーと、親水性ヒュームドシリカ又は極性基を有するヒュームドシリカの少なくも何れか一方を含むヒュームドシリカと、を含むため、耐熱性を備えながら、柔軟性、リワーク性に優れる光硬化性組成物である。
【0007】
硬化後のマルテンス硬さが0.07~0.75N/mmであるため、被着体へ大きな応力を与えることがなく、光硬化性組成物の硬化体に起因する被着体の歪みを抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様は、二重結合当量が1万以上のアクリル重合体と、単官能アクリルモノマーと、親水性ヒュームドシリカ又は極性基を有するヒュームドシリカの少なくも何れか一方を含むヒュームドシリカと、を含み、硬化後のマルテンス硬さが0.07~0.75N/mmである光硬化性組成物である。
【0009】
本発明の一態様を、二重結合当量が1万以上のアクリル重合体と、単官能アクリルモノマーと、親水性ヒュームドシリカ又は極性基を有するヒュームドシリカの少なくとも何れか一方を含むヒュームドシリカと、を含むため、耐熱性を備えながら、柔軟性、リワーク性に優れる光硬化性組成物であり、硬化後のマルテンス硬さが0.07~0.75N/mmであることから、その硬化体は耐熱性を備えながら、柔軟性、リワーク性に優れるとともに、被着体へ大きな応力を与えることがなく、光硬化性組成物の硬化体に起因する被着体の歪みを抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様は、さらに多官能光硬化性モノマーを含む光硬化性組成物である。
本発明の一態様は、さらに多官能光硬化性モノマーを含むため、超高温圧縮永久歪を改善することができる。
【0011】
本発明の一態様は、前記ヒュームドシリカには、親水性ヒュームドシリカと極性基を有する疎水性ヒュームドシリカとを含む光硬化性組成物である。本発明の一態様では、前記ヒュームドシリカに親水性ヒュームドシリカと極性基を有する疎水性ヒュームドシリカとを含むことから、テレケリックアクリル重合体等の重合体成分に対するヒュームドシリカの配合割合が少なくても耐熱性を備えつつ、チキソ性を高めることができることから、光硬化性組成物を塗布した際に光硬化性組成物が硬化前に広がってしまうことを抑制することができる。また、ヒュームドシリカの配合に伴う硬化物の硬度上昇を最小限にとどめることができ、柔軟性の高い光硬化性組成物の硬化体が得られる。
【0012】
本発明の一態様は、前記ヒュームドシリカには、アミノ処理ヒュームドシリカを含む光硬化性組成物である。本発明の一態様を、前記ヒュームドシリカにアミノ処理ヒュームドシリカを含む光硬化性組成物としたため、テレケリックアクリル重合体等の重合体成分に対するヒュームドシリカの配合割合をさらに少なくしてもチキソ性を高めることができ、光硬化性組成物を塗布した際に光硬化性組成物が硬化前に広がってしまうことを抑制することができる。
【0013】
本発明の一態様は、前記テレケリックアクリル重合体22~71質量%と、前記多官能アクリル重合体7~54質量%と、前記単官能アクリルモノマー3~27質量%と、前記多官能光硬化性モノマー0~10質量%と、前記ヒュームドシリカ2~20質量%と、を含む光硬化性組成物である。本発明の一態様では、前記テレケリックアクリル重合体22~71質量%と、前記多官能アクリル重合体7~54質量%と、前記単官能アクリルモノマー3~27質量%と、前記多官能光硬化性モノマー0~10質量%と、前記ヒュームドシリカ2~20質量%と、を含むものとしたため、耐熱性を備えながら、柔軟性、リワーク性に優れる光硬化性組成物である。
【0014】
本発明の一態様は、硬化後の、アルミニウムに対する70℃22時間圧縮後の固着力が0.45N/mm以下である光硬化性組成物である。本発明の一態様では硬化後の、アルミニウムに対する70℃22時間圧縮後の固着力が0.45N/mm以下であるため、タックが少なく、リワーク性に優れている。
【0015】
本発明の一態様は、硬化後にJIS K6262:2013に準拠した120℃で100時間経過後の圧縮永久歪が40%以下である光硬化性組成物である。本発明の一態様では、硬化後にJIS K6262:2013に準拠した120℃で100時間経過後の圧縮永久歪が40%以下である光硬化性組成物としたため、耐熱性を有している。さらに、硬化後の前記圧縮永久歪が30%以下である光硬化性組成物としたことで、耐熱性に優れている。
【0016】
本発明の一態様は、前記何れかの光硬化性組成物の硬化体である。本発明の一態様では前記何れかの光硬化性組成物の硬化体であるため、耐熱性を備えながら、柔軟性、リワーク性に優れる硬化体である。
【0017】
本発明の一態様は、前記何れかの光硬化性組成物の硬化体であるガスケットとした。本発明の一態様では、前記何れかの光硬化性組成物の硬化体であるガスケットとしたため、耐熱性を備えながら、柔軟性、リワーク性に優れるガスケットである。
【0018】
本発明の一態様は、開口を有するケースと、前記開口を閉塞する蓋体と、前記ケース又は前記蓋体の少なくとも何れかに設けられる前記何れかの光硬化性組成物の硬化体からなり、前記ケースと前記蓋体との嵌め合わせにより圧縮変形して前記開口を液密に封止するガスケットと、を備える防水構造である。
前記何れかの光硬化性組成物の硬化体であるガスケットを備える防水構造としたため、耐熱性を備えながら、柔軟性、リワーク性に優れるガスケットである。
【0019】
本発明の一態様は、前記何れかの光硬化性組成物を、シール対象物に塗布する工程と、塗布された前記光硬化性組成物に活性エネルギー線を照射する工程と、を含むガスケットの製造方法である。このように製造されたガスケットは、耐熱性を備えながら、柔軟性、リワーク性に優れるガスケットである。
【0020】
本明細書、請求の範囲では、アクリルモノマー、アクリル重合体、アクリロイル基について、「アクリルモノマー」は(メタ)アクリルモノマーと同義であり、アクリル酸エステルモノマーだけでなくメタクリル酸エステルモノマーを含む意味で用いている。同様に「アクリル重合体」は、(メタ)アクリル重合体と同義であり、アクリル酸エステル重合体の他にメタクリル酸エステル重合体をも含む意味で用いている。同様に「アクリロイル基」は、(メタ)アクリロイル基と同義であり、アクリロイル基の他にメタクリロイル基をも含む意味で用いている。また、アクリルモノマー及びアクリル重合体の何れについてもラジカル重合性基を備える化合物であり、ラジカル重合反応後のものは「硬化体」と表記することで区別している。この光硬化性組成物は、アクリルモノマー及びアクリル重合体の(メタ)アクリロイル基を光硬化反応させて硬化体とすることができるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、硬化物としたときに柔軟性がある一方で、リワーク性があり、耐熱性にも優れた性質を有する光硬化性組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<光硬化性組成物>:
一の実施形態による光硬化性組成物によれば、両末端にアクリロイル基を有するテレケリックアクリル重合体と、アクリロイル基を有する多官能アクリル重合体と、単官能アクリルモノマーと、ヒュームドシリカと、を含み、硬化後のマルテンス硬さが0.07~0.75N/mmである光硬化性組成物である。
【0023】
両末端にアクリロイル基を有するテレケリックアクリル重合体(以下単に「テレケリックアクリル重合体」ともいう)は、(メタ)アクリルモノマーの重合で形成された主鎖を有し、重量平均分子量(Mw)が5000~55000のアクリロイル両末端反応型ポリアクリレートオリゴマー又はポリマーであって、高い耐熱性、耐油性、耐薬品性を有し、柔軟なゴム弾性をも有する重合体である。末端にアクリロイル基を有することでラジカル重合型の光硬化をさせることができる。
ここで、(メタ)アクリルモノマーの重合は特に限定されないが、リビング重合で行うことが好ましい。主鎖をリビング重合により重合したテレケリックアクリル重合体の硬化物は、均一な3次元マトリックスを形成することができ、柔軟で耐熱性に優れる硬化物となる。また、前記リビング重合の中でも、工業的な観点からはリビングラジカル重合法によって重合したテレケリックアクリル重合体を用いることが特に好ましい。前記テレケリックアクリル重合体はMw/Mnの比が1から2までの間であることが好ましい。
【0024】
テレケリックアクリル重合体の主鎖は(メタ)アクリル酸又はそのエステルが重合した構成をしており、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸アルコキシエステル等を構成単位として合成されたものである。なお、前記テレケリックアクリル重合体を構成するモノマーは単一の構成単位又は複数の構成単位で合成されたものであってもよい。テレケリックアクリル重合体としては、カネカ社製の「XMAP」(商品名)を用いることができる。
【0025】
テレケリックアクリル重合体は、光硬化性組成物中の18~80質量%とすることができ、21~75質量%がより好ましく、22~71質量%がさらに好ましい。テレケリックアクリル重合体を用いることで光硬化性組成物の硬化物に耐熱性、柔軟性、そしてリワーク性を与えることができる。テレケリックアクリル重合体の含有量が18質量%未満であると圧縮永久歪が悪化し、所定の耐熱性が得られないおそれがある。また、80質量%を超えると、タックが高くなりリワーク性が損なわれるおそれがある。テレケリックアクリル重合体の含有量はリワーク性向上の観点からは少ない方が好ましいが、耐熱性の観点からは多い方が好ましい。
【0026】
アクリロイル基を有する多官能アクリル重合体(以下単に「多官能アクリル重合体」ともいう)は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体を骨格として、分子量(Mw)30000~400000のアクリロイル基を有する反応性ポリアクリレートポリマーであって、複数の(メタ)アクリロイル基を架橋することで光硬化性組成物の架橋密度を上げることができる重合体である。また、本明細書、請求の範囲における多官能アクリル重合体には上記テレケリックアクリル重合体を含まない。多官能アクリル重合体というときはテレケリックアクリル重合体以外の多官能アクリル重合体を意図したものだからである。
【0027】
多官能アクリル重合体の主鎖は、(メタ)アクリル酸又はそのエステルが重合した構成をしており、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸アルコキシエステル等を構成単位として合成されたものである。なお、前記多官能アクリル重合体を構成するモノマーは単一のものであってもよく、複数のものであってもよい。
【0028】
多官能アクリル重合体は、(メタ)アクリロイル基を複数有しているものであり、「多官能」とは、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有していることを意味する。また、3官能以上であることが好ましい。
なお、上記多官能アクリル重合体は、(メタ)アクリロイル基を複数有しており、(メタ)アクリル酸又はそのエステルが重合した構成の主鎖を有するものであればよく、例えば、前記主鎖の他にアミド結合やエーテル結合、アクリル酸に由来しないエステル結合などを含んだものでも良い。また、(メタ)アクリロイル基以外の官能基として、カルボキシル基やヒドロキシル基、グリシジル基などを備えていてもよい。
こうしたアクリルアクリレートの市販品としては、根上工業社製の「アートキュア」(商品名)が挙げられる。
【0029】
多官能アクリル重合体は、光硬化性組成物中の3~75質量%とすることができ、5~60質量%がより好ましく、7~54質量%がさらに好ましい。この多官能アクリル重合体を用いることで光硬化性組成物の硬化物に耐熱性、柔軟性、そしてリワーク性を与えることができる。多官能アクリル重合体の含有量が3質量%未満であるとタック性が悪化し、リワーク性が損なわれるおそれがある。また、75質量%を超えると、粘度が上昇するとともに、タック性が悪化するおそれがある。この多官能アクリル重合体は、タック性の観点からは多くもなく少なくもない方が好ましく、粘度の観点からは少ない方が好ましい。
【0030】
そして、テレケリックアクリル重合体と多官能アクリル重合体の合計量は、光硬化性組成物中の60~90質量%とすることができ、65~85質量%がより好ましく、70~80質量%がさらに好ましい。これらの合計が60質量%未満であると硬くなり、圧縮永久歪が悪化し、耐熱性が悪化するおそれがある。また、90質量%を超えると、タック性が悪化し、リワーク性が悪化するおそれがある。
【0031】
二重結合当量とは、該当する重合体の分子量を、1分子あたりのエチレン性二重結合の数で除した値である。両末端にアクリロイル基を有するテレケリックアクリル重合体と、アクリロイル基を有する多官能アクリル重合体とはともにエチレン性二重結合を有することから、これら両者ともに二重結合当量を表すことができる。そして、両末端にアクリロイル基を有するテレケリックアクリル重合体、及びアクリロイル基を有する多官能アクリル重合体は、ともに二重結合当量が10000以上であることが好ましく10000~15000、10000~20000、10000~50000は好ましい一態様である。二重結合当量が10000より少なければ、硬く柔軟性が乏しく、耐久性、に劣るおそれがあり、大きすぎると共有結合による架橋密度が低くなるとともに、分子鎖の絡まり合いよる疑似架橋が増えることから、高温における圧縮永久歪が悪化するおそれがある。また、リワーク性の観点からは、二重結合当量が10000に近いものを用いることが好ましい。
【0032】
単官能アクリルモノマーは、光ラジカル重合開始剤により硬化する成分であり、硬化前は低粘度の液体である。単官能アクリルモノマーとしては、単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマー、単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマー、単官能エーテル系(メタ)アクリル酸エステルモノマー、単官能イミド系(メタ)アクリル酸エステルモノマーなどが挙げられる。
【0033】
ここで、「単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマー」は、単官能脂環式アクリル酸エステルモノマー及び単官能脂環式メタクリル酸エステルモノマーを含む意味である。「単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマー」は、単官能脂肪族アクリル酸エステルモノマー及び単官能脂肪族メタクリル酸エステルモノマーを含む意味である。単官能エーテル系(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び単官能イミド系(メタ)アクリル酸エステルモノマーについても同様である。さらに、本発明において含んでもよい「単官能高極性モノマー」は、極性基を含む単官能アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマー、又は、単官能のアクリルアミド基を有するモノマーを含む意味である。
【0034】
単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマー:
単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、低粘度の液状組成物であり、光硬化性組成物の粘度を調整する成分である。また、硬化体を強靭にしてヤング率を高めることができ、さらに接着力を高めつつ、被着物に対して硬化体を剥したときに糊残りを少なくすることができる。加えて、この成分の割合を多くすると耐熱性と防湿性を高めることで、高温環境下での圧縮永久歪を小さくすることができる。
【0035】
単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして具体的には、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート等が挙げられる。
【0036】
単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマー:
単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーもまた低粘度の液状組成物であり、前述の単官能脂環式(メタ)アクリル酸エステルモノマーと同様に光硬化性組成物の粘度を調整することができる成分である。単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーを配合することで、硬化体のヤング率を下げ、柔軟性を高めることができる。
【0037】
単官能脂肪族(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして具体的には、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、ブトキシエチルアクリレートなどの脂肪族エーテル系(メタ)アクリル酸エステルモノマーや、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソノニルアクリレート、n-オクチルアクリレート等の脂肪族炭化水素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられる。脂肪族炭化水素系(メタ)アクリル酸エステルモノマーを使用することで、光硬化性の樹脂組成物の粘度を下げることができ、また硬化体のヤング率を下げることで柔軟性を高めることができる。これらの単官能アクリルモノマーは、リワーク性の観点から27質量%以下の割合で含まれることが好ましい。
【0038】
単官能イミド系(メタ)アクリル酸エステルモノマー:
単官能イミド系(メタ)アクリル酸エステルモノマーも他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと同様に、光硬化性組成物の粘度を調整することができる成分であり、単官能イミド系(メタ)アクリル酸エステルモノマーを配合することで、硬化体のヤング率を下げ、柔軟性を高めることができる。また、高温環境下での圧縮永久歪を小さくすることができる。さらに、多官能光硬化性モノマーの中でも比較的相溶性が悪いマレイミド化合物を併用する場合には、マレイミド化合物を均一に混合しやすくすることができる。
単官能イミド系(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして具体的には、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-(アクリロイルオキシ)スクシンイミド、3-フタルイミドプロピオン酸アクリレート等を挙げることができる。
【0039】
これらの中でも脂環式アクリルモノマーは、脂肪族アクリルモノマーを添加しても硬化体の耐熱性が上がらないのに対し、脂環式アクリルモノマーを用いることで硬化体の柔軟性を維持しながら耐熱性を高めることができる。また、脂環式アクリルモノマーの硬化体は、電子素子や基板に固着し、防水性等を発現する。シール材として用いる場合には接着力を高めつつ、被着物に対して硬化体を剥したときに糊残りを少なくすることができる。また、硬化体を強靭にしてヤング率を高める効果がある。加えて、この成分の割合を多くすると防湿性を高めることができる。また、硬化体の表面のタック性を抑えることができる。
【0040】
脂環式アクリルモノマーについては、アクリル酸エステルモノマーとメタクリル酸エステルモノマーとを比較すると、アクリル酸エステルモノマーを用いることが好ましい。アクリル酸エステルモノマーの方が光硬化性に優れるものが多く、比較的低い積算光量で硬化できることに加えて、硬化体が柔軟になる傾向があるためである。
【0041】
脂環式アクリルモノマー等の単官能アクリルモノマーは、光硬化性組成物中の2~35質量%とすることができ、2~28質量%がより好ましく、3~27質量%がさらに好ましく、6~23質量%が特に好ましい。脂環式アクリルモノマーを用いることで光硬化性組成物の硬化物に耐熱性、柔軟性、そしてリワーク性を与えることができる。また、光硬化性組成物の粘度を好適なものとすることができる。脂環式アクリルモノマーの含有量が5質量%未満であるとタック性が悪化し、リワーク性が損なわれるおそれがある。一方、35質量%を超えると、圧縮永久歪が悪化し、耐熱性が悪化するおそれがある。脂環式アクリルモノマーの含有量は粘度の観点からは多くもなく少なくもない方が好ましい。脂環式アクリルモノマーを光硬化性組成物中に3~27質量%含ませることは好ましい一態様である。
【0042】
さらには、架橋剤として機能する多官能光硬化性モノマーを含むことができる。多官能光硬化性モノマーとして具体的には、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン、等の極性基含有多官能光硬化性モノマー、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等の脂肪族骨格を有する多官能光硬化性モノマー、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の芳香族骨格を有する多官能光硬化性モノマーを挙げることができる。なお、これらの架橋剤の説明で「極性基を有する」又は「極性基含有」という場合の「極性基」は、「光硬化性基以外の極性基」を意味し、換言すれば光開始剤による硬化反応に寄与する極性基以外の極性基を意味する。したがって、単官能アクリルモノマーに含まれるアクリル基やメタクリル基、上記マレイミドにおけるマレイミド基は、この場合の極性基からは除かれる。
【0043】
多官能光硬化性モノマーの中でも硬さの上昇を抑える観点からは光硬化性基数は少ないほうが好ましい。さらにまた、超高温圧縮永久歪をも低く抑えるという観点からはこれに加えて脂肪族骨格を有し、極性基を有しないほうが好ましく、トリメチロールプロパントリアクリレート、又はペンタエリスリトールテトラアクリレートはその例である。
【0044】
多官能光硬化性モノマーは必ずしも必須の成分ではないが、含有する場合には光硬化性組成物中の0.5~10質量%とすることができ、好ましくは0.7~6.0質量%であり、より好ましくは1.8~4.5質量%である。多官能光硬化性モノマーをさらに加えることで光硬化性組成物の硬化物における超高温圧縮永久歪が改善する。この多官能光硬化性モノマーの含有量が0.5質量%未満であると超高温圧縮永久歪の改善効果が得られない。一方、10質量%を超えると伸長性や柔軟性が悪化するという欠点が生じる。
【0045】
光硬化性組成物にはチキソ性付与剤を添加している。チキソ性付与剤の添加により、チキソ性を高め、塗布時の液だれを抑制して、塗布した光硬化性組成物の形状保持性(形状維持性)を高めることができるからである。例えば、ディスペンサを用いて光硬化性組成物を立体物に塗布する場合に、光硬化性組成物を塗布した形状のまま硬化させることができるため、硬化体をガスケット材料又は封止材として用いる場合に好適である。
【0046】
チキソ性付与剤の具体例としては、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの無機粉体からなる無機系のチキソ性付与剤;水添ヒマシ油、アマイドワックス、カルボキシメチルセルロースなどの有機系のチキソ性付与剤などが挙げられるが、無機粉体が好ましく、その中でもシリカが好ましく、ヒュームドシリカがより好ましい。その理由は、無機粉体は所定の表面処理を行うことで光硬化性組成物の水素イオン指数(pH)を制御しやすく、無機粉体の中でもシリカはそうした表面処理済みのものを入手し易いためである。
【0047】
ヒュームドシリカには、極性基を有するヒュームドシリカ、極性基を有さない疎水性ヒュームドシリカ、親水性ヒュームドシリカなどの異なるヒュームドシリカがあり、何れのヒュームドシリカもタックの低減効果がある。しかしながら、リワーク性向上の観点から親水性ヒュームドシリカ又は極性基を有するヒュームドシリカの何れか、あるいはこれらの併用とすることが好ましい。また、極性基を有するヒュームドシリカとしては、アミノ処理ヒュームドシリカや(メタ)アクリロイルシリカが挙げられる。アミノ処理ヒュームドシリカのpHは、8.5~11.0である。一方、(メタ)アクリロイルシリカは、タック低減効果に優れる。
【0048】
チキソ性付与剤についてヒュームドシリカを用いた場合は、光硬化性組成物中の20質量%未満とすることができ、1.0~10質量%がより好ましく、2.5~5.0質量%がさらに好ましい。チキソ性付与剤を用いることで光硬化性組成物の形状保持性が高まり、硬化物に耐熱性、リワーク性を与えることができる。チキソ性付与剤を含有しないと、タック性が悪化し、リワーク性が損なわれるおそれがある。また、20質量%を超えると、粘度が上昇し、また硬くなるおそれがある。チキソ性付与剤は、リワーク性向上の観点からは多い方が好ましいが、粘度又は硬さの観点からは少ない方が好ましい。ヒュームドシリカを光硬化性組成物中に2~10質量%含むことは好ましい一態様である。
【0049】
ヒュームドシリカの添加量は、そのうちの何れか1種を用いるよりも、異なる種類のものを併用することで、タックの低減に際して添加量が少なくて済むという利点がある。また、ヒュームドシリカの中でも親水性ヒュームドシリカとアミノ処理ヒュームドシリカを併用すると、他のシリカを同濃度加える場合と比べてチキソ性を2倍程度高めることができる。また、親水性ヒュームドシリカと極性基を有するヒュームドシリカとを混合して用いる場合の両者の混合比は、親水性ヒュームドシリカ:極性基を有するヒュームドシリカ=4:1~1:4とすることが好ましい。このような比率でチキソ性を効果的に高めることができる。
【0050】
光ラジカル重合開始剤は、ラジカルを生じさせて、両末端にアクリロイル基を有するテレケリックアクリル重合体と、アクリロイル基を有する多官能アクリル重合体と、単官能アクリルモノマーとを光ラジカル重合反応で硬化させるものである。また、例えばヒュームドシリカがアクリロイル基を有する場合には、前記アクリロイル基も光ラジカル重合反応させることができるものである。光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、アシルフォスフィン系、オキシムエステル系、アルキルフェノン系、分子内水素引き抜き型等の光ラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0051】
アルキルフェノン系としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルーフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-メチルプロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチルフェノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0052】
アシルフォスフィン系(アシルフォスフィンオキサイド系)としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0053】
分子内水素引き抜き型としては、ベンゾイル蟻酸メチル、オキシフェニル酢酸-2-2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシエチルエステルとオキシフェニル酢酸-2-2-ヒドロキシエトキシエチルエステルの混合物等が挙げられる。
【0054】
オキシムエステル系(オキシフェニル酢酸エステル系)としては、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセトオキシム)等が挙げられる。
【0055】
光ラジカル重合開始剤には、例えば、IGM RESINS社製「Omnirad184」、「Omnirad907」、「Omnirad369」、「Omnirad1173」、「Omnirad127」、「Omnirad TPO」、「Omnirad819」、「Omnirad754」、「Omnirad MBF」(以上商品名)、BASF社製「Irgacure OXE01」、「Irgacure OXE02」、「Irgacure OXE03」、「Irgacure OXE04」(以上商品名)等が挙げられる。
【0056】
光ラジカル重合開始剤の添加量は、光硬化性組成物100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、1~8質量部がより好ましい。0.1質量部よりも少ないと重合が不十分で硬化が終了しない場合もあり得るからであり、10質量部を超えて加えても重合度を高める効果がそれほど増加しないからである。
【0057】
光硬化性組成物には必要により可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤を添加することで硬化体に高い柔軟性を付与することができ、ガスケット又はシール材として用いる場合に好適である。可塑剤の具体例としては、パラフィン系オイル、オレフィン系オイル、ナフテン系オイル、エステル系可塑剤が挙げられ、エステル系可塑剤の具体例としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ化植物油、セバシン酸エステル、アゼラシン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル等が挙げられる。可塑剤は、光硬化性組成物100質量%に対して30質量%以下であることが好ましい。30質量%を超えると硬化体から可塑剤がブリードアウトするおそれが高まる。
【0058】
光硬化性組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種添加剤を適宜配合することができる。上記可塑剤やチキソ性付与剤の他、例えば、シランカップリング剤、重合禁止剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱伝導性充填剤、その他の機能性充填剤等が挙げられる。
【0059】
光硬化性組成物の粘度は、25℃で5~2000Pa・sとすることが好ましく、10~1000Pa・sとすることがより好ましく、20~300Pa・sとすることがさらに好ましい。5Pa・s未満の場合には、電子素子等に対してディスペンサで塗布する際に液だれが生じ易い。一方、2000Pa・sを超えると、ディスペンサによる塗布が困難となるおそれがある。また、光硬化性組成物の粘度が10~1000Pa・sの範囲であれば、多くのディスペンサ装置に適合して、生産効率を高めることができる。また、20Pa・s以上とするとことで塗布してから硬化するまでの間の形状保持性が高まり、200Pa・s以下とすることで、より細いニードルを用いた精細なディスペンスが可能となる。なお、上記粘度はB型回転粘度計を用い、回転速度10rpm、測定温度25℃で測定した値とすることができる。
【0060】
光硬化性組成物を塗布した後、光照射して硬化させるまでの間に、塗布したときの形状をどの程度保つことができるかをチキソ比で表すことができる。光硬化性組成物を塗布した際に直ぐに液だれし広がってしまうよりは塗布時の形状を維持した方がシール材又はガスケットとして利用するためには便宜である。
【0061】
こうした観点から、光硬化性組成物のチキソ比は、25℃で2以上とすることが好ましく、4以上とすることがより好ましい。チキソ比を2以上とすることで、光硬化性組成物を塗布した際に光硬化性組成物が硬化前に広がってしまうことを抑制することができる。したがって、封止材、シール材又はガスケット等の用途として好ましい。さらにチキソ比を4以上とすることで、特に粘度が低い光硬化性組成物であっても前記広がりを低減でき、より細いニードルを用いた精細な形状を形成可能となる。なお、上記チキソ比はB型回転粘度計を用い、測定温度25℃で回転速度1rpm及び10rpmにおける粘度を測定し、その比(粘度(1rpm)/粘度(10rpm))として算出した値である。なお、チキソ比の上限は限定するものではないが、概ね20以下とすることが好ましい。
【0062】
<光硬化性組成物の硬化体>:
光硬化性組成物は、光硬化反応により硬化させて接着剤、マスキング材、ガスケット、シール材、封止材等の種々の用途に利用することができる。例えば、電子基板等に設けた電子素子や、金属が露出した部分に光硬化性組成物を塗布して被着物を覆った後、紫外線等の活性エネルギー線照射により光硬化性組成物を光硬化させて用いればシール材とすることができる。あるいはケース等のシール対象物に光硬化性組成物を塗布した後、カバーで覆い、光硬化性組成物に紫外線灯の活性エネルギー線を照射してケース等をカバーで封止すればガスケットとすることもできる。なお、紫外線以外にも活性エネルギー線として、可視光線又は電子線等、(メタ)アクリロイル基を活性化するエネルギー線、及び光ラジカル重合開始剤においてラジカルを生成させるエネルギー線を利用できる。紫外線を照射する光源には例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ又は紫外線LED等を挙げることができる。
【0063】
また、本発明の光硬化性組成物の硬化体は、上記所定の組成を有することから耐熱性を備えている。そして、ナノインデンテーション試験で測定されるマルテンス硬さを0.07~0.75N/mmの範囲とすることで、所定の可撓性及び柔軟性を備え、ガスケットの用途としてより好適となる。マルテンス硬さの測定方法は、具体的には実施例に記載の方法とすることができる。
【0064】
ガスケットとしての利用では、開口を有するケースと、この開口を閉塞するカバー(又は蓋、蓋体)との間で、これらの両者の少なくとも何れかに前記硬化体を設けた防水構造として構成することができるので、ケースとカバーとの嵌め合わせにより前記硬化体を圧縮変形させて用いることができる。また、開口を液密に封止することができるので防水構造を好適に形成することもできる。
【0065】
ガスケット用途等として利用すれば、ケースにカバーを着ける作業中に誤ったカバーを装着したり、カバーの装着位置がズレたりするような作業ミスや、内部に挿入されたデバイス等の部品に不具合が見つかった場合の部品の修理、交換等の追加作業が生じる場合に、一旦取り付けたカバーを容易にケースから取り外すことができるというリワーク性に優れるため、こうした作業を容易に行うことができる。
【0066】
以上のように本発明の一態様によれば、硬化物としたときに柔軟性がある一方で、リワーク性があり、耐熱性にも優れた性質を有する光硬化性組成物が得られる。また本発明の一態様によれば、ガスケットとして利用できる他、接着剤、マスキング材、シール材、封止材等の種々の用途に利用できる光硬化性組成物の硬化体が得られる。さらにまた本発明の一態様によれば、リワーク性があり、耐熱性にも優れた性質を有する防水構造が得られる。
【0067】
上記実施形態は本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態の変更又は公知技術の付加や、組合せ等を行い得るものであり、それらの技術もまた本発明の範囲に含まれるものである。
【実施例0068】
次に実施例(比較例)に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。以下の各表に示す組成からなる光硬化性組成物、及びそれらの光硬化性組成物を硬化させた硬化体を作製し、試料1~試料35とした。そしてこれらの試料について各種の試験を行った。
【0069】
<試料1~試料48の作製>:
両末端にアクリロイル基を有するテレケリックアクリル重合体と、アクリロイル基を有する多官能アクリル重合体と、アクリルモノマーと、ヒュームドシリカ等の各原材料を、各試料に応じた組成となるように混合し、これらが十分に混ぜ合わされた後に光ラジカル重合開始剤を混合して試料1~試料48の光硬化性組成物を作製した。各試料に用いた原材料の種類及び重量(%)、若しくは組成は以下の各表に示した。こうして作製した各試料の光硬化性組成物は、照度250mW/cm、積算光量5000mJ/cmの条件で紫外線(高圧水銀灯)を照射して試料1~試料48の硬化体とした。
【0070】
以下に示す各表中、テレケリックアクリル重合体としては、「XMAP」(商品名、カネカ社製)を、多官能アクリル重合体としては、「アートキュアRA-341」(商品名、根上工業社製、分子量Mw=70000)を、ポリウレタンアクリレートとしては、「UV3000B」(商品名、日本合成化学工業社製)を、ポリイソプレンアクリレートとしては、「UC203」(商品名、クラレ社製)を、ポリブタジエンアクリレートとしては、「BAC45」(商品名、大阪有機化学工業社製)をそれぞれ用いた。また、単官能アクリルモノマーとして、単官能脂環式アクリルモノマーとしては、イソボルニルアクリレート又はシクロヘキシルアクリレートを、単官能エーテル系アクリルモノマーとしては、エトキシジエチレン又はグリコールアクリレートを、単官能脂肪族アクリルモノマーとしては、ラウリルアクリレートを、単官能イミド系アクリルモノマーとして、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドを、それぞれ用いた。あるいはまた、アミドモノマーとして、アクロイルモルフォリンを用いた。
【0071】
また、各表中、チキソ性付与剤としては、親水性ヒュームドシリカである「アエロジル200」、極性基を有さない疎水性ヒュームドシリカである「アエロジルRX200」、(メタ)アクリロイル処理ヒュームドシリカである「アエロジルR7200」、そしてアミノ処理ヒュームドシリカである「アエロジルRA200H」、(何れも商品名、日本アエロジル社製)を用いた。また、重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤の「Omnirad1173」又は「Omnirad127」を、それぞれ用いた。多官能光硬化性モノマーを用いる場合には表中に示した物質をそれぞれ用いた。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
<各種試験と評価>:
上記各試料について、以下に説明する各種の試験を行い光硬化性組成物及びその硬化体の特性を評価した。
【0077】
マルテンス硬さ(N/mm):
ナノインデンター(ELIONIX製、ENT-2100)を用いて、各試料の硬化体のナノインデンテーション試験を実施した。試験片は、厚み1mmのガラス板に、厚み200μmになるように光硬化性組成物を塗布し、高圧水銀灯を使用して、照度250mW/cm、積算光量5000mJ/cmの条件で紫外線を照射することで硬化させて作製した硬化体を用いた。そして、前記ナノインデンターで、押し込み最大荷重0.1mN、押し込み速度0.01mN/秒の条件で硬化体のマルテンス硬さを測定した。その結果を各表に示した。
【0078】
高温圧縮永久歪:
各試料について、それぞれ以下に示す条件で試験片を作製してJIS K6262:2013に準拠する治具及び条件で圧縮永久歪を測定した。
光硬化性組成物を厚み約1mmになるように塗布して形成した硬化物を準備した。この硬化物を重ねて、縦10mm×横10mm×厚み4mm(初期厚み:t)の試験片を作製した(このとき、硬化物は4枚重ねとなる)。さらに、上記試験片を上記JIS規格に準じる治具で25%圧縮し、恒温槽に入れて120℃の雰囲気温度で100時間放置した。なお、治具で試験片を圧縮する際には潤滑剤は用いず、治具と試験片の間にはシリコーン離型層付きのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み0.1mm)を介在させた。次いで、治具を恒温槽から取り出し、圧縮後の試験片を治具から取り出した後に、室温(即ち23±2℃)雰囲気下で30分間放置した後に厚み(t)を測定した。初期厚み(t)に対する試験後の厚み(t)を以下に示す式により算出した。各試料について同様の上記試験を3回行い、その相加平均を算出した。結果を各表の高温圧縮永久歪の欄に記載した。なお、高温圧縮永久歪は、小さい方が好ましい。
【0079】
高温圧縮永久歪(CS(%))={(t-t)/(0.25×t)}×100
【0080】
超高温圧縮永久歪:
前記高温圧縮永久歪の測定方法のうち、恒温槽に入れて120℃の雰囲気温度で100時間放置した条件を150℃に代えた以外は同じ条件、方法で圧縮永久歪を測定し、結果を各表の超高温圧縮永久歪の欄に記載した。また、前記高温圧縮永久歪の値と、超高温圧縮永久歪の値の差を圧縮永久歪低下量とし、各表に記載した。なお、超高温圧縮永久歪もその値は小さい方が好ましい。また、高温圧縮永久歪と超高温圧縮永久歪の差が小さいこと、即ち圧縮永久歪低下量が小さい方が好ましい。数値が小さい方が150℃という高温に放置されたときの影響が小さいからである。
【0081】
固着力試験:
固着力試験を次のとおり行った。最初に、各試料の塗布対象となる電子機器のケースを模した塗布基材と、ケースを密閉する蓋を模した圧縮基材とを準備した。ここで、塗布基材は、外形が80mm×80mm×15mmの、表面が光沢面であるポリカーボネート樹脂製のブロックであり、圧縮基材は、外形が74mm×74mm×15mmであり、圧縮面となる表面の表面粗さが、▽▽(表面仕上げが並仕上げ)であるアルミニウム製のブロックである。そして、それぞれのブロックには4隅にボルト固定用の孔が設けてあり、スペーサを用いることで塗布基材と圧縮基材とを所定の間隔に固定することができるようになっている。また、圧縮基材の一方面(試料と接触させない面)の中央には、引張り試験用のロードセルのフックを固定できる固定部が設けてある。
【0082】
続いて、上記塗布基材に各試料を塗布した。塗布方法としては、エアー式ディスペンサ(武蔵エンジニアリング製)を用い、外形が1辺40mmの正方形の3辺に相当するコ字状に、塗布幅が概ね4mmになるように塗布した。そして、高圧水銀灯で照度250mW/cmで積算光量5000mJ/cmの紫外線を照射することで各試料を硬化した。
そして上記硬化した試料について、圧縮基材で各試料が25%圧縮される間隔(すなわち塗布された試料の高さの75%となる間隔)となるようにスペーサを挟みボルト固定した。
【0083】
次に、上記圧縮状態の試料を、70℃の恒温槽で22時間放置し、その後に室温(25℃)で1時間放置して冷却した。そして、ボルトを外して圧縮圧力を解放した。なお、このとき圧縮基材と試料が固着しているため、塗布基材と試料と圧縮基材とが一体となっている。そして上記塗布基材を試験台へ固定し、圧縮基材の固定部へロードセルのフックを固定して、引剥し速度500mm/minの条件で、試料から圧縮基材を引剥した。このときの最大応力を記録し、固着面積で除することで固着力(N/mm)を算出した。なお、固着面積は剥離した圧縮治具の固着跡の幅と長さから算出した。
【0084】
チキソ性:
チキソ性に対する評価を行うため各試料についてチキソ比を求めた。チキソ比はB型回転粘度計を用い、測定温度25℃で回転速度1rpm及び10rpmにおける粘度を測定し、その比(粘度(1rpm)/粘度(10rpm))として算出した値である。チキソ比の上限は限定するものではないが、概ね20以下とすることができ、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。算出結果を各表に示した。
【0085】
防水性:
各試料について、次に示す試験片を作製して、JIS C0920に規定されているIPX7準拠の試験を行った。具体的には、厚み1mmのポリカーボネート板に線幅約2.0mm、厚み約1.4mmで、外形30×30mmの枠状になるように、ディスペンサを用いて光硬化性組成物を塗布し、次いで紫外線を照射して硬化することで、枠状の硬化体となる試験片を作製した。また、形状保持性が極めて悪い試料については、ディスペンサによる形成が難しいため、試験片として、厚みが1.4mmとなる光硬化性組成物のシート状硬化体を作製し、このシートから抜型を用いて線幅2.0mm、厚み1.4mmで、外形30×30mmの枠状の硬化体を形成して、これを厚み1mmのポリカーボネート板に貼着した。続いて、上記とは別の厚み1mmのポリカーボネート板で前記硬化体を25%圧縮して70℃、22時間維持した。その後、枠状の硬化体内に水没管理シール(不可逆性)(アズワン株式会社製、MZ-R)を貼り付け、再度厚み1mmのポリカーボネート板で前記硬化体を15%圧縮したものを各試料の試験片とした。そして、各試験片について、水深1mに浸漬して、30分保持した後に、目視にてパッキン内への浸水の有無を確認した。結果を浸水なしと、ありと評価し、その結果を各表に示した。
A:浸水無し
B:浸水有り
【0086】
耐熱防水性:
光硬化性組成物の硬化体の耐熱性は、耐熱防水性の試験を行いその結果をもって評価した。上記「防水性」で説明した試験と同様の試験を、25%圧縮、120℃、100hr放置した上記高温圧縮永久歪試験を行った後の各試料について行った。そして、以下のように評価した。その結果を各表に示した。
A:浸水無し
B:浸水有り
【0087】
リワーク性:
リワーク性の評価として、固着力試験の条件を一部変更して評価を行った。変更点は、まず、圧縮基材の替わりに、外形が80mm×80mm×1mmのアルミニウムシート製のカバーを用いた。そして、同様に試料を25%圧縮した状態として、室温(25℃)で1週間放置し、その後前記アルミニウムシートを手で剥したときの様子により、リワーク性を評価した。具体的には、カバーを外す際の状態の相違から以下のように評価した。その結果を各表に示した。
A:抵抗なくカバーを外すことができたもの。
B:軽い力でカバーを外すことができたもの。
C:軽い力よりは大きな抵抗を受けながらカバーを外すことができたもの。
E:カバーを適切に外すことができず、ガスケットの材破又はカバーの破壊があったもの。
【0088】
<試験結果の分析>:
多官能アクリル重合体及びヒュームドシリカを含まない試料17は、リワーク性が悪い結果となった。一方、多官能アクリル重合体、及びテレケリックアクリル重合体、単官能アクリルモノマー、ヒュームドシリカを含む試料1~14は何れも防水性、耐熱防水性(耐熱性)、リワーク性を備えることがわかった。
【0089】
試料6は防水性やリワーク性に優れるものの、単官能脂環式アクリルモノマーの含有量が3質量%と少ないため、やや高粘度で塗布し難くなるおそれがあり、作業性の点で劣っていた。そのため、単官能アクリルモノマーの含有量は5%以上とすることが好ましいことがわかった。また、脂環式アクリルモノマーの含有量が多くなると、硬化物が硬くなる傾向があり、27質量%以上になると防水性は問題ないが、リワーク性はやや悪化する傾向があった。
【0090】
試料11~15を比較すると、単官能アクリルモノマーを含む試料11~14は何れも防水性、耐熱防水性、リワーク性に優れていた。一方、アクリルモノマーを含まない試料15は耐熱防水性の結果が劣っていた。
【0091】
試料16、18、19、20から、テレケリックアクリル重合体を含まない場合には、防水性と耐熱防水性の少なくとも一方が悪化することがわかった。特に、テレケリックアクリル重合体をアクリル重合体ではない光硬化型ポリマーに変更した試料18~試料20では防水性で劣り、このうち試料18及び試料20ではマルテンス硬さの数値が高く柔軟性に乏しく、試料19及び試料20は耐熱防水性の点でも懸念があることがわかった。なお、試料20は、高温圧縮永久歪試験の際に試料が割れてしまい、歪の測定ができなかったため結果が空欄となっている。そうした一方で、試料17から、多官能アクリル重合体とヒュームドシリカの双方を含まない場合には、リワーク性が悪いことがわかった。
【0092】
試料21と試料22の比較により、光ラジカル重合開始剤を変えても防水性、耐熱防水性、リワーク性を備えていることがわかった。
【0093】
試料23~試料35からシリカについて考察すると、親水性ヒュームドシリカ又は極性基を有するヒュームドシリカの少なくも何れか一方及びテレケリックアクリル重合体、単官能アクリルモノマーを含む試料24~27、29~35は、何れも防水性、耐熱防水性、リワーク性を備えていた。一方、ヒュームドシリカを含まない試料23及び親水性でもなく極性基も有さないヒュームドシリカのみを含む試料28はリワーク性が悪い結果だった。親水性ヒュームドシリカ又は極性基を有するヒュームドシリカを用いる場合にはヒュームドシリカの配合量が増えるほどリワーク性に優れることがわかったが、一方でやや硬くなる傾向や、耐熱性がやや低下する傾向、増粘傾向があることがわかった。特に作業性を考慮すると、これらのヒュームドシリカの含有量は概ね5質量%以下であることが特に好ましい。また、試料26~31を比較すると、10rpmにおける粘度はそれほど変化がないものの、親水性ヒュームドシリカとアミノ処理ヒュームドシリカとを併用した場合には、リワーク性を損なうことなくチキソ性を高めることができることがわかった。
【0094】
試料36~試料48から架橋剤の添加について考察すると、テレケリックアクリル重合体、多官能アクリル重合体、単官能アクリルモノマー、親水性ヒュームドシリカ及び極性基を有するヒュームドシリカを含む組成に加えて、多官能光硬化性モノマーからなる架橋剤を加えると、120℃雰囲気下での高温圧縮永久歪のみならず150℃雰囲気下での超高温圧縮永久歪も少なく、超高温でも性能を保ち易いという効果が得られることがわかった。
【0095】
また、試料37、試料38、試料42は、超高温圧縮永久歪の値が21~24と、他の試料よりも小さく、優れていることがわかる。このことから超高温圧縮永久歪をも低く抑える観点からは脂肪族骨格を有し、極性基を有しない多官能光硬化性モノマーが好ましいことがわかった。
【0096】
試料45~試料48によれば、架橋剤である多官能光硬化性モノマーの含有量を組成物中に0.9~5.3%とした中では、圧縮永久歪低下量の数値から4.5%である試料47が最も好ましく、高温圧縮永久歪の数値から試料46及び試料47が同程度で最も好ましい。これらの結果、及び試料36~試料48の多官能光硬化性モノマーの含有量を総合的に見れば、多官能光硬化性モノマーの含有量は組成物中に1.8~4.5%であることがより好ましいことがわかった。