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特開2022-24122燃焼した放射性物質の粉塵抑制および封じ込めのための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022024122
(43)【公開日】2022-02-08
(54)【発明の名称】燃焼した放射性物質の粉塵抑制および封じ込めのための組成物
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20220201BHJP
   G21F 9/00 20060101ALI20220201BHJP
   G21F 1/10 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
G21F9/30 501V
G21F9/00 C
G21F1/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021189391
(22)【出願日】2021-11-22
(62)【分割の表示】P 2019548374の分割
【原出願日】2018-01-29
(31)【優先権主張番号】2017107488
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(71)【出願人】
【識別番号】516219347
【氏名又は名称】ステート・アトミック・エナジー・コーポレーション・ロスアトム・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ロシアン・フェデレーション
【氏名又は名称原語表記】STATE ATOMIC ENERGY CORPORATION ‘ROSATOM’ ON BEHALF OF THE RUSSIAN FEDERATION
【住所又は居所原語表記】B. Ordynka st., 24 Moscow, 119017 Russia
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リクホマノバ、オルガ・イバノブナ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】放射因子によって複雑化された火災の影響から環境を保護するための手段を提供する。
【解決手段】放射因子による火災が消火された後の燃焼した放射性物質の粉塵抑制および封じ込めのための組成物は、界面活性物質として、陰イオン性、非イオン性、および両性界面活性物質の混合物を含み、以下の成分の比率:3.0~7.0重量%の(乾燥製品の質量分率での)ポリビニルアルコールの水溶液、0.1~0.3重量%の可塑剤、11.0~29.0重量%の界面活性物質、残りを構成する水、を有する。本発明は、火災が消火された後の温度上昇を含む、表面に形成される燃焼した放射性物質の粉塵抑制および封じ込めを実行することを可能にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールの水溶液、可塑剤、および界面活性剤を含む、放射因子による火災の消火後の、燃焼した放射性物質の粉塵抑制および封じ込めのための組成物であって、前記組成物が、重量%で以下の成分割合:
(乾燥品の質量分率での)ポリビニルアルコールの水溶液 3.0~7.0
可塑剤 0.1~0.3
界面活性剤 11.0~29.0
水 残り
を有する界面活性剤として、陰イオン性、非イオン性、および両性界面活性剤の混合物を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
0.1~0.3重量%の量のグリセリンが可塑剤として使用されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
11.0~29.0重量%の量の陰イオン性、非イオン性、および両性界面活性剤の混合物が界面活性剤として使用されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1.0~3.0重量%の量の陰イオン性界面活性剤スルフォノールPが、他の物質と混合され、界面活性剤として使用されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
8.0~22.0重量%の量の非イオン性界面活性剤OXI SAA AP.30が、他の物質と混合され、界面活性剤として使用されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
2.0~4.0重量%の量の両性界面活性剤BETA SAA AP.45が、他の物質と混合され、界面活性剤として使用されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、放射能汚染から環境を保護するための手段に関し、具体的には、ポリビニルアルコールの水溶液に基づく粉塵抑制および封じ込めのためのポリマー組成物に関する。
【0002】
火災を伴う放射線事故の際、燃焼した放射性物質が表面に形成され、これらの表面から放射性粉塵などの汚染物質が環境に拡散する。
【0003】
微細な炭酸塩材料の均一な水性分散液を含む消火剤が知られており、これはさらにゲルおよび泡混合剤を含むことができる。RU特許第2414273号、IPC A62D 1/00、03/20/2011。塗布されると、その薬剤の層はすぐに火を消すが、二次的な放射能汚染を防ぐポリマー封じ込めコーティングは表面に形成されない。
【0004】
表面の放射能汚染の封じ込めのための方法が知られており、原子力施設を廃止することを目的としている。この方法の実施の際、5%のポリビニルアルコール、1%のトリポリリン酸ナトリウム、および1%のスルフォノール(sulfonol)を含む泡が、放射性物質によって汚染され封じ込めの対象となる表面に、泡発生器を介して塗布される。RU特許第2194321号、IPC G21F 9/28、G21F 9/34、12/10/2002。泡が自然に崩壊した後、表面に均一な封じ込めコーティングが形成され、除去すべき汚染が大幅に減少する。この泡の使用を妨げる1つの要因は、この泡が、くすぶる燃えさしと灰に覆われた表面に塗布するようには設計されておらず、これらの条件下では連続的なコーティングが形成されないということである。
【0005】
溶液1リットル当たり0.1~7モルの1つ以上の汚染除去剤、洗浄剤、および/または脱脂剤を含み、溶液の総質量に応じて0.01~25%の同じ性質の固体粒子かまたは異なる性質の固体粒子の混合物を含む発泡水溶液に分散され、且つ発泡特性を示す気泡からなる、汚染除去、洗浄、および/または脱脂のための安定化された泡が知られている。RU特許第2470068号、IPC C11D3/02、C11D3/37、C11D17/00、G21F9/00、12/20/2012。この泡は、放射因子(radiation factor)によって複雑化した火災の消火後の、燃焼した放射性物質の粉塵抑制および封じ込めのために使用することができない。
【0006】
主に原子力施設の廃炉時に建物を解体する際の放射性汚染物質の生成および拡散を防止するための方法が知られており、それは、7~10%の量の成膜ポリビニルアルコールと、1%の量の発泡剤OP-10とを含み、残りが水で構成されている泡の使用を含む。組成物は、汚染物質が生成される前に、構造物の内側と外側の部分を前記泡で満たすことにより、放射性汚染物質の生成および拡散を防ぐ。封じ込めフィルムが形成されるため、泡の層が環境への粉塵の拡散を防ぐ。RU特許第2263984号、IPC G21F 9/28、В08В 15/00、11/10/2005。この組成物はプロトタイプとして認められている。
【0007】
このプロトタイプの1つの欠点は、灰で覆われた表面に連続的なコーティングを形成できないことである。
【0008】
発明の概要
本発明の目的およびその技術的成果は、放射因子によって複雑化した火災の消火後の、燃焼した放射性物質の粉塵抑制および封じ込めのための組成物の生成である。
【0009】
燃焼した放射性物質の粉塵抑制および封じ込めのために提示された組成物は、火災後の高温の表面上で粉塵抑制および封じ込め動作を実行することを可能にし、燃えさしと灰が冷却された後の粉塵等の汚染物質の拡散を防ぐ。組成物は、組成物の泡によって、表面の高度な発泡性および均一な湿潤性を確保する。さらに、灰の上層部の粒子は、泡の壁に吸収され、交番応力の作用下で活発に流動し始め、より多くの灰の粒子を引き込む。結果として、灰の上層部がコーティングに引き込まれて、燃えさしと灰の上に連続的なコーティングが形成される。
【0010】
この技術的成果は、放射因子による火災の消火後の、燃焼した放射性物質の粉塵抑制および封じ込めのための組成物が、ポリビニルアルコールの水溶液、可塑剤、および界面活性剤を含み;陰イオン性、非イオン性、および両性界面活性剤の混合物が、界面活性剤としての役割を果たし、以下の成分割合の重量%:
(乾燥品の質量分率での)ポリビニルアルコールの水溶液 3.0~7.0
可塑剤 0.1~0.3
界面活性剤 11.0~29.0
水 残り
を有することによって達成される。
【0011】
ポリビニルアルコールの水溶液は、膜形成剤として使用される。
【0012】
グリセリンは、可塑剤として使用される。界面活性剤は、以下の割合の重量%:
陰イオン性界面活性剤―アルキルベンゼンスルホン酸スルフォノールP 1.0~3.0
非イオン性界面活性剤―コカミドプロピルジメチルアミン酸化物 OXI SAA AP.30 8.0~22.0
両性界面活性剤―コカミドプロピルベタイン BETA SAA AP.45 2.0~4.0
における、陰イオン性、非イオン性、および両性界面活性剤の混合物である。
【0013】
提示された組成物の成分に関する技術文書のリスト:
1、ポリビニルアルコール GOST 10779-78
2、グリセリン GOST 6259-96
3、スルフォノールP TU 2481-002-40245042-98
4、OXI SAA AP.30 TU 2482-007-04706205-2006
5、BETA SAA AP.45 TU 2480-002-04706205-2004
提示された組成物は、複数の成分を混合することによって生成され、その定量的および定性的組成物が表1に提示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
組成物の調製の一例。
【0015】
組成物は、水に(例えば、商標KPE-60の電気沸騰ポット中で)60~80℃で30分間ポリマー成膜ポリビニルアルコールを溶解することによって生成される。冷却後、組成物を攪拌しながら、グリセリン、スルフォノールP、OXI SAA AP.30、およびBETA SAA AP.45が順次取り込まれる。攪拌は、各成分が取り込まれた後、5分間継続する。
【0016】
テストの結果を表2に示す。
【0017】
組成物の粘度は、GOST9070-75にしたがって決定された。
【0018】
コーティングがその保護特性を維持する期間は、GOST R 51037-97、GOST R 50773-95、GOST 4.54-79、およびGOST R 19465-74にしたがって開発された、サンクトペテルブルグ州立技術研究所(工科大学)SPbSIT(TU)の手順MI IRRT-04-2014にしたがって決定された。放射性核種によって汚染されたサンプルは、α線およびβ線を記録するためにUMF2000放射測定ユニットを使用することによって測定された。放射線によって汚染されたサンプルに組成物が塗布された。乾燥の後、テスト下でのコーティングの外面の放射能汚染のレベルは、15日間、30日間、60日間、120日間、および180日間にわたって、24時間間隔で採取することによって決定された。
【0019】
灰とともにくすぶる燃えさしのコーティングの表面は、連続的なコーティングの有無に基づいて視覚的に決定された。
【0020】
泡の直径およびそれらの寿命は、3mm/s、4atmのガス流量で、拡散基準漏れサンプルSOP DKT-1における1・10-5~1・10-7Pa/sの漏れ検出の手段の感度範囲で機器の結合性制御の方法にしたがって決定された。
【0021】
泡の崩壊が始まる時間および終わる時間は、これらのイベントの時間を観察および記録することによって、視覚的に決定された。
【0022】
泡拡張比率は、泡の離水の後に得られた、組成物溶液量に対する泡の量の比として決定された。
【0023】
固結形成の程度は、GOST R 51037-97,GOST 4.54-79、およびGOST R 19465-74にしたがって開発された、SPbSIT(TU)の手順MI IRRT-05-2014にしたがって決定された。固結形成のレベルは、以下の測定値:粉塵形成表面上に組成物を塗布した後、臨界値を超える粒子の直径を有するモデル粉塵画分の質量分率の測定値、から決定された。最大粒子サイズ100μmが臨界値として採用された。モデル粉塵画分の質量分率は、モデル粉塵の総量の割合として表された。粉塵形成表面上に組成物を塗布した後、固結画分の質量が計算され、次いで、初期の乾燥した質量と比較された固結画分の割合が計算された。
【0024】
<結果の分析>
表1および表2に示されているように、例1~例3は、成膜ポリビニルアルコールの乾燥品の質量分率が3.0~7.0%の範囲内にあるとき、組成物は燃えさしを均一に覆い、灰の最上層に浸透し、連続的なコーティングを形成することを示している。この使用の範囲に関して、コーティングは、GOST R 51037-97の要件を満たしている―180日を超える保護を提供し続ける。
【0025】
グリセリン可塑剤の含有量が0.1~0.3%の範囲内にあるとき、組成物は、高い値の泡寿命、泡拡張比率、および固結形成レベルでの安定した発泡特性を有する。
【0026】
SAAスルフォノールPの含有量が1.0~3.0%の範囲内にあるとき、乾燥組成物は、連続的なコーティングを形成し、必要な時間の長さの保護を提供し続ける。
【0027】
SAA OXI SAA AP.30の含有量が8.0~22.0%の範囲内にあるとき、塗布された組成物は、灰の層に「沈む」ことなく、安定した発泡特性を有し、連続的なコーティングを形成する。
【0028】
SAA BETA SAA AP. 45の含有量が2.0~4.0%の範囲内にあるとき、組成物は、安定した湿潤性を有し、燃えさしを均一に覆い、灰の最上層に浸透する。
【0029】
特許請求の範囲に記載されているものとは異なる定量的組成(No.4~13)を有する組成物の使用例。
【0030】
成膜ポリビニルアルコールの乾燥品の重量分率が3%未満であるとき、コーティングが形成されない。
【0031】
成膜ポリビニルアルコールの乾燥品の重量分率が7%を超えるとき、溶液の粘度上昇のために発泡プロセスが減速し、形成されたコーティングは、不十分な長さの時間の保護をもたらす。
【0032】
グリセリン可塑剤の含有量が0.1%未満であるとき、気泡の寿命が短くなり、泡に引き込まれる灰粒子がより少量となり、コーティングが保護を提供する時間期間の減少を引き起こす。
【0033】
グリセリン可塑剤の含有量が0.3%を超えるとき、発泡速度が低下し、燃焼物質は、不均一な方法で浸透し、それは、コーティングが保護を提供する時間期間の減少を引き起こす。
【0034】
SAAスルフォノールPの含有量が0.2%未満であるとき、組成物によって形成されたコーティングが保護を提供する時間期間は減少する。
【0035】
SAAスルフォノールPの含有量が3.0%を超えるとき、気泡の大きさが増大し、乾燥したコーティング内部の空間、すなわち不連続的なコーティングを引き起こし、且つコーティングが保護を提供する時間期間の急激な減少を引き起こす。
【0036】
SAA OXI SAA AP.30の含有量が8.0%未満であるとき、形成されたコーティングが保護を提供する時間期間が不十分となる。
【0037】
SAA OXI SAA AP.30の含有量が22.0%を超えるとき、発泡プロセスは同等のレベルで継続する;したがって、経済的な理由から、多くの材料を消費する理由はない。
【0038】
SAA BETA SAA AP.45の含有量が2.0%未満であるとき、組成物によって形成されたコーティングが保護を提供する時間期間は減少する。
【0039】
SAA BETA SAA AP.45の含有量が4.0%を超えるとき、泡は同等の湿潤性を保持する;したがって、経済的な理由から、より多くの材料を消費する理由はない。
【0040】
燃焼物質に塗布されたとき、プロトタイプ組成物(例のNo.14)は、灰の上部層に「沈み」、表面を均一に濡らし均一なコーティングを形成することができない。
【0041】
テスト結果は、提示された組成物が目的を達成するために設計されていること、および適用可能な法律にしたがってそれが登録のためのすべての基準を満たしていることを確認するものである。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2021-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールの水溶液、可塑剤、および界面活性剤を含む、燃焼した放射性物質の粉塵抑制および封じ込めのための組成物であって、前記組成物が、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤を界面活性剤として含み、これらの成分の割合は、重量%で以下のとおりであり
ポリビニルアルコールの水溶液(乾燥品の質量分率で) 3.0~7.0
可塑剤 0.1~0.3
界面活性剤 11.0~29.0
水 残り
ここで、前記陰イオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸であり、前記非イオン性界面活性剤は、コカミドプロピルジメチルアミン酸化物であり、前記両性界面活性剤は、コカミドプロピルベタインであり、前記組成物は、ゼオライトを含んでいないことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記可塑剤としてグリセリンが0.1~0.3重量%の量で含まれている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルキルベンゼンスルホン酸の量が、1.0~3.0重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記コカミドプロピルジメチルアミン酸化物の量が、8.0~22.0重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記コカミドプロピルベタインの量が、2.0~4.0重量%である、請求項1に記載の組成物。
【外国語明細書】